説明

タッチセンサ装置

【課題】導電性透明層に電気的に接触する接触構造体を備えた、可能な限り優れたエッチング挙動を達成し、同時に、良好な耐腐食性及び他の耐性を有し、可能な限り高い導電性と同時に可能な限り低い移動抵抗を有し、個々の層における機械的応力の段階的変化により生じる不利な影響を可能な限りに回避するタッチセンサ装置を提供する。
【解決手段】光学的に透明な基板(1);前記基板(1)上に形成され、少なくとも1層の導電性透明層(4)を有する、1つ以上の光学的に透明なタッチセンサ素子(4x、4y);及び、前記導電性透明層(4)の電気的接触用の1つ以上の接触構造体(2)とを備えたタッチセンサ装置(10)。前記接触構造体(2)は、前記導電性透明層(4)に直接接触する少なくとも1層のMoxTay層(2)(ここで、0.02≦y≦0.15である。)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタッチセンサ装置に関する。
【0002】
電子機器におけるタッチセンサの利用は益々盛んになっている。特に近年においては、タッチセンサは、ユーザーフレンドリな直感操作型インターフェースとしてナビゲーションシステム、PDA(パーソナルデジタルアシスタント;携帯用マイクロコンピュータ)、携帯電話、PCシステム、コピー機等への情報入力にしばしば利用されている。多くの場合、1つのタッチセンサ又は複数のタッチセンサからなる装置が、例えばアクティブマトリクス液晶画面(TFT−LCD:薄膜トランジスタ液晶ディスプレイ)等の画面から構成される、ディスプレイ装置上に配置される。この場合、タッチセンサ又はタッチセンサ装置は、ユーザーが指、トレーサー又は他の何らかの物体を使って電子機器に触れることにより、その電子機器と通信を行なえるように、構成されることが多い。
【0003】
この点において、タッチセンサ又はタッチセンサ装置の表面上で触れられた箇所を判定するためには、様々な測定原理が知られている。これら様々な測定原理は、また、様々なタイプのタッチセンサ又はタッチセンサ装置を分類するためにも使われている。例えば、抵抗センシング、容量センシング、音響センシング、光センシング(例えば可視範囲又は赤外線範囲における)、及び電磁誘導という手段によるセンシング(誘導センシング)等に、区別されている。市場に出回っているタッチセンサ又はタッチセンサ装置の殆どは、接触した箇所の判定に抵抗センシング又は容量センシング方式を採っている。容量タッチセンサ装置は、絶縁基板上に設けられた2つの導電層を有する。これら2つの導電層は、例えば、基板の両面に、少なくとも実質的にそれらの面全体に亘って、設けてもよく、又は基板の一方の面のみに設けてもよい。基板の一方の面のみに設ける場合、これらの層は、例えば、格子配列で隣り合わせに設けてもよく、絶縁層で分離して一方の上にもう一方を重ねて設けてもよい。
【0004】
ディスプレイ装置上に配置する場合、タッチセンサ又はタッチセンサ装置は、ユーザーがディスプレイ装置を見ることができるように(少なくとも可能な限り)、光学的に透明な形態でなければならない。
【0005】
そのようなタッチセンサの場合、導電性の透明層をタッチセンサ素子の電極として設けることが知られている。そのような導電性かつ光学的に透明な層は、例えば、多くの場合、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)又はアンチモンスズ酸化物等の透明な導電性酸化物(TCO)、導電性ポリマーフィルム又は同様の材料から作られる。
【0006】
特許文献1には、画面上に配したタッチセンサ装置が記載されている。この特許文献は、光学的に透明なタッチ電極が絶縁性基板上に設けられ、タッチ電極上の接触位置を電気信号により判定するタッチセンサ方式の画面について述べている。実施例1〜実施例3においては、容量式のタッチセンサ装置(容量センシング方式)が記載されており、他の実施例においては、抵抗式のタッチセンサ装置(抵抗センシング方式)が記載されている。
【0007】
特許文献2には、容量式のタッチセンサ方式画面用の二次元センサ構造が記載されている。画面上に、複数の光学的に透明なタッチセンサ素子が格子状に(第一の方向及び第一の方向に直交する第二の方向において、異なる配置で)設けられている。光学的に透明なタッチセンサ素子は、金属接触構造体により、電気的に接触している。この場合において、金属接触構造体は、絶縁性ガラス基板に層として設けられている。
【0008】
上述の様々なタッチセンサ装置において、タッチ信号又は位置信号の検知を可能とするには、導電性透明層が評価ユニットに電気的に接続していなければならない。測定精度及び測定速度について所望の特性を有するタッチセンサ装置を得るために、評価ユニットへの電気接続は、通常、当該タッチセンサの電極の導電性透明層よりも高い(通常、2〜3桁高い)導電率を有する金属接触構造体により、行なわれる。この観点で、導電性金属線が一般的に用いられる。導電性透明層及び接触構造体は、通常、透明な非導電性の保護層によりコーティングされ、その下にあるセンサ層が、例えばキズに起因する、腐食、水分、発汗、汚染及び損傷から守られる。導電性透明薄層の形成及び接触構造体の構築は、いずれも、通常、陰極スパッタリング及び基板上への成膜により実施される。タッチセンサ装置の製作は、通常、湿式化学エッチング処理と組み合わせたフォトリソグラフィーにより、個々の層を構造化することを伴う。パッシベーション層(保護層)は、通常、化学蒸着法(CVD)で成膜され、ウエットエッチング又はプラズマエッチングにより構造化される。
