説明

タッチペン用ペン先、タッチペン、筆記具付きタッチペン、ペン先出没式筆記具および入力ペン用リフィル

【課題】タッチ操作を繰り返してもペン先を覆う導電性布が安定して固定された状態を維持すること。
【解決手段】弾性材料からなるペン先本体20Aと、ペン先本体20Aのペン先表面22Tの少なくとも先端部分近傍22T1を覆う導電性布30Aと、を少なくとも有し、ペン先本体20Aに対して、導電性布30Aが接着固定されているタッチペン用ペン先、ならびに、これを用いたタッチペン、筆記具付きタッチペン、ペン先出没式筆記具および入力ペン用リフィル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチペン用ペン先、タッチペン、筆記具付きタッチペン、ペン先出没式筆記具および入力ペン用リフィルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルは、銀行など金融機関のATM、鉄道駅やレストランなどの自動券売機、携帯電話、携帯情報端末 (PDA)、デジタルオーディオプレーヤー、携帯ゲーム機、コピー機、カーナビなど、多方面に利用されている。このようなタッチパネルの操作は、画像が表示されるディスプレイ表面の所望の位置を、指、タッチペンやスタイラスなどと呼ばれる専用のペン(以下、「タッチペン」と称す。)、あるいは、一般のペンで押圧することにより行う。
【0003】
タッチパネルには抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、電磁誘導方式、静電容量方式などがある。ここで、静電容量方式のタッチパネルでは、指先あるいはペンと導電膜との間で静電容量の変化を捉えることで、ディスプレイ上の入力位置を検出する。この静電容量方式のタッチパネルに用いるタッチペンは、ペンホルダーと、このペンホルダーの先端に取り付けられたペン先と、から主に構成される。そして、ペン先は、主に弾性体から構成される。また、従来のタッチペンを改良したものとして、シリコンまたは導電性シリコンなどからなる可撓性体と、この可撓性体を包み覆い、導電性を備える布質被覆体とを有するペン先を備えたタッチペンが提案されている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1に記載のタッチペンにおいて、布質被覆体の材料は、絹や導電性布から構成されている。また、特許文献1には、可撓性体を被覆する場合、布質被覆体を機械的に固定する方法や、この布質被覆体への導電性の付与方法としては、その表面に繊維を含み、この繊維に導電性粒子を混入させる布質素材を用いる方法などが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3169005号(請求項1、2、13、段落番号0017−0018)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のタッチペンでは、布質被覆体は、機械的に固定されている。このため、タッチペンを用いてタッチパネル表面を接触・押圧するタッチ操作を繰り返すことにより、布質被覆体を固定している固定部に緩みが生じる可能性がある。そして、このような緩みの進行は、タッチ操作感および/または入力応答性の劣化を招くおそれがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、タッチ操作を繰り返してもペン先を覆う導電性布が安定して固定された状態を維持できるタッチペン用ペン先、ならびに、当該タッチペン用ペン先を用いたタッチペン、筆記具付きタッチペン、ペン先出没式筆記具および入力ペン用リフィルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、本発明のタッチペン用ペン先は、弾性材料からなるペン先本体と、該ペン先本体のペン先表面の少なくとも先端部分近傍を覆う導電性布と、を少なくとも有し、ペン先本体に対して、導電性布が接着固定されていることを特徴とする。
