説明

タッチパネル付き表示装置、プログラム、記録媒体およびUSBスイッチ装置

【課題】簡易な構成で2点押し操作を容易に行うことができるタッチパネル付き表示装置を実現する。
【解決手段】本発明のプログラマブル表示器3は、USB端子38を有しており、プログラマブル表示器3のタッチパネル33は、アナログ式タッチパネルである。さらに、プログラマブル表示器3は、USB端子38に接続されるUSBスイッチ7による入力を、タッチパネル33の所定位置へのタッチ入力と同一の入力操作として受け付けるUSB入力処理部313を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル付き表示装置に関するものであり、特に、タッチパネル付き表示装置において2点押し操作を実現する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルには、デジタル式タッチパネルとアナログ式タッチパネルとが存在する。
【0003】
デジタル式タッチパネルでは、タッチパネルに多数のマトリクススイッチを配置して、各マトリクススイッチがタッチ入力を検知する。このため、タッチパネル上の離れた複数の位置をタッチ入力した場合でも、対応するマトリクススイッチがタッチ入力を検知するので、タッチ入力された各位置を判別することできる。
【0004】
しかしながら、デジタル式タッチパネルは、表示画面上の特定の位置が頻繁にタッチ入力される場合は、当該位置のマトリクススイッチが故障しやすくなる。そのため、デジタル式タッチパネルは耐久性が低く、また、高価であるという欠点を有している。これに対し、例えば、特許文献1〜2に記載の技術が提案されている。
【0005】
特許文献1では、PETフィルムにITO透明電極でパターン電極を印刷した透明電極シートにガラス盤に貼り付け、発信回路をカウンタの内蔵されたCPUとでシステムを構成することにより、透明電極膜の劣化を削減し、経年変化の少ない信頼性の高いデジタル式タッチパネルを提案している。
【0006】
特許文献2では、タッチパネルより発信回路を通して出力される信号をインプットキャプチャに入れ、ここで必要な回数繰り返しキャプチャする事で加算された値となり精度の高い値を得ることにより、タッチパネルを押した場合に変化する微小な静電容量変化を安価に検出して、安定したON/OFF、さらには押圧も擬似的に判断する信頼性の高いデジタル式タッチパネルを提案している。
【0007】
一方、アナログ式タッチパネルは、耐久性に優れ安価であり、タッチペンによる細かいタッチ入力にも対応しやすいという長所を有している。一般的なアナログ式のタッチパネルは、2枚の抵抗膜を離間して備え、タッチ位置において、一方の抵抗膜に印加された基準電圧を他方の抵抗膜で分圧することにより、検出電圧値の大小からX方向およびY方向の座標位置を検出する。
【0008】
しかしながら、アナログ式タッチパネルはその原理上、1点のみしかタッチ位置を認識できず、同時に2点がタッチ入力されるとそれらの中間点をタッチ位置と誤認してしまうという問題を生じていた。これに対し、例えば、特許文献3〜5に記載の技術が提案されている。
【0009】
特許文献3では、2点押しにより2枚の抵抗膜が同時に2箇所で接触している場合に検出される電圧値が、2枚の抵抗膜が当該2箇所の中点だけで接触している場合に検出される電圧値と同一であることにより、当該中点が接触位置として検出される。ここで、2点押しの場合は、上記2箇所の中点だけがタッチ入力されている場合よりも、各抵抗膜に設けられる電極に流れ込む電流が大きくなる。これにより、2点押しされているのか否かの判別を可能としている。
【0010】
特許文献4においても、特許文献1と同様、2点押しされた場合は、2点の中点が接触位置として検出され、2点間の抵抗が低下し検出される電流が増加することにより、2点押しであるか否かの検出を行っている。さらに、ある1点をタッチ入力したまま別の1点をタッチ入力した場合、先にタッチ入力した位置をサンプリングしておき、当該位置と2点の中点の位置とから、上記別の1点の位置を算出することにより、2点押しされたそれぞれの位置を検出している。
【0011】
特許文献5では、2点押しされると、2点の中点が接触位置として検出されるが、ある1点をタッチ入力したまま別の1点をタッチ入力した場合、先にタッチ入力した位置を検出した状態から2点の中点を接触位置として検出するまでの時間が、非常に短いことにより、2点押しであるか否かの検出を行っている。また、特許文献4と同様、先にタッチ入力した位置と2点の中点の位置とから、2点押しされたそれぞれの位置を算出している。
【特許文献1】特開2004−213114号公報(2004年7月29日公開)
【特許文献2】特開2005−18669号公報(2005年1月20日公開)
【特許文献3】特開2001−60143号公報(2001年3月6日公開)
