説明

タンパク質凝集を抑制する製剤

医薬上許容される量のタンパク質を含有する安定な医薬上許容される製剤を開示する。そのような製剤の製造方法、ならびにタンパク質製剤の加工、製造、輸送および保存に関連した物理的ストレス、特に凍結/解凍ストレスにより誘発されるタンパク質凝集体生成の抑制方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質を含有する医薬製剤ならびにそのような製剤の製造方法および使用方法に関する。より詳しくは、本発明は、製造および輸送中のタンパク質凝集体の生成を抑制しうるタンパク質含有医薬製剤に関する。本発明はまた、タンパク質凝集体の生成を抑制するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酵素および抗体のようなタンパク質ならびにタンパク質断片は水溶液中および低温(すなわち、0℃以下)での保存時に不安定であり、活性の低下および/または可溶性もしくは不溶性凝集物の生成を引き起こしやすい。医薬産業においては、タンパク質医薬製品は、過酷な条件(例えば、酸溶出、加熱、極端なpHなど)を伴う精製操作;シリンジ操作、限外濾過およびダイアフィルトレーション(高圧およびせん断力);攪拌および凍結/解凍サイクルを含む、製造および輸送中の多数のストレスにさらされる。長期保存には、タンパク質組成物(溶液/凍結乾燥物)は、種々の分解過程の速度を遅くすることにより該タンパク質の分解を防ぐために、好ましくは、凍結される。これはタンパク質活性の維持を可能にする。しかし、通常は氷形成の際の氷−水/タンパク質界面相互作用および浸透圧ショックのため、凍結状態においてもタンパク質分解が生じることがある(Changら,J.Pharm.Sci.1996;85(12):1325−1330;CarpenterおよびCrow,Cryobiology,1988;25:244−255)。特に、凍結/解凍サイクルの繰返しは、溶液中で生じて溶液を濁らせうる(濁り)タンパク質凝集体生成を促進する傾向にある。もう1つのタンパク質凝集原因は攪拌である。特に、輸送中、抗体のような治療用タンパク質は、水陸上輸送および空輸による移動による攪拌にさらされる。輸送中、タンパク質はガラス容器またはプラスチックシリンジ上の疎水性表面ならびに溶液中の微小気泡または容器内の空気表面と相互作用しうる。疎水性物質とのタンパク質のそのような相互作用はタンパク質凝集を誘発しうる。不溶性凝集体の生成はタンパク質物質を使用不可能にしてしまうため、抗体のような治療用タンパク質製品の開発、製剤化、保存および輸送中の不溶性凝集体生成の抑制は薬物物質の維持のために極めて重要である。
【0003】
溶液中のタンパク質の安定化のための多数の方法および添加剤が公知である。例えば、HSP25のような熱ショックタンパク質の添加によるタンパク質の安定化がEP−A 0599344に記載されている。ポリオキシプロピレンおよびポリオキシエチレンから構成されるブロック重合体をリン脂質と共に加えることによる抗体の安定化がEP−A 0318081に記載されている。免疫グロブリンは、アルギニン、グアニジンまたはイミダゾールのような窒素含有塩基の塩を加えることにより安定化されている。安定化のための他の適当な添加剤としては、ポリエーテル(EP−A 0018609)、グリセリン、アルブミンおよび硫酸デキストラン(米国特許第4,808,705号)、洗剤および界面活性剤、例えばポリソルベートに基づく界面活性剤(DE 2652636、GB 8514349)、シャペロン、例えばGroEL(Mendoza,J.A.,Biotechnol.Tech.,(10)1991 535−540)、クエン酸バッファー(WO 93/22335)またはキレート化剤(WO 91/15509)が挙げられる。これらの添加剤は、タンパク質が溶液中で或る程度安定化されることを可能にするが、それらは、例えば添加剤の除去のための追加的な処理工程を要するなどの欠点を伴う。さらに、先行技術において記載されている方法はいずれも、操作中に可溶性または不溶性凝集物が全く生成しない(または治療目的には無視しうる量しか生成しない)ような、凍結および解凍の繰返し過程中のタンパク質の安定化には適していない(米国特許第6,238,664号)。
【0004】
凍結乾燥は、タンパク質を含む多数の生物活性物質の維持に有用かつ有効であると考えられる(Hershenson,米国特許第6,020,469号)。しかし、凍結乾燥は、製品の不安定性を招きうる、それ自体のストレス(凍結過程および水分除去中のタンパク質の極端な濃度など)を誘発する。したがって、凍結乾燥は、脱アミノ化および酸化(これらは共に、凍結乾燥状態および液体状態で生じうる)に加えて、架橋(共有結合オリゴマー生成)および非共有結合凝集の速度の上昇を招きうる。
【0005】
したがって、加工、製造、輸送および保存中の安定性が向上したタンパク質製剤が当技術分野において依然として必要とされている。特に、1以上の凍結/解凍サイクルにより誘発される凝集体生成を抑制するタンパク質製剤が当技術分野において特に有用であろう。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