【0009】
本発明のタッチペン用ペン先の一実施態様は、ペン先表面の少なくとも先端部分近傍の領域に対して、導電性布が接着固定されていることが好ましい。
【0010】
本発明のタッチペン用ペン先の他の実施態様は、ペン先本体が、接着性を有するゴム原料を用いて形成されたものであることが好ましい。
【0011】
本発明のタッチペン用ペン先の他の実施態様は、ペン先表面と、導電性布との間に接着層が設けられていることが好ましい。
【0012】
本発明のタッチペン用ペン先の他の実施態様は、導電性布の端部が、ペン先本体と被覆部材とにより挟持されていることが好ましい。
【0013】
本発明のタッチペン用ペン先の他の実施態様は、導電性布を構成する繊維として、導電性繊維が含まれることが好ましい。
【0014】
本発明のタッチペンは、棒状本体部と、該棒状本体部の少なくとも一方の端に取り付けられた本発明のタッチペン用ペン先と、を少なくとも有する。
【0015】
本発明の筆記具付きタッチペンは、棒状本体部を有し、該棒状本体部の一方の端に本発明のタッチペン用ペン先を備え、他方の端に塗料による筆記を行うペン先を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明のペン先出没式筆記具は、1本以上の棒状リフィルを備え、少なくとも1本の棒状リフィルの先端部分が、本発明のタッチペン用ペン先から構成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の入力ペン用リフィルは、1本以上の棒状リフィルを備えたペン先出没式筆記具に用いられ、棒状リフィルの先端部分が、本発明のタッチペン用ペン先から構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、タッチ操作を繰り返してもペン先を覆う導電性布が安定して固定された状態を維持できるタッチペン用ペン先、ならびに、当該タッチペン用ペン先を用いたタッチペン、筆記具付きタッチペン、ペン先出没式筆記具および入力ペン用リフィルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態のタッチペン用ペン先の一例を示す模式断面図である。
【図2】本実施形態のタッチペン用ペン先の他の例を示す模式断面図である。
【図3】本実施形態のタッチペン用ペン先の他の例を示す模式図である。ここで、図3(A)は、軸方向を含む面で切断した断面における拡大断面図について示したものである。また、図3(B)は、図3(A)中に示す符号A1−A2間の端面図である。
【図4】本実施形態のタッチペン用ペン先に用いられる導電性布の一例を示す概略模式図である。
【図5】本実施形態のタッチペン用ペン先に用いられる導電性布の他の例を示す概略模式図である。
【図6】本実施形態のタッチペン用ペン先に用いられる導電性布を構成する導電性繊維の一例を示す模式断面図である。
【図7】本実施形態のタッチペンの一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(タッチペン用ペン先)
本実施形態のタッチペン用ペン先は、弾性材料からなるペン先本体と、ペン先本体のペン先表面の少なくとも先端部分近傍を覆う導電性布と、を少なくとも有し、ペン先本体に対して、導電性布が接着固定されていることを特徴とする。
【0021】
本実施形態のタッチペン用ペン先では、ペン先本体に対して導電性布が化学的に接着されることで固定されるため、タッチ操作を繰り返しても、機械的固定による固定部の緩みが生じる余地が無い。このため、タッチ操作を繰り返してもペン先を覆う導電性布が安定して固定された状態を維持することが極めて容易である。
【0022】
