説明

タンパク質含有物並びに動物、魚及び水産養殖品の廃物から生成されるペプチドの酸性の50%濃縮溶液及び乾燥粉末を形成するプロセス

本発明は、人間が消費するたんぱく質食品の製造において生成された副産物を原料として、人間及び動物が消費するためのペプチドの50%濃度湿潤性溶液又は乾燥ペプチドを製造するプロセスに関する。まず初めに、脂肪の存在により、原料の形態が歪められてしまっているため、酵素作用を起こす前に、脂肪を低い温度で抽出する。酸加水分解を酵素加水分解と組み合わせて行うことにより、たんぱく質生成をほぼ100%にすることができ、また、産業化によって排出される有機液体状産業廃棄物(LIW)をなくすことができる。プロセスは、a)原料を粉状にし、ポンプで熱交換器へと圧送する工程と、b)原料を加熱する工程と、c)原料を遠心分離機にかけ、脂質の割合がより低い生成物を生成する工程と、d)脂質の割合が低い生成物を、ポンプで消化タンクに圧送する工程と、e)酸及び/又は塩基を添加することにより生成物のpHを変更する工程と、f)消化タンクを加熱し、タンパク質分解酵素の混合物を添加する工程と、g)酵素処理が完了した後、生成物をポンプで熱交換器に圧送し、生成物の温度を上げる工程と、h)生成物を遠心分離機にかけ、残りの油を抽出し、加水分解されなかった固形物と、可溶性固形物及びペプチドを含む液体とに分離する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質含有物、並びに、動物、魚及び水産養殖品の廃物から、酸性の50%濃縮液を製造するプロセスに関する。
【0002】
特に、人間が消費するための食料品製造プロセスで生成された、タンパク質含有物の酵素的及び化学的加水分解プロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
魚粉又はその他の粉製品の製造産業で、今日まで使用されているプロセスの例として、チリ国特許第30380号明細書(製造促進法人、技術研究委員会)では、製造プロセスの一部及びオイルにおける、固形物質及び半固形状物質の操作について記載している。上記プロセスでは、プロセスにおけるパラメータの制御に制限があるため10〜14%の脂質を得ることができるが、この割合では、最終製品のテクスチャに大きな無駄が生じている。上記のプロセス及び最新の技術では、基本的に、廃物となった魚を、粒子状に細かく砕き、粉砕した物の部分的な均質化を行った後、加熱、遠心分離及びデカンテーションを施し、動物の飼料として、水分、非乾燥固形物、油を得る。
【0004】
酸塩基性の加水分解プロセスでは、原料を酸/塩基で加水分解して、脂質を分離し、濃縮物を乾燥させた後、粉状にして、梱包する。
【0005】
酵素加水分解プロセスでは、原料を酵素により加水分解して、脂質を分離し、生成物の濃縮物を乾燥させた後、粉状にして、梱包する。
【0006】
公開日2006年9月14日、国際公開WO2006/096067(発明者:Wahl)号明細書には、コラーゲン及びタンパク質を含む原料の酵素による加水分解のプロセスに関する方法が開示されている。酵素による加水分解によって、原料は次の3つの層に分けられる。脂肪を含む上層、水溶性成分からなる中間層、及び骨や非水溶性タンパク質等の非水溶性物質からなる下層の3層である。これらの層はそれぞれ分離され、2番目の層は、さらに分離のために適切な時間冷却されて、そこから2つの層が生成される。全て又はその一部にコラーゲンを含む下層、及び残りの水溶性たんぱく質を含む液体からなる上層の2層である。後者の層は吸引され、前者の層は、液体に変化するまで加熱される。このプロセスが実行される設備には、回転攪拌機構及び熱交換装置を備える加水分解タンク、当該タンクの底に位置する逆回転可能スクリュー、加水分解された物質を供給するための投入口を備えるコラーゲン分離のための補償収集部、及び、排水部を取り囲む加熱ジャケットを含む熱交換システムが含まれる。
【0007】
2004年2月26日公開の米国特許出願公開2004/038391号広報は、冷水動物のタンパク質を、酵素により加水分解する方法を開示している。この方法では、非常に短いアミノ酸及びタンパク質が生成されるよう、非常に精密に条件が制御され、加水分解は、連続した混合により行われている。この文献で開示されている方法では、酵素タンパク質加水分解物は、消毒されている。魚油及び固体粒子は、遠心分離により取り除かれる。酵素タンパク質加水分解物には、最大90%の遊離アミノ酸、冷水魚の油、ハイドロキシアパタイト(オルト燐酸カルシウム)、たんぱく質、アミノ酸高分子濃縮物、ビタミン、ミネラル、並びにカルシウム及び燐酸塩が含まれている。製造プロセスでは、酵素源と魚の廃物とを混合するが、より具体的には、冷水魚の内蔵及びはらわたを、相対的に効力の強い酵素と、僅かにアルカリ性の媒体中で混合する。産業的方法では、酸を使用することにより、及び、アルカリ変性の工程、分離及び高度な乾燥技術の使用により、既存の技術よりも高い精製度を提供できる。
