説明

タンク形真空遮断器

【課題】シール部の少ない簡単な構造でベローズの内外圧力差を抑え、機器の信頼性の向上、コンパクト化を可能にしたタンク形真空遮断器を提供する。
【解決手段】絶縁媒体が密封された各相の接地タンク1内それぞれに真空インタラプタ3を収納し、真空インタラプタ3を一括駆動するリンク機構100をリンク機構ケース2内に収納するとともに、リンク機構100は主軸101とレバー102およびリンク103を有し、主軸101はリンク機構ケース2の外部に設けられた操作器に連結され、主軸101がリンク機構ケース2を貫通する箇所に回転シール部21を設け、さらにベローズ11の内周側と、絶縁ロッド4が挿通された絶縁支持筒5内と、リンク機構ケース2内が互いに連通されて共通ガス区画を形成し、この共通ガス区画には、接地タンク1内の絶縁媒体の圧力と大気圧との中間の圧力の絶縁性ガスを封入したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封容器内に絶縁媒体を充填したタンク形真空遮断器に関し、特にタンクの内部圧力構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、各相の接地タンク内に収納された遮断部を三相一括で駆動可能な操作機構を有するタンク形真空遮断器において、遮断部を構成する真空インタラプタ内に設けられるベローズは、その外周側が真空であるのに対し、内周側には絶縁性ガスの高圧力が加えられる構造となっている。このようにベローズの内外に圧力差が生じると、ベローズが座屈により損傷し、機械的寿命が低下するという問題がある。この寿命低下を防止するために、ベローズの外周側を真空とし、内周側を大気圧、もしくは高圧の絶縁性ガスと真空との中間の圧力とすることでベローズの内外圧力差を抑制する構成が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1中の図6に記載されたタンク形真空遮断器においては、ベローズの外周側を真空とするのに対し、ベローズの内周側およびベローズの内周側と連通する部分を大気圧としている。具体的には、可動側導体内、サポート内および可動側コンタクトケース内および絶縁ロッドが貫通している絶縁支持筒内を大気圧としている。これによりガス区分の少ない簡易な構成でベローズの内外圧差を抑制することが出来る。しかしながら本構成においては、高電界が加わる絶縁支持筒内を大気圧としたことによる絶縁性能の低下を補うために、絶縁支持筒および絶縁操作ロッド長を長くとる必要があり、ひいては機器全体の大型化をまねくという問題があった。
【0004】
このような課題の解決策として、さらに特許文献1中の図1に記載されたタンク形真空遮断器においては、ベローズの外周側を真空とするのに対し、ベローズの内周側およびベローズの内周側と連通する部分であって、高電界が加わらない部分を大気圧としている。また、高電界が加わる部分には高圧の乾燥空気を封入したタンク形真空遮断器が記載されている。具体的には、可動側導体内、サポート内および可動側コンタクトケース内を大気圧とするのに対し、絶縁ロッドが貫通している絶縁支持筒内を高圧力の乾燥空気としている。これにより、ベローズの内外圧力差を抑制しベローズの損傷を防ぐとともに、高電界部において絶縁距離を長くとることなく絶縁性能を確保し、機器の小型化を図っている。
【0005】
また、特許文献2に記載のガス絶縁真空遮断器においては、高圧の絶縁性ガスが封入された密閉容器内に真空容器を収納し、この真空容器に取り付けられたベローズの外周側を真空とするのに対し、ベローズの内周側を気密容器内と連通させて気密室を形成した構成が記載されている。この気密室に密閉容器内に充填した高圧の絶縁性ガスと真空との中間の圧力のガスを封入したことにより、ベローズの内外圧力差の抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−306701号公報
【特許文献2】特開平6−208820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上記特許文献1中の図1に記載のタンク形真空遮断器は、高電界部となる絶縁支持筒内に高圧力の乾燥空気を気密に保持するため、絶縁支持筒の両端の2箇所に直線シール部を設ける必要があった。このため三相分では直線シール部が計6箇所と多くなり、その分気密構造の高信頼性の確保に懸念が生じていた。
【0008】
また、特許文献2に記載のガス絶縁真空遮断器においては、気密容器内に封入した中間圧力のガスを気密に保持するために、一相当たり2箇所以上のシール部を設ける必要がある。このため本構成においても気密構造の高信頼性の確保に懸念が残る。
【0009】
