説明

タンクの密封装置

【課題】Oリングを円筒状の被嵌合部に嵌合する組付対象部材の嵌合部に組み付ける場合であっても、Oリングの組付状態を確認可能なタンクの密封装置を提供する。
【解決手段】口金部材12における円筒状の被嵌合部19に嵌合する嵌合部23の外周に形成された溝部27に組み付けられるOリング34の組付構造において、被嵌合部19を透き通った部材で構成し、嵌合部23の溝部27における外周からOリング34を視認可能とする。Oリング34の外周に、周方向へわたって環状ライン34aを付し、この環状ライン34aの状態からOリング34の捻れの有無を判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクの密封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧水素タンク等、高圧のガスを貯蔵するためのタンクにおいて密封装置は気密性を保つうえで重要な部材である。そして、このようなガスの気密性を有する箇所のパッキン(例えばOリング)における漏れを、パッキンの歪みを検出する歪センサ、ガスの圧力を検出する圧力センサあるいは微小ガス漏れによって生じる高周波を検出するAEセンサを用いて検出する技術がある(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
また、Oリングに関しては、当該Oリングを透明にして内部に色を付けることで目視できるようにしたもの、Oリングのケースや蓋を透明にしたもの等がある(特許文献4,5参照)。
【特許文献1】特開平8−28711号公報
【特許文献2】特開平9−125465号公報
【特許文献3】特開平9−112701号公報
【特許文献4】特開平11−182688号公報
【特許文献5】特開2006−53330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、Oリングを被嵌合部に嵌合する組付対象部材の嵌合部に組み付ける場合、嵌合部を被嵌合部に嵌合する際に被嵌合部との摩擦でOリングに捻れが生じる場合がある。しかしながら、嵌合部にOリングを組み付ける場合には、通常、嵌合部に環状溝を形成し、この環状溝にOリングを組み付けるため、嵌合後にはOリングが嵌合部と被嵌合部とで覆われて捻れの確認が困難になってしまう。仮に、Oリングに捻れが生じていると、Oリングの本来の性能を十分に発揮することができない可能性がある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、タンクの被嵌合部と該タンクに取り付けられる組付対象部材の嵌合部との間におけるOリングの組付状態を確認可能なタンクの密封装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、タンクの被嵌合部と該タンクに取り付けられる組付対象部材の嵌合部との間を気密に保つための密封装置において、前記被嵌合部は、嵌合した前記嵌合部の前記溝部における外周位置の少なくとも一部が透明部材で形成されている。
【0007】
Oリングにねじれが発生していると、Oリングの本来の性能が十分に発揮されない場合がある。また、例えば高圧水素タンクにおける低温(例えば−50℃程度)状況下では水素漏れが生じるおそれがある。さらに、リークチェック(ガス漏れ検査)ではこのような低温状態のリークや、Oリング劣化時のリークまでは測定できない。これらを回避する最善の方法としてはOリングのねじれを直接測定する必要があるが、従来このような方法がなかった。本構成によれば、被嵌合部に嵌合部を嵌合しても、溝部に組み付けられたOリングを、透明部材を介して被嵌合部の外周側から視認し、その組付状態を確認することができる。
【0008】
また、前記タンクの密封装置において、前記Oリングには、その外周に該Oリングとは異なる色の環状ラインが全周にわたって付されていても良い。
【0009】
かかる構成によれば、Oリングの外周にて全周にわたって付した環状ラインをマーキングとして被嵌合部の外周側から確認することにより、Oリングの捻れの有無を確認することができる。
【0010】
また、前記タンクの密封装置において、前記Oリングを締め付けるインサートリングが透明樹脂で形成され、該インサートリングの周囲における当該タンクのライナーの少なくとも一部が透明部材で形成されていても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、タンクの被嵌合部と該タンクに取り付けられる組付対象部材の嵌合部との間におけるOリングの組付状態を確認できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るタンクの密封装置1について説明する。
【0013】
