説明

タッチパネルの制御装置および制御方法

【課題】 マイグレーションの発生を抑制するタッチパネルの制御装置および制御方法を実現する。
【解決手段】 操作面上の操作位置を検出してこの操作位置に対応した座標入力信号を出力するタッチパネルの制御装置1は、タッチパネル近傍の温度および湿度の双方を検出する温度および湿度センサ11と、温度および湿度センサ11が検出した温度および湿度が、タッチパネルにマイグレーションが発生しない許容温度および許容湿度で画定される使用許容範囲内にあるか否かを判定する判定手段12と、上記検出した温度および湿度が使用許容範囲内にないと判定手段12が判定したとき、操作位置の検出処理を停止する停止手段13と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータ等の各種情報処理装置への入力用のタッチ操作面を有するタッチパネルの制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ等の各種情報処理装置に対する座標入力装置の1つとして平面入力パネル(「平面入力パッド」とも称する。)が用いられている。平面入力パネルは、座標入力装置としての機能を有するタッチ操作面(以下、単に「操作面」と称する。)が透明もしくは不透明なタッチパネルと、このタッチパネルの背後に設けられ、タッチパネルに向けて画像を表示するLCDなどの表示手段とを有する。平面入力パネルのタッチパネルの操作面上をタッチ操作することで、この操作位置に対応した座標入力信号をコンピュータ等の各種情報処理装置に出力可能であるとともに、タッチパネルを介して表示手段が表示する画面を閲覧することも可能である。
【0003】
平面入力パネルは、操作が容易であり座標入力機能と画面表示機能とを同時に有するという特性から、PDAなどの情報携帯端末、POS、KIOSK端末、銀行のATM、カーナビゲーションシステム、切符の自動券売機や自動精算機など、装置本体に体積的制限がある小型もしくは薄型の情報処理装置や、幅広い世代のユーザに使用される機会を有する情報処理装置の入力および表示装置に利用されている。
【0004】
絶対座標入力であるタッチパネルは様々な方式で実現されるが、このうち、アナログ抵抗膜方式は、タッチパネルの操作面上を指もしくはペン等で押下もしくは接触して操作することができることから多用されている。
【0005】
図10は、従来例によるアナログ抵抗膜方式のタッチパネルを例示する断面図である。
【0006】
図10(a)に示すように、アナログ抵抗膜方式のタッチパネル2は、フィルム51とガラス52との間の各々対向する面に、透明導電物質であるITO(インジウム錫酸化物)からなるITO膜53および54が成膜されている。フィルム51の、ガラス52に対向する面とは反対側の面が、タッチパネル2の操作面となる。フィルム51とガラス52とは、ITO膜53および54が成膜された各面の端部において、絶縁部材からなる両面テープ57によって互いに貼着される。また、ガラス52のフィルム51に対向する面に成膜されたITO膜54の面上には、外的要因によるフィルム51の水平方向の撓みで誤接触が生じないようにするために、ドットスペーサ55が設けられる。
【0007】
ITO膜53は、その面上に沿う第1の方向に電圧が印加されるよう、その両端に電極が設けられる。また、ITO膜54は、その面上に沿う第2の方向に電圧が印加されるよう、その両端に電極が設けられる。第1の方向と第2の方向とは互いに直交している。
【0008】
図10(b)に示すように、例えばペン56を使って、タッチパネル2の操作面となるフィルム51を押下すると、フィルム51はほぼ垂直方向に撓み、その結果、ITO膜53とITO膜54とが接触する。この接触点の位置を検出してXY座標平面上の座標信号を生成する。一般にアナログ抵抗膜方式のタッチパネルにおいては、フィルム51もしくはガラス52の面上の端部XY方向に設けられた電極に電圧(以下、「駆動電圧」と称する。)を印加したとき、接触点の電位は一方の面を通じて駆動電圧の分圧値として検出されるが、この分圧値から接触点の位置が算出される。
【0009】
