説明

タッチパネル装置、記録装置

【課題】静電容量方式のタッチセンサーと、導光部材による発光構造とを備えて成るタッチパネル装置において、タッチセンサーと導光部材との間の隙間(空気層)の発生を防止して適切な検出を行うこと。
【解決手段】タッチセンサー装置は、導光部材10と、基板において導光部材10と対向する側の面に静電容量センサーを構成するタッチセンサーパターン(電極)が導電材料により形成されて成るタッチセンサー部13と、を備えている。タッチセンサー部13と導光部材10との間には、導光部材10より弾性率の低く、且つ誘電体材料により形成された中間層11、12が設けられている。この中間層11、12により、タッチセンサー部13との間に隙間(空気層)が形成されることを防止でき、前記隙間(空気層)に起因する不安定なタッチ検出が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として電子機器に採用されるタッチパネル装置に関し、特に静電容量方式のタッチセンサー部を備えて構成されたタッチパネル装置に関する。また、本発明は、当該タッチパネル装置を備えた、ファクシミリやプリンター等に代表される記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器には各種操作設定を行う為の操作ボタン、スイッチ類が操作パネルに設けられている。電子機器の一例としては記録装置があり、記録装置の中でも、インクジェットプリンター機構とスキャナー機構とを一体的に備えたインクジェットプリンターと呼ばれるものが近年広く普及している。
【0003】
この様なインクジェットプリンターにあっては、外部コンピューターを必要とせずそれ単独で画像データを読み込み、そして記録を行うスタンドアロン型に構成される為、例えば装置前方側に、画像などを表示する情報表示部や、多くのスイッチ類が配された操作パネルが配置される。
【0004】
この操作パネルは、例えばチルトパネル構造で構成され、具体的な操作スイッチ構造としては、例えば所定の動作ストロークを有するタクトスイッチ(アルプス電気株式会社の登録商標)のほか、タッチパネルが広く用いられている。
【0005】
タッチパネルには、その動作原理によって種々のものが存在するが、その中で、静電容量方式のものがある。この静電容量方式のタッチパネルは、基板上に静電容量測定用の電極(タッチセンサー)が設けられており、またこの電極上に保護部材(例えば誘電体で形成される)が設けられている。ユーザーが電極上の保護部材に触れると、静電容量が変化し、この静電容量の変化を制御手段が検出することで、スイッチのオン/オフ選択状態、また更にその接触位置などを検出することが可能となっている。
【0006】
また、操作スイッチには発光構造を採用する場合があり、特許文献1には、発光構造を採用したタッチセンサーの一例が示されている。特許文献1記載のタッチセンサー装置は、背景照明のための光を導波する導光板と、この導光板の下部に配された電極層と、導光板および電極層の側面に配置された光源と、を備えており、光源から発せられた光が導光板によって外部に拡散される様になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−234584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、静電容量方式のタッチセンサーの場合、静電容量の変化は電極に接触する物体の面積に依存する。従ってユーザーが触れる誘電体、特に発光構造を採用する場合には導光板と、静電容量の変化を検出する為の電極と、の間に隙間(空気層)が生じていると、ユーザーがタッチした際の静電容量の変化を適切に検出できず、即ちスイッチのオン/オフ選択状態を適切に検出できなくなる場合がある。
【0009】
上記特許文献1記載のタッチパネル装置においては、導光板はタッチセンサー上に直接配置されるが、例えば仮に導光板の下面が精密にフラットに形成されていない場合には、導光板とタッチセンサーとの間に上述した隙間(空気層)が形成されてしまい、適切な検出が行えない虞がある。そしてこの様な技術的課題を解決する手段については、上記特許文献1には記載も示唆もされていない。
【0010】
そこで本発明はこの様な状況に鑑みなされたものであり、その目的は、静電容量方式のタッチセンサーと、導光部材による発光構造とを備えて成るタッチパネル装置において、タッチセンサーと導光部材との間の隙間(空気層)の発生を防止して適切な検出を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係るタッチパネル装置は、静電容量測定用の電極が基板上に設けられて成るタッチセンサー部と、前記電極上に配置され、入射した光を出射面へと導く導光部材と、前記導光板と前記電極との間に設けられた、前記導光部材より弾性率の低い誘電体材料を含んで形成された中間層と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、静電容量方式のタッチセンサー部と導光部材との間には、導光部材より弾性の低い中間層が設けられているので、導光部材においてタッチセンサー部と密着する面が精密にフラットに形成されていない場合であっても、導光部材より弾性率の低い中間層によってタッチセンサー部との間に隙間(空気層)が形成されない。
【0013】
従って、静電容量方式のタッチセンサー部を備えたタッチパネル装置において、導光部材とタッチセンサー部との間に隙間(空気層)が生じることに伴う不具合、即ちユーザーがタッチした際の静電容量の変化を適切に検出できず、スイッチのオン/オフ選択状態を適切に検出できないといった不具合の発生を防止することができる。
【0014】
