説明

タンタル金属膜を表面および基板に沈着させる方法および装置

次世代溶媒流体中のタンタル金属膜を例えば金属シード層として有用な基板上および/または沈着表面上に沈着させるための方法と装置が開示される。沈着は、混合前駆体溶液の液体状態、近臨界状態、または超臨界状態での液体および/または圧縮性溶媒流体中の低原子価かつ酸化状態の金属前駆体を必要とする。金属膜の沈着は、熱的活性化および/または光分解的活性化を介して達成される。本発明は、半導体、金属、ポリマー、セラミック、並びに同様の基板または複合物の製造および加工に応用される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は概して、金属膜の沈着のための方法と装置に関する。より詳細には、本発明はタンタル金属膜を表面および基板に沈着させるための方法と装置に関する。本発明は例えば半導体チップ製造、金属表面の加工と仕上げ、および同様の工業用途を含む、商業的プロセスに応用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
多くの電子装置で使用されている半導体チップは、半導体、誘電体、金属、金属酸化物、およびパターン膜を含む材料から製造される複合物である。例えば、半導体チップの相互接続は、チップの外形(feature)パターン(例えばビア)での金属の沈着を必要とする。現在、タンタル膜(例えばタンタル金属、窒化タンタルなど)の沈着は、例えば半導体製造の際の拡散障壁および/またはキャップ層の調製に関して関心対象となっている。
【0003】
例えば化学蒸着(CVD)、スパッタ沈着としても公知の物理蒸着(PVD)、および原子層沈着(ALD)を含む種々の沈着法が、当技術分野において周知である。(+5)酸化状態のタンタル金属に基づくタンタル(Ta)前駆体がCVDで使用されたと報告されている。これらの有機金属タンタル前駆体は、一般的な化学的分類であるTa(V)エトキシドまたはTa(V)メトキシドおよび誘導体;Ta(V)ペンタブロミドまたはTa(V)ペンタフロリドおよび誘導体から選択され、ごく最近では、Ta(V)ペンタキスジメチルアミド化合物が使用されている。しかし、Ta(V)エトキシドおよびメトキシドを含むこれらの前駆体は、次世代溶媒(例えば二酸化炭素)と不適合であり、室温以上の温度で反応して、望ましくない沈殿物および/または反応生成物を形成する。従って、次世代溶媒と適合するタンタル膜の沈着を提供する新しいプロセスが必要である。
【発明の概要】
【0004】
一つの局面では、次世代溶媒と適合する前駆体を用いて表面および基板にタンタル含有膜を沈着させるための方法が開示され、該方法は、熱源と熱連通して配置されている選択した表面を有する基板を提供する段階と;溶液を形成する少なくとも一種類の圧縮性の気体または液体からなる溶媒流体に可溶性であるタンタル含有前駆体を提供する段階;熱源により、表面上または基板上の温度を、前駆体の分解温度(Td)もしくは放出温度またはそれより高い温度にする段階;該表面および/または基板を、前駆体の液体状態、近臨界状態、または超臨界流体状態で前駆体溶液に曝露する段階を含み、かつこれによって、該前駆体から放出されたタンタルが、選択した表面上および/または基板上に金属膜として沈着する。
【0005】
別の局面では、金属膜を表面および基板に沈着させるための装置が開示され、該装置は、溶媒流体、金属前駆体、および/または他の試薬を収容するように、かつ、試薬が導入された該溶媒流体を、該溶媒流体の液体状態、近臨界状態、または超臨界状態で維持するように動作可能な反応室と;その表面を含む基板を加熱するように動作可能な該反応室内の熱源とを備え、任意で、導入される流体、前駆体、および/または試薬ならびにその表面を含む基板の温度を調節するために熱源と共に動作可能な冷却源を反応室内に含み、ここで、該反応室内の熱源と冷却源は、該反応室内に導入されるときに基板、その表面、および流体と熱連通して配置され、表面上および/または基板上の温度を該前駆体の分解温度(Td)もしくは放出温度またはそれ以上の温度にして、それによって該表面および/または基板を該前駆体に曝露し;これによって、該前駆体から放出された金属が選択した表面上および/または基板上に金属膜として沈着する。
【0006】
一つの態様では、基板は、半導体チップ、シリコンウェハーなどから選択される電子基板である。
【0007】
別の態様では、基板は、金属、セラミック、ポリマー、およびそれらの組合せから選択される物質を含む。
【0008】
別の態様では、基板は、金属または金属層を含む。
【0009】
別の態様では、表面および/または基板に沈着したタンタル金属は、金属仕上げプロセスにおいて、例えば砲身などの製品の金属仕上げ剤として使用される。
【0010】
別の態様では、基板は、窒化タンタル(TaN)、炭化ケイ素(SiC)、および同様の金属、ならびにそれらの組合せから選択される、セラミックを含む。
【0011】
別の態様では、基板は、低誘電率誘電体、有機シランガラス(OSG)、シロキサン、メチルシルセスキオキサン、ポリシロキサンなど、およびそれらの組合せからなる群より選択されるポリマーを含む。
【0012】
別の態様では、基板は、有機ポリマーを含む。
【0013】
別の態様では、基板は、二次元表面、三次元表面、およびそれらの組合せからなる群より選択される表面を含む。
【0014】
別の態様では、表面は、金属表面、セラミック表面、ポリマー表面、およびそれらの組合せである。
【0015】
別の態様では、表面は、ビア、ウェル、溝、ギャップ、穴、相互接続など、およびそれらの組合せからなる群より選択される外形表面である。
【0016】
別の態様では、熱源は、赤外の、対流の、抵抗の、超音波の、力学的な、化学的な熱源、およびそれらの組合せの群より選択される。
【0017】
別の態様では、溶媒流体は、二酸化炭素、エタン、エチレン、プロパン、ブタン、六フッ化硫黄、またはアンモニアなど、およびそれらの組合せの群より選択される圧縮性気体を含む。
【0018】
別の態様では、溶媒流体は、約830psi(56.48気圧)から約10,000psi(680.48気圧)まで、または約1500psi(102.07気圧)から約5,000psi(340.24気圧)まで、または約2250psi(153.11気圧)から約3,000psi(204.14気圧)までの範囲内で選択される圧力の二酸化炭素を含む。
【0019】
別の態様では、タンタル含有前駆体は[(Cp)(Ta)(CO)4-N(LN)]の形態の化学物質であり、式中、(Cp)がシクロペンタジエニル(C5H5)環または最大5個の同一または異なるR基(例えばC5R5)で官能基化されたシクロペンタジエニル環である。R基は、これに限定されるわけではない。例示的なR基には、これらに限定されるわけではないが、例えば水素(H)、アルカン(例えばメタン、エタン、プロパン等)、またはアルキル(例えばメチル、エチル、プロピル、フェニル等)、アルケン(例えばエチレン、プロピレン等)、またはアルケニル(例えばエテニル(CH2=CH-)、プロペニル、ベンジル(C6H5CH2-)等)、アルキン(エチン(CH≡C-)、プロピン等)、およびそれらの組合せが含まれる。(CO)はカルボニルリガンドを示し、ここでNは0から4までの数である。(LN)は、数(N)の同一または異なるリガンド(L)、例えばエチレンを示し、ここでNは0から4までの数である。他の態様では、他の適切なリガンド(L)、例えば、感光リガンド、光分解性放出可能(photolytically-releasable)リガンド、光分解性交換可能(photolytically-exchangeable)リガンド、または光分解性高感度(photolytically-sensitive)リガンドが用いられ得る。
【0020】
別の態様では、タンタル含有前駆体は[(In)(Ta)(CO)4-N(LN)]の形態の化学物質であり、(In)は、シクロペンテン環と融合したベンゼン環からなるインデニル(C9H7)多環式炭化水素、または最大7個の同一または異なるR基(即ちC9R7)で官能化されたインデニルである。R基は、これに限定されるわけではない。例示的なR基には、これらに限定されるわけではないが、例えば水素(H)、アルカン(例えばメタン、エタン、プロパン等)、またはアルキル(例えばメチル、エチル、プロピル、フェニル(C6H5)等)、アルケン(例えばエチレン、プロピレン等)、またはアルケニル(例えばエテニル(CH2=CH-)、プロペニル、ベンジル(C6H5CH2-)等)、アルキン(エチン(CH≡C-)、プロピン等)、およびそれらの組合せが含まれる。(CO)はカルボニルリガンドを示し、ここでNは0から4までの数である。(LN)は、数(N)の同一または異なるリガンド(L)、例えばエチレンを示し、ここでNは0から4までの数である。他の態様では、他の適切なリガンド(L)、例えば、感光リガンド、光分解性放出可能リガンド、光分解性交換可能リガンド、または光分解性高感度リガンドが用いられ得る。
【0021】
別の態様では、タンタル含有前駆体は、(Cp)Ta(CO)4または(In)Ta(CO)4から選択される。ここで(Cp)は、シクロペンタジエニル(C5H5)環または官能基化されたシクロペンタジエニル環(C5R5)であり;(In)は、インデニル(C9H7)多環式炭化水素、または最大7個の同一または異なるR基からなる官能化されたインデニル(即ちC9R7)である。R基は限定されない。(CO)は、カルボニルリガンドを示す。
【0022】
別の態様では、タンタル含有前駆体を、液体溶媒内で予混合し、次に圧縮性の気体溶媒流体に導入して、表面および/または基板への金属膜の沈着をもたらす。
【0023】
一つの態様では、液体溶媒としてベンゼンが使用される。
【0024】
別の態様では、液体溶媒としてアルカノール、例えばメタノールが使用される。
【0025】
別の態様では、圧縮性流体溶媒および/または液体溶媒の混合物が使用される。
【0026】
別の態様では、タンタル含有前駆体から放出されるタンタルは、(+1)の原子価を有する。
【0027】
別の態様では、タンタル含有前駆体から放出されるタンタルは、(+5)以外の原子価を有する。
【0028】
別の態様では、提供段階には、実質的に固体形態の前駆体を導入する段階、その後に溶媒流体を導入して前駆体を分散させ前駆体溶液を得る段階、および表面をこれに曝露する段階が含まれる。
【0029】
別の態様では、提供段階には、前駆体を溶媒流体中で予混合する段階、ならびに予混合した前駆体溶液を沈着室または反応室に導入して沈着表面および/または基板をこれに曝露する段階が含まれる。