【特許文献4】特開平9−34625号公報(1997年2月7日公開)
【特許文献5】特開2000−105645号公報(2000年4月11日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、デジタル式タッチパネルにおいては、特許文献1および2に係る構成では、デジタル式タッチパネルの耐久性、操作性の向上が図られているにとどまり、マトリクススイッチが故障した場合であっても2点押しのそれぞれの位置を検出する構成は開示されていない。
【0013】
そこで、2点押しを行う場合に、2点の一方のタッチ入力、特に、故障したマトリクススイッチからの入力を他の入力装置からの入力操作に代用することで、擬似的な2点押しを実現する構成が考えられる。その構成は、後に記載する。
【0014】
また、アナログ式タッチパネルにおいては、特許文献3に係る構成では、2点押しされているのか否かが判別できるにとどまり、タッチ入力された2点それぞれの位置を検出する構成は開示されていない。
【0015】
また、2点を異なるの圧力でタッチした場合、2点の中点からずれた位置が接触位置として検出されるおそれがある。また、指でタッチ入力した場合、接触面積が広いため、2点の中点として検出される座標位置にもバラツキが生じる。特許文献4および5に係る構成では、先にタッチ入力した位置と2点の中点の位置とから、後にタッチ入力した位置を算出しているため、後にタッチ入力した位置が正確に検出できないという問題を生じる。
【0016】
そこで、2点押しを行う場合に、2点の一方のタッチ入力を他の入力装置からの入力操作に代用することで、擬似的な2点押しを実現する構成が考えられる。
【0017】
そのような構成として、例えば、タッチパネル付き表示装置の表示画面部分を縮小して、表示画面の下部に機械的なキーボードを設ける構成や、機械的なI/Oスイッチをタッチパネル付き表示装置に接続する構成が挙げられる。
【0018】
機械的なキーボードを設ける構成では、タッチパネル付き表示装置が、キーボードによる入力操作を、2点の一方のタッチ入力操作として受け付けることにより、擬似的な2点押しを実現している。また、機械的なI/Oスイッチをタッチパネル付き表示装置に接続する構成では、指摘されたタッチパネル画面を押すことで入力される情報とI/Oスイッチから入力される情報とを同期させるプログラムを、タッチパネル付き表示装置にインストールし、I/Oスイッチによる入力に対応した位置と当該位置以外のタッチパネルの入力位置とを同時に検出することにより、擬似的な2点押しを実現している。
【0019】
しかしながら、機械的なキーボードを設ける構成では、キーボードのための新たな配線や電源供給が必要となる。また、キーボードを表示画面近傍に設けるためのスペースが必要となるため、タッチパネル付き表示装置が大型化してしまうという問題がある。一方、タッチパネル付き表示装置の大きさを固定した場合は、機械的なキーボードを設けるスペースが必要となるため、表示画面部分の占める面積が縮小してしまうという問題がある。
【0020】
また、機械的なI/Oスイッチをタッチパネル付き表示装置に接続する構成においても、I/Oスイッチのための新たな配線や電源供給が必要となり、I/Oスイッチを設置するためのスペースが必要となるという問題が生じる。
【0021】
また、原則的にタッチパネル付き表示装置において動作するプログラムは、タッチパネルがアナログ式であるか、デジタル式であるかを意識して作成されているわけではない。タッチパネル付き表示装置が実行するプログラムの一部に2点押しのプログラムを組み込んでいる場合において、タッチパネルがデジタル式のときは2点押しのプログラムを実行することができるが、タッチパネルがアナログ式のときは2点押しのプログラムを実行することが困難となる。したがって、タッチパネルがアナログ式の場合は、2点押しの操作を回避するようなプログラムを作成しなければならないため手間がかかる。
【0022】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な構成で2点押し操作を容易に行うことができるタッチパネル付き表示装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明に係るタッチパネル付き表示装置は、上記課題を解決するために、USBスイッチ装置と接続するUSB端子を有するタッチパネル付き表示装置であって、上記USBスイッチ装置による入力信号をタッチパネル上の所定位置へのタッチ入力信号と同一の入力操作として受け付けるUSB入力処理手段を備えることを特徴としている。
【0024】
上記の構成によれば、USBスイッチ装置をUSB端子に接続して、USBスイッチ装置に対して入力操作を行うと、USB入力処理手段は、タッチパネルの所定位置へのタッチ入力として受け付ける。これにより、USBスイッチ装置によって、上記所定位置へのタッチ入力を擬似的に行うことができる。