また、本実施形態のタッチペン用ペン先では、タッチ操作により摩擦・摩耗にさらされる部分は、基本的に、弾性材料からなるペン先本体ではなく、導電性布である。したがって、導電性布が、ペン先本体を防護するため、ペン先本体の摩耗・亀裂の発生を抑制することが容易となる。また、ペン先の導電性は、導電性布を用いることで確保されるため、ペン先本体を構成する弾性材料として、導電性ゴムを必ずしも用いる必要が無い。それゆえ、ペン先本体を形成する際に、より多様な材料選択・より多様な製造方法・条件の選択が可能となり、その結果、ペン先本体の成形加工性をより向上させることが容易である。さらに、ペン先本体を構成するゴム材は、一般的に、タッチパネル表面に対する滑り性が低い。しかしながら、導電性布を構成する材料・繊維径・織り方などを適宜選択することで、滑り性を改善すると同時に、ペン先の摩擦摩耗に対する耐久性を確保することも容易になる。特に、ペン先を導電性布で覆った場合には、滑り性の改善はより容易になる。この理由は、導電性ゴムからなるペン先とタッチパネル表面とが面接触する場合と比べて、導電性布を構成する繊維の凹凸に起因して、ペン先とタッチパネル表面との接触が、より点接触に近づくため、その結果、タッチ操作時の摩擦抵抗が低下するためであると推定される。
【0023】
図1は、本実施形態のタッチペン用ペン先の一例を示す模式断面図であり、具体的には、タッチペン用ペン先10A(10)を、その軸方向Cを含む面で切断した断面における断面図について示したものである。なお、以下の説明において、タッチペン用ペン先10の軸方向Cを含む面で切断した断面を、単に「断面」と略す場合がある。
【0024】
図1に示すタッチペン用ペン先10Aは、弾性材料からなるペン先本体20A(20)と、このペン先本体20Aの外面22のうち、ペン先表面22T(22)の略全面を覆う導電性布30A(30)とを有する。このペン先本体20Aは、全体の形状が略弾丸形状からなる断面形状を有している。ペン先本体20Aの外面22は、軸方向Cの一端側(底部B側)において平坦面を成す底面22B(22)と、底面22B以外の面、すなわち、外面22のうち側面部分および軸方向Cの他端側(先端部分T)の面を成すペン先表面22T(22)とから構成される。すなわちペン先表面22Tは、円柱体の外周面と略半球体の球面とを組み合わせた面である。
【0025】
また、ペン先本体20Aの内部には、外面22の断面形状と略相似形を成す中空部24が設けられている。そして、底面22Bの中央部には、中空部24の直径D1よりも小さい開口径D2を有する円形の開口部26が設けられ、この開口部26により、中空部24は、外部と連通している。
【0026】
ここで、ペン先表面22Tと、導電性布30Aとが互いに接触している界面40のうち、少なくとも一部の領域において、ペン先表面22Tに対して導電性布30Aが接着固定されていればよい。この場合、例えば、(1)ペン先表面22Tの先端部分Tの近傍の領域(先端領域)22T1(22、22T)に対して導電性布30を接着固定したり(第一の接着固定態様)、(2)ペン先表面22Tの側面部のうち底部B側の領域22T2(22、22T)を接着固定したり(第二の接着固定態様)、あるいは、(3)界面40の全面においてペン先表面22Tに対して導電性布30Aを接着固定することができる(第三の接着固定態様)。
【0027】
第一の接着固定態様の場合、タッチ操作に際して、タッチパネル表面に対して最も頻繁に接触する先端領域22T1において、導電性布30Aがペン先表面22Tに対して強固に固定されることになる。それゆえ、タッチ操作に際して、ペン先表面22Tに対して導電性布30Aがずれるのを確実に防止することができる。その結果、タッチペンによるタッチパネル表面に対する押圧力の強弱等に関係なく、安定したタッチ操作が実現できる。また、第二の接着固定態様の場合、導電性布30Aの端部が、ペン先表面22Tに対して強固に固定されるので、導電性布30Aの端部を始点として、導電性布30Aがペン先表面22Tから剥離して脱落するのを抑制することが容易になる。さらに、第三の接着固定態様の場合、上述した第一の接着固定態様および第二の接着固定態様の双方のメリットを得ることができる。なお、安定したタッチ操作が実現できる点からは、上記3つの接着固定態様のうち、第一の接着固定態様および第三の接着固定態様が好ましく、さらに剥離防止の観点を考慮すれば第三の接着固定態様がより好ましい。
