説明

タンパク質の産生に使用するためのリーダー配列

本発明はタンパク質の産生のための新規リーダー配列を包含する。更に具体的には、本発明は、組織型プラスミノーゲンアクチベータープロペプチドと融合したイムノグロブリンシグナルペプチドを含んで成るリーダー配列をコードするDNAコンストラクト、及び短縮ヒト組織型プラスミノーゲンアクチベータープロペプチドと融合したイムノグロブリンシグナルペプチドを含んで成るリーダー配列をコードするDNAコンストラクト、に関する。本発明は更に、哺乳類細胞におけるタンパク質の産生のためのこれらのDNAコンストラクトの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質の産生のためのリーダー配列に関する。更に具体的には、本発明は、組織型プラスミノーゲンアチベータープロペプチドと融合したイムノグロブリンシグナルペプチドを含んで成るリーダー配列をコードするDNAコンストラクトに関する。本発明は更に、哺乳類細胞のタンパク質を産生するためのこれらのDNAコンストラクトの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
1.タンパク質前駆体のプロセシング
分泌型タンパク質は最初に、細胞の内側で、分泌経路への進入を保証するリーダー配列を含む前駆体型で発現する。このようなリーダー配列は、シグナルペプチドと称され、発現産物が小胞体(ER)膜を通過するよう指示する。シグナルペプチドは通常ERへの移行の間にシグナルペプチダーゼで開裂する。一旦分泌経路に進入すると、タンパク質はゴルジ体に輸送される。ゴルジ体から、このタンパク質は、細胞液胞又は細胞膜のような区画へと導く異なる経路を辿ることがあり、あるいは細胞の外側に送られ、外側の培地に分泌されることもある(Pfeffer and Rothman (1987) Ann. Rev. Biochem. 56: 829-852)。
【0003】
分泌型タンパク質の工業生産のために、産生されるタンパク質は宿主細胞又は宿主生物から効率的に分泌されなければならない。シグナルペプチドは、例えば、産生されるタンパク質の天然のシグナルペプチドでも、異種のシグナルペプチドでも、又は天然のシグナルペプチドと異種のシグナルペプチドのハイブリッドであってもよい。多数のシグナルペプチドが分泌型タンパク質の産生に使用されている。それらの1つとして、マウスイムノグロブリンシグナルペプチド(IgSP、EMBLアクセッション番号M13331)がある。IgSPは1983年にLoh等によって最初に同定された(Cell. 33: 85-93)。IgSPは哺乳類細胞において良好な発現をもたらすことが知られている。例えば、欧州特許第0382762号は、IgSPと西洋ワサビペルオキシダーゼとの融合ポリペプチドを構築することによる西洋ワサビペルオキシダーゼの産生方法を開示している。
【0004】
しかしながら、現在知られているシグナルペプチドは幾つかの問題にしばしば直面している。非ヒト宿主細胞又は生物からヒトタンパク質を産生する場合に直面する1つの問題は、天然のシグナルペプチドが効率的な移行及び/又はシグナルペプチドの開裂を保証しないということである。このことは、シグナルペプチドの不正確な開裂によるタンパク質分泌の割合の低下及び/又はN末端伸長を示す成熟タンパク質の成熟分泌をもたらす。従って、シグナルペプチドの選択はタンパク質の工業生産にとって非常に重要である。
【0005】
タンパク質の分泌を指示するリーダー配列に加え、前駆体型は、成熟の間に開裂する補足のリーダー配列を含んで成ることもある。これらの補足のリーダーペプチドは、プロペプチドと称され、通常シグナルペプチドに続いている。事実上全てのペプチドホルモン、多数の生物活性タンパク質(例えば、成長因子、受容体及び細胞接着分子)、並びに多数の細菌毒素及びウイルス性のエンベロープ糖タンパク質は、翻訳後に切り出された結果成熟性で且つ生物学的に活性のタンパク質を生成するプロペプチドを含んで成る(Seidah and Chretien (1999) Brain Res. 848: 45-62)。
【0006】
プロペプチドは、前駆タンパク質転換酵素と称される酵素により開裂する。哺乳類の前駆タンパク質転換酵素には、例えば、サブチリシン転換酵素、PCSK1、PCSK2及びヒューリンがある。ヒューリンは広範に発現しており、そしてトランスゴルジ網に位置している。ヒューリンはタンパク質分解的に多数の前駆タンパク質基質を分泌経路の区画内で活性化する(Thomas (2002) Nat Rev Mol Cell Biol. 3: 753-766)。更に具体的には、ヒューリンは、トランスゴルジ網、分泌経路タンパク質をそれらの最終的な目的地へと選別するのに重要な後期ゴルジ構造、例えば、細胞表面、エンドソーム、リソソーム及び分泌顆粒、に局在化している。ヒューリンが開裂する部位は広く研究されている。当該開裂部位は、共通配列R−X−L/R−R(ここで、Xは任意のアミノ酸を表しうる)のカルボキシル末端のアルギニンの後に位置する(Nakayama (1997) Biochem. J 327: 625-635)。開裂効率は、Xがリジン、バリン、イソロイシン又はアラニンである場合に増大する(Watanabe et al (1992) J Biol. Chem. 267: 8270-8274)。
【0007】
2.組織型プラスミノーゲンアクチベーター前駆体
ヒト組織型プラスミノーゲンアクチベーター前駆体(tPA、SwissProtアクセッション番号P00750)は、35アミノ酸のリーダー配列を含んで成る562アミノ酸の前駆体型として合成されている。このリーダー配列は、23アミノ酸のシグナルペプチド、その後の12アミノ酸のプロペプチドを含んで成る。
【0008】
