説明

タッチセンス式表示装置

パッシブ基板(206、306)、アクティブ基板(102、308)及びパッシブ基板とアクティブ基板との間に配置された表示材料(132)を有するタッチセンス式表示装置であって、該表示装置の画素を駆動する駆動回路(104)、及びタッチ検出回路(201、304)がアクティブ基板(102、308)に配置されたタッチセンス式表示装置が提供される。タッチ検出回路(201、304)は、第1及び第2の電極(224、310、408、410、508、608、610、702、704、706)を備える少なくとも1つの部品を有し、電極(224、310、408、410、508、608、610、702、704、706)はタッチ入力に応じて相対的に移動するように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタッチセンス式表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
手のひらサイズや携帯式の家電機器及び計算機器の市場は、この10年間で大いに多様化してきている。流れは、より小型でますます多量の情報を表示可能な機器へと向かっており、より高解像度の表示装置の性能改善をもたらしてきた。
【0003】
さらに、ユーザインターフェースが大いに進歩してきており、直感的でわかりやすい相互作用機構の提供に多くの努力が注がれている。ユーザ入力を受け取るために度々用いられる方法は、機器にタッチスクリーンを組み込むものである。これにより、ユーザがタッチセンス式表示装置に触れることでユーザとの相互作用が可能になる。
【0004】
圧力センサ構造を有するAM(アクティブマトリックス)型エレクトロルミネッセンス表示装置が特許文献1に開示されており、その圧力センサ構造は、透明上部電極層、下地の導電性バリア層、及び透明上部電極層と下地の導電性バリア層との間に積層された誘電性又は高抵抗性の材料から成る圧縮性の層を有する。この積層体はビューアーとエレクトロルミネッセント画素の配列が設けられる回路基板との間に位置付けられる。この積層体に圧力が加えられると、電極層と導電性バリア材との間隔が変化し、接触点に近接する電極の誘電体を横切るキャパシタンス、又は高抵抗材料を横断する抵抗に測定可能な変化を生じさせる。表示装置は多数の層を有するため、得られるタッチセンス式表示装置の厚さを有意に増大させている。これはタッチセンス式表示装置の光学特性を低下させ、タッチスクリーンの実現に好適な光学特性を有する材料を用いることを必要にしている。従来技術のタッチセンス式表示装置の性能は、空間解像度、薄型、及び表示性能に関する要求を満たせないという問題がある。
【特許文献1】国際公開第03/079449号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、空間解像度、薄型、及び表示性能に関して性能改善されたタッチセンス式表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に従ったアクティブ基板を有するタッチセンス式表示装置においては、当該表示装置の画素を駆動する駆動回路、及びタッチ検出回路が前記アクティブ基板に配置されている。前記タッチ検出回路は、第1及び第2の電極を備える少なくとも1つの部品を有し、前記第1及び第2の電極はタッチ入力に応じて相対的に移動するように配置されている。
【0007】
タッチ検出回路及び駆動回路をアクティブ基板に集積することは、さらなるタッチ検出層が追加される必要がないため、本質的に薄型化された小型のタッチセンス式表示装置を可能にするものである。ディスプレー材料とビューアーとの間の層の削減によって表示性能が改善されるとともに、厚さの低減によって空間的により正確なタッチ検出がもたらされる。
【0008】
本発明に従ったタッチセンス式表示装置のさらなる利点は、駆動回路とタッチ検出回路とが一定の空間的相対関係を有する、すなわち、画素のように配列されているため、較正が不要なことである。この場合、電極の変位によってタッチ入力が各画素で検出可能にされる。具体的には、タッチ入力はタッチ検出回路のインピーダンス変化を検出することによって検出可能である。タッチ入力を検出する手段はアクティブ基板に配置されてもよいし、例えば表示装置を有する電子機器などの表示装置の外部に配置されてもよい。