【0025】
本発明に係るタッチパネル付き表示装置では、上記USB入力処理手段は、上記USBスイッチ装置による入力信号と上記所定位置以外の上記タッチパネル上の位置へのタッチ入力信号との2つの信号を重ねて受信したときに、上記タッチパネル上の所定位置へのタッチ入力信号と上記所定位置以外の上記タッチパネル上の位置へのタッチ入力信号との2つの信号を重ねて受信したときと同じ処理をすることが好ましい。
【0026】
上記の構成によれば、USBスイッチ装置をUSB端子に接続して、USBスイッチ装置に対して入力操作を行うと、USB入力処理手段は、タッチパネルの所定位置へのタッチ入力として受け付ける。これにより、USBスイッチ装置による入力を維持したまま、タッチパネルの上記所定位置以外の他の位置にタッチ入力を行うことにより、タッチパネルにおいても、上記所定位置と上記他の位置との2点押し操作を擬似的に行うことができる。
【0027】
また、USB端子は多くの表示装置に標準装備されており、USB端子から電源供給が可能であるので、USBスイッチ装置は別途電源供給するための配線を必要としない。さらに、USBスイッチ装置は持ち運び可能であり、USB端子に接続するだけで使用可能であるので、USBスイッチ装置を設置するためのスペースも必要としない。
【0028】
したがって、簡易な構成で2点押し操作を容易に行うことができるタッチパネル付き表示装置を実現できるという効果を奏する。
【0029】
ここで、USBスイッチ装置によって入力操作することにより、USB入力処理手段は、2点の一方へのタッチ入力として受け付ける。ここで、USBスイッチ装置による入力を維持したまま、2点の他方へタッチ入力を行うことにより、2点を同時に入力操作することができる。
【0030】
本発明に係るタッチパネル付き表示装置では、上記タッチパネルは、デジタル式タッチパネルであってもよい。
【0031】
上記の構成によれば、故障したマトリクススイッチを含んだデジタル式タッチパネル付き表示装置における2点押しを簡易な構成で容易に行うことができる。
【0032】
本発明に係るタッチパネル付き表示装置では、上記タッチパネルは、アナログ式タッチパネルであってもよい。
【0033】
上記の構成によれば、技術的に困難であると言われているアナログ式タッチパネル付き表示装置における2点押しを簡易な構成で容易に行うことができる。
【0034】
上記タッチパネル付き表示装置は、ハードウェアで実現してもよいし、プログラムをコンピュータに実行させることによって実現してもよい。具体的には、本発明に係るプログラムは、上記いずれかの構成のUSB入力処理手段としてコンピュータを動作させるプログラムであり、本発明に係る記録媒体には、当該プログラムが記録されている。なお、当該プログラムを上記USBスイッチ装置の記憶手段に記憶させてもよい。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係るタッチパネル付き表示装置は、以上のように、USBスイッチ装置と接続するUSB端子を有するタッチパネル付き表示装置であって、上記USBスイッチ装置による入力信号をタッチパネル上の所定位置へのタッチ入力信号と同一の入力操作として受け付けるUSB入力処理手段を備えるので、簡易な構成で2点押し操作を容易に行うことができて、タッチパネルの設置面積を広く確保することができるタッチパネル付き表示装置を実現できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の一実施形態について図1〜図10に基づいて説明すると以下の通りである。本実施形態では、本発明をプログラマブル表示器を用いた制御システムに適用した例について説明する。
【0037】
図2は、本実施形態に係る制御システム1の概略構成を示すブロック図である。制御システム1は、ホストコンピュータ2、プログラマブル表示器3、プログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)4およびネットワーク5を備えており、各PLC4には、制御対象機器であるデバイス6が接続されている。
【0038】
プログラマブル表示器3は、CPUなどの演算処理装置を備えており、ホストコンピュータ2によってユーザが作成した画面データ2aおよび制御プログラム2bを起動させることにより、特有の操作機能および表示機能を実現する専用コンピュータである。各プログラマブル表示器3は、ネットワーク5によって互いに接続されるとともに、シリアルケーブルを介したPLC4との通信により、PLC4を介して表示画面に表示される各デバイス6の状態を取得して、後述のディスプレイ32に各デバイス6の状態を表示する。また、プログラマブル表示器3は、後述のタッチパネル33への操作に応じて、デバイス6の状態制御をPLC4に指示する。
