説明

タッチ・スクリーンを備える携帯式電子機器および制御方法

【課題】操作性に優れたタッチ・スクリーン式電子機器を提供する。
【解決手段】スマートフォンの筐体の表面に表面タッチ・パネル119が配置され背面に裏面タッチ・パネル133が配置される。操作領域設定部207は、加速度センサ135の出力により両面操作モードをイネーブルに設定し、タッチ・パネルに対して、タッチ操作を許可する操作許可領域とタッチ操作を制限する操作制限領域で構成された操作領域を入力制御部205に設定する。入力制御部は表面タッチ・パネルに対するタッチ操作と背面タッチ・パネルの操作許可領域に対するタッチ操作を有効にし、背面タッチ・パネルの操作制限領域に対するタッチ操作を無効にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタッチ・スクリーンを備える携帯式電子機器の操作性を向上する技術に関し、さらに詳細には携帯式電子機器を片手で保持しながら保持する手の指によるタッチ・スクリーンに対するタッチ操作を容易にする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タブレット・コンピュータ(スレート・コンピュータともいう。)、携帯情報端末(PDA)、または高機能携帯電話(スマートフォン)などのさまざまな携帯式電子機器が開発されている。PDAはスマートフォンから電話機能を除いた電子機器ということができる。また、タブレット・コンピュータは、ノートブック型パーソナル・コンピュータからハードウェアとしてのキーボードを除いてもっぱらタッチ・スクリーンで入力をするようにした電子機器ということができる。
【0003】
このような携帯式電子機器には、有機ELや液晶などのディスプレイと指やスタイラス・ペンで入力するタッチ・パネルを備えているものがある。タッチ・パネルは、透明の電極で形成されたパネルがディスプレイに重ねて配置されたり、インセル(In-Cell)タッチ・パネルとして液晶パネルの中に組み込まれたりする。以下、ディスプレイとタッチ・パネルが組み合わせられた複合体をタッチ・スクリーンという。
【0004】
タッチ・スクリーンを備えるスマートフォンでは、一般に文字の入力はディスプレイに表示されたソフトウェア・キーボードから行い、アプリケーションの起動および操作、スクロールや拡大縮小などの表示画面の変更、およびカメラやマイクロフォンなどのデバイスの操作などはディスプレイ上のオブジェクトに対するタッチ操作で行う。ここに、ディスプレイに表示されるオブジェクトには、アイコン、文字列、図形、ソフトウェア・キーボードのキーまたはウインドウなどがある。そしてオブジェクトに指や専用のペンでタッチ操作をすると、タッチ・パネルのドライバがタッチされた位置の座標を計算してアプリケーション・プログラム(アプリケーション)、ファームウェア、またはオペレーティング・システム(OS)などに入力情報として通知する。
【0005】
特許文献1は、片手で操作する場合にカーソルの移動とクリックの動作を、情報処理装置を持ち替えないで容易に行う発明を開示する。この発明では、筐体の表面に液晶ディスプレイを備え、側面に選択スイッチを備え、背面にタブレットを備えている。そして情報処理装置を片手で保持し、この保持した手の指(例えば人差し指)でタブレットを操作してカーソルを移動し、別の指(例えば親指)で選択スイッチをプッシュすることにより表示画面上のカーソルの位置を選択することができる。
【0006】
特許文献2は、表面側の表示パネルに指が触れないようにするために背面側に設けたタッチ・センサで操作することが可能なPDAを開示する。同文献にはPDAを片手で操作する際に、タッチ・センサの操作位置に対応する表示パネル上の位置に接触位置表示をして表示パネルに表示されたボタン表示を背面から操作できるようにすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−39093号公報
【特許文献2】特許第3852368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
スマートフォンは携帯に便利であるため、電車の中や荷物を持っているときなどに片手しか使えないような場所や状況でも使用したいことが多い。以下、タッチ・スクリーンを備える携帯式電子機器を片手で保持しながら保持する手でタッチ・スクリーンにタッチ操作をすることを片手保持操作ということにする。スマートフォンは全体のサイズが掌に収まる程度かそれよりもやや大きくなっており、タッチ・スクリーンは筐体のサイズに合わせて筐体のほぼ全体に渡って設けられている。
【0009】
図13、図14は、タッチ・スクリーンに表示されたアイコンに対して片手保持操作をしている様子を示す図である。片手保持操作をする場合は、スマートフォンを親指の付け根の膨らんだ部分(母指球:Thenar eminence)と親指以外の指で保持し、自由になっている親指でタッチ操作をするのが一般的である。たとえば、図13(A)のように保持した場合は、タッチ・スクリーンの上下方向の中央近辺に表示されたアイコンにタッチ操作をすることは容易であり、さらに図13(B)のようにタッチ・スクリーンの下側に表示されたアイコンのタッチ操作にもさほどの困難さはない。
【0010】
しかし、図14(A)のようにタッチ・スクリーンの上側に表示されたアイコンへタッチ操作をするには親指の指先がアイコンに届くように掌を伸ばしてから親指を不自然に曲げる必要があり難しくなる。また、図14(B)のように親指以外の指でタッチ操作をする場合もあるが、中指や薬指では親指に比べてタッチ操作が難しく、スマートフォンの保持も不安定になる。したがって、片手保持操作でスマートフォンの保持の安定と操作の容易化を図るにはタッチ・スクリーンに対する操作を親指で行うことが最も適しているといえる。
【0011】
しかし、図13、図14を参照して説明したように、スマートフォンの所定の位置を保持してから保持状態を変えないようにしながら親指でタッチ操作をしようとしても親指の指先はタッチ・スクリーンの全域に届かないのでタッチ操作できる領域には限界がある。したがって上側に表示されたアイコンを操作するには筐体の上を保持するように持ち替え、下側に表示されたアイコンを操作するには筐体の下を保持するように持ち替える必要がでてくる。しかし、対象とするオブジェクトの位置に応じて片手だけでスマートフォンを持ち替えると落下させてしまったり操作に時間を費やしたりする。また、指を不自然に曲げ伸ばしてタッチ操作をすると、目的とするオブジェクト以外のオブジェクトにタッチ操作をしてしまうこともある。このような問題はタッチ・スクリーンが大型化するほど顕著になる。
【0012】
そこで本発明の目的は、片手保持操作を容易に行うことができるタッチ・スクリーン式電子機器を提供することにある。さらに本発明の目的は、片手保持操作でピンチ・イン操作およびピンチ・アウト操作を行うことができるタッチ・スクリーン式電子機器を提供することにある。さらに本発明の目的は、そのようなタッチ・スクリーン式電子機器に適用が可能な入力の制御方法およびコンピュータ・プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明にかかる携帯式電子機器は、筐体の表面にタッチ・スクリーンが配置され背面にタッチ・パネルが配置されている。本発明の原理は、これまでの携帯式電子機器に存在していた片手保持操作での操作性低下の課題を、タッチ・スクリーンとタッチ・パネルの相互補完操作により解決した点にある。具体的には、タッチ・スクリーンに対するタッチ操作が困難な領域をタッチ・パネルからのタッチ操作で補うことで操作性を向上させている。携帯式電子機器は、タッチ・スクリーンだけに対するタッチ操作を許可する片面操作モードとタッチ・スクリーンとタッチ・パネルの両方からのタッチ操作を許可する両面操作モードで動作することができる。
【0014】
両面操作モードがイネーブルに設定されたときに、携帯式電子機器がタッチ・パネルに対して、タッチ操作を許可する操作許可領域とタッチ操作を制限する操作制限領域で構成された操作領域を設定する。操作許可領域は片手保持操作で容易にタッチ操作をすることが可能なタッチ・パネルの領域に相当する。また、操作制限領域は、片手保持操作のときに掌や指の付け根などがタッチ操作とは無関係にタッチ・パネルに接触してしまう領域に相当する。
【0015】
このようにタッチ・パネルに対して操作領域を設定すると、携帯式電子機器は、タッチ・スクリーンに対するタッチ操作とタッチ・パネルの操作許可領域に対するタッチ操作による入力を有効にし、タッチ・パネルの操作制限領域に対する手の接触による入力を無効にするように動作する。入力を無効にすることはアプリケーションに対してタッチ操作の座標が提供されないようにすることであり、タッチ・パネルで入力座標の生成を制限してもよいし、一旦タッチ・パネルが生成した座標をアプリケーションに届くまでのさまざまなレイヤで制限してもよい。
【0016】