本発明は上記の課題を解決するために、シール部の少ない簡単な構造でベローズの内外圧力差を抑えて機器の信頼性を向上させるとともに、コンパクト化を可能にしたタンク形真空遮断器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、絶縁媒体を密封した各相の接地タンク内それぞれに収納され内部に一対の接点を持つ真空インタラプタを、三相一括で駆動可能なリンク機構を有し、前記真空インタラプタの可動側には、外周側が真空室側となるベローズを設けたタンク形真空遮断器において、前記リンク機構は前記各相の接地タンクの外部に設けられたリンク機構ケース内に収納されるとともに、主軸と、前記主軸の回転動作を直線動作に変えて前記真空インタラプタの絶縁ロッドに伝えるためのレバーおよびリンクを有し、前記主軸は、前記リンク機構ケース外部に設けられた操作器に連結され、前記主軸が前記リンク機構ケースを貫通する箇所に回転シール部を設け、さらに前記ベローズの内周側と、前記絶縁ロッドが挿通された絶縁支持筒内と、前記リンク機構ケース内が互いに連通されて共通ガス区画を形成し、前記共通ガス区画には、前記絶縁媒体の圧力より低く、かつ大気圧よりも高い圧力の絶縁性ガスを封入したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかるタンク形真空遮断器によれば、各相それぞれのベローズの内周側から三相共通のリンク機構ケースに至るまでの共通ガス区画に、接地タンク内の圧力と大気圧との中間圧力の絶縁性ガスを封入したことで、ベローズの内外圧力差を抑制しベローズの損傷を防ぐことが出来る。さらに、高電界の加わる絶縁支持筒などの距離を長くすること無く、絶縁性能を確保出来るので機器の小型化が図れるとともに、共通ガス区画を気密に保持するための可動シール部がリンク機構ケースに設けた回転シール1箇所で済むため、部品点数の削減およびタンク内の気密構造の信頼性向上を図ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るタンク形真空遮断器を示す正面断面図である。
【図2】図1のA部拡大図である。
【図3】本発明に係るタンク形真空遮断器の左側面図である。
【図4】図3におけるリンク機構ケースの内部構造を示したB部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0013】
以下、本発明を適用した実施例につき適宜図面を用いて説明する。図1は本発明に係るタンク形真空遮断器の実施例を示す正面断面図、図2は図1のA部拡大図である。接地タンク1内には0.5MPa程度の絶縁性の高圧ガスが封入されている。高圧ガスとして、例えばSFガス、乾燥空気等を用いることが出来る。また、接地タンク1内には絶縁媒体として絶縁油を封入しても良い。
【0014】
図1において、接地タンク1の左端にはリンク機構ケース2が取り付けられている。リンク機構ケース2には接地タンク1のエンドブラケットと兼用の取付部2aが設けられており、さらに取付部2aには絶縁支持筒5の内部への通気孔が形成されている。ここで、リンク機構ケース2は通気孔が形成された別体のエンドブラケットを介して接地タンク1と接続しても良い。
【0015】
リンク機構ケース2内部には、主軸101、レバー102およびリンク103からなるリンク機構100が収納されている。主軸101には、絶縁ロッド4を駆動するためのレバー102が固着されている。また、各レバー102の自由端は、リンク103を介して、絶縁ロッド4に連結されている。
【0016】
リンク機構ケース2の取付部2aと対向する面には、リンク機構100を組立てる際の作業孔が設けられている。これにより、レバー102を固着した主軸101を、リンク機構ケース2の内部に図4に示すリンク機構ケース2の右端部側の開口から挿入した後、作業孔からレバー102の自由端とリンク103、およびリンク103と絶縁ロッド4の連結作業を行うことができる。連結作業が終わると、作業孔をカバー2bで閉塞する。
【0017】
リンク機構ケース2の接地タンク1への取付部2aには、接地タンク1内に収納される絶縁支持筒5および中空の金属性のサポート6が連結されている。さらにサポート6を介して中空の可動側コンタクトケース7が支持されている。
【0018】
真空インタラプタ3は、その可動側端板8が可動側コンタクトケース7に支持されており、固定側端板9が図示しない固定側コンタクトケース及び支持碍子を介して接地タンク1に支持されている。また、真空インタラプタ3の可動側端板8と可動リード10との間には外周側が真空室側となるベローズ11が設けられている。可動リード10は、可動側コンタクトケース7に挿通され、リングコンタクト12を介して可動側コンタクトケース7と電気的に接続される。さらに、可動リード10はサポート6内および絶縁支持筒5内を挿通した絶縁ロッド4と連結されている。なお、リングコンタクト12にはスリットが切られているため、可動側コンタクトケース7内とサポート6内は通気状態にある。
【0019】
ベローズ11の内周側、可動側コンタクトケース7内、サポート6内、絶縁支持筒5内、およびリンク機構ケース2内は互いに連通され、共通のガス区画を形成している。すなわち、三相共有のリンク機構ケース2を通じて、各相それぞれのベローズ11の内周側に至るまでの区画が共通ガス区画となっている。この共通ガス区画には、接地タンク1内に封入された高圧の絶縁性ガスの圧力より低く、かつ大気圧よりも高い圧力、例えば0.2MPa程度の絶縁性ガスが封入されている。
【0020】
接地タンク1内の上面に、2つの円筒状のブッシング取付台13が一体に形成され、ブッシング取付台13上にブッシング14が外方向に傾斜した状態で取り付けられる。ブッシング14の内部には導体15が配置されている。導体15は中空状となっており、ブッシング14と導体15の間の空間には、接地タンク1内と同等の圧力の絶縁性ガスが封入されている。導体15の下端は可動側コンタクトケース7に、上端はブッシング端子16にそれぞれ電気的に接続されている。また、ブッシング取付台13の外周に変流器17が配置されている。
【0021】
