説明

タッチパネル

【課題】主に各種電子機器の操作に使用されるタッチパネルに関し、内部の結露の発生を抑制しうると共に、設計自由度が高いものを提供することを目的とする。
【解決手段】位置検出部25の上方に、水蒸気透過防止層42を備えた防湿フィルム22と、上面にハードコート層32を備えたハードコートフィルム21を備えたものであり、タッチパネル70内部の結露の発生を抑制しうると共に、設計時の材料、厚みの選定など設計自由度が高くできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器の液晶ディスプレイなどに装着され、操作者が指やペンを用いて操作を行うタッチパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイなどに、操作者が指やペンを用いて操作を行うタッチパネルが装着された電子機器が増えている。
【0003】
この液晶ディスプレイなどに装着されたタッチパネルとして、結露防止など環境変動に強いものが求められてきている。このような従来のタッチパネルについて図3の断面図を用いて説明する。
【0004】
同図において、従来のタッチパネル20は、第一透明基板1、第二透明基板2、第一透明導電膜3、第二透明導電膜4、ドットスペーサ5、水蒸気透過防止層7、配線電極8と12、アンダーコートレジスト9と13、オーバーコートレジスト10と14、粘着層11、フレキシブルプリント配線板15を備えている。
【0005】
ここで、ガラスなどを材料とする第一透明基板1の上面には、酸化インジウムスズ等からなる第一透明導電膜3が全面に形成されている。また、第一透明導電膜3上には、絶縁性のエポキシ樹脂等による微小寸法のドットスペーサ5が所定ピッチで設けられている。
【0006】
そして、タッチパネルの操作側となる第二透明基板2は、透明性の優れた樹脂フィルムなどから構成される。この第二透明基板2の下面には酸化インジウムスズ等からなる第二透明導電膜4が全面に形成され、上面側には、水蒸気透過防止層7が設けられている。
【0007】
ここで、水蒸気透過防止層7は、厚さ10〜100nm前後の、酸化珪素やチッ化珪素、酸化チッ化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン、あるいはこれらの混合物から形成された、薄膜状の層で、スパッタリング法等によって設けられる。
【0008】
また、前記可視領域境界6の外側領域には、各々の透明導電膜3と4に電圧を供給するための配線電極8と12、アンダーコートレジスト9と13、オーバーコートレジスト10と14、第一および第二透明基板1および2を接着するための粘着層11等が形成されている。
【0009】
ここで、第二透明導電膜4が、第一透明導電膜3と所定の間隔を保つ対向状態になるように、第一透明基板1と第二透明基板2とが、その可視領域境界6の外側部分で加熱加圧されて、接着される。
【0010】
そして、フレキシブルプリント配線板15は、第一透明導電膜3および第二透明導電膜4から出力された信号を外部回路に伝達するために接着固定された柔軟性を有する配線板である。フレキシブルプリント配線板15の第一透明導電膜3および第二透明導電膜4に対する逆端は、機器の外部回路(図示せず)に接続される。
【0011】
従来のタッチパネル20は、前記のように構成され、その使用時には、第二透明基板2上の所定位置を押圧操作して第二透明基板2を部分的に撓ませて、その操作箇所に応じた透明導電膜3、4どうしの位置を部分的に接触させ、その接触位置を、機器の外部回路がフレキシブルプリント配線板15を介して検出するものであった。
【0012】
つまり、従来のタッチパネル20は、第二透明基板2上面に水蒸気透過防止層7を設けることにより、結露を抑制するものとなっていた。
【0013】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1、特許文献2が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2006−72694号公報
【特許文献2】特開2010−267058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前記従来のタッチパネル20においては、第二透明基板2の上面に水蒸気透過防止層7を設け、防湿性を備えていたが、第二透明基板2は加熱加圧され第一透明基板1と接着されるので、水蒸気透過防止層7には使用環境を越えた耐熱性が必要で、設計時の材料、厚みの選定などの制約が大きかった。
【0016】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、設計自由度が高いタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0018】