このような構成によれば、使用するときの筐体の縦横方向および持ち手またはいずれか一方で特定される保持状態とタッチ操作をするタッチ・パネル上の位置に応じてタッチ・スクリーンまたはタッチ・パネルのいずれか一方または両方からタッチ操作をすることができるようになる。また、片手保持操作ではピンチ・インおよびピンチ・アウトなどのようなタッチ・スクリーンにはできない操作もタッチ・パネルからはできるようになる。
【0017】
片手保持操作のときにタッチ・スクリーンには、タッチ操作とは無関係な手の部位が接触する可能性は低いので、操作制限領域を設定しないでもよいが、個人の特質や操作状況によってはタッチ・パネルにタッチ操作をするときに、誤ってタッチ・スクリーンに指が接触することがある。それを回避するには、タッチ・スクリーンにも操作許可領域と操作制限領域を設けることが望ましい。
【0018】
タッチ・パネルは、タッチ・スクリーンに対する片手保持操作のために筐体の持ち替えまたは指の不自然な曲げ伸ばしをしなければならないような場合に、背面からの入力を可能にする補助的な入力手段としての意義を備える。したがって、タッチ・パネルの操作許可領域の投影に対応するタッチ・スクリーンの領域はタッチ操作がしにくい領域に対応することになるため、そのような領域をタッチ・スクリーンの操作制限領域に設定し、タッチ・パネルの操作制限領域の投影に対応するタッチ・スクリーンの領域を操作許可領域に設定することができる。
【0019】
タッチ・スクリーンに対するタッチ操作が容易な領域とタッチ・パネルに対するタッチ操作が容易な領域の境界の近辺には、オーバーラップする領域が存在することがある。その場合は、タッチ・パネルの操作許可領域の投影の一部がタッチ・スクリーンの操作許可領域の一部とオーバーラップするようにして、オーバーラップする領域ではいずれの面からもタッチ操作ができるようにすることが望ましい。
【0020】
携帯式電子機器は保持状態が頻繁に変わる。そしてタッチ・スクリーンおよびタッチ・パネルのそれぞれにおける操作がし易い領域は、そのときの保持状態により変わる。したがって両面操作モードのための操作領域の設定は、両面操作モードがイネーブルに設定されるたびに、および保持状態が変化するたびに行うことが望ましい。携帯式電子機器は、両面操作モードがイネーブルに設定されるたびに、あるいは、保持状態が変更されるたびに手動での設定を可能にすることができる。
【0021】
この場合、携帯式電子機器はそのときの筐体の保持状態において、タッチ・スクリーンに対する入力座標を受け取ってタッチ・スクリーンに対する操作許可領域を認識する。このとき、タッチ・スクリーンに親指でタッチ操作ができる限界の領域にタッチ操作をするようにユーザに要求するプロンプト画面を表示することができる。そして認識した操作許可領域の投影に対応するタッチ・パネルの領域をタッチ・パネルの操作制限領域として設定することができる。
【0022】
操作領域の設定は、両面操作モードがイネーブルに設定されるたびに、および筐体の保持状態が変化するたびにタッチ・パネルへの手の接触状態を認識して自動的に設定することができる。この場合、携帯式電子機器は筐体を保持する手がタッチ・パネルに接触する領域から受け取った座標に基づいてタッチ・パネルの操作制限領域を設定することができる。このときタッチ・スクリーンに、タッチ・パネルに対してタッチ操作ができない掌や指の付け根を接触させることをユーザに要求するプロンプト画面を表示することができる。
【0023】
操作領域の設定は、両面操作モードがイネーブルに設定されるたびに、および筐体の保持状態が変化するたびにタッチ・パネルの保持状態を認識して自動的に設定することができる。この場合、携帯式電子機器は保持状態に応じてあらかじめ作成した複数の操作領域パターンを格納しておき、認識した保持状態に対応する操作領域パターンを複数の操作領域パターンの中から選択して設定することができる。各操作領域パターンは、操作許可領域と操作制限領域に関する情報を含む。
【0024】
片手保持操作をするときにユーザにとって都合がよい保持状態が決まっている場合には、両面操作モードがイネーブルに設定されたことに応答して、あらかじめ登録したディフォルトの操作領域パターンに基づいて操作領域を設定することができる。片手保持操作においてソフトウェア・キーボードのキーは親指でタッチ・スクリーンをみながら容易に操作できる。携帯式電子機器はアプリケーションからソフトウェア・キーボードがタッチ・スクリーンの一部に表示されたイベントを受け取ったときに、ソフトウェア・キーボードが表示されている領域以外の領域をタッチ・パネルの操作許可領域に設定することができる。
【0025】
こうすることで、親指でソフトウェア・キーボードの操作がし易いように筐体を保持し、親指が操作できない範囲に対するタッチ操作をタッチ・パネルから行うことができる。タッチ・パネルに設定された操作許可領域と操作制限領域は、ユーザがタッチ・スクリーンから認識できることが望ましい。この場合タッチ・パネルの操作許可領域または操作制限領域をタッチ・スクリーンの表示で区別するために、タッチ・パネルの操作許可領域または操作制限領域に対応するタッチ・スクリーンの領域にアプリケーションが作成した画像の表示を毀損しないようにしながら薄い色が重なるように表示することができる。
【0026】
あらかじめ登録した操作領域パターンは、保持状態が対応していても保持したときと登録したときの保持する筐体のわずかな位置のずれがある場合に操作領域を変更したい場合もある。この場合、タッチ・パネルの操作許可領域と操作制限領域の境界を示すラインをタッチ・スクリーンに表示し、ラインに対するドラッグ&ペースト操作で境界を変更できるようにすることができる。
【0027】
タッチ・パネルに対するタッチ操作は、タッチ・スクリーンに対するタッチ操作に比べてユーザの負担は大きい。そしてタッチ・パネルに対するタッチ操作をしている間に、誤って指がタッチ・スクリーンに接触する場合がある。この場合、スイッチの操作や所定のアイコンの操作などによりタッチ・パネルに操作する間はタッチ・スクリーンに対するタッチ操作による入力を無効にすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、片手保持操作を容易に行うことができるタッチ・スクリーン式電子機器を提供することができた。さらに本発明により、片手保持操作でピンチ・イン操作およびピンチ・アウト操作を行うことができるタッチ・スクリーン式電子機器を提供することができた。さらに本発明により、そのようなタッチ・スクリーン式電子機器に適用が可能な入力の制御方法およびコンピュータ・プログラムを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】スマートフォン100の外形を示す平面図である。
【図2】スマートフォン100の概略の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】スマートフォン100において両面操作モードを実現するソフトウェアおよびハードウェアの構成を示す機能ブロック図である。
【図4】両面操作制御プログラム200の初期設定画面を示す図である。
【図5】操作領域パターンの作成および登録をする手順を示すフローチャートである。
【図6】登録された操作領域パターンの例を示す図である。
【図7】メール用のアプリケーションが、画面にソフトウェア・キーボードを表示している様子を示す図である。
【図8】スマートフォン100の基本操作の手順を示すフローチャートである。
【図9】手動による両面操作モードを実現する手順を示すフローチャートである。
【図10】手動による両面操作モードのときに表示するプロンプト画面を示す図である。
【図11】自動による両面操作モードを実現する手順を示すフローチャートである。
【図12】各保持状態において背面タッチ・パネル133に接触した手による入力座標のパターンの一例を示す図である。
【図13】タッチ・スクリーンに片手保持操作をしている様子を示す図である。
【図14】タッチ・スクリーンに片手保持操作をしている様子を示す図である。
【図15】タッチ・スクリーンに片手保持操作をしている様子を示す図である。
【図16】タッチ・スクリーンに片手保持操作をしている様子を示す図である。
【図17】タッチ・パネルに片手保持操作をしている様子を示す図である。
【図18】タッチ・パネルに片手保持操作をしている様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[タッチ・スクリーン式電子機器の構成]
本発明は、タブレット・コンピュータ、携帯情報端末(PDA)、携帯式ゲーム機器またはスマートフォンなどのタッチ・スクリーンを備える携帯式電子機器に適用できる。図1は、このような携帯式電子機器の一例としてのスマートフォンの外形を示す図である。スマートフォン100は、筐体の外側からアクセスできる位置にタッチ・スクリーン121および制御スイッチ143を含む。さらに、側面には図示しないUSBポート、ヘッドフォン・ジャック、電源スイッチおよびボリューム・スイッチなどを含む。
【0031】
