説明

タンニンを含有することを特徴とする青果物用光沢付与組成物

【課題】乳化剤を使用しない、新規光沢付与剤を提供するとともに、特に処理後の青果物に適度な光沢を与え、さらに食味を劣化させることのない、青果物用光沢付与剤を提供する。
【解決手段】タンニンを含有することを特徴とする青果物用光沢付与組成物を用い、このタンニンが加水分解型タンニンであり、かつタンニンの組成物中の含有量が0.1重量%〜50重量%である組成物で青果物を処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンニンを含有することを特徴とする青果物用光沢付与組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、食品、青果物には光沢を出して商品価値を高める為に、光沢剤が使用されている。例えば、光沢剤としてセラック、パラフィンワックス、カルナウバロウ、ミツロウなどが使用されており、食品の表面に皮膜を作ることで、食品からの水分の蒸散を防ぎ、また逆に、湿気から食品を保護して品質の安定化を図る目的で、菓子や青果物、特に柑橘類に使用されている。柑橘類では光沢を与えることで外観を向上させるとともに、果皮からの水分の蒸散を抑制し、しわ、目減りを減少させ鮮度を保持し、貯蔵性を高める目的で使用されている。
【0003】
ところで、従来、青果物の光沢剤として種々の検討が行われており、例えば特許文献1ではセラック樹脂とグリセリン脂肪酸エステルとを含有する水及び/又は低級脂肪族アルコールの溶液からなる青果物の皮膜用組成物が、特許文献2ではセラックをアルコール等の溶剤に溶解したものに、植物油類、動物油類、ワックス類、脂肪酸エステル類を添加剤として混合したセラックコーティング剤が記載されている。
【特許文献1】特開昭58−089140号公報
【特許文献2】特開平08−311405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1、2のように被膜組成物中にセラック樹脂を使用した場合、以下の課題が挙げられる。(1)セラック樹脂を水、アルコール、又はこれらの混合物、特に水への溶解を助ける為、乳化剤を使用しなければならない。(2)セラックコーティング剤で均一に被膜処理できなかった場合、セラック樹脂が局所的に固化して付着し、被処理物の外観を悪くする。(3)セラックコーティング処理により、特に青果物においては果皮の気孔が密閉される為、果実が呼吸できず食味を劣化させる。(4)処理後の青果物に過剰な光沢が見られる為、一部の消費者に疎まれるといった問題が挙げられる。
【0005】
上述の事情を鑑み、本発明は乳化剤を使用することなく、水、アルコール、又はこれらの混合物に可溶な新規光沢付与剤を提供するとともに、特に処理後の青果物に適度な光沢を与え、さらに食味を劣化させることのない、青果物用光沢付与剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、タンニンを含有することを特徴とする青果物用光沢付与剤である。前記タンニンは加水分解型タンニンであることが好適である。さらに、乳化剤を使用することなく、タンニンを水、アルコール、又はこれらの混合物に溶解させた組成物である。
【0007】
また、本発明は、前記組成物で処理された青果物である。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成された青果物用光沢付与組成物によれば、乳化剤を使用することなく、青果物に適度な光沢を与え、食味を劣化させることがない、青果物の商品価値を高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施形態に基づき詳細に説明する。本実施形態における光沢付与組成物はタンニンを含有する組成物であり、好適には加水分解型タンニンを含有する組成物である。この組成物は青果物の光沢付与剤として使用される。
【0010】
本発明で用いるタンニンとは、植物の葉などに含まれるポリフェノールの総称である。ポリフェノールは、同一分子内に複数のフェノール性水酸基(ヒドロキシ基)をもつ化合物の総称で、光合成により生成された色素や苦味などの成分としてほとんどの植物に含まれており、抗酸化能力に優れた水溶性(一部は脂溶性)物質である。ポリフェノールとしては、大豆に含まれるイソフラボン、緑茶に含まれるカテキン、コーヒー豆に含まれるクロロゲン酸、カカオ豆に含まれるクロマミド類、葡萄果皮に含まれるアントシアニン、ウコンに含まれるクルクミン、ゴマに含まれるセサミン、カキの果実、クリの渋皮、五倍子、タマリンドの種皮、タラ末、没食子、ミモザの樹皮、リンゴ、芍薬および桂皮等から抽出することができるタンニンが例示される。好適には、柿渋やお茶に含まれている縮合型タンニンよりも、タンニン酸、チョウジ等の加水分解型タンニンが選択されていることがより好ましい。好適には、タンニン酸が選択される。
【0011】
タンニンは、組成物中においてその濃度が特に限定されるものではないが、0.1重量%以上50重量%以下が好ましい。
【0012】
また、本発明で用いる溶媒とは、タンニンが溶解するもので、具体的には、水、グリセリン、エタノールが挙げられる。好適には揮発性を有しているエタノールが選択され、光沢組成物中における含有量は特に限定されるものではない。
【0013】
本組成物が光沢付与効果を発揮する青果物は、例えば、葡萄、びわ、柿、リンゴ、梨が挙げられ、ミカン科の温州ミカン、夏ミカン、伊予柑等のカンキツ属、キンカン属、カラタチ属の範疇にある柑橘類も挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0014】
本組成物で青果物を処理するとき、本組成物が青果物と接触する処理方法であれば良い。処理方法としては、青果物を組成物中に浸漬する浸漬法、青果物に向けて組成物を噴霧や散布するスプレー法、刷毛などで青果物表面に組成物を塗りつける塗布法などが挙げられる。
【実施例】
【0015】
以下、実施例により本発明を具体的に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0016】
実施例1〜4および比較例2〜3の組成物を調製し、試験例1〜3に基づき試験を行なった。実施例1〜4、比較例1〜3および試験例1〜3の詳細は、以下の通りである。
【0017】
(実施例1)
タンニン酸(富士化学工業株式会社製「タンニン酸AL」)1g、エタノール500g、および、水499gを混合して一晩静置後、No.5Cろ紙でろ過して実施例1の組成物を調製した。
【0018】
(実施例2)
タンニン酸(富士化学工業株式会社製「タンニン酸AL」)10g、エタノール500g、および、水490gを混合して一晩静置後、No.5Cろ紙でろ過して実施例2の組成物を調製した。
【0019】
(実施例3)
タンニン酸(富士化学工業株式会社製「タンニン酸AL」)500g、エタノール500gを混合して一晩静置後、No.5Cろ紙でろ過して実施例3の組成物を調製した。
【0020】
(実施例4)
緑茶抽出物(太陽化学株式会社製「サンフェノン100S」)10g、エタノール500g、および、水490gを混合して一晩静置後、No.5Cろ紙でろ過して実施例4の組成物を調製した。
【0021】
(比較例1)
いずれの処理も行わないものを無処理とし、比較例1とした。
【0022】
(比較例2)
エタノール500g、および、水500gを混合して一晩静置後、No.5Cろ紙でろ過して比較例2の組成物を調製した。
【0023】
(比較例3)
ワックスとして、柑橘用皮膜剤であるコートーフレッシュKF−9000(甲東株式会社製)を使用した。KF−9000の成分はエタノール30重量%、セラック10重量%、モルホリン脂肪酸塩2重量%、クエン酸ナトリウム0.4重量%、水57.6重量%である。
【0024】
(試験例1)
収穫直後の温州ミカン果実を使用し、実施例1、2、4および比較例2の各組成物に各系列30個の果実を浸漬処理した。実施例3および比較例3のみ、ウエスにワックスを染み込ませ果実に均一に塗布した。風乾後、ダンボールに並べて25℃で静置し、1週間後の果実の光沢度を目視にて確認した。
【0025】
(試験例2)
収穫直後の柿を使用し、実施例1、2、4および比較例2の各組成物に各系列30個の果実を浸漬処理した。実施例3および比較例3のみ、ウエスにワックスを染み込ませ果実に均一に塗布した。風乾後、ダンボールに並べて25℃で静置し、1週間後の果実の光沢度を目視にて確認した。
【0026】
(試験例3)
収穫直後の林檎を使用し、実施例1、2、4および比較例2の各組成物に各系列30個の果実を浸漬処理した。実施例3および比較例3のみ、ウエスにワックスを染み込ませ果実に均一に塗布した。風乾後、ダンボールに並べて25℃で静置し、1週間後の果実の光沢度を目視にて確認した。
【0027】
試験例1〜3の結果を表1に示す。
【0028】