【0008】
2003年8月15日公開のフランス特許出願公開広報FR2835703(発明者Linderその他)には、廃物の切り身の海洋生物の組織、魚の頭部及び尾部、貝類又は、商品価値の低い魚の全部位からなるタンパク質が豊富に含まれる原料から、油及びたんぱく質加水分解物を得る方法が開示されている。開示されている方法では、加水分解物及び油を含む脂肪相からなる水性混合物を得るために、60℃未満で酵素による加水分解を行い、水相で加水分解を停止する。
【0009】
公開日1991年10月1日の米国特許5053234号広報(発明者:Anderson他)には、動物の一部分を含むタンパク質源の原料から、タンパク質生成物を調合する方法が開示されている。開示されている方法は、a)密閉された条件下で、動物由来の原料を濃縮する工程と、b)タンパク質分解酵素を使用して、動物原料の密閉された部分のタンパク質を加水分解する工程であって、タンパク質を変性させずに酵素活性可能な好適な温度及びタンパク質の部分加水分解を所定の程度達成するのに十分な時間、加水分解を行い、部分的に加水分解された動物の部位の水性溶液を生成する工程と、c)得られた水性懸濁液を加熱してたんぱく質分解酵素を非活性化し、脂肪を油へと変換する工程と、d)加熱された水性懸濁液から非消化固形物を分離し取り除く工程と、e)油性たんぱく質懸濁液が生成されるまで加熱された水性懸濁液に油を加える工程と、f)油性タンパク質懸濁液を殺菌する工程と、g)油性タンパク質懸濁液中の水分を減少させることにより濃縮して、部分的に加水分解されたタンパク質の油性懸濁液を生成する工程と、h)油性油性懸濁液から油の一部を取り除くことにより、部分的に加水分解された粒子状の非変性タンパク質生成物を生成する工程とを備える。
【発明の概要】
【0010】
上述したように、本発明の目的の1つは、人間が直接消費するたんぱく質食品の製造において生成された副産物を原料として、人間及び動物が消費するための50%の濃度のペプチド(たんぱく質の一部)の湿潤性溶液又は乾燥ペプチドを生産することである。
【0011】
以下の記載では、概して、肉製品の粉末を得ることを取り上げているが、これは、本発明をタンパク質食品を製造における単純化した例に基づいて説明しており、従来の技術とは異なる本発明の基本的な段階について記載する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず初めに、原料を粉状にして原料を液化する。脂肪の存在により、材料の形態が歪められてしまっているため、酵素作用を起こす前に、脂肪を低い温度で抽出する。酸加水分解を酵素加水分解と組み合わせて行うことにより、タンパク質生成をほぼ100%にすることができ、また、産業化によって排出される有機液体状産業廃棄物をなくすことができる。
【0013】
原料が、プラスチック製の袋及び/又は容器に入れられ、ポリウレタンによって隔離され、氷で冷やした状態で保存されるなど、原料を良い保存状態で受け取ることが重要である。原料が入れられた容器は、等温環境となっている冷蔵設備で保存される必要がある。
【0014】
プロセスを実施する工場又は産業施設は、衛生的で密閉された倉庫であって、小さな穴を一定保つように気圧を制御できるような倉庫内に設けられるべきであり、蒸気発生ボイラーが燃焼に必要とする空気は、プロセスを実施する倉庫内部の空気及び低温の空気乾燥設備のダクトから排出される空気により賄われる。
【0015】
容器及びプラスチック製の袋は、ステンレス製のホッパーに降ろされた後、プラスチックの袋は、認定された排水用の管へと送られ、容器は、高圧のポンプで洗浄されて再利用される。
【0016】
次いで原料は、粉状にされ、ポンプで熱交換器へと送られる。
【0017】
原料は、50℃に熱せられて、脂肪の割合を効率的に減少させるために遠心分離機にかけられる。脂肪は、酵素加水分解の妨げとなる。
【0018】
脂肪の割合が引き下げられた原料は、ポンプにより、8m3の消化タンクへと圧送される。そこで、酸及び/又は塩基を加えることにより、原料のpHが変更される。消化タンクが、加熱される。連続混合システムを使用して、たんぱく質分解酵素の混合物が添加される。この処理の間、温度は、50℃(±3℃)に保たれる。より効率的に加水分解を行うために、選択された酵素の混合物に応じてpHを制御する。
【0019】
酵素処理が完了した後、原料は、ポンプにより熱交換器まで圧送され、96℃にまで加熱される。水平遠心分離機であるトリカンター(tricanter(登録商標))(およそ3000回転/分)で処理され、残りの油を抽出し、加水分解されなかった固形物と可溶性固形物及びペプチドとを分離する。