本発明の第2の態様は、第1の態様に係るタッチパネル装置において、前記導光部材より弾性率の低い誘電体材料は、弾性体であることを特徴とする。
本態様によれば、前記導光部材より弾性率の低い誘電体材料は、弾性体であるので、充分な弾性変形を得ることができることにより、上記第1の態様の作用効果をより確実に得ることができる。
【0015】
本発明の第3の態様は、第1のまたは第2の態様に係るタッチパネル装置において、前記中間層は、前記電極と前記導光部材とを接着する接着手段を兼ねていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、前記中間層は、前記電極と前記導光部材とを接着する接着手段を兼ねているので、前記電極に対し前記導光部材を保持する手段を別途設ける必要がなく、装置のコストアップを防止できる。
【0017】
本発明の第4の態様は、媒体に記録を行う記録装置であって、各種操作設定を行う操作設定部が、第1から第3の態様のいずれかに係る前記タッチパネル装置を備えて構成されていることを特徴とする。本態様によれば、媒体に記録を行う記録装置において、上記第1から第3の態様のいずれかと同様な作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るインクジェットプリンターの外観斜視図。
【図2】チルトパネルユニットの分解斜視図。
【図3】チルトパネルユニットの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1〜図3を参照しながら本発明の実施形態について説明する。ここで、図1は本発明に係る記録装置の一例としてのインクジェットプリンター1の外観斜視図、図2はチルトパネルユニット6の分解斜視図、図3は同断面図である。
【0020】
図1において被記録媒体に記録を行う記録装置の一例としてのインクジェットプリンター1は、被記録媒体に記録を実行する記録実行部であるインクジェットプリンター機構とスキャナー機構とを併せ持つインクジェットプリンターであり、符号1aはインクジェットプリンター機構及びスキャナー機構を備えた装置本体を示し、また符号2は装置本体1aの上部に設けられ、スキャナー機構の原稿台(図示せず)を開閉する原稿台カバー2を示している。
【0021】
符号3は画像データなどが記憶された記憶媒体(図示せず)を挿入する記憶媒体挿入部を示していて、インクジェットプリンター1は、記憶媒体挿入部3に挿入された記憶媒体に記憶された画像データを、外部コンピューターによらず、単独でインクジェット記録可能な所謂スタンドアロン型プリンターとして構成されている。
【0022】
符号4は装置底部に設けられ、装置手前側に引き出すことにより用紙を支持するサポート面が展開される排紙トレイを示しており、記録が行われて排出される用紙が、この排紙トレイ4により支持される。
符号5は装置底部に着脱自在に設けられた用紙カセットを示しており、記録手段を構成するインクジェット記録ヘッド(不図示)へと給送される記録が収容される。
【0023】
符号6は、プレビュー画像やユーザーインタフェースなどの各種情報を表示する、液晶モニタなどで構成される情報表示部と、電源投入ボタンや記録実行スイッチ、画像読み取り実行スイッチ、各種操作設定を行う設定スイッチ、等を含む操作スイッチ類(後述)を備えた、本発明に係るタッチパネル装置(操作設定部)としてのチルトパネルユニットを示している。
【0024】
このチルトパネルユニット6は図示しないチルト装置を介してインクジェットプリンター1の装置本体1aに対して回動(チルト)可能に設けられており、またそのチルト角が、上記チルト装置によって保持されるようになっていて、ユーザーにとって視認性及び操作性の良好な任意の角度で保持できるようになっている。
【0025】
以下、このチルトパネルユニット6について図2以降を参照しながら詳説する。
図2に示す様にチルトパネルユニット6は、化粧板7と、フレーム8と、複数の導光部材10からなる導光部材群9と、「中間層」としての両面テープ11、12と、タッチセンサー部13と、を備えて構成されている。但し、図2に示す構成はチルトパネルユニット6を構成する一部の部材であり、チルトパネルユニット6が図2に示す部材のみで構成される意味ではない。
【0026】
フレーム8はチルトパネルユニット6の基体を構成するフレームの1つであり、樹脂材料により形成されていて、図示を省略するタッチパネルを露呈させる為の1つの開口部8aと、複数の導光部材10に対応して形成される複数の開口部8bと、が設けられている。
【0027】
化粧板7は、樹脂材料(誘電体)により形成されていて、開口部8aに対応する領域は当該開口部8aに設けられるタッチパネル(不図示)の表示内容をそのまま透過させる様に透明領域で形成されており、その他の領域は、フレーム8、及び開口部8bに設けられる導光部材10がそのまま視認できない様に、所定の色が付された化粧領域(但し、所定の光透過率は確保されている)となっている。
【0028】
この化粧領域において、複数の導光部材10に対応する場所には、例えば[スタート]、[OK]、[メニュー]、[戻る]、等の、ユーザーが選択すべき項目名称やアイコンが印刷されており、対応する導光部材10から光が発せられると、それら表示が発光状態で視認可能となる様に構成されている。
【0029】
そしてユーザーが、選択すべき項目名称やアイコンが発光した部分(タッチ領域)に触れると、後述する静電容量方式のタッチセンサーが働き、スイッチが選択されたことに対応する各種動作、処理が行われる様になっている。
【0030】
尚、中央の開口部8aに設けられるタッチパネル(不図示)にも、ユーザーが選択すべき項目名称やアイコンが表示される様になっており、またこのタッチパネル(不図示)には、印刷すべき写真画像なども表示されるようになっている。
