説明

タッチパネル部材および座標検出装置

【課題】配線部と、電極部接続用広域部及び/又は外部電極接続部材接続用広域部とを備える取り出し配線を複数有し、該複数の取り出し配線における配線部が並列して伸長する領域を有するタッチパネル部材の取り出し配線と外部接続用部材との接続の電気信頼性を高くする。
【解決手段】基材と、該基材上に設けられる複数の電極部から構成される電極層と、上記電極部の端部に一端が電気的に接続される複数の取り出し配線と、を備え、上記取り出し配線は、配線部と、上記電極部と電気的に接続される側の端部に設けられる電極部接続用広域部及び/又は外部電極接続部材との接続が予定される側の端部に設けられる外部電極接続部材接続用広域部とを備え、上記電極部接続用広域部及び/又は外部電極接続部材接続用広域部は、導電部と開口部とに区画され、基材上にて複数の取り出し配線における配線部が並列して伸長する領域を有するようタッチパネル部材を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル部材および座標検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネルは、表示装置と座標検出装置を組み合わせた、入力デバイスとして注目を集めており、携帯電話、携帯音楽再生装置などのポータブルデバイス、自動販売機、パーソナルコンピュータの画面などを種々の技術分野において搭載機種が増加している。タッチパネルの方式は、その作動原理から抵抗膜方式、静電容量方式、光学方式、超音波表面弾性波方式、電磁誘導方式など様々であり、組み合わせて使用が予定されるデバイスの目的や使用環境などを勘案して、望ましい方式が選択される傾向にある。
【0003】
タッチパネルに用いられるタッチパネル部材は、一般的に、透明基材上に複数の電極部から構成される電極層を備え、且つ、各電極部の端部に電気的に接続される取り出し配線を備えて構成される。
【0004】
例えば、静電容量方式のタッチパネルを例にして、図8、図9を用いてタッチパネル部材を説明する。図8は、第一電極基板101と、第二電極基板102とが積層されてなる静電容量式タッチパネルに用いられるタッチパネル部材100の斜視図である。第一電極基板101は、透明基材107上に、矢印で示す左右方向に伸長する複数の第一電極部103が設けられ、第一電極部103の一端と電気的に接続される複数の第一取り出し配線104が設けられている。第一電極部103あるいは後述する第二電極部111(図9参照)は、一般的にはITOやIZOなどが採用されているが、導電性ワイヤを配設して電極部とするなど、その態様は選択可能である。第一取り出し配線104の一端には、第一電極部接続用広域部105が設けられており、第一電極部接続用広域部105を介して第一電極部103と電気的に接続されている。一方、タッチパネル部材100と外部電極との導通を可能とするために、第一取り出し配線104の他端には、第一外部電極接続部材接続用広域部106が設けられている。また、第一電極部接続用広域部105と第一外部電極接続部材接続用広域部106との間は、直線状に伸長する配線部109が設けられており、隣り合う第一取り出し配線104において複数の配線部109が並列している。外部電極接続部材としては、例えば、フレキシブル基板、フレキシブル回路、フレキシブルフラットケーブルなどが相当する。尚、図8において第一電極部103の一端には、第一取り出し配線104と接続されていない広域部が形成されているが、これは任意の設計である。
【0005】
第一電極基板101は、面内において境界108を境に、内側がタッチパネルの使用者がタッチ面を操作する操作領域(所謂、表示領域)、外側が非操作領域(所謂、額縁領域)に相当し、第一電極部103は主として操作領域に形成され、一方、第一取り出し配線104は額縁領域に形成されており、限られた領域内に密に導電配線が集約されている。かかる事情は後述する第二基板についても同様である。
【0006】
図9は、第二電極基板102の部分拡大図である。第二電極基板102は、透明基板110上に、第一電極部103(図8参照)と略直行する方向に伸長する複数の第二電極部111が設けられ、第二電極部111の一端と電気的に接続される複数の第二取り出し配線112が設けられている。第二取り出し配線112の一端には、第二電極部接続用広域部113が設けられており、第二電極部接続用広域部113を介して第二電極部111と電気的に接続されている。一方、タッチパネル部材100と外部電極との導通を可能とするために、第二取り出し配線112の他端には、第二外部電極接続部材接続用広域部114が設けられている。また、第二電極部接続用広域部113と第二外部電極接続部材接続用広域部114との間は、直線状に伸長する配線部115が設けられており、隣り合う第二取り出し配線112において複数の配線部115が並列している。尚、以下において、電極部接続用広域部および外部電極接続部材接続用広域部をまとめて単に「広域部」という場合がある。
【0007】
ところで、タッチパネルの小型化、軽量化などの要望に答えるために、タッチパネルに搭載されるタッチパネル部材についても小型化、軽量化が図られている。また、大型のタッチパネルも含め、その意匠性や操作性を向上する等の観点から、一定の規格内において、操作領域をなるべく大きく確保し、その分、額縁領域を狭くするという設計が求められる傾向にある。上記要求を勘案し、狭額縁化を図るためには、額縁領域において形成される取り出し配線をより小さい面積に集約する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平2010−61502
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記取り出し配線を備えるタッチパネル部材において、限られた領域に、並列する複数の配線部と広域部とを有する取り出し配線を集約しようとすると、取り出し配線の電気信頼性が低下する傾向にあり問題であった。上記電気信頼性の低下は、特に配線部の配線ピッチが小さくなるにつれて増大する傾向にあった。
【0010】
本発明者らは、上記電気信頼性の低下の原因を探求し、以下の具体的課題を見出した。例えば、スクリーン印刷により図6に示すように、並列する複数の配線部121と、配線部121の一端に設けられる四角形状の広域部122と、配線部121の他端に連続する太線形状の広域部123とから構成される取り出し配線120を基材124上に形成する。
このとき、第一の問題として、配線部121をクリアに形成しようとすると、広域部122、123にランダムな欠け部分が発生し電気信頼性を損なう傾向にあった。広域部122において確認された欠けの状態を示す写真を図7Aに、広域部123において確認された欠けの状態を図7Bに示す。尚、図7A、図7Bにおいて、黒い領域が、印刷形成された広域部であり、該広域部中に視認される白い領域が「欠け」である。
【0011】
一方、第二の問題として、形成される広域部122、123の欠けの問題が生じないような条件でスクリーン印刷を実施すると、並列する複数の配線部121間にペーストの滲みが発生し電気信頼性を損なう傾向にあった。並列する複数の微細配線部121の側面ラインに滲みが生じている状態を示す写真を図7Cに示す。
【0012】
即ち、本発明者らの検討により、タッチパネル部材における取り出し配線の電気信頼性の低下の問題は、並列する複数の配線部と広域部というパターンの異なる領域のいずれにおいても電気信頼性を満足させることの技術的困難性に起因することがわかった。
【0013】
尚、上記技術的困難性に鑑み、取り出し配線を単なる配線ラインだけで構成し、その端部に広域部を設けないという手段も考え得るが、取り出し配線の構成材料と、電極部の構成材料および外部電極接続部材の構成材料、あるいは外部電極接続部材を接続するための接着材料とは、異なっていることが一般的である。そこで、組み合わせの異なる材料間の接続においても充分な電気信頼性を確保するという理由から、取り出し配線と電極部、あるいは取り出し配線と外部電極接続用部材との接続領域において広域部を設けることが好ましい。
【0014】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、配線部と、電極部接続用広域部および/または外部電極接続部材接続用広域部とを備える取り出し配線を複数有し、上記複数の取り出し配線における配線部が、並列して伸長する領域を有するタッチパネル部材および上記タッチパネル部材を用いる座標検出装置に関し、上記取り出し配線の電気信頼性に優れるタッチパネル部材および上記タッチパネル部材を用いる座標検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
即ち、本発明は、