【0009】
パッシブ基板と前記タッチ検出回路との間に加えられた力を伝える圧力集結器が、前記パッシブ基板と前記第1の電極との間に配置されてもよい。これにより、タッチされた表面からタッチ検出回路までの力の伝達が改善される。
【0010】
前記タッチ検出回路は前記第1及び第2の電極を備えるキャパシタを有してもよい。このキャパシタは前記第1及び第2の電極間に少なくとも1つの誘電体層を有する。前記誘電体層の少なくとも1つは前記電極間に隙間を形成する後退部を有してもよい。これらの特徴により、タッチ検出回路を適切に実施することが可能になる。
【0011】
前記キャパシタは同時に前記駆動回路の記憶キャパシタとして機能することも可能である。これは、より小型の解法を実現する。
【0012】
第1の誘電特性及び機械的特性を備える第1誘電体、及び第2の誘電特性及び機械的特性を備える第2誘電体が前記電極間に配置されてもよい。これにより、特性がより予測可能で堅牢なタッチ検出回路が得られる。
【0013】
前記第1誘電体層は、前記第1及び第2の電極間の領域の一部分にわたる第1の後退部を有し、前記第2誘電体層は、前記第1及び第2の電極間の前記領域と同一部分にわたる第2の後退部を有し、前記第1及び第2の後退部が前記電極間の前記隙間を形成してもよい。これにより、タッチ入力が存在しないときに所定のインピーダンスを有するタッチ検出回路が実現されるとともに、タッチ検出のための動的部分は電気特性の処理性を向上させることが可能になる。
【0014】
前記タッチ検出回路は、前記第1及び第2の電極を備える犠牲トランジスタを有してもよく、前記犠牲トランジスタは前記第1及び第2の電極間に隙間を備えている。これにより、タッチ検出回路を適切に実施することが可能になる。
【0015】
前記犠牲トランジスタが前記第1及び第2の電極間にアモルファスシリコン(a-Si)層及び誘電体層の少なくとも一方を有してもよい。前記a-Si層及び前記誘電体層の少なくとも一方は前記隙間を形成する後退部を有してもよい。これを実施することは通常の製造プロセスに統合するのによく適している。
【0016】
前記犠牲トランジスタは薄膜トランジスタでもよい。薄膜技術は本発明を実施するのによく適している。
【0017】
本発明に特有の機構は集積されたタッチ検出素子を備える表示装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の実施形態の他ならぬ利点は、厚さが薄くされたタッチセンス式表示装置が実現されることである。さらなる利点は、駆動回路とタッチ検出回路との双方が同一プロセスでアクティブ基板に作成可能であるため、タッチセンス式表示装置の製造コストが削減されることである。さらなる利点は、各タッチ検出回路が画素に結合され得るので、接触点が高精度且つ高解像度で検出されることである。さらなる利点は、タッチ検出機能をアクティブマトリックス(AM)型ディスプレー技術に導入するとき表示画像の解像度及び鮮明度が維持されることである。これらのマルチレイヤー薄膜AM技術は、表示装置自体に表示駆動装置、周辺駆動電子技術、及び例えばタッチ検出素子といった追加機能を集積する可能性を有するために魅力的なものである。
【0019】
本発明の実施形態の他の特徴に従って、検出手段は同時に存在する複数の接触点を検出するように動作可能である。好ましくは、検出手段は複数の第1及び第2の電極対の間のキャパシタンス変化を同時に検出可能である。これは、アクティブマトリックス型構造の表示装置及びその集積タッチセンサによって可能である。このことの利点は、タッチセンス式表示装置を有する機器の適応性及び機能の向上である。
【0020】
本発明の実施形態の別の特徴に従って、アクティブマトリックス型表示装置の複数の画素に対応して複数のタッチセンサが整列される。これにより、タッチ検出素子と表示画像との間の対応が非常に単純且つ正確になり得るとともに、較正の必要性を除去あるいは緩和し得る場合がある。好ましくは、アクティブマトリックス型表示素子の記憶キャパシタ及び/又は犠牲TFTにタッチ検出素子を整合させることによって位置整合が達成される。