【0009】
層成膜プロセスによるこのようなタッチセンサ装置の製造においては、特に大面積の基板を使う場合に、例えば大面積タッチセンサスクリーンの製造等において、更なる問題が生じる。接触構造体及び導電性透明層を成膜する場合、異なる熱膨張率のため、そして基板領域とそこに設けられる層における成膜プロセスの更なるパラメータ(特に、陰極スパッタリングの場合は作用ガスの圧力及び基板温度)のために、基板表面に対して平行な面において、異なる引張応力又は圧縮応力が生じる。このような応力の違いは、例えば基板の上方向への歪みを引き起こす可能性があり、この結果、特に大面積タッチセンサ画面においては、望ましくない影響が出る可能性がある。極端なケースでは、これは、基板破壊にも至る恐れもある。これらの影響は、更に、接触構造体に望ましくない変形をもたらす可能性がある。引張応力が過剰なときは、層中にクラックが生じる可能性があり、圧縮応力が過剰なときは、上方向への歪み又は折れ曲がりが生じる可能性がある。例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金が接触構造体の材料として使用された場合、いわゆるヒロック、即ち接触構造体表面の望ましくない変形、が形成される。製造プロセスの後続するステップにおいて、これらは、より劣悪な層形成や層被覆を引き起こしたり、他の問題、例えばタッチセンサの短絡等、を発生させたりする。アルミニウム又はアルミニウム合金を接触構造体用に使用する場合、更に、導電性透明層に対して低い移動抵抗を有する電気的接触を行なわせるための特別な措置が必要である。
【0010】
特に、例えば、携帯電話、PDA、ナビゲーション装置等のような携帯用装置の場合、タッチセンサ又はタッチセンサ装置は、作動中に、環境的影響(腐食、水分、汗等)の強いストレスに曝される。更には、保護層の厚さは、通常、数ミクロン程度等で、非常に薄いことが多く、酸化性物質(酸素等)がこれを通過して拡散して、保護層の下にある層と反応してしまうことがある。これにより、金属接触構造体が腐食又は酸化による損傷を受ける可能性がある。この損傷により、接触構造体の導電性が変化(通常は劣化)する可能性があり、そうなると接触位置の判定にエラーが生じることもあり得る。極端な場合には、接触構造体に完全な電気的断線が生じるかも知れない。
【0011】
従って、このようなタッチセンサ装置の場合の接触構造体は、多くの異なる条件を満たさなければならない。接触構造体の材料は、一方では、製造におけるエッチングプロセスで加工しやすいという意味において優秀(例えば良好にエッチングできる、又はエッチング挙動が良好)でなければならず、他方では、タッチセンサ装置への適用において高い耐腐食性と外部からの影響に対する耐性を有していなければならない。加えて、接触構造体は、個々の導電性透明層に対して、相対的に高い導電率及び低い移動抵抗を有していなければならない。それに加えて、個々の層における異なる引張応力及び圧縮応力に起因する望ましくない影響は、できる限り小さく維持し又は相殺しておかなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願公開2009/0096759A1
【特許文献2】米国特許出願公開2009/0160824A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、導電性透明層に電気的に接触する接触構造体を備えたタッチセンサ装置を提供することであり、このタッチセンサ装置は、可能な限り優れたエッチング挙動を達成し、同時に、良好な耐腐食性及び他の耐性を有し、可能な限り高い導電性と同時に可能な限り低い移動抵抗を有し、個々の層における機械的応力の段階的変化により生じる不利な影響を可能な限りに回避するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、光学的に透明な基板(1)、前記基板(1)上に形成された、少なくとも1層の導電性透明層(4)を有する1つ以上の光学的に透明なタッチセンサ素子(4x、4y)、及び、前記導電性透明層(4)の電気的接触用の1つ以上の接触構造体(2;2’、3)を備えてなるタッチセンサ装置(10)であって、前記接触構造体(2;2’、3)が、前記導電性透明層(4)に直接接触する、1層以上のMoxTay層(2、2’)(ここで、0.02≦y≦0.15である。)を有することを特徴とするタッチセンサ装置(10)(請求項1の発明)により達せられる。有利なその発展形態は請求項1に従属する請求項に記載されている。
【0015】
タッチセンサ装置は、光学的に透明な基板、この基板上に形成され少なくとも1層の導電性透明層を有する1つ以上の光学的に透明なタッチセンサ素子、及び、この導電性透明層に電気的に接触するための1つ以上の接触構造体を備える。接触構造体は、導電性透明層と直接接触した、少なくとも1層のMoxTay層(ここで、0.02≦y≦0.15である。)を備える。
【0016】