(1)基材と、上記基材上に設けられる複数の電極部から構成される電極層と、上記電極部の端部に一端が電気的に接続される複数の取り出し配線と、を備え、上記取り出し配線は、配線部と、上記電極部と電気的に接続される側の端部に設けられる電極部接続用広域部および/または外部電極接続部材との接続が予定される側の端部に設けられる外部電極接続部材接続用広域部とを備え、上記電極部接続用広域部および/または外部電極接続部材接続用広域部は、導電部と、開口部とに区画されており、上記基材上において、上記複数の取り出し配線における配線部が並列して伸長する領域を有することを特徴とするタッチパネル部材、
(2)上記複数の取り出し配線における配線部が並列して伸長する領域のうち、隣り合う配線部間の距離が最小の領域において、該距離が150μm以下であることを特徴とする上記(1)に記載のタッチパネル部材、
(3)上記取り出し配線の端部に、導電部と開口部とに区画される外部電極接続部材接続用広域部が設けられており、上記外部電極接続部材接続用広域部と電気的に接続された外部電極接続部材を備え、上面視上、上記外部電極接続部材接続用広域部と、上記外部電極接続部材とが積層される総積層面積を100%としたときに、該外部電極接続部材接続用広域部における導電部と、該外部電極接続部材とが積層される面積が、上記総積層面積に対し50%以上であることを特徴とする上記(1)または(2)のいずれかに記載のタッチパネル部材
(4)上記導電部と開口部とに区画される電極部接続用広域部および/または上記導電部と開口部とに区画される外部電極接続部材接続用広域部は、線状の導電部と線状の開口部とが交互に配列してなるパターンを含み、上記線状の導電部と線状の開口部とにおける配線ピッチが、上記複数の取り出し配線における配線部が並列して伸長する領域における配線ピッチ以上であることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれかに記載のタッチパネル部材、
(5)上記電極層として、所定のパターンにより形成される第一電極部からなる第一電極層と、所定のパターンにより形成される第二電極部からなる第二電極層を備え、上記第二電極層は、上記基材の一方面側において上記第一電極層上に積層されているか、あるいは、上記基材を介して上記第一電極層と積層されており、上記第一電極部の端部に電気的に接続される複数の第一取り出し配線と、上記第二電極部の端部に電気的に接続される複数の第二取り出し配線とを備え、上記第一取り出し配線は、配線部と、上記第一電極部と電気的に接続される側の端部に設けられる第一電極部接続用広域部および/または外部電極接続部材との接続が予定される側の端部に設けられる第一外部電極接続部材接続用広域部とが設けられており、上記第二取り出し配線は、配線部と、上記第二電極部と電気的に接続される側の端部に設けられる第二電極部接続用広域部および/または外部電極接続部材との接続が予定される側の端部に設けられる第二外部電極接続部材接続用広域部とが設けられており、下記(態様I)および/または下記(態様II)が採用されることを特徴とする上記(1)から(5)のいずれかに記載のタッチパネル部材、
(態様I)上記第一電極部接続用広域部および/または第一外部電極接続部材接続用広域部は、導電部と開口部とに区画されており、上記基材上に上記複数の第一取り出し配線における配線部が並列して伸長する領域を有する。
(態様II)上記第二電極部接続用広域部および/または第二外部電極接続部材接続用広域部は、導電部と開口部とに区画されており、上記基材上に上記複数の第二取り出し配線における配線部が並列して伸長する領域を有する。
(6)基材と、上記基材上に設けられる複数の電極部から構成される電極層と、上記電極部の端部に一端が電気的に接続される複数の取り出し配線と、を備え、上記取り出し配線は、配線部と、上記電極部と電気的に接続される側の端部に設けられる電極部接続用広域部および/または外部電極接続部材との接続が予定される側の端部に設けられる外部電極接続部材接続用広域部とを備え、上記電極部接続用広域部および/または外部電極接続部材接続用広域部は、導電部と、開口部とに区画されており、上記基材上において、上記複数の取り出し配線における配線部が並列して伸長する領域を有するタッチパネル部材を用い、上記電極層を挟んで、上記基材上に対向する対向基材を設け、該基材または該対向基材のいずれかを直接または間接のタッチ面とし、上記タッチ面に対し、直接または間接に行なわれる接触動作によって出力される電気信号を検出する検出回路と、上記検出回路において検出された電気信号から上記接触動作の行なわれた接触位置の座標を算出する座標算出用演算回路と、を備えることを特徴とする座標検出装置、
を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明のタッチパネル部材は、配線部と広域部とを備える複数の取り出し配線が設けられており、上記広域部が、ベタ形成されず、導電部と開口部とによって区画されている。これにより、複数の取り出し配線における配線部が並列して伸長する領域と、広域部とが併存しても、配線部と広域部ともに電気信頼性を満足させることが可能となり、電気信頼性の優れた取り出し配線を備えるタッチパネル部材の提供を可能とした。
【0017】
また、本発明のタッチパネル部材を用いる本発明の座標検出装置は、タッチパネル部材の良好な電気信頼性が反映され、座標検出の確実性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のタッチパネル部材の一実施態様における取り出し配線部分の拡大図である。
【図2】本発明に用いられるスクリーン版において広域部パターンの区画態様の例を示す模式図である。
【図3】本発明のタッチパネル部材の一実施態様における取り出し配線部分の拡大図である。
【図4】本発明のタッチパネル部材における取り出し配線の製造方法を説明する説明図である。
【図5】本発明の座標検出装置の動作の流れの一実施態様を説明するための説明図である。
【図6】従来のタッチパネル部材における取り出し配線部分の拡大図である。
【図7】従来の印刷基板における印刷時の欠け、または滲みの状態を示す写真である。
【図8】タッチパネル部材の斜視図である。
【図9】従来のタッチパネル部材における第二基板の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[タッチパネル部材]
以下に、本発明のタッチパネル部材について説明する。本発明のタッチパネル部材は、取り出し配線の詳細を除き、従来のタッチパネル部材と同様に構成することが可能である。例えば、図8に示すタッチパネル部材100のように、第一電極基板101と第二電極基板102とが積層された静電容量式のタッチパネル部材であってもよく、あるいは静電容量式以外の形式のタッチパネル部材であって、基材と、上記基材上に設けられる複数の電極部から構成される電極層とを備え、該電極層に取り出し配線が電気的に接続されるいずれのタッチパネル部材にも適用可能である。尚、以下に示す実施の形態や種々の例示は、本発明を限定するものではなく、本発明は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、適宜の設計変更を含む。
【0020】
(取り出し配線)
図1に、本発明のタッチパネル部材の一実施態様における取り出し配線部分を拡大して示す。図1に示されるタッチパネル部材1は、基材2上に複数の一定間隔で整列する電極部3から構成される電極層と、電極部3の端部に電気的に接続される取り出し配線4を備えて構成されている。そして、取り出し配線4の電極層側の端部には、電極部3の端部と電気的に接続する電極部接続用広域部5(以下、「広域部5」ともいう)が設けられており、他方の端部には、外部電極接続部材接続用広域部6(以下、「広域部6」ともいう)が設けられている。これらの広域部5、6は、ぞれぞれ、黒塗りで示される導電部7と白抜きで示される開口部8とから区画されている。このように、本発明における電極部接続用広域部および/または外部電極接続部材接続用広域部は、実質的に全面が導電材料から形成される広域部(以下、「ベタ形成される広域部」ともいう)ではなく、一定面積内において、導電を可能とする導電部と、開口部とに区画されていることを特徴とする。また、広域部5、6間には配線部4’が存在し、複数の配線部4’が並列して伸長する領域が形成されている。
【0021】
本発明は、上述のとおり、取り出し配線において、一定の面積を示す広域部を、導電部と開口部という微細なパターンで区画することによって、従来において問題であったべた形成される広域部と並列する複数の配線部との並存における課題を解決するものである。
【0022】
尚、タッチパネル部材1において、符号9として示される境界は、タッチパネル部材1の操作領域10と額縁領域11との境界を示す。図1からも明らかなとおり、額縁領域11には、取り出し配線4が集約されており、狭額縁化によって、並列する配線部4’の配線ピッチの縮小化が余儀なくされることが理解される。
