説明

タンパク質−貴金属ナノ粒子

本発明は、タンパク質−貴金属ナノ粒子組成物の製造のための組成物および方法およびそれを抗ウイルス剤として使用するための方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には抗ウイルス剤の分野、そしてさらに特定すると、ウイルス感染および/または伝染を低減もしくは排除するために銀ナノ粒子を用いる、組成物、方法およびウイルス粒子の処置に関する。
【発明の背景】
【0002】
本発明の範囲を制限するものではないが、その背景をナノ粒子に関連して記述する。2003年に、推定では約4.8百万人(範囲:4.2〜6.3百万人)がHIVに新規に感染した。これはそれ以前のどの一年間よりも多い。今日では、約37.8百万人(範囲34.6〜42.3百万人)もがHIVを保持して生活しており、それは2003年に2.9百万人(範囲:2.6〜3.3百万人)を殺し、そしてAIDSの最初の罹患が1981年以来に確認された以後に20百万人以上を殺している。
【0003】
女性がますますHIVに感染している。近年では、HIV陽性女性の全体比率が常に上昇している。1997年に、HIV保持者の41%が女性であった。2002年には、その数字はほとんど50%に上昇した。この傾向は、異性愛が伝染の主要な様式である地域、特にカリブ海域およびサハラ以南のアフリカで最も顕著である。注射麻薬使用者、流動集団、および受刑者のような鍵となる集団内に集中している流行病を有する多数の国で女性も顕著に現れている。
【0004】
エイズ(AIDS)は、世界中で数百万人が現在感染している致命的で破局的な疾患である。当初は中央アフリカおよび米国を含む他の地理的地域の一部の高リスクグループ内に集中していたが、今ではAIDSは他の地域にも拡大しておりそして確認されたリスクグループの構成員ではない人々にも現れている。その結果、エイズの伝染を防御する方法、接触した場合のエイズの治療の方法、およびエイズの症状を改善する方法を開発するための多くの努力がなされている。しかし、今日まで、エイズは治療も防御も困難であることが証明されている。
【0005】
エイズはウイルスにより起きる。このウイルスは、文献中では多数の名称で呼ばれており、それには、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)、LAV(リンパ節腫関連ウイルス)、ARV(エイズ関連ウイルス)、およびHTLV−III(ヒトT細胞白血病ウイルスIII型)が含まれる。ウイルスは、ウイルスの遺伝物質の性質に基づいて二つのグループに分けられることは一般に知られている。一部のウイルスはDNAウイルスであり、それは遺伝物質がデオキシリボ核酸であるものであり、他はRNA(リボ核酸)ウイルスである。RNAウイルスはさらに二つのグループに分けることができ、RNAゲノムから直接にRNAコピーを作ることによりウイルスゲノムの複製が進行するものと、DNA中間体が関与するものとである。RNAウイルスの後者のタイプは、レトロウイルスと呼ばれる。エイズウイルスはレトロウイルスである。従って、他のレトロウイルスと同様に、これは、ウイルスRNAを二本らせん鎖DNAへの転写の触媒作用をする逆転写酵素(またはRNA依存性DNAポリメラーゼ)と呼ばれる酵素を有する。このDNA配列は、感染細胞のゲノム内に組み込まれ、そこではプロウイルスとして知られる。感染細胞の転写機構によるこのプロウイルスの引き続く転写は、新しいウイルス粒子内へのパッケージングのための新しいウイルスRNAを産生する。
【0006】
エイズウイルスは長期間にわたってプロウイルスの形態で感染細胞内に潜伏することがあるので、エイズが拡散する正確な経路を確定することは困難であった。しかし、エイズウイルスを含む血液がヒトに輸注されて、その人に伝染され得ることが知られている。エ
イズは、エイズウイルスに感染した相手と同性または異性性交を介して人に伝染もされ得る。エイズウイルスの伝染は、エイズ以外の以前から存在していた性感染症(STD)、例えば淋疾により促進される。さらに、血流内へのエイズウイルスの侵入を助ける性交の間の組織の裂けにより、エイズウイルスが容易に拡散することを科学者は疑っている。
【発明の開示】
【0007】
〈発明の要約〉
エイズ伝染の驚異の増大に対応して、性交の間のコンドームの使用がエイズウイルスの伝染を防御する一つの方法として示唆されている。性交の間のコンドームの不適切な使用、またはそれらの孔が、それらに限定的な有効性を与えるのみとする。従って、性交の間および感染患者の外科手術の間における、ヒト内のエイズウイルスの伝染を抑制するさらに良い方法への切実な要求がある。本発明は、ウイルス感染の処置または防御に使用するための抗ウイルス組成物の製造および使用のための組成物および方法を提供する。
【0008】
本発明者らは、本明細書中において、例えばMT2細胞の細胞毒性濃度以下の濃度を有するHIVを不活性化するために、異なる形態での、独自の銀ナノ粒子の性質を示す。従って、本発明は、性交の結果としてのヒト内のエイズウイルスの伝染を抑制するための、安価で容易に入手できる組成物および好都合な方法を提供する。本発明の方法は、銀ナノ粒子を含んでなる抗ウイルス組成物の作用に依存する。銀ナノ粒子は、エイズウイルスの感染力を低下させるために有力でありそして多数のその他の性感染症(STD)の原因生物体も殺す。従って、本発明は、エイズ伝染の目前の危険を低下させるために有用である。
【0009】
エイズはウイルスにより起きる。このウイルスは、文献中で多数の名称で呼ばれており。それには、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)、LAV(リンパ節腫関連ウイルス)、ARV(エイズ関連ウイルス)、およびHTLV−III(ヒトT細胞白血病ウイルスIII型)が含まれる。簡単化のために、エイズを起こすウイルスを本明細書中ではエイズウイルスと呼ぶ。
【0010】
本発明の方法は、数分以内の迅速な殺ウイルス作用物質病をもたらす銀ナノ粒子の作用に依存する。従って、本発明はエイズ伝染の当面の危険を低下させるために有用である。それはまた、エイズの危険を増加するSTD原因生物体を排除することにより、エイズ伝染のさらなる危険も低下させる。
【0011】
本発明者らは、新規の種類のナノ物質、すなわちタンパク質にコンジュゲートした貴金属ナノ粒子の製造の方法も開発した。それらのナノ粒子の使用の例は、例えば、タンパク質、例えば癌細胞などをターゲティング(targeting)するために、使用できる例えば球状タンパク質分子に直接コンジュゲートする貴金属ナノ粒子ならびに抗ウイルスおよび抗菌用途へのこのナノ粒子の使用を含む。特性的ターゲティングのために本発明は、標的細胞、例えばサイトカインのための同族受容体を発現する細胞に特異的に結合する1個もしくはそれより多くの標的分子(例えばサイトカイン)をさらに含んでもよい。
【0012】
第一に、本発明者らは、追加の保護または連結剤を使用することなく、球状タンパク質であるウシ血清アルブミン(BSA)内で成長させそしてそれにより直接機能化した水溶性貴金属ナノ粒子を合成する方法を開発した。金および銀の両者のナノ粒子がこの方法を用いて製造され、そして合成方法は、他の貴金属、例えば白金族金属へ容易に拡張できる。その他の球状タンパク質、例えばヒト血清アルブミン(HSA)もBSAと同様および/またはその代わりとなることができ、これらは例えば免疫グロブリン、サイトカイン、受容体、レクチン、糖タンパク質、リポタンパク質、トキシン、トキソイド、コラーゲン、RGD配列を有するタンパク質、細菌タンパク質、ウイルスタンパク質、寄生(parasitic)タンパク質、および融合タンパク質およびそれらの部分でも置換できる。合成方法は、例えば球状タンパク質、例えばウシ血清アルブミン(BSA)の存在下、水溶液中、室温でのイオン金属前駆体の化学的還元を含む。適切なpH条件下で、タンパク質のジスルフィド結合が貴金属ナノ粒子との直接結合に利用できる。タンパク質のポリペプチドバックボーンは不変でありそして本方法は構成アミノ酸残基の官能基に影響することが見いだされた。一つの例では、水素化ホウ素ナトリウムが還元剤として使用されたが、しかし、他のさらに温和な還元剤、例えばアスコルビン酸およびグルコースも本発明に使用できる。
【0013】
公知のバイオコンジュゲート調製技術に対して本発明の一定の有利性が見いだされた。本明細書中で開示される本方法は、球状タンパク質分子に直接コンジュゲートした、良く分散されたナノ粒子のほぼ定量的な収率を可能とする。さらに、得られたナノ粒子は、堅固な寸法安定性および粉末として取り扱いと貯蔵が容易であり、それはバイオコンジュゲート化ナノ物質としては稀な性質である。さらに、本方法により形成されたナノ粒子は、タンパク質との硫黄結合および球状タンパク質からの立体保護の組合せにより安定化されることが見いだされた。従って、本粒子は外部の種との相互作用のための自由表面積を有する。
【0014】
次に、タンパク質にコンジュゲートしたナノ粒子は室温の水溶液中で安定であることが見いだされた。例えば、長期貯蔵して使用するために、水分は、蒸発、噴霧乾燥、冷凍乾燥、真空乾燥、加熱真空乾燥などされてもよく、そして製品は、ナノ粒子の融合を誘発することなく貯蔵の目的のために微粉に粉砕される。ナノ粒子の粒径分布は狭くそして良く制御され、ここで平均直径は、反応条件に応じて、金の場合に1〜2nm、銀ナノ粒子では2〜5nmの範囲である。本発明は、長期放出、高い安定性、長い半減期などのために、化学、触媒、治療、医薬またはその他の用途に使用するために、1種もしくはそれより多くの生分解性および/または生体適合性ポリマーの利点を利用してもよい。この粒径範囲の貴金属ナノ粒子は特に望ましいが、それは、下記を含むそれらの独特の物理化学的性質:外部種との反応に利用できる物質のさらに有効な使用をもたらす大きい表面積対体積比;それらが量子的サイズ効果による電子構造の調節可能な変化を示すこと;および構造が常に変動して、それは触媒活性を高くすることのためである。
【0015】