この従来のアナログ抵抗膜方式のタッチパネル2は、高温高湿の使用環境下では、タッチパネルの操作面上の操作位置を検出するための上記駆動電圧の印加により、ITO膜53とITO膜54と間の絶縁部分にマイグレーションが発生しやすい。マイグレーションは、電圧が印加された金属導電部材間に絶縁部材が接している場合、絶縁部材の吸湿、または水分の吸着に伴い、金属がそれらの表面または内部に移行する現象をいう。マイグレーションが進行すると絶縁不良や配線間短絡による性能低下や故障が生じる。
【0010】
マイグレーションは、電圧が印加された金属導電部材間に絶縁部材が接している構造を有する装置であれば生じ得る現象であり、例えばLCDでも生じ得る。LCDにおいてマイグレーションの発生を未然に防止する方法として、結露センサを用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
【特許文献1】特開昭61−294417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述のように、タッチパネルは、操作が容易であり座標入力機能と画面表示機能とを同時に有するという特性から、様々な環境下で使用されている。当然、高温高湿下で使用されることもあり、このような環境下では、マイグレーションの進行は避けられない。仮にタッチパネルの製品仕様書において製品の使用環境条件について規定したとしても、それを遵守するかどうかはユーザ次第である。
【0013】
一方、適正な使用条件下でタッチパネルを使用していたとしても、長期間の使用により、非常にゆっくりであるがマイグレーションは進行する。
【0014】
従って本発明の目的は、上記問題に鑑み、マイグレーションの発生を抑制するタッチパネルの制御装置および制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を実現するために、本発明においては、温度および湿度センサで検出したタッチパネル近傍の温度および湿度の双方が、タッチパネルにマイグレーションが発生しない温度(以下、「許容温度」と称する。)および湿度(以下、「許容湿度」と称する。)で画定される範囲(以下、「使用許容範囲」と称する。)内にあるか否かを判定し、この検出した温度および湿度が使用許容範囲内にないと判定されたときは、マイグレーションの発生の可能性があるので、操作位置の検出処理を停止する。
【0016】
上述のように、アナログ抵抗膜方式によるタッチパネルにおいては、タッチパネルの操作面の操作位置の検出処理は、フィルムもしくはガラスの面上の端部XY方向に設けられた電極に駆動電圧を印加することにより実行される。タッチパネルにおけるマイグレーションは、上記検出処理において上記電極間に駆動電圧が印加されているとき、タッチパネル付近の環境が所定の温度以上で所定の湿度以上にあるときに特に発生しやすくなる。換言すれば、マイグレーションが発生しない許容温度および許容湿度が存在するということである。したがって、本発明では、タッチパネル近傍の温度および湿度の双方が、タッチパネルにマイグレーションが発生しない許容温度および許容湿度で画定される使用許容範囲内にないときは、上記電極間への駆動電圧の印加を停止、すなわち操作位置の検出処理を停止する。マイグレーションが発生しない許容温度および許容湿度で画定される使用許容範囲は、駆動電圧が印加される電極の金属導電部材や絶縁部材の材質、これらの構造、タッチパネルの用途、想定される使用環境などを考慮して画定するのが好ましい。
【0017】
図1は、本発明によるタッチパネルの制御装置の原理ブロック図である。
【0018】
操作面上の操作位置を検出してこの操作位置に対応した座標入力信号を出力するタッチパネルの制御装置1は、タッチパネル近傍の温度および湿度の双方を検出する温度および湿度センサ11と、温度および湿度センサ11が検出した温度および湿度が、タッチパネルにマイグレーションが発生しない許容温度および許容湿度で画定される使用許容範囲内にあるか否かを判定する判定手段12と、上記検出した温度および湿度が使用許容範囲内にないと判定手段12が判定したとき、操作位置の検出処理を停止する停止手段13と、を備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、タッチパネル近傍の温度および湿度の双方が、タッチパネルにマイグレーションが発生しない許容温度および許容湿度で画定される使用許容範囲内にないときは、操作位置の検出処理を停止するので、マイグレーションの発生を抑制することができる。本発明によれば、タッチパネルが動作するのは、適切な温度および湿度環境下にあるときとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図2は、本発明の第1の実施例におけるマイグレーションが発生しない許容温度および許容湿度で画定される使用許容範囲を例示する図である。