本発明の請求項1に記載の発明は、第一透明基板、第二透明基板、第一透明導電膜、第二透明導電膜を備えた位置検出部の上方に、水蒸気透過防止層を備えた防湿フィルムと、上面にハードコート層を備えたハードコートフィルムを備えたものであり、タッチパネル内部の結露の発生を抑制しうると共に、設計時の材料、厚みの選定など設計自由度が高いという作用を有する。
【発明の効果】
【0019】
以上のように本発明によれば、タッチパネル内部の結露の発生を抑制しうると共に、設計自由度が高いという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態によるタッチパネルの断面図
【図2】同タッチパネルの上面図
【図3】従来のタッチパネルの断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図1および図2を用いて説明する。
【0022】
なお、これらの図面は構成を判り易くするために、部分的に寸法を拡大して表している。
【0023】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態によるタッチパネル70の断面図、図2は同上面図である。
【0024】
同図において、タッチパネル70は、ハードコートフィルム21と、防湿フィルム22と、粘着層23と24、位置検出部25を備えて構成される。
【0025】
ここで、ハードコートフィルム21は、高分子フィルム31と、高分子フィルム31の上面側に設けられたハードコート層32を備える。
【0026】
この高分子フィルム31は例えばポリエチレンテレフタレートを材料とするフィルムで、10μm〜300μmの厚みを有している。そして、高分子フィルム31には、ペンまたは指での操作時のキズ等の発生を抑えられるように、アクリル系樹脂などからなる鉛筆硬度H以上のハードコート層32が設けられている。
【0027】
なお、高分子フィルム31は、ポリエチレンテレフタレート以外に、ポリカーボネート、ポリオレフィン系化合物、トリアセチルセルロース等を用いてもよい。また、高分子フィルム31の代わりに樹脂シートを用いることもできる。
【0028】
次に、防湿フィルム22は、高分子フィルム41の下面に水蒸気透過防止層42を設けたシートである。
【0029】
ここで、高分子フィルム41は、例えばポリエチレンテレフタレートフィルムを材料とするシートで、1μm〜150μmの厚みを有している。なお、高分子フィルム41は、ポリエチレンテレフタレートフィルム以外に、ポリカーボネートフィルム、ポリオレフィン系フィルム、トリアセチルセルロースフィルム等を用いてもよい。また、高分子フィルム41の代わりに樹脂シートを用いることもできる。
【0030】
水蒸気透過防止層42としては、酸化ケイ素の他、酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化インジウムスズ、酸化アルミニウム、酸化窒化ケイ素の少なくとも一つ以上の無機化合物層を用いることができる。
【0031】
また、水蒸気透過防止層42の厚みは10nm〜150nmが好ましい。ここで、水蒸気透過防止層42が10nmより薄いとできあがった膜にピンホールが生じやすくなり、また150nmより厚いとひび割れが生じやすくなる。
【0032】
また、水蒸気透過防止層42のJIS K7129またはモコン法に準拠した水蒸気透過率は10-7g/m2・day以上、0.1g/m2・day以下とするのがよい。
【0033】
また、これら水蒸気透過防止層42の形成法としては、スパッタリング法や、プラズマ化学的気相堆積法、エレクトロンビーム真空蒸着法等がある。
【0034】
なお、防湿フィルム22はガラスよりも柔軟性が高いので、1μm〜50μmの厚みで形成しても亀裂などを生じ難く、ガラスよりも設計自由度が高い。また、安価な材料を選定することによりガラスより安価に製造できる利点を有する。
【0035】
そして、位置検出部25は、第一透明基板51、第二透明基板52、第一透明導電膜53、第二透明導電膜54、ドットスペーサ55、配線電極58と62、アンダーコートレジスト59と63、オーバーコートレジスト60と64、粘着層61、フレキシブルプリント配線板65を備えている。
【0036】
ここで、ガラスなどを材料とする第一透明基板51の上面には、スパッタリング法等により酸化インジウムスズ等からなる第一透明導電膜53が全面に形成されている。また、第一透明導電膜53上には、絶縁性のエポキシ樹脂等による微小寸法のドットスペーサ55が所定ピッチで設けられている。
【0037】
また、タッチパネルの操作側となる第二透明基板52は、透明性の優れた樹脂フィルムなどから構成される。この第二透明基板52の下面にはスパッタリング法等により酸化インジウムスズ等からなる第二透明導電膜54が全面に形成されている。
【0038】
また、可視領域境界56の外側領域には、第一透明導電膜53と第二透明導電膜54に電圧を供給するための配線電極58と62が形成されている。