【0021】
本発明の実施形態の特徴に従って、タッチ検出素子は、そのキャパシタンスを変化させるように機能する微小電気機械(Micro-Electromechanical;MEM)キャパシタ又は犠牲TFTを有する。これにより特に好適に実施することが可能になる。具体的には、これはプロセスの互換性をもたらす。従って、例えばアモルファスシリコンに基づくアクティブマトリックス型表示装置等のタッチセンス式表示装置に関して、製造上の複雑さ及びコストが低減される。
【0022】
本発明のこれら及び他の態様、特徴及び利点は、以降で述べられる実施形態を参照して明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
高性能、高速ビデオ、大型及び低電力を兼ね備える表示装置への流れにより、ディスプレー技術はアクティブマトリックス(AM)型液晶ディスプレー(LCD)技術の方向へと進んでいる。本発明は様々なアクティブマトリックス型表示装置に適用可能である。以下の具体的な実施形態は単に例示的にアクティブマトリックス型液晶ディスプレー(AMLCD)装置に関して本発明を説明するものである。その他の型式のアクティブマトリックス型表示装置、例えば、電気泳動インクを用いる装置、ポリマーLED、OLED、プラズマディスプレー及びそれらのフレキシブル型、が用いられてもよいことは認識されるところである。
【0024】
AMLCD技術へのタッチセンス機構の統合を例示するため、典型的なAMLCD100の概略断面図を示す図1を参照する。液晶132がパッシブ基板126とアクティブ基板102との間に挟み込まれている。また、各画素はアクティブ基板102上に支持された駆動TFT104及び記憶キャパシタ106を備えている。
【0025】
駆動TFT104はゲート108及び、一方がソース、他方がドレインとして機能する2つの電極110、112を有している。駆動TFT104はさらに、第1誘電体層114、アモルファスシリコン(a-Si)層116、第2誘電体層118及び保護層120を有している。
【0026】
記憶キャパシタ106は第1電極122、第1誘電体層114及び第2電極124を有している。
【0027】
AMLCD100はさらに、カラーフィルタ128及びブラックマトリックス層130を有するパッシブ基板126を有している。ブラックマトリックスは幾つかの目的を果たし得るものであり、例えば、TFTを外部光から遮断し、TFT並びに相互接続の列接続及び行接続を視聴者から隠し、そしてコントラストと色純度とを向上させる。
【0028】
TFT及び記憶キャパシタを形成するため、アクティブ基板上に薄膜の積層体が堆積・構築される。これらの構成要素は少なくとも3つの層を有しており、それらの2つは導電性で1つは絶縁性である。故に、タッチセンサを実現することに少なくとも2つの導電性端子が利用可能である。
【0029】
本発明の概念は、スクリーンをタッチするときに加えられる力の電気信号への変換が、例えば容量性MEMセンサ又はMEMスイッチといった微小電気機械(Micromachined Electro Mechanical;MEM)素子によって達成されることである。
【0030】
MEMセンサは互いに面する2つの電極を有し、一方の電極は所定方向に移動可能にされる。力が一方の電極に加えられると電極の面が互いに近づくように動き、それによりセンサのキャパシタンスが増加し、あるいはスイッチが最終的に2つの電極を接続する場合には抵抗性の接続が形成される。従って、タッチによって検出可能なインピーダンス変化がもたらされる。センサは画素に結合されているため、タッチ位置は正確に導出され得る。
【0031】
MEMキャパシタ又はMEMスイッチは薄膜集積回路にて実現可能であり、数回のマスク工程のみを必要とする。さらに、MEMキャパシタ又はMEMスイッチは比較的に安価、高速、小型、低損失且つ低消費電力である。これらの特徴により、これら素子をAMLCD技術のタッチセンス式表示装置に統合することが可能となる。
【0032】
MEMキャパシタは通常はアクチュエータとして利用されており、そのインピーダンス特性を変化させるために電界が用いられる。本発明では、代わりに、それら素子はセンサとして利用される。従って、センサは各画素に設けられ得る。