図1(A)は、スマートフォン100の表面を示し、図1(B)は背面を示している。表面では、タッチ・スクリーン121のデスクトップ画面に複数のアイコン105が表示されている。背面には、タッチ・パネル133が設けられている。タッチ・パネル133は、大きさがタッチ・スクリーン121の大きさに一致し、かつ、タッチ・スクリーン121の外形の投影に合致した位置に配置される。ただし本発明は、両者の大きさと投影が厳密に一致しない場合でも実現できる。筐体およびタッチ・スクリーン121は長方形であるため、ユーザのみる方向により定まる画面の上下方向に対応する筐体またはタッチ・スクリーン121の上下方向には縦方向と横方向がある。図1は画面の上下方向がタッチ・スクリーン121の縦方向である例を示している。以後、画面の上下方向に対応する筐体の上下方向を単に筐体の縦横方向という。
【0032】
図2は、スマートフォン100の概略の構成を示す機能ブロック図である。図2に示すブロック図は、スマートフォン100の概略の構成を示しており、実際にはカメラやリムーバル・メディアなどのさらに多くの機能を含んでいる。また、これらの機能のいくつかを1つの半導体チップに統合したり個別の半導体チップに分割したりすることができる。I/Oインターフェース113には、CPU111、ディスプレイ115、およびメイン・メモリ117が接続されている。I/Oインターフェース113は、ディスプレイ115を含む周辺装置、CPU111およびメイン・メモリ117の相互間のデータ転送を制御する。
【0033】
ディスプレイ115は、液晶表示装置(LCD)を採用しているが他の方式のディスプレイを採用することもできる。ディスプレイ115には、透明な導電膜で形成されたインセル・タッチ・パネルがディスプレイ115の内部に表面タッチ・パネル119として設けられている。他の例としては表面タッチ・パネル119を、透明電極で別部材として形成してディスプレイ115に重ねて配置してもよい。
【0034】
表面タッチ・パネル119には、表面に対して指が接触または接近した位置の座標を出力する投影型または表面型の静電容量式、押圧された位置の座標を出力する抵抗膜式または、その他の方式を採用することができる。本実施の形態では投影型の静電容量式を採用している。表面タッチ・パネル119とディスプレイ115が組み合わせられた複合体はタッチ・スクリーン121を構成する。表面タッチ・パネル119は、タッチ・パネル・コントローラ131に接続されている。
【0035】
メイン・メモリ117は、CPU111が実行するプログラムを記憶する揮発性のメモリである。無線回路123は、電話通信、データ通信、およびGPS信号の受信などのために内部の電気信号と外部の電波信号を変換するインターフェースを提供する。オーディ回路125は、マイクロフォン/スピーカ127に対するインターフェースを提供する。フラッシュ・メモリ129は、CPU111が実行するOSおよびアプリケーションなどのプログラムおよびデータを格納する不揮発性のメモリである。
【0036】
本実施の形態にかかる両面操作モードを実現するための両面操作制御プログラム200(図3)は、フラッシュ・メモリ129に格納されている。背面タッチ・パネル133には、表面タッチ・パネル119と同じ投影型の静電容量式タッチ・パネルを採用することができる。ただし背面タッチ・パネル133は片手保持操作のときに表面タッチ・パネル119に対するタッチ操作を補完する目的で使用するものであるため、必ずしも表面タッチ・パネル119と同等の機能を備える必要はなく、より機能の低いものであってもよい。
【0037】
したがって、背面タッチ・パネル119としては、圧電素子が基板に発生させた振動波がユーザの指で触れた箇所で反射するときの反射時間から接触箇所の座標を検出する表面弾性方式または超音波方式を採用することができる。また、タッチ面の周辺に配置したLEDから放射された赤外線によりタッチ操作した指の座標を検知する赤外線方式を採用することもできる。
【0038】
タッチ・パネル・コントローラ131は、表面タッチ・パネル119および背面タッチ・パネル133から受け取った座標を所定のプロトコルに変換してアプリケーションおよびOSに送るインターフェースを提供する。タッチ・パネル・コントローラ131は、表面タッチ・パネル119に対してタッチ操作をすると、接触した指先のディスプレイ115上の座標に対応する座標を出力する。同様にタッチ・パネル・コントローラ131は、背面タッチ・パネル133にタッチ操作をすると、接触した指先の投影のディスプレイ115上の座標に対応する座標を出力する。したがって、ディスプレイ115に表示されたオブジェクトは表面タッチ・パネル119および背面タッチ・パネル133のいずれからでも、当該オブジェクトの真上または真下からタッチ操作できるようになっている。
【0039】
他の例では、タッチ・パネル・コントローラ131は、背面タッチ・パネル133の座標に一定のバイアスをかけて、背面タッチ・パネル133に接触した指先の投影のディスプレイ115上の座標に対応する座標とは異なる座標を出力するようにしてもよい。こうすることで、背面タッチ・パネル133において指が届かない範囲に表示されたオブジェクトに対するタッチ操作を背面タッチ・パネル133からできるようになるため、より大型のタッチ・スクリーンの片手保持操作に対応することができる。
【0040】
加速度センサ137は、スマートフォン100の筐体に発生した重力の加速度および振動による加速度を検出してアナログの加速度データを加速度コントローラ135に出力する。加速度センサ137は、直交する3つの検出軸(X軸、Y軸、Z軸)を備えており、各検出軸は重力加速度の分力成分およびスマートフォン100の筐体に加えられた衝撃による加速度を検出して出力する。
【0041】
加速度コントローラ135は、加速度センサ137から受け取ったアナログの加速度データを所定の周期でサンプリングしてディジタル・データに変換しアプリケーションおよびOSに送る。OSは、加速度コントローラ135から受け取った重力加速度の分力成分から各検出軸の重力方向に対する傾斜角度を計算して筐体の縦横方向を判定しディスプレイ115に表示される画面の表示方向がユーザのみる方向に整合するように変更する。
【0042】
パワー・マネジメント・ユニット(PMU)139には、制御スイッチ143、USBポート141、および充電式の電池145が接続されている。PMU139は、電池145を充電する充電器、パワー・ステートに応じて各デバイスまたは半導体チップの所定の機能ブロックへの電力供給を制御する電力制御回路、およびUSBインターフェース回路などを含む。USBポート141は、ホスト・コンピュータまたは外部充電アダプタに接続するために使用する。
【0043】
制御スイッチ143は、機械式または静電容量式などのユーザが操作可能なスイッチで構成することができ、本発明にかかる両面操作モードをイネーブルにしたり背面タッチ・パネル133からタッチ操作をする際に、表面タッチ・パネル119からの入力を無効にしたりする際に使用する。ここに両面操作モードとは、表面タッチ・パネル119および背面タッチ・パネル133の両方から入力できるスマートフォン100の動作状態をいう。これに対して、表面タッチ・パネル119だけから入力できる従来からの動作状態を片面操作モードという。
【0044】
〔両面操作モードを実現するソフトウェアおよびハードウェアの構成〕
図3は、スマートフォン100において両面操作モードを実現するソフトウェアおよびハードウェアの構成を示す機能ブロック図である。タッチ・パネル・ファームウェア201は、タッチ・パネル・コントローラ131の動作を制御して入力制御部205に表面タッチ・パネル119および背面タッチ・パネル133の入力座標を転送する。タッチ・パネル・ファームウェア201は、タッチ・パネル・コントローラ131から受け取った座標が表面タッチ・パネル119または背面タッチ・パネル113のいずれに対するタッチ操作で生成した座標かを識別する情報とともに座標を入力制御部205または操作領域設定部207に送る。加速度ファームウェア203は、加速度コントローラ203の動作を制御して操作領域設定部207に加速度データを転送する。
【0045】
両面操作制御プログラム200は、入力制御部205、操作領域設定部207、ユーザ・インターフェース部209、操作領域画像作成部211、操作領域パターン格納部215を含む。これらの機能ブロックは、両面操作制御プログラム200、周知のソフトウェアであるOSおよびファームウェアなどのソフトウェアと、CPU111、メイン・メモリ117、およびフラッシュ・メモリ129などのハードウェアとの協働により実現される。
【0046】
ユーザ・インターフェース部209は、ディスプレイ115に両面操作制御プログラム200の初期設定画面300(図4)を表示して初期設定をするためのユーザ・インターフェースを提供する。ユーザはユーザ・インターフェース部209が提供する初期設定画面300を通じて、両面操作モードのイネーブル/ディスエーブルの設定、操作領域の設定および操作領域パターンの作成などを行う。操作領域パターン格納部215は、ユーザ・インターフェース部209を通じて筐体の保持状態ごとに作成された複数の操作領域パターンおよびあらかじめシステムが作成した操作領域パターンを格納する。
【0047】
