説明

タブ端子搬送装置

【課題】CP線の芯材が非磁性体であるタブ端子であっても、タブ端子同士をほとんど接触させることなく搬送できるようにする。
【解決手段】一端側に羽子板状の平坦部が形成され他端側に丸棒部を有する端子本体の上記丸棒部側にリード線が接続されたタブ端子1を、上面が開放されているタブ端子収納容器21から取り出して所定の次工程に搬送するタブ端子搬送装置において、切替弁14を介して負圧源15と大気とに選択的に接続され、所定の駆動手段16によりタブ端子収納容器21に対して昇降可能な吸着ヘッド10を備え、吸着ヘッドの下面に形成されているほぼU字状の吸着溝11にてタブ端子1を保持して搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム電解コンデンサなどに適用されるタブ端子搬送装置に関し、さらに詳しく言えば、タブ端子のアルミニウム材からなる羽子板状の平坦部(端子面)に異種金属材を付着させることなく搬送する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム電解コンデンサなどに適用されるタブ端子は、アルミニウムの丸棒線の一端側をプレスにて羽子板状に押し潰して平坦部とし他端側を丸棒部とした端子本体と、その丸棒部の端面にリード線として溶接されたCP線(ハンダメッキ銅被覆鋼線)とから構成され、上記平坦部が端子面として例えばかしめなどにて電極箔に接続される。
【0003】
タブ端子の電極箔への接続は自動機により行われるが、その自動機に対するタブ端子の供給は、通常、振動型のボールフィーダーによって行われている。
【0004】
ボールフィーダーは、多数本のタブ端子が投入されるボール状の容器を備え、その内周面には搬送ガイドレールが螺旋状に形成されており、加振器にてボール状の容器全体に振動を加えることにより、タブ端子が搬送ガイドレールに沿って這い上がり、その終端位置において整列された状態で同じく加振式のリニアフィーダに受け渡され、リニアフィーダから自動機に供給される。
【0005】
しかしながら、ボールフィーダーによると、数多くのタブ端子が長時間にわたって攪拌されることになるため、その間にCP線のメッキが剥がれ、それが端子本体に付着することによる漏れ電流の増大が問題になっている。
【0006】
そこで、本出願人は、特許文献1でボールフィーダーによることなくタブ端子を整列さて搬送できるようにしたタブ端子の搬送装置を提案している。
【0007】
このタブ端子の搬送装置は、異極面が所定の間隔をもって対向するように配置された一対のマグネットをハ字状に配置するとともに、それらのマグネット間にタブ端子の長さよりも長い間隔をもってほぼ平行にステンレス等の非磁性体からなるガイド板を配置してなる端子ストック部を備えている。
【0008】
これによれば、タブ端子がマグネットの磁力によりガイド板間に互いに平行として保持された状態で、磁界が強い方向(マグネット間の間隔が狭い方向)に向けて移動するため、擦り合うことがない。
【0009】
しかしながら、近年においては、大きな電流容量を得るため、タブ端子のリード線として、芯線を銅線としたCP線が用いられる傾向にあるが、銅材は非磁性体であることから、上記特許文献1の搬送装置にはかけられない、という問題がある。
【0010】
【特許文献1】特開平6−53095号公報(図1,図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の課題は、CP線の芯材が非磁性体であるタブ端子であっても、タブ端子同士をほとんど接触させることなく搬送し得るようにしたタブ端子搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、一端側に羽子板状の平坦部が形成され他端側に丸棒部を有する端子本体の上記丸棒部側にリード線が接続されたタブ端子を、上面が開放されているタブ端子収納容器から取り出して所定の次工程に搬送するタブ端子搬送装置において、切替弁を介して負圧源と大気とに選択的に接続され、所定の駆動手段により上記タブ端子収納容器に対して昇降可能な吸着ヘッドを備え、上記吸着ヘッドの下面には、上記リード線の部分を負圧にて吸着保持するほぼU字状の吸着溝が形成されていることを特徴としている。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、上記タブ端子収納容器の上面には、上記タブ端子の取り出し時に、上記吸着溝に対して斜めに保持された上記タブ端子を通過させない開口部を有する蓋が着脱自在に被せられていることを特徴としている。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、上記タブ端子収納容器は、その底面が上記タブ端子の軸線と直交する方向に傾斜する傾斜面にてほぼV字状もしくはほぼU字状に形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