本発明の別の利益は、血清アルブミンが球状アルブミンであり、そして血漿内に見られる主要なタンパク質成分であり、従って血清アルブミンが容易に入手できそして免疫原性になりにくいことである。身体内で、血清アルブミンは循環系内に局限される。ナノ粒子が血清アルブミン分子に直接コンジュゲートする場合には、血流内で送達を標的とするために使用できる。本明細書中に開示されるアルブミン−金属ナノ粒子は、周知の方法を用いて、抗体、例えばヒト化抗体にコンジュゲートされてもよい。抗体との機能性化タンパク質−ナノ粒子コンジュゲート体は、高いターゲティングを可能とする。血清アルブミン−コンジュゲート貴金属ナノ粒子は、種々の用途においてゲルおよびクリーム内への容易な組込みに良く適合する。
【0016】
〈発明の詳細な記述〉
本発明の種々の態様の作成および使用は以下に詳細に考察されるが、本発明が、広範囲の特定の意図内で実現できる多数の適用可能な発明的概念を提供することが認められなければならない。本明細書中で考察される特定の態様は、本発明を完成しそして使用する特定の方法の単なる例示であり、そして本発明の範囲を限定するものではない。
【0017】
本発明の理解を容易とするために、多数の用語を以下に定義する。本明細書中で定義される用語は、本発明に関連する分野の通常の熟練者により一般的に理解されるような意味を有する。「a」、「an」および「the」のような用語は、単一の実在物に言及する
だけでなく、特定の例が例示のために使用され得る一般的な類型物も含むことを意図する。本明細書中の用語は、本発明の特定の態様を記述するために使用されるが、しかしそれらの使用は、特許請求範囲を除いて、本発明を限定しない。
【0018】
本明細書中に使用される場合に、「抗ウイルス」および「抗ウイルス組成物」とは、ウイルスの複製および拡散を抑制し、ウイルス付着を防止し、宿主細胞内のウイルス複製を防止し、および/またはウイルス感染により起きる症状を改善または軽減する、抗ウイルス性タンパク質随伴貴金属ナノ粒子の量を指す。効果的な治療の基準は、より低いウイルス負荷、より低い致死率、および/またはより低い罹患率などを含む。
【0019】
本明細書中に使用される場合に、「誘導体」とは、タンパク質随伴貴金属ナノ粒子およびそれの組合せと関連するあらゆる誘導体を指す。タンパク質随伴貴金属ナノ粒子の非限定的な例は、共有結合または非共有結合を介して1個もしくはそれより多くのタンパク質に随伴し、そしてタンパク質およびさらにタンパク質−ナノ粒子−タンパク質などの鎖状体などの、二量体、三量体、四量体、多量体、オリゴマー、ポリマーなど内への二次元もしくは三次元での組合せを含むことができるナノ粒子を含む。
【0020】
本明細書中に使用される場合に、「送達」とは、ナノ粒子により生成されるいかなる熱もその位置に伝達されるような位置に付着、隣接、または十分に近いナノ粒子の配置を生じさせることとして定義される局所または標的へのナノ粒子の接触を指す。「送達」は、本明細書中で用語「ターゲティング」が使用される場合にターゲティングされまたはターゲティングされなくてもよい。
【0021】
本明細書中に使用される場合に、「ナノメートル」とは、10−9メートルでありそして略字「nm」と交換可能に使用される。
【0022】
本明細書中に使用される場合に、「ナノ粒子」とは、いかなる大きさ、形状または形態を有していても、1〜5000ナノメートルの寸法を有する粒子として定義されるものを指す。本発明中で使用するために、ナノ粒子は貴金属、例えば金コロイドまたは銀であり、そして例えばナノ球体、ナノ管体、ナノ棒体、ナノ錐体などであってもよい。
【0023】
本明細書中に使用される場合に、「ナノ粒子」とは、1個もしくはそれより多くのナノ粒子を指す。本明細書中に使用される場合に、「ナノシェル」とは、1個もしくはそれより多くのナノシェルを意味する。本明細書中に使用される場合に、「シェル」とは、1個もしくはそれより多くのシェルを意味する。
【0024】
本明細書中に使用される場合に、「非組織」とは、ヒトまたは動物組織ではないいずれかの物質として定義される。本明細書中に使用される場合に、「ターゲティングされた」関係とは、特定の部位への化学種の結合を目的とする、タンパク質−タンパク質結合、タンパク質−リガンド結合、タンパク質−受容体結合、およびその他の化学的および/または生化学的結合相互作用の利用を指す。
【0025】
本明細書中に使用される場合に、「ウイルス感染」とは、標的細胞内へのウイルス侵入を指す。ウイルスが健康な細胞内に入ると、それは宿主再生産機構を利用してそれ自体を再生産し、最終的には細胞を殺す。ウイルスが再生産すると、新規に再生産されたウイルス子孫は他の細胞、多くの場合に隣接細胞に感染する。一部のウイルス遺伝子も宿主染色体と一体となってプロウイルスを介する潜在的感染を起こすことができる。プロウイルスは自体が宿主染色体の複製と共に再生産され、そして身体内部および外部の種々の因子により活性化された場合に、いずれかの時点で感染者を病的状態に導くことができる。
【0026】
本明細書中に使用される場合に、「相乗作用」とは、ウイルス感染を治療または防御するために、いずれか2種またはそれより多くの治療剤を単に使用する付加的作用よりもさらに効果的な、共同タンパク質随伴貴金属ナノ粒子−薬剤投薬を指す。相乗効果は、いずれか単一薬剤に対するウイルス耐性を回避または軽減するために、抗ウイルス薬剤およびタンパク質随伴貴金属ナノ粒子の効力を増加できる。
【0027】
本明細書中に使用される場合に、「治療剤」とは、単独でも送達系内で複合されていても、液体、固体、ゲル状、乾燥、冷凍、再懸濁などのいずれであっても、タンパク質随伴貴金属ナノ粒子を指す。タンパク質随伴貴金属ナノ粒子薬剤または活性剤は、本明細書中に教示するように、ウイルス感染またはウイルス起因疾患の処置の役にたつ。
【0028】
本発明のタンパク質随伴貴金属ナノ粒子抗ウイルス剤は、単独または、抗ウイルス剤、例えばサイトカインrIFNα、rIFNβ、およびrIFNγ;逆転写阻害剤、例えばAZT、3TC、ddI、ddC、ネビラピン(Nevirapine)、アテビルジン(Atevirdine)、デラビルジン(Delavirdine)、PMEA、PMPA、ロビリド(Loviride)、およびその他のジデオキシリボヌクレオシドもしくはフルオロジデオキシリボヌクレオシド;ウイルスプロテアーゼ阻害剤、例えばサキナビル(Saquinavir)、リトナビル(Ritonavir)、インジナビル(Indinavir)、ネルフィナビル(Nelfinavir)、およびVX−478;ヒドロキシ尿素;ウイルスmRNAキャッピング阻害剤、例えばウイルス・リボビリン(ribovirin);アンホテリシンB;抗HIV活性を有するエステル結合 結合性分子カスタノスペルミン;糖タンパク質プロセシング阻害剤;グリコシダーゼ阻害剤SC−48334およびMDL−28574;ウイルス吸収剤;CD4受容体ブロッカー;ケモカイン・コレセプター阻害剤;中和抗体;インテグラーゼ阻害剤およびその他の融合阻害剤を含むがそれらに限定はされない薬剤と一緒に使用されてもよい。
【0029】
本明細書中に記載の抗ウイルスタンパク質−ナノ粒子は、広範囲のウイルス(HIVを含む)感染の処置のための改善された抗ウイルス治療のための方法およびキットの一部として使用されてもよい。さらに、本発明は、一般的には単独または薬理学的に許容できる担体中に組合せて提供される、複合治療剤、その誘導体、第二活性剤または栄養剤または食事補助剤の使用を含に、治療効果を増進することを目的とする同時薬剤投薬の方法を提供する。複合治療の利点は、それぞれの治療剤単独に対するその耐性を増加させるウイルス適合または変異を排除できるからである。複合治療剤の別の利点は、薬剤の毒性を低下しそして治療指数を高めるために、薬剤が少ない投与量で提供されてもよいことにある。
【0030】
大きさの低下は物質の物理的性質に劇的な変化を生むことが知られている。最も良く知られている効果の一つは、一般に表面プラズモン共鳴効果と知られている貴金属ナノ粒子内の光学的性質の大きさに伴う変化である。貴金属ナノ粒子またはナノ細線は、色の変化すなわち表面プラズモンによる光散乱を起こす。遷移金属の場合には、超高密度磁気記録デバイスの探索がナノ粒子における研究を促進している。有限の大きさは、ナノ粒子内の構造的および磁気的秩序に効果を持ちうる。
【0031】
ウシ血清アルブミン(BSA)により直接機能化された貴金属ナノ粒子に関する本発明の方法の一つの特別な特徴は、大気条件における水系内での良く分散されたタンパク質コンジュゲートナノ粒子のほぼ定量的な収率が達成されることである。ナノ粒子の物理化学的性質は、その大きさにより決定される。高精度の用途では、均等な物理化学的性質を有するナノ粒子が要求され従って良く分散された貴金属ナノ粒子は高い付加価値の製品である。従来の生物コンジュゲート技術は、典型的には、特定のpHにおける生物分子の存在下でのナノ粒子のインキュベーションを含んでいた。ナノ粒子のかなりの数(25〜30%)がインキュベーションの後でもコンジュゲートしないで残り、そして遠心分離によりコンジュゲート体から分離される。これは、遊離のナノ粒子が融合されて廃棄ペレットとなり、そして価値があるナノ粒子のかなりの部分を損失させる。対照的に、本明細書中に開示される方法では、タンパク質コンジュゲート金ナノ粒子のほぼ定量的な収率が得られる。
【0032】
合成された貴金属ナノ粒子のいくつかのその他の有利な特徴は、ナノ粒子が小さく(5nm未満の直径)そして安定で、狭く制御可能な粒径分布を有すること、およびナノ粒子が球状のマクロ分子タンパク質を用いて直接機能化されることである。
【0033】
直径10nm未満の貴金属ナノ粒子は、量子サイズ効果により電子構造に変化を受け、そしてそれらの触媒的、電磁気的、および光学的性質が高く評価される。タンパク質との金属ナノ粒子のコンジュゲートのための現在の技術では、不安定な複合体が生成する。コンジュゲート体は典型的には4℃で貯蔵され、安定には数週間保たれるのみであり、そしてナノ粒子は加熱または含有水分が蒸発すると、凝集および融合するする強い傾向を有する。対照的に、我々のタンパク質コンジュゲートナノ粒子は、大気条件において水溶液内で無期限に安定である。さらに、含有水分は蒸発ができそして製品は融合を起こすことなく微粉に磨砕できる。粉末は水中に容易に再溶解でき、従ってそれは貯蔵の目的に望ましい。
【0034】