本発明は、抗体C、抗体D、抗体A、抗体Bおよび抗体Eから選ばれる抗体またはそのフラグメントの医薬上許容される量を不溶性凝集体生成のインヒビターと共に含むタンパク質製剤に関する。ある実施形態においては、不溶性凝集体生成のインヒビターはMgCl、プロピレングリコール、プルロニック(Pluronic)−F68、ポロキサマー(Poloxamer)188、エタノールまたはそれらの組合せである。抗体A〜Eの製造方法および使用方法を含むそれらの詳細な説明は米国特許および米国特許出願第10/180,648号(抗体A);第10/891,658号(抗体B);第5,789,554号、第6,254,868号、第09/038,955号、第09/590,284号、第10/153,882号(抗体C);第60/638,961号(抗体D);第6,235,883号(抗体E)(図面を含むそれらの全体を参照により本明細書に組み入れることとする)に見出されうる。
【0007】
本発明はまた、不溶性凝集体生成のインヒビターを含む、1以上の凍結/解凍サイクルにより及び攪拌により誘発されるタンパク質凝集体の生成を抑制するタンパク質製剤に関する。ある実施形態においては、ある実施形態においては、不溶性凝集体生成のインヒビターはMgCl、プロピレングリコール、プルロニック(Pluronic)−F68、ポロキサマー(Poloxamer)188、エタノールまたはそれらの組合せである。
【0008】
本発明はまた、(a)1以上の凍結/解凍サイクルまたは攪拌の前にバッファー系を選択し、(b)少なくとも1つの凍結/解凍サイクルまたは攪拌の前に、(a)のバッファー系を、不溶性凝集体生成を抑制するのに有効な量の不溶性凝集体生成のインヒビターと接触させ、(c)少なくとも1つの凍結/解凍サイクルまたは攪拌の前に、該バッファー系および不溶性凝集体生成のインヒビターをタンパク質またはタンパク質断片の或る量と接触させることを含む、1以上の凍結/解凍サイクルおよび攪拌に付されるタンパク質溶液におけるタンパク質凝集体生成の抑制方法に関する。ある実施形態においては、不溶性凝集体生成のインヒビターはMgCl、プロピレングリコール、プルロニック(Pluronic)−F68、ポロキサマー(Poloxamer)188、エタノールまたはそれらの組合せである。
【0009】
発明の詳細な説明
本発明は、1以上の凍結/解凍サイクルによって生じる不溶性凝集体の生成を抑制するのに有効な量の不溶性凝集体生成のインヒビターの少なくとも1つを含むタンパク質製剤、ならびに1以上の凍結/解凍サイクルにより誘発される凝集体生成に対してタンパク質製剤を安定化するための方法、1以上の凍結/解凍サイクルに付されるタンパク質溶液におけるタンパク質凝集体生成の抑制方法、1以上の凍結/解凍サイクルにより誘発されるタンパク質凝集体生成の抑制方法、および1以上の凍結/解凍サイクルにより誘発されるタンパク質凝集体生成に対して安定化されたタンパク質製剤の製造方法を提供する。該方法は、タンパク質またはタンパク質断片を含む溶液を、不溶性凝集体生成を抑制するのに有効な量の不溶性凝集体生成のインヒビターと接触させる点で共通している。
【0010】
本明細書中で引用されているすべての参考文献の全体を、あらゆる目的で、参照により本明細書に組み入れることとする。
【0011】
本明細書中で用いる、タンパク質凝集体生成を「抑制(する)」は、タンパク質含有溶液におけるタンパク質凝集体の量を減少させ又は更なるタンパク質凝集体の生成を予防することを意味する。したがって、抑制は、タンパク質製剤または溶液におけるタンパク質凝集体の量を減少させ及びそれを予防することの両方を含みうる。減少または予防は、不溶性凝集体生成のインヒビターの少なくとも1つを含むタンパク質含有溶液中に存在する凝集体の量を、不溶性凝集体生成のインヒビターの少なくとも1つを含まないタンパク質含有溶液中に存在する凝集体の量と比較することにより測定される。
【0012】
本明細書中で用いる「タンパク質製剤」および「タンパク質溶液」なる語は交換可能である。さらに、「タンパク質」なる語は、本発明の意義においては、天然に存在する及び組換えタンパク質またはタンパク質断片、ならびに化学修飾されたタンパク質、ならびにアミノ酸の置換および付加を含有するタンパク質であると理解される。医薬組成物用に安定化されるタンパク質は、好ましくは、抗体、抗体融合タンパク質、例えばイムノトキシン、酵素およびタンパク質ホルモン、例えばエリスロポエチン、ソマトスタチン、インスリン、サイトカイン、インターフェロンまたはプラスミノーゲンアクチベーターであり、任意のアミノ酸配列、特にポリペプチド、ペプチド、酵素、抗体など、および/またはそれらの断片(フラグメント)を含むと意図される。
【0013】
タンパク質または抗体の「医薬上有効な量」は、種々の投与計画において治療効果をもたらす量を意味する。そのような量は当業者により容易に決定される。有効成分の量は、治療される状態の重症度、投与経路などに左右されるであろう。本発明の組成物は、少なくとも約0.1mg/mL、約5mg/mL以上のタンパク質量を含有するよう製造されうる。抗体A〜Eの場合、医薬上有効な量は、好ましくは約0.1mg/mL〜約20mg/mL、あるいは米国特許および米国特許出願第10/180,648号(抗体A);第10/891,658号(抗体B);第5,789,554号、第6,254,868号、第09/038,955号、第09/590,284号、第10/153,882号(抗体C);第60/638,961号(抗体D);第6,235,883号(抗体E)に開示されているとおりである。
【0014】
「抗体A」なる語は、米国特許出願第10/180,648号に開示されている抗体、またはその1以上のフラグメント、突然変異体、欠失体、付加体、変異体、トランケート化体またはオルソログを意味すると理解される。
【0015】
「抗体B」なる語は、米国特許出願第10/891,658号に開示されている抗体、またはその1以上のフラグメント、突然変異体、欠失体、付加体、変異体、トランケート化体またはオルソログを意味すると理解される。
【0016】