【0023】
本発明における広域部の区画パターンは、特に一定のパターンに限定されるものではない。図2に、本発明における広域部の区画パターンの例を示すために、広域部のみを示す。本発明における広域部は、図2(A)に示す広域部12のように、導電部13内に複数の島状の開口部14が設けられることによって区画されていてよい。島状の開口部14は、図2(A)では一定間隔で整列しているが、導電部13間にランダムに島状の開口部14が設けられていてもよい。また図2(B)に示す広域部15のように、導電部16と、複数の整列する線状の開口部17が設けられていてもよい。開口部17と、開口部17間に位置する導電部16とにおける配線ピッチは任意である。また図3(C)に示す広域部18のように、導電部19と、一端解放の開口部20とが任意のパターンで設けられていてもよい。尚、このように一端解放の開口部を区画パターンに含む広域部においても、該広域部の外縁は、図中に示す辺aと、辺bとで囲まれる枠と理解する。また、図2(D)に示す広域部21のように導電部22と導電部22’とが分離して設けられており、その間に開口部23が設けられてもよく、またさらに任意で導電部22’の内部にも開口部23’が設けられた区画パターンであってもよい。
【0024】
本発明における広域部は、以上に例示するパターンを含め、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、広域部内を区画する導電部と開口部を備えるパターンを適宜決定して実施することができる。特に、電極部と取り出し配線との導通性、あるいは取り出し配線と外部電極接続部材との導通性を充分に確保するという観点からは、図2(A)〜(C)に例示するように、導電部が、地続きで連続しているパターンが好ましい。導電部の任意の箇所と電極部、あるいは外部電極接続部材とが積層された場合に、導電部全体として導通に関与可能だからである。
【0025】
本発明のタッチパネル部材は、一枚の基板に、タッチパネルのセンサに関与する電極が設けられてなるものであってもよいし、あるいは、図8に示すように、複数の電極基板を積層して構成されるタッチパネル部材であってもよい。
【0026】
例えば静電容量式のタッチパネルでは、電極層として、所定のパターンにより形成される第一電極部からなる第一電極層と、所定のパターンにより形成される第二電極部からなる第二電極層を備える態様が知られる。第一電極層および第二電極層は、第二電極層が、上記基材の一方面側において第一電極層上に積層されることにより、一枚の基板の一方面側に積層されて設けられていてもよい。あるいは第一電極層および第二電極層は、上記第二電極層が、基材を介して上記第一電極層と積層されることにより、基板の両面側にそれぞれの電極層が設けられていてもよい。また本発明において、上記第二電極層が、基材を介して上記第一電極層と積層される態様の静電容量式のタッチパネルには、第一電極層が設けられる第一電極基板と、第二電極層が設けられる第二電極基板とが別々に作成され、第一電極基板と第二電極基板とが積層されることによって積層電極が構成される態様が含まれる。
【0027】
本発明のタッチパネル部材を上記静電容量式のタッチパネルに適用させる場合には、各電極層が設けられる基板面における額縁領域に取り出し配線が形成される。上記取り出し配線としては、上記第一電極部の端部に電気的に接続される複数の第一取り出し配線と、上記第二電極部の端部に電気的に接続される複数の第二取り出し配線とを備える。
そして上記第一取り出し配線は、配線部と、上記第一電極部と電気的に接続される側の端部に設けられる第一電極部接続用広域部および/または外部電極接続部材との接続が予定される側の端部に設けられる第一外部電極接続部材接続用広域部が設けられ、一方、上記第二取り出し配線は、配線部と、上記第二電極部と電気的に接続される側の端部に設けられる第二電極部接続用広域部および/または外部電極接続部材との接続が予定される側の端部に設けられる第二外部電極接続部材接続用広域部が設けられる。上記第一、第二取り出し配線における広域部は、いずれも導電部と開口部とに区画されていてもよいし、あるいは、区画されることが好適な広域部を選択的に導電部と開口部とに区画し、その他の広域部をべた形成してもよい。
即ち、本発明のタッチパネル部材を、2つの電極層を積層させる方式のタッチパネルに適用する場合には、下記(態様I)および/または下記(態様II)が採用されてよい。
(態様I)上記第一電極部接続用広域部および/または第一外部電極接続部材接続用広域部は、導電部と開口部とに区画されており、上記基材上に上記複数の第一取り出し配線における配線部が並列して伸長する領域を有する。
(態様II)上記第二電極部接続用広域部および/または第二外部電極接続部材接続用広域部は、導電部と開口部とに区画されており、上記基材上に上記複数の第二取り出し配線における配線部が並列して伸長する領域を有する。
2以上の電極層を積層させる方式のタッチパネルに搭載されるタッチパネル部材は、特に、狭額縁化される限定的な領域に、多数の取り出し配線を形成することを余儀なくされるため、並列する複数の配線部と、その端部に設けられる広域部とを併存させたときの電気信頼性の確保が重要な課題であったところ、本発明のタッチパネル部材であれば、上記課題を良好に解決することができる。
【0028】
図3を用いて、さらに本発明のタッチパネル部材における取り出し配線について詳細に説明する。図3は、本発明のタッチパネル部材の一実施態様における取り出し配線31が形成された領域を示す上面図である。取り出し配線31は、その一端に電極部接続用広域部32を備え、電極部接続用広域部32に連続して、微細配線部33が伸長している。隣り合う複数の取り出し配線31において、複数の微細配線部33が、並列して紙面x軸方向に伸長する領域を有する。そして、微細配線部33は、微細配線部33の線幅よりも太い太配線部34に連続している。取り出し配線31の端部であって太配線部34の端部は、外部電極接続部材接続用広域部35として兼用される。図中、境界36は、タッチパネル部材の操作領域37と額縁領域38の境界を示す。操作領域37から伸長する電極部39の端部は、額縁領域38内において、電極部接続用広域部32と積層され、電気的に接続されている。一方、取り出し配線31における他端である外部電極接続部材接続用広域部35は、外部電極接続部材40と、積層され、電気的に接続されている。外部電極接続部材40は、外部電極と取り出し配線31との電気的接続を可能とする部材であれば任意選択して使用することができ、例えばフレキシブルプリント基板(FPC)や、フレキシブルフラットケーブル(FFC)などが例示されるがこれに限定されない。外部電極接続部材接続用広域部35と外部電極接続部材40との電気的な接続手段は特に限定されないが、例えば異方性導電性フィルム(AFC)や、異方性導電性ペーストを用いて両者を接着することにより実施されてよい。一方、電極部39と電極部接続用広域部32との電気的な接続手段は特に限定されないが、一般的には、電極部接続用広域部32を含む取り出し配線31が導電性材料より形成されるため、電極部39と電極部接続用広域部32とが直接に接するよう積層形成されることによってこれらの電気的接続が実現される。
【0029】
図1および図3では、いずれも1つの電極部の端部に1つの電極部接続用広域部が積層されて電気的に接続される態様を示したが、本発明のタッチパネル部材はこれに限定されず、たとえば、1つの電極部接続用広域部に接続される電極部は2以上であってもよく、種々のタッチパネルの形式にあわせ、適宜設計変更可能である。
【0030】
本発明において、電極部接続用広域部32、外部電極接続部材接続用広域部35といった広域部は、微細配線部33の線幅aよりも、縦方向および横方向の寸法が大きい領域を意味する。具体的には、図3に示す電極部接続用広域部32の縦寸法cおよび横寸法d、並びに太配線部34の縦寸法eおよび横寸法fは、いずれも微細配線部33の線幅aよりも大きく設計されている。そして電極部接続用広域部32は、導電部41と並列する複数の線状の開口部42とに区画されて形成されている。また、外部電極接続部材接続用広域部35を含む太配線部34は、導電部43と、線幅方向略中央において紙面y軸法に伸長する一本の開口部44とに区画されて形成されている。
【0031】
尚、本発明において広域部は、図1に示すように、配線部の少なくとも一端における特定の領域であってもよいし、図3に示すように、配線部に連続する、該配線部よりも線幅の太い太配線部を備え、該太配線部の端部を、電極部接続用広域部あるいは外部電極接続部材接続用広域部として兼用してもよい。尚、取り出し配線において、線幅の異なる配線部が存在する場合には、最小の線幅を示すものを微細配線部として認識し、これよりも線幅の太い配線部を太配線部として認識してよい。このとき太配線部を図3に示すように導電部と広域部とに区画形成するか否かは任意である。