図1は、内部に高圧ガス(例えば水素ガス)を充填保管するための例えば燃料電池システムにおける水素供給用タンク(被嵌合部材)11と口金部材(組付対象部材)12とを示しており、口金部材12は、タンク11の軸線方向一側に形成された口部13に図2に示すように取り付けられるものである。ここで、図示は略すが、これらタンク11及び口金部材12を有するガスタンクは、金属製の口金部材12が取り付けられた例えば合成樹脂製のライナーの外側を繊維強化樹脂層で補強して構成されるものである(以下、タンクをライナーと表現する場合もある)。
【0014】
ライナー11は、円筒状の胴部15と、胴部15の軸線方向一端側を閉塞するように形成された底部16と、胴部15の軸線方向逆側に胴部15から軸線方向に離れるほど縮径するように形成された肩部17と、図3に示すように、肩部17の内端縁から中心軸線側に小径側ほどライナー11内側に位置するように傾斜しつつ延出する内側延出部18と、内側延出部18の肩部17とは反対側からライナー11の軸線方向に沿ってライナー11内に突出する円筒状の被嵌合部19とを有しており、この被嵌合部19の内側が口部13となっている。また、この口部13の外周には、Oリング34を締め付けるインサートリング20が嵌合されている。
【0015】
口金部材12は、中央に一定径の貫通穴21が形成されるとともに、軸線方向一端側に口元フランジ部22が形成され、軸線方向他端側に略円筒状の嵌合部23が形成されており、これら口元フランジ部22及び嵌合部23の間は、口元フランジ部22側が口元フランジ部22から離れるほど大径となる第1テーパ部24とされ、嵌合部23側が嵌合部23から離れるほど大径となる第2テーパ部25とされている。ここで、口金部材12は、第2テーパ部25が内側延出部18に当接するまで嵌合部23を被嵌合部19に圧入で嵌合させることによってライナー11に取り付けられる。
【0016】
そして、本実施形態において、円筒状の嵌合部23には、その外周側に、周方向にわたる溝部27が形成されている。
この溝部27には、口部13への圧入方向後方側に、断面矩形状の二つの合成樹脂製のバックアップリング32,33が軸線方向に並んで嵌合され、さらにこれらバックアップリング32,33の圧入方向前方側に、断面円形状であってEPDM等のゴム製のOリング34が嵌合されている。
【0017】
このOリング34は、図4(a)、(b)に示すように、全周にわたって外周に着色を施すことにより、環状ライン34aが付されている。具体的には、通常ゴム色である黒色とされるOリング34の外周に、異なる例えば白色の環状ライン34aを印刷しておく。
【0018】
また、本実施形態では、ライナー11が、ポリカーボネートなどの合成樹脂(透明樹脂)から成形され、また、インサートリング20が、ガラス繊維強化プラスチックなどの合成樹脂(透明部材)から成形され、いずれも透き通っている。これにより、口部13へ圧入された口金部材12の溝部27に配設されたOリング34が、被嵌合部19の外周側から視認可能とされている。
【0019】
次に、Oリング34を組み付ける場合について説明する。
【0020】
まず、口金部材12の溝部27に、口部13への圧入方向後方側から順に、バックアップリング32、バックアップリング33、Oリング34を嵌合させてサブアッセンブリ化しておく。
【0021】
そして、口金部材12を、第2テーパ部25が内側延出部18に当接するまで嵌合部23を被嵌合部19に圧入することでライナー11に取り付け、その後、口部13の外周に、インサートリング20を圧入し、Oリング34を締め付ける。
【0022】
この嵌合部23の被嵌合部19への嵌合時に、口金部材12にサブアッセンブリ化されたOリング34は、被嵌合部19に対し接触しながら軸線方向に相対移動し被嵌合部19から摩擦力を受けることになる。このため、場合によっては捻れが生じる可能性がある。
【0023】
しかしながら、前述のように、ライナー11及びインサートリング20が透き通っていることより、溝部27に配設されたOリング34が、被嵌合部19の外周側から視認可能とされているので、嵌合部23を被嵌合部19に嵌合したとしても、Oリング34の組付状態をインサートリング20の外周側から確認できる。
【0024】
つまり、口金部材12をライナー11に圧入した状態で、例えば、口金部材12の貫通穴21に口元フランジ部22側から反射鏡あるいはファイバスコープやボアスコープ(内視鏡)を挿入し、これら反射鏡等によって、Oリング34の組付状態を被嵌合部19の外周側から全周にわたって目視確認し、Oリング34が溝部27内に収まっていれば、正常位置に組み付けられたと判定し、Oリング34が溝部27内に収まっていなければ正常位置に組み付けられていないと判定する。
【0025】