Kohne等(1999, J. Cell. Biochem. 75: 446-461)は、35アミノ酸のtPAリーダー配列が、全てのN結合型グリコシル化部位を欠失しているキメラ腫瘍壊死因子受容体−イムノグロブリンタンパク質(TNFR−Ig)の細胞内輸送を救助(rescue)することができたことを示した。1999年に、Etcheverry等は、シグナルペプチドの最後のアミノ酸とtPAのプロペプチド全体を含んで成る、13アミノ酸のリーダー配列が、TNFR天然シグナルペプチドとTNFR−Igポリペプチドとの間に挿入した場合にTNFR−Ig融合体の分泌を増強することができたことを報告した(Etcheverry et al., ESACT meeting, abstract 01.07/P1. 02)。
【0009】
従って、タンパク質のプロセシングは、効率的なタンパク質分泌にとって基本的な過程であり、リーダー配列の選択は、分泌型ポリペプチドを産生する場合に必須のステップである。多くの場合、リーダー配列は低レベルの分泌をもたらすか、又は分泌を全くもたらさず、あるいは不正確又は不完全なタンパク質分解的なプロセシングをもたらす。従って、本発明の目的は、ポリペプチドのより効率的な分泌及び/又はプロセシングを保証するリーダー配列を提供することである。
【0010】
本発明の要約
本発明は、組織型プラスミノーゲンアクチベータープロペプチドと融合したイムノグロブリンシグナルペプチドを含んで成るリーダー配列が、他の既知のリーダー配列よりも効率的に注目のタンパク質を分泌させ、そしてプロセシングすることができるという発見に基づくものである。尚、短縮型のヒトtPAプロペプチドを含んで成るリーダー配列であって、tPAプロペプチドのカルボキシル末端がアミノ酸Arg−Xaa−Arg−Argから成るものが注目のタンパク質の効率的な分泌及びプロセシングを可能にすることが明らかとなった。
【0011】
従って、本発明の第一の観点は、tPAプロペプチドと融合したイムノグロブリンシグナルペプチドを含んで成るIgSP−tPAプレプロペプチドをコードする配列を含んで成るDNAコンストラクトに関する。
【0012】
第二の観点は、ヒト組織型プラスミノーゲンアクチベータープロペプチド(tPA)をコードする配列を含んで成るDNAコンストラクトであって、前記tPAプロペプチドのカルボキシル末端がアミノ酸Arg−Xaa−Arg−Argから成るもの、に関する。
【0013】
第三の観点は、本発明のDNAコンストラクトで形質転換した宿主細胞に関する。
【0014】
第四の観点は、注目のポリペプチドの産生方法であって、本発明のDNAコンストラクトで宿主細胞をトランスフェクションするステップを含んで成る方法に関する。
【0015】
第五の観点は、注目のポリペプチドの産生方法であって、本発明の宿主細胞を培養するステップを含んで成る方法に関する。
【0016】
第六の観点は、注目のポリペプチドの産生のための本発明のDNAコンストラクトの使用に関する。
【0017】
第七の観点は、本発明のDNAコンストラクトがコードする融合ポリペプチドに関する。
【0018】
配列表の配列の簡単な説明
配列番号1は、本発明のIgSP−tPAプレプロペプチドのタンパク質配列に相当する。
【0019】
配列番号2は、ヒトtPAプレプロペプチドのタンパク質配列に相当する。
【0020】
配列番号3は、マウスIgGμ重鎖シグナルペプチドのタンパク質配列に相当する。
【0021】
配列番号4は、ヒト成長ホルモンのシグナルペプチドのタンパク質配列に相当する。
【0022】
配列番号5は、ヒト分泌型アルカリホスファターゼシグナルペプチドのタンパク質配列に相当する。
【0023】
配列番号6は、本発明のIgSP−tPAプレプロペプチドの核酸配列に相当する。
【0024】
配列番号7は、ヒトtPA−プレプロペプチドの核酸配列に相当する。
【0025】
配列番号8は、マウスIgGμ重鎖シグナルペプチドの核酸配列に相当する。
【0026】
配列番号9は、TNF受容体p55の可溶性部分のタンパク質配列に相当する。
【0027】
配列番号10は、成熟インターフェロンガンマ受容体鎖のタンパク質配列に相当する。
【0028】
配列番号11〜20は、Igμ重鎖シグナルペプチドを構築し、増幅するのに使用したプライマーに相当する。
【0029】
配列番号21〜34は、ヒト成長ホルモンシグナルペプチドを構築し、増幅するために使用したプライマーに相当する。
【0030】
配列番号35〜41は、ヒト分泌型アルカリホスファターゼシグナルペプチドを構築し、増幅するために使用したプライマーに相当する。
【0031】
配列番号42〜49は、本発明のIgSP−tPAプレプロペプチド構築し、増幅するために使用したプライマーに相当する。
【0032】
配列番号50は、p55腫瘍壊死因子の可溶性細胞外部分の核酸配列に相当する。
【0033】
配列番号51〜54は、本発明のIgSP−tPAとtPAプレプロペプチド内に3つのアミノ酸欠失を導入するために使用したプライマーに相当する。
【0034】
配列番号55〜58は、tPAプレプロペプチドを生成するのに使用したプライマーに相当する。
【0035】
本発明の詳細な説明
本発明は、組織型プラスミノーゲンアクチベータープロペプチドと融合したイムノグロブリンシグナルペプチドを含んで成るリーダー配列が、他の既知のリーダー配列よりも効率的に注目のタンパク質を分泌させ、そしてプロセシングすることができるという発見に由来するものである。実施例2及び3に示すように、本発明のリーダー配列は、注目のタンパク質の分泌を促進するのに、従来技術のリーダー配列よりも少なくとも2倍超効率的である。
【0036】
尚、短縮型のヒトtPAプロペプチドを含んで成るリーダー配列であって、tPAプロペプチドのカルボキシル末端がアミノ酸Arg−Xaa−Arg−Argから成るものが注目のタンパク質の効率的な分泌及びプロセシングを可能にすることが明らかとなった。
【0037】