ここに筐体の保持状態とは、スマートフォン100を片手保持操作するときの筐体の縦横方向および持ち手またはいずれか一方で特定される状態をいう。筐体の保持状態は、表面タッチ・パネル119および背面タッチ・パネル133のそれぞれにおける操作領域に関連するが詳しくは後に説明する。操作領域パターンはスマートフォン100が筐体の保持状態を判断して操作領域を自動設定する際に使用する。操作領域パターン格納部215の構成には、フラッシュ・メモリ129も含んでいる。
【0048】
操作領域設定部207は、以下にその主な機能を示すように両面操作モードを実現する上で中心的な役割を果たす。操作領域設定部207は、両面操作モードのイネーブル/ディスエーブルを設定する。操作領域設定部207は、片面操作モードのときに加速度ファームウェア203から受け取った特有のパターンを示す加速度データまたは制御スイッチ143の押下に基づいて、両面操作モードがイネーブルに設定されたことを判断する。加速度データの特有のパターンは、スマートフォン100の筐体を指で軽く叩くタップ操作により筐体に生じた振動のパターンとすることができる。操作領域設定部207は、加速度コントローラ135から受け取った振動の振幅を所定の閾値で2値化することでタップ操作の回数を計算してイネーブルに設定する特有のパターンを認識することができる。
【0049】
さらに操作領域設定部207は、スマートフォン100を長手方向の軸または短手方向の軸を中心にして回動させたときの加速度データから特有のパターンを認識することができる。このとき操作領域設定部207は、回動の往復回数を加速度データの特有のパターンとして認識することができる。操作領域設定部207は、両面操作モードがイネーブルになったと判断したときに、表面タッチ・パネル119と背面タッチ・パネル133のそれぞれについて入力制御部205に操作領域の設定をする。
【0050】
操作領域とは、両面操作モードのときに表面タッチ・パネル119および背面タッチ・パネル133に対して設定されたタッチ操作が有効に扱われる領域をいう。OSまたはアプリケーションに対するタッチ操作が有効になる領域を操作許可領域といい、操作が無効になる領域を操作制限領域という。以後、表面タッチ・パネル119の操作許可領域および操作制限領域をそれぞれ表面操作許可領域および表面操作制限領域といい、背面タッチ・パネル133の操作許可領域および操作制限領域を背面操作許可領域および背面操作制限領域ということにする。本実施の形態では片面操作モードのときに、背面タッチ・パネル133には操作制限領域を必ず設定する必要があるが、表面タッチ・パネル119には操作制限領域を設けないで全体を操作許可領域に設定することもできる。
【0051】
両面操作モードを実行するための操作領域の設定には、図4の初期設定画面300に示すように、手動設定と3つの自動設定がある。3つの自動設定としては、自動認識設定、自動パターン設定、および自動ディフォルト設定がある。自動設定に使用する操作領域パターンは操作領域パターン格納部215に格納されている。操作領域設定部207は、自動設定の操作領域パターンをそのときの筐体の保持状態に応じて当該ユーザが使用し易いようにパーソナライズするための処理を行う。操作領域設定部207は、両面操作モードがイネーブルの間に制御スイッチ143が押下されたときに、表面タッチ・パネル119からの入力がすべて無効になるように入力制御部205を設定することができる。
【0052】
操作領域画像作成部211は、操作領域設定部207が設定した表面操作許可領域および背面操作許可領域またはいずれかを示す画像データを作成して画像データ生成部217に送る。操作許可領域を示す画像データは、たとえば背面操作許可領域を構成する全画素から均等な配置上の割合で選択した画素に黄または緑といったような所定の色を表示するデータとすることができる。操作許可領域を示す画像は、アプリケーション213が生成した画像にオーバーレイされるようにディスプレイ115に表示される。なお、画像データは、表面操作制限領域および背面操作制限領域またはいずれかを示すように作成してもよい。
【0053】
アプリケーション実行部213は周知のアプリケーションを含み、入力制御部205から受け取った座標データに応答して動作し、動作状態に応じた画像データを画像データ生成部217に送る。画像データ生成部217は、アプリケーション実行部213および操作領域画像作成部211から受け取った画像データから、ビット・マップ形式の画像データを生成してディスプレイ115に送る。画像データ生成部217は、アプリケーション実行部213および操作領域画像作成部211の両方から画像データを受け取ったときは、ディスプレイ115にアプリケーション実行部213が作成した画像を表示し、その画像がみえるようにしながら操作領域を示す所定の薄い色の画像を表示する。
【0054】
〔初期設定〕
図4は、両面操作制御プログラム200の初期設定画面を示す図である。初期設定画面300は、ディスプレイ115に表示された両面操作制御プログラム200のアイコンにタッチ操作がされたときに、ユーザ・インターフェース部209により表示される。初期設定画面300は、イネーブル方法設定項目301、ディスエーブル方法設定項目321、両面操作モード設定項目341および操作領域パターン作成項目351を含む。
【0055】
イネーブル方法設定項目301は、両面操作モードをイネーブルに設定する方法を選択するための設定項目で、ユーザが3つのチェック・ボックスのいずれかをチェックして選択することができる。片手保持操作では、ディスプレイ115に表示されたアイコンの操作が困難な場合もあるので、イネーブル方法設定項目301は、アイコンに対するタッチ操作以外の方法を採用することが望ましい。「タッピング303」は、スマートフォン100の筐体に振動を与えるタップ操作の回数によりイネーブルに設定する場合に選択する。「タッピング303」を選択したときは、さらにイネーブルにするための最低のタップ操作回数を選択することができる。
【0056】
「回転305」は、スマートフォン100のいずれかの軸を中心にして回動させたときの回動の回数によりイネーブルに設定する場合に選択する。「回転305」を選択したときは、さらにイネーブルにするための最低の回動回数を選択することができる。「スイッチ307」は、両面操作モードがディスエーブルのときに制御スイッチ143を操作してイネーブルに設定する場合に選択する。
【0057】
ディスエーブル方法設定項目321は、両面操作モードをディスエーブルに設定する方法を選択するための設定項目で、ユーザが3つのチェック・ボックスのいずれかをチェックして選択することができる。「連続操作323」は、イネーブルに設定されたあとのタッチ操作において、一旦指が表面タッチ・パネル119または背面タッチ・パネル133から離れてからつぎに接触するまでの時間が所定時間未満の場合にはイネーブルを継続し、所定時間以上の場合にディスエーブルに戻るように設定する場合に選択する。
【0058】
「経過時間325」は、イネーブルに設定されてから所定の時間が経過したときにディスエーブルになるように設定する場合に選択する。「操作327」は、イネーブル設定項目301と同じ操作とすることができる。両面操作モードがディスエーブルのときは、片手保持操作で表面タッチ・パネル119にタッチ操作をすることが困難な場合があるが、イネーブルのときは後に説明するように本発明により容易にタッチ操作ができるようになる。したがって、「操作327」には、ディスプレイ115に表示されたアイコンに対するタッチ操作を含めてもよい。
【0059】
両面操作モード設定項目341は、両面操作モードをイネーブルにしたときまたはイネーブルの間に筐体の保持状態が変化したときのように設定条件が変化した際に、操作領域を設定する方法を選択するための設定項目で、ユーザが4つのチェック・ボックスのいずれかをチェックして選択することができる。「手動343」は、その都度ユーザが操作領域を設定する場合に選択する。自動設定には以下のとおり3つの設定項目が用意されている。
【0060】
「自動(認識)345」は、設定条件が変化した際に、背面タッチ・パネル133に対する掌や指の接触領域から操作領域を設定する場合に選択する。「自動(パターン)347」は、設定条件が変化した際に操作領域設定部207がその時点における筐体の保持状態を判断して、操作領域パターン格納部215に格納されている当該保持状態に対応する操作領域パターンを設定する場合に選択する。
【0061】
「ディフォルト349」は、設定条件が変化したとき操作領域パターン格納部215に登録された操作領域パターンのなかからあらかじめ選択していたものを筐体の保持状態とは無関係に設定する場合に選択する。操作領域作成パターン作成項目351は、両面操作モード項目341において「自動(パターン)347」または「自動(ディフォルト)349」が設定されたときに使用する操作領域パターンをあらかじめ作成して登録する処理を開始するオブジェクトである。
【0062】
図5は、操作領域パターンの作成および登録をする手順を示すフローチャートである。図6は、登録された操作領域パターンを説明する図である。ブロック361でユーザが操作領域作成パターン作成項目351にタッチ操作をしてプログラムを起動し処理を開始する。ブロック363でユーザ・インターフェース部209は、タッチ・スクリーン121にユーザが操作領域パターンを作成するかあるいはシステムが用意した操作領域パターンを利用するかを判断する表示をする。