【0033】
容量性MEMセンサを作成するため、所定位置でのエッチングによって、2つの固定電極間に挟まれた誘電体層の積層体から1つ又は複数の犠牲層が除去され得る。エッチングはウェットエッチング又はドライエッチングの何れでもよい。AMLCDでは、図2に示されるように記憶キャパシタ、若しくは図3に示されるように駆動TFT及び犠牲TFTを有するTFT構造の犠牲TFTの何れか、又はそれらの双方(図示せず)でこのエッチングが為される。なお、図3では駆動TFTは図示されていない。あるいは、MEMセンサを設けるために駆動TFT及び/又は記憶キャパシタが改変されないように、専用のMEMセンサ構造が導入されてもよい(図示せず)。
【0034】
図2は、タッチセンサが記憶キャパシタ201に集積された、本発明に従ったタッチセンサの一実施例を示している。基本方針は、第1及び第2のキャパシタ電極222、224間に隙間202が設けられるように誘電体層214の一部を除去することである。カラーフィルタ基板226及びカラーフィルタ228を有するパッシブ基板206と第2のキャパシタ電極との間に圧力集結器(pressure concentrator)204が設けられている。パッシブ基板206がタッチされると、力は圧力集結器204を介して第2のキャパシタ電極224に伝えられることになる。従って、第2のキャパシタ電極224が動かされ、キャパシタ201のキャパシタンスが変化する。そして、キャパシタンス変化は検出可能であるので表示装置のタッチ位置が検出可能となる。さらに、圧力集結器204は表示装置のパッシブ基板とアクティブ基板との間のスペーサとしても機能する。
【0035】
図3は本発明に従った他の方式を示しており、アクティブ基板308上の犠牲TFT304によって、すなわち、さらなるTFTを各画素に追加することによってタッチセンサが形成されている。a-Si層316、誘電体層318又はそれらの双方の一部が除去されている。パッシブ基板306と保護層320との間に圧力集結器302が設けられている。パッシブ基板306がタッチされると、力は圧力集結器302を介して犠牲TFT304の保護層320に伝えられることになる。あるいは、アクティブ基板308がタッチされる場合、反力が圧力集結器302を介して犠牲TFT304の保護層320に伝えられる。従って、電極310、312が動かされ、犠牲TFT304のキャパシタンスが変化する。そして、キャパシタンス変化は検出可能であるので表示装置のタッチ位置が検出可能となる。さらに、圧力集結器302は表示装置のパッシブ基板とアクティブ基板との間のスペーサとしても機能する。
【0036】
図4は、全体的に大きくされた、第1誘電体層402及び第2誘電体層404を有する本発明の一実施形態に従った記憶キャパシタ構造400を示しており、双方の誘電体層402、404が記憶キャパシタ位置406で除去されている。このセンサは、タッチされていないときに、典型的な画素の典型的な記憶キャパシタが有するのと等しいキャパシタンスを有するように設計されている。センサがタッチされると、このキャパシタンスはキャパシタ400の作動電極408の変位に反比例して増大する。電極408の変位が大きいとキャパシタ電極408、410の表面が接触し、2つのキャパシタ電極間で、キャパシタンスの代わりに電気短絡回路、又は分離抵抗の劇的な低下が検出できることになる。
【0037】
図5は、構造400に似た構造500がタッチセンサ及び記憶キャパシタの双方として機能する、本発明のさらなる実施形態を示している。センサがタッチされていないとき、区域503及び501のキャパシタンスは、典型的な画素で用いられたときの典型的な記憶キャパシタのキャパシタンスに等しい総キャパシタンスを与える。構造500は、第1及び/又は第2の誘電体層502、504に向かうアクセス開口を設けるために追加マスク工程を1つ必要とする。双方の誘電体層502、504の一部506が除去されている。従って、誘電体層502、504が残存する部分に設けられる記憶キャパシタの不変キャパシタンス503と、部分506の誘電体層が除去されて設けられる、容量性センサ及び記憶キャパシタの一部としての機能を果たす可変キャパシタ部分501とが存在する。