【0028】
図1に示す例では、導電性布30Aは、ペン先表面22Tの略全面を覆うように設けられているが、少なくとも先端領域22T1を覆うように設けられているのであれば、ペン先表面22Tに対する導電性布30Aの被覆態様は特に限定されるものでは無い。なお、導電性布30Aが、先端領域22T1のみを覆うように設けられる場合には、第一の接着固定態様により、導電性布30Aを先端領域22T1に対して接着する。
【0029】
また、図1に示す例では、ペン先本体20Aの内部に、中空部24が設けられているが、中空部24は設けなくてもよい。なお、中空部24を設けた場合、タッチペン用ペン先10Aを、タッチペン本体などの他の部材に取り付けるのを容易とすることができる。また、中空部24のサイズおよび形状を適宜選択することで、タッチパネル表面を押圧した際のタッチ感を調整することができる。
【0030】
導電性布30は、図1に示すように、ペン先本体20Aに対して、直接接着することで接着固定してもよく、あるいは、接着層を介して接着固定してもよい。導電性布30をペン先本体20Aに対して直接接着する場合、ペン先本体20Aは、接着性を有するゴム原料を用いて形成される。ここで、接着性を有するゴム原料としては、接着剤成分を添加したゴム原料、あるいは、自己接着性を有するゴム原料を用いることができる。なお、接着剤成分としては、たとえば、エポキシ系接着助剤などを用いることができ、自己接着性を有するゴム原料としては、たとえば、シリコーンゴム原料を用いることができる。
【0031】
ここで、接着性を有するゴム原料を用いてタッチペン用ペン先10Aを作製する場合、たとえば、(1)接着性を有するゴム原料と導電性布30Aとを金型内にセットした後、加熱加圧により一体成型する過程で、ペン先本体20Aと導電性布30とを接着したり、(2)ペン先本体20Aと同様の形状に予め成形された接着性を有するゴム原料からなる部材の表面に導電性布30を貼りつけた後、加熱処理することで、ペン先本体20Aと導電性布30とを接着することができる。この場合、接着のための加熱条件は、接着性を有するゴム原料の組成や導電性布30の表面を構成する材料などに応じて適宜選択することができる。また、接着性を有するゴム原料の加硫処理と、接着処理とは、同時に実施してもよく、別々に実施してもよい。
【0032】
一方、導電性布30を、ペン先本体20Aに対して接着層を介して接着固定する場合、導電性布30の片面、および/または、ペン先本体20Aのペン先表面22Tに接着剤を塗布してから、ペン先表面22Tに導電性布30を貼り付けて接着することができる。また、接着に際して、接着剤の代わりに両面に接着剤が塗布された粘着テープを用いることもできる。なお、接着剤としては、非導電性接着剤、あるいは、この非導電性接着剤にカーボン粒子や銀粒子などを分散含有させた導電性接着剤を用いることができる。
【0033】
なお、ペン先本体20を構成するマトリックス材は、ゴムから構成されてもよく、スポンジゴムから構成されていてもよい。さらに必要に応じて、マトリックス材中には、フィラーなどのゴム以外の材料が分散含有されていてもよい。
【0034】
また、タッチペン用ペン先10の作製に用いる導電性布30は、通常、大きいサイズの導電性シートを所定のサイズに切断して準備する。このため、導電性布30の端部にはバリが発生しやすい。また、導電性布30は、端部を始点として剥離しやすい。したがって、バリが外部に露出するのを抑制し、さらに剥離を抑制する観点からは、導電性布30の端部が、ペン先本体20と被覆部材とにより挟持されていることが好ましい。
【0035】
