説明

タンデム印刷装置

【課題】コストを増大させることなく用紙無しエラー発生時の給紙トレイ切り替え処理待ち時間発生による印刷パフォーマンス低下を防止するタンデム印刷装置を提供する。
【解決手段】フロント印刷装置101と、リア印刷装置102と、フロント印刷装置101に給紙手段から用紙が供給されるとページごとにカウント数をインクリメントし、リア印刷装置102で用紙の印刷が完了するとページごとにカウント数をデクリメントする残用紙カウンタとを備え、複数ページの印刷動作中に用紙無しエラーが発生するとき(S210)、フロント印刷制御装置104はリカバリー処理を実行し(S211)、リア印刷制御装置105は前記残用紙カウンタが“0”になった時点でリカバリー処理を実行し(S212)、ついでフロント印刷制御装置104はリア印刷制御装置105からリカバリー処理完了通知を受けると、前記給紙手段において給紙可能な給紙トレイへの切替えを行う(S213)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の印刷装置が縦列に配置されたタンデム印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タンデム構成の印刷装置(以下、タンデム印刷装置)は、2台の印刷装置をフロント印刷装置、リア印刷装置として縦列に配置しての高速印刷、あるいはこのように縦列に配置した2台の印刷装置で各々違う色のトナーを使用してのスポットカラー印刷用途で使用されている。
【0003】
このようなタンデム印刷装置においては、印刷中に用紙ジャム等の印刷結果を保証できないエラーが発生した場合に、エラーリカバリー印刷を行うことが重要である。例えば、引用文献1では、印刷に使用したページイメージデータを所定長さ分メモリバッファに保存しておき、エラーが発生したときは、エラー回復後に復旧作業により確定された用紙経路長に基づいてエラーリカバリーを行う範囲を決定し、自動的にエラーリカバリー印刷を実行する発明が提案されている。
【0004】
また、2台の印刷装置により構成されるタンデム印刷装置においては、印刷業務中に発生した用紙無しエラー情報は給紙トレイが接続された印刷装置に報告されるのが一般的であり、そのため、フロント印刷装置からリア印刷装置に用紙切れエラー情報を通知してから給紙トレイの自動切換えを行う、又各々の印刷制御装置にはホストシステムから別々の印刷ページが送られて来るようになっている。
【0005】
またこのとき、タンデム印刷装置においてフロント印刷装置とリア印刷装置で印刷する内容は違うことから給紙トレイ自動切換え後の印刷実行順を保証するために、用紙無しエラー発生時に両方の印刷制御装置において実行する処理(リカバリー処理)は同じタイミングで実行する必要があることが既に知られている。
【0006】
また、特許文献2には、給紙と排紙のカウントから残用紙の把握を行いパネル等に表示させることでジャム等の復旧作業軽減を図ること、用紙残量検知機構により、所定の用紙残量になった時に給紙トレイに用紙補充させることで用紙無しのエラーによるダウンタイムを防止すること、が記載されている。
【0007】
また、特許文献3には、給紙リミットレスの生産性向上という課題について、用紙残量検知機構を利用して、用紙トレイの切り換え時のタイムラグの発生を防止する構成が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、通常のタンデム印刷装置では、用紙無しエラーが発生した時に各印刷装置における状態が異なるため、2台の印刷装置で給紙トレイ自動切換えのためのリカバリー処理を同じタイミングで実行するためには、用紙無しエラー発生時にタンデム印刷装置内の用紙が残ってない状態(用紙無しエラー発生前のページが全て排紙完了)まで待つのが一般的である。タンデム印刷装置の搬送パスに存在する用紙全てが排紙完了するまでの時間、給紙トレイ自動切換えの処理を待たせることは、その間印刷動作が行われてないことになるためパフォーマンスが低下する。色々な後処理装置が付属するような大規模なタンデム印刷装置においては、その後処理装置分の搬送パス長増大による待ち時間も必要となるためパフォーマンス低下がより顕著となるという今までの問題があった。
【0009】
例えば、特許文献1に記載の構成では、用紙無しエラー等の給紙トレイを切り替えての印刷継続可能なエラー時の印刷パフォーマンス低下という問題は解消できていない。