本明細書において「触れる」(“touch”)又は「接触」(“touching”)とは、直接的な物理接触をするといった直接接触のみを意味するものではなく、センサ素子が物体の接近を検知し得るように、物体をセンサ素子間近に持っていくことをも意味する。本明細書において、タッチセンサ装置とは、指、トレーサー若しくは他の何らかの物体がタッチセンサ素子に触れた又は少なくともタッチセンサ素子の間近に近づいたことを検知することを可能にする装置を意味する。特に、タッチセンサ素子は、冒頭に触れたように例えば抵抗又は容量センシング用に設計することができる。特に、タッチセンサ装置は、電子装置への情報入力用インターフェースとして、特にユーザーが指、トレーサー又は他の何らかの物体により該電子装置に触れることにより該電子装置と通信することができるように、構成することができる。
【0017】
「光学的に透明な」又は「透明な」とは、本明細書において、それぞれの層又は構造体が、可視範囲にある光に対して少なくとも可能な限り透明であり、可視範囲にある光が妨げられることなく、少なくとも可能な限り最大限に、透過することができることを意味する。
【0018】
MoxTay(0.02≦y≦0.15)との規定は、一般に、x+y=1の合金を意味する。本明細書において、x及びyに与えられる数は、常に、原子パーセントである。しかしながら、MoxTayは必ずしも最高純度である必要はなく、他元素による不純物が存在していてもよい。本明細書において、少なくとも一層のMoxTay層とは、接触構造体がこのMoxTay層に加えて、1つ以上の他の材料から成る少なくとも1層の層を有していてもよいこと又は多数のMoxTay層が、他の材料から成る少なくとも1層の層と組み合わされていてもよいが、設けられていてもよいということを意味する。しかしながら、MoxTay層が高い導電性を持つ層であるので、これのみで接触構造体を製作することも可能である。その場合、接触構造体が異なる材料の多数層から構成された公知のタッチセンサ装置と比べると、単純な層構造が設けられることになる。
【発明の効果】
【0019】
導電性透明層と直接接触する接触構造体が1層以上のMoxTay層(ここで、0.02≦y≦0.15である。)を有しているので、接触構造体は、低い電気抵抗率を有し、特に、導電性透明層に対して低い移動抵抗を有する。また、MoxTay層(ここで、0.02≦y≦0.15である。)は、製造においては特に有利なエッチング挙動を有している(即ち、湿式化学エッチング処理で良好にエッチングされる)一方、完成したタッチセンサ装置においては高い耐腐食性及び他の耐性を有することが見出された。この特性は、湿式化学エッチングに用いられる通常の化学処理における加工には向いているが、他方、望ましくないことだが通常発生する他の周囲条件下及びpH値の下で生じる、腐食プロセス及び大気酸化プロセスに対して高い耐性を持っているMoxTay層(ここで、0.02≦y≦0.15である。)によりもたらされるものである。MoxTay層(ここで、0.02≦y≦0.15である。)により、タッチセンサ装置製造中の基板に対する応力状態も非常にうまく制御することができるので、基板の歪みを回避して、良好な層付着を得ることができる。特に、Al原子パーセントが90%以上のAl又はAl合金(特に、例えばAlNd合金)層を更に備える複数層構造の接触構造体の場合、基板表面に平行な平面において引張応力が生じるが、MoxTay層(ここで、0.02≦y≦0.15である。)が、構造体全体として、良好な形で応力を相殺する。例えばMoaNbb層の場合と比較すると、MoxTay層によって接触構造体の抵抗が低くなり、エッチング挙動や耐腐食性が飛躍的に改善し、層構造全体としての応力の相殺状態が改善される。
【0020】
MoxTay層について、0.03≦y≦0.09であることが好ましい。特にこの比率である場合、上述した利点は特段に高度に達成されることが知られている。
【0021】
一つの構成によれば、接触構造体は、多層構造体であり、そしてAl、Cu、Ag、Au、Al合金(Al含有量≧90原子パーセント)、Cu合金(Cu含有量≧90原子パーセント)、Ag合金(Ag含有量≧90原子パーセント)、又はAu合金(Au含有量≧90原子パーセント)の層を少なくとも1層備えている。この場合、Al、Cu、Ag、Au又はその合金の少なくとも1つの層により、接触構造体の導電性は、特に高くなり、導電性透明層への電気接続は、MoxTay層によりなされる。MoxTay層が基板とAl、Cu、Ag、Au又はその合金の層との間に形成されると、基板への付着性も特に改善される。接触構造体は、この場合に、二層構造又は三層構造を有することが好ましい。Cu合金の場合、特に、Mg、Ca及び/又はMnとの合金を使うことができる。MoxTay層は、上述の有利なエッチング挙動と高い耐腐食性及び他の耐性とを接触構造体に提供する。少なくとも1層の、Al含有量≧90原子パーセントのAl又はAl合金層、特にAlNd合金層、と、少なくとも1層のMoxTay層と備える接触構造体の層構造が特に好ましい。この場合、少なくとも1層のMoxTay層は、Al又はAl合金からなる層がアルミニウム酸化物絶縁表面層を形成するのを、確実に阻止し、導電性透明層の信頼性の高い電気的接触を確実にする。特にこの組み合わせの場合、MoxTay層は、特に有利に、Al又はAl合金層により生じる応力を相殺し、表面における、例えば、いわゆるヒロック等の、望ましくない変形の生成を抑制する。特に好ましい構成においては、接触構造体は、Al若しくはAl合金層とMoxTay層との二層構造、又はMoxTay層、Al若しくはAl合金層及び更なるMoxTay層の三層構造を備える。