図2は、本実施形態のタッチペン用ペン先の他の例を示す模式断面図であり、具体的には、導電性布30の端部近傍における断面構造を拡大して示す拡大断面図である。図2に示すタッチペン用ペン先10B(10)では、導電性布30B(30)が、ペン先表面22Tの全面を覆うと共に、導電性布30Bの端部30BEが、底面22Bの外周側部分を覆うよう折り曲げられている。また、底面22Bは、導電性布30Bの端部30BEにより覆われている部分も含めて弾性材料からなり、その平面形状が底面22Bと同一の形状からなる被覆部材50A(50)により覆われている。そして、被覆部材50Aと、底面22Bおよび底面22Bの外周側部分を覆う導電性布30Bの端部30BEと、は接着固定されている。よって、導電性布30Bの端部30BEは、ペン先本体20Aの底面22Bと被覆部材50Aとの間に挟持されることになる。
【0036】
ここで、タッチペン用ペン先10B(10)を作製する場合、たとえば、以下の手順で作製する。まず、所定の形状に成形加工したペン先本体20Aを作製する。次に、ペン先表面22Tの全面を覆うように導電性布30B(30)を貼り付けて接着すると共に、導電性布30Bの端部30BEを折り曲げることで、底面22Bの外周側部分を覆う。続いて、平面形状が被覆部材50Aと同形の凹部を有する金型の凹部内に、接着性を有するゴム原料を充填する。そして、ゴム原料と底面22Bとが接触するように、凹部内に充填されたゴム原料上に、底面22Bの外周側部分が導電性布30Bの端部30BEで覆われたペン先本体20Aを配置する。その後、ゴム原料を加熱処理して、ゴム原料を加熱硬化させて被覆部材50Aを形成すると共に、被覆部材50Aと、底面22Bおよび底面22Bの外周側部分を覆う導電性布30Bの端部30BEと、を接着する。これによりタッチペン用ペン先10Bを得る。
【0037】
図3は、本実施形態のタッチペン用ペン先の他の例を示す模式図であり、具体的には、導電性布30の端部近傍における断面構造を拡大して示す拡大図である。ここで、図3(A)は、図1および図2に示した場合と同様に、(図中、不図示の)軸方向Cを含む面で切断した断面における拡大断面図について示したものである。また、図3(B)は、図3(A)中に示す符号A1−A2間の端面図である。
【0038】
図3に示すタッチペン用ペン先10C(10)は、図2に示すタッチペン用ペン先10Bと概ね同様の構造を有するが、導電性布30C(30)の端部30CEが、底面22Bの全面を覆うと共に、ペン先本体20B(20)に対して被覆部材50B(50)を少なくとも機械的に固定している点で異なる。ここで、ペン先本体20Bは、図1および図2に示すペン先本体20Aの底面22Bに、凹部28を設けたものであり、この点を除けばペン先本体20Aと同様の構造を有するものである。また、導電性布30C(30)は、図2に示す導電性布30Bよりも若干サイズが大きく、かつ、その端部30CE(30、30C)近傍に、貫通孔32が設けられている点を除けば、図2に示す導電性布30Bと同様の部材である。また、被覆部材50B(50)は、片面に凸部52が設けられている点を除けば、図2に示す被覆部材50Aと同様のサイズおよび形状を有する部材である。
【0039】
図3に示すタッチペン用ペン先10Cでは、導電性布30Cの貫通孔32が、底面22Bに設けられた凹部28の開口部と一致するように、導電性布30Cの端部30CEが、底面22Bの全面を覆っている。そして凸部52が、貫通孔32内を貫通し、凹部28と嵌合するように、被覆部材50Bが、導電性布30Cの端部30CEを覆っている。すなわち、導電性布30Cの端部30CEは、ペン先本体20Bの底面22Bと被覆部材50Bとにより挟持されている。
【0040】
図3に示すタッチペン用ペン先10C(10)を作製する場合、たとえば、以下の手順で作製する。まず、所定の形状に成形加工したペン先本体20Bを作製する。次に、ペン先表面22Tの全面を覆うように導電性布30C(30)を貼り付けて接着すると共に、導電性布30Cの端部30CEを折り曲げることで、底面22Bの全面を覆う。この際、凹部28の開口部と、貫通孔32の開口部とを一致させる。続いて、平面形状が被覆部材50Bと同形の凹部を有する金型の凹部内に、接着性を有するゴム原料を充填する。