【0032】
一般的には、タッチパネル部材の額縁領域において複数の取り出し配線を形成する際、複数の配線部が並列して伸長する領域の設計がシビアであるため、上記領域の形成にあわせて取り出し配線の形成部材や形成条件を選択することが望ましい。しかしながら、その結果、取り出し配線において配線部よりも実質的に広面積な領域(広域部)の形成が困難となり、該広域部の欠けが誘因されるものと推察される。一方、広域部の欠けを回避するために、広域部の形成に合わせて形成部材や形成条件を選択して取り出し配線を形成すると、これによって形成される複数の配線部が並列して伸長する領域において配線部に滲みなどの問題が生じるものと推察される。このような並列する配線部と広域部との併存による問題は、特に、複数の並列する配線部の配線ピッチ200μm以下となった場合に深刻である。
【0033】
これに対し、本発明における取り出し配線は、従来のベタ形成される広域部ではなく、導電部と開口部とで区画される広域部を備えるために、広域部の形成を、複数の配線部が並列する領域の形成条件に適応させやすく、広域部および並列する配線部のいずれにおいても電気信頼性を満足させ、取り出し配線の電気信頼性の低下という問題を解決することが可能である。特に、複数の配線部が並列する領域における配線ピッチが200μm以下のパターンを含む取り出し配線を実施する場合には、本発明のタッチパネル部材を適用することは好適である。尚、本発明において配線ピッチとは、配線部の線幅(図3においては配線部33の線幅a)と隣り合う配線部間の距離(図3において隣り合う配線部33間の距離b)との和を意味する。
【0034】
また、取り出し配線の配線ピッチに限定されず、複数の配線部が並列する領域における隣り合う配線部間の距離が150μm以下となるパターンにおいても、配線部の滲みが発生し易い。したがって、このような場合においても、本発明にタッチパネル部材を適用することにより、複数の配線部が並列する領域および広域部の併存において、電気信頼性の高い取り出し配線を備えるタッチパネル部材を提供することが容易となる。
【0035】
次に、図3を用い、電極部接続用広域部32と電極部39との積層面積について説明する。
図3において上面視上、1つの電極部接続用広域部32と1つの電極部39とが積層される総積層面積は、電極部39の線幅kと電極部39の伸長方向における電極部接続用広域部32と重なり距離lとの積により求められる。一方、1つの電極部接続用広域部32における導電部41と1つの電極部39とが積層される面積(以下、「導電部積層面積」ともいう)は、上面視上、導電部41と1つの電極部39とが重複する領域における面積の和、具体的には、図3において斜線で示されるS1、S2、S3、S4、S5の和である。従来のタッチパネル部材では、広域部はベタ形成されることが一般的であったため、総積層面積と導電部積層面積とは等しく、これによって電極部と取り出し配線の確実な導通性を確保していた。
一方、本発明のタッチパネル部材は、上記総積層面積よりも上記導電部積層面積の方が小さい態様を含むが、そのような態様であっても、電極部と取り出し配線の導通性を良好なものとすることが可能であることがわかった。特には、上記総積層面積を100%としたときに、上記導電部積層面積が30%以上である場合には、電極部と取り出し配線との導通性をより確実なものとし易く好ましく、上記導電部積層面積が35%以上であることがより好ましい。
【0036】
上述に述べる、総積層面積と導電部積層面積との比率を実質的なものとするためには、導電部41は、図2(A)〜(C)に例示されるごとく、地続きに連続する導電部であることが好ましい。
【0037】
また同様に、図3を用い、外部電極接続部材接続用広域部35と外部電極接続部材40との積層面積について説明する。
図3において上面視上、1つの外部電極接続部材接続用広域部35と外部電極接続部材40との総積層面積は、外部電極接続部材接続用広域部35(太配線部34)の線幅fと外部電極接続部材40の伸長方向における外部電極接続部材接続用広域部35と重なり距離mとの積により求められる。一方、1つの外部電極接続部材接続用広域部35における導電部43と外部電極接続部材40とが積層される面積(以下、「導電部積層面積」ともいう)は、総積層面積と、外部電極接続部材接続用広域部35における開口部44の面積との差により示される(図中、斜線部S6における面積)。従来のタッチパネル部材では、広域部はベタ形成されることが一般的であったため、総積層面積と導電部積層面積とは等しく、これによって外部電極接続部材と取り出し配線の確実な導通性を確保していた。
一方、本発明のタッチパネル部材は、上記総積層面積よりも上記導電部積層面積の方が小さい態様を含むが、そのような態様であっても、外部電極接続部材と取り出し配線の導通性を良好なものとすることが可能であることがわかった。特には、上記総積層面積を100%としたときに、上記導電部積層面積が50%以上である場合には、外部電極接続部材と取り出し配線との導通性をより確実なものとし易く好ましい。
外部電極接続部材接続用広域部における導電部積層面積の比率は、電極部接続用広域部における導電部積層面積の比率よりも同等以上であることが好ましい。なぜならば電極部接続用広域部においては、電極部と電極部接続用広域部とは、一般的に直接に積層されて電気的に接続させることができるが、外部電極接続部材用広域部と外部電極接続部材とは、一般的には導電性粒子含有の粘着材などを介して張り合わされて電気的に接続される。そのため、電気的接続を充分に確保するためには、外部電極接続部材用広域部における導電部と外部電極接続部材との積層面積を、充分に確保することが望ましいという理由による。
【0038】
本発明のタッチパネル部材は、タッチパネルの仕様によらず好適に実施可能であり、ポータブルデバイスに用いられるタッチパネル、比較的大型の表示装置等に用いられるタッチパネルなど種々の大きさのタッチパネルに用いることができる。したがって本発明のタッチパネル部材における取り出し配線の設計、特に、配線ピッチや、広域部の外縁寸法も、デバイスにあわせて適宜設計してよい。尚、本発明のタッチパネル部材は、狭額縁化に良好に対応可能であるという優れた特徴を有し、例えば、広域部を0.3mm×1.5mm以上とし、且つ、複数の取り出し配線における配線部が並列して伸長する領域における配線ピッチが200μmという制限された設計パターンによっても良好な電気信頼性を示す取り出し配線を備えるタッチパネル部材を提供することができ、かかる設計パターンにおいても、特には、上述する総積層面積に対する導電部積層面積が、電極部接続用広域部30%以上、外部電極接続部材接続用広域部においては50%以上とすることが、本発明の所期の目的を充分に達成するために望ましい。
【0039】
次に、本発明における広域部の設計について、より詳細に説明する。上記広域部に関し、導電部と開口部とによる区画パターンが任意で良いことは上述において図2を用いて説明するとおりである。ただし、より確実に取り出し配線の電気信頼性を得るため、あるいは、電気信頼性の確実な取り出し配線をより容易に得るためには、図3に示す広域部32のように、線状の開口部42とこれに並列する線状の導電部32とが交互に配列してなるパターンを含み、且つ、線状の開口部42と開口部42間における導電部(線幅h)とにおける配線ピッチが、配線部33における配線ピッチ以上であることが好ましい。また、同様に、太配線部34における開口部44の線幅iと導電部43(線幅j)とにおける配線ピッチが、配線部33における配線ピッチ以上であることが好ましい。
尚、本発明における広域部において、線状の開口部と該開口部間における導電部とにおける配線ピッチとは、線状の開口部間における導電部の線幅(図3においては電極部接続用広域部32における導電部41であって線幅h)と、隣り合う開口部の線幅(図3においては開口部42における線幅g)との和を意味する。
また、本発明において、太配線部における開口部の線幅と導電部とにおける配線ピッチとは、取り出し配線において、細状に形成された配線部を超える線幅を有する太線配線部において設けられた線状の開口部の線幅(図3においては線幅i)と、この一方側に隣り合う該太線配線部を構成する線状部分の線幅(図3においては線幅j)との和を意味する。太線配線部において設けられた線状の開口部は、太線配線部において隣り合う配線部分の線幅が均等になるよう設けられることが好ましい。ただし太線配線部において設けられた線状の開口部に隣り合う、該太線配線部を構成する線状部分の線幅が左右異なる場合には、開口部の線幅と、一方側に隣り合う該太線配線部を構成する線状部分の線幅との和の小さい方を、太配線部における開口部の線幅と導電部とにおける配線ピッチとし、細状に形成された配線部における配線ピッチと比較されることが好ましい。