【0021】
マイグレーションが発生しない許容温度および許容湿度で画定される使用許容範囲は、駆動電圧が印加される電極の金属導電部材や絶縁部材の材質、これらの構造、タッチパネルの用途、想定される使用環境などを考慮して画定するのが好ましい。本発明の第1の実施例では、マイグレーションが発生しない許容温度を40度、許容湿度を95%とする。したがって、許容温度40度と許容湿度95%とで画定される使用許容範囲をグラフに表すと図2のようになる。使用許容範囲内においてタッチパネルを使用する限りはマイグレーションの発生の可能性は低い。タッチパネル近傍の温度もしくは湿度が使用許容範囲内にないときは、この状態でタッチパネルを使用するとマイグレーションが発生するので、操作位置の検出処理を停止、すなわち上記電極間への駆動電圧の印加を停止する。
【0022】
図3は、本発明の第1の実施例によるタッチパネル制御装置の概略的な回路図である。
【0023】
本実施例によるタッチパネルの制御装置1は、通常のアナログ抵抗膜方式のタッチパネルの制御装置と同様に、タッチパネル2のフィルム側もしくはガラス側の面の端部に電極EX1、EX2、EY1およびEY2が設けられる。各電極EX1、EX2、EY1およびEY2に印加される駆動電圧は、それぞれスイッチSX1、SX2、SY1およびSY2を介して制御IC(参照番号20)によって制御される。スイッチSX1、SX2、SY1およびSY2は、半導体スイッチで構成されることが好ましく、本実施例ではトランジスタとする。駆動電圧の印加中に、ユーザによる接触点の電位は一方の面を通じて駆動電圧の分圧値として検出されるが、XY各方向の分圧値は制御IC20内のA/Dコンバータ21に入力される。制御IC20は、ディジタル化されたXY各方向の分圧値を用いて所定の形式の座標入力信号を作成する。
【0024】
本実施例によれば、温度および湿度センサ11は、タッチパネル2の近傍に設置されて、タッチパネル2近傍の温度および湿度の双方を検出する。温度および湿度センサ11の出力は制御IC20内のA/Dコンバータ21に入力される。制御IC20は、ディジタル化された温度および湿度の値を用いて、この値が使用許容範囲内にあるか否かを判定する。
【0025】
図4は、図3に示すタッチパネル制御装置の動作フローを示すフローチャートであり、図5は、図3に示すタッチパネル制御装置の動作のタイミングチャートを例示する図である。
【0026】
まずステップS101において、タッチパネル2がタッチ操作されたか否か、すなわちタッチパネル2のフィルム側とガラス側とか接触したか否かが判定される。タッチパネル2がタッチ操作されたと判定されると、ステップS102において、温度および湿度センサ11が動作し、タッチパネル2近傍の温度および湿度が検出される。
【0027】
次いでステップS103において、検出された温度および湿度が、マイグレーションが発生しない許容温度および許容湿度で画定される使用許容範囲内にあるか否かが判定される。
【0028】
ステップS103において使用許容範囲内にあると判定されると、タッチパネルの操作面上のタッチ操作位置の検出処理が実行される。具体的には、まずステップS105において、フィルムもしくはガラスの面上の端部XY方向に設けられた電極に駆動電圧が印加される。図3の回路において、例えば図5に示すように、タッチパネル2のY軸方向の座標検出のための電極EY1およびEY2間には、Y軸駆動指令値1がL(ロー)でありかつY軸駆動指令値2がH(ハイ)である期間(以下、「駆動期間」と称する。)TYのときに駆動電圧(駆動パルス)が印加され、この駆動期間(駆動パルス幅)TY中に、Y座標に相当する電圧分圧値が測定される。通常、駆動期間TY中に、該電圧分圧値が複数回スキャンされ、その平均値がY座標に相当する電圧分圧値とされる。同様に、タッチパネル2のX軸方向の座標検出のための電極EX1およびEX2間には、X軸駆動指令値1がLでありかつX軸駆動指令値2がHである駆動期間TXのときに駆動電圧が印加され、この駆動期間TX中に、X座標に相当する電圧分圧値が測定される。そして、ステップS106では、X座標およびY座標に相当する電圧値を使って座標入力信号が出力される。