【0039】
ホストコンピュータ2は、汎用のパーソナルコンピュータであり、上記のようにプログラマブル表示器3を機能させるための画面データ2aおよび制御プログラム2bを作成・編集する機能を有している。具体的には、ホストコンピュータ2は、制御部21、エディタ部22、記憶部23およびインターフェース(I/F)部24を有している。
【0040】
I/F部24は、各プログラマブル表示器3との間の通信を行なうための通信制御部であり、ネットワーク5に接続されている。制御部21は、ハードウエア(CPUやメモリなど)およびソフトウエア(オペレーティングシステムなど)によって実現される機能ブロックであり、アプリケーションプログラムの実行や周辺機器の動作を制御する。
【0041】
エディタ部22は、画面データ2aおよび制御プログラム2bの作成・編集を行う機能を有しており、スイッチ、ランプ、テンキー、各種表示器(例えば、数値表示器、メータ表示器およびグラフ表示器)などの描画機能、テキスト入力機能などを有している。作成・編集された画面データ2aおよび制御プログラム2bは、記憶部23に保存される。また、エディタ部22は、画面データ2aおよび制御プログラム2bを記憶部23から読み出して、ネットワーク5を介して各プログラマブル表示器3に転送する。
【0042】
また、エディタ部22は、USB入力設定部221を有している。USB入力設定部221は、後述するUSBスイッチ7による入力を許可するか否かの設定や、USBスイッチ7による入力とタッチパネル33の所定位置における入力とを対応付ける設定を行う。この設定内容は、画面データ2aおよび制御プログラム2bに書き込まれる。
【0043】
制御システム1では、例えば、デバイス6のメンテナンス時にプログラマブル表示器3の表示画面上を2点押しすることにより、デバイス6を緊急停止させることができるようになっていたり、隠れたメンテナンス画面に移動できるようになっている。後述するように、プログラマブル表示器3のタッチパネルがデジタル式タッチパネルである場合、タッチパネルの離れた2点を同時にタッチ入力することにより2点押しが実現されるときでも、一方のマトリクススイッチが故障したときはタッチパネルの離れた2点を同時にタッチ入力しても、2点押しを検出することができない。また、プログラマブル表示器3のタッチパネルがアナログ式タッチパネルである場合、タッチパネルの離れた2点を同時にタッチ入力しても、2点それぞれの位置を検出することができない。
【0044】
そこで、プログラマブル表示器3にはUSBデバイスと接続するためのUSB端子が設けられており、プログラマブル表示器3のユーザは、USBスイッチ7をプログラマブル表示器3に接続し、USBスイッチ7で入力操作を行いながらタッチパネル上をタッチ入力することにより、2点押し操作が可能となっている。
【0045】
続いて、プログラマブル表示器3およびUSBスイッチ7の具体的な構成について説明する。
【0046】
図1は、本実施形態に係るプログラマブル表示器3およびUSBスイッチ7の構成を示すブロック図である。プログラマブル表示器3は、HMI処理部31、ディスプレイ32、タッチパネル33、記憶部34、インターフェース(I/F)部35・36、USB・インターフェース(USB・I/F)部37およびUSB端子38を備えている。
【0047】
HMI処理部31は、記憶部34に記憶されている各種プログラム等をプログラマブル表示器3が備えるCPUなどの演算処理手段に実行させることにより実現される機能ブロックである。ディスプレイ32は、プログラマブル表示器3を薄型に構成するために、液晶ディスプレイや、ELディスプレイや、プラズマディスプレイのような平板型ディスプレイが好適に用いられる。
【0048】
タッチパネル33は、ディスプレイ32の表示画面上でタッチ入力を行うために設けられている入力装置である。本実施形態では、タッチパネル33はデジタル式とアナログ式の二種類が採用される。タッチパネル33はデジタル式やアナログ式であっても、2枚の抵抗膜を離間して備えている。
【0049】
デジタル式タッチパネルの場合、マトリクススイッチという碁盤の目のように配列された電極によるスイッチが並んでおり、ユーザがその面の一部を押さえると、上下2層の電極が接触することで電気回路が構成される。これにより、タッチパネル33はタッチ位置に応じたデジタルの検出信号を生成する。
【0050】
アナログ式タッチパネルの場合、各抵抗膜には基準電圧が印加されており、タッチパネル33上でタッチ入力がなされると、タッチ位置において、一方の抵抗膜に印加された基準電圧が他方の抵抗膜で分圧される。これにより、タッチパネル33はタッチ位置に応じたアナログの検出信号を生成する。
【0051】