センサがタッチされると、センサ部分501のキャパシタンスがセンサの作動電極508の変位に反比例して増大する。従って、並列接続されている部分503及び501全体のキャパシタンスが増大する。センサの構築において、部分503及び501の割合に応じて、有意なキャパシタンス変化を検出可能とするために作動電極508に必要な変位は大きくも小さくもなり得る。こうして、タッチセンサに適した作動力が実現され得る。柔らかいタッチを好むユーザもいれば、硬いタッチを好むユーザもいる。従って、どれだけの誘電体が除去されるかに応じて、実際にタッチを検出するために、より強い或いは弱い力が必要とされる。換言すれば、必要最低限の力は製造時に事前設定され、変更は不可能である。但し、全ての場合で、例えば1.2pFといった閾値は超えられなければならない。
【0038】
図6は、構造500に似た専用構造600を備える、本発明のさらなる実施形態を示している。構造600も同様に、センサとしても記憶キャパシタとしても機能を果たすことが可能である。この構造600の作成は、第1及び第2の誘電体層602、604に向かうアクセス開口を設けるために追加マスク工程を1つ必要とする。誘電体層602、604の一方、例えば第1の誘電体層602、が除去される。センサがタッチされていないとき、キャパシタンスは典型的な画素の典型的な記憶キャパシタのそれに等しく、好ましくは小さい誘電率(1に近い)を有する後退部606の媒体によって支配されている。後退部の媒体は如何なる適合材料にもすることができる。センサがタッチされ、第2のキャパシタ電極608及び第2の誘電体層604が動かされると、センサ600のキャパシタンスは誘電体層604によってますます支配されるようになり、キャパシタンスが増大する結果となる。この実施例では、適合材料の誘電率は記憶キャパシタに用いられる第1及び/又は第2の誘電体のそれより小さい。例えば誘電率が10の液晶材料が後退部内にあると仮定すると、第1及び第2の誘電体は約25の誘電率を有さねばならない。しかしながら、記憶キャパシタに用いられる第1及び/又は第2の誘電体の誘電率より大きい誘電率を有する適合材料もまた考えられる。
【0039】
残存する誘電体層604は変位させられる電極608の付加的な機械的支持をもたらすが、このことはセンサ600の機械的安定性に関して重要なことである。センサ構造600の電気等価回路は直列の2つのキャパシタであり、電極610及び後退部606によって形成される一方のキャパシタが、第2の誘電体層604及び電極608によって形成される第2の不変キャパシタと直列になっている。構造600の利点は大きなキャパシタンス変化をもたらすことである。変位の関数である有効キャパシタンスCeffはセンサ面積Aを用いて次式のように計算される:
【0040】
【数1】

ここで、全体の間隔をd、誘電率をε0、直列の記憶キャパシタ(残存する誘電体層604)の誘電率をεr、厚さをd1とした。
【0041】
一般に、AMLCDの記憶キャパシタは、表示更新サイクルの非駆動部分において画素の内容物が維持されるように、オフ状態にある画素のキャパシタンスに相当する、例えば265fFといったキャパシタンスを有する。従って、TFTの容量性負荷はオフ状態において約531fFである。オン状態では、典型的な画素のキャパシタンスは液晶の誘電率の異方性のために約2倍となる。画素がオン状態にあるときには、TFTの負荷は約800fFまで増大される。典型的な駆動TFTは約1pFに対処できるように設計される。
【0042】
画素のキャパシタンス変化を検出することは、その内容物を考慮することなくしては、画素がタッチされたことを必ずしも意味しない。このことは記憶メモリによって解決され得るが、それは表示モジュールのコストを上昇させることになる。本発明の利点は、記憶メモリが不要なことである。本発明においては、検出可能なキャパシタンス変化がTFTの駆動能力以上に十分に増大され得る。好ましくは、この増大はオン状態にある画素のキャパシタンスの50%以上とされる。駆動TFTを過負荷状態にするとき、負荷のキャパシタンスではなくキャパシタへの負荷電流を測定することによってTFTが過負荷状態であることを知りさえすればよく、電流検出回路は非常に高速である。