【0029】
ステップS103において使用許容範囲内にないと判定されたときは、ステップS105へは進まないので上記検出処理は実行されず、上記各電極には駆動電圧は印加されない。すなわち、Y軸駆動指令値1はHでありかつY軸駆動指令値2はLのままであり、X軸駆動指令値1はHでありかつX軸駆動指令値2はLのままである。このように、タッチパネルがタッチ操作されたとしても、マイグレーションが発生し得る環境下では上記各電極には駆動電圧は印加されないので、マイグレーションの発生はない。そして、本実施例では、オプションとして、ステップS104においてアラーム信号が出力される。このアラーム信号は、座標入力信号や各種コマンドの通信に用いるケーブル、専用の信号線、あるいは無線などを経由してホスト本体へ送信される。
【0030】
アラーム信号を用いれば、マイグレーションが発生し得る環境下でタッチパネルが使用されていることをユーザに知らせるために、スピーカを介した警告音の発生や、ディスプレイ上での警告表示を実現することができる。
【0031】
また、アラーム信号はホスト側で記録することもできるので、タッチパネルの異常環境下での使用の履歴を記憶することもでき、例えばこの履歴情報をタッチパネルのメンテナンスに利用することも可能である。
【0032】
またあるいはアラーム信号に基づいてホスト側でタッチパネルの異常環境下での使用時間を累積加算することも可能である。あるいは、タッチパネルの制御装置側に上記累積加算する累積タイマを設けてもよい。なお、累積加算する時間は、タッチパネルの異常環境下での使用時間に限られず、単に、タッチパネルが正常に利用された時間でもよい。
【0033】
なお、本実施例では、タッチパネル近傍の温度および湿度の双方が、使用許容範囲内にないときにアラーム信号を出力するようにしたが、使用許容範囲内にあってこの使用許容範囲の境界近傍にあるときにアラーム信号を出力するようにしてもよい。この場合は、ユーザは、アラーム信号の出力時点でもタッチパネルを通常どおり使用できるが、マイグレーション発生の危険性を予め知ることができる。
【0034】
図6は、図3に示すタッチパネル制御装置の動作フローの変形例を示すフローチャートである。
【0035】
本変形例では、まず、ステップS201において、温度および湿度センサ11が動作し、タッチパネル2近傍の温度および湿度が検出される。
【0036】
次いでステップS202において、検出された温度および湿度が、マイグレーションが発生しない許容温度および許容湿度で画定される使用許容範囲内にあるか否かが判定される。
【0037】
ステップS202において使用許容範囲内にあると判定されると、ステップS204において、タッチパネル2がタッチ操作されたか否か、すなわちタッチパネル2のフィルム側とガラス側とか接触したか否かが判定される。
【0038】
ステップS204においてタッチパネル2がタッチ操作されたと判定されると、ステップS205において、フィルムもしくはガラスの面上の端部XY方向に設けられた電極に駆動電圧が印加される。このステップS205では、図3および5を参照して説明したように、駆動期間TX中に、X座標に相当する電圧分圧値が測定され、駆動期間TY中に、Y座標に相当する電圧分圧値が測定される。そして、ステップS206では、X座標およびY座標に相当する電圧分圧値を使って座標入力信号が出力される。
【0039】