従って、本発明は、(i)組織型プラスミノーゲンアクチベータープロペプチドと融合したイムノグロブリンシグナルペプチド;又は(ii)カルボキシル末端がアミノ酸Arg−Xaa−Arg−Argから成るtPAプロペプチド、を含んで成る新規リーダー配列を提供する。これらのリーダー配列を哺乳類細胞における注目のタンパク質の産生に使用することは、本発明の追加の観点である。
【0038】
本発明の第一の観点は、組織型プラスミノーゲンアチベータープロペプチドと融合したイムノグロブリンシグナルペプチドを含んで成るIgSP−tPAプレプロペプチドをコードする配列を含んで成るDNAコンストラクトに関する。
【0039】
本明細書で使用する場合、用語「シグナルペプチド」とは、分泌経路への進入を保証するリーダー配列を意味する。本明細書で使用する場合、用語「プロペプチド」とは、シグナルペプチドの後のリーダー配列を意味する。本明細書で使用する場合、用語「プレプロペプチド」とは、シグナルペプチド及びプロペプチドを含んで成るリーダー配列を意味する。本明細書で使用する場合、用語「リーダー配列」とは、タンパク質の前駆体のアミノ末端に位置する配列を意味する。リーダー配列は成熟の間に開裂する。
【0040】
更に本明細書で使用する場合、用語「IgSP−tPAプレプロペプチド」は、組織型プラスミノーゲンアチベータープロペプチドと融合したイムノグロブリンシグナルペプチドを含んで成る本発明のリーダー配列を意味する。
【0041】
実施例1に示すとおり、IgSP−tPAプレプロペプチドは、TBPIと直接融合した種々のシグナルペプチドより、TNF受容体p55(TBPIの可溶性部分を効率的に分泌させることを保証する。実施例2は、IgSP−tPAプレプロペプチドは、TBPI分泌の促進において、tPAプレプロペプチド単独よりも効率的である。実施例3は、IgSP−tPAプレプロペプチドは、成熟インターフェロンガンマ受容体鎖(IFNAR)の分泌の促進において、天然のIFNARシグナルペプチドよりも効率的であることを示す。従って、IgSP−tPAプレプロペプチドは、任意な既知のリーダー配列と比較して注目のポリペプチドのより効率的な分泌を保証する。
【0042】
異なる種に由来する多数のイムノグロブリン(Ig)シグナルペプチドは既知であり、そして、全て本発明の範囲内に包含されている。好ましい態様において、Igシグナルペプチドはマウスイムノグロブリンシグナルペプチドである。好ましくは、マウスIgシグナルペプチドは配列番号3のマウスIgGμ−重鎖シグナルペプチドである。
【0043】
本発明のDNAコンストラクトは、任意な起源の組織型プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)プロペプチドをコードする配列を含んで成る。例えば、当該DNAコンストラクトは、ヒト、マウス、ラット又はウシ起源のtPAプロペプチドをコードする配列を含んで成る。好ましくは、当該DNAコンストラクトは、ヒト起源のtPAプロペプチドをコードする配列を含んで成る。
【0044】
更なる態様において、本発明のDNAコンストラクトは、カルボキシル末端がアミノ酸Arg−Xaa−Arg−Argから成る、ヒトtPAプロペプチドをコードする配列を含んで成る。そのようなプロペプチドは、天然のヒトtPAプロペプチドの3つのカルボキシル末端側アミノ酸を欠いている短縮型プロペプチドに相当する(図1を参照のこと)。好ましくは、ヒトtPAプロペプチドは、配列番号2のアミノ酸24〜32又は配列番号2のアミノ酸23〜32のいずれかから成る。
【0045】
好ましい態様において、本発明のDNAコンストラクトは、配列番号1を含んで成るプレプロペプチドをコードする。最も好ましい態様において、当該プレプロペプチドは配列番号1から成る。
【0046】
用語「を含んで成る」、「から成る」、又は「本質的に〜から成る」とは、異なる意味を有する。しかしながら、各用語は、本発明の範囲を変更するために別のもので置き換えられることがある。
【0047】
本明細書で使用する場合、「ポリペプチドBと融合したポリペプチドA」との表現は、ポリペプチドAとBの配列を含んで成る融合ポリペプチドであって、ポリペプチドAの配列が前記融合ポリペプチドにおいてポリペプチドBの配列のアミノ末端に位置するものを意味する。用語「融合」とは、本明細書で使用する場合、ポリペプチドの直接的な融合に限定されない。例えば、クローニングストラテジーは、ポリペプチドAとBの間にアミノ酸の存在をもたらすことがある。しかしながら、ポリペプチドの直接的な融合が好ましい。融合ポリペプチドをコードする配列を含んで成るDNAコンストラクトを構築する方法は当業界で周知である。例えば、実施例1〜3に記載の方法を使用してもよい。
【0048】
本発明の別の好ましい態様は、注目のポリペプチドと融合したIgSP−tPAプレプロペプチドを含んで成る融合ポリペプチドをコードするDNAコンストラクトに関する。
【0049】
本発明によると、注目のポリペプチドは、産生が望まれる任意のポリペプチドでよい。例えば、注目のポリペプチドは、例えば、天然の分泌型タンパク質、通常細胞質内にあるタンパク質、通常膜貫通しているタンパク質、又はヒト若しくはヒト化抗体であってもよい。注目のタンパク質が通常細胞質にあるタンパク質又は通常膜貫通しているタンパク質である場合、当該タンパク質は好ましくは可溶性になるように操作されている。注目のポリペプチドは、任意の起源のものでよい。好ましい注目のポリペプチドは、ヒト起源のものである。
【0050】
好ましくは、注目のポリペプチドの最初のアミノ酸は脂肪族の疎水性アミノ酸ではない。注目の天然ポリペプチドの最初のアミノ酸が脂肪族の疎水性アミノ酸である場合、注目のタンパク質は、好ましくは、その最初のアミノ酸が脂肪族疎水性アミノ酸でないように操作されている。
【0051】