ホストコンピュータ2から転送された画面データ2aおよび制御プログラム2bは、記憶部34に記憶される。さらに、記憶部34にはUSB入力処理プログラム3aが記憶されている。
【0052】
I/F部35は、プログラマブル表示器3がホストコンピュータ2や他のプログラマブル表示器3との間の通信を行うための通信制御部であり、ネットワーク5に接続されている。一方、I/F部36は、プログラマブル表示器3がPLC4との間のシリアル通信を行うための通信制御部であり、PLC4のメーカーや機種に応じた通信プロトコルを用いて通信を行う。
【0053】
USB・I/F部37は、プログラマブル表示器3がUSB端子38に接続されるUSBデバイスとの間の通信を行うための通信制御部である。本実施形態では、USB端子38にUSBスイッチ7が接続される。なお、USB端子38には、USBスイッチ7だけでなく汎用のあらゆるUSBデバイスが接続可能である。
【0054】
USBスイッチ7は、USB入力部71、USB・インターフェース(USB・I/F)部72およびUSB記憶部73を有している。USB入力部71は、ユーザの入力操作により信号を生成する機能を有する。USB・I/F部72は、USBスイッチ7が接続先との間の通信を行うための通信制御部である。USBスイッチ7がプログラマブル表示器3のUSB端子38に接続された状態において、USB入力部71が生成した信号は、USB・I/F部72を介してプログラマブル表示器3に入力される。USB記憶部73は、不揮発性メモリで構成される。
【0055】
図3は、USBスイッチ7の外観を示す側面図である。USBスイッチ7は、スイッチ部7a、端子部7bおよびケーブル7cを有している。ユーザがスイッチ部7aを押下することにより、図1に示すUSB入力部71は信号を生成する。端子部7bは図1に示すプログラマブル表示器3のUSB端子38に接続される。
【0056】
2点押し操作を行う場合、ユーザは、スイッチ部7aを押下しながらタッチパネル33をタッチ操作するため、ケーブル7cは必須ではない。例えば、USB端子38がプログラマブル表示器3の前面の枠にある場合は、ケーブル7cは無くてもよい。USB端子38がプログラマブル表示器3の前面の枠にない場合、例えば、プログラマブル表示器3の背面にUSB端子38が設けられている場合は、ユーザはスイッチ部7aを押下しながらタッチパネル33をタッチ操作することが難しいので、ケーブル7cが設けられていることが望ましい。
【0057】
図1において、プログラマブル表示器3のHMI処理部31は、表示・制御部311および入力操作信号処理部312を有している。表示・制御部311は、記憶部34に記憶されている画面データ2aおよび制御プログラム2bを起動することによって実現される機能ブロックであり、入力操作信号処理部312からの操作信号に基づき、ディスプレイ32に操作画面を表示したり、デバイス6を制御するための制御信号をPLC4に出力する。
【0058】
入力操作信号処理部312は、ユーザによるタッチパネル33のタッチ入力およびUSBスイッチ7からの入力信号に基づき、表示・制御部311に出力される操作信号を生成する機能ブロックであり、USB入力処理部313およびタッチ入力処理部314を有している。
【0059】
上述のように、タッチパネル33上でタッチ入力がなされると、タッチパネル33は、タッチ入力位置に応じた信号を生成し、タッチ入力処理部314には、当該信号が入力される。タッチ入力処理部314は、その信号を表示・制御部311に出力する。
【0060】
USB入力処理部313は、記憶部34に記憶されているUSB入力処理プログラム3aを起動することによって実現される機能ブロックであり、USB入力処理プログラム3aは特許請求の範囲に記載のプログラムに相当する。USB入力処理部313は、ユーザがUSBスイッチ7のスイッチ部7aを押下することにより入力操作を行うと、プログラマブル表示器3のUSB入力処理部313は、タッチパネル33の所定位置へのタッチ入力と同一の入力操作として受け付ける。より具体的には、USB入力処理部313は、USBスイッチ7からの入力信号を、タッチパネル33の所定位置をタッチ入力した場合にタッチ入力処理部314が表示・制御部311に出力するデジタル信号と同一のデジタル信号に変換する。これにより、ユーザはスイッチ部7aを押下することにより、タッチパネル33の所定位置をタッチ入力した場合と同様の操作入力を行うことができる。
【0061】