「抗体C」なる語は、米国特許および米国特許出願第5,789,554号、第6,254,868号、第09/038,955号、第09/590,284号、第10/153,882号に開示されている抗体、またはその1以上のフラグメント、突然変異体、欠失体、付加体、変異体、トランケート化体またはオルソログを意味すると理解される。
【0017】
「抗体D」なる語は、米国特許出願第60/638,961号に開示されている抗体、またはその1以上のフラグメント、突然変異体、欠失体、付加体、変異体、トランケート化体またはオルソログを意味すると理解される。
【0018】
「抗体E」なる語は、米国特許第6,235,883号に開示されている抗体、またはその1以上のフラグメント、突然変異体、欠失体、付加体、変異体、トランケート化体またはオルソログを意味すると理解される。
【0019】
「不溶性凝集体生成のインヒビター」は、タンパク質またはタンパク質断片を含む溶液におけるタンパク質凝集体の生成を有効に抑制しうる任意の化合物または状態である。好ましい実施形態においては、不溶性凝集体生成のインヒビターは、pH;無機金属アルカリおよびアルカリ性塩、例えばMgClなど;ポリオール、例えばプロピレングリコールなど;重合体、例えばブロック重合体およびブロック共重合体(ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、プルロニック−F68、ポロキサマー188など);低級アルコール、例えばエタノールなど;またはそれらの2以上の組合せから選ばれる。
【0020】
一般に、本発明の製剤は、好ましくは、安定な形態の製剤を損なわない量かつ有効で安全な医薬投与に適した量の他の成分を含有しうる。
【0021】
ある態様においては、本発明は、抗体A、抗体B、抗体C、抗体D、抗体Eよりなる群から選ばれる抗体またはそのフラグメント;バッファー;および不溶性凝集体生成のインヒビターの医薬上許容される量を含む製剤を提供する。
【0022】
もう1つの態様においては、本発明は、タンパク質またはタンパク質断片、不溶性凝集体生成を抑制するのに有効な量の不溶性凝集体生成のインヒビターおよびバッファー系を含む、1以上の凍結/解凍サイクルにより誘発される不溶性凝集体生成に対する安定性が向上したタンパク質製剤を提供する。
【0023】
もう1つの態様においては、本発明は、タンパク質またはタンパク質断片、不溶性凝集体生成を抑制するのに有効な量の不溶性凝集体生成のインヒビターおよびバッファー系を含む、攪拌ストレスにより誘発される不溶性凝集体生成に対する安定性が向上したタンパク質製剤を提供する。本明細書中で用いる「攪拌ストレス」は、該タンパク質製剤に受動的または能動的に加えられる物理的運動を意味すると理解される。攪拌ストレスの非限定的な具体例には、衝突、落下、振とう、回転、ボルテックス、デカント、注入、引き込み(容器または入れ物からシリンジへの)などが含まれる。本発明の好ましいタンパク質製剤は特に、輸送および運搬の力(影響力)に対して安定化される。
【0024】
ある態様においては、本発明は、熱ストレス、化学ストレス(例えば、pH、低/高塩など)、流体ストレス(例えば、圧縮ストレス、例えば、締めつけられた開口部を通る流体運動により生じるもの)などを非限定的な例として含む1以上の外的な物理的または化学的ストレスにより誘発される不溶性凝集体生成に対する安定性が向上した、タンパク質またはタンパク質断片、不溶性凝集体生成を抑制するのに有効な量の不溶性凝集体生成のインヒビターおよびバッファー系を含むタンパク質製剤を提供する。
【0025】
前記態様の好ましい実施形態においては、不溶性凝集体生成のインヒビターは、pH、MgCl、プロピレングリコール、プルロニック−F68、ポロキサマー188またはエタノールから選ばれる。1つの実施形態においては、不溶性凝集体生成のインヒビターはMgClであり、ここで、MgClの濃度は約0.1mM〜約300mM、より好ましくは約10mM〜約300mM、より一層好ましくは約30mM〜約300mMである。もう1つの実施形態においては、不溶性凝集体生成のインヒビターはプロピレングリコールであり、ここで、プロピレングリコールの濃度は約0.01%〜約10%(v/v)、より好ましくは約1%〜約10%である。もう1つの実施形態においては、不溶性凝集体生成のインヒビターはプルロニック−F68であり、ここで、プルロニック−F68の濃度は約0.01%〜約5%(v/v)、より好ましくは約0.1%〜約1%である。もう1つの実施形態においては、もう1つの実施形態においては、不溶性凝集体生成のインヒビターはエタノールであり、ここで、エタノールの濃度は約0.01%〜約10%(v/v)、より好ましくは約0.1%〜約10%、より一層好ましくは0.1%〜約3%である。もう1つの実施形態においては、不溶性凝集体生成のインヒビターはpHであり、ここで、pHは該製剤のタンパク質の等電点pH(pI)から約±1.0pH単位またはそれ以上に維持される。より好ましくは、pHは該等電点pH(pI)から約±2.0pH単位またはそれ以上に維持される。
【0026】
もう1つの態様においては、本発明は、1以上の凍結/解凍サイクルにより誘発される凝集体生成に対してタンパク質製剤を安定化するための方法を提供する。この態様においては、本発明の方法は、1以上の凍結/解凍サイクルの前にバッファー系を選択し、少なくとも1つの凍結/解凍サイクルまたは攪拌の前に、該バッファー系を、不溶性凝集体生成を抑制するのに有効な量の不溶性凝集体生成のインヒビターと接触させ、少なくとも1つの凍結/解凍サイクルの前に、該バッファー系および不溶性凝集体生成のインヒビターをタンパク質またはタンパク質断片の或る量と接触させることを含む。この態様の他の実施形態においては、該方法は、該凍結/解凍サイクルの前、途中または後に、不溶性凝集体生成のインヒビターの或る量と接触させることを含みうる。したがって、該製剤への添加の順序は交換可能であるが、関心のあるタンパク質は、該凍結/解凍サイクルの開始前には溶解状態になければならない。