【0030】
別の態様では、予混合前駆体は、バッチ式に沈着室または反応室に導入され、沈着表面および/または基板がこれに曝露される。
【0031】
別の態様では、予混合前駆体は、実質的に連続して沈着室または反応室に導入され、沈着表面および/または基板がこれに曝露される。
【0032】
別の態様では、提供段階には、実質的に固体形態の前駆体を沈着室または反応室に導入する段階、ならびに、その後に溶媒流体を導入して前駆体をその内部に分散させ前駆体溶液を得、これにより沈着表面および/または基板をこれに曝露する段階が含まれる。
【0033】
別の態様では、熱源および/または表面の温度は、分解温度(Td)から約600℃まで、または分解温度(Td)から約400℃まで、または分解温度(Td)から約350℃までの範囲で選択される。
【0034】
別の態様では、沈着表面に沈着したタンタル膜は、還元剤を用いて還元される。
【0035】
別の態様では、使用する還元剤は、化学量論的に過剰な量で溶媒流体内に導入される水素である。
【0036】
別の態様では、使用する還元剤は、n-アルカノールの群由来のアルコールである。
【0037】
別の態様では、還元剤は、メタノール、エタノール、および/またはn-プロパノールから選択されるn-アルカノールである。
【0038】
別の態様では、沈着表面上に沈着したタンタル膜は、実質的に均一である。
【0039】
別の態様では、表面上に沈着したタンタル膜は、これらに限定されるわけではないが、例えばOSG、Ru、Ta2O5、TaN、Cu、SiCなど、およびそれらの組合せを含む構成要素を含む、二成分、三成分、四成分、もしくはより高次の膜、複合物、または構造の構成要素である。
【0040】
別の態様では、表面上に沈着したタンタル膜は、マイクロ電子デバイスの製造の際に、拡散障壁、例えばTaNの前処理において使用される。
【0041】
別の態様では、タンタル膜は、半導体チップまたはウェハーの製造の際、シード層として表面上に沈着する。
【0042】
別の態様では、タンタル含有前駆体からのタンタルの放出は、光分解光源と組み合わせた前駆体の1つまたは複数の感光リガンド(L)の除去を介して、光分解的に制御される。
【0043】
別の態様では、使用される光分解光源は、可視(VIS)光源、紫外(UV)光源、紫外/可視(UV/VIS)光源、マイクロ波光源、レーザー光源、フラッシュレーザー光源、赤外(IR)光源、高周波(RF)光源、およびそれらの組合せの群の要素を含む。
【0044】
別の態様では、タンタル含有前駆体の1つまたは複数の感光リガンドは、タンタル放出前に光分解光源を用いて置換基リガンドと交換され、これによりタンタル含有前駆体の放出特性(例えば放出温度)における変化、ならびに従って表面および/または基板への金属膜の沈着条件における変化が起こる。
【0045】
別の態様では、タンタル含有前駆体からのタンタルの放出は、熱源および光分解光源と熱的におよび光分解的に組み合わせて達成される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】表面または基板へのタンタル金属膜の沈着のためのベンチスケールデザインの沈着システム全体を図示する。
【図2】基板の選択した表面、下位表面(sub-surface)、および/またはパターン外形表面へタンタル金属膜を沈着させるための高圧容器の断面図を示す。
【図3】本発明の一つの態様による、タンタル金属膜を沈着させるための高圧容器の沈着室の断面図を示す。
【図4】本発明の別の態様による、本発明にしたがってOSG基板上のルテニウム層の上に沈着させたタンタル層を含む二層金属膜の高分解能Ta 4f XPSピークデータを示す。基板上の深さの関数としてのタンタル膜層の酸化状態が図示されている。
【図5】本発明の別の態様による、本発明にしたがってOSG基板上のルテニウム層の上に沈着させたタンタル層を含む二層金属膜のXPS分析からの、元素の深さプロファイルプロットである。基板表面上の深さの関数としての膜層の原子組成が図示されている。
【図6】複合物基板の断面の透過型電子顕微鏡写真(TEM)であり、本発明にしたがって沈着させたタンタル金属層を含む、基板の層を示している。
【図7】本発明の別の態様による、本発明にしたがってOSG基板上のPVDルテニウム層の上に沈着させたタンタル層を含む二層金属膜のXPS分析からのプロットである。基板上のタンタルの深さの関数としてのタンタル膜層の酸化状態が図示されている。
【図8】図7のスパッタリングサイクル2および5それぞれについての高分解能Ta 4f XPSピークデータを示し、これは、本発明にしたがって沈着させたタンタル金属膜の、酸化物形態のタンタルから還元形態のタンタルへの移行を示している。
【図9】図7の金属膜に対応するXPS深さプロファイルプロットであり、これは、基板の表面上の膜層の原子組成を深さの関数として示している。
【図10】本発明のプロセスの別の態様による、基板に沈着した金属膜層の輪郭を描いたXPS分析データを示している。
【図11】図11a〜11bは、本発明のタンタル膜沈着の前の、それぞれ200 nmおよび500 nmの分解能での外形パターン基板の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。図11c〜11dは、本発明のプロセスの別の態様による、それぞれ200 nmおよび500 nmの分解能での、タンタルの沈着後の外形パターン基板およびそこに沈着した他の金属膜のSEMSである。
【図12】本発明のプロセスの別の態様による、セラミック被覆基板に沈着したタンタル金属膜の原子組成を示す、XPS深さプロファイルプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
詳細な説明
本発明は概して、化学的流体沈着(CFD)と称する、金属を選択的に沈着させるための方法に関する。より詳細には、本発明は、基板および/または表面へのタンタルの化学的流体沈着、すなわちCFD-Taのための方法に関する。本発明は例えば半導体チップ製造、金属製品製造、金属表面処理および仕上げなどの商業的用途に応用される。
【0048】
本明細書にて使用される「基板」という用語は、金属および/または追加の物質もしくは層が沈着した、基礎となるまたは下に横たわる物質を意味する。基板には、これらに限定されるわけではないが、電子基板、金属基板、セラミック基板、ポリマー基板など、またはそれらの組合せが含まれる。電子基板には、これらに限定されるわけではないが、例えば、シリコンなどからなる半導体、チップ、ウェハー、および基板、またはそれらの組合せが含まれる。基板は、例えば金属、セラミック、ポリマーなど、またはそれらの組合せから選択される、単一のもしくは主要な材料、または代替として二つまたはそれより多くの材料から実質的に成ってもよい。セラミックには、これらに限定されるわけではないが、例えば炭化ケイ素(SiC)および窒化タンタル(TaN)が含まれる。ポリマーには、例えば有機シランガラス(OSG)、低誘電率誘電体、シロキサン、メチルシルセスキオキサン、ポリシロキサン、並びに主要なクラスの無機ポリマー、有機ポリマー、およびハイブリッドポリマーから選択される他のポリマーが含まれる。このように組成は限定されない。基板の構造も限定されない。例えば、基板の材料および層は、任意の配列、順序(例えば連続した順番、階層的な順番等)、および/または、意図する用途、製品、または物質組成に適合するようなパターンであってよい。例えば、半導体基板は通常シリコンを含むが、軍事用途など放射抵抗が重要である場合には例えばサファイアを含んでよい。
【0049】
本明細書にて使用される「OSG基板」という用語は、本発明と組み合わせて試験される、有機シランガラス(OSG)誘電体の第一の表面層で前処理されたシリコンウェハーからなるクーポン基板を意味する。
【0050】
本明細書にて使用される「表面」という用語は、タンタル金属層の沈着が望ましい任意の基板境界を指す。表面には、これらに限定されるわけではないが、例えば二次元表面(例えば水平表面、垂直表面、平面表面)、三次元表面、外形表面(例えばビア、ウェル、チャネル、溝、相互接続)、化合物表面または錯体表面、並びに、例えば金属表面、ポリマー表面、セラミック表面などまたはそれらの組合せを含む表面が含まれる。いかなる制限も意図されていない。
【0051】
本明細書にて使用される「置換基」および「成分」という用語は、前駆体分子中に存在するリガンドおよび/または官能基と交換可能な原子または原子団を指す。炭化水素置換基には、これらに限定されるわけではないが、例えばアルキル、アルケニル、およびアルキニルが含まれる。
【0052】
「アルキル」という用語は、二重結合を有しない一価の非分枝のまたは分枝の炭化水素鎖を意味し、これは、1個の水素原子を除去することによりアルカン分子から派生する例えばメチル(CH3)およびエチル(C2H5)であり、これらは各々その親アルカン即ちメタン(CH4)およびエタン(C2H6)から派生する。いくつかの場合、鎖に沿って異なる水素原子を除去して、異なるアルキル基、例えば1-プロピルまたはn-プロピル(CH2CH2CH3)並びに2-プロピルまたはイソプロピル[CH(CH3)2]を親アルカンから形成することができるが、どちらもプロパン(CH3CH2CH3)から形成される。官能基がアルキル基と結合して、除去した水素が置換されると、官能基に大きく依存した性質をもつ化合物が形成される。アルキル基には、これらに限定されるわけではないが、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルなどの置換基のようなC2-C8アルキル基が含まれる。アルキル基は、1個または複数の置換基で置換しなくても置換してもよい。
【0053】
「アルケニル」という用語は、1個または複数の二重結合を有する一価の非分枝のまたは分枝の炭化水素鎖を意味する。アルケニル基の二重結合は、別の不飽和基と共役してなくてもよいし共役していてもよい。アルケニル基には、これらに限定されるわけではないが、例えばビニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、および同様の部分(例えばブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、2-エチルヘキセニル、2-プロピル2-ブテニル、4-(2-メチル-3-ブテン)-ペンテニル)のようなC2-C8アルケニル基が含まれる。アルケニル基は、1個または複数の置換基で置換しなくても置換してもよい。