また、特許文献2に記載の構成では、排紙カウンタと給紙カウンタにより確かに搬送パスにおける残用紙を検出できるが、排紙カウンタを利用することから搬送パス内の用紙が排紙されないと給紙トレイの切り替えが行われないことになり用紙無しエラー等の給紙トレイを切り替えての印刷継続可能なエラー時の印刷パフォーマンス低下という問題は解決できない。
また、特許文献3に記載の構成では、用紙残量検知機構により用紙無しエラーを検知して給紙トレイを切り替えることは可能であるが、各給紙トレイに用紙残量検知機構を装着することでタンデム装置のコスト増大という問題が発生する。これは給紙トレイを多数持つシステムにおいては問題がより顕著となる。又、用紙残量検知機構はセンサ等により用紙残量が少なくなった時に警告することで給紙トレイ切り替えを行わせることを目的とすることから、実際には用紙無しエラーになっていないのに給紙トレイを切り替えるので、数枚の印刷用紙が残った状態となる。この給紙トレイを使用してユーザーが違う種類の用紙を使った業務を行う場合、残っていた用紙の上に誤って違う業務の用紙を積み重ねてしまい結果として印刷結果が期待したものと違うものになる問題が生ずる怖れもある。
【0010】
本発明は、以上の従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、コストを増大させることなく用紙無しエラー発生時の給紙トレイ切り替え処理待ち時間発生による印刷パフォーマンス低下を防止するタンデム印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために提供する本発明は、以下の通りである。なお、カッコ内に本発明を実施するための形態において対応する部位及び符号等を示す。
〔1〕 複数の給紙トレイ(給紙トレイ106a)を有する給紙手段(給紙手段106)と、ホストシステムから受信した印刷データに基づいて、前記給紙手段の給紙トレイの1つから供給される用紙を順次印刷するように縦列に配置される複数の印刷装置(フロント印刷装置101,リア印刷装置102)と、前記複数の印刷装置それぞれに設けられ、お互いに情報の通信が可能に接続される複数の印刷制御装置(フロント印刷制御装置104,リア印刷制御装置105)と、前記複数の印刷装置のうち、第1段の印刷装置に前記給紙手段から用紙が供給されるとページごとにカウント数をインクリメントし、最終段の印刷装置で用紙の印刷が完了するとページごとにカウント数をデクリメントする残用紙カウンタ(残用紙カウンタ109)と、を備え、複数ページ数の用紙の印刷要求に対応する印刷動作中に、前記給紙手段において用紙を供給していた給紙トレイの用紙がなくなり前記第1段の印刷装置に用紙が供給されなくなると(S210)、前記第1段の印刷装置に対応する第1段の印刷制御装置はリカバリー処理を実行し(S211)、残りの印刷制御装置は前記残用紙カウンタが“0”になった時点でリカバリー処理を実行し(S212)、ついで前記第1段の印刷制御装置は前記残りの印刷制御装置すべてからリカバリー処理完了通知を受けると、前記給紙手段において給紙可能な給紙トレイへの切替えを行う(S213)ことを特徴とするタンデム印刷装置(タンデム印刷装置100、図1,図2)。
〔2〕 前記複数の印刷制御装置のうち、最終段の印刷制御装置が前記残用紙カウンタを有することを特徴とする前記〔1〕に記載のタンデム印刷装置。
〔3〕 前記最終段の印刷装置で印刷が完了した用紙を排出する排紙機構(排紙機構107)を備えることを特徴とする前記〔1〕または〔2〕に記載のタンデム印刷装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明のタンデム印刷装置によれば、リア印刷制御装置に残用紙カウンタを設け、さらに用紙無しエラー発生時の給紙トレイ切替えシーケンスに簡単なアルゴリズムを追加することにより、コストの増大を抑えつつ、用紙無しエラー時の給紙トレイ切り替えに関わる待ち時間を最小にすることができ、印刷パフォーマンス低下を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るタンデム印刷装置の構成を示す断面概略図である。
【図2】本発明に係るタンデム印刷装置における用紙無しエラー発生時の給紙トレイ切替えシーケンス図である。
【図3】従来のタンデム印刷装置の構成を示す断面概略図である。