好ましい態様において、注目のポリペプチドは、絨毛性ゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、ルトロピン胎盤性性腺刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、ヒト成長ホルモン、インターフェロン(例えば、インターフェロンベータ1a、インターフェロンベータ1b)、インターフェロン受容体(例えば、インターフェロンガンマ受容体)、TNF受容体p55及びp75、インターロイキン(例えば、インターロイキン−2、インターロイキン−11)、インターロイキン結合タンパク質(例えば、インターロイキン−18結合タンパク質)、抗CD11a抗体、及びそれらの変異タンパク質、フラグメント、可溶性型、機能的誘導体、融合タンパク質から成る群から選択される。
【0052】
注目の他の好ましいポリペプチドには、例えばエリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、下垂体ペプチドホルモン、閉経ゴナドトロピン、インスリン様増殖因子(例えば、ソマトメジンC)、ケラチノサイト増殖因子、グリア細胞由来神経栄養因子、トロンボモジュリン、塩基性線維芽細胞増殖因子、インスリン、第VIII因子、ソマトロピン、骨形成タンパク質−2、血小板由来増殖因子、ヒルジン、エポエチン、組換えLFA−3/IgG1融合タンパク質、グルコセレブロシダーゼ、及びそれらの変異タンパク質、フラグメント、可溶性型、機能的誘導体、融合タンパク質、が含まれる。
【0053】
本発明の第二の観点は、カルボキシル末端がアミノ酸Arg−Xaa−Arg−Argから成ることを特徴とする、ヒト組織型プラスミノーゲンアクチベータープロペプチドをコードする配列を含んで成るDNAコンストラクトに関する。
【0054】
第一の態様において、本発明のtPAポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸24〜32又は配列番号2のアミノ酸23〜32のいずれかから成る。
【0055】
第二の態様において、本発明のtPAプロペプチドを含んで成るDNAコンストラクトは、前記tPAプロペプチドと融合したシグナル配列を更に含んで成る。
【0056】
タンパク質分泌を促進するために現在当業界で使用されている任意のシグナルペプチドを上記態様において使用することができる。そのようなシグナルペプチドには、例えば、ヒト成長ホルモンのシグナルペプチド(例えば、欧州特許出願番号01999652.9)、欧州特許出願番号000906103.7に開示されている分泌する能力のあるポリペプチド、ヒトエリスロポエチンシグナルペプチド、ヒトアルブミンシグナルペプチド、ヒト分泌型アルカリホスファターゼシグナルペプチド及びロタウイルスVP7糖タンパク質シグナルペプチドが含まれている。
【0057】
第三の態様において、本発明のtPAプロペプチドを含んで成るDNAは、注目のポリペプチドと融合した前記tPAプロペプチドを含んで成る融合ポリペプチドをコードしている。
【0058】
好ましい態様において、本発明に従うIgSP−tPAプレプロペプチド及び/又はtPAプロペプチドをコードする配列を含んで成るDNAコンストラクトは、ベクター内に含まれている。
【0059】
用語「ベクター」は、外因性DNAを宿主細胞による外因性DNAの複製及び/又は適切な発現のために宿主細胞に外因性DNAを移動するのに有用な外因性DNA又はRNAの任意な担体を意味する。
【0060】
更に好ましい態様において、ベクターは発現ベクターである。「発現ベクター」は、当該ベクター内に挿入されたポリヌクレオチドの、宿主内での発現を駆動させる適切なシグナルを含んで成る。好ましくは、前記ベクター内に挿入されたポリヌクレオチドは、注目のポリペプチドをコードしている。適切なシグナルには、種々の制御因子、例えば、ウイルス、哺乳類両方を起源とするエンハンサー及び/又はプロモーターが含まれる。生成物を発現する永続性の安定的な細胞クローンを確立するための、例えば、ドミナントな薬剤選択のための選択マーカーは、それらが薬剤選択マーカーの発現をポリペプチドの発現と関連付ける因子であるため、通常本発明の発現ベクター内に含まれている。
【0061】
更に好ましい態様において、ベクターは、遺伝子活性化を実施するためのベクターである。遺伝子活性化技術は、注目の遺伝子又はcDNAを宿主細胞に導入することなく注目のタンパク質の産生を可能にする技術である(例えば、欧州特許第0505500号及び第0779362号を参照のこと)。例えば、遺伝子活性化技術は、「オフポジション」に設置されている制御DNA配列を、「オンポジション」に設置されている制御DNA配列でバイパスさせて注目の遺伝子を活性化することもできる。遺伝子活性化ベクターは、前記宿主細胞内に存在するポリヌクレオチド配列の、宿主細胞内での発現を駆動せしめる適切なシグナルを含んで成る。
【0062】
更に好ましい態様において、ベクターは遺伝子治療ベクターである。遺伝子治療に使用されうる発現ベクターは当業界で周知である。好ましくは、遺伝子治療ベクターは、レンチウイルス由来ベクターであり、これは、遺伝子の移動、特にCNS内での移動が非常に効率的であることが証明されている。他の十分に確立されているウイルスベクター、例えばアデノウイルス由来ベクターも本発明において使用することができる。
【0063】
本発明の第三の観点は、本発明のDNAコンストラクトで形質転換した宿主細胞に関する。多くの宿主細胞が本発明に適しており、例えば、広範な真核生物由来の初代又は樹立細胞系、例えば植物細胞、動物細胞である。好ましくは、前記宿主細胞は真核細胞である。最も好ましくは、前記宿主細胞は哺乳類細胞である。
【0064】
例えば、適当な宿主細胞には、CHO細胞、COS細胞、CV1細胞、マウスL細胞、HT1080細胞、BHK−21細胞、HEK293細胞、NIH−3T3細胞、LM細胞、YI細胞、NS0及びSP2/0マウスハイブリドーマ細胞等、Namalwa細胞、RPMI−8226細胞、ベロ細胞、WI−38細胞、MRC−5細胞又は他の不死化細胞及び/又は形質転換細胞が含まれる。