【0022】
一構成によれば、タッチセンサ装置の接触構造体は、電子起動/評価ユニットに接続するための1つ以上の接触端子を有しており、この接触端子の露出面は、少なくとも1層のMoxTay層(ここで、0.02≦y≦0.15である。)で形成されている。電子評価ユニットへの電気接続は、タッチセンサ装置にとっては必須であり、この電気接続は、タッチセンサ装置の形成よりもかなり後に実施される作業ステップにおいてのみ完全に達成されるため、これらの場合には、一般的には、多数の接触端子が必要となる。接触端子は、非常に異なる周囲環境に(しばしば、例えば、保管及び/又は移送中に、比較的長期間に亘って)曝されるため、高い導電性を有するだけではなく、高い耐腐食性及び他の耐性を有しなければならず、これは少なくとも1層のMoxTay層により達成される。1つ以上の接触端子の露出面上にある少なくとも1層のMoxTay層により、この位置における望ましくない腐食の発生が阻止される。更に、接触端子の所望の構築は、この場合、接触構造体の構築と同じステップで行なわれるため、少ないステップで効率のよい生産が可能である。
【0023】
一構成によれば、タッチセンサ装置は、タッチセンサ画面(タッチスクリーン)の一部を構成する。特にこの場合、タッチセンサ装置は、作動中において、例えば腐食、水分、汗又は機械的影響といった環境の影響による負荷に大きく曝される。この適用においては、特に、請求項に記載のタッチセンサ装置の構成により、高い耐腐食性及び他の耐性が達成される。
【0024】
一構成によれば、タッチセンサ装置は格子状に配列された複数のタッチセンサ素子を有する。このような構成の場合には、特に、接触構造体は、複数のタッチセンサ素子に対し、耐性があり良好な導電性を有する接触を提供できなければならないが、これは、請求項に記載の特徴の組み合わせにより実現される。「格子状に配列される」という表現は、タッチセンサ素子が所定パターンで基板表面上の様々な位置に配列されていることを意味する。しかしながら、このパターンは必ずしも直交配列(チェス盤の配列のような)に限定されるわけではない。
【0025】
一構成によれば、少なくとも1層の導電性透明層は、透明導電性酸化物(TCO:Transparent Conductive Oxide)、透明導電性ポリマー、又はカーボンナノチューブのコーティングを含む。その光学的透明性及び導電性の故に、これらの材料は、タッチセンサスクリーンに用いられるタッチセンサ装置の構成に特に適している。インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)又はアンチモンスズ酸化物は、ここで特に透明導電性酸化物として用いられる。少なくとも1層のMoxTay層は、特にこれらの材料と接触した場合に、上述の有利な特性を呈することが判明している。
【0026】
一構成によれば、光学的に透明な基板の裏面(タッチセンサ装置とは反対側の面)は、液晶ディスプレイの少なくとも一要素のための基板を形成する。この場合、いわゆる“インセル(In Cell)”タッチセンサ装置が提供されるが、この場合には、タッチセンサ装置は、その下に位置するスクリーンについて、別個の基板を持っていない。このような構成とした場合、特に、基板内での不要なストレスを回避することが重要であり、これは上述のように、特定のタッチセンサ装置により達成される。しかしながら、また、例えばタッチセンサ装置と液晶ディスプレイの1つ以上の要素とを、基板の同じ側、好ましくは操作中に外向きの側を構成しない側に設けることも可能である。
【0027】
本願の目的は、また、光学的に透明な基板(1)上に形成されたタッチセンサ装置(10)の光学的に透明なタッチセンサ素子(4x、4y)の導電性透明層(4)に直接接触した接触構造体を形成するためのスパッタリングターゲットの使用であって、前記スパッタリングターゲットがMoxTay(ここで、0.02≦y≦0.15である。)を含有してなることを特徴とする使用(請求項9に記載の発明)により達成される。有利な発展態様は、請求項9に従属する請求項に記載されている。スパッタリングターゲットは、光学的に透明な基板上に形成されたタッチセンサ装置の光学的に透明なタッチセンサ素子の導電性透明層に直接接触する接触構造体を形成するために、用いられる。スパッタリングターゲットは、MoxTay(ここで、0.02≦y≦0.15である。)を含有して成る。このスパッタリングターゲットを接触層の形成に用いることにより、接触層を陰極スパッタリングにより基板上に設けることができる。この場合、接触構造体の高い導電性が、導電性透明層に対する低い電気移動抵抗、良好な耐腐食性及び接触構造体の他の耐性と共に達成され、更に基板表面に平行な面に生じる応力も著しく補償されている。もし、0.03≦y≦0.09とすれば、その成果は特に良好な域に達する。本願の目的は、更に、導電性透明層(4)に接触させるための接触構造体を構築するためのエッチング液の使用であって、前記接触構造体が少なくとも1層のMoxTay層(2、2’)(ここで、0.02≦y≦0.15である。)を有し、そして前記エッチング液がリン酸及び/又は酢酸及び/又は硝酸を溶液構成要素として含むことを特徴とする使用によって、達成される。接触構造体は、少なくとも1層のMoxTay層(ここで、0.02≦y≦0.15である。)を有する。エッチング液は、その溶液構成成分として、リン酸及び/又は酢酸及び/又は硝酸を含んでいる。リン酸の比率は、好ましくは、60〜90重量パーセントであり、酢酸の比率は、好ましくは、0〜20重量パーセントであり、硝酸の比率は、好ましくは、1〜12重量パーセントである。生じ得る残部は、水又は湿潤剤(例えば、フッ化物含有化合物又はアニオン性添加剤)で構成することができる。