【0040】
線状の開口部42と開口部42間における導電部(線幅h)とにおける配線ピッチ、太配線部34における開口部44の線幅iと導電部43(線幅j)とにおける配線ピッチ、配線部33における配線ピッチが略等しい場合、取り出し配線31の設計において、配線部33間における滲みを防止することにより、電極部接続用広域部32内および外部電極接続部材接続用広域部35を含む太配線部32内における滲みの発生をも防止することができる。また、取り出し配線の設計が実質的に一の配線ピッチで可能となり、形成がしやすく、また、いずれの領域をとっても同様の導通が発揮可能であるため、確実な導通性能が得られやすい。
【0041】
一方、線状の開口部42と開口部42間における導電部(線幅h)とにおける配線ピッチが、配線部33における配線ピッチより大きい場合、あるいは、太配線部34における開口部44の線幅iと導電部43(線幅j)とにおける配線ピッチが、配線部33における配線ピッチより大きい場合には、配線部33の設計および形成を優先して微細な配線部間における滲みなどを防止するとともに、広域部においても開口部があることによって欠けの問題を回避し得る上、該広域部における配線パターンも充分に良好に形成することができる。
【0042】
次に、本発明のタッチパネル部材における取り出し配線を形成する方法について説明する。上記取り出し配線を作成する方法が特に限定されず、公知の取り出し配線の作成方法に倣って実施することができる。本発明における取り出し配線は、広域部と配線部とを有し、また複数の取り出し配線において、配線部が並列して伸長する領域を有し、且つ、上記広域部が、導電部と、開口部とに区画されるという特徴を有する。このような特徴を備える取り出し配線の形成方法としては、取り出し配線を形成することが可能な形成方法であれば特に限定されない。例えば、スクリーン印刷により取り出し配線を作成する場合には、取り出し配線の所望のパターンのスクリーン版を準備し、これを用いて従来方法通りのスクリーン印刷により本発明における取り出し配線を形成することができる。また、その他の方法としては、インクジェット方式、グラビアオフセット印刷方式などが例示される。印刷方式以外の方法、例えばフォトリソグラフィ法によって本発明の取り出し配線を形成することもできる。
【0043】
以下においては、スクリーン印刷法により本発明における取り出し配線を作成する方法を、図4を用いて説明する。尚、本発明における取り出し配線を作成するために用いられるスクリーン版は、上述する取り出し配線の形成を実施可能な印刷パターンを備えるスクリーン版であればよい。即ち、上記スクリーン版は、広域部における導電部および配線部を転写形成するためのメッシュ部と、広域部における開口部を含む、配線が形成されない領域をもたらす乳剤部とを備える。配線部が並列して伸長する領域や、広域部における開口部の形成を確実なものとするために、スクリーン印刷に用いられるペーストのレベリング性を勘案し、タッチパネル部材において求められる取り出し配線の各線幅よりも、スクリーン版における転写開口部の線幅をやや小さく設計してもよい。
【0044】
図4(A)は、本発明における取り出し配線を形成するためのスクリーン版の例である。スクリーン版50は、配線部転写用メッシュ部51と、導電部転写用メッシュ部52と、乳剤部53とを有する。乳剤部53には、広域部を導電部とともに区画する開口部を設けるための開口部形成用乳剤部54を含む。スクリーン版50において、開口部形成用乳剤部54は、直線形状であって一定間隔で並列する複数の開口部として設けた。そして導電部形成用メッシュ部52の配線ピッチと、配線部転写用メッシュ部51の配線ピッチとを略同一に設計した。ただし、上記スクリーン版の設計パターンは、何ら本発明のタッチパネル部材を限定するものではなく、また本発明のタッチパネル部材を形成するために用いられるスクリーン版を限定するものではない。スクリーン版に示される取り出し配線の形成パターンは、本発明の取り出し配線において許容される範囲で、これに適して適宜設計されてよい。
【0045】
また本発明にける取出し配線を形成するために用いられるスクリーン版は、公知のスクリーン版を適宜選択して用いてよく、一般的には、ステンレスなどからなる内紗とその周囲を囲むポリエステルなどからなる外紗、さらにその周囲に設けられるアルミなどからなる枠体から構成されてよい。外紗が省略され、枠体に直接に内紗が取り付けられてもよい。
【0046】
上述のとおり準備されたスクリーン版50は、基材55上に設置される。図4(B)に、基材55上にスクリーン版50が設置され、スクリーン版50上にペースト56が吐出された状態を、基材A−A断面方向から示す。ペースト56は、スクレッパー57によりスクリーン版50面上に展開され、配線部転写用メッシュ部51および導電部転写用メッシュ部52に充填される。図示省略するが、その後、スキージをスクリーン版50面にあて、基材55面方向に圧力をかけながら、スクリーン版50の各メッシュ部に充填されているペースト56が基材55面に転写される。転写終了後、図6(C)に示すとおり基材55面上からスクリーン版50が取り除かれ、導電部58と開口部59とから区画される広域部60と、並列する複数の配線部61からなる領域を備える取り出し配線62が形成される。
【0047】
上述のとおり、本発明のタッチパネル部材における取り出し配線をスクリーン印刷で形成する場合には、ペーストとしては、一般的なスクリーン版に用いられるいずれかのペーストから任意に選択することができる。本発明に用いられるスクリーン版には、上述する微細配線部パターンと広域部パターンとが併存するところ、ペーストの選択は、例えば配線部のパターンに適した材料が含まれるペーストあるいは、これに適した粘度のペーストを好ましく選択することができる。
特に、配線ピッチが200μm以下という微細な配線部の印刷形成に適したペーストを選択し、これを用いて広域部をもスクリーン印刷した場合に、従来であれば、べた形成される広域部に欠けが発生するという問題があったが、本発明であれば、広域部を導電部と開口部とに区画して形成するため、広域部の欠けの問題を防止することが可能である。したがって、換言すると、広域部の欠けの問題に配慮することなく、微細な配線部の印刷形成に適したペーストを選択することができる。所望の配線ピッチの配線部を印刷形成したときに、隣り合う配線部間に滲みの問題の生じないペーストを予備実験において選択し、当該ペーストを用いて本発明のタッチパネル部材を形成してもよい。
【0048】
本発明における取り出し配線は、タッチパネル部材の電極部から外部電極への導電を可能とするための導電配線であるため、取り出し配線を形成するために用いられるスクリーン印刷用のペーストには、導電性材料が含有される。上記導電性材料としては、任意の金属粒子が一般的であり、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、クロム(Cr)、プラチナ(Pt)、アルミニウム(Al)又はこれらの金属のうちのいずれか2種類以上の金属を含む合金、例えばAPC(銀、パラジウム、銅の合金)、MAM(モリブデン、アルミニウム、モリブデンの合金)などが挙げられるが、これに限定されない。特に銀粒子が、ペースト100質量部に対し、70〜99質量部程度含有される銀ペーストは、150〜300Pa・s範囲(ブルックフィールド粘度計、測定回転数5rpm)の高粘度を示すことが可能である。このような高粘度のペーストは、配線ピッチ200μm以下の複数の微細な配線部パターンを印刷形成することに適しており、本発明における取り出し配線の形成においても好ましく使用される。
【0049】
上記ペーストを用いて形成される取り出し配線に含有される金属粒子の粒径は特に限定されない。数十nm〜数百nm程度の粒径の金属微粒子を1種選択してもよいし、あるいは、上記範囲において異なる粒径の金属粒子を混合させてもよい。
中でも、数百nm程度、特には100〜300nm程度の銀粒子などの金属微粒子と、数μm程度、特には1μm〜3μm程度の銀粒子などの金属粒子を混合させてなるペーストは、配線ピッチ200μm以下の複数の微細配線部パターンにより、電気信頼性の良好な並列する複数の微細配線部を印刷形成することに適し、且つ、形成された導電配線の電気抵抗率を下げる効果があるため、本発明に用いられるペーストとして好ましい。尚、上記金属微粒子は、平均一次粒径が、数十nm〜数百nm、特には100〜300nm程度のサイズの金属微粒子を意味し、これらがペースト内において凝集して二次粒子となっている場合であっても、凝集前の金属微粒子の粒径を意味する。
【0050】