【0039】
ここで、配線電極58に対して第一透明導電膜53側にアンダーコートレジスト59が、配線電極58の上面にオーバーコートレジスト60が形成されている。また、配線電極62に対し第二透明導電膜54側にアンダーコートレジスト63が、配線電極62の下面にオーバーコートレジスト64が形成されている。
【0040】
そして、第一透明基板51および第二透明基板52を接着するための粘着層61等がオーバーコートレジスト60とオーバーコートレジスト64の間に形成されている。
【0041】
そして、第二透明導電膜54が、第一透明導電膜53と所定の間隔を保つ対向状態になるように、第一透明基板51と第二透明基板52とが、その可視領域境界56の外側部分で加熱加圧されて、接着される。
【0042】
そして、フレキシブルプリント配線板65は、第一透明導電膜53および第二透明導電膜54から出力された信号を外部回路に伝達するために接着固定された柔軟性を有する配線板である。フレキシブルプリント配線板65の第一透明導電膜53および第二透明導電膜54に対する逆端は、機器の外部回路(図示せず)に接続される。
【0043】
このように構成された位置検出部25が、粘着層23、24を介して、ハードコートフィルム21と、防湿フィルム22に固定される。
【0044】
つまり、水蒸気透過防止層42は防湿フィルム22に設けられているので、第一透明基板51および第二透明基板52を接着する際の加熱を受けていない。そのため、水蒸気透過防止層42には使用環境を越えた耐熱性を備える必要はなく、設計時の材料、厚みの選定などの自由度が大きい。
【0045】
ここで、粘着層23、24は、ハードコートフィルム21や防湿フィルム22に直接コーティングして形成してもよいし、アクリル系両面粘着テープ等で構成してもよい。
【0046】
次に、このように構成されたタッチパネル70の動作を説明する。
【0047】
ここで操作者が、ハードコートフィルム21の上方から指またはペンで所定位置を押圧操作すると、第二透明基板52は当該操作箇所に対応する部分を中心として部分的に下方に撓み、当該操作箇所に応じた第一透明導電膜53部分と第二透明導電膜54部分とが接触する。
【0048】
そして、フレキシブルプリント配線板65を介して信号が出力され、その接触点での電圧比率から機器の外部回路が接触位置を検出する。
【0049】
また、操作者が、タッチパネル70を例えば温度が40℃、湿度が90%の高温多湿の環境から温度が25℃、湿度が60%の常温常湿環境に急激に移動したとしても、防湿フィルム22により第一透明基板51と第二透明基板52の間への水分の浸入が抑えられるため、結露の発生が抑制される。
【0050】
なお、前記の説明では、水蒸気透過防止層42は高分子フィルム41の下面に設けたものとして説明したが、上面でも結露の発生を抑制する効果は同様である。
【0051】
このように本実施の形態によれば、第一透明基板51、第二透明基板52、第一透明導電膜53、第二透明導電膜54を備えた位置検出部25の上方に、水蒸気透過防止層42を備えた防湿フィルム22と、上面にハードコート層32を備えたハードコートフィルム21を備えたものであり、タッチパネル70内部の結露の発生を抑制しうると共に、設計時の材料、厚みの選定など設計自由度が高くできる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によるタッチパネルは、内部の結露の発生を抑制しうると共に、設計自由度が高く、各種電子機器の入力操作に有用である。
【符号の説明】
【0053】
21 ハードコートフィルム
22 防湿フィルム
23、24、61 粘着層
25 位置検出部
31 高分子フィルム
32 ハードコート層
41 高分子フィルム
42 水蒸気透過防止層
51 第一透明基板
52 第二透明基板
53 第一透明導電膜
54 第二透明導電膜
55 ドットスペーサ
56 可視領域境界
58、62 配線電極
59、63 アンダーコートレジスト
60、64 オーバーコートレジスト
65 フレキシブルプリント配線板
70 タッチパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一透明基板と、前記第一透明基板の上方に配置され前記第一透明基板と固定される第二透明基板と、前記第一透明基板の上面に形成される第一透明導電膜と、前記第二透明基板の下面に形成され前記第一透明導電膜と所定の間隔で対向する第二透明導電膜を備えた位置検出部と、
前記位置検出部の上方に配置され、水蒸気透過防止層を備えた防湿フィルムと、前記防湿フィルムの上方に配置され、ハードコート層を上面に備えたハードコートフィルムとを備えたタッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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