ここで、2点押し操作を行う場合、ユーザは、スイッチ部7aを押下しつつ、タッチパネル33の上記所定位置以外の位置をタッチ入力する。このとき、実際にタッチパネル33上でタッチ入力されるのは1点のみであるので、タッチパネル33ではタッチ入力されている位置が検出され、タッチ入力処理部314に検出信号が出力されて、タッチ入力処理部314は、タッチ入力位置に応じた信号に変換する。これにより、入力操作信号処理部312では、タッチ入力処理部314が、実際のタッチ入力位置に応じた信号を生成すると共に、USB入力処理部313が、タッチパネル33の所定位置をタッチ入力した場合にタッチ入力処理部314が表示・制御部311に出力する信号と同一の信号を生成する。これらの2つの信号は表示・制御部311に入力され、表示・制御部311は、2点押し操作に対応する表示および/または制御動作を行う。
【0062】
このように、タッチパネル33の所定位置へのタッチ入力を、USBスイッチ7による入力操作に代用することにより、タッチパネル33がデジタル式タッチパネルであって、2点押しに係る一方のマトリクススイッチが故障している場合でも、アナログ式タッチパネルである場合でも、擬似的な2点押し操作を行うことができる。
【0063】
上記所定位置は、図2に示すホストコンピュータ2において、画面データ2aおよび制御プログラム2bの作成・編集時に、USB入力設定部221によって画面毎に予め設定されている。以下、当該設定方法について説明する。
【0064】
図4は、ホストコンピュータ2のシステム設定画面を示している。システム設定画面では、プログラマブル表示器3に接続する入力機器としてUSBスイッチの使用を許可するか否かの設定を行う。ここで、「USBスイッチを使用する。」のチェック欄にチェックを入れることにより、プログラマブル表示器3においてUSBスイッチ7の使用が許可される。
【0065】
続いて、USBスイッチ7による入力がタッチパネル33のどの位置における入力に対応するかを、プログラマブル表示器3で表示される画面毎に設定する。例えば、図5に示すようなキーボード画面においては、USBスイッチ7による入力が、画面上のシフトキーに対応する位置のおけるタッチ入力と同一の操作入力となるように設定する。
【0066】
以上の設定内容を画面データ2aおよび制御プログラム2bに書き込み、画面データ2aおよび制御プログラム2bをプログラマブル表示器3にインストールすることにより、図1に示すUSB入力処理部313は、USBスイッチ7による入力を、タッチパネル33の設定された所定位置へのタッチ入力と同一の入力操作として受け付けることが可能となる。
【0067】
上述のように、USB入力処理部313は、記憶部34に記憶されているUSB入力処理プログラム3aをプログラマブル表示器3が備えるCPUなどの演算処理手段に実行させることにより実現される機能ブロックである。USB入力処理プログラム3aは、プログラマブル表示器3と分離可能に構成される記録媒体にも記録可能であり、その記録媒体からプログラマブル表示器3にインストールされてもよい。上記の記録媒体は、磁気テープやカセットテープなどのテープ系、フレキシブルディスクやハードディスクなどの磁気ディスク系、CD−ROM、MO、MD、DVDなどの光ディスク系、ICカード(メモリカードを含む)、光カードなどのカード系が好適である。その他、上記のプログラムメディアは、マスクROM、EPROM、EEPROM、フラッシュROMなどによる半導体メモリを含めた固定的にプログラムを担持する媒体であってもよい。
【0068】
また、本実施形態形態に係る制御システム1が、インターネットを含む通信ネットワークと接続可能に構成されていれば、当該通信ネットワークからUSB入力処理プログラム3aをダウンロードしてもよい。ただし、このように通信ネットワークからUSB入力処理プログラム3aをダウンロードする場合には、そのダウンロード用プログラムは予めプログラマブル表示器3に格納されるか、あるいは別の記録媒体からインストールされるものであってもよい。
【0069】
さらに、USB入力処理プログラム3aをUSBスイッチ7に内蔵されているメモリに記憶させておき、USBスイッチ7をプログラマブル表示器3に接続したときに、USB入力処理プログラム3aをUSBスイッチ7からプログラマブル表示器3にインストールする構成としてもよい。当該構成を図6に示す。
【0070】
図6は、本実施形態の変形例を示すものであり、プログラマブル表示器3およびUSBスイッチ7の構成を示すブロック図である。USBスイッチ7のUSB記憶部73にはUSB入力処理プログラム3aが記憶されている。これにより、USBスイッチ7がプログラマブル表示器3に接続されると、USB入力処理プログラム3aがUSB記憶部73からプログラマブル表示器3の記憶部34に転送されて、自動的にプログラマブル表示器3にインストールされる。
【0071】
図7は、USBスイッチ7による入力操作を示すフローチャートである。USBスイッチ7がプログラマブル表示器3のUSB端子38に接続され(ステップS40)、図1に示すように既にプログラマブル表示器3にUSB入力処理プログラム3aがインストールされており(ステップS41において「Yes」)、図4に示すシステム設定においてUSBスイッチ7の機能の使用を許可する設定を行った場合(ステップS45において「Yes」)、USB入力処理プログラム3aが起動され(ステップS46)、プログラマブル表示器3にUSB入力処理部313が形成される。
【0072】
ホストコンピュータ2における画面データ2aおよび制御プログラム2bの作成・編集時に、USBスイッチ7による入力がタッチパネル33の所定位置における入力として対応付けられている場合(ステップS47において「Yes」)、USBスイッチ7から入力があると(ステップS48において「Yes」)、プログラマブル表示器3のUSB入力処理部313は、USBスイッチ7からの入力をタッチパネル33の所定位置における入力として受け付け(ステップS49)、当該所定位置が入力された場合にタッチ入力処理部314が生成するデジタル信号と同一の信号を生成する。
【0073】
続いて、ユーザがUSBスイッチ7の入力を維持したままタッチパネル33の上記所定位置とは別の位置をタッチ入力すると(ステップS50)、タッチ入力処理部314が当該タッチ入力に対応したデジタル信号を生成する。これにより、表示・制御部311にはUSB入力処理部313およびタッチ入力処理部314のそれぞれからデジタル信号が入力され、表示・制御部311は、2点押し操作に対応する処理を実行する(ステップS51)。
【0074】
以上のフローは、ステップS41において、USB入力処理プログラム3aが既にプログラマブル表示器3にインストールされている場合のフローである。これに対し、USBスイッチ7がUSB端子38に接続されたときに、USB入力処理プログラム3aがまだプログラマブル表示器3にインストールされていない場合(ステップS41において「No」)、USB入力処理部313が機能しないため、USBスイッチ7による入力操作を行うことができない。ここで、図6に示すように、USBスイッチ7にUSB入力処理プログラム3aが記憶されており(ステップS42において「Yes」)、USB入力処理プログラム3aのプログラマブル表示器3へのインストールが許可されている場合(ステップS43において「Yes」)、USB入力処理プログラム3aがプログラマブル表示器3へインストールされ(ステップS44)、ステップS45に移行する。
【0075】
続いて、プログラマブル表示器3のディスプレイ32に表示される操作画面に基づいて、USBスイッチ7による入力操作を説明する。ここでは、制御システム1の制御対象機器であるデバイスCをメンテナンスのために停止させる場合について説明する。デバイスCは、通常は継続して稼動させなければならないため、デバイスCを停止させるためにはタッチパネル33において2点押し操作を必要とする。
【0076】
図8は、制御対象機器であるデバイスCの運転状況を示すモニタ画面100を示す図である。ここで、デバイスCのメンテナンスを行う場合、ユーザがメンテナンスボタン101をタッチすると、図9に示すように、ユーザ認証画面200に切り替わる。
【0077】
ユーザ認証画面200では、ユーザのIDおよびパスワードを入力するための入力欄とともに、キーボード画面201が表示される。ここで、ユーザ認証画面200では、ユーザがプログラマブル表示器3に接続されているUSBスイッチ7を入力操作すると、図1に示すプログラマブル表示器3のUSB入力処理部313が、USBスイッチ7による入力を、キーボード画面201のシフトキー202に対応する位置へのタッチ入力と同一の入力操作として受け付けるように設定されている。
【0078】
-+-これにより、IDおよびパスワードの入力欄に大文字を入力する場合、ユーザは、USBスイッチ7のスイッチ部7aを押下しながら、キーボード画面201の所望の英文字キーをタッチ入力すればよい。したがって、大文字の入力を容易に行うことができる。
【0079】
なお、USBスイッチ7による入力がシフトキー202へのタッチ入力に対応していることをユーザが認識できるように、シフトキー202を他のキーと異なる態様で表示されていることが望ましい。例えば、シフトキー202を他のキーと異なる色で表示してもよい。
【0080】
ユーザ認証画面200における認証が完了すると、図10に示すように、デバイスCを停止させるための停止操作画面300が表示される。停止操作画面300には、左下隅および右上隅にそれぞれボタン301・302が設けられており、ボタン301・302を同時に選択することにより、デバイスCを停止できるようになっている。
【0081】
ここで停止操作画面300では、ユーザがプログラマブル表示器3に接続されているUSBスイッチ7を入力操作すると、図1に示すプログラマブル表示器3のUSB入力処理部313が、USBスイッチ7による入力を、ボタン301に対応する位置へのタッチ入力と同一の入力操作として受け付けるように設定されている。これにより、ユーザは、USBスイッチ7のスイッチ部7aを押下しながら、ボタン302をタッチ入力することで、デバイスCを停止させることができる。
【0082】
なお、上記例では、図8に示すメンテナンスボタン101をユーザがタッチすることにより、図9に示すユーザ認証画面200に切り替わる構成にしているが、モニタ画面100上にメンテナンスボタン101を設置せずに、替わりに図10のような停止操作画面300、ボタン301・302のような構成で、ボタン301・302を同時に選択することによりモニタ画面100からユーザ認証画面200に切り替わる構成でもよい。
【0083】
また、図9に示すユーザ認証画面200に表示されるキーボード画面201において、USBスイッチ7による入力を、コントロールキーやアルトキーへのタッチ入力と対応させてもよい。これにより、2点押し操作を必要とするショートカット操作等をUSBスイッチ7によって容易に行うことができる。
【0084】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、プログラマブル表示器だけでなく、パネルコンピュータ、金融機関のATM、鉄道切符の券売機、PDAやUMPC等の携帯端末装置、カーナビゲーションといったあらゆるタッチパネル付き表示装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施形態を示すものであり、プログラマブル表示器およびUSBスイッチの構成を示すブロック図である。
【図2】上記プログラマブル表示器を備える制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【図3】上記USBスイッチの外観を示す側面図である。
【図4】上記制御システムが有するホストコンピュータのシステム設定画面を示す図である。
【図5】キーボード画面を示す図である。
【図6】本発明の実施形態の変形例を示すものであり、プログラマブル表示器およびUSBスイッチの構成を示すブロック図である。
【図7】上記USBスイッチによる入力操作を示すフローチャートである。
【図8】制御対象機器の運転状況を示すモニタ画面を示す図である。
【図9】ユーザ認証画面を示す図である。
【図10】停止操作画面を示す図である。
【符号の説明】
【0087】
3 プログラマブル表示器(タッチパネル付き表示装置)
3a USB入力処理プログラム(プログラム)
4 PLC(制御対象機器)
7 USBスイッチ(USBスイッチ装置)
33 タッチパネル
38 USB端子
74 USB記憶部(記憶手段)
201 キーボード画面
202 シフトキー
313 USB入力処理部(USB入力処理手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
USBスイッチ装置と接続するUSB端子を有するタッチパネル付き表示装置であって、
上記USBスイッチ装置による入力信号をタッチパネル上の所定位置へのタッチ入力信号と同一の入力操作として受け付けるUSB入力処理手段を備えることを特徴とするタッチパネル付き表示装置。
【請求項2】
上記USB入力処理手段は、
上記USBスイッチ装置による入力信号と上記所定位置以外の上記タッチパネル上の位置へのタッチ入力信号との2つの信号を重ねて受信したときに、
上記タッチパネル上の所定位置へのタッチ入力信号と上記所定位置以外の上記タッチパネル上の位置へのタッチ入力信号との2つの信号を重ねて受信したときと同じ処理をすることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル付き表示装置。
【請求項3】
上記タッチパネルは、デジタル式タッチパネルであることを特徴とする請求項1または2に記載のタッチパネル付き表示装置。
【請求項4】
上記タッチパネルは、アナログ式タッチパネルであることを特徴とする請求項1または2に記載のタッチパネル付き表示装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のUSB入力処理手段としてコンピュータを動作させるプログラム。
【請求項6】
請求項5に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項7】
請求項5に記載のプログラムを記憶した記憶手段を備えるUSBスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−33107(P2010−33107A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191479(P2008−191479)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000134109)株式会社デジタル (224)
【Fターム(参考)】