【0065】
好ましくは、宿主細胞はCHO細胞であり、そしてより好ましくはCHO−S細胞であり、これらは例えばShotwellらによって説明されている(1982, J Biol. Chem. 257: 2974-2980)。
【0066】
第四の観点において、本発明は、注目のポリペプチドの産生方法であって、本発明のDNAコンストラクトで宿主細胞をトランスフェクションするステップを含んで成る方法に関する。
【0067】
第五の観点において、本発明は、注目のポリペプチドの産生方法であって、本発明の宿主細胞を培養するステップを含んで成る方法に関する。
【0068】
本発明の上記方法は、注目のタンパク質の分泌をもたらし、これは細胞培養上清から採集することができる。目的の用途に応じて、細胞が合成するポリペプチドは、本発明の方法の産物であってもよい。
【0069】
好ましい態様において、これらの方法は、更に、注目のポリペプチドを宿主細胞から単離するステップを含んで成る。このステップは、注目のタンパク質が細胞培養上清から単純に単離することができるので、特に有利であり、そして実施が容易である。
【0070】
これらの方法は、一過性、安定、エピソーム又はウイルスの発現系において使用することができる。好ましい態様いおいて、トランスフェクションは安定トランスフェクションである。
【0071】
第六の観点において、本発明のDNAコンストラクトは注目のポリペプチドの産生のために使用される。
【0072】
本発明の第七の観点は、注目のポリペプチドと融合した本発明のIgSP−tPAプレプロペプチド及び/又はtPAプロペプチドを含んで成る融合ポリペプチドに関する。
【0073】
本発明をこれまで十分に説明してきたが、当業者は、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、且つ過度の実験無しに、広範な同等のパラメーター内で同様のことを実施することができることを理解するであろう。
【0074】
本発明はその特定の態様に関連して説明してあるが、他の態様も可能であることが理解されるであろう。本願は、任意の変更、使用又は応用を網羅することが意図され、これは通常、本発明の原理に従い、且つ、本発明の当業界で公知又は通常の慣行となっているような、そして特許請求の範囲に記載の必須の特徴に適用することができるような、本願の開示から逸脱しているようなものを含む。
【0075】
本明細書で引用する全ての文献、例えば学術論文又は抄録、公開された又は公開されていない特許出願、交付済みの特許又は任意な他の文献は、本明細書で引用することにより全体的に組み入れられ、引用文献に存在している全てのデータ、表、図及びテキストが含まれる。更に、本明細書で引用する引用文県内で引用された文献の全内容も、引用により全体的に組み入れられる。
【0076】
既知の方法のステップ、常用の方法のステップ、既知の方法又は常用の方法に対する言及は、本発明のあらゆる観点、記載又は態様が関連技術において開示され、教示され、又は示唆されていることを何ら認めるものではない。
【0077】
特定の態様の前記記載は、当業界の技術範囲内の知識(例えば、本明細書で引用する文献の内容)を利用することにより、過度の実験無しに、本発明の一般的概念から逸脱することなく、そのような特定の態様を容易に修飾することができ、そして/あるいは種々の利用に適合させることができるという本発明の一般的な性質を非常に十分に明らかにしている。従って、そのような適用及び修飾は、本明細書で提示する教示及び手引きを基に、開示された態様の同等の意味及び範囲の中にあることが意図される。本明細書の語法又は用語は、説明を目的とするものであり、限定するためではなく、その結果、本明細書の語法又は用語は、本明細書で提示する教示及び手引きに照らして、当業者の知識と組み合わせて、当業者により解釈されるべきある。
【実施例】
【0078】
実施例1:IgSP−tPAプレプロペプチドと、ヒト成長ホルモンシグナルペプチド、分泌型アルカリホスファターゼシグナルペプチド、マウスイムノグロブリンシグナルペプチドとの比較
1.1.構築
1.1.1 IgSP
配列番号3のマウスIgGμ−重鎖シグナルペプチド(IgSP)を以下のようにクローニングした。配列番号13〜20のプライマーをT4ポリヌクレオチドキナーゼ(Stratagene)と一緒に2時間30分37℃でインキュベートし、そして75℃で10分間熱不活性化した。処理済のプライマーは、StratageneのPfuリガーゼを用い、取扱説明書で推奨されているものに従い、以下のサイクル条件でサイクルライゲーションを用いてライゲーションした:
−95℃で1分間
−95℃で30秒間、57℃で90秒間、70℃で2分間を40サイクル
−70℃で10分間
【0079】
アニーリングしたオリゴを続いてQIAquickカラムで精製し、そして配列番号13〜17のプライマーを用い、以下のPCR条件下PFUターボでPCR増幅した:
−95℃で5分間
−95℃で45秒間、70℃で45秒間を30サイクル
−70℃で10分間
【0080】
PCR産物を精製し、そしてBgl−II及びBsrGIで消化し、そしてpGL3−GH−TBPI−1380ベクター(図2)内にクローニングした。当該産物を配列決定し、そして予想した配列を反映していることが明らかとなった。
【0081】
1.1.2 GH_SP
配列番号4のヒト成長ホルモンシグナルペプチド(GH_SP)を、配列番号21〜34のプライマーを用いてクローニングした。プライマーは上述のとおりアニーリングした。アニーリングの終了時に、生成物を精製し、そして上述のものと同一の条件を用いてPCRで再び増幅した。このPCR産物を、配列番号21と34のプライマーを用いて再び増幅した。当該産物をBgl−II及びBsrGIクローニング部位でpGL3−GH−TBPI380ベクター内にクローニングした。