ナノ粒子とタンパク質との間の直接機能性化は、もう一つの望ましい特徴である。小さいナノ粒子と生物分子との連結のための従来の方法は、粒子表面がコンジュゲートの前に保護剤またはリンカー分子で飽和される必要があった。前者の場合には、コンジュゲート体の安定性は生物分子が保護剤を置換する程度に依存していた。後者の場合には、粒子は生物分子の外部に結合し、それはナノ粒子凝集または生物分子間の多量体構造の形成に導く可能性がある。対照的に、本明細書中で開示する方法は、保護剤またはリンカー剤を避け、球状タンパク質に直接結合しそしてその内部に保護されるナノ粒子をもたらす。これは、製品安定性に関する大きい進歩であり、そして粒子表面が中間的な薬剤で飽和されないので、我々のナノ粒子は自由表面を有し、そして外部種との相互作用が可能である。
【0035】
本発明の別の重要な特徴は、その抗菌および抗ウイルス活性の発見である。本発明のナノ粒子は、特にHIV−1ウイルスの阻害のための抗ウイルス剤としてタンパク質コンジュゲート銀ナノ粒子として使用された。身体内の血清アルブミンが循環系に限定されるために、(血清アルブミンに直接コンジュゲートした)ナノ粒子は、血流内でターゲティングされた送達の可能性を有しそして例えば抗gp−120、抗gp−120、抗gp−41またはその他の抗HIV抗体を用いてさらにターゲティングされることができる。タンパク質コンジュゲートナノ粒子は、増進されたターゲティングまたは使用後の抽出のために、1種もしくはそれより多くの抗体を用いて機能化して、それにより未使用タンパク質−貴金属ナノ粒子をなくすことができた。
【0036】
本方法は、大気条件下で水系内のマクロ分子タンパク質に直接コンジュゲートした、小さく(直径10nm未満)で良く分散したナノ粒子をほぼ定量的な収率で生成する。得られた製品は、良く分散され、従来の生物コンジュゲート体よりも安定であり、そして粉末として大気条件下で無期限に貯蔵できる。小さい貴金属ナノ粒子は、球状タンパク質の直接コンジュゲートし、そして外部種との相互作用のための大きい自由表面を有する。さらに、溶液の含有水分を蒸発させると、タンパク質コンジュゲートナノ粒子は薄い透明な膜を形成し、その色はナノ粒子濃度に応じて淡金褐色ないし暗褐色の色となる。これらの膜は、独特の光学的性質を有するであろう。その上、タンパク質コンジュゲートナノ粒子は、例えば、触媒、生物分解性触媒および生物適合性金属触媒として使用できる。あるいは、本ナノ粒子は、重量により(すなわち銀または金ナノ粒子を負荷された細胞の遠心分離)、電荷により、濁度により、屈折率により、顕微鏡測定などで細胞または標的を分離するために、例えば(物理的障害が大きい粒子を濾過分離する場合に高い電子密度の貴金属ナノ粒子を用いる)細胞および組織への標識としてイン・ビボで使用できる。
【0037】
本発明は、性交の結果としてのヒト内のエイズウイルスの伝染を抑制する、安価で、容易に利用できそして便利な方法を提供する。本方法は、数分以内での迅速な殺し作用をもたらす銀ナノ粒子の作用に依存する。それらの化合物は、エイズウイルスの感染性を低下するために効果的であり、そして短い暴露後の多数のその他のSTDの原因生物体も殺す。従って、本方法の方法は、エイズ伝染の直接の危険を低下するために有用である。それはまたエイズの危険を増大するSTD原因生物体の排除によるエイズ伝染のさらなる危険も低下する。
【0038】
それらの発見を考えて、本発明は、性交の前またはその間のヒトの性的内腔に局所的に適用される有効な抗ウイルス量の銀ナノ粒子の使用による、性交の際のヒトにおけるエイズの伝染を抑制する方法を意図する。この用途は、性的内腔内にクリームまたは発泡物を導入するか、または性的内腔内に挿入されるコンドームまたはその他のデバイス上に抑制組成物を被覆することにより実施されてもよい。
【0039】
本技術は、エイズ伝染を防御するために有効な抗ウイルス製品を製造する種々の物質を伴って銀の殺生物性を複合する可能性も提供する。可能な使用例のいくつかは、膣内殺生物剤、殺菌剤、殺生物剤、濾過剤、局所抗ウイルスおよび全身抗ウイルス剤であることができる。広範囲の微生物に対するその強い毒性により、銀が細菌および真菌類に対して使用されている。抗生物剤のような現在の製品を置換して殺生物剤として使用するために銀ナノ粒子を改善および開発するナノ技術を使用する可能性がある。
【0040】
本発明は、ヒト内のエイズの伝染が、性交の前またはその間にヒトの性的内腔に局所的に適用される、有効な抗ウイルス量の銀ナノ粒子の使用により、ヒトにおけるエイズの伝染が性交の前またはその際に遅延または抑制されるように影響するように使用されてもよい。この適用は、性的内腔内にクリームまたは発泡体を導入することにより、または性的内腔内に挿入されるコンドームまたはその他のデバイス上に抑制組成物を被覆することにより実施できる。
【0041】
本発明の銀ナノ粒子は、エイズ伝染を防止するために有効な抗ウイルス製品を製造するために種々の物質を伴った銀の殺生物性の利益を利用する。いくつかの使用は以下のパラグラフに列挙される。
【0042】
膣殺生物剤:膣内の微生物を破壊する薬剤(例えば化学的もしくは抗生物的)。HIVを含む性的に伝染される疾患の伝染を抑制する直腸および膣殺生物剤の使用を評価する研究が行われている。従来の殺精子剤のように、殺生物剤は、性的に伝染される性感染症(STD)およびエイズから自身を防御するための力を女性に与える、長時間にわたって有効成分をゆっくりと放出するゲル、クリーム、座薬、フィルム、またはスポンジもしくは膣リングのような形態を含む多数の形態で製造できる。世界中で、STD防御における選択肢が少なすぎるために、女性の健康および生活が危険に曝されている。
【0043】
殺菌剤:非生物的な表面上のウイルスおよびその他の微生物を殺す化学薬品。
【0044】
殺生物剤:例えば殺虫剤のような化学薬品であって、それらは、農業、林業、および蚊防除のような分野に使用される生物体の種々の形態、例えばウイルスを殺すことができる除草剤、殺昆虫剤であることができる。殺生物剤は、生物学的な侵入および蔓延を防御するために他の物質(典型的には液体)に加えることもできる。
【0045】
濾過:水またはいずれかの液体、例えばHIV感染女性からのヒトの乳中のウイルス病原体、例えばロタウイルスを不活性化するため。
【0046】
局所抗ウイルス剤:点眼薬または皮膚クリームまたはゲル。全身抗ウイルス剤:静脈内、筋肉内、皮下、皮膚内、経皮などによりナノ粒子を全身的に送達することによる提供。
【0047】
本発明の最も重要な特徴は、抗ウイルス剤としての銀ナノ粒子の使用である。バルク物質が示す化学および物理的性質は、物質がナノメートル範囲に入ると根本的に変化する。その理由から、物理的、生物学的、生物医学的および薬学的用途に使用できる、ナノ物質の開発への訴えが増えている。
【0048】
物理的性質の変化:(1)体積に対する表面積比率の上昇(体積当たりの銀量の低下)、(2)量子効果が優位を占める範囲内に移動した粒子の大きさ、および(3)小さいナノ粒子の構造が常に変動してそれらの触媒的活性を増大させる。
【0049】
透明性:ナノ粒子が光の境界波長以下の大きさを有しそして使用される濃度が非常に低いという事実が、それに透明性をもたらし、それは化粧品、および殺生物ゲルの用途にも非常に有用となる性質である。
【0050】
ウイルス抑制の利点に関して、銀ナノ粒子は、3μg/mlのような低い濃度でもHIVウイルスを抑制可能であることが発見された。この濃度において、MT−2細胞(臍帯血リンパ球から単離されそして成人T細胞白血病患者からの細胞と一緒に培養されたヒトT−細胞白血病細胞およびc−magi細胞に対して毒性がない。
【0051】
最後に、銀ナノ粒子を含む殺生物剤は、3つの様式の一つで作用する:STDおよびエイズウイルスおび細菌を殺すか、感染を遮断する防壁を創成するか、または感染が起きた後にウイルスの複製を防止する。理想的には、銀ナノ粒子を含む殺生物剤は、STDから自身を保護しながら妊娠する選択肢を女性に与えるために、殺精子剤を伴うかまたは伴わないで利用できることである。
【0052】
本発明は、銀ナノ粒子を用いる後天性免疫不全症候群(エイズ)の伝染を抑制する方法に関する。本発明は、性交の結果としてのヒト内のエイズウイルスの伝染を抑制する、安価で、容易に利用できそして便利な方法を提供する。本方法は、数分以内の迅速な殺ウイルス作用をもたらす銀ナノ粒子の作用に依存する。それらの化合物はエイズウイルスの感染性を低下させそして短い暴露の後で多数のその他のSTDの原因生物体を殺すために有効である。本発明の方法は、エイズ伝染の直接の危険を低下するために有効である。それはまたエイズの危険を増大させるSTD原因生物体を排除することによるエイズ伝染の将来の危険を低下させる。
【0053】
本発明の装置および方法は、銀ナノ粒子がエイズウイルスを含むレトロウイルスに対して有効な抗ウイルス剤であるという知見に基づく。銀材料は、ヒトおよび動物内で火傷を処置するために有用な抗菌剤としてこれまでも認められていた。C.L.Fox,Jr.、米国特許第3,761,690号明細書(関連する部分は引用することにより本明細書に編入される)。AgSDの形の銀は、一定のウイルス、例えば単純ヘルペスおよび帯状疱疹に対しておよび鵞口瘡(Candida albicans)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)および淋疾を含む多数のSTDの原因生物体に対して有効であることも示されていた。Wysorの米国特許第4,415,565号明細書(関連する部分は引用することにより本明細書に編入される)は、一定のRNAウイルスに対するAgSDのさらなる抗ウイルス活性を示したが、しかしいずれもレトロウイルスではない。従って、AgSDは良く研究された物質ではあるが、抑制または破壊が困難であると証明されているエイズレトロウイルスに対する活性をそれが有すると期待する理由はない。
【0054】
B.Hanke、米国特許第6,720,006号明細書(関連する部分は引用することにより本明細書に編入される)によると、銀ナノ粒子は抗微生物健康管理製品を製造するために有用であることが示されている。これはこの領域でのさらなる研究の可能性を開くが、しかし抗ウイルス試験は行われていない。
【0055】
それらの知見を考慮して、本発明は、性交の前またはその間のヒトの性的内腔に局所適用される有効な抗ウイルス量の銀ナノ粒子の使用による、性交の際のヒト内のエイズの伝染を抑制する方法を意図する。この用途は、性的内腔内にクリームもしくは発泡体を導入することによるか、または性的内腔内に挿入されたコンドームもしくはその他のデバイス上に抑制組成物を被覆して実施できる。
【0056】