【0063】
システムが用意した操作領域パターンを利用することが選択された場合はブロック365に移行して、ユーザ・インターフェース部209は操作領域パターン格納部215にあらかじめ登録されている操作領域パターンを活性化する。ユーザが操作領域パターンを作成することが選択された場合は、ユーザ・インターフェース部209はブロック367で筐体の長手方向が上下方向となるように右手で保持する(これを右手縦保持という。)ことをユーザに要求する。このときユーザ・インターフェース部209は保持方法を示す画像をディスプレイ115に表示してもよい。
【0064】
ユーザ・インターフェース部209は、無理をしないでタッチ操作できる範囲を画定する位置に親指でタッチ操作をするようにユーザに要求する。ユーザはこのとき表面タッチ・パネル119の下側の端部近辺には無理をしないで親指でタッチ操作ができるように筐体を保持する。ユーザ・インターフェース部209は、そのような片手保持操作を要求するプロンプト画面をディスプレイ115に表示してもよい。
【0065】
表面タッチ・パネル119の下側の端部近辺にタッチ操作が行われないときは、ユーザ・インターフェース部209は筐体のより下側を保持するように要求して表面タッチ・パネル119の下側の端部は親指で容易にタッチ操作が行われるようにする。その結果、表面タッチ・パネル119の上側には、親指でタッチ操作ができない領域が発生するがその領域は背面タッチ・パネル133からタッチ操作ができるようになるので問題はない。有効なタッチ操作が行われたと判断したときは、ユーザ・インターフェース部209はブロック369で右手縦保持に対応する操作領域パターンを生成し操作領域パターン格納部215に格納する。
【0066】
図6の操作領域パターンAはこのとき登録されたパターンを示す図である。操作領域パターンAはユーザが表面タッチ・パネル119の下側の端部近辺の領域407を右手の親指で無理のない操作ができるように筐体を保持することで作成される。そのとき表面タッチ・パネル119の上側には筐体を持ち替えない限り親指で操作することができない領域、または不自然に親指を延ばさないと操作できない表面操作制限領域403が発生する。
【0067】
また、表面タッチ・パネル119と背面タッチ・パネル133には、右手縦保持の場合にそれぞれに対して容易にタッチ操作ができる表面操作許可領域401と背面操作許可領域が発生する。表面操作制限領域403に対しては、背面タッチ・パネル133から親指以外の指でタッチ操作をすることができる。表面操作許可領域401は背面操作制限領域に対応し、表面操作制限領域403は背面操作許可領域に対応する。ユーザ・インターフェース部209は画面の下側が表面操作許可領域401を示し、上側が表面操作制限領域403を示す操作領域パターンAを作成する。
【0068】
ユーザ・インターフェース部209は、2つの領域を区分する境界405の座標データといずれの領域が表面タッチ・パネル119または背面タッチ・パネル133の操作許可領域であるかを示すデータを操作領域パターンとして操作領域パターン格納部215に格納する。ユーザごとに親指の可動域や長さなどが異なるため、右手縦保持として共通であっても、操作し易い領域はユーザごとに異なる。しかし、スマートフォン100を使用するユーザによる実際のタッチ操作で作成された操作領域パターンAは、ユーザの特質に合った操作領域を画定することができる。
【0069】
つぎに、ブロック371でユーザ・インターフェース部209はタッチ・スクリーン121の短手方向が上下方向となるように右手で保持する(これを右手横保持という。)ことをユーザに要求する。図15は右手横保持をしている状態を示している。ユーザ・インターフェース部209はユーザに右手縦保持の場合と同様にタッチ操作を要求して操作領域パターンBを作成しブロック373で格納する。つぎにブロック375でユーザ・インターフェース部209はタッチ・スクリーン121にスマートフォン100を左手で縦保持をするように要求する。
【0070】
図13は左手縦保持により保持する状態を示している。ユーザ・インターフェース部209はユーザに右手縦保持の場合と同様にタッチ操作を要求して左手縦保持の操作領域パターンCを作成しブロック377で格納する。ブロック379でユーザ・インターフェース部209はタッチ・スクリーン121にスマートフォン100を左手で横保持するようにユーザに要求する。ユーザ・インターフェース部209はユーザに右手縦保持の場合と同様にタッチ操作を要求して左手横保持の操作領域パターンDを作成しブロック381で格納する。
【0071】
つぎに、ブロック383でユーザ・インターフェース部209はタッチ・スクリーン121にスマートフォン100を右手または左手で横保持をするように要求する。このとき左手で保持した場合の保持のしかたの一例を図16に示す。ユーザ・インターフェース部209はユーザに右手縦保持の場合と同様にタッチ操作を要求して横保持のパターンEを作成しブロック385で格納する。
【0072】
ブロック387でユーザ・インターフェース部209は、ユーザにパターンAからパターンEまでの中からディフォルトで使用する操作領域パターンを選択するように要求する。ディフォルトの操作領域パターンはユーザが最も操作し易い片手保持操作に対応した操作領域パターンをいう。たとえば、ユーザが片手保持操作をするときに常に左手縦保持をする場合は操作領域パターンCを選択する。
【0073】
図6の操作領域パターンG、Hは、ソフトウェア・キーボードが表示されたときに自動的に適用されるパターンを示す。操作領域パターンGは右手または左手で縦保持された場合に使用するパターンを示し、操作領域パターンHは右手または左手で横保持された場合に使用するパターンを示す。アプリケーションは文字の入力を受け取る必要がある場合は、画面の一部の領域にソフトウェア・キーボードを表示する。ソフトウェア・キーボードは、入力した文字が手に隠れないように通常は画面の下側半分の領域に表示される。
【0074】
片手保持操作の場合は、画面の下側は親指で操作し易いためQWERTY入力やフリック入力は表面タッチ・パネル119から行い、画面の上側に対するその他のタッチ操作は背面タッチ・パネル133から行うと操作し易い。図7はメール用のアプリケーションが、画面にソフトウェア・キーボードを表示している様子を示す図である。画面451の上半分の領域453には、操作メニューを選択するアイコンや入力位置を示す文字が表示されている。下半分の領域455にはソフトウェア・キーボードが表示されている。
【0075】
このとき上半分の領域453に対しては背面タッチ・パネル133から操作できるように背面操作許可領域を設定し、下半分の領域455に対しては表面タッチ・パネル119から操作できるように表面操作許可領域401を設定することができる。パターンG、Hはユーザの特質とは無関係であるためあらかじめ標準的に作成して操作領域パターン格納部215に登録しておくことができる。
【0076】
〔基本操作〕
図8は、スマートフォン100の基本操作の手順を示すフローチャートである。ブロック501ではあらかじめ図4の初期設定画面300に示した各メニュー項目が設定されている。ブロック503では、スマートフォン100がユーザによる機械式スイッチやその他の所定の操作によりスタンバイ状態またはスリープ状態からパワー・オン状態に遷移する。両面操作制御プログラム200、タッチ・パネル・ファームウェア201、および加速度ファームウェア203はパワー・オン状態になると動作を開始する。操作領域設定部207はパワー・オン状態に遷移したとき常に片面操作モードで動作するよう入力制御部205を設定する。
【0077】
片面操作モードでは具体的に、図3の入力制御部205は表面タッチ・パネル119からの入力をOSやアプリケーションなどに送るが、背面タッチ・パネル133からの入力は無効にする。あるいは、このときOSがタッチ・パネル・ファームウェア201を通じて背面タッチ・パネル133の動作を停止して電力の低減を図るようにしてもよい。
【0078】
ブロック507では、ユーザが片手保持操作をしようとする。ユーザは、図4の初期設定画面300で設定していたイネーブル方法で両面操作モードをイネーブルにする。操作領域設定部207は両面操作モードがイネーブルに設定されたと判断すると入力制御部205が両面操作モードで動作するように設定する。ユーザはブロック509で表面タッチ・パネル119と背面タッチ・パネル133からタッチ操作をしてアプリケーションを実行する。
【0079】
ブロック511では、ユーザは初期設定画面300で設定していたディスエーブル方法で両面操作モードをディスエーブルにする。ブロック513で操作領域設定部207は、両面操作モードがディスエーブルに設定されたと判断すると入力制御部205を片面操作モードで動作するように設定する。なお、両面操作モードの間にスマートフォン100がスタンバイ状態に遷移したときには、つぎにパワー・オン状態に遷移したときに操作領域設定部207は入力制御部205を片面操作モードで動作するように設定する。ブロック509の手順については以下で説明する。