【図4】従来のタンデム印刷装置における用紙無しエラー発生時の給紙トレイ切替えシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、従来のタンデム印刷装置について説明する。
図3は、従来のタンデム印刷装置の構成を示す断面概略図である。
タンデム印刷装置900は、図3に示すように、複数の給紙トレイ106aを有する給紙手段106と、給紙手段106の給紙トレイ106aの1つから供給される用紙を印刷する第1印刷装置であるフロント印刷装置101と、フロント印刷装置101から搬送される用紙を印刷する第2印刷装置であるリア印刷装置102と、フロント印刷装置101からリア印刷装置102への用紙搬送のバッファとなる中間搬送装置103と、フロント印刷装置101の印刷動作を制御する第1印刷制御部であるフロント印刷制御装置104と、リア印刷装置102の印刷動作を制御する第2印刷制御部であるリア印刷制御装置105と、リア印刷装置102で印刷された用紙が排出される排紙機構107と、を備える。また、フロント印刷制御装置104とリア印刷制御装置105は、シリアル通信パス108で相互に通信可能に接続されている。なお、中間搬送装置は用紙反転部を有することでも構わない。
【0015】
タンデム印刷装置900では、給紙手段106から給紙された用紙はフロント印刷装置101、リア印刷装置102の順番で印刷が行われ、フロント印刷装置101とリア印刷装置102で印刷するページ数は同じとなる。
【0016】
このような構成のタンデム印刷装置900において、用紙無しエラーが発生すると、図4に示すようなシーケンスに基づいて給紙トレイ切替えが行われる。なお、ここではタンデム印刷装置において3ページ目が用紙無しエラーとなる状態を想定する。
まず、ホストシステムから受信した印刷データに基づいて、フロント印刷制御装置104からフロント印刷装置101に対して印刷要求指示を行う(S901)。また、同時にフロント印刷制御装置104は所定の給紙トレイ106aからフロント印刷装置101へ用紙を供給するように給紙手段106を制御する。
フロント印刷装置101は、給紙手段106から用紙が供給されると、1ページ目の用紙の供給開始の信号をフロント印刷制御装置104に送信し(S902)、前記印刷要求指示に基づいた印刷を実行する。
ついで、フロント印刷制御装置104は、次のページ(2ページ)の印刷要求指示をフロント印刷装置101に発行する(S903)。給紙手段106から1ページ目と同様に用紙が供給され、フロント印刷装置101は、2ページ目の用紙の供給開始の信号をフロント印刷制御装置104に送信し(S904)、前記印刷要求指示に基づいた印刷を実行する。
【0017】
なお、フロント印刷装置101側におけるステップS901〜S904の制御と並行して、リア印刷制御装置105はホストシステムから受信した印刷データに基づいて、リア印刷装置102にページごとの印刷要求指示を順次発行しており、リア印刷装置102ではフロント印刷装置101で印刷された用紙が搬送されてくると、そのページ順に印刷を実行する。
【0018】
ついで、フロント印刷制御装置104は、次のページ(3ページ)の印刷要求指示をフロント印刷装置101に発行する(S905)。ここで、それまで用紙を供給していた給紙トレイ106aでは用紙がなくなったため給紙手段106からフロント印刷装置101に用紙が供給されず、フロント印刷装置101は用紙無しエラーの信号をフロント印刷制御装置104に送信する(S906)。
フロント印刷制御装置104は、用紙無しエラーの信号をリア印刷制御装置105に送信し(S907)、フロント印刷制御装置104及びリア印刷制御装置105は、装置内の印刷中の用紙がすべて排出されるまで待機状態となる。
【0019】
装置内の最終ページ(ここでは2ページ目)の用紙が排紙機構107から排出されると、排紙完了の検知信号がリア印刷制御装置105及びフロント印刷制御装置104に送信される(S908)。あるいは、用紙無しエラー信号を受けてから、装置内の最終ページ(ここでは2ページ目)の用紙が排紙機構107から排出されるために十分な時間だけフロント印刷制御装置104及びリア印刷制御装置105が待機するようにしてもよい。
排紙完了の検知信号の受信後または所定時間待機後に、フロント印刷制御装置104及びリア印刷制御装置105はそれぞれリカバリー処理を実行する。
【0020】
リア印刷制御装置105は、リカバリー処理実行後に、フロント印刷制御装置104に給紙トレイ切替え要求を発行し(S909)、フロント印刷制御装置104は給紙手段106において用紙が存在する給紙トレイ106aに切替える。