【0028】
有利な発展形態及び構成は、添付図を参照しつつ行なう以下の実施例の説明により提供する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】一実施例に基づくタッチセンサ装置の構造を概略的に示す平面図である。
【図2】基板表面に対して垂直方向から見た、タッチセンサ装置の様々な領域を示す概略図である。
【図3】他の実施例におけるタッチセンサ装置の様々な領域を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0030】
本発明の実施例1を、図1及び図2を参照しつつ、以下に説明する。ここに示す実施例の場合、タッチセンサ装置10は、タッチセンサ画面(タッチスクリーン)の一部を形成している。本実施例においては、タッチセンサ装置は、いわゆる“インセル”タッチセンサ装置として構成されており、ここでは、タッチセンサ装置10の光学的に透明な基板1は、同時に、LCD画面のカラーフィルタ基板をも構成している。従って、タッチセンサの反対側にある光学的に透明な基板1の背面は、液晶ディスプレイの1つ以上の部材のための基板を形成している。しかしながら、タッチセンサ装置を実現する方法は、そのような構成に限られたものではない。例えば、基板1は、例えば、別個の基板として、例えばガラス又は透明プラスチックから、形成してもよいし、例えば硬質プレートとして又は柔軟シートとして、形成してもよい。しかしながら、いずれの場合においても、光学的に透明な基板1は絶縁材料から成る。
【0031】
本実施例においては、タッチセンサ装置10は、図1では例えば正方形で描かれているが、複数のタッチセンサ素子を、基板1の表面上の測定領域の形態に配列させて設けたものである。しかしながら、タッチセンサ装置の構成は、このようなものに限られたものではない。この例の場合、タッチセンサ装置は、容量センシング方式用に設計されたものである。この実施例の場合、タッチセンサ装置の機能及び構造は、特許文献2に記載のものと実質的に対応しているが、その構成は、この構造に限られたものではない。例えば、タッチセンサ装置を抵抗センシング方式向けに設計することも可能である。
【0032】
本実施例の場合、基板の同じ側で容量センシング方式のために必要とされる2つの導電層(電極)は、行と列とから成る格子状のチェス盤様パターンに構成される。構造化のために、複数のタッチセンサ素子が構成され、容量センシング用の2つの電極が形成される。容量タッチセンサ装置10の2つの電極は、同じ材料、即ち、導電性光透過層4、から作られる。これを分かり易く説明するために、図1においては、2つの電極を異なる陰影で示した。一方の電極側のタッチセンサ素子4xは、水平斜線で示され、他方の電極側のタッチセンサ素子4yは、垂直斜線で示されている。タッチセンサ素子4xは、それぞれの角で、行(水平)方向に導電的に互いに接続されている(図1においては実線で図示した)。タッチセンサ素子4yは、同様に、それぞれの角で、垂直の列方向に互いに導電的に接続している(図1においては点線で図示した)。この場合における個々のタッチセンサ素子の接続は、例えばタッチセンサ素子4x、4yの材料、即ち、導電性透明層4、から形成してもよいし、又は、例えば、以下に説明するように接触構造体の材料で形成してもよい。この実施例の場合、導電性透明層4は、陰極スパッタリング(スパッタ成膜)により基板に形成された透明導電性酸化物(TCO:Transparent Conducting Oxide)から作られる。特に、導電性透明層4は、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)又はアンチモンスズ酸化物で形成することができる。しかしながら、導電性透明層4を、例えば導電性ポリマーフィルムで、形成することも可能である。列方向の接続と行方向の接続とが交差する領域7においては、全ての場合において、これらの接続は、お互いに絶縁されるように、形成されており、それは、例えば、絶縁層をそれらの間に配することにより実現される。
【0033】
タッチセンサ素子4xのそれぞれの行は、それぞれ接触構造体2の一領域により形成された端子6に、導電性接触構造体2により、接続されている。同様に、タッチセンサ素子4yのそれぞれの列が、それぞれ同様に接触構造体2の一領域から形成された端子6に、接触構造体2により、更に接続されている。接触端子6は、電子起動/評価ユニットへの電気接続を提供する目的で形成され、これにより、タッチセンサ装置10への接触を検出しその位置について評価するために、タッチセンサ素子4x、4yの電極にそれぞれ電圧を印加することが可能となる。接触端子6は、例えば、これに、例えばはんだ付け又はろう付け、導電性接着剤による接着取り付け、ボンディング、等により、タッチセンサ装置10の接続ケーブルを取り付けることができる領域として形成される。