ヒト身体内部での銀ナノ粒子の健康への影響を分析した研究はない。しかし、適切な濃度の銀ナノ粒子は、外的使用に対しては危険ではないことの証明、米国特許第6,720,006号明細書(関連する部分は引用することにより本明細書に編入される)、および健康目的のためのコロイド状銀の使用に関する多数の参照文献がある。
【0057】
イオン状銀の殺細菌性に関する幾つかの文献がある。しかし、それらの文献は、細菌に対する銀ナノ粒子の公知の性質に焦点を当てている(J.Sondi,B.Salopek−Sondi,J.Colloid Interface Sci.275,177−182(2004)、関連する部分、製造および調製の方法は引用することにより本明細書に編入される)。
【0058】
投与形態:銀ナノ粒子は、例えば経腸、腹腔内、髄腔内、静脈内、筋肉内、膣内、皮下、または小脳内で投薬されてもよい。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物内および油内で調製されてもよい。貯蔵および使用の通常の条件下では、それらの製剤は微生物の繁殖を防止するために保存剤を含んでもよい。
【0059】
注入使用に適する製薬学的組成物は、滅菌した注入可能な液剤または分散剤の即座の調製のために、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液および滅菌粉末を含む。すべての場合に、組成物は滅菌状態でなければならずそして容易な注入性が存在する範囲内で液状でなければならない。製造および貯蔵の条件下で安定でなければならずそして微生物、例えば細菌および真菌の汚染作用に対して保護されなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、および液状ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、および植物油を含む溶剤または分散媒体であってもよい。
【0060】
適切な流動性は、例えば、被覆、例えばレシチンの使用により、分散剤の場合には所要の粒径の維持によりそして界面活性剤の使用により維持されてもよい。微生物の作用の防止は、種々の抗細菌および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどにより達成されてもよい。多くの場合に、等張剤、例えば糖類、塩化ナトリウム、またポリアルコール、例えばマンニトールおよびソルビトールが組成物内に含まれると好ましい。注入可能組成物の長期間の吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを組成物中に含ませることによりもたらされてもよい。
【0061】
滅菌された注入可能液剤は、適切な溶剤内の所要量の治療組成物と上記の成分の一つまたはそれらの組み合わせを混和することにより、所要の場合には引き続き濾過滅菌により
調製されてもよい。一般的に、分散剤は、塩基性分散媒体および上記のものからの所要のその他の成分を含む滅菌担体内に治療組成物を混和して調製される。滅菌注入可能液剤の調製のための滅菌粉末の場合に、調製方法は、有効成分(すなわち治療化合物)の粉末にいずれかの追加の所望の成分をあらかじめ滅菌濾過したそれらの溶液に加えて、真空乾燥、噴霧乾燥、噴霧冷凍および冷凍乾燥を含んでもよい。
【0062】
銀ナノ粒子は、例えば不活性希釈剤または吸収可能な食用担体と一緒に経口投薬されてもよい。治療化合物およびその他の成分は、硬質もしくは軟質カプセル内に封入するか、錠剤に圧縮するか、または対象者の食事内に直接混和されてもよい。経口治療投薬の場合に、治療化合物は賦形剤と混和され、そして消化可能な錠剤、口内錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、カシェ剤などの形で使用されてもよい。組成物および製剤中の治療化合物の割合は、熟練者には公知のように変更されてもよいことは当然である。かかる治療に有用な組成物中の治療化合物の量は、適切な投与量が得られるような量である。
【0063】
投与の容易さおよび投与量の均一性のために、投与単位として非経口組成物を配合すると特に有利である。
【0064】
投与物内の非経口組成物の投薬の容易さおよび投与量の均一性のために、投与単位剤型で配合すると特に有利である。本明細書中で使用される投与単位剤型は、処置される対象者に対して単位投与として適する物理的に分離された単位を指す。それぞれの単位は、所要の製薬学的担体を伴って所望の治療効果を生成するように算出された治療化合物の所定の量を含む。本発明の投与単位剤型のための仕様は、(a)治療化合物の独特の特性および達成されるべき特定の治療効果、および(b)対象者内の選択された状態の処置のためにかかる治療化合物をコンパウンディングする当該業界に固有の限界により決定されそして直接に依存する。
【0065】
本発明の水性組成物は、有効量の貴金属ナノ粒子、ナノフィブリルもしくはナノシェルまたは製薬学的に許容できる担体および/もしくは水性媒体中に溶解および/もしくは分散された本発明の化学組成物を含んでなる。生物学的物質は、望ましくない低分子量分子を除去するために十分に透析されるかおよび/またはさらに容易な製剤のために適合する場合には所望のビヒクル内に冷凍乾燥されるべきである。活性化合物は、一般に非経口投薬のための配合、例えば静脈内、筋肉内、皮下、病巣内、および/または腹腔内を介する注入のために配合されてもよい。有効成分および/または成分として有効量のナノシェル組成物を含む水性組成物の調製は、本開示を参照すると当該技術分野の熟練者には分かるであろう。典型的には、かかる組成物は、液体溶液および/または懸濁液のいずれかとして;注入の前に液体を加える際に溶液および/または懸濁液を調製するための使用に適する固体形態が調製されてもよく;および/または製剤は乳化されてもよく、注入可能に調製されてもよい。
【0066】
注入使用に適する製薬学的剤型は、滅菌水溶液および/または分散液;ゴマ油、落花生油および/または液状プロピレングリコールを含む配合;および/または滅菌した注入可能な溶液および/もしくは懸濁液のその場での調製のための滅菌粉末を含む。すべての場合に、剤型は、滅菌されていなければならないかおよび/または容易な注入性が存在する範囲で流動性でなければならない。それは、製造および/または貯蔵の条件下で安定でなければならずそして/または微生物、例えば細菌および/または真菌の汚染作用に対して保護されていなければならない。
【0067】
遊離塩基および/または薬理学的に許容できる塩としての活性化合物の溶液は、界面活性剤、例えばヒドロキシプロピルセルロースと一緒に水中で適当に混合して調製されても
よい。分散液は、グリセロール、液状ポリエチレン、および/またはそれらの混合物中および/または油中で調製されてもよい。貯蔵および/または使用の通常の条件下で、それらの製剤は微生物の繁殖を防止する保存剤を含む。
【0068】
滅菌した注入可能な溶液は、所要の場合には上記の種々の他の成分と一緒に、適当な溶剤中に所要の量の活性化合物を混和し、次いで濾過滅菌して調製される。一般に、分散液は、種々の滅菌有効成分を、塩基性分散媒体および/または上記のものからの所要の他の成分を含む滅菌ビヒクル内に混和して調製される。滅菌した注入可能溶液の調製のための滅菌粉末の場合には、調製の好ましい方法は、事前に滅菌濾過された溶液からのいずれかの追加の所望の成分を加えた有効成分の粉末を生成する真空乾燥および/または冷凍乾燥技術である。極端に迅速な浸透がもたらされることを意図する場合に溶剤としてDMSOの使用が予想される場合には、直接注入のためさらにおよび/または高度に濃縮された溶液の調製も意図され、高濃度の活性薬剤を小さい腫瘍領域に送達する。配合の際に、投与配合剤に適合する様式でおよび/または治療的に有効な量で液剤が投与される。配合物は種々の投与剤型、例えば上記の注入可能な溶液の形として容易に投薬されるが、しかし薬剤放出カプセルおよび/または類似のものを使用してもよい。
【0069】
例えば、水溶液での非経口投与のために、溶液は必要な場合には緩衝されるかおよび/または十分な塩水および/またはグルコースを用いて最初に等張性を与えられた液体希釈剤でなければならない。それらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下および/または腹腔内投薬に特に適する。これに関連して、使用してもよい滅菌水性媒体は、本開示を参考として当該技術分野の熟練者には分かるであろう。例えば、一回の投与量を等張NaCl溶液1ml中に溶解および/または大量皮下注入液体1000mlに添加および/または輸液の提案部位に注入することができる(例えば、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”、第15版、1035−1038ページおよび/または1570−1580ページ参照)。投与物中のいくらかの変化は、処置される対象者の条件に応じて必然的に起きるであろう。投与の責任者は、いずれの場合でも、個別対象者に対する適切な投与量を決定するであろう。
【0070】
非経口投薬、例えば静脈内および/または筋肉内注入のために配合された化合物に加えて、他の製薬学的に許容できる剤型は、例えば錠剤および/またはその他の経口投薬のための固体;リポソーム配合剤;徐放カプセル:および/またはクリームを含む現在使用されているいずれかの他の剤型を含む。
【0071】
鼻用液剤および/または噴霧剤、エーロゾルおよび/または吸入剤を本発明に使用してもよい。鼻用液剤は、滴下剤および/または噴霧剤として鼻通路に投薬されるように設計され、通常は水溶液である。鼻用液剤は、正常な繊毛作用が維持されるように、鼻分泌物と多くの観点から類似するように調製される。従って、水性鼻用液剤は、通常、等張性であるかおよび/または5.5〜6.5のpHを維持するように僅かに緩衝されている。さらに、眼科用調剤に使用されるものと類似した抗菌保存剤、および/または所望の場合には適切な薬剤安定剤が、配合剤内に含まれてもよい。
【0072】
投薬の他の様式に適する別の配合剤は、膣内座薬および/または座薬を含む。直腸座薬が使用されてもよい。座薬は、種々の重量および/または形状の固体投与剤型であり、通常は直腸、膣および/または尿道内への挿入のために投薬される。挿入の後、座薬は、軟化、溶融および/または内腔中の液体中に溶解する。一般に、座薬に対して、伝統的な結合剤および/または担体は、例えばポリアルキレングリコールおよび/またはトリグリセリドを含んでもよい。かかる座薬は、0.5%〜10%、好ましくは1%〜2%の範囲内の有効成分を含む混合物から形成されてもよい。