【0080】
〔手動による両面操作モード〕
つぎに、初期設定画面300で両面操作モード項目341に「手動343」が設定された場合に両面操作モードを実現する手順を図9のフローチャートを参照して説明する。ブロック507では、ユーザが任意の筐体の保持状態でマートフォン100を保持しながら両面操作モードをイネーブルに設定する。操作領域設定部207は片面操作モードの間は、タッチ・パネル・ファームウェア201が出力した背面タッチ・パネル133の座標をアプリケーション実行部213およびOSなどのプログラムに送らないように入力制御部205を設定する。
【0081】
ブロック531では両面操作モードがイネーブルになったと判断した操作領域設定部207は、ユーザ・インターフェース部209を通じてディスプレイ115に表面タッチ・パネル119に操作領域を設定するためのプロンプト画像を表示するプロンプト画像は、あらかじめユーザ・インターフェース部209が保有している。プロンプト画像は、筐体の保持状態に対応させて複数用意しておく。ブロック531では操作領域設定部207は、加速度ファームウェア203から受け取った加速度データから重力方向が画面の表示方向の下側であると判断して筐体の縦横方向を示す情報もユーザ・インターフェース部209に送る。
【0082】
さらに、操作領域設定部207は、図12で説明する方法でユーザがスマートフォン100を右手と左手のいずれで保持しているかを判断して持ち手を示す情報もユーザ・インターフェース部209に送る。ユーザ・インターフェース部209は操作領域設定部207から受け取った筐体の縦横方向と持ち手に関する情報に基づいて筐体の保持状態を判断し対応するプロンプト画像を表示する。
【0083】
図10は、操作領域設定部207から左手縦保持している情報を受け取ったときに、ユーザ・インターフェース部209がディスプレイ115に表示するプロンプト画像の一例を示す図である。プロンプト画像551は、表面操作許可領域と表面操作制限領域の境界を画定するために利用するライン553と、2つの領域の中で表面操作許可領域を指示するために利用するライン555で構成されている。それぞれのラインの矢印は、ドラッグする方向を示している。
【0084】
操作領域設定部207は、ブロック507で両面操作モードがイネーブルに設定されてからの最初のタッチ操作とそれに連続するタッチ操作を操作領域の設定のための入力であると認識して、アプリケーションを操作するタッチ操作と区別することができる。連続するタッチ操作は、あるタッチ操作のために表面タッチ・パネル119から指が離れてからつぎのタッチ操作のために指が接触するまでの時間が所定値未満であるような一連の操作をいう。具体的には、ライン553がドラッグされてからライン555をタッチするまでの時間が所定値未満のときにはライン553の入力とライン555に基づく入力がともに操作領域の設定のための操作であると認識する。
【0085】
ブロック533で、ユーザはプロンプト画像で指示された矢印に従って親指でドラッグをする。ドラッグは、ユーザの親指での操作が可能な最大範囲を設定するために行うものであるため、矢印の上をなぞることを要求するものではない。操作領域設定部207は、筐体の縦横方向に基づいてライン553の下側の領域が表面操作許可領域401であることを認識できるので、ライン555の表示を省略してライン555に従うドラッグをしないようにすることもできる。また、プロンプト画像の表示自体を省略することもできる。
【0086】
ブロック535では、タッチ・パネル・ファームウェア201からドラッグされた座標を受け取った操作領域設定部207は、受け取った座標に基づいて入力制御部205に図6(C)に示すような表面操作許可領域401と表面操作制限領域403を表面タッチ・パネル119に設定する。
【0087】
操作領域設定部207は、背面タッチ・パネル133において、表面操作許可領域401の投影で画定される領域を背面操作制限領域として設定し、表面操作制限領域403の投影で画定される領域を背面操作許可領域として設定する。背面タッチ・パネル133には、タッチ操作とは無関係に掌が接触して座標入力を与える。したがって、背面タッチ・パネル133には、必ず入力操作を無効にする背面操作制限領域を設定する必要があるが、表面タッチ・パネル119においては表面操作許可領域401以外の領域に誤ってタッチ操作をすることが少ない。
【0088】
したがって他の例では、操作領域設定部207は、表面操作制限領域403を設定しないで、操作制限領域を背面タッチ・パネル133だけに設定することができる。この場合は、表面タッチ・パネル119はすべて操作許可領域となり、背面タッチ・パネル133は背面操作許可領域と背面操作制限領域で構成されることになる。操作領域設定部207は、図6のパターンIのように表面操作許可領域401と表面操作制限領域403の境界に沿って表面タッチ・パネル119と背面タッチ・パネル133のいずれからも操作できる両面操作許可領域407を設けることができる。
【0089】
入力制御部205は、表面タッチ・パネル119から入力された座標のなかで表面操作許可領域401および両面操作許可領域407の座標だけをアプリケーション実行部213およびOSに転送する。入力制御部205は、背面タッチ・パネル133から入力された座標のなかで背面操作許可領域および両面操作許可領域の座標だけをアプリケーション実行部213およびOSに転送する。図14(A)、図14(B)に示したような表面タッチ・パネル119から操作しにくい位置にあるアイコンのタッチ操作は、図17(A)、(B)に示すように背面タッチ・パネル133から容易に行うことができる。
【0090】
タッチ操作には所定の座標を指示するタップという操作だけでなく、同時にタッチした2本の指をタッチ・パネルの表面から離さないようにしながら閉じるピンチ・インといわれる操作や、同様にして指を開くピンチ・アウトといわれる操作がある。ピンチ・イン操作は画像を縮小しピンチ・アウトは拡大する場合に使用する操作である。しかし片手保持操作では、表面タッチ・パネル119に対して自由になる指が親指だけなのでピンチ・イン操作およびピンチ・アウト操作をすることはできない。しかし背面タッチ・パネル133に対しては、図18(A)に示すように親指と薬指で筐体を保持して自由になった人差し指と中指でピンチ・イン操作やピンチ・アウト操作をすることができる。
【0091】
ブロック537では、操作領域設定部207は、設定した操作領域の座標を操作領域画像作成部211に送って、操作領域画像を作成するように要求する。操作領域画像作成部211は、表面操作許可領域401、両面操作許可領域407および背面操作許可領域またはいずれかを表示する操作領域画像を表示するためのデータを画像データ生成部217に送る。あるいは、操作領域画像作成部211は、操作制限領域に関する操作制限領域画像を表示するためのデータを作成して画像データ生成部217に送るようにしてもよい。
【0092】
画像データ生成部217は、OSが作成したデスクトップ画面またはアプリケーション実行部213が作成したアプリケーション画面の上に重ねてそれらがみえるように薄い色の操作領域画像を表示する。ブロック539では、ユーザはディスプレイ115に操作領域画像が表示されたことで操作領域が設定されたことを認識して表面タッチ・パネル119および背面タッチ・パネル133にそれぞれ設定された操作許可領域にタッチ操作をする。
【0093】
背面タッチ・パネル133を操作するとき、ユーザはタッチ操作する位置をディスプレイ115の表示と関連付けて知ることはできない。この場合、操作領域設定部207は、タッチ・パネル・ファームウェア201から背面タッチ・パネル133の座標を受け取ったときには、指が接触した位置の投影に対応するディスプレイ115上の位置にシンボル・マークを表示するように操作領域画像作成部211に指示することができる。
【0094】
そしてユーザは、背面タッチ・パネル133に対する入力を2アクションで行うようにする。具体的には、ユーザはシンボル・マークの位置が目的とするアイコンの位置からずれている場合に、指をドラッグしてシンボル・マークを移動させてアイコンに重ねる。そして、アイコン上で指が離れたときにその座標が指示されたものとしてアプリケーション実行部213またはOSに伝える。操作領域設定部207は、入力制御部205を、背面タッチ・パネル133からの入力は、最初にタッチされた位置の座標およびドラッグの座標はアプリケーション実行部213またはOSに伝えないで指が離れた位置の座標を送るように設定する。
【0095】
通常表面タッチ・パネル119のアイコンに対するタッチ操作は、1アクションで行われる。すなわち、アイコンにタッチするだけでアプリケーションが実行される。そして、多数のアイコンが表示されるデスクトップ画面や受信履歴のリスト画面などをドラッグ操作でスクロールするときに、ドラッグ操作がアイコンや受信履歴に対する意図しないタッチ操作となってアプリケーションが実行されたり電話の呼び出しが行われたりすることがある。表面タッチ・パネル119だけを使用して片手保持操作をするときは、操作がしにくいため意図しないタッチ操作が行われることが多いが、図18(B)に示すように背面タッチ・パネル133上ではドラッグ操作がし易いため実行するオブジェクトが存在しない場所を正確に選んでドラッグ操作をすることで誤操作を防ぐことができる。