ステップS202において使用許容範囲内にないと判定されたときは、ステップS204〜S206へは進まないので上記検出処理は実行されず、上記各電極には駆動電圧は印加されない。したがって、タッチパネルがタッチ操作されたとしても、マイグレーションが発生し得る環境下では上記各電極には駆動電圧は印加されないので、マイグレーションの発生を抑制することができる。そして、ステップS203においてアラーム信号が出力される。なお、タッチパネル近傍の温度および湿度の双方が使用許容範囲内にあってこの使用許容範囲の境界近傍にあるときにアラーム信号を出力するようにしてもよい。
【0040】
以上説明したように、本発明の第1の実施例によれば、タッチパネル近傍の温度および湿度の双方が、タッチパネルにマイグレーションが発生しない許容温度および許容湿度で画定される使用許容範囲内にないときは、操作位置の検出処理を停止するので、タッチパネルを適切な温度および湿度環境のもとで動作させることが可能となり、マイグレーションの発生を抑制することができる。したがって、高温高湿の劣悪な環境下でタッチパネルを使おうとしてもタッチパネルは動作しないことから、マイグレーションの発生を抑制することができる。さらに、本実施例の変形例によれば、温度および湿度センサが検出した温度および湿度の双方が使用許容範囲内にないときは、タッチパネルは、その押下検知処理や操作位置の検出処理等、一切の処理を実行しないので、タッチパネルの消費電力を低減することができ、タッチパネル自体の寿命も延びる。
【0041】
図7は、本発明の第2の実施例によるタッチパネル制御装置の概略的な回路図である。図8は、図7に示すタッチパネル制御装置の動作のタイミングチャートを例示する図である。
【0042】
本実施例は、上述の第1の実施例によるタッチパネルの制御装置においてさらに、タッチパネルにおける操作面のタッチ操作位置の検出処理を停止している間における、トランジスタから漏れるリーク電流を遮断する遮断手段を設けたものである。
【0043】
図3および5を参照して説明したように、温度および湿度センサ11が検出した温度および湿度の双方が使用許容範囲内にないときは、Y軸駆動指令値1はHでありかつY軸駆動指令値2はLのままであり、X軸駆動指令値1はHでありかつX軸駆動指令値2はLのままである。したがって、トランジスタSX1、SX2、SY1およびSY2は作動せず、各電極間EX1およびEX2、ならびにEY1およびEY2には駆動電圧は印加されない。しかしながら、実際にはトランジスタからのリーク電流があるので、上記各電極間には電圧が若干印加され、その結果、マイグレーションが非常にゆっくりではあるが進行してしまう可能性がある。
【0044】
このようなことから、本実施例では、タッチパネルにおける操作位置の検出処理を停止する間に、上記各電極間に電圧が確実に印加されないようにするために、トランジスタから漏れるリーク電流を遮断する遮断手段として、トランジスタと上記電極との間にリレー22を設ける。
【0045】
リレー22は、トランジスタSX1と電極EX1との間に設けられ、操作位置の検出処理を停止する間に生じるリーク電流を遮断するためのスイッチS1と、トランジスタSY1と電極EY1との間に設けられ、操作位置の検出処理を停止する間に生じるリーク電流を遮断するためのスイッチS2と、温度および湿度センサ11が検出した温度および湿度が使用許容範囲内にないときにスイッチS1およびS2を開放させる電動コイルLと、を備える。リレー22の駆動は、制御IC20から電動コイルLへ出力されるリレー駆動指令値で実現される。なお、本実施例ではスイッチS1およびS2を備えるが、どちらか一方のスイッチのみを備えるようにしてもよい。
【0046】
図8に示すように、温度および湿度センサ11が検出した温度および湿度が、使用許容範囲内にあるときはリレー22のスイッチS1およびS2を閉路し、使用許容範囲内にないときはリレー22のスイッチS1およびS2を開放する。
【0047】
以上説明したように、本発明の第2の実施例によれば、タッチパネル近傍の温度および湿度の双方が、タッチパネルにマイグレーションが発生しない許容温度および許容湿度で画定される使用許容範囲内にないときは、トランジスタから漏れるリーク電流を確実に遮断するので、マイグレーションの発生をさらに確実に抑制することができる。
【0048】
図9は、本発明の第3の実施例におけるマイグレーションが発生しない許容温度および許容湿度で画定される使用許容範囲を例示する図である。
【0049】