また、本発明のタッチパネル部材における取り出し配線を形成するために用いられるペーストには、金属粒子に加え、バインダーとして樹脂材料が含有されることが好ましい。上記樹脂材料の例としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、オリゴエステルアクリレート樹脂、キシレン樹脂、ビスマレイドトリアジン樹脂、フラン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、シリコン樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂、オキサジン樹脂、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、ケトン樹脂、ポリスチレン、ポリエステルなどを挙げることができ、また上述される樹脂を含む任意の樹脂から選択された2種以上の樹脂を組み合わせ含有させてもよい。より好ましい樹脂の例としては、低温焼成が可能であるという点よりビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、もしくはそれらの混同樹脂が好ましく使用される。これらの樹脂の一部、または残渣は、形成された取り出し配線に残存していてもよい。
【0051】
本発明における取り出し配線の形成に用いられるペーストには、上述する金属粒子、樹脂材料以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、硬化材などの任意の材料が含有されてよい。また、ペーストに含まれる金属粒子を含む構成材料の配合量は、特に限定されず、一般的にスクリーン印刷に適用可能とされるペーストの配合に倣うことができる。上述するペーストに含まれる材料は、適当な液に混練され、適当な粘度に調製され、本発明に用いられるペーストが調製される。あるいは、市販のペーストを適宜選択して用いてもよい。
【0052】
本発明における取り出し配線の厚みは、特に限定されず、一般的に実施されるタッチパネル部材における取り出し配線の厚みに倣って適宜決定することができる。一般的には、2μm〜20μm程度に設計してよいが、これに限定されない。
【0053】
以上において、本発明における取り出し配線をスクリーン印刷により形成する場合において、用いられるペーストについて説明したが、本発明における取り出し配線を構成する材料はこれに限定されるものではない。少なくとも、取り出し配線の機能を満足する導電材料が含まれる材料を用い、公知の方法により取り出し配線が形成されてよい。形成方法の違いによらず、本発明のタッチパネル部材は、取り出し配線において、配線部と、導電部および開口部から区画される広域部とを含んだパターンが採用されていることにより、配線部に適した製造条件、材料を選択し、これによって広域部も良好に形成され得るため、結果として、電気信頼性に優れた取り出し配線を備えるタッチパネル部材を提供することができる。
【0054】
(基材)
本発明に用いられる基材は、タッチパネル部材に用いられ得る基材から、適宜選択して使用することができる。一般的には、透明のガラス基板、あるいは樹脂フィルムなどが汎用される。上記基材は、ガラス基板や透明樹脂フィルムをそのまま用いてもよいし、タッチパネル部材の種々の形式や、製造方法を勘案して、表面に任意の加工や処理がなされていてもよい。例えば、透明樹脂フィルムや薄膜ガラス上に、無機材料層(例えばSiOやSiNなど)を形成した基材を用いることもできる。特に、銀ペーストを用い、無機材料層を備える基材面に取り出し配線をスクリーン印刷で形成することは、従来から試みられているが、スクリーン印刷の観点で、上記銀ペーストと上記無機材料層を備える基材とは相性が良いとはいえず、微細な配線部とベタ形成される広域部とが併存する取り出し配線において滲みや欠けの問題があった。しかしながら、本発明は上記問題を解決することが可能であり、したがって、無機材料層を備える基材を用い、銀粒子を含有する電気信頼性の優れた取り出し配線を備えるタッチパネル部材を提供することができる。
【0055】
尚、本発明のタッチパネル部材の構成は、タッチパネル部材の基材として好適な透明フィルムやガラス基材上に、取り出し配線を備え、次いで、上記取り出し配線における電極部接続用広域部に、端部が積層されるよう、ITOやIZO等の電極部を形成することによって電極層が設けられていてもよい。あるいは、透明フィルムやガラス基材上の表示領域に相当する領域に先に透明電極層が設けられ、該透明電極層を構成する電極部の端部に、電極部接続用広域部が積層されるよう取り出し配線が設けられていても良い。
【0056】
(電極層)
本発明のタッチパネル部材における電極層は、種々の形式のタッチパネルに適した電極層であって、これを構成する電極部と取り出し配線とが電気的に接続されることが求められるものであれば、適宜選択して実施してよい。一般的にはITOやIZOなどからなる電極部が所望のパターンで形成される電極層が汎用されるが、あるいはまた導電性ワイヤを配設してなる電極部より形成される電極層など、その他の形式の電極層であってもよい。ITOやIZOなどからなる電極部が所望のパターンで形成される電極層の形成方法は、特に限定されず、例えばフォトリソグラフィ法、スクリーン印刷法、インクジェット法などの公知の手段が例示される。電極層の厚みは、特に限定されず、一般的に実施されるタッチパネル部材における電極層の厚みに倣って適宜決定することができる。一般的には、15μm〜50μm程度に設計してよいが、これに限定されない。
【0057】
[座標検出装置]
次に、本発明の座標検出装置について説明する。上述する本発明のタッチパネル部材を用い、タッチ面に対し、直接または間接に行なわれる接触動作によって電極層において出力される電気信号を検出する検出回路と、上記検出回路において検出された電気信号から上記接触動作の行なわれた接触位置の座標を算出する座標算出用演算回路とを備えることによって、本発明の座標検出装置を構成することができる。
【0058】
本発明の座標検出装置は、用いられるタッチパネル部材が電気信頼性に優れるため、当該電気信頼性が座標検出装置においても反映され、座標検出の誤作動などが防止され、検出性に優れる。より具体的には、例えば、取り出し配線の広域部におけるカケの発生は、該取り出し配線の断線や局所的な高抵抗を引き起こし、電気信号の出力及び検出動作が不安定になるため、検出感度の低下につながる虞がある。一方、取り出し配線における配線部のニジミの発生は、隣り合う配線部間のショートを引き起こし、検出器の誤作動を引き起こす虞がある。また配線部にニジミが発生した場合であってショートまでいたっていない場合でも、ニジミで局所的に隣り合う配線部間距離が狭くなっている箇所が生じ、当該箇所に電界が集中し、電界強度が高くなる虞がある。そのような箇所は高温高湿度のような環境で長時間電圧を印加することで、配線部間における金属粒子のマイグレーションが発生し、結果として配線部間のショートが発生する懸念もある。上述のとおり、タッチパネル部材における取り出し配線の電気信頼性が低下すると、座標検出装置において、検出感度が低下するという不具合が発生する可能性があったが、本発明の座標検出装置では、上記不具合の発生が良好に防止される。
【0059】
本発明の座標検出装置における検出回路は、タッチパネル部材におけるタッチ面の接触または接触に近い動作により発生する電気信号を検出することを可能とする回路である。
以下に、静電容量式に適した本発明のタッチパネル部材を用いる本発明の座標検出装置を例に説明する。上記座標検出装置は、タッチパネル部材のタッチ面に、指などの導体が接触するか、または接触に近い状態で接近した際に、その接触動作の行われた座標における静電容量の変化による交流電流の偏りを検出する検出回路と、上記検出回路より出力される静電容量の変化量より、所定の演算式に基づき、接触動作の行われた座標位置を計算する座標算出用演算回路とを備える。タッチパネル部材と検出回路とは、該タッチパネル部材における接触動作を電気信号として検知可能に接続されていればよい。例えば、電極層が絶縁性膜を介して二層にパターン形成されている態様のタッチパネル部材を用いる場合には、強化ガラス基板側から、第一電極層、絶縁性膜、第二電極層の順に構成され、第一電極層、および第二電極層の端部に設けられた取り出し配線と、検出回路とが、フレキシブルプリント回路などの配線部材などによって電気的に接続される。
【0060】
図5に、本発明の座標検出装置の動作の流れの一実施態様を説明するための説明図を示す。図面左側に示すタッチパネル部材は、特に電極層について示す。具体的には、第1電極層を構成する、x方向に電流が流れる複数の第1透明電極部X1、X2、X3・・・と、第2電極層を構成する、y方向に電流が流れる複数の第2透明電極部Y1、Y2、Y3・・・とを備える。図面中央に示す検出回路における定電流源から、電流が、第1透明電極部X1、X2、X3・・・および第2透明電極部Y1、Y2、Y3・・・に供給される。このとき電流は、基準クロックによって指示される規定時間に基づき、高速スイッチ部におけるスイッチングの指示を受け各電極へ接続を切り替える切替え部によって、絶えず定電流源から各電極へと流れる電流の接続のオン、オフが切り替えられてよい。