【0096】
操作領域設定部207は、両面操作モードがイネーブルに設定されている間も両面操作モードがディスエーブルに設定されたか否かおよび筐体の保持状態が変化したか否かを判断している。ブロック541で操作領域設定部207は両面操作モードがディスエーブルに設定されないと判断したときはブロック543に移行し、ディスエーブルに設定されたと判断したときは図8のブロック513に移行する。
【0097】
ブロック543では、操作領域設定部207は持ち手が変更されたと判断したときは、ブロック531に戻って再度操作領域を設定する。ブロック543で持ち手が変更されていないときはブロック545で操作領域設定部207は筐体の縦横方向が変更されたか否かを判断する。筐体の縦横方向が変更されたときもブロック531に移行して操作領域設定部207は再度操作領域を設定する。
【0098】
〔自動(認識)設定による両面操作モード〕
つぎに、図4の初期設定画面300で両面操作モード設定項目341に「自動(認識)345」が設定された場合に両面操作モードを実現する手順を図11のフローチャートを参照して説明する。図8のブロック507では、ユーザが任意の筐体の保持状態で片手保持操作をして両面操作モードをイネーブルに設定する。操作領域設定部207は操作領域の設定が終了するまでタッチ・パネル・ファームウェア201が出力した座標をアプリケーション実行部213およびOSなどのプログラムに送らないように入力制御部205を設定する。図11のブロック601では、両面操作モードがイネーブルになったと判断した操作領域設定部207は、ディスプレイ115にユーザが掌を背面タッチ・パネル133に接触させるためのプロンプト画面を表示する。
【0099】
掌や指の付け根が接触している背面タッチ・パネル133の領域は背面タッチ・パネル133に対するタッチ操作をすることができない領域である。ユーザは、プロンプト画面に従って、筐体の保持位置を大きく変更しないで掌や指の接触により背面タッチ・パネル133に入力をする。ブロック603で操作領域設定部207は、タッチ・パネル・ファームウェア201から受け取った背面タッチ・パネル133に対する入力座標から掌などが接触している領域および実際には接触していないが片手保持操作で接触することがあると想定する領域の座標を計算する。そして、操作領域設定部207は、実際に掌などが接触している領域から修正した領域を背面操作制限領域に設定する。
【0100】
操作領域設定部207は、背面操作制限領域に基づいて、背面操作許可領域、表面操作許可領域および表面操作制限領域の座標を計算する。このとき、操作領域設定部207は、加速度ファームウェア203から筐体の縦横方向の情報を取得し、さらに、背面タッチ・パネル133に対する接触領域のパターンから図6のいずれの状態でユーザが保持しているかを判断して、図6の操作領域パターンに近いパターンとなるように操作許可領域を調整することもできる。
【0101】
図12は、各保持状態において背面タッチ・パネル133に接触した手による入力座標のパターンの一例を示す図である。接触領域651は背面タッチ・パネル133に手が実際に接触している領域を示している。パターンAは左手縦保持に対応し、パターンBは右手縦保持に対応し、パターンCは左手横保持に対応し、パターンDは右手横保持に対応し、パターンEは図16のように保持した場合に対応する。図12の入力座標のパターンA〜Dの左側端部と右側端部の上下方向の長さの違いから操作領域設定部207は持ち手が右手か左手かを判断することができる。また、パターンEは、横保持の場合にパターンC、Dに該当しない場合として特定することができる。
【0102】
ブロック605で操作領域設定部207は、接触領域651を除いた領域を背面操作許可領域に設定し、入力座標651の投影に対応する領域を表面操作許可領域に設定する。あるいは、操作領域設定部207は表面タッチ・パネル119については、全体を操作許可領域に設定する。ブロック607からブロック615までの手順は、図9のブロック537からブロック545に対応する。
【0103】
ブロック617では、特定のアプリケーションを実行しているアプリケーション実行部213が、図7に示すように文字を入力するためのソフトウェア・キーボードを表示する。アプリケーション実行部213からソフトウェア・キーボードの表示の通知を受け取った操作領域設定部207は、ブロック619で操作領域パターン格納部215から、そのときの筐体の縦横方向に対応する操作領域パターンGまたはHのいずれかを選択して入力制御部205に操作領域を設定し、かつ、ディスプレイ115に操作領域に対応する操作領域画像を表示する。
【0104】
操作領域設定部207は、アプリケーション実行部213からソフトウェア・キーボードが表示される領域の座標を受け取って、入力制御部205に操作領域を設定するようにしてもよい。また、ソフトウェア・キーボードに対する操作領域の設定は、図9で説明した手動による設定でも実現することができる。ソフトウェア・キーボードの表示がない場合は直接、または一旦操作領域が設定されたソフトウェア・キーボードの表示が消えたときはブロック619を経由してブロック611に戻る。
【0105】
〔自動(パターン)設定による両面操作モード〕
つぎに、図4の初期設定画面300で両面操作モード設定項目341に「自動(パターン)347」が設定された場合の両面操作モードを実現する手順を説明する。この場合の手順は、「自動(認識)設定345」の手順に類似するために図11の手順を参照して説明する。自動(パターン)設定のときは、ブロック603では、操作領域設定部207が筐体の縦横方向を加速度データで判断し持ち手を図12のパターンから判断する。
【0106】
操作領域設定部207は、筐体の保持状態を判断して図6に示すいずれかの操作領域パターンを操作領域パターン格納部215から抽出して入力制御部205に設定する。あらかじめ登録した操作領域パターンは、筐体の保持状態が対応していても保持したときと登録したときの保持する筐体のわずかな位置にずれがある場合には操作領域を変更したい場合もある。この場合、表面操作許可領域401と表面操作制限領域403の境界405(図6)をディスプレイ115に表示し、境界405に対する2本の指によるドラッグ&ペースト操作で境界の座標を修正できるようにしてもよい。
【0107】
このとき操作領域設定部207は、操作領域パターンを選択したときに境界405を表示し、その後最初に表面タッチ・パネル119から境界405に対して行った2本の指によるタッチ操作を、境界405を修正する操作であると認識する。そして操作領域設定部207は、修正された操作領域パターンを入力制御部205に設定する。このとき操作領域設定部207は、境界405に帯状の幅を持たせておき、境界405上では両面からのタッチ操作ができるようにしてもよい。その他の手順は図11と同じである。自動(パターン)設定では、スマートフォン100がすべての設定操作をするので、使用段階でユーザは何ら設定に関する操作をする必要がなく、かつ、筐体の保持状態が変更されてもスマートフォン100がそれに追従して操作領域を設定する。
【0108】
〔ディフォルト設定による両面操作モード〕
つぎに、図4の初期設定画面300で両面操作モード設定項目341に「自動(ディフォルト)349」が設定された場合の両面操作モードの実行手順を説明する。この場合の手順は、「手動設定343」の手順に類似するために図9の手順を参照して説明する。ユーザは片手保持操作をする場合にあらかじめ操作し易い筐体の保持状態を決めておき、図5のブロック387で操作領域パターンを選択しておく。
【0109】
自動(ディフォルト)349設定のときは、ブロック533、535において操作領域設定部207が、あらかじめ選択した操作領域パターンを操作領域パターン格納部215から抽出して入力制御部205に設定する。この場合、操作領域設定部207は筐体の保持状態を判断しないが、ユーザがディフォルトで選択される操作領域パターンを作成したときの筐体の保持状態で保持する限りは、イネーブルに設定されると同時に両面操作をすることができるようになる。
【0110】
これまで、本発明の実施の形態をスマートフォンのようにほぼ片手で包むように保持できる大きさの携帯式電子機器を例示して説明してきたが、本発明は、さらにディスプレイが10インチ程度の大きさのいわゆるタブレット・コンピュータに適用することもできる。この場合、ユーザは片手保持操作のためにタブレット・コンピュータの背面を掌の全体に載せて保持する。このとき、表面タッチ・パネルには保持する手のすべての指が届かないのでこれを利用することはできないが、本発明を適用することで背面タッチ・パネルからタッチ操作をすることができる。
【0111】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0112】
100…スマートフォン
121…タッチ・スクリーン