【0082】
1.1.3 SEAP_SP
配列番号5のヒト分泌型アルカリホスファターゼ(SEAP_SP)を、配列番号35〜41のプライマーを用いてクローニングした。プライマーは上述のとおりアニーリングした。アニーリングの終了時に、生成物を精製し、そして上述のものと同一の条件を用いてPCRで再び増幅した。このPCR産物を、配列番号35と40のプライマーを用いて再び増幅した。当該産物をBgl−II及びBsrGIクローニング部位でpGL3−GH−TBPI380ベクター内にクローニングした。
【0083】
1.1.4 Ig−tPA
本研究のIgSP−tPAは、(i)マウスIgGμ−重鎖シグナルペプチドと、これと融合した(ii)天然のtPAプロペプチドの3つのカルボキシル末端アミノ酸を欠失している短縮型tPAプロペプチド、を含んで成る。このIgSP−tPAプレプロペプチドは、配列番号1に示すとおりである。このIgSP−tPAプレプロペプチドを以下のとおりクローニングした。
【0084】
配列番号42〜49のプライマーは、上述のとおりアニーリングした。アニーリングの終了時に、生成物を精製し、そして上述のものと同一の条件を用いてPCRで再び増幅した。このPCR産物を、配列番号45と49のプライマーを用いて再び増幅した。精製したPCR産物をBgl−II及びBsrGIクローニング部位でpGL3−GH−TBPI380ベクター内にクローニングした。
【0085】
組換えPCRは、既知のtPAプロペプチドから3つのアミノ酸(GAR)を欠失させるために実施した。このコンストラクトの5’末端は、配列番号51と52のプライマーを用いてPCR増幅し、そして3’末端は配列番号53と54のプライマーを用いてPCR増幅した。完全長のIgSP−tPA−TBPIコンストラクトは、配列番号51と54のプライマーを用いてPCR増幅し、そして2つの組換え産物がこれまでのPCRから得られた。
【0086】
1.1.5.上記リーダー配列のTBPIに対する融合
上記リーダー配列を、TNF受容体p55タンパク質(TBPI、配列番号50)の可溶性部分に融合させた。ヒト伸長因子1(EF1)プロモーターのもとでのTBPIの発現を可能にするpEF1−GH−TBPI−1403ベクター(図3)をNco−I及びXba−Iで消化した。リーダー配列をコードしているフラグメントをNco−Iフラグメント又はBsa−I−Xba−IフラグメントとしてpEF1−GH−TBPI−1403内にサブクローニングした。生じたIgSP−TBPI、GH_SP−TBPI SEAP_SP−TBPI及びIgSP−tPAコンストラクトを配列決定し、そしてこれらが予想した配列を反映していることが明らかとなった。
【0087】
1.2 タンパク質分泌の測定
各コンストラクトを、標準的な研究マニュアル(Maniatis et al., Molecular Cloning : A Laboratory Manual, 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press)に記載の標準的な脂質媒介型のトランスフェクションを用い、CHO−DUKX−B11細胞にトランスフェクションした。トランスフェクションから48時間後、培地と細胞を採集した。細胞はPBSで2回洗浄し、そしてペレットを氷上で300μlのCytobusterバッファー(Novagen)を用い、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)の存在下で溶解させた。細胞片を、4℃で10分間、16000gでの遠心により沈降させた。上清を採集し、そして処理する前に−20℃で維持した。上清又は細胞内区画中に放出されたTBPIの量をELISAで解析した。TBPIの相対的な発現を測定し、そして報告した。
【0088】
実験結果を図4に示す。IgSP−tPAシグナルプロペプチドは、細胞からのTBPIの分泌を促進することができ、これは上清中で検出されたTBPIの量の増大対細胞内区画で検出されたTBPIの量により証明される。従って、IgSP−tPAプロペプチドと融合したTBPIを含んで成るIgSP−tPA−TBPIコンストラクトは、IgSPシグナルペプチド、分泌型アルカリホスファターゼシグナルペプチド又は成長ホルモンシグナルペプチド、と融合したTBPIタンパク質に相当するコンストラクトと比較して、TBPIの分泌を増大させる。
【0089】
実施例2:IgSP−tPAプレプロペプチドとtPAプレプロペプチドとの比較
2.1 構築
2.1.1.IgSP−tPA−TBPI
1.1.5に記載のIgSP−tPA−TBPIコンストラクトをXba−Iで消化した。IgSP−tPA−TBPIを含んで成るフラグメントを、Nco−I及びXba−Iで消化したpmCMV−UbB−LUC−1433発現ベクター(図5)内にクローニングした。
【0090】
2.1.2.tPA−TBPI
(i)tPAシグナルペプチド、及び(ii)天然のtPAプロペプチドの3つのカルボキシル末端のアミノ酸を欠失している短縮型tPAプロペプチド、を含んで成る配列番号2のtPAプレプロペプチドは以下のとおり生成させた。
【0091】
ヒトtPAプレプロペプチドは、鋳型としてIgSP−tPA−TBPIコンストラクトを用いることによりクローニングした。最初のPCRを配列番号55と56のプライマーを用いて実施し、tPAプロペプチド及びTBPIの5’末端を増幅させた。2回目のPCRにおいて、第一段階由来のPCR産物を、配列番号57と58と56とを用いた再増幅により伸長させた。続いて、PCR産物を、Bgl−IIとBsrGIで消化したpGL3−GH−TBPI−1380ベクター(図2)内にクローニングした。組換えPCRを1.1.4.に記載のとおり実施し、プライマーには配列番号51〜54を用い、既知のtPAプロペプチド内に3つのアミノ酸(GAR)の内部欠失を導入した。