タッチパネルにおけるマイグレーションは、操作位置の検出処理のための各電極間に駆動電圧が印加されているとき、タッチパネル付近の環境が所定の温度以上で所定の湿度以上にあるときに特に発生しやすくなるが、上述のように本発明によれば、この境界の温度および湿度を許容温度および許容湿度とし、これら許容温度および許容湿度で画定される使用許容範囲内の温度および湿度下でのみタッチパネルを使用可能とし、それ以外の場合はタッチパネルを使用することができない。
【0050】
しかしながら、使用許容範囲内の温度および湿度下でのタッチパネルの使用であっても、温度および湿度が比較的高い環境で電極に駆動電圧が印加されれば、非常にゆっくりであるがマイグレーションは進行する。
【0051】
そこで、本実施例では、上述の第1の実施例によるタッチパネルの制御装置においてさらに、使用許容範囲内にある検出した温度および湿度ごとに、最適な操作位置の検出処理実行時間、すなわち駆動電圧を印加する駆動期間を設定する設定手段を設ける。
【0052】
使用許容範囲内で同一の駆動期間だけ駆動電圧の印加した場合、温度および湿度が高いほどマイグレーションが進行する速度は速い。そこで、本実施例では、温度および湿度が高いほど、上記各電極に駆動電極が印加される駆動期間(駆動パルス幅)を短く設定する。図9の例では、駆動期間を、範囲(ア)では0.4ミリ秒、範囲(イ)では0.6ミリ秒、範囲(ウ)では0.8ミリ秒、範囲(エ)では1.0ミリ秒に設定する。なお、これら具体的な数値は一例であり、本発明を限定するものではない。
【0053】
制御IC20には、温度および湿度センサ11が検出した温度および湿度に基づいて、図9の設定に従って最適な駆動時間を選択する機能をさらに設ける。これにより、タッチパネル使用中に周辺の温度および湿度が変化しても、それに応じた最適な駆動時間に変更できる。
【0054】
本実施例の変形例として、タッチパネルにおいて操作位置の検出処理実行時間を累積加算する累積タイマを、設定された検出処理の実行時間ごとに、すなわち駆動電圧を印加する駆動時間(駆動パルス幅)ごとに備えるようにしてもよい。累積タイマの値は、タッチパネルの制御装置内のメモリに記憶してもよく、あるいは、ホスト側へ送信するようにしてもよい。累積タイマの設置により、各駆動時間がそれぞれどれだけ選択されたかについての履歴を把握することができる。例えばこの履歴をタッチパネルのメンテナンスに利用したり、あるいは、タッチパネルが普段どのような環境の下で利用されているかについての分析などに利用することができる。
【0055】
上述の各実施例は、その変形例も含めてそれぞれ組み合わせて実施してもよい。
【0056】
また、上述の各実施例では、許容温度40度と許容湿度95%とで画定される使用許容範囲を例にとって説明したが、その他の範囲であってもよく、駆動電圧が印加される電極の金属導電部材や絶縁部材の材質、これらの構造、タッチパネルの用途、想定される使用環境などを考慮して決定すればよい。例えば、許容温度60度および許容湿度90%で画定される使用許容範囲、許容温度85度および許容湿度85%で画定される使用許容範囲などであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
PDAなどの情報携帯端末、POS、KIOSK端末、銀行のATM、切符の自動券売機や自動精算機など、装置本体に体積的制限がある小型もしくは薄型の情報処理装置や、幅広い層のユーザに使用される機会を有するタッチパネルの制御装置として有効である。
【0058】
特に、高温高湿の劣悪な環境下で使用される機械の多い、カーナビゲーションシステムやカーオーディオ等の車載器やFA機器等のタッチパネルの制御装置として最適である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明によるタッチパネルの制御装置の原理ブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施例におけるマイグレーションが発生しない許容温度および許容湿度で画定される使用許容範囲を例示する図である。
【図3】本発明の第1の実施例によるタッチパネル制御装置の概略的な回路図である。