【0027】
もう1つの態様においては、本発明は、1以上の凍結/解凍サイクルまたは攪拌の前にバッファー系を選択し、少なくとも1つの凍結/解凍サイクルまたは攪拌の前に、該バッファー系を、不溶性凝集体生成を抑制するのに有効な量の不溶性凝集体生成のインヒビターと接触させ、少なくとも1つの凍結/解凍サイクルの前に、該バッファー系および不溶性凝集体生成のインヒビターをタンパク質またはタンパク質断片の或る量と接触させることを含む、1以上の凍結/解凍サイクルに付されるタンパク質溶液におけるタンパク質凝集体生成の抑制方法を提供する。前記態様の場合と同様に、この方法の或る実施形態は、該凍結/解凍サイクルの前、途中または後に、不溶性凝集体生成のインヒビターの或る量と接触させることを含みうる。
【0028】
もう1つの態様においては、本発明は、攪拌ストレスにより誘発される凝集体生成に対してタンパク質製剤を安定化するための方法を提供する。この態様においては、本発明の方法は、攪拌ストレスが加わる前(または攪拌ストレスが加わる恐れ/可能性がある前)にバッファー系を選択し、攪拌ストレスが加わる前に、該バッファー系を、不溶性凝集体生成を抑制するのに有効な量の不溶性凝集体生成のインヒビターと接触させ、攪拌ストレスが加わる前または攪拌ストレスが加わる恐れ若しくは可能性がある前に、該バッファー系および不溶性凝集体生成のインヒビターをタンパク質またはタンパク質断片の或る量と接触させることを含む。この態様の他の実施形態においては、該方法は、該攪拌ストレスの前、途中または後に、不溶性凝集体生成のインヒビターの或る量と接触させることを含みうる。したがって、該製剤への添加の順序は交換可能であるが、関心のあるタンパク質は、該攪拌ストレスの開始前には溶解状態になければならない。
【0029】
もう1つの態様においては、本発明は、1以上の物理的攪拌ストレスにさらされるタンパク質溶液におけるタンパク質凝集体生成を抑制するための方法であって、該攪拌ストレスの前にバッファー系を選択し、該攪拌ストレスの前に、該バッファー系を、不溶性凝集体生成を抑制するのに有効な量の不溶性凝集体生成のインヒビターと接触させ、該攪拌ストレスの前に、該バッファー系および不溶性凝集体生成のインヒビターをタンパク質またはタンパク質断片の或る量と接触させることを含む方法を提供する。前記態様の場合と同様に、この方法の或る実施形態は、物理的攪拌ストレスの前、途中または後に、不溶性凝集体生成のインヒビターの或る量と接触させることを含みうる。
【0030】
本発明はまた、医薬上有効な量のタンパク質を、適当な希釈剤、補助剤および/または担体と共に含む製剤を含む。当業者によく知られた他の医薬上許容される賦形剤も本組成物の一部分を構成しうる。これらには、例えば、種々の増量剤、追加的な緩衝剤(バッファー)、キレート化剤、抗酸化剤、保存剤、共存溶媒などが含まれ、これらの具体例には、トリメチルアミン塩(「Tris(トリス)バッファー」)およびEDTAが含まれうるであろう。1つの実施形態においては、2以上のタイプのタンパク質が該製剤中に含まれる。もう1つの実施形態においては、関心のある1つのタンパク質以外のいずれのタンパク質も該製剤の一部分ではない。
【0031】
該製剤の製剤化のための適当なpH範囲は、関心のある個々のタンパク質またはタンパク質断片に左右されるであろう。関心のあるタンパク質の等電点pH(pI)より1pH単位以上大きい又は小さい範囲内の緩衝能を維持するpH範囲のバッファーを選択することが特に好都合である。より好ましくは、バッファー系のpHは、該タンパク質のpIより2pH単位以上大きい又は小さい範囲内で安定である。さらに、大きな温度範囲、特に約−80℃〜約25℃にわたってpHを維持するバッファー系を選択することが特に好都合である。すなわち、該バッファー系のpHは、好ましくは、有意には温度依存性または応答性ではない。1つの実施形態においては、該バッファーは、約4〜約8のpH範囲および約1mM〜約300mMの濃度範囲を有するリン酸カリウム/酢酸カリウム混合バッファー系である。
【0032】
本明細書中で用いる「タンパク質凝集体」または「タンパク質凝集」は、もはや溶解状態にないタンパク質を意味すると理解される。タンパク質凝集体は、2以上の個々のタンパク質分子のアグロメレーションまたはオリゴマー化を意味しうるが、それはそのような定義に限定されない。当技術分野で用いられるタンパク質凝集体は可溶性または不溶性でありうるが、本発明の目的においては、特に示さない限りタンパク質凝集体は通常は不溶性であるとみなされる。本発明の方法において生成を防ぐべき不溶性凝集体は本質的には、通常は少なくとも1μmのサイズを有するタンパク質凝集体であると理解されるが、10μm以上の範囲のものであってもよい。該粒子は、市販の粒子計数装置、例えばPSS(Particle Sizing Systems,USA)の粒子計数装置AccuSizer 700、またはLD400レーザーカウンターを備えたPacific Scientific HIAC Royco液体粒子計数系モデル9703を使用する適当な粒子計数法により測定されうる。USP(米国薬局方)によれば、医薬製剤の注射用量当たり10μmを超える範囲内の最大6000個の粒子および25μmを超える範囲内の最大600個の粒子が許容される。これは、タンパク質の治療用組成物のための簡便な方法で本発明により達成されうる。
【0033】