タブ端子の搬送手段として、切替弁を介して負圧源と大気とに選択的に接続されるとともに、所定の駆動手段によりタブ端子収納容器に対して昇降可能であり、下面にはタブ端子のリード線の部分を負圧にて吸着保持するほぼU字状の吸着溝が形成されている吸着ヘッドを用いるようにした請求項1に記載の発明によれば、CP線の芯材が非磁性体であるタブ端子であっても、タブ端子同士をほとんど接触させることなく、タブ端子を1本ずつ搬送することができる。したがって、CP線からメッキが剥がれることもなく、従来問題とされていた剥離メッキ材の端子本体への付着による漏れ電流の増大も解消される。
【0016】
タブ端子収納容器の上面に、タブ端子の取り出し時に、吸着溝に対して斜めに保持されたタブ端子を通過させない開口部を有する蓋を着脱自在に被せるようにした請求項2に記載の発明によれば、吸着ヘッドの吸着溝に真っ直ぐに保持されたタブ端子のみを次工程に搬送することができる。
【0017】
タブ端子収納容器の底面形状をタブ端子の軸線と直交する方向に傾斜する傾斜面にてほぼV字状もしくはほぼU字状に形成するようにした請求項3に記載の発明によれば、タブ端子収納容器に投入された多数本のタブ端子が容器底面の最深部に集められるため、最後の1本まで確実に取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、図1ないし図5により、本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の実施形態に係るタブ端子搬送装置の全体的な構成を示す模式的な斜視図、図2はタブ端子搬送装置が備える吸着ヘッドをタブ端子とともに示す斜視図、図3は吸着ヘッドの底面図、図4は吸着ヘッドの図1におけるA−A線断面図、図5はタブ端子収納容器を示す断面図である。
【0019】
図1に示すように、このタブ端子搬送装置は、タブ端子収納容器20からタブ端子1を取り出すための吸着ヘッド10を備える。
【0020】
タブ端子1は、図2に示すように、端子本体2と、端子本体2に接続されているCP線(リード線)3とから構成されている。端子本体2は、アルミニウムの丸棒線の一端側をプレスにて羽子板状に押し潰して平坦部2aとし他端側を丸棒部2bのままとしてなり、丸棒部2bの端面にCP線3が例えば溶接により固着されている。
【0021】
CP線3には、ハンダメッキ銅被覆鋼線が用いられるが、その鋼線(芯線)が非磁性材の銅線であってもよい。また、近年の環境保護の観点からCP線3のハンダメッキも鉛フリー化されつつある。
【0022】
端子本体2の平坦部2aが図示しない例えばアルミニウム電解コンデンサの電極箔にかしめ法などにより取り付けられるが、タブ端子1の搬送工程中で、平坦部2aにCP線3から剥離されたハンダメッキ材などの異種金属が付着されないようにする必要がある。
【0023】
なぜなら、平坦部2aに異種金属が付着された状態で上記電極箔に接続されると、漏れ電流やショート率の増大につながるからである。そのために、本発明では上記の吸着ヘッド10を備える。
【0024】
図2ないし図4を併せて参照して、吸着ヘッド10は、タブ端子1のCP線3の軸線方向を長軸とする直方体(ブロック)からなり、その下面10aには、CP線3の部分を負圧にて吸着保持するほぼU字状の吸着溝11が形成されている。
【0025】
吸着ヘッド10は、図1に示すように、可撓性の配管13および切替弁14を介してバキュームポンプなどの負圧源Pに接続される。吸着ヘッド10は、金属材や合成樹脂材もしくはセラミック材などから形成されてよい。
【0026】
詳しくは図示しないが、切替弁14は、吸着ヘッド10を負圧源Pに接続する第1切替ステージと、吸着ヘッド10を大気(もしくは図示しない正圧源)に接続する第2切替ステージとを備えている。
【0027】
図3および図4に示すように、この実施形態においては、吸着溝11の溝底には、2つの吸着孔11a,11aが穿設されている。各吸着孔11a,11aは、吸着ヘッド10内に形成されている幹配管12aおよび枝配管12b,12bを介して上記配管13に連通される。
【0028】
また、図1に示すように、吸着ヘッド10は、X−Y−Z移動手段16により3次元方向に移動可能である。X−Y−Z移動手段16には、好ましくはロボットアームが採用される。
【0029】