そして、ゴム原料と底面22Bとが接触するように、凹部内に充填されたゴム原料上に、底面22Bの外周側部分が導電性布30Cの端部30CEで覆われたペン先本体20Bを配置する。この際、ゴム原料は、貫通孔32を経由して凹部28内へも充填させる。その後、ゴム原料を加熱処理して、ゴム原料を加熱硬化させて被覆部材50Bを形成すると共に、被覆部材50Bと、底面22Bを覆う導電性布30Bの端部30BEと、を接着すると共に、被覆部材50Bの凸部52と、凹部28とを接着する。これによりタッチペン用ペン先10Cを得る。また、図3に示すタッチペン用ペン先10C(10)は、以下の手順でも作製することができる、まず、予め成形加工された被覆部材50Bの凸部52を、貫通孔32および凹部28に差し込み、凸部52と凹部28とを嵌合させることで、タッチペン用ペン先10Cを作製することができる。なお、後者の製造プロセスでタッチペン用ペン先10Cを製造する場合、被覆部材50Bは、ゴム材料から構成されていてもよいが、金属、硬質プラスチック、あるいは、セラミックスなど、ゴム材料以外の素材から構成されていてもよい。
【0041】
次に、タッチペン用ペン先10を構成する導電性布30について説明する。導電性布30としては、シート全体として導電性を有する公知のシート状材料であればいずれも利用することができる。たとえば、導電性布30としては、繊維を公知の織り方で織った布、繊維を織らずに絡みあわせて形成した不織布、あるいは、繊維を低密度で織った開口部を有するメッシュ状の布などの、布を構成する繊維として導電性繊維を含む導電性布を利用することができる。
【0042】
また、導電性布30としては、特許文献1に例示されるように、布の繊維の表面や繊維間に導電性粒子を付着・混入させた導電性粒子を含む導電性布も利用することができる。しかしながら、導電性布30としては、導電性粒子を含む導電性布よりも導電性繊維を含む導電性布を用いることが特に好ましい。この理由は、導電性粒子を含む導電性布では、タッチ操作を繰り返す過程で、導電性粒子が繊維から脱落し、導電性布の表面抵抗値が徐々に増大してしまう可能性が高いためである。すなわち、このような表面抵抗値の増大が発生した場合、タッチ操作時の入力応答性の低下やタッチパネルの誤動作を招き易くなる。
【0043】
図4および図5は、導電性布30の一例を示す概略模式図である。ここで、図4に示す導電性布30D(30)は、縦糸34Aと横糸34Bとを互い違いに密集して絡めるように織った布であり、図5に示す導電性布30E(30)は、縦糸34Aと横糸34Bとを格子状に織った布である。なお、図5に示す導電性布30Eにおいて、全ての縦糸34Aおよび横糸34Bが、一体的に形成されたものであってもよい。
【0044】
ここで、縦糸34Aおよび横糸34を構成する繊維は、金属繊維やカーボン繊維などの導電性材料のみから構成された繊維でもよく、樹脂繊維やガラス繊維などの非導電性繊維(芯材)の表面を、金属などの導電性材料で被覆した繊維でもよく、導電性繊維(芯材)の表面を芯材とは異なる材料からなる導電性材料で被覆した繊維でもよい。また、導電性布30は、全体で導電性が発揮できればよいため、縦糸34Aおよび横糸34Bを構成する繊維として、導電性繊維と非導電性繊維とを混合して用いてもよい。この場合、導電性繊維と組み合わせて用いる非導電性繊維としては、公知の非導電性繊維を用いることができ、たとえば、ガラス繊維、ケブラー繊維、PET(ポリエチレンテレフタラート)繊維、アクリル樹脂繊維、ナイロン樹脂繊維などを用いることができる。
【0045】
図6は、導電性布30を構成する導電性繊維の一例を示す模式断面図である。図6に示す導電性繊維36は、非導電性芯材36Aと、非導電性芯材36Aを被覆する金属層36Bとを有する。ここで、金属層36の層構造は、単層構造でもよく、2層以上の多層構造でもよい。非導電性芯材36Aとしては、たとえば、ガラス繊維、PET繊維、アクリル樹脂繊維、ナイロン樹脂繊維、ケブラー繊維などの公知の非導電性繊維が利用できる。また、金属層36Bを構成する材料としてはCu、Niなどの公知の導電性を有する金属やこれらの合金を利用できる。なお、導電性布30は、市販品を適宜選択して利用できる。