本発明においては、任意のタンパク質が使用されうる。本発明の或る態様は、水性緩衝溶液、および特許請求の範囲の幾つかに記載のタンパク質凝集体生成のインヒビターの使用に基づくものであり、それに溶解している特定のタンパク質に限定されると解釈されるべきではない。
【0034】
該製剤は一般に、自体公知の一般的に利用可能な医薬組合せ技術を用いて該成分を組合せることにより製造される。その医薬製剤の製造するための特定の方法は、任意の標準的なタンパク質精製法により精製されたタンパク質、および抗体A〜Eを記載している特許および特許出願に開示されているタンパク質を使用することを含む。
【0035】
実施例
実施例において使用する種々の抗体は、米国特許および米国特許出願第10/180,648号(抗体A);第10/891,658号(抗体B);第5,789,554号、第6,254,868号、第09/038,955号、第09/590,284号、第10/153,882号(抗体C);第60/638,961号(抗体D);第6,235,883号(抗体E)(すべてをを参照により本明細書に組み入れることとする)に詳細に記載されている。
【0036】
材料: CHO由来抗体を発現させ、精製した。該抗体を蒸留脱イオン水に対して十分に透析し、〜30mg/mLまで濃縮した。実施例に要求されるバッファー範囲(pH4〜8)に基づき、リン酸カリウムバッファーおよび酢酸カリウムバッファーの組合せを使用した。カリウムに基づくバッファーを選択したのは、それらが、ナトリウムに基づくバッファーに比べて凍結pH安定性に優れているからである。リン酸カリウム(K/PO)(一および二塩基性)および酢酸カリウム(K/OAc)はMallinckrodtから購入した。塩化マグネシウム(MgCl)六水和物はEM Science(Gibbstown,NJ)から購入した。プルロニック−F68(ポロキサマー)はSigmaから購入した。エタノール(EtOH)および1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)はAldrich Chemical Co.から購入した。
【実施例1】
【0037】
製剤の製造
凍結/解凍により誘発される凝集体生成を抑制する被検物質のそれぞれに関する一連の製剤を製造した。各製剤は同様に製造した。Daikyo栓を備えた5mLバイアル内で試験サンプル(2mL)を調製した。濃縮バッファーストック(20mM K/OAc、20mM K/PO(各試験pH値のもの))を、試験する各pH範囲における5mM K/OAc、5mM K/POの最終濃度まで各サンプルに加えた。個々のタンパク質ストック溶液(〜30mg/mL)を〜10mg/mLの最終タンパク質濃度まで各製剤に加えた。調製した凝集体生成抑制物質の追加的なストック溶液には、5.0M MgCl、5% プルロニック−F68、100%(v/v)EtOHおよび100%(v/v)プロピレングリコールが含まれる。これらのストック溶液を、以下の開示に記載の最終濃度範囲、典型的には30〜300mM(MgCl)、0.01〜1.0%(プルロニック−F68)、0.2〜10%(EtOH)および1〜10%(プロピレングリコール)まで該製剤に加えた。必要に応じて、脱イオン水を加えて最終体積にした。
【0038】
凍結/解凍法
各製剤を製造した後、該サンプルバイアルを栓で密封し、適当なバイアルスペーサーインサートを含有する5cc×16の箱の中に配置した。該箱を穏やかに回転させて、該サンプルの穏やかな完全な混合を促した。混合後、該サンプルを冷凍庫(−80℃)内に一晩配置した。翌朝、該サンプルを該冷凍庫から取り出し、外界温度(室温ないし20〜23℃)に配置してそれらを解凍した。該サンプルが完全に解凍し外界温度に平衡化した後、該箱の中のサンプルを穏やかな回転により再び混合した。この凍結/解凍プロセスを合計3サイクル繰返した。
【0039】
サンプル分析
3サイクルの凍結/解凍が完了した後、該サンプルの不溶性凝集体生成の初期目視検査を行った。ついで、LD400レーザーカウンターを備えたPacific Scientific HIAC Royco液体粒子計数系モデル9703を使用して、不溶性凝集体を計数した。不溶性凝集体の総合評価を、2μmの検出限界を用いて定量した。該装置の検出限界は約18,000計数(カウント)/mLである。著しい沈殿/凝集体生成が生じたようである場合には、凝集体生成をより正確に定量し装置の限界を避けるために該サンプルを希釈した(典型的には1:25希釈)。
【0040】
結果
A.pHに対する不溶性凝集体生成の依存性
不溶性凝集およびそのpH依存性に関して、試験した全てのIgGの間で共通の傾向が認められる。試験した全てのIgGに関して、4.0〜5.0のpH値は不溶性凝集体生成に関して一貫して低い粒子計数を与えた。pH6.0〜8.0では、不溶性凝集体の計数は具体的なタンパク質の等電点pH(pI)に著しく依存した。抗体A、抗体Cおよび抗体D(それぞれ8.5、9.2および8.7のpI値)に関して認められるとおり、全粒子計数は、抗体Bおよび抗体E(それぞれ7.8および6.5のpI値)と比べてかなり低かった(<1500)。pH6.0における抗体Bおよび抗体Eに関する全粒子計数はそれぞれ〜11,000および〜7,400である。抗体Bは、pHが該タンパク質のpIに近づくにつれて、異常に高レベルの不溶性凝集体を示している。抗体Cおよび抗体Dは、凍結/解凍中およびpH変化における不溶性凝集体の生成に対して若干抵抗性であるらしい。その原因は十中八九、試験したpH範囲によるものであろう。これらの2つのタンパク質は9.2および8.7のpIを有し、それらは、この研究で試験した全てのタンパク質における最高のpIである(図1)。不溶性凝集体生成を抑制するためにはバッファーpH範囲は製剤中の個々のタンパク質のpIにより決定されるべきであることを、これらの傾向は示している。理想的には、バッファー系のpHは該タンパク質のpI値より高い又は低い少なくとも最大限度(full)のpH単位であるべきである。