【0073】
経口配合剤は、通常使用される賦形剤、例えばマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウムおよび/または類似のものの製薬グレードを含む。それらの組成物は、液剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放配合剤および/または散剤の剤型をとる。一定の態様では、経口の製薬学的組成物は、不活性希釈剤および/または吸収可能な食用担体を含んでなり、そして/またはそれらは硬質そして/または軟質シェルゼラチンカプセル内に封入されてもよく、そして/またはそれらは錠剤に圧縮されてもよく、そして/またはそれらは食事の食品内に直接混和されてもよい。経口治療投薬のために、活性化合物は賦形剤と混和され、そして/または消化性錠剤、口内錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、カシェ剤、および/または類似の剤型で使用される。かかる組成物および/または製剤は、活性化合物を少なくとも0.1%含むべきである。組成物および/または製剤の割合は、当然ながら変動してもよくそして/または便利には単位の重量の約2〜約75%、および/または好ましくは25〜60%の間であってもよい。かかる治療的に有用な組成物内の活性化合物の量は、適切な投与量が得られるものである。
【0074】
錠剤、トローチ、丸薬、カプセルおよび/または類似物は、下記:結合剤、例えばトラガカントガム、アラビアゴム、トウモロコシデンプンおよび/またはゼラチン;賦形剤、例えばリン酸二カルシウム;崩壊剤、例えばトウモロコシデンプン、バレイショデンプン、アルギン酸および/または類似物;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム;および/または甘味剤、例えばスクロース、ラクトースおよび/またはサッカリンを加えてもよくそして/または調味料、例えばペパーミント、ヒメコウジ油、および/またはチェリー風味を含んでもよい。投与単位剤型がカプセルの場合に、それは、上記の種類の物質に加えて液状担体を含んでもよい。種々のその他の物質が、投与単位の物理的形態を変性するために被覆および/またはその他として存在してもよい。例えば、錠剤、丸薬、および/またはカプセルはシェラック、糖および/または双方を用いて被覆されてもよい。シロップ剤またはエリキシル剤は、活性化合物、甘味料としてスクロース、保存剤としてメチルおよび/またはプロピルパラベン、色素および/または調味料、例えばチェリーおよび/またはオレンジ風味を含んでもよい。
【0075】
基質:本発明の組成物の基質は、粉末またはマルチ粒状物、例えば顆粒、ペレット、ビーズ、球状体、ビードレット、ミクロカプセル、ミリ球状体、ナノカプセル、ナノ球状体、ミクロ球状体、小板状体、ミニ錠剤、錠剤またはカプセルであってもよい。粉末は有効成分の微細に分割された(磨砕、ミクロン化、ナノサイズ化、沈降)形態または添加剤分子凝集物または複数成分の複合凝集物または活性成分および/もしくは添加剤の凝集物の物理的混合物を構成する。かかる基質は、当該技術分野では公知の種々の物質から形成されもよく、例えば、糖類、例えばラクトース、スクロースまたはデキストロース;多糖類、例えばマルトデキストリンまたはデキストレート;デンプン;セルロース誘導体、例えばミクロクリスタリンセルロースまたはミクロクリスタリンセルロース/カルボキシメチルセルロースナトリウム;無機物、例えばリン酸二カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、タルク、またはチタニア;およびポリオール、例えばマンニトール、キシリトール、ソルビトールまたはシクロデキトリンである。
【0076】
基質は、しばしば固体ではあるが、固体物質である必要はないことは強調されるべきである。例えば、基質上のカプセル化被覆は、液体、半液体、粉末またはその他の基質物質を包囲してカプセル化する固体の「殻(シェル)」として作用してもよい。かかる基質も本発明の範囲内であり、それというのも最終的にはそれが、基質が一部である、固体であるべき担体であるからである。本発明の銀ナノ粒子は、HIVおよびその他のレトロウイルスに対する局所用クリームとして使用されてもよい。上記のクリームはコンドームに使用されてもよい。
【0077】
賦形剤:本発明の銀ナノ粒子製薬学的組成物は、場合により、1種もしくはそれより多くの添加剤、時に添加剤と呼ばれるものを含んでもよい。賦形剤は、組成物内のカプセル化被覆内に含まれてもよく、それはカプセル化被覆を含み、もしくは固体担体の一部、例えばカプセル化被覆への被覆であるか、または固体担体を形成する成分内に含まれることができる。あるいは、賦形剤は製薬学的組成物内に含まれてもよいがしかし固体担体自体の一部ではない。適合する賦形剤は、固体担体、カプセル化被覆、または製薬学的投与剤型の調製を含むプロセスを促進するために通常使用されるものである。それらのプロセスは、凝集、空気浮遊冷却、空気浮遊乾燥、ボール粉砕、コアセルベーション、微細粉砕、圧縮、ペレット化、冷凍ペレット化、押出し、顆粒化、均質化、包含物錯化(inclusiion complexation)、冷凍乾燥、ナノカプセル化、溶融、混合、成形、パン被覆、溶剤脱水、音波処理、スフェロニゼーション(spheronization)、噴霧冷却、噴霧凝固、噴霧乾燥、またはその他の当該技術分野で公知の方法を含む。賦形剤は、前被覆またはカプセル化されてもよく、それは当該技術分野では周知である。
【0078】
滅菌された静脈内(iv)用溶液、例えば塩水は、ウイルス負荷の低下および免疫不全の発生の遅延に有効であろう。手術部位内の特定の領域の浄化に塩水洗浄を用いる外科医は、それが有用であることを認めるであろう。銀ナノ粒子は、単独またはリポソームと一緒に使用されてもよい。それらの形態は、銀ナノ粒子単独を含むかまたは抗菌剤と共同でうがい液の形態で再構成できる。吸入剤は単独またはペンタミジンと一緒に形成される。錠剤形態の銀ナノ粒子の使用は経口で摂取される。リポソーム剤型の経口使用は、リパーゼ分解を避けるために徐放カプセル中で与えられる。
【0079】
緩衝眼科用液剤−HIV関連網膜炎を患う患者のため。緩衝は、銀ナノ粒子が誘発するであろうpH変化のために必要である。高度に濃縮された筋肉内注入のための液剤は、健康管理従事者の注射針傷の処置を容易にする。この観点から、溶剤としてDMSOの使用は、狭い領域内への高濃度の銀ナノ粒子を送達する著しく迅速な浸透を与える。
【0080】
座薬形態−感染の主要な部位が大腸および直腸であるので、同性愛者の化学的予防のため。化学的予防剤の膣灌注およびクリーム−灌注は標準酢酸溶液中への性交前暴露に有用であろう。クリームは、受胎調節と関連して使用するために9−ノノキシノール殺精子剤と混合してもよい。
【0081】
膣スポンジ−これは、銀ナノ粒子がノノキシノールと一緒に数時間にわたって徐放されるように売春婦により使用できるであろう。ナノ粒子を塗布した手袋は、血液および体液に密に関係する外科医およびその他の健康管理従事者を支援するであろう。抗菌剤と組み合わせた液状石鹸内の銀ナノ粒子の使用は、病院および研究機関に有用であろう。これは単なる抗菌石鹸より効果が高くはないが、従業員および病院保険会社は評価するであろう。
【0082】
手術において、本発明は、キャッピング剤分子とのナノ粒子の相互作用に強く依存するナノ粒子の新規に発見された物理化学的性質を利用する17。本発明者らは、3種の異なるキャッピング剤の形式:炭素、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)(PVP)、およびウシ血清アルブミン(BSA)を有する銀ナノ粒子を試験した。炭素被覆ナノ粒子は、Nanotechnologies,Inc.から入手し、そしてさらなる処理はしないで使用した(例えばwww.nanoscale.com/products_silver.asp参照)。炭素マトリックスは、合成の間に融合を防ぐ役にたったが、しかし本発明者らは、炭素とナノ粒子の間に弱い誘引があるのみであることを見いだした。その結果、それらのナノ粒子はほぼ自由な表面を有する。PVP被覆ナノ粒子は、グリセリン中の変形ポリオールプロセスにより合成された。PVPは線状ポリマーでありそしてピロ
リジン環との結合を介してナノ粒子表面を安定化する。BSAタンパク質分子に直接コンジュゲートした銀ナノ粒子を水溶液中で合成した。BSAは、チオールを有するシステイン残基との直接結合を介してナノ粒子を安定化し、そしてタンパク質の嵩高さにより立体保護を与える。
【0083】
本発明の粒子は、下記のようにして製造および使用される。HIV−1株および細胞系統。HIV−1および細胞:HIV−1の実験室株HIV−1IIIBおよびX4野生型(wt)ウイルスは、AIDS Research and Reference Reagent Program,Division of AIDS,NIAID、NIHから入手した。CD4+およびMT−2細胞系統は、American Type Culture Collectionから入手した。cMAGI HIV−1受容体細胞は、Pittsburgh大学からPhalguni Gupta博士の好意で贈られた。使用したすべての他の試薬は、入手できる最高の品質のものであった。
【0084】
細胞培養およびウイルス繁殖:cMAGI細胞は、リン酸ナトリウムおよびピルビン酸ナトリウムを加えないDMEMダルベッコの変性イーグル培地(DMEM)(1X)液中で培養した。この培地は、4,500mg/L D−グルコースおよびL−グルタミン(Invitrogen,Paisley,UK)と10%ウシ胎児血清(FCS)、0.2mg/Lゲネチシン(geneticin)(G418)、および0.1μg/mLピューロマイシンを含んでいた。MT−2細胞は、10%ウシ胎児血清(FCS)および抗生物質を含むRPMI 1640中で培養した。
【0085】
HIV−1IIIB一次臨床単離物は、MT−2およびcMAGI細胞中にサブカルチャーして繁殖させた。HIV−1IIIBは、国立アレルギー感染症研究所、国立衛生研究所(National Institute of Allergies and Infectious DiseasesおよびNational Institute