図1に示すように、この実施形態におけるタブ端子収納容器20は、一連に形成された小分け用の4つの容器21を備えている。各容器21は同一形状であり、その各々の底面は、図5に示すように、タブ端子1の軸線と直交する方向に傾斜する一対の傾斜面21a,21aにてほぼV字状に形成されている。
【0030】
この底面形状によれば、容器21に投入された多数本のタブ端子1が容器底面の最深部に集められるため、最後の1本まで確実に取り出すことができる。容器21の底面形状をほぼU字状としてもよい。
【0031】
また、容器21の上面には、蓋22が着脱可能に被せられる。蓋22には、吸着ヘッド10は通過可能であるが、吸着ヘッド10によりタブ端子1を取り出す際に、吸着溝11に対して斜めに保持されたタブ端子1(図5の想像線図示参照)を通過させない大きさの開口部22aが形成されている。なお、図1には蓋22がひとつしか示されていないが、実際には各容器21ごとに設けられる。
【0032】
容器21内のタブ端子1を取り出すには、切替弁14を上記第1ステージ側として吸着ヘッド10を負圧源15に接続し、X−Y−Z移動手段16により、吸着ヘッド10を蓋22の開口部22aから容器21内に入れる。なお、吸着ヘッド10を容器21内に入れてから、負圧源15に接続してもよい。
【0033】
これにより、吸着ヘッド10の吸着溝11内にタブ端子1のCP線3が負圧吸着により保持される。その後、吸着ヘッド10を容器21内から引き上げて、保持されたタブ端子1を次工程(例えばリニアフィーダ)に向けて搬送したのち、切替弁14を上記第2ステージ側に切り替えて吸着ヘッド10を大気圧としてタブ端子1を釈放する。
【0034】
その際、タブ端子1のCP線3が吸着溝11に沿って保持されていれば、タブ端子1は吸着ヘッド10とともに開口部22aを通過する。
【0035】
しかしながら、図5に想像線で示すように、タブ端子1が吸着溝11に対して斜めに保持され、タブ端子1の端部が吸着ヘッド10の投影面積よりもはみ出していると、タブ端子1の端部が開口部22aの周縁に引っかかり、吸着ヘッド10から落とされる。
【0036】
このようにして、本発明によれば、タブ端子1を方向を揃えた状態で容器21がら1本ずつ確実に取り出すことができる。なお、変形例として、吸着ヘッド10に複数の吸着溝11を互いに平行して形成すれば、一度に複数本のタブ端子1を取り出すこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係るタブ端子搬送装置の全体的な構成を示す模式的な斜視図。
【図2】タブ端子搬送装置が備える吸着ヘッドをタブ端子とともに示す斜視図。
【図3】吸着ヘッドの底面図。
【図4】吸着ヘッドの図1におけるA−A線断面図。
【図5】タブ端子収納容器を示す断面図。
【符号の説明】
【0038】
10 吸着ヘッド
11 吸着溝
11a 吸着孔
13 配管
14 切替弁
15 負圧源
16 X−Y−Z駆動手段
20,21 タブ端子収納容器
22 蓋
22a 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に羽子板状の平坦部が形成され他端側に丸棒部を有する端子本体の上記丸棒部側にリード線が接続されたタブ端子を、上面が開放されているタブ端子収納容器から取り出して所定の次工程に搬送するタブ端子搬送装置において、
切替弁を介して負圧源と大気とに選択的に接続され、所定の駆動手段により上記タブ端子収納容器に対して昇降可能な吸着ヘッドを備え、上記吸着ヘッドの下面には、上記リード線の部分を負圧にて吸着保持するほぼU字状の吸着溝が形成されていることを特徴とするタブ端子搬送装置。
【請求項2】
上記タブ端子収納容器の上面には、上記タブ端子の取り出し時に、上記吸着溝に対して斜めに保持された上記タブ端子を通過させない開口部を有する蓋が着脱自在に被せられていることを特徴とする請求項1に記載のタブ端子搬送装置。
【請求項3】
上記タブ端子収納容器は、その底面が上記タブ端子の軸線と直交する方向に傾斜する傾斜面にてほぼV字状もしくはほぼU字状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のタブ端子搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−164264(P2009−164264A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−340551(P2007−340551)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000103220)エルナー株式会社 (48)
【Fターム(参考)】