【0021】
ついで、フロント印刷制御装置104は、次のページ(3ページ)の印刷要求指示をフロント印刷装置101に発行する(S910)。給紙手段106の切替えられた給紙トレイ106aから用紙が供給され、フロント印刷装置101は、3ページ目の用紙の供給開始の信号をフロント印刷制御装置104に送信し(S911)、前記印刷要求指示に基づいた印刷を実行する。また、リア印刷制御装置105からも次のページ(3ページ)の印刷要求指示をリア印刷装置102に発行し、リア印刷装置102において印刷が実行される。
【0022】
このように、従来の2つの印刷装置が非同期に印刷を実施するようなタンデム印刷装置900では、用紙無しエラーが発生した時に各印刷装置における状態が異なるため、用紙無しエラー発生前のページが全て排紙されタンデム印刷装置内の用紙が残ってない状態となるまで待機し(用紙の排紙完了に同期させて)、その後に2台の印刷装置で給紙トレイ自動切換えのためのリカバリー処理を同じタイミングで実行し、リカバリー処理後に印刷再開させていた。しかしながら、タンデム印刷装置の搬送パスに存在する用紙全てが排紙完了するまで待機するということは、その間印刷動作が行われてないということであり、印刷装置としてのパフォーマンスが著しく低下することになり問題であった。
発明者は、このような印刷装置としてのパフォーマンス低下を改善すべく鋭意検討を行い、本発明を成すに至った。以下、本発明のタンデム印刷装置について説明する。
【0023】
〔実施例〕
すなわち、本発明に係るタンデム印刷装置は、複数の給紙トレイを有する給紙手段と、ホストシステムから受信した印刷データに基づいて、前記給紙手段の給紙トレイの1つから供給される用紙を順次印刷するように縦列に配置される複数の印刷装置と、前記複数の印刷装置それぞれに設けられ、お互いに情報の通信が可能に接続される複数の印刷制御装置と、前記複数の印刷装置のうち、第1段の印刷装置に前記給紙手段から用紙が供給されるとページごとにカウント数をインクリメントし、最終段の印刷装置で用紙の印刷が完了するとページごとにカウント数をデクリメントする残用紙カウンタと、を備え、複数ページ数の用紙の印刷要求に対応する印刷動作中に、前記給紙手段において用紙を供給していた給紙トレイの用紙がなくなり前記第1段の印刷装置に用紙が供給されなくなると、前記第1段の印刷装置に対応する第1段の印刷制御装置はリカバリー処理を実行し、残りの印刷制御装置は前記残用紙カウンタが0になった時点でリカバリー処理を実行し、ついで前記第1段の印刷制御装置は前記残りの印刷制御装置すべてからリカバリー処理完了通知を受けると、前記給紙手段において給紙可能な給紙トレイへの切替えを行うことを特徴とするものである。
【0024】
図1は、2台の印刷装置からなる本発明のタンデム印刷装置の構成を示す断面概略図である。
タンデム印刷装置100は、図1に示すように、複数の給紙トレイ106aを有する給紙手段106と、給紙手段106の給紙トレイ106aの1つから供給される用紙を印刷する第1印刷装置であるフロント印刷装置101と、フロント印刷装置101から搬送される用紙を印刷する第2印刷装置であるリア印刷装置102と、フロント印刷装置101からリア印刷装置102への用紙搬送のバッファとなる中間搬送装置103と、フロント印刷装置101の印刷動作を制御する第1印刷制御部であるフロント印刷制御装置104と、リア印刷装置102の印刷動作を制御する第2印刷制御部であるリア印刷制御装置105と、リア印刷装置102で印刷された用紙が排出される排紙機構107と、を備える。
【0025】
ここで、給紙手段106は、フロント印刷制御装置104の制御により、複数の給紙トレイ106aのうち、1つの給紙トレイ106aから用紙をフロント印刷装置101に供給するものである。
【0026】
また、給紙手段106、フロント印刷装置101、中間搬送装置103、リア印刷装置102、排紙機構107の順番で縦列に配置されており、給紙手段106の給紙トレイ106aから供給される用紙は、これらの装置を順に搬送されることにより、2回の印刷が施されるようになっている。
【0027】
フロント印刷制御装置104は、ホストシステム(不図示)から受信した印刷データに基づいて、フロント印刷装置101の印刷制御を行うものである。また、フロント印刷制御装置104は、給紙手段106の制御、例えばフロント印刷装置101への用紙供給制御、給紙トレイ106aの切り替えを行う。