of Health)のエイズ・ディヴィジョン、および共同研究者により編纂されたDAIDS Virology Manual For HIV Laboratories、バージョン1997に従って再生産された。
【0086】
細胞を含まない培養ウイルス上清のアリコートをウイルス接種材料として使用した。炭素被覆銀ナノ粒子。本研究で試験した炭素被覆銀ナノ粒子は、Nanotechnologies,Inc.(Austin,TX)から入手しそしてそれより多くの処理はしないで使用した。粒子の電子顕微鏡観察は、それらが平均直径22nm、標準偏差18nmを有することを明らかにした。
【0087】
PVP被覆銀ナノ粒子。これらの銀ナノ粒子は、還元剤および溶剤の双方としてグリセリンを使用する変更ポリオール方法により合成した。硫酸銀(AgSO、試薬級)およびポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)(PVP−K30、分子量=40,000)はSigma Aldrichから購入しそしてプロピレングリコール(グリセリン、>99%)はFischer Chemicalsから購入し、すべての材料は、さらに処理することなく使用した。要約すると、我々はPVP0.2gを丸底フラスコに加え次いでグリセリン30mLを加えた。PVPが溶解すると、我々は温度を140℃に上昇させた。30分後に我々は0.015M AgSO 2mLを加えそして1時間放置して反応させた。ナノ粒子粒径分布は、170個の粒子の測定に基づくHAADF写真から得た。合成したナノ粒子は6.49±2.29nmの平均粒径を示した。
【0088】
BSA被覆銀ナノ粒子。我々が以前に報告した合成方法の変更バージョンを用いてウシ血清アルブミン(BSA)のタンパク質分子に直接コンジュゲートした銀ナノ粒子を製造した。硝酸銀(AgNO 、0.945M)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH
、99%)および200プルーフ分光分析級エタノールはAldrichから購入した。ウシ血清アルブミン(BSA)はAldrichから購入した。ウシ血清アルブミン(BSA)はFischerから購入しそしてさらに処理はしないで使用した。要約すると、水素化ホウ素ナトリウムを硝酸銀およびBSAの水溶液に強く攪拌しながら加えた。Ag+:BSAのモル比は28:1であり、そしてAg+:BH −のモル比は1:1であった。反応容積は40mLでありそして13.50μmolのBSAを含んでいた。反応を1時間進行させ、そして生成物を5℃で沈降させ、次いで冷エタノール濾過により精製した。ナノ粒子粒径分布は、粒子500個に基づくHAADF写真から得た。BSAコンジュゲート化銀ナノ粒子は、2頂粒径分布を示し、約90%が直径2.08±0.42nmであり、そして約10%が6.17±1.72nmであった。
【0089】
血清アルブミンは、球状タンパク質であり、そして血漿内に最も多いタンパク質である。それは血液を介して疎水性分子を輸送し、そして血液pHの調節を支援する。ウシ血清アルブミン(BSA)は583個のアミノ酸残基から成る一本鎖ポリペプチドである。ヒト血清アルブミンの構造、BSAに類似する構造は、CurryらによりX線回折から決定された31。空間群はC121であり、ここでセル定数は、a=189.18Å、b=38.96Å、c=96.40Å、およびβ=105.31°である。BSAの数個の残基は、ナノ粒子表面を安定化できる硫黄、酸素および窒素を含む基を有する。銀との最強の相互作用は、35チオール結合システイン残基を含むらしい。
【0090】
HIV−1感染を抑制する銀ナノ粒子の能力は、CD4+MT−2細胞およびcMAGI HIV−1レポーター細胞に対して試験して決定した。CD4+MT−2細胞のウイルス感染の細胞変性効果は、別途報告したようにして18、融合細胞形成の光学顕微鏡評価により、ならびにブルーセルアッセイを用いてcMAGI細胞のHIV−1感染により分析した19−21。すべてのデータは、二人の独立した観察者による2つの試料の分析により得られた。
【0091】
試験したすべての銀ナノ粒子調製剤について、本発明者らは、培養した細胞中に温和な毒性のみが観察されるようなIC50を有するHIV−1感染性の投与量依存性抑制を見いだし、それを図1および2に示す。25μgAg/mL以上の濃度で、ウイルス感染性は融合細胞形成により検出できない程度まで低下した。
【0092】
図1a〜1eは、MT−2細胞中の銀ナノ粒子の毒性の記載である。MT−2細胞に対するナノ粒子調製剤の毒性は、トリパン・ブルー排除アッセイを用いて決定した38。すべての場合に、銀ナノ粒子の初期濃度は50μg/mLであり、そして連続的な2倍希釈を行いそして2x105 MT−2細胞と混合した。試料を37℃でインキュベーションし、そして銀ナノ粒子への暴露1a(3時間)および1b(24時間)後に光学顕微鏡を介して評価した。要約すると、細胞懸濁液のアリコートを0.4%トリパン・ブルーを用いて1:1(v:v)に希釈し、そして血球計数器を用いて細胞を数えた。生存度は、細胞の全数に対する非染色処理細胞の数の百分率で表した。図1c〜1eは、炭素被覆銀ナノ粒子への暴露の24時間後におけるMT−2細胞の光学顕微鏡写真である。銀の濃度は、それぞれ3、12および50μg/mLであった(倍率10倍)。
【0093】
図2a〜2hは、銀ナノ粒子によるHIV−1の抑制を示す。単独または種々の濃度の銀ナノ粒子を含むRPMI培地を、HIV−1IIIB細胞を含まないウイルスの試料105TCID50と混合した。使用した銀ナノ粒子の最高濃度は100μg/mLであった。30秒後に、溶液の連続的2倍希釈物を、標的細胞の培養物(2x105 MT−2および2x105 cMAGI HIV−1レポーター細胞、HIV−1IIIBウイルスの感染多重度(moi)0.2〜0.5)に加えた。それぞれの希釈物を4個のウエルに暴露した。その後、細胞を37℃で3〜5日間、5%CO加湿培養装置内でインキュベーションした。図2aでは、HIV−1媒介融合細胞形成の評価はMT−2細胞に関して行い、一方図2bでは、cMAGI細胞に関して行い、伝染の百分率は以下のようにして推定した:それぞれの試験したウエルの上清から得た青色染色細胞の数を、陽性対照のウエル内の培養物上清から得た青色染色細胞の数で割った。図2cの写真:MT−2細胞陰性対照、図2d:MT−2細胞陽性対照、そして図2e:HIV−1処理したMT−2細胞であり、ここでウイルスは、濃度6μg/mLの炭素被覆銀ナノ粒子にあらかじめ暴露された。図2fの写真:cMAGI細胞陰性対照、図2g:cMAGI細胞陽性対照、そして図2h:HIV−1処理したcMAGI細胞であり、ここでウイルスは、濃度6μg/mLの炭素被覆銀ナノ粒子にあらかじめ暴露された(倍率10倍)。
【0094】
毒性およびHIV−1抑制に観察された傾向は、種々のキャピング剤との銀ナノ粒子の相互作用を利用して説明できる。BSAおよびPVP保護されたナノ粒子は、高度に反応性の粒子表面がキャッピング剤に結合してそしてカプセル化されたために、低い毒性を示す。対照的に、炭素被覆ナノ粒子は、それらの本質的に自由な表面のために、ウイルスに対してより大きい抑制効果を有する。
【0095】
高角度散乱暗視野(HAADF)走査透過型電子顕微鏡が、銀ナノ粒子がHIV−1の感染性を検出不能のレベルまで低下させる機構を解明するために使用された。HAADFイメージは、ラザフォード後方散乱を受けた電子により主として形成される。その結果、イメージのコントラストが分子量の相違に関連し22,23そして強度はほぼZ2として変化する。従って、イメージコントラストは、組成に関連する。良い近似として、より軽い元素は暗く見えそしてより重い元素は明るく見える。この理由から、ウイルス上の非常に小さい(約1nm)銀ナノ粒子でも明瞭に観察され、それは図3d〜3lから分かる。
【0096】
図3a〜3lは、HIV−1ウイルスのHAADF写真である。要約すると、図3a〜3cは、ナノ粒子処理を受けなかったHIV−1ビリオン;図3d〜3fは、炭素被覆銀ナノ粒子に暴露されたHIV−1ビリオンであり;そして図3g〜3lは、BSAコンジュゲート銀ナノ粒子に暴露されたHIV−1ビリオンである。形状の二つの異なるタイプが観察された。多数のビリオンは、多孔性または織物状、例えばaのような表面を有する球状に近く、本発明者らはこの形態をウイルスの未熟形状に帰する。ビリオンの第二のタイプは、多面体形態を示し、本発明者らはそれをウイルスの成熟形状に帰する。大部分の多面体状ビリオンは、図3bおよび3hに見られるように、正二十面体対称を有するように見える。その他の多数の多面体状ウイルスは、例えば3iおよび3lのように、ほぼ正二十面体対称のように見える。より異常な多面体形態も、例えば3g、3jおよび3kに見られる。図3a〜3lに示す試料は、電子顕微鏡のために以下のようにして調製された:HIV−1IIIB細胞を含まないウイルスの105 TCID50試料を、濃度100μg/mLの種々の銀ナノ粒子の溶液を用いて処理した。30秒後に、10μLの小滴を炭素被覆ニッケルTEM格子上に配置しそしてPBS/グルタルアルデヒドの2.5%溶液の蒸気に30分間暴露した。顕微鏡観察は、Oxford EDS装置を備えたJEOL2010−F TEMを用い、加速電圧200kVにおいてそしてHAADF検出器を用いる走査モードで操作した。スケールバー:20nm。
【0097】
銀の存在は、エネルギー分散X線分光法(EDS)により独立して確認された。図4f参照。ウイルスに結合したナノ粒子の大きさ(図4e)は、すべて1〜10nmの範囲内であった。
【0098】
図4a〜4fは、銀ナノ粒子とHIV−1との特異性相互作用を要約したものでありそしてそれを支持するモデルを提供する。図4aは、付着したナノ粒子の間に明瞭に観察される規則的空間関係を有する正二十面体ウイルスのHAADF写真である(スケールバー;20nm)。図4bは、Nermetら25による正二十面体HIV−1−ビリオンの構造モデルであり、円形は糖タンパク質gp120の位置を表す。図4cは、Kwongら39により決定されたgp120の三次元構造である(PDB 1GC1)(ジスルフィドは空間充填原子として示されている)。図4dは、HIV−1エンベロープ糖タンパク質のgp120サブユニットと結合した銀ナノ粒子の図示である。図5eは、すべての試験された調製物から導かれた、HIV−1ウイルスに結合した銀ナノ粒子の複合体の粒径分布を示す。図4fは、Agの存在を確認する写真のEDS分析である。Cシグナルは、TEM格子およびウイルスの双方に由来しそしてO、およびPはウイルスより、そしてNa、Cl、およびKは培地内に存在する。NiおよびSiはTEM格子に由来し、一方Cuは試料ホルダーに帰せられる。