【0061】
タッチパネル部材のタッチ面において接触動作がないときには、基本的に交流電流は流れず、初期値ゼロの状態であるが、接触動作が行われると、静電容量の発生により交流電流が流れ、電圧降下が生じる。検出回路では、上述のとおり切り替えられながら断続的に各電極に電流が送られるとともに、電流の変化を検知する電流検出回路により各電極の電流により抵抗変化を検知するよう構成される。電流の変化による電圧降下量は、積分用コンデンサにおける増幅回路により増幅されて出力され、インパルスノイズを取り除くための低域通過フィルタを通過し、比較器において、基準電圧と積分用コンデンサで増幅された電圧を比較することで積分用コンデンサが基準電圧に達するまでの時間を認識する。検出回路により検出された電極の容量変化に基づく信号は、タッチ検出演算回路に送られ、所定の計算式により接触動作の行われた座標が算出される。尚、上述は、本発明の座標検出装置の一実施態様を説明するものであって、本発明の座標検出装置を限定するものではなく、本発明の座標検出装置の検出動作を実行する構成および動作の流れとしては、公知のタッチパネル部材における接触動作を検出可能な回路を適宜選択して実施してよい。
【実施例】
【0062】
以下に、本発明のタッチパネル部材の実施例および比較例を示す。尚、下記に示す実施例および比較例は、特段の断りがない限り、図3に示されるパターンに倣って実施した。
【0063】
(スクリーン版の準備)
縦750mm×横750mmの枠に縦500mm×横500mmの500メッシュが貼られた高強度ステンレススクリーン(アサダメッシュ(株)製、HS−D500、線径19μm)を用い、公知の方法でコンビネーションマスクを形成した。これに、感光剤(乳剤)としてARK(東京プロセスサービス(株)製)を25μm塗布した。そして図3に示すパターンに倣い、且つ、取出し配線31を10本並列させ、また1つの電極部接続用広域部32における開口部42を4つ設けたパターンを作成するためのスクリーン版を形成するために、図3における導電部41、43および、微細配線部33に相当する領域が開口する露光マスクを用いて露光を行い、次いで、未露光部を純水ガンで飛ばし、本実施例に用いるスクリーン版のパターンを解像し、スクリーン版Aを作成した。スクリーン版Aは、図3に示す取り出し配線31のパターンにおいて、導電部41、43、微細配線部33を含む領域が開口部となり、その周囲が、乳剤部となるよう形成された。スクリーン版Aは、開口部の線幅、および開口部間(乳剤部)の距離を変更した3種のスクリーン版A1、A2、A3として準備した。各スクリーン版のパターンの詳細は、表1に示す。尚、後述する基材は、1つの印刷基板が3×7に配列される21面取り用の基材を用いるため、上記スクリーン版もこれに対応し、1つのスクリーン版において1つの取り出し配線パターンを3×7に配列させ21面設けた。後述するスクリーン版Bについても同様に配線パターンは基材の設計にあわせ21面設けた。配線パターンの詳細は、以下のとおりである。尚、微細配線部は配線ピッチ100μmである。
【0064】
また、図3における電極部接続用広域部32および太配線部34全面を開口部としたこと以外は、スクリーン版Aと同様に形成した、スクリーン版Bを準備した。スクリーン版Bのパターンの詳細は、表1に示す。
【0065】
(ペーストの準備)
平均粒径2μmの球状銀粉を65g、平均一次粒径0.1μmの銀微粒子が凝集してなる平均粒径0.8μmの凝集状銀粉を18g、熱硬化性エポキシ樹脂(エピクロン840;DIC(株)製)を2.7g、アクリル樹脂(ダイヤナールBR−75、三菱レイヨン(株)製)を4g、硬化剤としてアミキュアMY−H(味の素ファインテクノ(株)製)を1.3g用い、表1に示す量のジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートとともに3本ロールミルで混練し、粘度180Pa・s(ブルックフィールド粘度計使用、回転数5rpm)に調整した導電性ペーストを得た。
【0066】
【表1】

【0067】
(基材の準備)
実施例および比較例に用いる多面取り用の基材として、300mm×400mmの樹脂フィルム上にアンダーコート層および誘電体層を下地層として設け、さらに操作領域にパターニングされた透明電極層を備えるタッチパネル部材用基材を下記のとおり準備した。尚、上記多面取り用の基材において、1つの印刷基板に相当する基材面は、縦98mm、横52mmとし、その中央に、縦78mm、横45mmの操作領域を設けるよう設計し、その周囲を額縁領域とした。そして上記多面取り用の基材において、上記サイズの基材面を3×7に配列し21面取りできるよう設計した。
具体的には、厚さ75μmのPETフィルム(東レ(株)製、ルミラーT60)を準備した。次に、光硬化型樹脂剤(東亞合成株式会社製、アロニックスM405)およびエポキシ系硬化剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、イルガキュア184)をイソブチルアルコールに混合した組成液を、自動塗工機(松尾産業株式会社製、K303マルチコーター)を用いてバーコート法によりPETフィルムの全面に塗布した。そして、Model LC−6B Benchtop Conveyor(フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製)を用いて、溶液の塗布されたPETフィルム面上から波長365nm、積算エネルギー300mJの紫外線を照射して、PETフィルム上に厚さ1μmのアンダーコート層を製膜した。
次に、アンダーコート層を形成したPETフィルムの片面に、厚さ30nmのSiOの薄膜からなる誘電体層をスパッタ法により製膜した。次に、誘電体層上に、厚さ30nmのITO膜をスパッタ法により製膜し、その後、ポジ感光性材料(ローム&ハース社製 S1805)を用いて、カーテンコート法により厚さ1.0μmのポジレジストを製膜した。
そして、上記ポジレジストの上に透明電極のパターンを形成したフォトマスクを所定位置に配置し、フォトマスクの上から、プロキシアライナー((株)大日本科研製、MA5000)により、波長365nm、積算エネルギー300mJの紫外線を照射して、ポジレジストの露光を行った。その後、KOH現像液により、ポジレジストの現像処理を行った。次に、エッチング剤として塩化鉄溶液を用いてITO膜のエッチング処理をして、ITO膜にパターニングを行い、透明電極層を形成した。上記透明電極層は、図3に示すパターンに倣い、棒状の透明電極部が一方方向に並列して構成されるようパターンニングし、各透明電極部を主として操作領域内に10本形成し、且つ、各透明電極部の端部は非操作領域に伸長させた。その後、NaOH溶液により、ポジレジストを剥離し、基材1を得た。
【0068】
(実施例1〜3)
上述において得た基材を用い、上記スクリーン版A1〜A3をそれぞれ用い、上記導電性ペーストを用い、スクリーン印刷機(ニューロング社製、LS−340VTVA)により額縁領域に、取り出し配線を形成してタッチパネル部材を作製した。
そして、次に、異方性導電接着剤を仮貼りしたフレキシブル基板を上述の通り得たタッチパネル部材の外部電極部接続部材接続用広域部上に積層して貼りあわせた。その後、フレキシブル基板上から、180℃、圧力2MPa、15秒間の条件で圧力をかけて圧着させ、外部電極接続部材を備えるタッチパネル部材を作製し、これを実施例1〜3とした。尚、取り出し配線における電極部接続用広域部と、透明電極部端部との積層は、図3に示すとおり、額縁領域に伸長する透明電極部の端部と電極部接続用広域部とを積層させた。積層した総積層面積(k(3000μm)×l(950μm))および、導電部と透明電極部が積層する導電部積層面積は、表2に示した。また、取り出し配線における外部電極接続部材接続用広域部と、上記フレキシブル基板との積層は、図3に示すとおりの積層位置で積層させ、貼りあわせの奥行きmは2mmとし、総積層面積および導電部積層面積については表2に示した。
【0069】
(比較例1)
用いるスクリーン版をスクリーン版Bに代えたこと以外は、実施例1と同様に印刷基板を作成し、これを比較例1とした。
【0070】
(取り出し配線の実測)
実施例1〜3および比較例1について、取り出し配線等の詳細な寸法を実測し、表2に示した。実測は、三次元座標測定装置(SOKKIA製 AMIC−1300)を用いて、該当する線幅測長、あるいは線幅間の距離の測定を行った。
【0071】