【0034】
タッチセンサ装置10の個々の構成要素の構造を、図2を参照しつつ、以下に詳述する。図2には、タッチセンサ装置10の様々な領域B1、B2、B3及びB4が描かれている。領域B1は、接触端子6の領域に位置している。領域B2は、接触構造体2が形成されるが導電性透明層4は形成されない領域である。領域B3は、接触構造体2が導電性透明層4と接触させられる領域に位置している。領域B4は、接触構造体が形成されておらず導電性透明層4のみが形成された領域に位置している。
【0035】
領域B1において、接触端子6は、接触構造体2の材料から基板1上に形成される。接触端子6は、陰極スパッタリングにより基板に成膜されたMoxTay層(ここで、0.02≦y≦0.15である。)から形成される。この領域B1においては、接触端子6の表面は、後で電気的接触を作るために露出している。
【0036】
領域B2においては、タッチセンサ素子4x、4yの接触のための接触構造体2を形成するために、MoxTay層(ここで、0.02≦y≦0.15である。)が基板1上に成膜される。この層の上には、例えばシリコン窒化物からなっていてもよい光学的に透明な保護層5が成膜される。保護層5は、接触端子6を有する接触構造体2及び導電性透明層4の形成後に、例えば化学蒸着法(CVD)により成膜することができる。
【0037】
領域B3においては、MoxTay層(ここで、0.02≦y≦0.15である。)を備える接触構造体2が、基板1上に成膜され、そして、それに直接接触して、導電性透明層4が成膜される。導電性透明層4は、例えば陰極スパッタリングにより、設けられる。この領域B3においては、接触構造体2及び導電性透明層4は、基板1側とは反対側が、保護層5により覆われている。
【0038】
領域B4には、1つ以上のタッチセンサ素子が存在する。この領域B4において、導電性透明層4が基板1上に成膜されており、この層は、基板1側とは反対側が、保護層5により覆われている。
【0039】
上述のタッチセンサ装置を製作するための製造プロセスにおいて、接触構造体2及び接触端子6が、陰極スパッタリング(スパッタ成膜)により、基板1上に成膜される。この成膜においては、MoxTay(ここで、0.02≦y≦0.15である。)から成るターゲット領域を有するスパッタリングターゲットが用いられる。MoxTayをスパッタリングターゲットとすることにより、この構造体を製作するための被覆法として、低コストな陰極スパッタリングを用いることができる。成膜条件を適正に選択することにより、特にガラス基板の場合に、基板1上の接触構造体2及び接触端子6の優良な付着性を達成することができる。好適な成膜条件の例は、例えば、DC電圧出力密度を5〜10W/cm2、アルゴン作用ガスの圧力を2.5×10-3〜7.5×10-3mbar、そして基板温度を室温〜150℃とした、直流陰極スパッタリング(直流スパッタリング)である。
【0040】
製造プロセスにおいて、導電性透明層4及びMoxTay層は、湿式化学エッチングプロセスと組み合わせたフォトリソグラフィーにより構築される。この場合、エッチングは、好ましくは、酢酸を加えてもよいリン酸及び硝酸からなるエッチング液(PANエッチング液)により実施される。この場合のリン酸比率は、好ましくは、60〜90重量パーセント、硝酸比率は、好ましくは、1〜12重量パーセント、そして酢酸比率は、好ましくは、0〜20重量パーセントであり、残部は水で構成されるが、また、湿潤剤(フッ化物含有化合物又はアニオン性添加剤)を含有させてもよい。保護層5は、湿式又はプラズマエッチングにより構築される。
【0041】
タッチセンサ装置10の使用に当っては、電圧が、公知の方法で、電子評価/制御ユニットによって、タッチセンサ素子4x、4yに印加される。電子評価/制御ユニットは、タッチセンサ素子4x、4yに、指、トレーサー又は他の何らかの物体が触れた又はそれらが接近したことにより生じる容量変化を検知し、そこからタッチセンサ装置上におけるユーザー入力のx/y座標を、同様に公知の方法により計算する。
【0042】
実施例1の場合、多層構造の接触構造体を有する公知のタッチセンサ装置と比較すると、タッチセンサ装置の構造は、より単純化されている。
【実施例2】
【0043】
実施例2について、図1及び図3を参照しつつ、以下に説明する。実施例2は、接触構造体の構造のみが実施例1と異なる。説明の重複を避けるために、実施例1からの相違点だけを以下に説明する。同じ部品には同じ符号が付けられている。
【0044】
MoxTay層(ここで、0.02≦y≦0.15である。)のみにより接触構造体2が形成される実施例1からの相違点として、実施例2における接触構造体2’、3は多層構造を有している。図3に示す例においては、接触構造体は、層3を有しており、その上にMoxTay層2’(ここで、0.02≦y≦0.15である。)が形成されている。層3は、Al、Cu、Au、Ag、Al含有率≧90原子パーセントのAl合金、Cu含有率≧90原子パーセントのCu合金、Au含有率≧90原子パーセントのAu合金、又はAg含有率≧90原子パーセントのAg合金から形成される。層3は、好ましくは、Al又はAl合金から形成される。層3は、陰極スパッタリングにより、基板上に成膜される。MoxTay層2’(ここで、0.02≦y≦0.15である。)は、陰極スパッタリングにより、この金属層3上に成膜される。