【0020】
残りの原料の固形物は、酸及び/又は塩基を使用して化学的に加水分解される。そして、加水分解プロセスが中和された後、流下膜式蒸発器で濃度50%まで濃縮し、酸性の50%溶液を生成し、及び/又はスプレー乾燥機又はバンド型空気乾燥機で溶液を低温で乾燥させる。乾燥された残りの原料は、粉状にされて、市販されているポリプロピレンの不浸透性の袋に格納される。
【0021】
可溶性固形物及びペプチドが含まれた残りの液体は、ポンプで熱交換器へと圧送され、96℃まで再び加熱されて、垂直分離器(およそ6000回転/分)で残りの油のさらなる精細な分離プロセスを行う。
【0022】
分離器は、細かな固形物を、トリカンターの固形スクリューに放出し、この固形物には、上述の同じ酸加水分解プロセスが継続して行われる。
【0023】
分離器は、前回の遠心分離により分離された油が貯蔵されている共有のタンクへと、分離した原料油を放出する。貯蔵タンクに蓄えられた油は、ポンプで汲み上げられてトラックに積み込まれて配送される及び/又は最終処理へと向かう。
【0024】
可溶性の物質が含まれる液体が、様々な効果を有するステンレス製の真空流下膜式蒸発器にて、固形物50%を含有する程度まで濃縮される。酸性化された生成物は、タンクに貯蔵され、商品となる又はさらなる乾燥プロセスが施される。
【0025】
固形物濃度50%の液体は、蒸気又は熱風スプレーによる間接加熱型のドラム乾燥機へ、若しくは、熱交換器へと、ポンプにより圧送される。生成物を2℃に冷却し、押し出し機へと供給し、押し出し機から、3つの効果を有する空気循環型バンド型乾燥機に供給する。水分量が6%に乾燥された固形物は、粉状にされた後、非透過性のポリプロピレン製の袋に、50kgずつ袋詰めされて、国内で販売される又は輸出される。
【0026】
上記のプロセスにより、以下に記載するような物を製造することができる。
【0027】
酵素加水分解によって得られる酸性の50%濃度ペプチド。
【0028】
酵素加水分解によって得られる6%の水分量にまで乾燥されたペプチド。
【0029】
酸性の50%濃度化学加水分解物。
【0030】
6%の水分量にまで乾燥されたペプチド。
【0031】
酵素加水分解及び一部化学加水分解によって得られる酸性の50%濃度ペプチド。
【0032】
酵素加水分解及び一部化学加水分解によって得られる6%の水分量にまで乾燥されたペプチド。
【0033】
生成物が収められた袋は、3つの高さを有するパレットに格納される。
【0034】
スプレー乾燥機及び/又はバンド型乾燥機での低温乾燥に使用される空気は、12の効果を有し、自動スリーブフィルターを通過して再循環する自己清浄式のシステムになっており、乾燥機で発生した水蒸気は、凝縮装置によって取り除かれる。このようなシステムにより、外気の使用を25%削減できる。凝縮装置の後、回路内に流入する漏れ空気及び再循環される乾燥空気の一部は、滴受け及び加熱器を通過することにより再加熱されて飽和点を超え、蒸気生成ボイラーのバーナーで燃焼されて、製造プロセスのヒーターに使われる。
【0035】
トリカンター、分離器及び蒸発器の各設備の化学的洗浄が毎日行われ、使用された生成物は中和された後、工場から排出される液状産業廃棄物(LIW)の均質化タンクに送られる。
【0036】
凝縮装置で使用される水、及び乾燥機及び蒸発器からの水は、5℃であり、これは、湧水及び/又は井戸水の温度よりも高く、したがって、使用された水は、灌漑用水として利用される及び/又は地中に浸透させて自然に戻される。
【0037】
工場設備で使用された水及びボイラー及び蒸発器から留出した水は、LIWタンクで均質化され、物理的分離及びろ過プロセスを経て、灌漑用水として使用される、及び/又は凝縮装置からの水と共に、地中に浸透させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間が消費するタンパク質食品の製造において生成された副産物を原料として、人間又は動物が消費するためのペプチドの50%濃度溶液又は乾燥ペプチドを製造するプロセスであって、
a)前記原料を粉状にし、ポンプで熱交換器へと圧送する工程と、
b)前記原料を加熱する工程と、
c)前記原料を遠心分離機にかけ、脂質の割合がより低い生成物を生成する工程と、
d)前記脂質の割合が低い生成物を、ポンプで消化タンクに圧送する工程と、
e)酸及び塩基の少なくとも一方を添加することにより、前記生成物のpHを変更する工程と、
f)前記消化タンクを加熱し、タンパク質分解酵素の混合物を添加する工程と、
g)前記酵素の処理が完了した後、前記生成物をポンプで熱交換器に圧送して、前記生成物の温度を上げる工程と、
h)前記生成物を遠心分離機にかけ、残りの油を抽出し、加水分解されなかった固形物と、可溶性固形物及びペプチドを含む液体とに分離する工程とを備えるプロセス。