【0054】
「アルキニル」という用語は、1個または複数の三重結合を有する一価の非分枝のまたは分枝の炭化水素鎖を意味する。アルキニル基の三重結合は、別の不飽和基と共役してなくてもよいし共役していてもよい。アルキニル基には、これらに限定されるわけではないが、例えばエチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、および同様の部分のようなC2-C8アルキニル基が含まれる。アルキニル基は、1個または複数の置換基で置換しなくても置換してもよい(例えば、メチルプロピニル、4-メチル-1-ブチニル、4-プロピル-2-ペンチニル、および4-ブチル-2-ヘキシニル)。本開示に鑑みて当業者が使用するであろう置換基は全て、本明細書に包含される開示の範囲内である。いかなる限定も意図されていない。
【0055】
溶媒流体
選択した金属前駆体が溶解性を有する溶媒流体は、本発明に関連して使用するのに適しており、例えば圧縮性気体および/または液体を含む。例えば、圧縮性気体には、これらに限定されるわけではないが、例えば塩化三フッ化エタンなどのそれらの誘導体および置換物を含む、二酸化炭素、エタン、エチレン、プロパン、ブタン、六フッ化硫黄、アンモニア、およびそれらの組合せが含まれる。液体溶媒には、これらに限定されるわけではないが、例えばベンゼン、アルカノール、および当業者に公知の他の液体溶媒が含まれる。溶媒流体は、単一の溶媒または複数の溶媒、例えば共溶媒流体から成ってよい。他の態様では、圧縮性気体と液体溶媒との組合せが使用可能であり、例えばCO2、ベンゼン、メタノールがある。別の態様では、多量の圧縮性溶媒流体への導入のために金属前駆体を予混合するのに液体溶媒が使用され、これにより、金属膜の沈着が起こる。また更に別の態様では、金属前駆体は圧縮性溶媒流体中で予混合されて、必要なときに多量の圧縮性溶媒流体中に導入され、これにより金属膜の沈着が起こる。いかなる限定も意図されていない。当業者が本開示に鑑みて溶媒流体としての使用を意図または選択するであろう圧縮性気体および液体は全て、本発明の範囲内である。
【0056】
二酸化炭素(CO2)は、容易に到達できる臨界パラメーター(即ち、臨界温度(Tc)=31℃および臨界圧力(Pc)=72.9気圧、CRC Handbook、第71版、1990年、6〜49ページ;並びに臨界密度(ρc)約0.47g/mL、Properties of Gases and Liquids、第3版、McGraw-Hill)を有する、例示的な溶媒流体である。二酸化炭素の圧力は、約830psi(56.48気圧)から約10,000psi(680.46気圧)までの範囲で選択される。より詳細には、圧力は、約1500psi(102.07気圧)から約5,000psi(340.23気圧)までの範囲で選択される。最も詳細には、圧力は、約2250psi(153.10気圧)から約3000psi(204.14気圧)までの範囲で選択される。いかなる限定も意図されていない。温度、圧力、および密度のレジームは、選択した前駆体と任意の関連試薬を溶媒流体中で混合することにより前処理した混合前駆体溶液の臨界パラメーター、近臨界パラメーター、および超臨界流体(SCF)パラメーターに依存する。混合前駆体溶液の密度が前駆体および関連試薬の溶解度のために必要な密度より高く維持されるならば、混合前駆体溶液の多くの温度および圧力が実施可能である。更に、システム内の圧力および/または温度を変化させることにより、所与の溶液における密度の増大を利用してもよい。圧力および/または温度の関数としてより高い密度を利用し得るSCF流体では、同様のまたはより大きな効果が達成され得る。
【0057】
試薬
溶媒の液体状態、近臨界状態、または超臨界状態の選択した溶媒流体中で溶解性を有する試薬が本発明と共に使用され得る。試薬には、これらに限定されるわけではないが、例えば還元剤、触媒剤(即ち触媒)、並びに所望の結果を促進する他の試薬が含まれる。いかなる限定も意図されていない。試薬は、金属前駆体の予混合に使用される溶媒および/または主溶媒として利用される溶媒とは反応しないかあるいは別の方法で適合することが好ましい。還元剤には、例えば水素(H2)、アルコール(例えば、n-アルカノール、メタノール、エタノール等)、および当業者に明らかなその他の適切な還元剤が含まれる。1)還元剤としてのその有効性、2)その酸素除去能力、および3)選択した気体状の溶媒流体中でのその溶解性を考えると、水素は例示的な試薬である。一つの態様では、水素は、溶媒流体の選択した液体状態、近臨界状態、または超臨界状態の二酸化炭素からなる溶媒流体に加えられる。
【0058】
本発明に関連して試薬および前駆体を導入するための方法は限定されない。例えば試薬は、溶媒流体中で混合する前に固体、液体、または気体として沈着室に直接導入してもよく、或いは、溶媒内で予混合し、選択した溶媒流体の液体温度、近臨界温度、または超臨界温度で沈着室に供給してもよい。他の態様では、試薬を、沈着を起こさせるのに最終的に必要な温度よりも低いまたは高い温度で沈着室に供給し、次に所望の液体温度、近臨界温度、または超臨界温度まで加熱または冷却し、制御沈着を起こさせてもよい。また更に他のプロセスでは、試薬および/または前駆体を、例えば制御混合のときのようにおよび/または濃度制御のときのように、実質的に連続的に、間断的に、あるいはバッチ式で添加してもよい。このように、プロセスの限定は本明細書において全く意図されていない。本開示に鑑みて当業者が意図するであろう試薬、前駆体および手順は全て、本開示の範囲内である。
【0059】
本発明が、例えば前駆体、試薬、および/または沈着物質の間で起こる反応または一連の反応の型に限定されないことを、当業者は認識するであろう。反応には、これに限定されるわけではないが、還元、不均化、解離、分解、置換、光分解、およびそれらの組合せが含まれる。例えば、前駆体から溶媒流体への沈着物質(例えば、タンタル金属)の放出を、沈着容器または反応室中で、例えば熱分解、解離、または置換によって達成することができ、これにより例えば還元試薬とのその後の反応が可能になり、基板または表面への最終的な沈着が起こる。別の例では、気体試薬、固体試薬、または液体試薬を沈着容器または反応室へ導入することにより、前駆体と該試薬の間の、および/または、前駆体から放出される沈着物質と該試薬の間の反応を開始させることができる。いかなる限定も意図されていない。
【0060】
タンタル前駆体
本発明に関連して使用するのに適したタンタル前駆体は、以下の[1]および[2]に示す一般形態を有する。
[(Cp)(Ta)(CO)4-N(LN)] [1]
[(In)(Ta)(CO)4-N(LN)] [2]
【0061】
[1]では、(Cp)はシクロペンタジエニル(C5H5)環を示す。[2]では、(In)はインデニル多環式炭化水素(即ちC9H7)を示し、以下の[3]および[4]で各々を図示する。

【0062】
[1]および[2]で示したものを含む前駆体は、本明細書に記載の溶媒流体での溶解性を有し、かつ本明細書に記載の使用する溶媒流体および混合前駆体溶液の選択された液体状態、近臨界状態、または超臨界流体状態(例えば、温度、圧力、密度)での安定性を有する。前駆体とはリガンドからなる化学物質または部分であり、これは、十分な熱不安定性を有するか、または該前駆体の分解温度、溶解温度、または放出温度かそれより高い温度で除去するのが容易である。リガンド(LN)には、これらに限定されるわけではないが、例えばカルボニル(CO)、並びに、これらに限定されるわけではないが、例えば-(P)R1R2R3、-(N)R1R2R3、アルケン(例えばH2C=CH2)、アルキン(例えばHC≡CH)および同様の部分を含む他の置換基リガンドが含まれる。ここで、R1、R2、およびR3は、同様のまたは異なるR基を表す。R基は、選択した溶媒内で溶解性が保持される限り限定されない。R基には、これらに限定されるわけではないが、例えば、本明細書に記載の、H、アルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル等)、アルケニル基(例えばH2C=CH2、プロペニル等)、アルキニル基(例えばHC≡CH等)、および他の同様の部分が含まれる。例えば感光リガンド、光分解性放出可能リガンド、光分解性交換可能リガンド、または光分解性高感度リガンドを含む、他の適切なリガンド(L)が利用され得るが、これらは、種々の波長において親前駆体から光分解的に放出可能および/または交換可能であるリガンドを表している。これらの前駆体(例えば錯体)内のタンタル(Ta)は(+1)酸化状態の成分金属イオンである。これらの化合物の合成および化学的性質は、例えばBitterwolfら[J. of Organometallic Chem., 557 (1998) 77-92]により詳述されている。タンタル(タンタロセン(tantalocene))錯体内のシクロペンタジエニル環およびインデニル多環式炭化水素と関連した結合作用は、これらの種における利用可能な不対電子に強く影響され、配位化合物とパイ(π)結合化合物の両方を生じる。シクロペンタジエニル(Cp)環およびインデニル(In)多環式炭化水素はどちらも、以下の[5]および[6]に示す種々の置換基R環を更に含む。

【0063】
ここで、R1〜R7は、同様のまたは異なるR基を示す。R基には、例えば分枝鎖、直鎖、および芳香族置換基が含まれる。当業者は、多くのかつ種々の化学基が、(Cp)環および(In)多環式炭化水素でのR基官能性として使用するのに適していることを認識するであろう。選択した溶媒内で前駆体の溶解性が保持されている限り、当業者に公知の或いは当業者が選択する全てのR基が使用され得る。いかなる限定も意図されていない。関心対象の作製プロセスまたは製造プロセスに適用可能な分解温度、溶解温度、または放出温度と、選択した溶媒内での溶解性とを有する全ての前駆体が使用可能であり、これにより、広範囲にわたる温度と状態での表面および/または基板への金属膜の選択的沈着が可能になる。表1は、本発明に関連して試験される二つの例証的なタンタル前駆体を列挙するものである。
【0064】
(表1)2種類のタンタル前駆体の熱分解温度

*アイダホ大学(Moscow, ID)にてThomas Bitterwolf教授により合成され取得された。(In)=インデニル多環式炭化水素;(Cp)=シクロペンタジエニル環;(CO)=カルボニルリガンド
**アイダホ大学(Moscow, ID)化学科、Thomas Bitterwolf教授により提供されたデータ
【0065】
選択した溶媒では飽和限界までの前駆体濃度が使用され得る。いかなる制限も意図されていない。
【0066】
沈着表面温度
本明細書で使用される用語「分解温度」または「分解の温度」(Td)とは、前駆体の置換、解離、溶融、脱錯体化(decomplexation)、または分解によってタンタルが金属前駆体から放出されるかあるいは別の方法で沈着用に利用可能な温度を意味する。前駆体の分解温度またはそれより高い温度の表面温度を、金属膜の沈着を起こすのに用いることができる。具体的には、表面温度は、選択した前駆体の分解温度(Td)から約600℃までの範囲で選択される。より詳細には、沈着表面温度は分解温度(Td)から約400℃までの範囲で選択される。最も詳細には、沈着表面温度は分解温度(Td)から約350℃までの範囲で選択される。
【0067】
当業者に理解されるように、沈着表面の温度は、これらに限定されるわけではないが、表面および/または基板の直接加熱または冷却;表面および/または基板と接触するステージまたはプラットフォームの加熱または冷却;表面および/または基板と接触する流体の加熱または冷却;表面および/または基板と接触する前駆体を含有する溶液(即ち前駆体溶液)の加熱または冷却;或いはそれらの組合せを含む、種々のおよび代替の方法で達成され得る。いかなる限定も意図されていない。例えば、沈着表面および/または基板と接触するステージまたはプラットフォームの温度は、(例えば冷却および/または加熱によって)約100℃から約1500℃の範囲で選択され得る。より詳細には、温度は、約25℃から約600℃の範囲で選択され得る。
【0068】
また、当業者に理解されるように、沈着室のための温度条件と圧力条件は、用いられる溶媒と試薬の選択に更に依存する。いかなる限定も意図されていない。例えば、その中で用いる溶媒および/または溶液に適した条件を達成するために、沈着室または容器内で圧力を更に操作することができる。具体的には、圧力は約1psi(0.068気圧)から約20,000psi(1361気圧)までの範囲で選択される。より詳細には、圧力は約500psi(34気圧)から約5000psi(340気圧)までの範囲で選択される。最も詳細には、圧力は約2000psi(136気圧)から約3000psi(204気圧)までの範囲で選択される。いかなる限定も意図されていない。
【0069】
沈着表面にて沈着を起こすために沈着表面の温度を制御することに関して当業者に意図される機構と方法は全て、本明細書に包含される本発明の範囲内である。
【0070】
多層複合物および構造
本発明は、単一の膜または層の沈着に限定されるものではない。例えば、係属中の米国特許出願(第11/096,346号)に開示された他の溶液プロセス、並びに、多層膜および複合物、例えば二成分複合物、三成分複合物、および高次の複合物、並びに、これらに限定されるわけではないが、例えば金属、セラミック、ポリマーなど、およびそれらの組合せを含む材料からなる構造を発生させるための当技術分野で公知のプロセス(例えば、CVD、PVD)と、タンタル膜の沈着とを更に組合せることが可能である。例えば、種々の態様において、タンタル膜は、これらに限定されるわけではないが、セラミック(例えばTaN、SiC)、金属(例えばCu、Ru)、ポリマー(例えばOSG、シロキサン)の群およびそれらの組合せから選択される基板および表面上に沈着する。本明細書で更に説明する一つの態様では、タンタル膜をOSGからなる基板に沈着させ;銅金属を次に沈着させて、OSG/Ta0/Cu0からなる三成分複合物を生成する。別の態様では、基礎となるOSG基板に沈着したタンタル膜からなる二成分複合物が、SiCセラミックからなる拡散層カバーと共に、三成分OSG/SiC/Ta0複合物を生成する。更に別の態様では、二成分複合物構造は、OSG基板にタンタル膜を沈着させることにより製造される、すなわちOSG/Ta0である。TaはOSGに存在する酸素のゲッターである。その結果XPS分析は、この複合物がOSG/Ta2O5/Ta0/Ta2O5からなる構造であることを示す。本明細書にて詳述するように他の多層複合物および構造、例えばOSG/Ru0/Ta0/Cu0;OSG/Ru0/Ta0;OSG/Ru0/Ta0/Cu0;OSG/Ru0/Ta0/Ru0;OSG/Ru/Ta0/Cu0も同様に達成可能である。一般に、種々の多層複合物および外形パターン複合物が、種々の基板および表面への本発明のタンタル膜の沈着に関連して製造されている。沈着が複合物または構造において第一の層または最後の層を構成しているかどうかにかかわらず層状のおよび/または金属の複合物におけるタンタル金属膜の沈着の順序は限定されないことが、結果により更に実証されている。従って、いかなる限定も意図されていない。
【0071】
多層複合物の加工には、生じる金属膜の固着を可能にする基板および/または表面の化学的または物理的な前処理と、これらに限定されるわけではないが、例えば、所望の膜特性を確実にするための加圧システム内での追加の化学反応および/または沈着、熱アニーリング、排出処理(CVD、PVD、ALD)、および/または望ましくない反応生成物の除去を含む沈着後加工段階とが更に必要であり得る。例えば、係属中の米国特許出願(第10/783,249号、第11/149,712号、第11/210,546号)に開示された機器、システム、およびプロセスも組合せ可能であり、プロセス流体の混合および基板の加工を提供する。本開示に鑑みて当業者が理解しかつ意図するであろうその他の同様のおよび/または関連したプロセスおよびシステムも、組合せ可能である。いかなる限定も意図されていない。
【0072】
タンタルの選択的沈着のためのシステム
図1は、本発明の一態様による、タンタル金属膜の沈着のための単純なベンチスケールデザインのシステム10を図示する。システム10は、内部に導入される溶媒流体、試薬、混合した前駆体溶液などを含めるための高圧設計の沈着容器または反応室12を含む。容器12は、内部に導入される、金属膜の沈着が達成されるべき表面を有する基板の収容および加熱のために適合化される。容器12は、例えば超高純度CO2のような溶媒流体源14、および例えば水素(99.5%)のような任意の試薬源16に任意で連結される。溶媒および試薬流体(例えばCO2およびH2)は、例えば特定のフィルターまたはカートリッジ(例えばOxy-Trapカートリッジ、Alltech Associates, Inc., Deerfield, IL, 米国)と連結して、不純物、酸化種、および/または酸素を除去するために前処理され得る。圧力は、例えば溶媒流体源14と流体接続したフィードポンプ18(例えばモデル260-Dマイクロプロセッサ制御式シリンジポンプ、ISCO Inc., Lincoln, NB)を用いて、システム10および容器12内でプログラムされ、維持される。本システム中の構成要素は、これらに限定されるわけではないが、高強度ポリマー(例えばPEEK[商標], Upchurch Scientific Inc., Whidbey Island, WA)又はステンレス鋼の管からなる内径0.020〜0.030インチおよび外径1/16インチの高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)移送ライン20を介して、動作可能に連結されている。溶媒流体は、ポンプ18から容器12へと至る移送ライン20から、標準バルブ22(例えばモデル15-11AF1二方向ストレートバルブまたはモデル15-15AF1三方向/二幹接続バルブ、High Pressure Equipment Co., Erie, PA;または他の適切なバルブ)を介して容器12に導入される。試薬は、試薬源16から、別の標準バルブ22(例えばモデル15-11AF1二方向ストレートバルブ, High Pressure Equipment Co., Erie, PA)を通って容器12に導入される。溶媒、試薬、前駆体、および/または流体は、容器12に導入される前に予混合セル36内で任意に混合され得る。システム10内の圧力を測定するために、標準圧力ゲージ24(例えばブルドン管型Heiseゲージ, Dresser, Inc., Addison, TX)が容器12に接続されているが、これに限定されるわけではない。容器12は、標準ドラフトに更に別の標準バルブ22または同様の排気バルブを通じて適切に排気される。容器12は、容器12の加圧過剰を防止する破裂板アセンブリー28(例えばモデル15-61AF1安全ヘッド、High Pressure Equipment Co., Erie, PA)に更に連結されている。容器12は、容器12に導入される基板と流体を加熱するために電流源30に電気的に連結されている。容器12は、容器12の適した温度を冷却および/または維持するために冷却源32(例えば循環浴(circulation bath))に更に連結されている。容器12の温度は、標準的な熱電対温度表示器34または同様の装置で表示される。当業者は、本発明の趣旨と範囲から逸脱することなく、特定の商業的用途、産業上の必要性、プロセスおよび/または製造目的に対処するために機器および構成要素が適切に構成されスケール調整され得ることを認識するであろう。例えば、市販の(例えば直径300mm)半導体ウェハーおよび電子基板の製造および/または加工には、種々の移送システムおよび装置、試薬輸送システム、噴霧用機器および/もしくは装置、加圧室、排出室、ならびに/または他の類似した加工用システム、装置、および/もしくは機器の構成要素、例えばプロセス統合および制御用のコンピュータシステムを組み込むことができる。本ベンチスケールシステムの説明は、限定することを意図していない。当業者が本開示に鑑みて使用のために意図するであろう機器、構成要素、および装置は全て、本開示の範囲内である。次に、図2を参照して容器12を更に説明する。
【0073】
図2は、本発明の一つの態様による沈着容器(または反応室)12の垂直断面図を示す。容器12は、チタンのような耐熱金属で機械加工された、容器上部70、容器下部72、および容器中央部74とを含む。上部70、下部72、および中央部74は組み立てられて沈着室82を画定し、該沈着室は、それぞれ容器上部70、下部72、および中央部74の各々に機械加工される固定リム部分78上に取り付けられた高圧締め付けクランプ76(例えば分割リングカバークランプ、Parr Instrument Co., Moline, Illinois, 米国)を使用して密封され、これにより、容器12内の圧力と温度が密閉される。クランプ76は、クランプ76の外周の周りに配置される締め付けリング80を介して固定される。沈着室82に導入された流体と試薬の相および混合挙動を観察するため、ならびに本明細書に記載の光分解光源から光を導入するために、窓84(例えばサファイア結晶、Crystal Systems Inc., Salem, MA 01970からなる)が容器上部70内に任意に配置される。任意で、標準端末表示(図示せず)または他の観察システムに連結された高性能カメラ(例えばPanasonicモデルGP-KR222 Color CCDカメラ、Rock House Products Group, Middletown, NY)(図示せず)と組み合わせた窓84を通して室82を観察してもよい。いかなる限定も意図されていない。本態様では、容器12は、室82から流体を導入するまたは除去するためにポート86と共に構成されているが、これに限定されるわけではない。封止(seal)60は、流体成分の導入前または導入後に容器12内での圧力および温度の密封を達成させる。容器下部72のフィードスルー46および54は、容器12外部の装置および/またはシステムの連結のためのエントリー・ポイントを提供する。
【0074】
以下、図3を参照して沈着室82を更に説明する。
【0075】
図3は、本発明の別の態様による、基板(例えば半導体基板)の表面、例えばパターン外形表面、下位表面、二次元表面、三次元表面、および/または他の複合表面(例えばボイド、トンネル)に物質を選択的に沈着させるための容器12内部の沈着室82の断面図を示す。室82は、セラミック足場(staging post)(スタンドオフ)88(GE Advanced Ceramics, Strongsville, OH)に取り付けた加熱ステージ38(例えば25mmグラファイトベースのBoralectric[商標]ヒーター、GE Advanced Ceramics, Strongsville, OH)を含む。この構成では、ステージ38には熱源40、例えばステージ38上に配置された基板42(その表面を含む)を加熱するための抵抗加熱器要素(resistive heater element)を有するグラファイトヒーターコアが含まれるが、これに限定されるわけではない。当業者に公知のあらゆる熱源が本明細書での使用のために適合化され得るが、これらはしたがって本開示の範囲内に含まれる。基板42は、例えば保持クリップ43または他の保持手段によってステージ38上の適所に任意で保持されるが、これに限定されるわけではない。
【0076】
室82の温度制御(例えば冷却および/または加熱)は、当業者により理解されるであろう複数の動作モードおよび装置を用いて達成される。温度制御用の装置には、これらに限定されるわけではないが、例えば冷却装置、冷凍ユニット、温度調節器、熱交換器、ならびに同様の装置およびシステムが含まれる。いかなる限定も意図されていない。一つの非限定的な態様では、容器12の室82は、容器下部72のフィードスルー54を介して冷却源32と連結した熱交換器(冷却)コイル44と共に構成され、これにより容器12の沈着室82に導入された流体および基板が温度制御される。熱交換器コイルは、例えば外径1/8インチのステンレス鋼管で作製される。容器12は、熱交換器コイル44と組み合わせて低温壁沈着モードで動作させてもよく、あるいは代替的に、熱交換器コイル動作なしまたは熱交換器なしの高温壁沈着モードで動作させてもよい。加熱ステージ38用の電流源30(例えば0-400VAC可変(Variac)変圧器、ISE, Inc., Cleveland, OH)は、容器下部72のフィードスルー46を通して電気的に接続された配線48を介してステージ38に連結されるが、これに限定されるわけではない。容器12内の、例えば加熱ステージ38、基板42、および/または溶媒流体59(およびそれに可溶な試薬)の温度を測定するために、熱電対(図示せず)、例えばK型熱電対(Omega, Engineering, Stamford, CT)が配置され、これは、フィードスルー46を通して電気的に接続された熱電対配線52を介して容器12外部の温度表示装置34に電気的に連結されるが、これに限定されるわけではない。
【0077】
例えばデータ収集/測定、プロセス制御、または他の要件のために、追加の構成要素、装置、および機器を無条件で使用および/または連結することができる。更に、これらに限定されるわけではないが、例えば、当業者により意図されるであろう冷却および/または加熱システム、沈着容器、反応室、真空室、流体および/または試薬混合システムおよび容器、移送システムおよび装置、コンピューターインターフェース、並びにロボットシステム/設備を含む設備が、制限なしに使用され得る。具体的には、当業者は、本明細書に記載の種々の流体、前駆体、および/または試薬の組合せ、混合、および/または適用が種々のまたは代替の様式で実施され得ることを認識するであろう。例えば、本明細書に記載の方法の商業的規模での適用には、高圧ポンプおよびポンプ装置、種々のおよび/もしくは多数の室、例えば排出室および/もしくは加圧室、ならびに/または、種々の流体、溶媒、試薬、および/もしくは前駆体の洗浄および/もしくは沈着、移送、移動、輸送、組合せ、混合、送出および/もしくは適用のためのシステムの使用が含まれ得る。本発明の方法を利用するためのまたは大量の廃棄物および化学成分を後処理するための、当業者が実施または実行するであろう関連用途および/または処理段階は本発明の範囲内であり、かつ本明細書に含まれる。いかなる限定も意図されていない。
【0078】
以下で、表面および基板へのタンタル金属膜の沈着を更に説明する。
【0079】
タンタル(Ta)金属膜の沈着
一つの態様では、低原子価状態のタンタル(Ta)金属前駆体である(In)Ta(CO)4を、選択した溶媒流体(例えばCO2)中で混合し、前駆体溶液を形成させる。次に、基板の沈着表面を、溶液の液体状態、近臨界(亜臨界)状態、または超臨界状態で、前駆体の分解温度、溶解温度、もしくは解離温度、またはそれより高い温度にて前駆体溶液に曝露する。次に、前駆体から放出されたタンタル(Ta)金属イオンは、沈着表面にタンタル(即ちTa0)金属膜として沈着する。還元試薬(例えば水素)を、例えばWatkins(米国特許第6,689,700号B1)が説明したように導入し、前駆体から沈着表面および/または基板へと放出されたタンタル金属の還元を誘導する。水素ガスは更に、望ましくない酸化反応を阻止するのにも役立つ。本態様では、水素は混合溶液内に化学量論的過剰に存在するが、これに限定されるわけではない。別の態様では、別の低原子価状態の(Ta)金属前駆体である(Cp)Ta(CO)4が用いられる。低原子価酸化状態の(Ta)金属前駆体、例えばInTa(CO)4またはCpTa(CO)4を用いて、純粋(Ta)金属膜を基板または沈着表面上に、例えば半導体ウェハーおよびチップの典型であるブランケット有機シリカガラス(OSG)基板上に、或いはこれからなる表面および層上に、或いは、例えば金属表面および層を含む他の表面および層上に沈着させることができる。一旦Ta(0)金属層が沈着されたら、例えば、TaN(拡散障壁として有用である)を形成するためのアンモニア(NH3)溶液中での適切な圧力でのアニーリングを含む当技術分野で公知の加工段階を非限定的に連結してもよい。他の態様では、本明細書にて更に説明するように、Ta(0)膜層をシード層として使用するか、例えばRu(0)またはCu(0)のような金属からなる二成分のまたは高次(例えば三成分、四成分など)の層をなす膜を形成するのに使用することができる。いかなる限定も意図されていない。例えば、当業者が本開示に鑑みて意図するであろう材料の製造および/または加工段階は全て、本発明の範囲内である。
【0080】
ここで、沈着表面および/または基板へのタンタル金属膜の沈着をもたらす金属前駆体の分解を説明する。
【0081】
[1]タンタル膜の沈着のための熱的放出
一つの態様では、本明細書に記載のタンタル前駆体からのタンタル金属イオンの放出は、熱源と組み合わせて熱的に達成される。熱源には、これらに限定されるわけではないが、例えば赤外線熱源、対流熱源、抵抗熱源、超音波熱源、力学的熱源、化学的熱源、流体熱源など、およびそれらの組合せが含まれる。熱源は、タンタル金属前駆体の分解、溶融、または解離に必要な熱を提供し、それによってタンタル金属イオンの溶液への放出を達成する。熱源は、該熱源に熱連通して配置された沈着表面または基板での金属膜の沈着に適した温度を更に提供する。一つの例示的な態様では、以下に更に詳しく説明する抵抗加熱要素(例えばワイヤ)を有するセラミック加熱ステージが熱源として用いられる。この加熱ステージは、例えば加圧容器内に取り付けられ、基板(例えば半導体基板)を取り付けるためおよびこれを加熱するために動作可能である。代替の態様では、熱源を基板の下または基板に隣接してまたは基板の上に配置することができ、それによって沈着表面に、例えば基板の表面に適切な温度プロフィールが生じ、或いは基板を垂直に貫く適切な温度勾配が生じ、あるいは、多層もしくは複合物の基板の選択した深さで適切な温度プロフィールが生じるが、これは、例えばその全体が本明細書に組み入れられる係属中の米国出願第11/096,346号に詳述するように、その内部表面での沈着を可能にする。
【0082】
当業者に認識されるように、本発明は、温度に起因する化学物質(例えば温度に反応して沈着物質を放出する前駆体)のみに限定されない。具体的には、沈着化学物質と放出化学物質は両方とも、圧力、触媒作用、濃度、速度(例えば分解速度および反応速度)、並びに、例えば動力学、拡散、熱力学など、またはそれらの組合せを含む他の関連したパラメーターのような要素によっても制御および/または影響される。加えて、沈着パラメーターとしての濃度制御は、例えば半導体チップ基板の修理および/またはその上に構築される装置の製造の際に、種々の物質の選択的沈着に影響する。例えば、先進微小電気機械システム(mems)構造、小型アンチレバー、ファン、および基板上の他の類似の機械装置などを含む極めて小さな装置の製造には、本発明のプロセスに応じて基板材料の選択的除去(例えば三次元的)および他の物質の選択的沈着(例えば補充)が必要でありうる。当業者が本開示に鑑みて意図または策定するであろう、基板および/または表面への物質の選択的沈着に適した条件をもたらすプロセス、様式、および/またはパラメーターは全て、本発明の範囲内である。いかなる制限もここでは意図されていない。
【0083】
[2]タンタル膜の沈着のための光分解的放出
別の態様では、当業者が理解するように、金属前駆体の分解は光分解的に、光分解光源と組み合わせて意図される光分解的用途に適した波長で起こり得るまたは更に制御され得る。光分解光源には、これらに限定されるわけではないが、例えば可視(VIS)光源、紫外(UV)光源、紫外/可視(UV/VIS)光源、マイクロ波光源、レーザー光源、フラッシュレーザー光源、赤外(IR)光源、高周波(RF)光源など、およびそれらの組合せが含まれる。いかなる限定も意図されていない。例えばBitterwolfらが(J. of Organometallic Chem., 557(1998) 77-92に)詳述するように、適切な波長において、前駆体のリガンドを選択的かつ光分解的に除去することができる。例えば、本明細書にて詳述する前駆体即ち[(Cp)Ta(CO)4]および/または[(In)Ta(CO)4]の光分解により、1個から3個の(CO)リガンドの選択的な除去または交換が起こり得る。光分解分野の当業者には明らかなように、選択される波長は、選択したリガンド、用いたリガンドに関する選択した光源(UV-VIS、IR等)からの最大吸光度、および関心対象の周波数範囲に、ある程度依存する。一般に、関心対象の周波数範囲で選択したリガンドの吸光度を最大化する波長が選択され、これは、リガンドを励起させ、例えば光分解的分解および/または熱的/光分解的分解の組合せを介して前駆体または金属錯体からエネルギー的にリガンドを除去するのに十分なエネルギーを該リガンドに与える。代替として、前駆体の分解を起こすために光源を使用してもよく、これにより前駆体からの金属の放出が起こる。このようにして構成金属の制御放出が達成され得、これにより選択した基板および/または表面上での制御沈着が提供される。一つの図示的な構成では、光分解光源は、沈着室の窓に対して直交して配置されたアーク灯であり、該窓を通して光源からの光が溶液に向けられ、金属前駆体の分解と、その後の表面または基板へのタンタル金属の放出および沈着とが起こる。当業者が本開示に鑑みて選択するであろう波長と光源は全て、本発明の範囲内である。
【0084】
[3]タンタル膜の沈着のための光分解的放出と熱的放出の組合せ
別の態様では、光分解を、先に本明細書にて説明した前駆体金属の熱的放出(即ち金属前駆体の熱的分解を介する)と共に相乗的に使用してもよい。例えば、適切な波長において、金属前駆体からの1つもしくは複数または特定のリガンドの光分解により、金属イオンの放出に必要な熱分解温度を低下させることができ、例えばそれによって、熱分解のみと比較して表面または基板への金属膜の沈着のためのプロセス要件が減少する。
【0085】
[4]タンタル膜の沈着のための光分解剤を介しての熱的放出および光分解置換
更に別の態様では、金属前駆体の入手容易な(facile)リガンド(L)は、適切な波長にて熱的におよび/または光分解的に除去され、次に適切な波長にて、第二のリガンドまたは他の置換基、例えばエチレン官能基と、前工程、中工程、または後工程のいずれにおいても光分解的に交換または置換され得る。交換に適したリガンド(L)は、これに限定されるわけではない。リガンドは、任意の光分解的に放出可能な、光分解的に交換可能な、または光分解的に高感度なリガンドの群から選択され得る。選択は、少なくとも一部分において、実施されるプロセスまたは用途に求められる沈着条件に依存する。例えば、光分解的に交換された前駆体リガンドは、タンタル含有前駆体に対して異なる放出温度を提供でき、これにより、放出並びにその後の選択した表面および/または基板への金属膜の沈着の両方を制御する機構が提供される。光分解は同様に他の条件および/または加工パラメーターをもたらす。当業者が本開示に鑑みて意図および/または実施するであろう種々のおよび異なる方法論(例えばLinehanら、J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, 5826-5827を参照)は、本明細書に包含される。いかなる限定も意図されていない。
【0086】
従ってリガンドの光分解的処理は、以下の少なくとも二つの様式で金属膜の形成に影響を与えることが予想され得る:(1)金属前駆体を、金属膜の沈着につながる熱分解を受けやすくする;または(2)1つまたは複数のリガンドの光分解的除去および1つまたは複数の第二のリガンドまたは置換基との交換または置換を提供し、これにより、例えば金属膜沈着のための異なる熱的要件または処理要件(例えばより低い温度)を提供する。
【0087】
ここで、本発明を以下の実施例を参照して更に説明する。
【0088】
実施例
以下の実施例は、本発明による種々の表面または基板へのタンタル金属膜の沈着について理解を深めることを促進することを意図している。実施例1は、表面および/または基板へのタンタル金属膜の沈着のための一般条件を詳述する。実施例2〜4は、二成分、三成分、および高次の層の複合物をもたらす、種々の基板へのタンタル金属膜の沈着を実証する実験を詳述する。実施例5は、例えば溝のような複雑な外形パターンを有する基板へのタンタル金属膜の沈着を実証する実験を説明する。実施例6は、本発明によるセラミック被覆基板および二層金属膜を備えた多層複合物の調製を詳述する。
【0089】
実施例1
タンタル金属膜の沈着
(概論)
実施例1は、表面および基板へのタンタル金属膜の沈着のための一般条件を詳述する。通常の試験では、シリコン(Si)ウェハークーポン(ベースとしての)と有機シランガラス(OSG)の表面層(例えば約200 nm)とからなるOSG基板は、本明細書にて先に説明した高圧容器内のセラミック加熱ステージに固定されるが、これに限定されるわけではない。高圧試験容器の沈着室は約80〜90mLの流体容積を収容できるが、室容積は限定されない。溶液中の前駆体濃度も限定されず、選択した溶媒内で飽和点まで希釈または濃縮され得る。
【0090】
通常の操作では、高圧容器を100psi(6.80気圧)水素で加圧し、二酸化炭素(CO2)で全圧1100psi(74.85気圧)まで加圧して、本明細書に記載の低温壁沈着モードまたは高温壁沈着モードで操作した。約25mg〜約80mgの固体タンタル金属前駆体を約30mL CO2溶媒流体中で予混合し、混合前駆体溶液として別個に貯蔵した。選択した溶媒中の混合金属前駆体の通常濃度は約2.3mMから約7.5mMまでの範囲であったが、これに限定されるわけではない。混合前駆体溶液を、基板を含む溶媒で充填した沈着室(セル)内に注入し、加熱ステージと組み合わせて加熱した。ステージ温度は、約300℃から約380℃までの範囲内であり、これにより約120℃の溶液温度が達成され、タンタルの放出および表面または基板へのタンタル金属膜の沈着が起こった。沈着室内の前駆体溶液と表面または基板との接触時間は約5分間であったが、これに限定されるわけではない。条件を表2に示す。
【0091】
(表2)基板上へのタンタル金属膜の沈着のための前駆体および溶液の条件

*有機シランガラス(OSG)
【0092】
表面および基板に沈着されるタンタル金属膜の厚さを決定する要素には、これらに限定されるわけではないが、例えば表面および/または基板の温度、溶液中の前駆体濃度、ならびに混合した前駆体との接触時間が含まれる。試験クーポンの後工程検査は、走査電子顕微鏡法(SEM)および透過電子顕微鏡法(TEM)を用いて行われた。沈着物質の純度は、X線光電子分光法(XPS)を用いて測定された。OSGクーポンの表面に沈着したタンタル(Ta)膜のXPSデータは、該膜が部分的にTa2O5から成っていることを示したが、これは、境界面での酸素に富むOSG表面への曝露、試料貯蔵の際のTa膜の酸化、および/または沈着溶媒中の酸化種の存在に帰結するものであり、基板膜のより厳格な取扱いおよび溶媒の純度向上によって解消されうる。
【0093】
実施例2
(二成分、三成分、および高次の層状複合物をもたらす、本発明のタンタル膜の沈着)[1]
実施例2は、二成分、三成分、および高次の層状複合物をもたらす種々の基板へのタンタル金属膜の沈着を詳述する。
【0094】
第一の実験では、二層金属膜と三成分複合物を以下のように調製した。タンタル金属膜を、二酸化炭素溶媒流体に導入されたタンタル金属前駆体[(In)Ta(CO)4]を用いて、本発明にしたがって有機シランガラス(OSG)基板上に沈着させた。条件は表3に列挙する。
【0095】
(表3)基板上へのタンタル金属膜の沈着のための前駆体および溶液の条件

*有機シランガラス(OSG)。左→右と列挙した構成要素は、基板の最内側の層または表面から始まり最外側の層または表面までを表す。
ΔΔ溶媒流体を酸化種(例えばO2)で十分に洗浄した場合は、アセトンは不要。
【0096】
OSG基板へのタンタル金属膜の沈着後に、得られた基板(即ち、OSG/CFD-Ta0)へのルテニウム層の沈着を行ったが、これには、本明細書に組み入れられる係属中の米国特許出願(第11/096,346号)に詳述する「ルテニウム沈着」(CFD-Ru0)プロセスおよび前駆体が用いられ、これにより二層金属膜(CFD-Ta0/CFD-Ru0)および三成分(OSG/CFD-Ta0/CFD-Ru0)複合物が得られた。XPS分析により、OSG基板の表面上でタンタル(Ta)金属およびルテニウム(Ru)金属両方の明確な膜層の存在を確認した。
【0097】
別の実験では、異なる二層金属膜および三成分複合物を以下のように調製した。上の実施例2に詳述したように、ルテニウム膜層を、CFDを介してOSG基板へと最初に沈着させた。その後、得られた複合物(即ち、OSG/Ru0)に、二酸化炭素溶媒流体に導入された混合前駆体溶液[(In)Ta(CO)4]を用いて、本発明にしたがってタンタル金属膜を沈着させ、二層金属膜(CFD-Ru0/CFD-Ta0)および三成分(OSG/CFD-Ru0/CFD-Ta0)複合物を得た。最後に追加のCFDルテニウム層を沈着させ、XPS分析によって証明されたように三層金属膜および多層(OSG/CFD-Ru0/CFD-Ta0/CFD-Ru0)複合物を得た。条件は表4に列挙する。高次の複合物も同様に調製され得る。
【0098】
(表4)基板上へのタンタル金属膜の沈着のための前駆体および溶液の条件

*有機シランガラス(OSG)。左→右と列挙した構成要素は、基板の最内側の層または表面から始まり最外側の層または表面までを表す。
ΔΔ溶媒流体を酸化種(例えばO2)で十分に洗浄した場合は、アセトンは不要。
【0099】
別の実験では、金属二層膜および三成分複合物を以下のように調製した。最初に、実施例2に詳述したようにルテニウム膜をOSG基板へと適用し、OSG/CFD-Ru0複合物を得た。表面で観察されたルテニウムのミラーは、ルテニウムの沈着が成功したことを示した。次に、得られたOSG/CFD-Ru0複合物上に、本明細書に記載のように二酸化炭素溶媒流体中でタンタル金属前駆体[(In)Ta(CO)4]を混合することにより前処理した前駆体溶液を用いて、本発明にしたがってタンタル金属膜を沈着させ、所望の二層金属膜(CFD-Ru0/CFD-Ta0)および三成分OSG/CFD-Ru0/CFD-Ta0複合物を得た。条件は表5に列挙する。
【0100】
(表5)タンタル金属膜の基板上への沈着のための前駆体および溶液の条件

*有機シランガラス(OSG)。左→右と列挙した構成要素は、基板の最内側の層または表面から始まり最外側の層または表面までを表す。
ΔΔ溶媒流体を酸化種(例えばO2)で十分に洗浄した場合は、アセトンは不要。
【0101】
図4は、本発明の別の態様による、本発明にしたがってOSG基板上のルテニウム層の上に沈着させたタンタル層を含む二層金属膜(CFD-Ru0/CFD-Ta0)(即ち、OSG/CFD-Ru0/CFD-Ta0)のXPS分析からのプロット(計数率対結合エネルギー対スパッタリングサイクル)である。XPSスキャンにより、Taに特有のスペクトルを調査し、これによって、還元Taおよび酸化Taに特徴的なピークを示した。よって、タンタル膜層の酸化状態を基板の深さの関数として示す。結果により、Ta金属(還元された)が膜内に存在することが示され、これにより基板表面への沈着の成功が実証される。図5は、本発明にしたがってOSG基板上のルテニウム層の上に沈着させたタンタル層を含む二層金属膜(CFD-Ru0/CFD-Ta0)のXPS分析からの、元素深さプロファイルプロット(原子濃度対スパッタ時間)である。膜層の原子組成が基板の表面上の深さの関数として図示されている。ここでは、実施した沈着段階の順序の結果として、Ta金属膜プロファイルの最大ピークが、ルテニウム(Ru)プロファイルの最大ピークに先行している。
【0102】
所望の多層複合物を形成するために表面または基板に種々の金属膜を選択的に適用できることが、結果により示されている。タンタル酸化物(Ta2O5)もデータセット内に認められる。非最適化範囲調査(non-optimized scoping studies)の結果、多少のひび割れ、または微細な亀裂もTa膜内に認められたが、これは、収縮、温度の揺らぎ、および/または溶媒流体の作用といった予防可能な応力に起因する。図中で後続する酸素およびシリコンに関するプロファイルは、OSG基板内にこれらの元素が存在することに起因する。
【0103】
実施例3
(二成分、三成分、および高次の層状複合物をもたらす、本発明のタンタル膜の沈着)[2]
実施例3では、例えばPVD、スパッタ沈着、ALD、およびCVDのような当技術分野で公知の種々の沈着法と組み合わせて二成分、三成分、および高次の層状複合物を作製することに関する、本発明の沈着法の適合性を試験する実験を詳述する。
【0104】
第一の実験では、三層金属膜と多層複合物を以下のように調製した。従来のスパッタ沈着(即ちPVD)によりルテニウム面で被覆したOSG基板を、沈着容器内に置いた(即ち、OSG/PVD-Ru0)。次に、本明細書に記載のように二酸化炭素溶媒流体中に導入されたタンタル金属前駆体[(In)Ta(CO)4]溶液を用いて、タンタル金属膜を、本発明にしたがってルテニウム表面に沈着させ、二層金属(PVD-Ru0/CFD-Ta0)膜と多層(例えば三層)複合物(OSG/PVD-Ru0/CFD-Ta0)を得た。次に、実施例2に詳述したように、ルテニウム膜(即ちCFD-Ru0)を、タンタル金属膜の酸化を阻止する「キャップ」層として沈着させ、三層金属膜(PVD-Ru0/CFD-Ta0/CFD-Ru0)および多層(OSG/PVD-Ru0/CFD-Ta0/CFD-Ru0)複合物を得た。条件は表6に列挙する。高次の膜および/または複合物は、同様に調製可能である。更に、本明細書に記載のプロセスを用いて、種々の厚さの「キャップ」層を適用してもよい。このように、いかなる限定も意図されていない。
【0105】
(表6)基板上へのタンタル金属膜の沈着のための前駆体および溶液の条件

*有機シランガラス(OSG)。左→右と列挙した構成要素は、基板の最内側の層または表面から始まり最外側の層または表面までを表す。
ΔΔ溶媒流体を酸化種(例えばO2)で十分に洗浄した場合は、アセトンは不要。
【0106】
図6は、三層(PVD-Ru0/CFD-Ta0/CFD-Ru0)金属膜を含む得られた複合物の断面の透過型電子顕微鏡写真(TEM)である。この図において、本発明にしたがって沈着させたタンタル膜層(約30Å)は、実験で使用した沈着段階と一致して、第一のPVDルテニウム層と次の(CFD-Ru0)ルテニウム層の間に位置している。分析の前に一層のクロム(Cr)金属をスパッタ沈着させて、沈着層を安定化し、層の厚さを識別した。本発明のプロセスが、例えば種々の複合物の製造に関する当技術分野で公知の沈着法に適合するということが、結果により示されている。本発明にしたがって沈着させた膜についてTEMで観察された濃淡および/または色の違いは、個別の層の種々の特性を質的に評価可能であることを更に示している。例えば、個別のTEMスキャンにおいてタンタル金属膜について観察された色および/または濃淡の違いは、同一物質の層の色が暗ければ暗いほど電子密度(密度)がより大きいことを示唆している。これらの違いは、例えば製造の際に、沈着した金属膜のプロセスパラメーターの制御および/または評価を提供し得る。いかなる限定も意図されていない。
【0107】
別の実験では、二層金属膜と三成分複合物を以下のように調製した。最初に、実施例3を参照して本明細書に記載のように前処理されたPVDルテニウム表面を有するOSG基板を、沈着容器中に置いた。二酸化炭素溶媒流体に導入されたタンタル金属前駆体[(In)Ta(CO)4]溶液を用いて、タンタル金属膜を、本発明にしたがってPVDルテニウム表面に沈着させ、(PVD-Ru0/CFD-Ta0)二層膜と三成分複合物(OSG/PVD-Ru0/CFD-Ta0)を得た。条件は表7に列挙する。
【0108】
(表7)基板上へのタンタル金属膜の沈着のための前駆体および溶液の条件

*有機シランガラス(OSG)。左→右と列挙した構成要素は、基板の最内側の層または表面から始まり最外側の層または表面までを表す。
【0109】
図7は、本発明の別の態様による、本発明にしたがってOSG基板上のPVDルテニウム層の上に沈着させたタンタル層を含む二層金属膜(PVD-Ru0/CFD-Ta0)の、XPS分析からのプロット(計数率対結合エネルギー対スパッタリングサイクル)である。タンタル膜層の酸化状態が、基板上のタンタルの深さの関数として、図示されている。本発明にしたがって、タンタル膜および層を、混合前駆体溶液から、液体状態、近臨界状態、または超臨界状態で沈着させた。Ta金属(還元された)が膜内に存在していることが結果により示され、これは、基板表面への沈着の成功を示唆している。この図では、タンタル酸化物(Ta2O5)の存在に対応するピークも認められる。
【0110】
図8は、図7の深さプロファイルスパッタリングサイクル2および5それぞれの高分解能Ta 4f XPSピークデータを示し、酸化物形態のタンタルから還元金属膜内のタンタルへの移行を示している。図9は、対応する深さプロファイルデータ(原子濃度対スパッタ時間)を示している。ここでは、Ta金属膜プロファイルの最大ピークがルテニウム(Ru)プロファイルの最大ピークに先行していて、これは実施された沈着段階の順序と一致する。
【0111】
タンタル金属膜が表面または基板に選択的に適用され得、したがって所望の多層複合物が得られることが、結果により再度示されている。図中で後続する酸素およびシリコンに関するプロファイルは、ベースOSG基板内にこれらの元素が存在することに起因する。
【0112】
実施例4
(二成分、三成分、および高次の層状複合物をもたらす、本発明のタンタル膜の沈着)[3]
実施例4は、当技術分野で公知の沈着法(例えばPVDまたはCVD)と組み合わせた本発明のタンタル金属膜のおよび他の金属(例えばCu)の沈着を示す実験を詳述し、これは異なる多層膜からなる複合物構造をもたらす。
【0113】
一つの態様では、実施例3に記載のPVD-ルテニウム被覆OSG基板(OSG/PVD-Ru0)に、本発明に従ってタンタル金属膜を沈着させた。被覆基板を加熱ステージ上に置き、高圧容器に導入した。タンタル膜の沈着は、以下のように達成された。容器を100psi(6.80気圧)水素で加圧し、溶媒流体としての二酸化炭素(CO2)で全圧1100psi(74.85気圧)まで加圧された。CO2溶媒中で予混合した約25mgから約80mgまでのタンタル金属前駆体(Cp)Ta(CO)4を容器に導入して、混合前駆体溶液を形成させた。条件は表8に列挙する。
【0114】
(表8)タンタル金属膜の基板上への沈着のための前駆体および溶液の条件

*有機シランガラス(OSG)。左→右と列挙した構成要素は、基板の最内側の層または表面から始まり最外側の層または表面までを表す。
ΔCO2中で前処理された0.25mL、0.50mL、または1.0mLの予混合液体前駆体の注入後の、沈着時の溶媒流体の温度。
【0115】
次に、係属中の米国特許出願(第11/096,346号)に説明されているように、銅金属膜を、得られた(OSG/PVD-Ru0/CFD-Ta0)複合物に沈着させ、三層金属膜と多層(OSG/PVD-Ru0/CFD-Ta0/CFD-Cu0)複合物を得た。高次の膜も同様に構築できる。図10は、XPS深さプロファイルデータ(原子濃度対スパッタ深さ)を示し、これにより、得られた(OSG/PVD-Ru0/CFD-Ta0/CFD-Cu0)複合物の膜層の組成が示される。基板への三層金属膜の沈着と関連する、還元銅(Cu0)金属、還元タンタル(Ta0)金属、および還元ルテニウム(Ru0)金属全ての存在が、結果により示されている。実際の適用においては、例えば、露出した金属膜もしくは表面層を酸化から保護するために、または、これらに限定されるわけではないが、例えば半導体製造で使用するシード層の沈着を含む他の用途のために、種々の金属(例えばTa上のCu、またはTa上のRu)の沈着を用いることができる。本明細書にて実証したように、本発明は、例えば多層複合物および構造の産生用の従来の沈着法と共に使用するのに適している。いかなる限定も意図されていない。
【0116】
実施例5
(多層外形複合物をもたらす、パターン表面および基板への本発明のタンタル膜の沈着)
実施例5は、例えば溝のような複雑な外形パターンを有する基板に対する本発明の沈着法の適応性を実証する実験を説明する。従来のPVD-Ta層(125Å)と、従来のPVD-Ru層(50Å)と、従来のPVD-TaN層(125Å)とで被覆した外形溝を有するOSG基板を加圧容器内に置いた。図11a〜11bは、それぞれ200 nmおよび500 nmの二つの異なる分解能での、タンタルの沈着前の外形基板(即ち、OSG-溝/PVD-Ta0/PVD-Ru0/PVD-TaN)の走査型電子顕微鏡写真(SEM)を示している。次に、溶媒流体中で予混合され圧力容器に導入されたタンタル金属前駆体[(In)Ta(CO4)]を用いて、タンタル金属膜を、本発明にしたがって基板上の被覆外形溝の上に沈着させ、構造化複合物、即ち(OSG-溝/PVD-Ta0/PVD-Ru0/PVD-TaN/CFD-Ta0)を得た。次に、ルテニウム膜を実施例2に詳述したように沈着させ、多層金属膜および外形複合物、即ち(OSG-溝/PVD-Ta0/PVD-Ru0/PVD-TaN/CFD-Ta0/CFD-Ru0)を得た。条件は表9に列挙する。
【0117】
(表9)タンタル金属膜の基板上への沈着のための前駆体および溶液の条件

*有機シランガラス(OSG)。左→右と列挙した構成要素は、基板の最内側の層または表面から始まり最外側の層または表面までを表す。
ΔΔ溶媒流体を酸化種(例えばO2)で十分に洗浄した場合は、アセトンは不要。
【0118】
図11c〜11dは、本発明の別の態様による、それぞれ200 nmおよび500 nmの、得られた外形複合物(OSG-溝/PVD-Ta0/PVD-Ru0/PVD-TaN/CFD-Ta0/CFD-Ru0)のSEMを示し、そこに沈着した金属膜を示している。現在のコントラスト(contrast)では、本発明にしたがって沈着させたタンタル層(即ちCFD-Ta0)は、次に沈着させたルテニウム層(CFD-Ru0)から識別されない。タンタル沈着(即ちCFD-Ta0)およびルテニウム沈着(即ちCFD-Ru0)の前後の基板層の厚さにより、多層化した外形複合物における金属膜の沈着の成功が確認される。
【0119】
複雑な外形パターンと種々の多層膜を有する複合物構造を製造するために本発明のプロセスと当技術分野で公知の従来の沈着プロセスとを組み合わせる可能性が、結果により実証されている。
【0120】
実施例6
(多層複合物をもたらす、セラミック被覆基板への本発明のタンタル膜の沈着)
実施例6では、別の多層複合物をもたらす、本発明の沈着法と組み合わせたセラミック被覆基板の調製を詳述する。本発明にしたがって、タンタル金属膜を、例えば炭化ケイ素(SiC)のようなセラミックキャップ層を含むOSG基板に沈着させ、OSG/SiC/CFD-Ta0複合物を形成させた。次に銅金属膜を、実施例5に詳述したようにタンタル層上に沈着させ、二層金属膜(即ちCFD-Ta0/CFD-Cu0)および多層複合物(即ちOSG/SiC/CFD-Ta0/CFD-Cu0)を得た。図12は、XPS深さプロファイルデータ(原子濃度対スパッタ深さ)を示し、これにより、得られた(OSG/SiC/CFD-Ta0/CFD-Cu0)複合物の種々の層の組成が示されている。結果は、使用した沈着順序と一致し、基板に沈着した二層金属膜に会合した還元Cu金属と還元Ta金属の両方、並びにその下の、SiCキャップ層に会合した炭素(C)とケイ素(Si)、およびOSG酸化物基板に会合した酸素の存在を示している。
【0121】
種々の金属(例えばTa上のCu、またはTa上のRu)の沈着およびキャップ層(例えばTa上のSiC)が、例えば露出した金属膜を酸化に対して保護するため、またはこれらに限定されるわけではないが、例えば半導体製造で使用するシード層(金属膜)の沈着を含む他の用途のために使用可能である。本明細書に記載のように、本発明は、例えば多層複合物および構造の産生において従来の沈着法と共に使用するのに適している。いかなる限定も意図されていない。
【0122】
本明細書に示すように、タンタル金属膜の沈着のための本発明の方法は、これらに限定されるわけではないが、例えば多層膜および複合物を産生するためのスパッタリング、PVD、CVD、および同様の沈着法を含む当技術分野で公知の沈着プロセスと組み合わせて使用され得る。
【0123】
結び
本発明による選択的沈着は、基板、例えば半導体チップの製造および/または作製、ならびに、これらに限定されるわけではないが、例えば複合物製造を含む関連用途に関連した、表面加工の充実および/または代替を提供するものである。本明細書に記載した金属膜沈着は、低原子価状態のタンタル前駆体の使用により促進される。種々の液体、近臨界、および超臨界流体と組み合わせて使用するのに適した条件の下で環元純金属(pure reduced metal)タンタルの薄膜を容易に沈着させることができることには、当業者に公知の金属膜沈着プロセスにおける無数の潜在的な用途がある。本明細書に記載のように、例えば本発明は、例えばシリコンウェハーまたは半導体チップの製造において障壁膜として有用な種々の金属膜層を含む複合物の産生における使用のための、物質の選択的沈着を包含する。本発明はまた、例えば被覆および充填用の複雑な表面を含む種々の表面へのタンタル金属膜の沈着と組み合わせても有用である。本発明の沈着法は、これらに限定されるわけではないが、例えば化学機械平坦化(CMP)を含むプロセスと共にまたはその代替として、更に使用され得る。いかなる制限も、ここでは意図されていない。
【0124】
本明細書にて方法、装置、システム、およびそれらの態様を参照して本発明を説明しているが、本発明がそれらに限定されず、かつ本発明の趣旨と範囲から逸脱することなく本発明における形態および詳細の種々の変更を行いうることが、理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択した表面上にタンタルを沈着させるための方法であって、タンタル含有前駆体溶液からのタンタルの放出および前記タンタルの前記選択した表面上への沈着を起こす事前選択した条件下で、前記選択した表面を前記タンタル含有前駆体溶液に曝露する段階を特徴とする、方法。
【請求項2】
前記選択した表面を事前選択したタンタル放出温度かそれを上回る温度まで加熱すると、タンタルの放出が起こる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記タンタル含有前駆体溶液が、[(Cp)(Ta)(CO)4-N(LN)]の形態の化学物質を含み、式中、(Cp)がシクロペンタジエニル環または最大5個のR基成分で官能基化されたシクロペンタジエニル環であり;(In)がインデニル多環式炭化水素または最大7個のR基成分を含む置換インデニル多環式炭化水素であり;(CO)が(4-N)個のカルボニルリガンドであり、ここでNは0から4までの数であり;かつ、(LN)が0から4までの数(N)個の同一または異なるリガンド(L)である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記タンタル含有前駆体溶液が、[(In)(Ta)(CO)4-N(LN)]の形態の化学物質を含み、式中、(Cp)がシクロペンタジエニル環または最大5個のR基成分で官能基化されたシクロペンタジエニル環であり;(In)がインデニル多環式炭化水素または最大7個のR基成分を含む置換インデニル多環式炭化水素であり;(CO)が(4-N)個のカルボニルリガンドであり、ここでNは0から4までの数であり;(LN)が0から4までの数(N)個の同一または異なるリガンド(L)である、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記R基成分が、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
前記タンタル含有前駆体が、CpTa(CO)4およびInTa(CO)4からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記タンタル含有前駆体溶液が、溶媒内で混合したタンタル含有前駆体溶質を含み、前記溶媒が液体であるか、または、二酸化炭素、エタン、エチレン、プロパン、ブタン、六フッ化硫黄、アンモニア、およびそれらの組合せからなる群より選択される圧縮性気体である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記溶媒が、約830psi(56.48気圧)と約10,000psi(680.46気圧)の間の圧力の二酸化炭素を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記溶媒が、ベンゼン、アルカノール、およびそれらの組合せからなる群より選択される液体である、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記タンタル含有前駆体溶液を還元剤に曝露して、前記タンタル含有前駆体溶液からのタンタルの放出を起こす段階を更に含む、請求項2記載の方法。
【請求項11】
前記タンタル含有前駆体溶液からのタンタルの放出が、光分解光源(photolytic source)を用いる1個または複数の感光リガンドの除去を含む、請求項1、2、または10記載の方法。
【請求項12】
前記光分解光源が、可視(VIS)光源、紫外(UV)光源、紫外/可視(UV/VIS)光源、マイクロ波光源、レーザー光源、フラッシュレーザー光源、赤外(IR)光源、高周波(RF)光源、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項11記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図11c】
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【図11d】
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【図12】
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【公表番号】特表2010−501728(P2010−501728A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525730(P2009−525730)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/076386
【国際公開番号】WO2008/024750
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(506283798)バッテル メモリアル インスティチュート (19)
【Fターム(参考)】