【0028】
リア印刷制御装置105は、ホストシステムから受信した印刷データに基づいて、リア印刷装置102の印刷制御を行うものである。このとき、印刷データはホストシステムから直接受信してもよいし、フロント印刷制御装置104を経由して受信してもよい。
【0029】
また、リア印刷制御装置105は、タンデム印刷装置100内で印刷中の用紙の枚数をカウントする残用紙カウンタ109を有する。残用紙カウンタ109は、フロント印刷装置101に給紙手段106から用紙が供給されるとページごとにカウント数をインクリメント(1つアップ)し、リア印刷装置102で用紙の印刷が完了するとページごとにカウント数をデクリメント(1つダウン)する計数機能を有する。
【0030】
また、フロント印刷制御装置104とリア印刷制御装置105は、シリアル通信パス108で相互に通信可能に接続されており、例えばフロント印刷装置101で対象ページの用紙の給紙開始の情報(給紙開始情報)や給紙手段106においてそれまで給紙していた給紙トレイ106aの用紙がなくなりフロント印刷装置101への用紙の供給がなくなった情報(用紙無しエラー情報)などの情報がフロント印刷制御装置104からリア印刷制御装置105に送信されるようになっている。すなわち給紙手段106からフロント印刷装置101に1ページ分の用紙が供給されると、用紙供給の信号がフロント印刷装置101からフロント印刷制御装置104に送られ、さらにその信号が給紙開始情報としてフロント印刷制御装置104からシリアル通信パス108経由でリア印刷制御装置105へ通知されるようになる。また、給紙手段106はフロント印刷装置101に接続されているので、用紙無しエラーが発生した場合、その用紙無しエラー情報がフロント印刷装置101に繋がれたフロント印刷制御装置104からシリアル通信パス108経由でリア印刷制御装置105へ通知されるようになる。
また、リア印刷制御装置105からシリアル通信パス108経由でフロント印刷制御装置104にリカバリー処理完了情報(給紙切替え要求)が送信されるようになっている。
【0031】
タンデム印刷装置100における印刷に際しては、まず給紙手段106から給紙された用紙は、フロント印刷装置101に入り印刷が行われる。ついでフロント印刷装置101で印刷された用紙は、中間搬送装置103を通過してリア印刷装置102に入り、印刷が行われた後に排紙機構107に排紙されるようになる。
【0032】
なおこのとき、フロント印刷装置101において1ページの用紙が供給されるタイミングでフロント印刷制御装置104が給紙開始情報をリア印刷制御装置105に送信し、残用紙カウンタ109はリア印刷制御装置105で前記給紙開始情報を受信する都度インクリメントされる。また、リア印刷装置102において1ページの用紙の印刷が完了するタイミングでリア印刷装置102が印刷完了情報をリア印刷制御装置105に送信し、残用紙カウンタ109はリア印刷制御装置105で前記印刷完了情報を受信する都度デクリメントされる。これにより、残用紙カウンタ109における計数が“0”のときは、タンデム印刷装置100内で印刷中の用紙はないということを意味し、計数が“1”より大のときはタンデム印刷装置100内で印刷中の用紙があるということを意味することになる。すなわち、リア印刷装置102において全ての用紙に対する印刷動作が完了すると、残用紙カウンタ109の計数は“0”となって、タンデム印刷装置100内で印刷中の用紙がないことを検知することができる。
【0033】
このような構成のタンデム印刷装置100において、用紙無しエラーが発生すると、図2に示すようなシーケンスに基づいて給紙トレイ切替えが行われる。
図2は、本発明に係るタンデム印刷装置における用紙無しエラー発生時の給紙トレイ切替えシーケンス図である。ここでは、説明の便宜上、タンデム印刷装置100において3ページの印刷を実施し、3ページ目が用紙無しエラーとなる状態を想定する。またタンデム印刷装置100の場合、フロント印刷装置101とリア印刷装置102で印刷するページ数は同じとなるため、各印刷装置は3ページ(3枚)の印刷となる。
【0034】
まず、ホストシステムから受信した印刷データに基づいて、フロント印刷制御装置104からフロント印刷装置101に対して印刷要求指示を行う(S201)。また、同時にフロント印刷制御装置104は所定の給紙トレイ106aからフロント印刷装置101へ用紙を供給するように給紙手段106を制御する。