【0043】
さらなる一実施形態によれば、画素に関連するTFTの1つがセンサを形成する犠牲TFT、すなわち、画素の追加TFTとして使用される。図7は犠牲TFTのTFT構造700を示しており、TFT構造700はゲート702、誘電体層703、一方がソース、他方がドレインとして機能する第1電極704及び第2電極706、保護層708、ならびに隙間710を有している。上述の実施形態と同様に、スクリーンがタッチされるとキャパシタンス変化が検出されるが、TFT電子技術すなわち犠牲TFT内で検出される。この実施形態の利点は、例えば圧力集結器などの追加部品がブラックマトリックスマスクの下に隠されることである。ここで考慮すべき影響は、画素の駆動TFTのゲートキャパシタンスが増大され、それにより画素の動特性が変化することである。
【0044】
さらなる一実施形態に従って、タッチセンサ位置に圧力集結器を設けるために第2のマスク工程が追加される。その他の特徴は上述された実施形態の何れかの特徴と同様である。この実施形態の利点は、セルの隙間を定めるために、例えばガラス球体といった従来のスペーサを使用する必要がないことであり、それにより製造が容易になる。
【0045】
隙間を設けるために記憶キャパシタ又は犠牲TFTの犠牲層に向かう開口を設ける追加マスク工程が用いられることを除いて、AMLCDは従来のように製造される。犠牲層は、記憶キャパシタの1つ以上の誘電体層か、犠牲TFTのa-Si層及び1つ以上の誘電体層かの何れかである。本発明の実施形態の1つは、表示装置のパッシブ基板とタッチセンサとの間に加えられた力を伝えるタッチセンサとして機能する犠牲TFT又は記憶キャパシタと、パッシブ基板との間に配置される圧力集結器を設けるための第2の追加マスク工程をさらに有する。従って、圧力集結器はタッチセンサに配置される。このことの利点は、セルの隙間を定めるために、例えばガラス球体といった別個のスペーサが不要なことである。
【0046】
タッチ検出素子の頂部にある圧力終結器の光学特性は、それがビューアーとアクティブマトリックス型表示素子との間にあってユーザから視認され得る場合には重要である。これはタッチ素子が記憶キャパシタに集積される場合によくあることであり、故に、圧力集結器は透光性(translucent)材料から作られることが好ましい。
【0047】
他方、犠牲TFTの場合には、圧力集結器及びタッチ検出素子は、例えばブラックマトリックスマスクといった遮光体によってビューアーから離して配置されるため、ビューアーとアクティブマトリックス型表示素子との間にはない。
【0048】
従って、このような特定の場合にはタッチ検出素子の光学特性は重要でなく、具体的には、タッチ検出素子及び圧力集結器は、例えば半透明又は不透明な材料から作られてもよい。故に、改善された表示画像が得られる。
【0049】
タッチセンス式表示装置は複数のタッチセンサを有する。タッチセンサに付随するキャパシタンス変化の検出に基づいて位置を導出することが実用的且つ利便な実施方法である。タッチセンサからの電気信号は電気的な変化であり、関連するセンス増幅器は好ましくは電荷センス式増幅器である。これにより、キャパシタンス変化の特に好適な検出が提供される。
【0050】
上述のようなタッチセンス式表示装置を有する携帯機器は、本発明が特に実用的な目的を果たす一例である。タッチ検出機能を有する安価な薄型表示装置を提供する可能性により、本発明は望ましい携帯機器、例えば、携帯電話、携帯情報端末、ノート型コンピュータ、デジタルカメラ、ビデオカメラ録画機、メディアプレーヤ、又は電子計測機器の提供を可能にするものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】典型的なAMLCDを示す図である。
【図2】本発明に従った一方式を示す図である。
【図3】本発明に従った他の方式を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に従った、記憶キャパシタに集積されたタッチセンサを示す図である。