【図4】図3に示すタッチパネル制御装置の動作フローを示すフローチャートである。
【図5】図3に示すタッチパネル制御装置の動作のタイミングチャートを例示する図である。
【図6】図3に示すタッチパネル制御装置の動作フローの変形例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第2の実施例によるタッチパネル制御装置の概略的な回路図である。
【図8】図7に示すタッチパネル制御装置の動作のタイミングチャートを例示する図である。
【図9】本発明の第3の実施例におけるマイグレーションが発生しない許容温度および許容湿度で画定される使用許容範囲を例示する図である。
【図10】従来例によるアナログ抵抗膜方式のタッチパネルを例示する断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 タッチパネルの制御装置
2 タッチパネル
10 操作位置の検出処理
11 温度および湿度センサ
12 判定手段
13 停止手段
20 制御IC
21 A/Dコンバータ
22 リレー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作面上の操作位置を検出して該操作位置に対応した座標入力信号を出力するタッチパネルの制御装置であって、
前記タッチパネル近傍の温度および湿度の双方を検出する温度および湿度センサと、
前記温度および湿度センサが検出した温度および湿度が、前記タッチパネルにマイグレーションが発生しない許容温度および許容湿度で画定される使用許容範囲内にあるか否かを判定する判定手段と、
前記検出した温度および湿度が前記使用許容範囲内にないと前記判定手段が判定したとき、前記操作位置の検出処理を停止する停止手段と、
を備えることを特徴とするタッチパネルの制御装置。
【請求項2】
前記使用許容範囲内にある前記検出した温度および湿度ごとに最適な前記検出処理の実行時間を設定する設定手段をさらに備える請求項1に記載のタッチパネルの制御装置。
【請求項3】
前記検出した温度および湿度が前記使用許容範囲内にないときアラーム信号を出力するアラーム出力手段をさらに備える請求項1に記載のタッチパネルの制御装置。
【請求項4】
前記検出した温度および湿度が前記使用許容範囲内にあって該使用許容範囲の境界近傍にあるときアラーム信号を出力するアラーム出力手段をさらに備える請求項1に記載のタッチパネルの制御装置。
【請求項5】
前記タッチパネルにおいて前記検出処理の実行時間を累積加算する累積タイマをさらに備える請求項1または2に記載のタッチパネルの制御装置。
【請求項6】
前記タッチパネルにおいて前記検出処理の実行時間を累積加算する累積タイマを、設定された前記検出処理の実行時間ごとに備える請求項2に記載のタッチパネルの制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載のタッチパネルの制御装置であって、
前記検出処理において、前記タッチパネルの上面パネルもしくは下面パネルのパネル面上の端部付近に設けられた電極に駆動電圧を印加して前記操作位置を検出するタッチパネルの制御装置において、
前記駆動電圧を制御する半導体スイッチと、
該半導体スイッチと前記電極との間に設けられ、前記半導体スイッチから前記電極へ漏れるリーク電流を遮断する遮断手段と、備えるタッチパネルの制御装置。
【請求項8】
前記遮断手段は、前記タッチパネルにおける前記操作位置の検出処理を停止している間において、前記リーク電流を遮断する請求項7に記載のタッチパネルの制御装置。
【請求項9】
操作面上の操作位置を検出して該操作位置に対応した座標入力信号を出力するタッチパネルの制御方法であって、
前記タッチパネル近傍の温度および湿度の双方が、前記タッチパネルにマイグレーションが発生しない許容温度および許容湿度で画定される使用許容範囲内にあるか否かを判定する判定ステップと、
前記検出した温度および湿度が前記使用許容範囲内にないと前記判定ステップが判定したとき、前記操作位置の検出処理を停止する停止ステップと、を備えることを特徴とするタッチパネルの制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate