説明

タッチパネル検査装置

【課題】タッチパネルを傷つけることなく、正確な検査をおこなうことができるタッチパネル検査装置を提供する。
【解決手段】タッチパネル検査装置10は、タッチパネル12を載せるステージ14、タッチパネル12に接触または所定距離で配置される近接部材16、ステージ14と近接部材16とを相対的に移動させる各駆動装置18x、18y、18z、近接部材16の先端部分の位置を求めるスケール、タッチパネル12に加えた荷重を計測する荷重計22、タッチパネル12の電気的変化を検出する検出装置、およびタッチパネル検査装置10の各装置を制御する制御装置を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルを検査するためのタッチパネル検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、種々のタッチパネルが開発・開示されている。タッチパネルの種類としては、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式などがあり、指のタッチや近接による静電容量の変化で位置検出をする静電容量式もある。これらのタッチパネルは、携帯機器を始めとして種々の製品に使用されている。
【0003】
タッチパネルの製造後に、タッチパネルの検査がおこなわれる。下記の特許文献1には、複数のペンを使用してタッチパネルを押圧することができる検査装置が開示されている。タッチパネルへの荷重を変えるために、圧縮バネまたは引っ張りバネを使用していることを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4709913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧縮バネまたは引っ張りバネが設けられているため、圧縮バネまたは引っ張りバネが元に戻ろうとする力が生じる。そのため、ペンが微妙に傾斜したり、位置が変化したりして、正確な検査がおこなえない。よって、圧縮バネまたは引っ張りバネを用いずに、ペンを固定した機構が望ましい。
【0006】
しかし、タッチパネルを載せるステージが気温によって膨張または収縮し、水平面に対して傾きを生じるため、固定してペンを移動させると、タッチパネルを傷つけるおそれがある。微小な傾きであっても、タッチパネルが大きくなれば、ペンを端から端まで移動させたときに、ステージの傾斜によってタッチパネルを傷つける確率が高くなる。
【0007】
本発明の目的は、タッチパネルを傷つけることなく、正確な検査をおこなうことができるタッチパネル検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のタッチパネル検査装置は、タッチパネルを載せる平面状のステージと、前記タッチパネルに接触または所定距離で配置され、タッチパネルおよびステージに対して移動される近接部材と、前記ステージの面内の一方向および該一方向の垂直方向に、ステージと近接部材とを移動させるX軸駆動装置およびY軸駆動装置と、前記近接部材をタッチパネルに対して垂直方向に移動させるZ軸駆動装置と、前記近接部材の先端の位置を求めるスケールと、前記近接部材がZ軸駆動装置によってタッチパネルに加えた力を計測する荷重計と、前記タッチパネルに対して近接部材が接触または所定距離に配置されたときのタッチパネルの電気的変化を検出する検出装置と、前記X軸駆動装置、Y軸駆動装置、Z軸駆動装置、スケール、荷重計および検出装置を制御する制御装置とを備える。
【0009】
前記制御装置は、前記ステージの複数点に近接部材を接触させたときの近接部材の位置からステージの傾斜を求める手段、前記タッチパネルの基準位置に近接部材を接触させたときの近接部材の位置を求める手段、前記傾斜およびタッチパネルの基準位置における近接部材の位置を用いて、近接部材の移動量を補正する手段として機能する。
【0010】
各駆動装置によって近接部材を移動させて、ステージの複数点に近接部材の先端を接触させる。ステージに近接部材を接触させるとき、Z軸駆動装置で一定間隔で一定時間間隔で近接部材を降下させる。接触は荷重計によって所定の力になったときに接触とする。各点での近接部材の位置からステージの傾斜を求める。ステージにタッチパネルを載せ、タッチパネルの基準位置に近接部材を接触させて、その位置を求める。ステージの傾斜と基準位置に近接部材を接触させたときの位置から近接部材の移動量の補正量を求める。
【0011】
前記昇降装置は、荷重計で計測された力が所定値を超えたとき、近接部材の降下を停止する。タッチパネルに必要以上の力を加えたりせずに保護する。
【0012】
前記近接部材は複数であり、近接部材ごとに昇降装置が備えられる。前記近接部材同士の間隔を変更する装置を備える。前記近接部材をステージの面内で回転させる装置を備える。近接部材を指の動きに合わせて複雑な動きができるようにして、実際の操作に合わせた検査をおこなう。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、圧縮バネまたは引っ張りバネを使用せず、直接近接部材に加わる力を計測するため、近接部材が傾斜したり、位置が変化して正確な検査ができなくなるおそれがない。近接部材が傾斜に合わせて移動するため、タッチパネルを傷つけることはない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】タッチパネル検査装置の構成を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は側面図である。
【図2】タッチパネル検査装置の構成を示すブロック図である。
【図3】ステージの上面図を示す図である。
【図4】近接部材同士の距離を短くした図である。
【図5】1つの近接部材を降下させて、1つの近接部材を上昇させた図である。
【図6】2つの近接部材をタッチパネルに接触させた図である。
【図7】ステージの近接部材で接触される位置を増加させた図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のタッチパネル検査装置について図面を使用して説明する。検査されるタッチパネルは静電容量式のタッチパネルとする。X軸、Y軸およびZ軸の3軸はそれぞれ直交し、X軸とY軸で形成されるXY平面が水平面と一致し、Z軸がXY平面に対する垂線と一致することとする。
【0016】
図1、図2に示すタッチパネル検査装置10は、タッチパネル12を載せるステージ14、タッチパネル12に接触または所定距離で配置される近接部材16、タッチパネル12とステージ14に対して近接部材16を移動させる各駆動装置18x、18y、18z、近接部材16の先端部分の位置を求めるスケール20、タッチパネル12に加えた荷重を計測する荷重計22、タッチパネル12の電気的変化を検出する検出装置24、およびタッチパネル検査装置10の各装置を制御する制御装置26を備える。
【0017】
ステージ14は、タッチパネル12を載せるために平面状になっている(図3)。金属の板14aの上に樹脂の板14bを重ねている。金属の板14aはアルミニウム板などであり、樹脂の板14bはアクリル板などである。樹脂の板14bの上にタッチパネル12が載せられる。金属の板14aによってステージ14の強度が確保される。樹脂の板14bによって、金属の板14aによるタッチパネル12の静電容量の変化を防止する。ステージ14の平面は、例えば50cm×50cmの広さである。
【0018】
タッチパネル検査装置10を最初に設置する際、ステージ14の平面はXY平面に一致させておく。気温の変化などでステージ14が膨張または収縮したときに、ステージ14の平面がXY平面に対して傾斜する。その傾斜を後述するように計測して、近接部材16の移動量を補正する。
【0019】
タッチパネル12を固定するための治具を使用するために、ステージ14の複数箇所に穴を設けても良い。その穴はねじ穴であっても良い。治具がタッチパネル12の角や辺を押さえながらステージ14の穴にはめ込まれる。治具によってタッチパネル12をステージ14に固定して、検査中にタッチパネル12が位置ずれするのを防止する。タッチパネル12を交換しても、治具によってタッチパネル12の位置が同じ位置に載せられるようになる。ステージ14上でのタッチパネル12の位置合わせが簡単になる。
【0020】
近接部材16は、タッチパネル12に接触または所定距離に配置される。さらに近接部材16は、タッチパネル12およびステージ14に対して移動する。その移動は、近接部材16が移動してしても良いし、ステージ14の移動によってタッチパネル12が移動しても良い。さらに、近接部材16とステージ14の両方が移動しても良い。
【0021】
近接部材16のタッチパネル12の接触は、荷重計22の値によって判断する。近接部材16がタッチパネル12に接触したときに、荷重計22が所定値または所定範囲になれば、タッチパネル12に接触しているとする。所定値としては、例えば200〜500gの範囲にする。
【0022】
近接部材16がタッチパネル12から所定距離離れた位置に配置される場合、例えばタッチパネル12と近接部材16の先端部分との距離は5〜20mmなどである。タッチパネル12に対して指やペンを離したホバー動作などを検査するためである。スケール20の値によって各駆動装置18x、18y、18zが近接部材16を所定距離に配置するようにする。
【0023】
近接部材16は、金属または導電性の樹脂やゴムで構成される。近接部材16は金属と樹脂やゴムを取り替えられるようにしても良い。静電容量の変化を複数種の近接部材16で検査することができる。近接部材16は直径2〜20mmの円柱形状であったり、タッチパネルで使用されるペンであったりする。近接部材16は、タッチパネルを傷つけることを防止するために、エッジを丸めてもよい。
【0024】
近接部材16は複数備えられ、近接部材16ごとに昇降装置28が取り付けられる。また、昇降装置28は水平距離変更部30に取り付けられる。タッチパネル12を複数の指で同時に操作するときのことを考慮した検査をおこなうためである。水平距離変更部30は、近接部材16をXY平面内で移動させて、近接部材16同士の間隔を変更させる装置である。近接部材16を取り付けるレールおよびレール上で近接部材16を移動させるモーターなどの駆動手段を備える。近接部材16同士の間隔を計測するためにリニアスケールなどのスケールを設ける。図4では、図1に比べて近接部材16の間隔を縮めている。
【0025】
昇降装置28は、検査に使用する近接部材16は降下させ、使用しない近接部材16は上昇させる(図5)。昇降装置28はエアシリンダを駆動源としてZ軸方向に近接部材16を昇降させる。降下した近接部材16だけがタッチパネル12に触れることができる。昇降の指示データは制御装置26から送信する。各近接部材16に昇降装置28が設けられ、各近接部材16は独立して昇降可能である。1つの近接部材16だけで検査をおこなうことも可能である。図6では、2つの近接部材16でタッチパネル12を同時に接触しているが、1つの近接部材16がタッチパネル12を接触させても良い。
【0026】
近接部材16は、タッチパネル12の検査に使用する前に、ステージ14の傾きを求めるために使用される。ステージ14の複数のポイントP1,P2,P3,P4を近接部材16で接触させ、そのときのZ軸方向の値を求める。複数のZ軸方向の値から、制御装置26がステージ14の傾きを求める。
【0027】
各駆動装置18x、18y、18zは、X軸駆動装置18x、Y軸駆動装置18yおよびZ軸駆動装置18zである。X軸駆動装置18x、Y軸駆動装置18yおよびZ軸駆動装置18zは、タッチパネル12およびステージ14に対して近接部材16をそれぞれX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に移動させる。例えば、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向を向いたレールを備え、レールに沿って近接部材16を移動させる。各駆動装置18x、18y、18zは固定台32に備え付けられ、制御装置26から移動量を含むデータを受信して、その移動量に合わせて動作する。
【0028】
X軸駆動装置18xおよびY軸駆動装置18yは駆動源としてリニアモータなどを使用する。Z軸駆動装置18zは、近接部材16を所定時間間隔で一定距離ごとに移動させるために、ステッピングモータを駆動源とする。ステッピングモータに1パルス印加することによって、近接部材16をZ軸方向に1/1000〜3/1000mm移動させる。最初からステッピングモータに1パルスずつ印加すると近接部材16のZ軸への移動が微小になるため、タッチパネル12またはステージ14に対して所定距離になるまでは連続的にパルスを印加し、その後、一定時間ごとにパルスを印加する。すなわち、近接部材16のZ軸の移動は、直線的に移動した後、間欠的に移動する。直線的に移動しているときにタッチパネル12またはステージ14に近接部材16を接触させない。
【0029】
なお、複数のタッチパネル12を連続して検査する場合、Z軸方向の移動は、一定時間間隔で一定距離を移動させるのは、ステージ14の傾きを求めるときと、1枚目のタッチパネル12の基準位置に近接部材16を接触させるときである。タッチパネル12の他の位置や2枚目以降のタッチパネル12については、Z軸方向の移動を一定速度でおこなっても良い。タッチパネル12の厚みが一定であるとして検査する。
【0030】
後述するように、第1キャリブレーション手段34は近接部材16をステージ14に接触させ、第2キャリブレーション手段36は近接部材16をタッチパネル12に接触させる。そのため、第2キャリブレーション手段36では、第1キャリブレーション手段34よりも近接部材16を直線的に移動する距離を短くして、直線的に移動させている時に近接部材16がタッチパネル12に接触させないようにする。
【0031】
Z軸駆動装置18zは、近接部材16を降下させるときは間欠的に移動させるが、上昇させるときは直線的に上昇させても良い。上昇させるときは連続的にパルスをステッピングモータに印加する。
【0032】
スケール20は、リニアスケールが挙げられる。スケール20は、X軸駆動装置18x、Y軸駆動装置18yおよびZ軸駆動装置18zのレールに合わせて備えられる。スケール20で読み取られたデータが制御装置26に送信され、近接部材16の先端部分のX軸、Y軸おおよびZ軸の位置が求められる。求められた先端部分の位置に合わせて各駆動装置18x、18y、18zの駆動および停止がおこなわれる。近接部材16の先端部分は、タッチパネル12やステージ14に接触する部分とする。
【0033】
荷重計22は、ひずみゲージ式の力検出器であるロードセルを使用する。Z軸駆動装置18zによって近接部材16が下降し、タッチパネル12に力が加えられる。そのときの力をロードセルによって検出する。近接部材16がタッチパネル12に力を印加してロードセルで計測するまでに時間が掛かる。そのため、上述したように一定時間間隔で近接部材16を移動させる。近接部材16と荷重計22との間には圧縮バネおよび引っ張りバネを設けない。近接部材16の先端部分にかかる力を直接荷重計22で計測する。荷重計22で検出した力のデータを制御装置26に送信し、制御装置26でタッチパネル12に加えられている力を求める。
【0034】
荷重計22で上述した所定値または所定範囲の力を検出したとき、Z軸駆動装置18zの降下を停止させる。制御装置26で求めた力が所定の力以上の場合に、制御装置26からZ軸駆動装置18zに停止の信号を送信する。所定の力よりも大きな力をタッチパネル12に加えて、タッチパネル12や荷重計22の破壊を防止する。そのため、上記のようにZ軸駆動装置18zは一定時間間隔で駆動しており、荷重計22で所定の力が検出されたときにZ軸駆動装置18zを停止させることができる。
【0035】
検出装置24は、タッチパネル12の電極に微弱電流を流して、静電容量の変化を検出する。近接部材16がタッチパネル12に接したときだけではなく、近接部材16がタッチパネル12から所定間隔離れている時も静電容量の変化を検出する。検出装置24は制御装置26と一体になっても良い。検出装置24が得た静電容量の変化は制御装置26に入力され、タッチパネル12の良否が判断される。タッチパネル12のセンシングの感度を調整できるのが好ましく、近接部材16によるタッチパネル12への接触または一定距離での静電容量の変化を検出する。
【0036】
制御装置26は、タッチパネル検査装置10の各装置を制御するためのコンピュータである。制御装置26は、ソフトウェア、ハードウェアまたはその両方によって後述するような機能を有する。制御装置26には、オペレーターがタッチパネル12の種類や検査の開始指示などのデータを入力するためのキーボードなどの入力装置および種々の情報を表示するモニターを備える。
【0037】
制御装置26と各駆動装置18x、18y、18z、スケール20、昇降装置28および荷重計22に通信接続されている。また、制御装置26と検出装置24が分離されている場合、制御装置26は検出装置24とも通信接続されている。制御装置26は、各駆動装置18x、18y、18zおよび昇降装置28への移動および昇降の指示データを送信したり、スケール20、荷重計22および検出装置24から計測した値を受信したりする。
【0038】
制御装置26は、ステージ14に対する第1キャリブレーション手段34、タッチパネル12の基準位置P0に対する第2キャリブレーション手段36、近接部材16の移動時に各キャリブレーション手段34,36が得た値を用いて補正をおこなう補正手段38として機能する。また制御装置26は、各駆動装置18x、18y、18zに移動量を含む駆動データを送信し、スケール20や荷重計22から送信された信号を受信して、近接部材16の先端部分の各軸の位置を求めたり、タッチパネル12に加えている荷重を求めることもできる。
【0039】
第1キャリブレーション手段34および第2キャリブレーション手段36を使用するときは、図5のように1つの近接部材16を降下させてタッチパネル12およびステージ14に接触させる。他の近接部材16は上昇させられ、タッチパネル12およびステージ14には接触しない。
【0040】
第1キャリブレーション手段34は、ステージ14の複数のポイントP1,P2,P3,P4に近接部材16の先端部分を接触させたときの先端部分の位置からステージ14の傾きを求める。近接部材16を移動させるために、各駆動装置18x、18y、18zに駆動指示のデータを送信して、スケール20および荷重計22から検出した値を受信する。また、昇降装置28に駆動指示のデータを送信して、使用する近接部材16を降下させ、使用しない近接部材16を上昇させる。ステージ14の傾きは、XY平面に対するステージ14の平面の傾きである。この傾きは、X軸方向の傾きとY軸方向の傾きに分けて求める。
【0041】
例えば、ステージ14の傾きを求めるために、ステージ14の四隅に近接部材16を接触させたときの近接部材16の先端部分の位置を求める。四隅の点P1,P2,P3,P4のX軸、Y軸およびZ軸の値は、P1が(X1,Y1,Z1)、P2が(X2,Y2,Z2)、P3が(X3,Y3,Z3)およびP4が(X4,Y4,Z4)であるとする(図3)。X軸方向の傾きをXK、Y軸方向の傾きをYKとすると、以下の数式1と2になる。
【0042】
【数1】

【数2】

【0043】
ステージ14にタッチパネル12が載せられるため、ステージ14の傾きとタッチパネル12の傾きは同じである。ステージ14の傾きが求められると、ステージ14に載せられたタッチパネル14の傾きも求められることとなる。
【0044】
第2キャリブレーション手段36は、タッチパネル12に近接部材16を接触させたときの近接部材16の先端部分の位置を求める。近接部材16を移動させるために、第1キャリブレーション手段34と同様に、各駆動装置18x、18y、18zおよび昇降装置28に駆動指示のデータを送信して、スケール20および荷重計22から検出した値を受信する。近接部材16を接触させる位置をタッチパネル12の基準位置P0として、基準位置P0のX軸方向の位置をXo、Y軸方向の位置をYo、Z軸方向の位置をZoとする。
【0045】
補正手段38は、各駆動装置18x、18y、18zに近接部材16の移動の指示データを送信するとき、移動量に対して補正をおこなう。補正は、第1キャリブレーション手段34が求めた傾きと第2キャリブレーション手段36が求めた近接部材16の位置を用いる。
【0046】
X軸方向の移動量をx、Y軸方向の移動量をyとし、近接部材16の先端部分がタッチパネル12の基準位置P0である(Xo,Yo,Zo)の位置にあるとする。X軸方向にx移動させたときのZ軸方向の補正量は、(x−Xo)×XK、Y軸方向にy移動させたときのZ軸方向の補正量は、(y−Yo)×YKとなる。すなわち、これらの値だけZ軸方向を補正(加算または減算)しながらX軸方向およびY軸方向へ近接部材16を移動させる。X軸方向およびY軸方向に移動させるときに、タッチパネル12の傾きに合わせて移動させ、Z軸方向の位置がZoから補正した分だけ変化する。
【0047】
なお、補正に当たって近接部材16の先端部分の位置をタッチパネル12の基準位置P0としたが、近接部材16の移動後は、基準位置P0を移動後の位置に変更して上記補正量を計算する。
【0048】
また、ステージ14の傾きを求めるとき、いずれか一方の近接部材16を降下させ、他方の近接部材16を上昇させる。降下させた近接部材16を基準とする。昇降装置18によって他方の近接部材16を降下させて使用するとき、Z軸方向の補正をおこなう。補正は、上述した水平距離変更部30に設けたスケールによって、基準となる近接部材16の位置から他方の近接部材16の位置を計算する。ステージ14の傾きから、計算した他方の近接部材16の位置におけるZ方向を補正する。
【0049】
近接部材16を直線的に移動させることが好ましく、補正量は単位移動量あたりの補正量に変換して、近接部材16が直線的に補正されながら移動することが好ましい。
【0050】
タッチパネル検査装置10を使用した検査方法を説明する。(1)ステージ14の複数箇所に対して近接部材16の先端部分を接触させて、そのときの近接部材16の先端部分の位置を求める。(2)求めた位置からステージ14の傾きを求める。(3)ステージ14の所定位置にタッチパネル12を載せて、治具によって固定する。(4)タッチパネル12の基準位置P0を近接部材16によって接触させ、そのときの各軸の値を求める。(5)タッチパネル12の電極に所定の微弱電流を流し、タッチパネル12に対して近接部材16を接触または所定間隔離れた位置に配置して、そのときの静電容量の変化を計測する。(6)計測した静電容量から、タッチパネル12の良否を判定する。なお、(3)は(1)や(2)よりも前におこなっても良い。
【0051】
複数のタッチパネル12を検査する場合、最初のタッチパネル12に対して上記(1)と(2)をおこない、他のタッチパネル12に対しては上記(1)と(2)を省略しても良い。最初のタッチパネル12でおこなった上記(1)と(2)の結果を他のタッチパネル12の検査時に使用する。ステージ14の傾斜を変化させないため、一定の気温でおこなうことが好ましい。上述したようにZ軸方向に近接部材16が一定時間間隔で一定距離を移動するのは、ステージ14の傾きを求めるときと、1枚目のタッチパネル12の基準位置に近接部材16を接触させるときある。他の接触については近接部材16をZ軸方向に一定速度で移動させる。
【0052】
以上のように、近接部材16を移動させるときにタッチパネル12の傾きに合わせて移動するため、近接部材16がタッチパネル12を押さえつけすぎて、タッチパネル12を破壊することはない。従来は破壊する確率の高かった大型のタッチパネル12であっても、タッチパネル12を破壊することはない。近接部材16に圧縮バネまたは引っ張りバネが取り付けられていないため、近接部材16の位置の微小なずれも起きにくく、タッチパネル12を正確に検査できる。
【0053】
また静電容量式のタッチパネル12の動作態様として、センシングの感度を調整することで、タッチ面に触れない状態(数mm程度離れて)で動作させることが可能である。本発明の構成は近接部材16のZ軸方向の位置を補正しているため、センシングの感度を調整した検査においても、タッチパネル12と近接部材16との位置を所望の位置に保ちながら、近接部材16を移動させることができ、正確に検査できる。
【0054】
以上、本発明について一実施形態を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されることはない。水平距離変更部30がXY平面内で回転できるようにしても良い。モーターなどの駆動装置をZ軸駆動装置18zまたは水平距離変更部30に組み込み、水平距離変更部30を回転できるようにする。近接部材16を移動させるとき、直線的な移動以外に曲線的な移動をおこなうことができ、タッチパネル12に対して複雑な操作で検査をおこなうことができる。
【0055】
近接部材16を回転した場合、上述した各軸のスケールと回転した角度から近接部材16の位置を求めることができる。2つの近接部材16を使用した場合、上記のように一方の近接部材16が基準となっており、一方の近接部材16の位置から他方の近接部材16の位置を求め、Z軸方向の補正をおこなう。
【0056】
近接部材16の数は2個に限定されない。近接部材16の数は1個でも良いし、2以外の複数の数であっても良い。近接部材16が1個であっても複数であっても、タッチパネル12を検査する際に、上記のようにステージ14の傾きに合わせて近接部材14の移動量が補正されるようにする。
【0057】
静電容量式のタッチパネル12を検査するため、近接部材16を一定距離に配置することができたが、近接部材16をタッチパネル12に接触させたときだけ検査をおこなうのであれば、抵抗膜式など他の種類のタッチパネル12を検査することもできる。
【0058】
上記の実施形態ではステージ14の四隅P1〜P4に近接部材16を接触させてステージ14の傾きを求めたが、四隅P1〜P4に限定されない。例えば、図7のように、近接部材16の接触させる位置は9点P1〜P9であってもよい。四隅以外にそれぞれの中点とステージ14の中央である。ステージ14の4つのエリアA1〜A4の傾きが求められる。エリアA1〜A4ごとに、上述したZ軸方向の補正をおこなうことができる。
【0059】
ステージ14の傾きが求められるのであれば、近接部材16の接触される位置は4または9に限定されない。
【0060】
第1キャリブレーション手段34は、ステージ14の四隅の代わりにタッチパネル12の四隅の近接部材16の位置を測定し、タッチパネル12の傾きを求めても良い。上記のようにステージ14の傾きがタッチパネル12の傾きとなるため、上記の実施形態と同様にステージ14の傾きを求めたことと同じになる。また、タッチパネル12の傾きを求めるとき、四隅のいずれかをタッチパネル12の基準位置P0としておけば、傾きと同時に基準位置P0の近接部材16の値も得ることができる。第2キャリブレーション手段36は第1キャリブレーション手段34に一体化させることができる。タッチパネル12ごとの製造時に生じる個体差にあった検査をおこなうことができる。
【0061】
その他、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【符号の説明】
【0062】
10:タッチパネル検査装置
12:タッチパネル
14:ステージ
16:近接部材
18x、18y、18z:駆動装置
20:スケール
22:荷重計
24:検出装置
26:制御装置
28:昇降装置
30:水平距離変更部
32:固定台
34:第1キャリブレーション手段
36:第2キャリブレーション手段
38:補正手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネルを載せる平面状のステージと、
前記タッチパネルおよびステージに接触または所定距離で配置され、タッチパネルおよびステージに対して移動される近接部材と、
前記ステージの面内の一方向および該一方向の垂直方向に、ステージと近接部材とを移動させるX軸駆動装置およびY軸駆動装置と、
前記近接部材をタッチパネルに対して垂直方向に移動させるZ軸駆動装置と、
前記近接部材の先端の位置を求めるスケールと、
前記近接部材がZ軸駆動装置によってタッチパネルに加えた力を計測する荷重計と、
前記タッチパネルに対して近接部材が接触または所定距離に配置されたときのタッチパネルの電気的変化を検出する検出装置と、
前記X軸駆動装置、Y軸駆動装置、Z軸駆動装置、スケール、荷重計および検出装置を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置が、
前記ステージまたはタッチパネルの複数点に近接部材を接触させたときの近接部材の位置からステージの傾斜を求める手段、
前記タッチパネルに近接部材を接触させたときの近接部材の位置を求める手段、
前記傾斜およびタッチパネルの近接部材を接触させたときの近接部材の位置を用いて、近接部材の移動量を補正する手段
として機能する
タッチパネル検査装置。
【請求項2】
前記昇降装置は、荷重計で計測された力が所定値を超えたとき、近接部材の降下を停止する請求項1のタッチパネル検査装置。
【請求項3】
前記近接部材は複数であり、近接部材ごとにタッチパネルに対する垂直方向に昇降させる昇降装置が備えられ、昇降装置はタッチパネルに接触または所定距離で配置する近接部材を降下させる請求項1または2のタッチパネル検査装置。
【請求項4】
前記近接部材同士の間隔を変更する装置を備えた請求項3のタッチパネル検査装置。
【請求項5】
前記近接部材をステージの面内で回転させる装置を備えた請求項1から4のいずれかのタッチパネル検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−73287(P2013−73287A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210033(P2011−210033)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】