【図5】本発明の他の実施形態に従った、記憶キャパシタに集積されたタッチセンサを示す図である。
【図6】本発明の更なる実施形態に従った、記憶キャパシタに集積されたタッチセンサを示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に従った、犠牲TFTに集積されたタッチセンサを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクティブ基板を有するタッチセンス式表示装置であって、当該表示装置の画素を駆動する駆動回路、及びタッチ検出回路が前記アクティブ基板に配置されており、前記タッチ検出回路が、第1及び第2の電極を備える少なくとも1つの部品を有し、且つ前記第1及び第2の電極がタッチ入力に応じて相対的に移動するように配置されていることを特徴とするタッチセンス式表示装置。
【請求項2】
パッシブ基板をさらに有する請求項1に記載のタッチセンス式表示装置であって、前記パッシブ基板と前記タッチ検出回路との間に加えられた力を伝える圧力集結器が、前記パッシブ基板と前記第1の電極との間に配置されていることを特徴とするタッチセンス式表示装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のタッチセンス式表示装置であって、前記タッチ検出回路が前記第1及び第2の電極を備えるキャパシタを有し、前記キャパシタが前記第1及び第2の電極間に少なくとも1つの誘電体層を有し、且つ前記誘電体層の少なくとも1つが前記電極間に隙間を形成する後退部を有することを特徴とするタッチセンス式表示装置。
【請求項4】
請求項3に記載のタッチセンス式表示装置であって、前記キャパシタが前記駆動回路の記憶キャパシタとしても機能することを特徴とするタッチセンス式表示装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載のタッチセンス式表示装置であって、第1の誘電特性及び機械的特性を備える第1誘電体、及び第2の誘電特性及び機械的特性を備える第2誘電体が前記電極間に配置されていることを特徴とするタッチセンス式表示装置。
【請求項6】
請求項5に記載のタッチセンス式表示装置であって、前記第1誘電体層が、前記キャパシタのキャパシタンスを示す前記第1及び第2の電極間の領域の一部分にわたる第1の後退部を有し、前記第2誘電体層が、前記第1及び第2の電極間の前記領域と同一部分にわたる第2の後退部を有し、且つ前記第1及び第2の後退部が前記電極間の前記隙間を形成していることを特徴とするタッチセンス式表示装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載のタッチセンス式表示装置であって、前記タッチ検出回路が、前記第1及び第2の電極を備える犠牲トランジスタを有し、且つ前記犠牲トランジスタが前記第1及び第2の電極間に隙間を備えていることを特徴とするタッチセンス式表示装置。
【請求項8】
請求項7に記載のタッチセンス式表示装置であって、前記犠牲トランジスタが前記第1及び第2の電極間にアモルファスシリコン層及び誘電体層の少なくとも一方を有し、且つ前記アモルファスシリコン層及び前記誘電体層の少なくとも一方が前記隙間を形成する後退部を有することを特徴とするタッチセンス式表示装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のタッチセンス式表示装置であって、前記犠牲トランジスタが薄膜トランジスタであることを特徴とするタッチセンス式表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−533021(P2007−533021A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507893(P2007−507893)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【国際出願番号】PCT/IB2005/051155
【国際公開番号】WO2005/101178
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】