【0041】
B.塩化マグネシウムに対する不溶性凝集体生成の依存性
比較のために前記(A)に記載のpHスクリーン(screen)を用いた場合、30〜300mM MgClの添加は、3サイクルの凍結/解凍により誘発される不溶性凝集体生成を抑制しうる。抗体Eにおける最も多量の不溶性凝集体を産生する状態はMgClの導入で有意に抑制される。これは6〜7のpH範囲で最も顕著に認められる。図2は、抗体Eのみに関する30〜300mM MgClでの不溶性凝集体の抑制を示す。図3は、100mMの濃度のMgClによる、抗体A〜Dに関する不溶性凝集に対する効果を示す。MgClによる不溶性凝集の抑制は、抗体D以外の全てのタンパク質に共通して認められる現象である。抗体Aは、凍結/解凍中、よく機能するタンパク質である。不溶性凝集体は、pH8以外のほとんどの試験条件において少量である。これはおそらく、pH8が抗体AのpI(8.5)に近いことによるものであろう(相当な不溶性凝集体を含有する(〜16,000計数/mL))。抗体Aに関してpH8でMgClを含有させると、不溶性凝集体計数が<50計数/mLへと有意に減少する。抗体Bは、MgClの添加後、不溶性凝集体生成に対して最小量の防護しか示していない。抗体Bに関しては、すべての条件下、MgClの添加は単なる緩衝溶液と比べて少量または同等量の不溶性凝集体の含有を示す。抗体Dはこの観察の例外のようである。製剤へのMgClの添加は、バッファーのみと比べて不溶性凝集体のレベルを維持するか、または7〜8のpH範囲において不溶性凝集体の数を増加させる。
【0042】
C.エタノールに対する不溶性凝集体生成の依存性
抗体Eで多量の不溶性凝集体を生成することが判明した前記の条件を用いた場合、低濃度のエタノールの添加は不溶性凝集体の数を減少させる。これらの不溶性凝集体生成性バッファーは塩化カリウムまたはナトリウム(pH5.0または7.0の100mM KCl;pH5または6の100mM NaCl)の存在下または非存在下の5mM K/PO、5mM K/OAcであった。前記バッファー条件における抗体Eの3サイクルの凍結/解凍は約15,000計数/mLの凝集体生成を誘発する。同じ条件下、エタノール(0.1%(v/v))の添加は不溶性凝集体生成の量を50%以上減少させた。0.2%(v/v)エタノールの添加は不溶性凝集体の量を約20倍減少させる。0.8〜10%(v/v)の量で添加されたエタノールは、3サイクルの凍結/解凍により誘発された不溶性凝集体をほぼ消失させる。図4は、(A)KCl含有バッファー系および(B)NaCl含有バッファー系における、抗体Eに関する不溶性凝集体生成に対するエタノールの効果を示す。
【0043】
D.プロピレングリコールに対する不溶性凝集体生成の依存性
最高の不溶性凝集体生成のための前記条件(前記(C))を用いた場合、種々の量のプロピレングリコールの添加は抗体Eの沈殿を減少させる。試験した全ての条件(5mM K/PO4、5mM KOAc、+/− 100mM KCl、pH5または7)において、1% プロピレングリコールの添加は不溶性凝集体の量を〜15倍減少させた。プロピレングリコールの量の更なる増加は沈殿のレベルを(>20倍)減少させた。図5は、不安定化バッファー系においてプロピレングリコールが不溶性凝集体生成に及ぼす抑制効果を示す。
【0044】
E.乳化/湿潤剤に対する不溶性凝集体生成の依存性
ポロキサマー188およびプルロニック−F68は、0.01〜5%の濃度範囲で存在する場合には脂肪乳化剤および湿潤剤として分類される(Roweら,Handbook of Pharmaceutical Excipients,4th Ed.,Weller,PJ.(編);Pharmaceutical Press(London) and American Pharmaceutical Association(Washington D.C.),2003.pp.447−449)。前記(C、D)の不安定化バッファー系を使用して、プルロニック−F68を0.01〜1%の濃度まで加えた。この濃度範囲内のプルロニック−F68の添加は不溶性凝集体の生成を抑制した(図6)。
【実施例2】
【0045】
攪拌ストレス中のタンパク質凝集体生成の抑制
(a)5mM 酢酸ナトリウム、5mM リン酸カリウム(pH7)(対照サンプル);(b)5mM 酢酸ナトリウム、5mM リン酸カリウム、100mM MgCl(pH7);(c)5mM 酢酸ナトリウム、5mM リン酸カリウム、0.1% プルロニックF68(pH7);および(d)5mM 酢酸ナトリウム、5mM リン酸カリウム、10% プロピレングリコール(pH7)を含むバッファー条件と共に実施例1に記載の抗体を使用して各製剤を製造する。これらの製剤は、当業者に公知のいずれかの方法、例えば透析、ダイアフィルトレーション、バッファー交換(クロマトグラフィー、遠心濾過など)を用いて製造する。当業者は、そのような製造に必要な適当な材料・物質(ダイアフィルトレーション膜および透析管の分子量カットオフなど)を特定することが可能である。典型的なタンパク質濃度(例えば、〜10mg/mL)が得られたら、該サンプルバイアルを栓で密封し、適当なバイアルスペーサーインサートを含有する5cc×16の箱の中に配置する。該サンプルの穏やかで十分な混合が促され保証されるよう、該箱を穏やかに回転させる。
【0046】