【0092】
生じたtPA−TBPIコンストラクトをBsa−IとXba−Iで消化した。tPA−TBPIを含んで成るフラグメントを、Nco−IとXba−Iで消化したp又はCMV−UbB−LUC−1433発現ベクター内にクローニングした。
【0093】
2.2.タンパク質分泌の測定
CHO細胞を、リポフェクタミンを用いてIgSP−tPA−TBPIコンストラクトとtPA−TBPIコンストラクトでトランスフェクションした。一連の実験において、TBPI発現ベクターを、選択用のSV40neoベクターとSV40puroベクターと同時トランスフェクションした。別の系においては、TBPI発現ベクターは、SV40dhfrベクターとSV40puroベクターと一緒に同時トランスフェクションした。少なくとも100クローンを表している安定発現クローンのプールは、異なる選択培地中で広げられた(600μg・ml-1ネオマイシン、6μg・ml-1ピューロマイシン又はHT+6μg・ml-1ピューロマイシン)。プールを分割し、そして細胞をFCS含有培地又は無血清培地中で播種した。培地を48時間後に採集し、そして上清中に放出されたTBPIの量をELISAを用いて決定した。この実験結果を図6に示す。各棒はプールを表す。白棒と黒棒は、37℃で10%FCSを含む媒地中での48時間の2つの異なるパルスを表す。斜線入りの四角と方眼入りの棒は、無血清培地中での32℃での48時間の2つの異なるパルスを表す。播種した細胞の最初の数とパルス期間は各実験において同様である。
【0094】
図6は、研究した全ての条件で、IgSP−tPA−TBPI発現細胞のプールがtPA−TBPI発現細胞のプールよりも高い力価を有することを示した。この結果は、IgSP−tPAコンストラクトが、生成する分泌型タンパク質の量の点でtPAコンストラクトよりも少なくとも2倍優れていることを示す。
【0095】
従って、tPAプロペプチドとIgSPシグナルペプチドとの新規な組み合わせは、tPA−プレプロペプチドよりもタンパク質分泌を促進するのにより効率的である。
【0096】
尚、IgSP−tPA−TBPI発現細胞から分泌されるTBPIタンパク質のN末端側の配列は、エドマン分解を用いたN末端配列決定により決定した。これにより、100%のタンパク質がtPAの最後のアルギニン残基の後で開裂していたことが明らかとなった。このように、IgSP−tPAプレプロペプチドは、効率的で且つ信頼性のあるポリペプチドのプロセシングを保証する。
【0097】
実施例3:IgSP−tPAプレプロペプチドとインターフェロンガンマの産生用インターフェロンガンマ受容体シグナルペプチドとの比較
3.1.コンストラクト
IgSPプレプロペプチドを、IgSP−tPAプレプロペプチドは、成熟インターフェロンガンマ受容体鎖(IFNAR)に融合させ、そして(i)mCMV−UbB−LUC−1433ベクター(図3);又は(ii)欧州特許出願03100617.4に記載のmCMV−IE2遺伝子のプロモーターを含んで成る発現ベクター、の中にクローニングした。
【0098】
天然のシグナルペプチドを含んで成る完全長IFNARを、(i)mCMV−UbB−LUC−1433ベクター;又は(ii)欧州特許出願03100617.4に記載のmCMV−IE2遺伝子のプロモーターを含んで成るベクター、の中にクローニングした。
【0099】
3.2.タンパク質分泌の測定
3.2.1.プロトコール
コンストラクトを、標準的な脂質媒介型のトランスフェクションプロトコールを用いてCHO細胞内にトランスフェクションした。分泌型タンパク質を48時間後に採集した。特異的ELISA試験を用い、上清中に分泌型されたIFNARの量を定量した。トランスフェクションは、IFNARベクターで同時トランスフェクションしたルシフェラーゼコンストラクトで正規化した。標準的なルシフェラーゼアッセイは、標準的な研究マニュアル(Maniatis et al, Molecular Cloning : A Laboratory Manual, 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press)に記載のとおりに使用した。
【0100】
3.2.1.CMVベクターを含んで成るコンストラクト
IgSP−tPAプレプロペプチドは、上清中のIFNARタンパク質の分泌の促進において、天然のシグナルペプチドよりも約2.3倍効率的であった。
【0101】
3.2.2.mCMV−IE2遺伝子を含んで成るコンストラクト
IgSP−tPAプレプロペプチドは、上清中のIFNARタンパク質の分泌の促進において、天然のシグナルペプチドよりも約4.3倍効率的であった。
【0102】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】図1は、本発明のIgSP−プレプロペプチド(配列番号1)と天然のtPAプレプロペプチド(配列番号2)とのアラインメントを示す。
【図2】図2は、TBPIタンパク質に融合した異なるシグナルペプチドを構築するために使用したpGL3−GH−TBP−1380ベクターのスキームを示す。
【図3】図3は、一過性トランスフェクションアッセイにおいてリーダーペプチド−TBPI融合タンパク質を発現するために使用したpEF1−GH−TBP−1403ベクターのスキームを示す。
【図4】図4は、図示したコンストラクトをトランスフェクションした細胞の上清対細胞質で検出されたTBPIタンパク質の量を示す。レーンGH_SP:成長ホルモンシグナルペプチドと融合したTBPI;レーンSEAP_SP:分泌型アルカリホスファターゼシグナルペプチドと融合したTBPI;レーンIgSP:マウスイムノグロブリンIgGμ−重鎖シグナルペプチドと融合したTBPI;レーンIgSP−tPA:本発明のIgSPプレプロペプチドと融合したTBPI。