【0099】
HIV−1の大域的対称、またはそれの欠如は、激しい議論の主題であった24,25。従来の電子顕微鏡研究は、一部の研究者に、成熟ビリオンが大域的正二十面体対称を有し、一方未成熟ビリオンはより球状に近くなる傾向があるという結論に導いた26−28。図3は、高角度散乱暗視野(HAADF)走査透過型電子顕微鏡を用いて得られたHIV−1形態の写真を示す。それらの結果は、ウイルスの成熟形状が、優先的に正二十面体対称を取ることを確認した。HAADFを用いて観察されたその他のウイルス形態も図3に示され、そしてこのウイルスの複雑性を反映している。未成熟ウイルスの場合でも、図3aおよび3d〜3fに示すように、本発明者らは、従来の研究29,30で観察されたような局所的秩序の証拠を見いだした。
【0100】
図4aに明確に見て取れるように、ナノ粒子はウイルスに無作為に付着するのではなく、3個の粒子の群で観察される規則的な空間関係をもって特定の位置にある。Nermetおよび共同研究者25は、ウイルスの成熟形状における正二十面体対称を支持する実験データに基づくHIV−1の構造モデルを開発した。彼らのモデルは、面あたりに3個のgp120ノブを有する規則的正二十面体からなり、それは図4bに示されている。それらの観察はこのモデルを参照すれば明瞭であり、そして本発明者らは、ナノ粒子がHIV−1エンベロープ糖タンパク質のgp120サブユニットと優先的に相互作用をすると結論する。本発明者らは、理論には拘束されないが、糖タンパク質とナノ粒子の間の相互作用は、暴露されたジスルフィド結合の分裂、およびAg−S結合の形成により促進されることを提示する。
【0101】
本発明者らは、BSAタンパク質のジスルフィド結合を分裂する金ナノ粒子の能力をすでに示している。要約すると、BSAのUV−可視光吸収スペクトルは、タンパク質中の芳香族残基トリプトファンおよびチロシンおよびジスルフィド結合に起因する278nmの極大を示す32。本発明者らは、金ナノ粒子の種々の濃度でコンジュゲートされたBSAの吸収スペクトルを測定し、そして278nmの吸収が金負荷の増加に応じて低下することを観察した。赤外線分光分析は、芳香族残基が不変に保たれることを明らかにし、そしてラマン分光分析は、508cm−1におけるS−S伸縮の欠如を示した。従って、低下した吸収度は、ジスルフィド結合の分裂を反映すると提示された。
【0102】
銀ナノ粒子が同一の能力を有することを確認するために、我々は銀ナノ粒子の種々の濃度でコンジュゲートされた同等のBSAのUV−可視光吸収スペクトルを得た(図5参照)。要約すると、銀ナノ粒子の種々の濃度でコンジュゲートされたBSAのUV−可視光吸収スペクトル。吸収スペクトル分析は、初期Ag:BSAモル比、7:1、28:1、および56:1で、純粋BSAおよび銀コンジュゲートBSAに対して行われた。278nmにおける吸収強さは、銀負荷が増加すると低下し、金コンジュゲートBSAの場合と同様であった。278nmにおける吸収も銀負荷の増加に応じて低下した。両方の製品は大きさおよび安定性に関して同様なので、我々は、現象が一致すること、および低下した吸収は、Ag−S結合がナノ粒子表面で形成されることに対応するジスルフィド結合の分裂を反映すると結論する。
【0103】
同様の機構は、銀ナノ粒子とHIV−1gp120糖タンパク質との相互作用に対して提示される。ウイルスエンベロープ糖タンパク質のgp120サブユニットは、数個のジスルフィド結合を有する。具体的には、Leonardおよび共同研究者33は、9個のジスルフィド結合を報告し、その3個がCD4結合ドメインの近辺に位置すると報告した。本発明者らは、理論には拘束されないが、銀ナノ粒子が暴露されたジスルフィド結合と選択的に相互作用してAg−S結合を形成するという考察を提示する。
【0104】
以前に記載されたように、1〜10nmの範囲内のナノ粒子のみがウイルスと結合することが観察された。炭素被覆ナノ粒子の場合に、集団の大部分が直径10nmより大きく(銀ナノ粒子調製物の完全な粒径分布ヒストグラムおよび電子顕微鏡写真は、図6〜8参照)、ナノ粒子とgp120との相互作用は大きさに依存性であると思われる。
【0105】
図6A〜6Cは、従来技術の炭素被覆銀ナノ粒子のそれぞれ透過型電子顕微鏡写真、高角度散乱暗視野写真および粒径分布ヒストグラムである。
【0106】
図7A〜7Cは、本発明者らにより開発されたPVP被覆銀ナノ粒子のそれぞれ透過型電子顕微鏡写真、高角度散乱暗視野写真および粒径分布ヒストグラムである。
【0107】
図8A〜8Cは、本発明のアルブミン被覆銀ナノ粒子のそれぞれ透過型電子顕微鏡写真、高角度散乱暗視野写真および粒径分布ヒストグラムである。
【0108】
上記のように、ナノ粒子とgp120との相互作用は、大きさに依存性であり、それは糖タンパク質ノブ(直径約14nm25)の大きさに起因するらしいが、しかしこの現象は、この大きさ範囲内のナノ粒子独自の性質および反応性上昇の関数でもあるらしい。小さい(<5nm)金属粒子に関するTEM研究34−36は、小さい励起でも構造変動を誘発するために十分であり、そしてかかる変動の速度は、ナノ結晶が小さくなると増加するらしいことを示した。ナノ粒子の種々の形態に対する全ポテンシャル表面エネルギーは、数個の極小から成り、そしてそれらの状態の間の障壁は、熱変動が形態における変化を生成するために十分なエネルギーを供給するくらいに小さい(ほぼkT)。この高度に流動的な特性は、ナノ粒子の反応性を増大する。
【0109】
血漿タンパク質へのナノ粒子の直接コンジュゲートは、血流内の循環へナノ粒子を限定する戦略を与えることができるであろう。その大きくそして負の荷電のために、血清アルブミンは、一般に脈管構造内に限定される。HIV−1が血流内で複製するので、かかる粒子に直接付着したナノ粒子は、ターゲティング抗ウイルス送達の可能性を有する。球状タンパク質と抗体とのコンジュゲートは一般的であり、そしてウイルス特異性抗体との機能化タンパク質−ナノ粒子コンジュゲート体は、増強されたターゲティングを与えるであろう。
【0110】
結論として、本発明者らは、銀ナノ粒子が、ウイルスエンベロープ糖タンパク質のgp120サブユニットとの特異的相互作用によりHIV−1を抑制することを示した。明確化のためそして理論に制約されずまたは本発明の特許請求範囲をいかなる意味でも限定しないが、本発明者らは、銀ナノ粒子が暴露されたジスルフィド結合を分裂してAg−S結合を形成するので相互作用が起きることを提示する。gp120とのこの優先的相互作用により、銀ナノ粒子は、ウイルスの宿主細胞との結合を遮断し、それにより感染を防止する。ウイルスに結合したナノ粒子は、すべて1〜10nmの範囲内であり、そして本発明者らは、これがこの大きさのナノ粒子の高い反応性の関数であると信じている。提示された抑制機構がジスルフィド結合の分裂を含むので、直径1〜10nm程度の他の遷移金属ナノ粒子が抗ウイルス活性を示す可能性がある。ナノ粒子調製方法の融通性、複数の可能
な機能性化技術、および種々の媒体内へのナノ粒子の組込みの容易さは、抗ウイルス研究に新しい分野を開く。
【0111】
貴金属ナノ粒子タンパク質複合体は、ポリビニルピロリドンの水溶液にゆっくりと加えられそして良く混合される。次いで、25〜30メッシュの糖の球状体を貴金属ナノ粒子−タンパク質複合体薬剤溶液を用いて、流動層造粒機内で被覆する。薬剤を含むペレットを乾燥し、そしてOpadry Clearのシール被覆および良く混合された剥離(release)被覆が、92/8アセトン/水内のエチルセルロースおよびフタル酸ジエチルの溶液を噴霧して活性粒子に適用された。フタル酸ジエチルを用いて可塑化されたエチルセルロースとHPMCPの混合物の外部被覆を、内部被覆を有する活性粒子上に噴霧して変性剥離プロフィールビーズを製造した。それらのビーズをカプセル充填機械を用いて硬質ゼラチンカプセル内に充填して貴金属ナノ粒子−タンパク質複合ミニ錠剤、2.5、5.0、7.5、8.0、12.0、16.0および20.0mgを製造する。
【0112】
単一カプセル内のエンベロープ配合内の第一活性の即時放出および第二活性の徐放のためのカプセル。貴金属ナノ粒子タンパク質複合体は、冷凍噴霧、冷凍乾燥、真空乾燥、熱乾燥、熱−真空乾燥などを行って粉末を形成し、引き続いて単離および精製してもよい。下記は、カプセルの一部としての貴金属ナノ粒子−タンパク質複合体の例である。熟練者は、それらの配合が、即時、中程度および長期または持続性の放出を複合して調製できることを認めるであろう。
貴金属ナノ粒子−タンパク質複合体
タルク
ポビドン(Povidone)K−30
マルトデキストリン(Maltodextrin)MD−40
サイロイド(Syloid)
ステアリン酸
カプセル 1
ゲルキャップ中の放出のための配合:
貴金属ナノ粒子−タンパク質複合体
タルク
ポビドンK−30
マルトデキストリンMD−40
サイロイド
ステアリン酸
ゲルキャップ 1
座薬中の活性の放出のための配合:
貴金属ナノ粒子タンパク質複合体
タルク
ポビドンK−30
マルトデキストリンMD−40
サイロイド
ステアリン酸
蜜蝋/グリセロール
エンベロープされた配合内の第一活性の即時放出および第二活性の持続性放出のための起泡性錠剤、起泡性錠剤内:
貴金属ナノ粒子タンパク質複合体
タルク
ポビドンK−30
マルトデキストリンMD−40
ステアリン酸
炭酸水素ナトリウム
キャプレット中の即時放出のため:
貴金属ナノ粒子タンパク質複合体
タルク
ポビドンK−30
マルトデキストリンMD−40
ステアリン酸
キャプレット内に圧入
液体組成物内、本発明は以下のようにして提供される:
貴金属ナノ粒子タンパク質複合体
賦形剤
調味料
生物適合性等張液(例えば塩水)
緩衝液
【0113】
本明細書中に記載の特定の態様は、例示のために記載されたものであり、本発明の限定としてではないことは理解されるべきである。本発明の主要な特徴は、本発明の範囲から外れることなく種々の態様で利用できる。当該技術分野の熟練者は、日常的を越えない実験を用いて、本明細書中に記載の特定の手順に多数の等価物があることを認めるか、または承認できるであろう。かかる等価物は、本発明の範囲内と考えられそして特許請求範囲に含まれる。