【0045】
実施例2に基づくタッチセンサ装置によれば、実質的に実施例1と同じ利点が得られるが、更に詳細に、以下に説明する。しかしながら、実施例2に基づく解決法の場合、実施例1と比べて導電率がより高い接触構造体を提供することが可能である。というのは、層3がMoxTay層(ここで、0.02≦y≦0.15である。)よりも高い導電率を示すからである。例えば、300nm厚のMoxTay層は、約11マイクロオームcmの抵抗を有しており、250nm厚のAl層及び50nm厚のMoxTay層の2層から成る層は、約3.5マイクロオームcmの抵抗を有している。
【0046】
変形例
実施例2の変形形態によれば、接触構造体は、3層構造を有する。即ち、MoxTay層(ここで、0.02≦y≦0.15である。)が基板上に成膜され、この層上に、層3(実施例2において説明したもの)が成膜され、そしてMoxTay(ここで、0.02≦y≦0.15である。)の更なる層2’が、金属層3の上に成膜された。多層構造とすることで、本変形形態に基づく層構造は、特に基板1がガラスから成る場合に、特に良好な基板1への付着性を実現する。
【0047】
本発明に基づく解決法で実現される利点について、以下に、更により詳細に説明する。大気中の水分、水、汗等に対する高い耐腐食性が、少なくとも1層のMoxTay層(ここで、0.02≦y≦0.15である。)を有する接触構造体2を備えるタッチセンッサ装置により、実現される。更には、大気中の酸素及び周囲空気中の他の酸化性物質に対する高い耐酸化性が実現される。同時に、従来の湿式化学エッチングをフォトリソグラフィー技術と組み合わせることにより、良好な構造化能力(Structurability)も提供される。接触構造体は、高度な導電性及び基板1の材料への良好な付着性を示す。導電性透明層4に対する低移動抵抗を有する良好な電気的接触性は、MoxTay層(ここで、0.02≦y≦0.15である。)により実現される。陰極スパッタリング(スパッタ成膜)によるMoxTay層(ここで、0.02≦y≦0.15である。)の成膜のため、この成膜は安定しており、制御し易く、低コストの被覆プロセスによって実施され、これは、大面積基板であっても適用可能である。
【0048】
タッチセンサ装置全体の製造プロセスは、一般的な薄膜技術を使って実施される。各層は、まず、PVD(物理蒸着)又はCVD(化学蒸着)プロセスにより基板上の大面積に亘って被覆され、次いで、フォトリソグラフィープロセスにより(その都度)構造化される。その場合に必要とされるエッチングステップは、例えば湿式化学的に又は乾式エッチングプロセスにより、実施され、金属層については、主として湿式化学エッチングプロセスが想定されている。この場合の湿式化学エッチングは、例えばリン酸及び硝酸の混合物又はリン酸、硝酸及び酢酸の混合物により実施することができる。少なくとも1層のAl又はAl合金層がある場合は特に、以下のプロセスが含まれる:
【0049】
【数1】

【0050】
湿式化学エッチングの間、式R2に示されるように酸の陽子(H+イオン)により又は式R3に示されるように硝酸イオンにより、金属層は酸化される。酸化され溶解された金属種は、式R5に示されるように、リン酸イオンによって溶液中で安定化される。
【0051】
化学的観点から見れば、回避したい望ましくない腐食又は大気酸化と、製造工程に必要とされる湿式エッチングとは同じプロセスであるが、しかし、これらは異なる周囲条件及びpH条件下で生じる。腐食及び大気酸化は、可能な限りゆっくりとした反応速度で起こるように又は全く生じさせないように意図される一方、湿式エッチング及び構造化プロセスの間に生じさせる酸化プロセスは、所望されるものであり、その反応は十分に早い速度で起きなければならない。接触構造体の形成に使用されるMoxTay層(ここで、0.02≦y≦0.15である。)は、これらの相反する条件に合致するものである。
【0052】
この場合におけるMoxTay層(ここで、0.02≦y≦0.15である。)は、高い導電性も提供する。接触構造体が多層構造で形成される場合、そして特に、Al又はAl合金からなる層を有する場合、MoxTay層(ここで、0.02≦y≦0.15である。)は、更に、その表面における絶縁性酸化アルミニウム層の形成をも阻止する。また、特に、このような多層構造の場合、MoxTay層(ここで、0.02≦y≦0.15である。)は、層構造において優れた応力補償能力をもたらす。基板中に生じ及びAl又はAl合金を通じて層構造に生じ、基板表面に平行な面の中で作用する引張応力は、MoxTay層(ここで、0.02≦y≦0.15である。)により生じ基板表面に平行な面の中で同様に作用する圧縮応力によって、特に良好に相殺される。
【0053】
操作中、外側に面して配置されることになるタッチセンサ装置の実装例について、実施例により、上記に説明したが、例えば、タッチセンサ装置を基板の反対側、即ち裏側、に配置することも可能である。本明細書では、両電極を基板の同じ側に配置した例を説明してきたが、例えば、基板の一方の側に一方の電極を配置し、基板の他方の側にもう一方の電極を配置することも可能である。
【0054】