フロント印刷装置101は、給紙手段106から用紙が供給されると、1ページ目の用紙の供給開始の信号をフロント印刷制御装置104に送信し(S202)、前記印刷要求指示に基づいた印刷を実行する。
【0035】
リア印刷制御装置105は、ホストシステムから印刷データ(ページ)を受信したら直ちにリア印刷装置102に印刷要求指示を発行する(S204)。
【0036】
フロント印刷制御装置104は、フロント印刷装置101からの1ページ目の用紙の供給開始の信号を受信すると、リア印刷制御装置105に対して給紙開始情報を通知する(S203)。また、次のページ(2ページ)の印刷要求指示をフロント印刷装置101に発行する。
リア印刷制御装置105はフロント印刷制御装置104からの給紙開始情報を受けて、内部テーブルである残用紙カウンタ109をインクリメントさせて更新する(S205)。結果として残用紙カウンタ109の計数は“1”を示す。
また、リア印刷制御装置105は次のページ(2ページ)の給紙開始情報を受けると、ステップS203,S205と同様の処理を行い(S206,S207)、残用紙カウンタ109の計数は“2”を示す。
【0037】
リア印刷制御装置105はリア印刷装置102から1ページ目の用紙の印刷完了を受信すると、給紙された1枚の用紙に対する印刷動作が完了したことから残用紙カウンタ109をデクリメントさせて更新する(S208)。結果として残用紙カウンタ109の計数は“1”(=2−1)を示す。
【0038】
ついで、フロント印刷制御装置104は、次のページ(3ページ)の印刷要求指示をフロント印刷装置101に発行する(S209)。ここで、それまで用紙を供給していた給紙トレイ106aでは用紙がなくなったため給紙手段106からフロント印刷装置101に用紙が供給されず、フロント印刷装置101は用紙無しエラーの信号をフロント印刷制御装置104に送信する(S210)。
フロント印刷装置101から用紙無しエラーの信号が上がると、フロント印刷制御装置104はリア印刷制御装置105に対して用紙無しエラー情報を通知すると共にリカバリー処理を実施する(S211)。
【0039】
リア印刷制御装置105は、用紙無しエラー情報の通知を受けて、フロント印刷装置101から搬送される用紙に対するリア印刷装置102における印刷完了を待つために残用紙カウンタ109の計数が“0”になるのを見張る。
【0040】
リア印刷制御装置105はリア印刷装置102から2ページ目の用紙の印刷完了を受信すると、給紙された1枚の用紙に対する印刷動作が完了したことから残用紙カウンタ109をデクリメントさせて更新する(S212)。結果として残用紙カウンタ109の計数は“0”(=1−1)を示す。
そのため、リア印刷制御装置105は受信済みの用紙無しエラーに対するリカバリー処理を実施し、フロント印刷制御装置104に給紙トレイ切り替え要求を通知する(S213)、フロント印刷制御装置104は給紙手段106において用紙が存在する給紙トレイ106aに切替える。
【0041】
ついで、フロント印刷制御装置104は、次のページ(3ページ)の印刷要求指示をフロント印刷装置101に発行する(S214)。給紙手段106の切替えられた給紙トレイ106aから用紙が供給され、フロント印刷装置101は、3ページ目の用紙の供給開始の信号をフロント印刷制御装置104に送信し(S215)、前記印刷要求指示に基づいた印刷を実行する。
また、リア印刷制御装置105もリカバリー処理完了後、3ページ目からの印刷要求指示をリア印刷装置102に発行し、リア印刷装置102において印刷が継続される。
【0042】
以上のように、本発明のタンデム印刷装置100によれば、残用紙カウンタ109を追加して装置内で印刷が完了するタイミングで印刷を再開させることで、用紙無しエラー時の給紙トレイ切り替えに関わる待ち時間を最小にすることが可能となる。すなわち、用紙無しエラーが発生したとき、フロント印刷装置101に新たな用紙が給紙手段106より供給されることは無いのでフロント印刷制御装置104のリカバリー処理を実行し、さらにリア印刷装置102における印刷動作が完了するタイミング、つまりリア印刷制御装置105内部でカウントしている残用紙カウンタ109の計数が“0”になる契機でリア印刷制御装置105のリカバリー処理を実行し、給紙可能な給紙トレイ106aへ切り替えることでタンデム印刷装置の搬送パス内に存在する全用紙の排紙完了を待たずに印刷を継続することが可能となる。またこれによれば特に、後処理装置が多数接続されるような大規模印刷装置においては排紙機構107までの搬送パスが長くなることから多大な待ち時間短縮効果が見込まれる。