混合後、該サンプルを輸送刺激(トラックおよび航空機の場合の代表例としての、12時間の地上の振動および12時間の空中の振動)にさらす。輸送刺激を用いることができない場合には、500rpmで72時間以上(VWR OS−500オービタルシェーカー)作動させるオービタルシェーカー(例えば、VWR OS−500オービタルシェーカー)のような種々の方法により模擬輸送条件を達成することが可能である。
【0047】
サンプル分析
該攪拌ストレスが完了した後、該サンプルの不溶性凝集体生成の初期目視検査を行う。ついで、LD400レーザーカウンターを備えたPacific Scientific HIAC Royco液体粒子計数系モデル9703を使用して、不溶性凝集体を計数する。不溶性凝集体の総合評価を、2μmの検出限界を用いて定量する。該装置の検出限界は約18,000計数(カウント)/mLである。著しい沈殿/凝集体生成が生じたようである場合には、凝集体生成をより正確に定量し装置の限界を避けるために該サンプルを希釈する(典型的には1:25希釈)。
【0048】
本発明は特定の態様および実施形態に関して記載されているが、前記の説明および実施例は本発明を限定するものと解釈されるべきではない。本発明は、当業者に明らかであり添付の特許請求の範囲の精神および範囲に含まれる種々の修飾および同等の製剤を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、5mM K/PO4、5mM K/OAcバッファーにおける4.0〜8.0の範囲のpHに対する累積全粒子計数の依存性を示すグラフである。各タンパク質の等電点pH(pI)は以下のとおりである:抗体E=6.5;抗体B=7.8;抗体D=8.1;抗体A=8.5;および抗体C=9.2。
【図2】図2は、図1と同じpH範囲にわたる抗体Eに関するMgCl濃度に対する累積全粒子計数の依存性を示すグラフである。データは、0.0mM、30mM、100mMおよび300mMの全製剤MgCl濃度に関して集めた。
【図3】図3A〜3Dは、図1と同じpH範囲にわたる抗体A、抗体B、抗体Cおよび抗体Dに関するMgCl濃度に対する累積全粒子計数の依存性を示すグラフである。データは、0.0mMおよび100mMの全配合MgCl濃度に関して集めた。
【図4】図4A〜4Bは、抗体Eに関するエタノール濃度に対する累積全粒子計数の依存性を示すグラフである。このデータ収集のために使用したバッファー系は100mM KClまたは100mM NaCl(pH5.0および7.0の100mM KCl;pH5および6の100mM NaCl)の存在下または非存在下の5mM K/PO、5mM K/OAcであった。エタノール濃度は0〜10%(v/v)の範囲であった。
【図5】図5は、抗体Eに関するプロピレングリコール濃度に対する累積全粒子計数の依存性を示すグラフである。このデータ収集のために使用したバッファー系はpH5.0および7.0の100mM KClの存在下または非存在下の5mM K/PO、5mM K/OAcであった。ポリエチレングリコール濃度は0〜10%(v/v)の範囲であった。
【図6】図6は、プルロニック−F68濃度に対する累積全粒子計数の依存性を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)抗体A、抗体B、抗体C、抗体D、抗体Eよりなる群から選ばれる抗体またはそのフラグメントの医薬上許容される量、
b)バッファー、および
c)不溶性凝集体生成のインヒビター
を含んでなる製剤。
【請求項2】
該バッファーが約4.0〜約8.0のpH範囲を有する、請求項1記載の製剤。
【請求項3】
不溶性凝集体生成のインヒビターがMgCl、プロピレングリコール、プルロニック(Pluronic)−F68、ポロキサマー(Poloxamer)188、エタノールまたはそれらの組合せの少なくとも1つである、請求項1記載の製剤。
【請求項4】
該バッファーがリン酸バッファーである、請求項2記載の製剤。
【請求項5】
不溶性凝集体生成のインヒビターがMgClである、請求項3記載の製剤。
【請求項6】
MgClの量が約0.1mM〜約300mMである、請求項5記載の製剤。
【請求項7】
不溶性凝集体生成のインヒビターがプロピレングリコールである、請求項3記載の製剤。
【請求項8】
プロピレングリコールの量が約0.01%〜約10%(v/v)である、請求項7記載の製剤。
【請求項9】
不溶性凝集体生成のインヒビターがプルロニック−F68である、請求項3記載の製剤。
【請求項10】
プルロニック−F68の量が約0.01%〜約5%(v/v)である、請求項9記載の製剤。
【請求項11】
不溶性凝集体生成のインヒビターがポロキサマー188である、請求項3記載の製剤。
【請求項12】
ポロキサマー188の量が約0.01%〜約5%(v/v)である、請求項11記載の製剤。
【請求項13】
不溶性凝集体生成のインヒビターがエタノールである、請求項3記載の製剤。
【請求項14】
エタノールの量が約0.01%〜約10%(v/v)である、請求項13記載の製剤。
【請求項15】
(a)少なくとも1つの凍結/解凍サイクルの前にバッファー系を選択し、
(b)少なくとも1つの凍結/解凍サイクルの前に、(a)のバッファー系を、不溶性凝集体生成を抑制するのに有効な量の不溶性凝集体生成のインヒビターと接触させ、
(c)少なくとも1つの凍結/解凍サイクルの前に、該バッファー系および(b)の不溶性凝集体生成のインヒビターをタンパク質またはタンパク質断片の或る量と接触させることを含んでなる、1以上の凍結/解凍サイクルにより誘発される凝集生成に対してタンパク質製剤を安定化するための方法。
【請求項16】