このような構成において、真空遮断器の投入時には、ブッシング端子16、導体15、可動側コンタクトケース7、リングコンタクト12、可動リード10、真空インタラプタ3の遮断部接点の順で通電経路が形成される。なお、真空インタラプタ3の固定側端板9以降の、固定側の通電経路は、可動側とほぼ同様であるため、図示並びにその説明を省略する。
【0022】
リンク機構100により、真空遮断器の遮断動作を行うためには、まず操作器により主軸101を図1において時計回りに回転動作させる。この回転動作は各相のレバー102およびリンク103により、図中左方向への直線動作へと変換される。さらにこの直線動作が各相の絶縁ロッド4および可動リード10に接続された可動側接点へと伝達されることで遮断状態に至る。一方、投入動作は、前述の遮断動作とは逆に、主軸を図1において反時計方向に回転させることで達成される。
【0023】
図3は図1のタンク形真空遮断器の左側面図である。図において、リンク機構ケース2は組立性の向上のため各相ごとに別体で形成されており、フランジ部2cで図示しないボルトで固定し、Oリングにより互いに気密状態を保って接続されている。リンク機構ケース2の内部は各相が互いに連通されており、共通ガス区画を形成している。
【0024】
図中右側には、リンク機構100の操作器が収納される制御盤18が接続されている。また、接地タンク1および制御盤18は架台19により支持されている。なお、制御盤18の図示しない内部には、2つの圧力監視機構が収納されている。一方の圧力監視機構はガス管20を介して各相の接地タンク1に連結されており、接地タンク1内の高圧ガスの監視を行っている。もう一方の圧力監視機構は、リンク機構ケース2の端板2eを貫通するガス管を介してリンク機構ケース2と接続されている。これにより、共通ガス区画内の圧力が常に接地タンク1内に封入された高圧ガスと大気圧との中間の圧力に保たれるように監視を行っている。
【0025】
図4は図3におけるB部拡大断面図であり、リンク機構ケース2の内部構造を示している。図において、リンク機構ケース2に収納された主軸101は、その左端をリンク機構ケース2の端板2dに設けた軸受けに回転自在に支持されている。主軸101の右端は、リンク機構ケース2の外部に設けられた操作器に連結され、主軸101がリンク機構ケース2の端板2eを貫通する箇所には回転シール部21を設けている。この回転シール部21により、リンク機構ケース2内および各相のベローズ11の内周側に至るまでの共通ガス区画が気密に保持されている。
【0026】
このように三相分に渡って、可動リード10、絶縁ロッド4等の可動部分の殆どを共通ガス区画内に配置し、可動シール箇所を回転シール部21の1箇所としたので、ガス漏れ等のリスクを軽減できる。また、仮に共通ガス区画内のガス圧に変動があった場合であってもメンテナンスが容易となる。
【0027】
以上述べたように、本発明に係るタンク形真空遮断器によれば、各相それぞれのベローズ11の内周側から三相共通のリンク機構ケース2に至るまでの共通ガス区画に、接地タンク1内の高圧力と大気圧との中間圧力の絶縁性ガスを封入したことで、ベローズ11の内外圧差を抑制しベローズ11の損傷を防ぐことが出来る。さらに、高電界の加わる絶縁支持筒5の距離を長くすること無く、絶縁性能を確保出来るので機器の小型化が図れるとともに、共通ガス区画を気密に保持するためのシール部がリンク機構ケース2に設けた回転シール部21の1箇所で済むため、部品点数の削減および気密構造の信頼性向上を図ることが出来る。
【符号の説明】
【0028】
1 接地タンク
2 リンク機構ケース
3 真空インタラプタ
4 絶縁ロッド
5 絶縁支持筒
6 サポート
7 可動側コンタクトケース
10 可動リード
11 ベローズ
100 リンク機構
101 主軸
102 レバー
103 リンク
18 制御盤
21 回転シール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁媒体を密封した各相の接地タンク内それぞれに収納され内部に一対の接点を持つ真空インタラプタを、三相一括で駆動可能なリンク機構を有し、前記真空インタラプタの可動側には、外周側が真空室側となるベローズを設けたタンク形真空遮断器において、前記リンク機構は前記各相の接地タンクの外部に設けられたリンク機構ケース内に収納されるとともに、主軸と、前記主軸の回転動作を直線動作に変えて前記真空インタラプタの絶縁ロッドに伝えるためのレバーおよびリンクを有し、前記主軸は、前記リンク機構ケース外部に設けられた操作器に連結され、前記主軸が前記リンク機構ケースを貫通する箇所に回転シール部を設け、さらに前記ベローズの内周側と、前記絶縁ロッドが挿通された絶縁支持筒内と、前記リンク機構ケース内が互いに連通されて共通ガス区画を形成し、前記共通ガス区画には、前記絶縁媒体の圧力より低く、かつ大気圧よりも高い圧力の絶縁性ガスを封入したことを特徴とするタンク形真空遮断器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−229195(P2011−229195A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93604(P2010−93604)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【特許番号】特許第4749495号(P4749495)
【特許公報発行日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(501383635)株式会社日本AEパワーシステムズ (168)
【Fターム(参考)】