【請求項2】
前記工程b)において、前記原料が50℃に加熱される請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記工程f)において、前記混合は、連続して行われる請求項1又は請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記工程f)において、温度を47℃から53℃の範囲に維持し、選択された酵素の混合物における加水分解の効率を上げるように、前記pHを制御する請求項1から3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記工程g)において、温度が96℃に上げられる請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記プロセスは、前記原料における残留固形物の酸又は塩基を化学的加水分解する工程を備える請求項1から5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記プロセスは、残留固形物を中和した後、前記残留固形物を50%に濃縮する工程をさらに備える請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記プロセスは、蒸発器において、酸性の50%濃度溶液を製造する工程、及び、前記溶液をスプレー乾燥機又はバンド型空気乾燥機により低温で乾燥させ、粉状にして格納する工程の少なくとも一方をさらに備える請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記残りの油を垂直分離器で分離する最終工程のために、前記可溶性固形物及び前記ペプチドを含む前記液体がポンプで熱交換器へと圧送されて、再び96℃に加熱される請求項1から8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記可溶性固形物を含む前記液体は、蒸発器で、固形物濃度50%に濃縮される請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記50%濃度に濃縮された液体は、蒸気又は熱風スプレーによる間接加熱型のドラム乾燥機へ、若しくは、熱交換器へと、ポンプにより圧送される請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記プロセスは、前記濃縮された液体を2℃に冷却し、押し出し機へと投入し、空気循環バンド型乾燥機に供給する工程を含み、6%の水分量を有する乾燥された前記固形物は、粉状にされる請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
ペプチドの湿潤性溶液を生成する請求項1から12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
酵素加水分解によって生成され、50%濃度に濃縮及び酸性化されるペプチドであって、請求項1から13のいずれか一項に記載のプロセスによって生成されるペプチド。
【請求項15】
酵素加水分解によって生成され、6%の水分量に乾燥されるペプチドであって、請求項1から13のいずれか一項に記載のプロセスによって生成されるペプチド。
【請求項16】
50%濃度に濃縮及び酸性化される化学的加水分解物であって、請求項1から13のいずれか一項に記載のプロセスによって生成される加水分解物。
【請求項17】
6%の水分量に乾燥される化学的加水分解物であって、請求項1から13のいずれか一項に記載のプロセスによって生成される加水分解物。
【請求項18】
酵素加水分解及び一部化学的加水分解によって生成され、50%濃度に濃縮及び酸性化されるペプチドであって、請求項1から13のいずれか一項に記載のプロセスによって生成されるペプチド。
【請求項19】
酵素加水分解及び一部化学的加水分解によって生成され、6%の水分量に乾燥されるペプチドであって、請求項1から13のいずれか一項に記載のプロセスによって生成されるペプチド。

【公表番号】特表2012−517222(P2012−517222A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548821(P2011−548821)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【国際出願番号】PCT/IB2010/050440
【国際公開番号】WO2010/089695
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(511020276)インヘニエリア ラムファー エルティーディーエー (1)