また、このような目視確認時に、Oリング34の外周に付した環状ライン34aが全周にわたって確認できればOリング34が捻れなく組み付けられていると判定し、それ以外の場合、例えば環状ライン34aの一部または全部が確認できなければOリング34に捻れが生じていると判定する。
【0026】
そして、Oリング34が正常位置に組み付けられ、捻れも生じていなければ正常に組み付けられたと判定し、それ以外の場合は正常に組み付けられていないと判定する。
なお、Oリング34の確認には、目視以外にカメラを用いて画像を検出しても良く、この画像から、検査者がOリング34が正常に組み付けられているか否かを判断したり、画像解析装置を有する検査装置を用いてOリング34が正常に組み付けられているか否かを自動判定したりできる。
【0027】
以上に述べた本実施形態によれば、口金部材12の溝部27にOリング34を組み付け、嵌合部23をライナー11の口部13及びインサートリング19からなる円筒状の被嵌合部19に圧入しても、Oリング34を視認可能な程度に被嵌合部19が透き通っていることより、溝部27に配設されたOリング34を被嵌合部19の外周側から確認できる。よって、Oリング34を円筒状の被嵌合部19に嵌合する嵌合部23に組み付ける場合であっても、Oリング34の組付状態を確認することができ、特に、Oリング34の外周にて全周にわたって付した環状ライン34aを確認することにより、Oリング34の捻れの有無を確認することができる。したがって、Oリング34の組付不良を抑制でき、Oリング34のシール性能を確保できる。
【0028】
なお、以上の実施形態においては、ガスタンクの被嵌合部19に嵌合される口金部材12にOリング34を組み付ける場合を例にとり説明したが、例えば、バルブの一部を構成するバルブボディ(被嵌合部)の嵌合穴に嵌合されて取り付けられる圧力又は温度モニタ用のセンサ(組付対象部材)へのOリングの組み付け等、他の種々の部材へのOリングの組み付けに適用可能であり、いずれにおいても上記と同様の効果が得られる。
【0029】
また、上記実施形態では、嵌合部23に形成した一つの溝部27内にバックアップリング32,33とともにOリング34を組み付けた構造を例にとって説明したが、これらバックアップリング32,33とともにOリング34を組み付けた溝部27とは別に、口部13への嵌合方向後方側に他の溝部を形成し、その溝部に例えばブチルゴムなどから形成された他のOリングを組み付けても良い。
【0030】
また、上述したライナー11やインサートリング20は透明であることが好ましいが、Oリング34を視認可能である限りは半透明であっても構わない。また、ライナー11はそのすべてが透明樹脂で形成されるほか、場合によってはインサートリング20の周辺の部位のみがOリング34を視認するに足る範囲で透明とされていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】ライナー及び口金部材の分解斜視図である。
【図2】図1に示すライナー及び口金部材の組立図である。
【図3】本発明の実施形態に係るタンクの密封装置を示す断面図である。
【図4】口金部材に取り付けるOリングを示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【符号の説明】
【0032】
1…密封装置、11…タンクまたはそのライナー(被嵌合部材)、12…口金部材(組付対象部材)、13…口部(被嵌合部)19…被嵌合部、20…インサートリング(被嵌合部)、23…嵌合部、27…溝部、34…Oリング、34a…環状ライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクの被嵌合部と該タンクに取り付けられる組付対象部材の嵌合部との間を気密に保つための密封装置において、
前記被嵌合部は、嵌合した前記嵌合部の前記溝部における外周位置の少なくとも一部が透明部材で形成されているタンクの密封装置。
【請求項2】
前記Oリングには、その外周に該Oリングとは異なる色の環状ラインが全周にわたって付されている請求項1記載のタンクの密封装置。
【請求項3】
前記Oリングを締め付けるインサートリングが透明樹脂で形成され、該インサートリングの周囲における当該タンクのライナーの少なくとも一部が透明部材で形成されている請求項1又は2記載のタンクの密封装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−215480(P2008−215480A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−53226(P2007−53226)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】