(a)少なくとも1つの凍結/解凍サイクルの前にバッファー系を選択し、
(b)少なくとも1つの凍結/解凍サイクルの前に、(a)のバッファー系を、不溶性凝集体生成を抑制するのに有効な量の不溶性凝集体生成のインヒビターと接触させ、
(c)少なくとも1つの凍結/解凍サイクルの前に、該バッファー系および(b)の不溶性凝集体生成のインヒビターをタンパク質またはタンパク質断片の或る量と接触させることを含んでなる、1以上の凍結/解凍サイクルに付されるタンパク質溶液におけるタンパク質凝集体生成の抑制方法。
【請求項17】
少なくとも1つの凍結/解凍サイクルの前、途中または後に、タンパク質またはタンパク質断片を含む溶液を不溶性凝集体生成のインヒビターの或る量と接触させることを含んでなる、1以上の凍結/解凍サイクルにより誘発されるタンパク質凝集体生成の抑制方法。
【請求項18】
(a)バッファー系を選択し、
(b)(a)のバッファー系を、不溶性凝集体生成を抑制するのに有効な量の不溶性凝集体生成のインヒビターと接触させ、
(c)少なくとも1つの凍結/解凍サイクルの前に、該バッファー系および(b)の不溶性凝集体生成のインヒビターをタンパク質またはタンパク質断片の或る量と接触させることを含んでなる、1以上の凍結/解凍サイクルにより誘発されるタンパク質凝集体生成に対して安定化されたタンパク質製剤の製造方法。
【請求項19】
a)タンパク質またはタンパク質断片、
b)MgCl、プロピレングリコール、プルロニック−F68、ポロキサマー188またはエタノールから選ばれる、不溶性凝集体生成を抑制するのに有効な量の不溶性凝集体生成のインヒビター、および
c)バッファー系
を含んでなる、1以上の凍結/解凍サイクルにより誘発される不溶性凝集体生成に対する安定性が向上したタンパク質製剤。
【請求項20】
該バッファー系が(a)のタンパク質またはタンパク質断片の等電点(pI)に基づいて選択される、請求項19記載のタンパク質製剤。
【請求項21】
該バッファー系が、(a)のタンパク質またはタンパク質断片のpIに等しい又はそれより2pH単位以上高い若しくは低い、請求項20記載のタンパク質製剤。
【請求項22】
該バッファーが、(a)の抗体の等電点pHより2pH単位以上高い又は低い、請求項1記載の製剤。
【請求項23】
該抗体が抗体Eである、請求項1〜3のいずれか1項記載の製剤。
【請求項24】
(a)攪拌ストレスの前にバッファー系を選択し、
(b)攪拌ストレスの前に、(a)のバッファー系を、不溶性凝集体生成を抑制するのに有効な量の不溶性凝集体生成のインヒビターと接触させ、
(c)攪拌ストレスの前に、該バッファー系および(b)の不溶性凝集体生成のインヒビターをタンパク質またはタンパク質断片の或る量と接触させることを含んでなる、攪拌ストレスにより誘発される凝集生成に対してタンパク質製剤を安定化するための方法。
【請求項25】
(a)攪拌ストレスの前にバッファー系を選択し、
(b)攪拌ストレスの前に、(a)のバッファー系を、不溶性凝集体生成を抑制するのに有効な量の不溶性凝集体生成のインヒビターと接触させ、
(c)攪拌ストレスの前に、該バッファー系および(b)の不溶性凝集体生成のインヒビターをタンパク質またはタンパク質断片の或る量と接触させることを含んでなる、攪拌ストレスに付されるタンパク質溶液におけるタンパク質凝集体生成の抑制方法。
【請求項26】
攪拌ストレスの前、途中または後に、タンパク質またはタンパク質断片を含む溶液を不溶性凝集体生成のインヒビターの或る量と接触させることを含んでなる、攪拌ストレスにより誘発されるタンパク質凝集体生成の抑制方法。
【請求項27】
(a)バッファー系を選択し、
(b)(a)のバッファー系を、不溶性凝集体生成を抑制するのに有効な量の不溶性凝集体生成のインヒビターと接触させ、
(c)攪拌ストレスの前に、該バッファー系および(b)の不溶性凝集体生成のインヒビターをタンパク質またはタンパク質断片の或る量と接触させることを含んでなる、攪拌ストレスにより誘発されるタンパク質凝集体生成に対して安定化されたタンパク質製剤の製造方法。
【請求項28】
a)タンパク質またはタンパク質断片、
b)MgCl、プロピレングリコール、プルロニック−F68、ポロキサマー188またはエタノールから選ばれる、不溶性凝集体生成を抑制するのに有効な量の不溶性凝集体生成のインヒビター、および
c)バッファー系
を含んでなる、攪拌ストレスにより誘発される不溶性凝集体生成に対する安定性が向上したタンパク質製剤。
【請求項29】
該バッファー系が(a)のタンパク質またはタンパク質断片の等電点(pI)に基づいて選択される、請求項28記載のタンパク質製剤。
【請求項30】
該バッファー系が、(a)のタンパク質またはタンパク質断片のpIに等しい又はそれより2pH単位以上高い若しくは低い、請求項29記載のタンパク質製剤。
【請求項31】
該攪拌ストレスが陸上、海上または空中の輸送中にサンプルに加えられる、請求項28記載の製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−502972(P2009−502972A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524279(P2008−524279)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【国際出願番号】PCT/US2006/029931
【国際公開番号】WO2007/016562
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(500049716)アムジエン・インコーポレーテツド (242)
【Fターム(参考)】