(形状観察評価)
実施例1〜3および比較例1について、光学顕微鏡(オリンパス製 MX61L)で配線部の滲み、および、広域部のカケの有無を観察した。以下のとおり評価し、結果は、表3に示す。
[微細配線部の滲み]
・微細配線のライン側面に目立った滲みは認められなかった・・・・○
・微細配線のライン側面に顕著な滲みが視認された・・・・×
[広域部(1)、(2)の欠け]
・全体的に欠けの発生は、認められなかった・・・・○
・顕著な欠けの発生が視認された・・・・×
・一部に若干の欠けが発見された・・・・△
【0072】
(電極部接続用広域部における導通評価)
抵抗値をテスター(CUSTOM社製 Pocket TESTER CDM−03D)を用いて、実施例1〜3および比較例1それぞれにおいて、形成された取り出し配線10本全てについて、電極部の電極部接続用広域部手前付近と、電極部接続用広域部と微細配線部との境界付近との間の抵抗値を測定した。10本の取り出し配線のいずれもが抵抗値が5kΩ以下であれば、当該サンプルは導通しているとして、合格と判断した。尚、実施例1〜3および比較例1について、それぞれサンプルを10ヶ準備し、各サンプルについて、上記導通評価を行なった。導通の確認されたサンプルを合格サンプルとし、合格サンプル数を表3に示した。
【0073】
(外部電極接続部材接続用広域部の導通評価)
抵抗値をテスター(CUSTOM社製 Pocket TESTER CDM−03D)を用いて、実施例1〜3および比較例1それぞれにおいて、形成された取り出し配線10本全てについて、外部電極接続部材接続用広域部を挟んで、太配線部とフレキシブル基板との間で抵抗値を測定した。10本の取り出し配線のいずれもが抵抗値が5kΩ以下であれば、当該サンプルは導通しているとして、合格と判断した。尚、実施例1〜3および比較例1について、それぞれサンプルを10ヶ準備し、各サンプルの任意の箇所1本の取り出し配線について、上記導通評価を行なった。導通の確認されたサンプルを合格サンプルとし、合格サンプル数を表3に示した。
【0074】
【表2】

【0075】
【表3】

【符号の説明】
【0076】
1 タッチパネル部材
2 基材
3 電極部
4 取り出し配線
4’ 配線部
5 電極部接続用広域部
6 外部電極接続部材接続用広域部
7 導電部
8 開口部
9 境界
10 操作領域
11 額縁領域
12、15、18、21 広域部
13、16、19、22、22’ 導電部
14、17、20、23、23’ 開口部
31 取り出し配線
32 電極部接続用広域部
33 微細配線部
34 太配線部
35 外部電極接続部材接続用広域部
36 境界
37 操作領域
38 額縁領域
39 電極部
40 外部電極接続部材
41、43 導電部
42、44 開口部
50 スクリーン版
51 配線部転写用メッシュ部
52 導電部転写用メッシュ部
53 乳剤部
54 開口部形成用乳剤部
55 基材
56 ペースト
57 スクレッパー
58 導電部
59 開口部
60 広域部
61 配線部
62 取り出し配線
100 タッチパネル部材
101 第一電極基板
102 第二電極基板
103 第一電極部
104 第一取り出し配線
105 第一電極部接続用広域部
106 第一外部電極接続部材接続用広域部
107 透明基材
108 境界
109 配線部
110 透明基材
111 第二電極部
112 第二取り出し配線
113 第二電極部接続用広域部
114 第二外部電極接続部材接続用広域部
115 配線部
120 取り出し配線
121 配線部
122、123 広域部
124 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、上記基材上に設けられる複数の電極部から構成される電極層と、上記電極部の端部に一端が電気的に接続される複数の取り出し配線と、を備え、
上記取り出し配線は、配線部と、上記電極部と電気的に接続される側の端部に設けられる電極部接続用広域部および/または外部電極接続部材との接続が予定される側の端部に設けられる外部電極接続部材接続用広域部とを備え、
上記電極部接続用広域部および/または外部電極接続部材接続用広域部は、導電部と、開口部とに区画されており、
上記基材上において、上記複数の取り出し配線における配線部が並列して伸長する領域を有することを特徴とするタッチパネル部材。
【請求項2】
上記複数の取り出し配線における配線部が並列して伸長する領域のうち、隣り合う配線部間の距離が最小の領域において、該距離が150μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル部材。
【請求項3】
上記取り出し配線の端部に、導電部と開口部とに区画される外部電極接続部材接続用広域部が設けられており、
上記外部電極接続部材接続用広域部と電気的に接続された外部電極接続部材を備え、
上面視上、上記外部電極接続部材接続用広域部と、上記外部電極接続部材とが積層される総積層面積を100%としたときに、
該外部電極接続部材接続用広域部における導電部と、該外部電極接続部材とが積層される面積が、上記総積層面積に対し50%以上であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のタッチパネル部材。
【請求項4】
上記導電部と開口部とに区画される電極部接続用広域部および/または上記導電部と開口部とに区画される外部電極接続部材接続用広域部は、線状の導電部と線状の開口部とが交互に配列してなるパターンを含み、
上記線状の導電部と線状の開口部とにおける配線ピッチが、上記複数の取り出し配線における配線部が並列して伸長する領域における配線ピッチ以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のタッチパネル部材。
【請求項5】
上記電極層として、所定のパターンにより形成される第一電極部からなる第一電極層と、所定のパターンにより形成される第二電極部からなる第二電極層を備え、
上記第二電極層は、上記基材の一方面側において上記第一電極層上に積層されているか、あるいは、上記基材を介して上記第一電極層と積層されており、
上記第一電極部の端部に電気的に接続される複数の第一取り出し配線と、上記第二電極部の端部に電気的に接続される複数の第二取り出し配線とを備え、
上記第一取り出し配線は、配線部と、上記第一電極部と電気的に接続される側の端部に設けられる第一電極部接続用広域部および/または外部電極接続部材との接続が予定される側の端部に設けられる第一外部電極接続部材接続用広域部とが設けられており、
上記第二取り出し配線は、配線部と、上記第二電極部と電気的に接続される側の端部に設けられる第二電極部接続用広域部および/または外部電極接続部材との接続が予定される側の端部に設けられる第二外部電極接続部材接続用広域部とが設けられており、
下記(態様I)および/または下記(態様II)が採用されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のタッチパネル部材。
(態様I)上記第一電極部接続用広域部および/または第一外部電極接続部材接続用広域部は、導電部と開口部とに区画されており、上記基材上に上記複数の第一取り出し配線における配線部が並列して伸長する領域を有する。
(態様II)上記第二電極部接続用広域部および/または第二外部電極接続部材接続用広域部は、導電部と開口部とに区画されており、上記基材上に上記複数の第二取り出し配線における配線部が並列して伸長する領域を有する。
【請求項6】
基材と、上記基材上に設けられる複数の電極部から構成される電極層と、上記電極部の端部に一端が電気的に接続される複数の取り出し配線と、を備え、
上記取り出し配線は、配線部と、上記電極部と電気的に接続される側の端部に設けられる電極部接続用広域部および/または外部電極接続部材との接続が予定される側の端部に設けられる外部電極接続部材接続用広域部とを備え、
上記電極部接続用広域部および/または外部電極接続部材接続用広域部は、導電部と、開口部とに区画されており、
上記基材上において、上記複数の取り出し配線における配線部が並列して伸長する領域を有するタッチパネル部材を用い、
上記電極層を挟んで、上記基材上に対向する対向基材を設け、該基材または該対向基材のいずれかを直接または間接のタッチ面とし、
上記タッチ面に対し、直接または間接に行なわれる接触動作によって出力される電気信号を検出する検出回路と、
上記検出回路において検出された電気信号から上記接触動作の行なわれた接触位置の座標を算出する座標算出用演算回路と、を備えることを特徴とする座標検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図7】
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