タッチセンサ装置の電極が基板面上にチェス盤状に配置される実施例を説明したが、電極は、他の何らかのパターン又は他の格子状に配置されてもよい。更に、例示した実施例のように電極を基板面上で相互に隣り合わせに並べるのではなく、絶縁層で分離して相互の上に重ねて配置してもよい。この場合、電極は、例えば、大面積に亘って作られてもよく、又は、例えばx/y格子中に構造化されたものでもよい。更に、特にこの場合は、多数のタッチセンサ素子を有する格子状配列でもよく、これにより、同時に様々な位置への接触を検知すること(いわゆるマルチタッチ実装)ができる。
【0055】
実施例により、接触構造体が基板上に成膜され、そしてタッチセンサの少なくとも1層の導電性透明層が接触構造体上に部分的に成膜された実装例を説明したが、例えば、接触構造体が導電性透明層上に部分的に成膜された、逆の配置とすることも可能である。換言すると、層構造体を形成し構造化する際に、望ましい順番を選択することが可能であり、このことは、また、特に、構造化のためのエッチングプロセスにおける選択性を考慮したものである。
【符号の説明】
【0056】
1 基板
2 接触構造体
2’ 多層接触構造体の1層
3 多層接触構造体の1層
4 タッチセンサ素子
5 保護層
6 接触端子
7 行方向の接続と列方向の接続とが交差する領域
10 タッチセンサ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的に透明な基板(1)、前記基板(1)上に形成された、少なくとも1層の導電性透明層(4)を有する1つ以上の光学的に透明なタッチセンサ素子(4x、4y)、及び、前記導電性透明層(4)の電気的接触用の1つ以上の接触構造体(2;2’、3)とを備えてなるタッチセンサ装置(10)であって、前記接触構造体(2;2’、3)が、前記導電性透明層(4)に直接接触する、1層以上のMoxTay層(2、2’)(ここで、0.02≦y≦0.15である。)を有することを特徴とするタッチセンサ装置(10)。
【請求項2】
0.03≦y≦0.09であることを特徴とする請求項1に記載のタッチセンサ装置。
【請求項3】
前記接触構造体(2’、3)が多層構造を有しており、Al、Cu、Ag、Au、Al含有量≧90原子パーセントのAl合金、Cu含有量≧90原子パーセントのCu合金、Ag含有量≧90原子パーセントのAg合金又はAu含有量≧90原子パーセントのAu合金から成る少なくとも1層の層(3)を有することを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載のタッチセンサ装置。
【請求項4】
前記接触構造体(2;2’、3)が電子起動・評価ユニットへの接続用に1つ以上の接触端子(6)を有し、前記接触端子(6)の表面が少なくとも1層のMoxTay層(2、2’)(ここで、0.02≦y≦0.15である。)により形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のタッチセンサ装置。
【請求項5】
前記タッチセンサ装置が、タッチセンサ画面(タッチスクリーン)の一部を構成するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のタッチセンサ装置。
【請求項6】
前記タッチセンサ装置が、格子状に配列された複数のタッチセンサ素子(4x、4y)を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のタッチセンサ装置。
【請求項7】
前記少なくとも1層の導電性透明層(4)が、透明導電酸化物(TCO)、透明導電ポリマー又はカーボンナノチューブを含有してなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のタッチセンサ装置。
【請求項8】
前記光学的に透明な基板(1)の、前記タッチセンサ装置とは反対側の、裏面が、液晶ディスプレイの1つ以上の構成要素用の基板を形成するものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のタッチセンサ装置。
【請求項9】
光学的に透明な基板(1)上に形成されたタッチセンサ装置(10)の光学的に透明なタッチセンサ素子(4x、4y)の導電性透明層(4)に直接接触した接触構造体を形成するためのスパッタリングターゲットの使用であって、前記スパッタリングターゲットがMoxTay(ここで、0.02≦y≦0.15である。)を含有してなることを特徴とする使用。
【請求項10】
0.03≦y≦0.09であることを特徴とする請求項9に記載の使用。
【請求項11】
導電性透明層(4)に接触させるための接触構造体を構築するためのエッチング液の使用であって、前記接触構造体が少なくとも1層のMoxTay層(2、2’)(ここで、0.02≦y≦0.15である。)を有し、そして前記エッチング液がリン酸及び/又は酢酸及び/又は硝酸を溶液構成要素として含むことを特徴とする使用。
【請求項12】
前記リン酸の比率が60〜90重量パーセントであり、前記酢酸の比率が0〜20重量パーセントであり、そして前記硝酸の比率が1〜12重量パーセントであることを特徴とする請求項11に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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