【0114】
本明細書中に記載されたすべての出版物および特許出願は、本発明が該当する当該技術分野の熟練者の技術のレベルの表示である。すべての出版物および特許出願は、それぞれ個別の該出版物および特許出願が引用することにより編入されると特定かつ個別に指定されたと同様の範囲内で、引用することにより本明細書に編入される。
【0115】
特許請求において、「含んでなる」、「含む」、「保持する」、「有する」、「含有する」、「包含する」などのすべての遷移語句は、開放端的、すなわち含むが限定はされないと意味すると理解すべきである。「から成る」および「から本質的に成る」の遷移語句のみが、それぞれ閉端または半閉端遷移的語句である。
【0116】
本明細書中に開示および請求されたすべての組成物および/または方法は、本開示を参照して不当に多い実験を行うことなく製造および実施できる。本発明の組成物および方法が好ましい態様に関連して記載された場合には、本発明の概念、精神および範囲から外れることなく本明細書中に記載の組成物および/または方法および方法の段階中もしくは方法の連続した段階中に、変形が適用できることは、当該技術分野の熟練者には明らかであろう。さらに特定すると、化学的および生理学的の双方で関連する一定の薬剤は、本明細書中に記載の薬剤に対して置換されてもよく、同様の結果が達成されるであろうことは明らかである。当該技術分野の熟練者には明らかなすべてのかかる同様な置換および変更は、添付の特許請求範囲により定義されたと同様に、本発明の精神、範囲および概念内であると見なされる。
【0117】
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【図面の簡単な説明】
【0118】
本発明の特徴および利点をさらに完全に理解するために、添付の図面を本発明の詳細な説明のために引用する。
【図1a−1e】図1a〜1eは、MT−2細胞中の銀ナノ粒子の毒性を示す。図1aおよび1bは、トリパン・ブルー排除アッセイ38を使用して決定した3時間(1a)、および24時間(1b)後のMT−2細胞に対するナノ粒子調製剤の毒性を示す図である。図1c〜1eは、3μg/mL(1c)、12μg/mL(1d)、および50μg/mL(1e)の銀ナノ粒子濃度での炭素被覆銀ナノ粒子への24時間暴露後のMT−2細胞の光学顕微鏡写真である(倍率10倍)。
【図2a−2h】図2a〜2hは、銀ナノ粒子によるHIV−1の抑制を示す。図2aおよび2bは、3種の調製物(従来技術の炭素被覆粒子)および本発明の2種の粒子のCD4+MT−2細胞(2a)およびcMAGI細胞(2b)を用いたナノ粒子調製剤の毒性を示すグラフである。顕微鏡写真は下記である:2c、MT−2細胞陰性対照;2d、MT−2細胞陽性対照;2e、ウイルスが濃度6μg/mLで炭素被覆銀ナノ粒子にあらかじめ暴露された場合のHIV−1処理MT−2細胞;2f、cMAGI細胞陰性対照;2g、cMAGI細胞陽性対照;および2h、ウイルスが濃度6μg/mLで炭素被覆銀ナノ粒子にあらかじめ暴露された場合のHIV−1処理cMAGI細胞(倍率10X倍)。
【図3a−3l】図3a〜3lは、HIV−1ウイルスのHAADF写真であり、すなわち、図3a〜3cは、ナノ粒子処理をしないHIV−1ビリオン;3d〜2fは、炭素被覆銀ナノ粒子に暴露されたビリオン;および3g〜3lは、BSAコンジュゲート銀ナノ粒子に暴露されたHIV−1ビリオンである。
【図4a−4f】図4a〜4fは、本発明の被覆銀ナノ粒子とHIVビリオンとの間の相互作用の構造関数関係を要約する。図4aは、付着ナノ粒子の間で明瞭に観察される規則的空間関係を有する正二十面体ウイルスのHAADF写真である(スケールバー:20nm);4bは、正二十面体HIV−1ビリオンの構造モデルである(円は糖タンパク質gp120の位置を示す);4cは、Kwongらにより決定されたgp120の三次元構造を示す(PDB 1GC1);4dは、HIV−1エンベロープ糖タンパク質のgp120サブユニットとの銀ナノ粒子結合の別の図示である;4eは、すべての試験した調製剤から誘導されたHIV−1ウイルスに結合した銀ナノ粒子の粒径分布を要約したグラフである。;そして4fは、Agの存在を確認する写真のEDS分析である(CシグナルはTEM格子およびウイルスの双方に由来し、O、およびPは、ウイルスに由来し、そしてNa、Cl、およびKは、培地内に存在する。NiおよびSiはTEM格子に由来し、一方Cuは試料ホルダーに帰せられる。
【図5】図5は、例えばBSAと本発明の銀ナノ粒子の種々のモル比で製造された本発明のタンパク質被覆銀ナノ粒子の吸収強さにおける変化を示すグラフである。
【図6a−6c】図6a〜6cは下記である。従来技術の炭素被覆銀ナノ粒子に関して、6aは透過型電子顕微鏡写真である;6bは、高角度散乱暗視野写真である;そして6cは、粒径分布ヒストグラムである。
【図7a−7c】図7a〜7cは下記である。本発明により開発されたPVP被覆銀ナノ粒子に関して、7aは透過型電子顕微鏡写真である;7bは、高角度散乱暗視野写真である;そして7cは、粒径分布ヒストグラムである。および
【図8a−8c】図8a〜8cは下記である。本発明のアルブミン被覆銀ナノ粒子に関して、8aは透過型電子顕微鏡写真である;8bは、高角度散乱暗視野写真である;そして8cは、粒径分布ヒストグラムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質にコンジュゲートした1種もしくはそれより多くの貴金属ナノ粒子を含んでなる抗ウイルス組成物
【請求項2】
ナノ粒子が少なくとも約3μg/mLまたはそれを越える濃度で提供される、請求項1の組成物。
【請求項3】
ナノ粒子が、液剤、懸濁剤、クリーム剤、軟膏、ローション剤、浣腸剤、エリキシル剤、シロップ剤、乳剤、ガム剤、挿入剤、座薬、ゼリー剤、発泡剤、ペースト剤、香錠、噴霧剤、マグマ剤または湿布剤中で利用される、請求項1の組成物。
【請求項4】
ナノ粒子が、即時放出、長期的放出およびそれらの組合せとしてパッケージされる、請求項1の組成物。
【請求項5】
貴金属が、金、銀、白金合金およびそれらの組合せを含んでなる、請求項1の組成物。
【請求項6】
ナノ粒子が単一投与物内に包含されている、請求項1の組成物。
【請求項7】
ナノ粒子がコンドーム内またはその周囲に配置されている、請求項1の組成物。
【請求項8】
ナノ粒子が、カプセル、キャプレット、ソフトゲル、ゲルキャップ、座薬、フィルム、顆粒、ゴム、挿入剤、香錠、ペレット、トローチ、ドロップ、ディスク、湿布剤またはカシェ剤内に包装される、請求項1の組成物。
【請求項9】
ナノ粒子の80%以上が約60分間以内に放出される、請求項1の組成物。
【請求項10】
ナノ粒子が、約90分間以内でナノ粒子の90%を越える放出を含んでなる即時放出のために提供される、請求項1の組成物。
【請求項11】
ナノ粒子が、約60分間〜約8時間以内にナノ粒子の80%以上の放出を含んでなる長期的放出のためにパッケージされている、請求項1の組成物。
【請求項12】
製薬学的に許容されうる担体内に1個もしくはそれより多くの球状タンパク質−貴金属ナノ粒子を再懸濁して抗ウイルス組成物を形成させる工程、および
哺乳動物に抗ウイルス組成物を提供する工程
を含んでなる、抗ウイルス感染の防御方法。
【請求項13】
製薬学的に許容されうる担体内に銀ナノ粒子を含んでなる組成物を、抗ウイルス治療を必要としていると考えられる患者に提供する工程
を含んでなる、ウイルス感染を有すると疑われる患者の処置方法。
【請求項14】
貴金属が銀、金、または白金を含んでなる、請求項13の方法。
【請求項15】
低級脂肪族アルキルアルコールの存在下で貴金属硝酸塩とハロ−硼素水素化物とを混合する工程
を含んでなる、タンパク質−貴金属ナノ粒子の製造方法。
【請求項16】
タンパク質および貴金属粒子が約1:28〜28:1の比にある、請求項15の方法。
【請求項17】
貴金属硝酸塩がAgNOを含んでなる、請求項15の方法。
【請求項18】
貴金属が、銀、金、白金、それらの混合物、合金および組合せを含んでなる、請求項15の方法。
【請求項19】
タンパク質が球状タンパク質を含んでなる、請求項15の方法。
【請求項20】
タンパク質が、アルブミン、免疫グロブリン、凝固因子、ヘモグロビン、それらの混合物および組合せ物から選択される、請求項15の方法。
【請求項21】
球状タンパク質にコンジュゲートしている1個もしくはそれより多くの貴金属ナノ粒子を含んでなる、
抗ウイルス組成物。
【請求項22】
ナノ粒子が少なくとも約3μg/mLまたはそれより多くの濃度で提供される、請求項21の組成物。
【請求項23】
ナノ粒子が、液剤、懸濁剤、クリーム剤、軟膏、ローション剤、浣腸剤、エリキシル剤、シロップ剤、乳剤、ガム剤、挿入剤、座薬、ゼリー剤、発泡剤、ペースト剤、香錠、噴霧剤、マグマ剤または湿布剤中で利用される、請求項21の組成物。
【請求項24】
ナノ粒子が即時放出のためにパッケージされている、請求項21の組成物。
【請求項25】
ナノ粒子が長期的放出のためにパッケージされている、請求項21の組成物。
【請求項26】
ナノ粒子が1〜2mmの金ナノ粒子を含んでなる、請求項21の組成物。
【請求項27】
ナノ粒子が2〜5mmの銀ナノ粒子を含んでなる、請求項21の組成物。

【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−519849(P2008−519849A)
【公表日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541353(P2007−541353)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/040943
【国際公開番号】WO2006/053225
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(398056757)ボード・オブ・リージエンツ,ザ・ユニバーシテイ・オブ・テキサス・システム (4)
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS, THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【Fターム(参考)】