【図5】図5は、安定なトランスフェクションアッセイにおいてリーダーペプチド−TBPI融合タンパク質を発現させるために使用したCMV−UbB−LUC−1433ベクターのスキームに相当する。
【図6】図6は、TBPIと融合したIgSP−tPA又はtPA−tPAプレプロペプチドでトランスフェクションしたクローンのプールの上清中で検出されたTBPIタンパク質の量を示す。プールは、ピューロマイシンとネオマイシンとの同時選択(neo/puro)、又はピューロマイシンマイナス−ヒポキサンチン−チミジンによる同時選択(HT/puro)のいずれかで維持した。白棒と黒棒は、37℃で10%FCSを含む媒地中での48時間の2つの異なるパルスを表す。斜線入りの四角と方眼入りの棒は、無血清培地中での32℃での48時間の2つの異なるパルスを表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織型プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)プロペプチドと融合したイムノグロブリンシグナルペプチドを含んで成るIgSP−tPAプレプロペプチドをコードする配列を含んで成るDNAコンストラクト。
【請求項2】
前記イムノグロブリンシグナルペプチドがマウスイムノグロブリンシグナルペプチドである、請求項1に記載のDNAコンストラクト。
【請求項3】
前記マウスイムノグロブリンシグナルペプチドが配列番号3を含んで成る、請求項2に記載のDNAコンストラクト。
【請求項4】
前記tPAプロペプチドがヒトtPAプロペプチドであり、前記tPAプロペプチドのカルボキシル末端がアミノ酸Arg−Xaa−Arg−Argから成る、請求項1〜3のいずれか1項に記載のDNAコンストラクト。
【請求項5】
前記tPAプロペプチドが配列番号2のアミノ酸23〜32から成る、請求項4に記載のDNAコンストラクト。
【請求項6】
前記プレプロペプチドが配列番号1を含んで成る、請求項1〜5のいずれか1項に記載のDNAコンストラクト。
【請求項7】
注目のポリペプチドと融合した前記IgSP−tPAプレプロペプチドを含んで成る融合ポリペプチドをコードする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のDNAコンストラクト。
【請求項8】
ヒト組織型プラスミノーゲンアクチベータープロペプチド(tPA)をコードする配列を含んで成るDNAコンストラクトであって、前記tPAプロペプチドのカルボキシル末端がアミノ酸Arg−Xaa−Arg−Argから成るDNAコンストラクト。
【請求項9】
前記tPAプロペプチドが配列番号2のアミノ酸23〜32から成る、請求項8に記載のDNAコンストラクト。
【請求項10】
前記tPAプロペプチドと融合したシグナル配列を更に含んで成る、請求項8又は9に記載のDNAコンストラクト。
【請求項11】
注目のポリペプチドと融合した前記tPAプロペプチドを含んで成る融合ポリペプチドをコードする、請求項8〜10のいずれか1項に記載のDNAコンストラクト。
【請求項12】
ベクターに含まれている、請求項1〜11のいずれか1項に記載のDNAコンストラクト。
【請求項13】
前記ベクターが発現ベクターである、請求項12に記載のDNAコンストラクト。
【請求項14】
前記ベクターが遺伝子活性化を実施するためのベクターである、請求項12に記載のDNAコンストラクト。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のDNAコンストラクトで形質転換した宿主細胞。
【請求項16】
CHO細胞、COS細胞、CV1細胞、マウスL細胞、HT1080細胞、BHK細胞、HEK293細胞、NIH−3T3細胞、LM細胞及びYI細胞、NS0及びSP2/0マウスハイブリドーマ等、Namalwa、RPMI−8226、ベロ、WI−38、MRC−5等から成る群から選択される、請求項15に記載の宿主細胞。
【請求項17】
CHO細胞である、請求項16に記載の宿主細胞。
【請求項18】
注目のポリペプチドの産生方法であって、請求項1〜14のいずれか1項に記載のDNAコンストラクトで宿主細胞をトランスフェクションするステップを含んで成る方法。
【請求項19】
注目のポリペプチドの産生方法であって、請求項15〜17のいずれか1項に記載の宿主細胞を培養するステップを含んで成る方法。
【請求項20】
注目のポリペプチドを前記宿主細胞から単離するステップを更に含んで成る、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
トランスフェクションが安定トランスフェクションである、請求項18〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
注目のポリペプチドの産生のための請求項1から4のいずれか1項に記載のDNAコンストラクトの使用。
【請求項23】
請求項7又は11に記載のDNAコンストラクトでコードされる融合ポリペプチド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−506420(P2007−506420A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527427(P2006−527427)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【国際出願番号】PCT/EP2004/052302
【国際公開番号】WO2005/030963
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(599177396)アプライド リサーチ システムズ エーアールエス ホールディング ナームロゼ フェンノートシャップ (70)
【Fターム(参考)】