200…両面操作制御プログラム
300…初期設定画面
401…表面操作許可領域(背面操作制限領域)
403…表面操作制限領域(背面操作許可領域)
405…境界
407…両面操作許可領域
651…背面タッチ・パネルに対する接触領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の表面にタッチ・スクリーンが配置され前記筐体の背面にタッチ・パネルが配置された携帯式電子機器の片手保持操作による入力を制御する方法であって、
前記タッチ・スクリーンと前記タッチ・パネルの双方からのタッチ操作を許可する両面操作モードをイネーブルに設定するステップと、
前記イネーブルに設定されたことに応答して前記タッチ・パネルに対して、タッチ操作を許可する操作許可領域とタッチ操作を制限する操作制限領域で構成された操作領域を設定するステップと、
前記タッチ・スクリーンに対するタッチ操作と前記タッチ・パネルの前記操作許可領域に対するタッチ操作による入力を有効にするステップと
前記タッチ・パネルの前記操作制限領域に対する入力を無効にするステップと
を有する方法。
【請求項2】
前記イネーブルに設定されたことに応答して前記タッチ・スクリーンに対するタッチ操作を許可する操作許可領域とタッチ操作を制限する操作制限領域で構成された操作領域を設定するステップと、
前記タッチ・スクリーンの操作制限領域に対するタッチ操作を無効にするステップと
を有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タッチ・パネルに対する操作がピンチ・イン操作およびピンチ・アウト操作を含む請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記タッチ・パネルの操作許可領域の一部と前記タッチ・スクリーンの操作許可領域の一部がオーバーラップする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記操作領域を設定するステップが、
前記両面操作モードがイネーブルに設定されたときの前記筐体の保持状態における前記タッチ・スクリーンに対する入力座標を受け取って前記タッチ・スクリーンに対する操作許可領域を認識するステップと、
前記認識した操作許可領域の投影に対応する前記タッチ・パネルの領域を前記操作制限領域として設定するステップと
を有する請求項1から請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記操作領域を設定するステップが、
前記両面操作モードがイネーブルに設定されたときに前記筐体を保持する手が前記タッチ・パネルに接触する領域の座標を受け取って前記タッチ・パネルの前記操作制限領域を設定するステップを含む請求項1から請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記操作領域を設定するステップが、
それぞれが前記筐体の保持状態に応じて作成され操作許可領域と操作制限領域を含むた複数の操作領域パターンを格納するステップと、
前記イネーブルに設定されたことに応答して前記筐体の保持状態を認識するステップと、
前記複数の操作領域パターンの中から選択した前記筐体の保持状態に対応する操作領域パターンに基づいて前記操作領域を設定するステップと
を含む請求項1から請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記筐体の保持状態を認識するステップが、前記筐体の縦横方向を判断するステップおよび前記筐体の持ち手を判断するステップまたはいずれか一方のステップを含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記操作領域を設定するステップが、
操作許可領域と操作制限領域を含むディフォルトの操作領域パターンを格納するステップと、
前記イネーブルに設定されたことに応答して前記ディフォルトの操作領域パターンに基づいて前記操作領域を設定するステップと
を含む請求項1から請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記操作領域を設定するステップが、
ソフトウェア・キーボードが前記タッチ・スクリーンの一部に表示されたことを認識するステップと、
前記ソフトウェア・キーボードが表示されている領域以外の領域を前記タッチ・パネルの前記操作許可領域に設定するステップと
を含む請求項1から請求項9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記タッチ・パネルの操作許可領域を前記タッチ・スクリーンで識別するために、アプリケーションが作成した画像の識別が可能なように薄い色を表示するステップを有する請求項1から請求項10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記タッチ・パネルの操作許可領域と前記操作制限領域の境界を示すラインを前記タッチ・スクリーンに表示するステップと、
前記ラインに対するドラッグ&ペースト操作で前記操作許可領域と前記操作制限領域の境界を変更するステップと
を有する請求項1から請求項10のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記タッチ・パネルに操作する間前記タッチ・スクリーンに対するタッチ操作を無効にするステップを有する請求項1から請求項12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
筐体の表面にタッチ・スクリーンを備える携帯式電子機器であって、
前記筐体の裏面に配置されたタッチ・パネルと、
前記タッチ・スクリーンまたは前記タッチ・パネルに対する入力を許可または制限する入力制御部と、
前記タッチ・スクリーンと前記タッチ・パネルの双方からの入力を可能にする両面操作モードがイネーブルになったことに応答して、前記タッチ・パネルの所定の領域に対するタッチ操作による入力を許可するように前記入力制御部を設定する操作領域設定部と
を有する携帯式電子機器。
【請求項15】
前記操作領域設定部は、前記タッチ・スクリーンの所定の領域に対する入力を制限するように前記入力制御部を設定する請求項14に記載の携帯式電子機器。
【請求項16】
前記操作領域設定部は、前記両面操作モードがイネーブルに設定されたときの前記筐体の保持状態における前記タッチ・スクリーンに対する入力座標を受け取って前記入力制御部を設定する請求項14または請求項15に記載の携帯式電子機器。
【請求項17】
前記操作領域設定部は、前記両面操作モードがイネーブルに設定されたときに前記筐体を保持する手が前記タッチ・パネルに接触する領域の座標を受け取って前記入力制御部を設定する請求項14または請求項15に記載の携帯式電子機器。
【請求項18】
前記操作領域設定部は、前記両面操作モードがイネーブルに設定されたときの前記筐体の保持状態を認識し、該保持状態に対応するようにあらかじめ登録された複数の操作領域パターンの中から前記保持状態に対応する操作領域パターンを選択して前記入力制御部に設定する請求項14または請求項15に記載の携帯式電子機器。
【請求項19】
前記操作領域設定部は、前記両面操作モードがイネーブルに設定されたことに応答してディフォルトの操作領域パターンを前記入力制御部に設定する請求項15または請求項16に記載の携帯式電子機器。
【請求項20】
筐体の表面にタッチ・スクリーンが配置され前記筐体の背面にタッチ・パネルが配置された携帯式電子機器に前記タッチ・スクリーンおよび前記タッチ・パネルに対するタッチ操作を制御するために、
前記タッチ・スクリーンと前記タッチ・パネルの双方からの入力を可能にする両面操作モードをイネーブルに設定する機能と、
前記イネーブルに設定されたことに応答して前記タッチ・パネルに対して、入力を許可する操作許可領域と入力を制限する操作制限領域で構成された操作領域を設定する機能と、
前記タッチ・スクリーンに対するタッチ操作の座標と前記タッチ・パネルの前記操作許可領域に対するタッチ操作の座標を有効にする機能と
前記タッチ・パネルの前記操作制限領域に対するタッチ操作の座標を無効にする機能と
を実現させるためのコンピュータ・プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−242851(P2012−242851A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108707(P2011−108707)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(505205731)レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド (292)
【復代理人】
【識別番号】100106699
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 弘道
【復代理人】
【識別番号】100077584
【弁理士】
【氏名又は名称】守谷 一雄
【Fターム(参考)】