【0031】
続いて導光部材10は、光透過率の高い誘電体材料、例えばポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂などにより形成されており、図3に示すように上面がフレーム8の開口部8bと嵌合する様な段差形状に形成されているとともに、下面が平坦面となる様に形成されている。
【0032】
この導光部材10と隣接する位置には、複数設けられた導光部材10のそれぞれに対し、発光手段として例えばLED(不図示)が設けられており、このLEDから発せられた光が導光部材10の側面から入射し、そして上面(出射面)へと導かれ、上面から放射される様になっている。
【0033】
タッチセンサー部13は、基板において導光部材10と対向する側の面に静電容量センサーを構成するタッチセンサーパターン(電極)が導電材料により形成されて成り(図示は省略)、導光部材10を介してユーザーによるタッチ動作を静電容量の変化で検出できる様に構成されている。
【0034】
ここで、タッチセンサー部(電極)13と導光部材10との間には、中間層11、12が設けられている。この中間層11、12は、導光部材10より弾性率の低い誘電体材料により形成されている。特に、中間層11、12は、弾性材料を含んだもの、或いは弾性材料のみにより形成することができ、更に導光部材10とタッチセンサー部13とを接着する手段を兼ねる様に構成することができる。
【0035】
その一例としては、例えば両面テープや、硬化後の弾性率が導光部材10より低くなる接着剤などを利用することができる。両面テープでは、例えば基材のないタイプで、粘着剤のみで構成されているものなどを用いることができる。
【0036】
以上のように、静電容量方式のタッチセンサー部13と導光部材10との間に、導光部材10より弾性の低い中間層11、12が設けられているので、導光部材10においてタッチセンサー部13と密着する面が精密にフラットに形成されていない場合であっても、導光部材10より弾性率の低い中間層11、12が導光部材10とタッチセンサー部13との間の隙間(空気層)を埋める様に作用し、これにより導光部材10とタッチセンサー部13との間に隙間(空気層)が形成されることを防止できる。
【0037】
従って、導光部材10とタッチセンサー部13との間に隙間(空気層)が生じることに伴う不具合、即ちユーザーがタッチした際の静電容量の変化を適切に検出できず、スイッチのオン/オフ選択状態を適切に検出できないといった不具合の発生を防止することができる。
【0038】
また、中間層11、12は、タッチセンサー部(電極)13と導光部材10とを接着する接着手段を兼ねているので、タッチセンサー部13に対し導光部材10を保持する手段を別途設ける必要がなく、装置のコストアップを防止できる。
【0039】
但し、中間層11、12として、導光部材10とタッチセンサー部13とを接着する手段を兼ねるものではない部材、例えばゴムシートやアクリルシートなどを用いることも可能である。
【0040】
また、導光部材10とタッチセンサー部13との間に隙間(空気層)が生じることをより確実に防止する為に、導光部材10をタッチセンサー部13に対して付勢する構造を採用することも好適である。その様な構造としては、例えばフレーム8を、弾性を有する樹脂材料で形成し、組立状態において、開口部8bの周縁部(図3において符号8cで示す)が導光部材10をタッチセンサー部13に向けて付勢する様な構造とすることもできる。
【0041】
以上説明した実施形態は一例であり、これに限られないことは言うまでも無い。例えば、本実施形態では本発明に係るタッチパネル装置をファクシミリやプリンター等に代表される記録装置に適用した例について説明したが、その他の電子機器に適用することも可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0042】
1 インクジェットプリンター、1a 装置本体、2 原稿台カバー、3 記憶媒体挿入部、4 引き出し式排紙トレイ、5 用紙カセット、6 チルトパネルユニット、7 化粧板、8 フレーム、8a、8b 開口部、8c 周縁部、9 導光部材群、10 導光部材、11、12 中間層(両面テープ)、13 タッチセンサー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量測定用の電極が基板上に設けられて成るタッチセンサー部と、
前記電極上に配置され、入射した光を出射面へと導く導光部材と、
前記導光板と前記電極との間に設けられた、前記導光部材より弾性率の低い誘電体材料を含んで形成された中間層と、
を備えたタッチパネル装置。
【請求項2】
請求項1に記載のタッチパネル装置において、前記導光部材より弾性率の低い誘電体材料は、弾性体であることを特徴とするタッチパネル装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のタッチパネル装置において、前記中間層は、前記電極と前記導光部材とを接着する接着手段を兼ねている、
ことを特徴とするタッチパネル装置。
【請求項4】
媒体に記録を行う記録装置であって、各種操作設定を行う操作設定部が、請求項1から3のいずれか1項に記載の前記タッチパネル装置を備えて構成されている、
ことを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−242910(P2011−242910A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112891(P2010−112891)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】