【0043】
なお、これまで本発明を図面に示した実施形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
例えば、図2に示すシーケンスにおいて、残用紙カウンタ109の計数が“0”になる契機でフロント印刷制御装置104及びリア印刷制御装置105のリカバリー処理を実行するようにしてもよい。
【0044】
また、ここでは2台の印刷装置は縦列配置されたタンデム印刷装置について説明したが、これに限定されるわけではなく、本発明は3台以上の印刷装置が縦列配置されたものにも適用可能である。この場合にも、印刷制御装置は複数の印刷装置それぞれに設けられ、残用紙カウンタは複数の印刷装置のうち、第1段の印刷装置に給紙手段から用紙が供給されるとページごとにカウント数をインクリメントし、最終段の印刷装置で用紙の印刷が完了するとページごとにカウント数をデクリメントするようにする。また複数ページ数の用紙の印刷要求に対応する印刷動作中に、前記給紙手段において用紙を供給していた給紙トレイの用紙がなくなり前記第1段の印刷装置に用紙が供給されなくなると、前記第1段の印刷装置に対応する第1段の印刷制御装置はリカバリー処理を実行し、残りの印刷制御装置は前記残用紙カウンタが“0”になった時点でリカバリー処理を実行し、ついで前記第1段の印刷制御装置は前記残りの印刷制御装置すべてからリカバリー処理完了通知を受けると、前記給紙手段において給紙可能な給紙トレイへの切替えを行うこととする。
【符号の説明】
【0045】
100,900 タンデム印刷装置
101 フロント印刷装置
102 リア印刷装置
103 中間搬送装置
104 フロント印刷制御装置
105 リア印刷制御装置
106 給紙手段
106a 給紙トレイ
107 排紙機構
108 シリアル通信パス
109 残用紙カウンタ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0046】
【特許文献1】特開2004−358815号公報
【特許文献2】特開2001−305917号公報
【特許文献3】特開平11−194560号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の給紙トレイを有する給紙手段と、
ホストシステムから受信した印刷データに基づいて、前記給紙手段の給紙トレイの1つから供給される用紙を順次印刷するように縦列に配置される複数の印刷装置と、
前記複数の印刷装置それぞれに設けられ、お互いに情報の通信が可能に接続される複数の印刷制御装置と、
前記複数の印刷装置のうち、第1段の印刷装置に前記給紙手段から用紙が供給されるとページごとにカウント数をインクリメントし、最終段の印刷装置で用紙の印刷が完了するとページごとにカウント数をデクリメントする残用紙カウンタと、
を備え、
複数ページ数の用紙の印刷要求に対応する印刷動作中に、前記給紙手段において用紙を供給していた給紙トレイの用紙がなくなり前記第1段の印刷装置に用紙が供給されなくなると、
前記第1段の印刷装置に対応する第1段の印刷制御装置はリカバリー処理を実行し、
残りの印刷制御装置は前記残用紙カウンタが“0”になった時点でリカバリー処理を実行し、
ついで前記第1段の印刷制御装置は前記残りの印刷制御装置すべてからリカバリー処理完了通知を受けると、前記給紙手段において給紙可能な給紙トレイへの切替えを行うことを特徴とするタンデム印刷装置。
【請求項2】
前記複数の印刷制御装置のうち、最終段の印刷制御装置が前記残用紙カウンタを有することを特徴とする請求項1に記載のタンデム印刷装置。
【請求項3】
前記最終段の印刷装置で印刷が完了した用紙を排出する排紙機構を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のタンデム印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−11744(P2012−11744A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152973(P2010−152973)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】