【0046】
(タッチペン、筆記具付きタッチペン、ペン先出没式筆記具および入力ペン用リフィル)
本実施形態のタッチペン用ペン先10は、タッチペン、筆記具付きタッチペン、あるいは、ペン先出没式筆記具のリフィルのうち、携帯端末などの入力ペン用リフィルとして利用できる。
【0047】
ここで、本実施形態のタッチペンは、棒状本体部と、棒状本体部の少なくとも一方の端に取り付けられた本実施形態のタッチペン用ペン先10とを有する。図7は、本実施形態のタッチペンの一例を示す模式断面図であり、具体的には、図中に示すタッチペン用ペン先10Aおよび棒状本体部110の中心軸Cを含む面で切断した場合の断面図について示したものである。図7に示すタッチペン100は、タッチペン用ペン先10Aと、棒状本体部110と、ペン先取付部材120と、カバー130とを有している。そして、タッチペン用ペン先10Aは、ペン先取付部材120を介して、棒状本体部110の一方の端に取り付けられている。
【0048】
棒状本体部110は、タッチペン用ペン先10Aの直径よりも一回り大きい直径を有する円柱状部材であり、たとえば、金属等の導電性材料から構成される。この棒状本体部110の一方の端面には、雌ネジを成す凹部112が設けられている。また、ペン先取付部材120は、タッチペン用ペン先10Aの直径と同程度の直径を有する円柱状の本体部122と、タッチペン用ペン先10Aを固定するための凸部124と、この本体部122の一方の面に設けられ、雄ネジを成す凸部126と、から構成されている。ここで、凸部124は、中空部24の開口部26側および開口部26とほぼ同一の形状を成している。そして、凸部124を、開口部26から中空部24内へと挿入することで、タッチペン用ペン先10Aを、ペン先取付部材120に固定することができる。また、凹部112に凸部126を挿入してねじ止めすることで、ペン先取付部材120を棒状本体部110に固定することができる。また、導電性布30Aの端部を含むタッチペン用ペン先10の側面部分およびペン先取付部材120の本体部122の側面(外周面)を覆い隠すように、これらの面を覆う円筒状のカバー130が取り付けられている。そして、このタッチペン100の使用に際しては、棒状本体部100を手で持ち、タッチペン用ペン先10Aを、タッチパネル表面に押し当ててタッチ操作を行う。
【0049】
なお、棒状本体部110の他方の端には、黒鉛(固形塗料)、ゲル状インク(ゲル状塗料)、油性インクあるいは水性のインクなどの液状塗料による筆記を行うペン先を設けることで、筆記具付きタッチペンとしてもよい。すなわち、棒状本体部100のタッチペン用ペン先10Aが取り付けられた部分以外の部分は、シャープペンシルやボールペンなどのような通常の筆記具を構成する。
【0050】
また、本実施形態のタッチペン用ペン先10は、1本以上の棒状リフィルを備えたペン先出没式筆記具に用いることもできる。この場合、本実施形態の入力用リフィルは、棒状リフィルの先端部分が、タッチペン用ペン先10から構成される。この場合、他の棒状リフィルを、本実施形態の入力ペン用リフィルに交換するだけで、様々なペン先出没式筆記具において、タッチパネルの操作を実施できる。また、本実施形態の入力ペン用リフィルを用いた本実施形態のペン先出没式筆記具は、1本以上の棒状リフィルを備えていればよいが、通常は、2本以上の棒状リフィルを備えていることが好ましい。また、本実施形態のペン先出没式筆記具が、2本以上の棒状リフィルを備えている場合、1本の棒状リフィルが本実施形態の入力ペン用リフィルからなり、残りの棒状リフィルがボールペンリフィルなどの通常の筆記用リフィルであることが好ましい。
【0051】