【表1】

【0029】
表1の比較例1、2と比較すると、縮合型タンニンである緑茶抽出物を配合した実施例4では、光沢は見られたが、その程度は弱いものであった。それに対し、実施例1(タンニン酸0.1重量%配合)、実施例2(タンニン酸1重量%配合)、実施例3(タンニン酸50重量%配合)では適度な光沢が見られた。また、比較例2のように、柑橘用皮膜剤であるコートーフレッシュKF−9000(甲東株式会社製)で処理した場合には、ウエス処理であっても、光沢が過剰になる傾向にあった。
【0030】
次に、実施例1〜3の各組成物で処理した試験例1〜3の果実の食味の評価をおこなった。各組成物で果実を処理し、1週間後の果実の食味評価を無処理と比較することでおこなった。その結果、実施例1〜3の各組成物で処理した果実の食味は、無処理と比較してほぼ同等であり、食味を劣化させないことを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンニンを含有することを特徴とする青果物用光沢付与組成物。
【請求項2】
タンニンが加水分解型タンニンであることを特徴とする請求項1に記載の青果物用光沢付与組成物。
【請求項3】
タンニンの光沢付与組成物中の含有量が0.1重量%〜50重量%であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の青果物用光沢付与組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の青果物用光沢付与組成物で処理された青果物。