なお、タッチペン用ペン先10の先端から、ペン先出没式筆記具を持つ手までの電気的導通をより高めることで、タッチパネルの操作時の静電容量の変化をより確実に発生させる観点からは、入力ペン用リフィルおよびペン先出没式筆記具を構成する各部の部材として、金属製部材あるいは金属膜コーティングを施した部材などの導電性部材を用いることが好ましい。但し、これらの導電性部材は、タッチペン用ペン先10の先端から、ペン先出没式筆記具を持つ手までの導通経路が形成できる位置に最低限配置されていればよい。また、本実施形態のペン先出没式筆記具におけるペン先の出没方式としては特に限定されず、たとえば、特許第3168200号に開示される押しボタン式、ツイスト式、あるいは、その他公知のペン先出没方式を採用できる。
【符号の説明】
【0052】
10、10A、10B、10C タッチペン用ペン先
20、20A、20B ペン先本体
22 外面
22T ペン先表面
22T1 先端領域(ペン先表面22Tの先端部分Tの近傍の領域)
22T2 ペン先表面22Tの側面部のうち底部B側の領域
22B 底面
24 中空部
26 開口部
28 凹部
30、30A、30B、30C、30D、30E 導電性布
30BE、30CE (導電性布の)端部
32 貫通孔
34A 縦糸
34B 横糸
36 導電性繊維
36A 非導電性芯材
36B 金属層
40 界面
50、50A、50B 被覆部材
52 凸部
100 タッチペン
110 棒状本体部
112 凹部
120 ペン先取付部材
122 本体部
124 凸部
126 凸部
130 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性材料からなるペン先本体と、
該ペン先本体のペン先表面の少なくとも先端部分近傍を覆う導電性布と、を少なくとも有し、
前記ペン先本体に対して、前記導電性布が接着固定されていることを特徴とするタッチペン用ペン先。
【請求項2】
請求項1に記載のタッチペン用ペン先において、
前記ペン先表面の少なくとも先端部分近傍の領域に対して、前記導電性布が接着固定されていることを特徴とするタッチペン用ペン先。
【請求項3】
請求項1または2に記載のタッチペン用ペン先において、
前記ペン先本体が、接着性を有するゴム原料を用いて形成されたものであることを特徴とするタッチペン用ペン先。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のタッチペン用ペン先において、
前記ペン先表面と、前記導電性布との間に接着層が設けられていることを特徴とするタッチペン用ペン先。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のタッチペン用ペン先において、
前記導電性布の端部が、前記ペン先本体と被覆部材とにより挟持されていることを特徴とするタッチペン用ペン先。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載のタッチペン用ペン先において、
前記導電性布を構成する繊維として、導電性繊維が含まれることを特徴とするタッチペン用ペン先。
【請求項7】
棒状本体部と、
該棒状本体部の少なくとも一方の端に取り付けられた請求項1〜6のいずれか1つに記載のタッチペン用ペン先と、を少なくとも有することを特徴とするタッチペン。
【請求項8】
棒状本体部を有し、
該棒状本体部の一方の端に請求項1〜6のいずれか1つに記載のタッチペン用ペン先を備え、他方の端に塗料による筆記を行うペン先を備えることを特徴とする筆記具付きタッチペン。
【請求項9】
1本以上の棒状リフィルを備え、
少なくとも1本の棒状リフィルの先端部分が、請求項1〜6のいずれか1つに記載のタッチペン用ペン先から構成されていることを特徴とするペン先出没式筆記具。
【請求項10】
1本以上の棒状リフィルを備えたペン先出没式筆記具に用いられ、
棒状リフィルの先端部分が、請求項1〜6のいずれか1つに記載のタッチペン用ペン先から構成されていることを特徴とする入力ペン用リフィル。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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