説明

タンパク質薬物の徐放性組成物

タンパク質薬物の徐放性組成物を開示する。組成物は、担体基質および担体基質に取り込まれたタンパク質薬物を含む。担体基質は本質的に、ヒアルロン酸またはその塩、アミノ酸、およびポリアルキルオキシドからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担体基質および担体基質に取り込まれたタンパク質薬物を含んでなる徐放性組成物であって、担体基質が本質的に(a)ヒアルロン酸またはその塩、(b)ポリアルキルオキシド、および(c)アミノ酸からなる徐放性組成物に関する。本組成物により、長期間、好ましくは、1週間以上の生理的に活性な薬物の持続放出が可能になる。
【背景技術】
【0002】
タンパク質薬物は、生体内において高い生理活性および標的への高い特異性を有するので、様々な疾患を処置するのに有用であると報告されている。タンパク質薬物は、生体内における短い半減期および低い吸収率を有し、そしてそれが処置薬物としてのタンパク質薬物の利用可能性を制限していることも報告されている。タンパク質薬物は、通常、注射経路を介して患者に投与される。タンパク質薬物の患者への注射は、通常、痛みを伴う。注射されたタンパク質薬物の患者における半減期は、一般に、2〜4時間であり、患者は、毎日または一日おきに長期間、例えば1年以上、薬物を投与されることを必要とする。
【0003】
タンパク質薬物の徐放性製剤が提案された。タンパク質薬物の徐放性製剤の開発の初期段階において、薬物を含有するリポソーム、マイクロカプセル、およびインプラントが提案された。しかしながら、これらの製剤は、製剤に含有されたタンパク質がその活性を失いやすく、かつ薬物の徐放を生じなかったので、満足できるものではなかった。タンパク質薬物を含有する高分子微粒子が提案されている。非生分解性高分子から形成された微粒子は、患者の体内で消化されず、ゆえに、時に、溶解されない残留物を取り出すための手術を必要とするという問題を有する。それらは生体にとって有害でもあり、薬物の徐放の制御は困難である。
【0004】
非生分解性高分子の使用に関連する障害を克服するために、薬物が生分解性高分子内に封入された微粒子が提案されている。微粒子の生分解性高分子は、患者の体内においてゆっくり変性し、薬物が放出される。生分解性かつ生体適合性高分子として、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、擬似ポリアミノ酸などの合成ポリエステルが利用されてきた。PLGAなどのポリエステルから作られた微粒子は、1週間から1ヶ月間までの長期間、ペプチド薬物の徐放を生じる。しかしながら、PLGAの疎水特性がタンパク質薬物の変性を引き起こし、そしてそれが薬物の生理活性を破壊するので、タンパク質薬物の徐放性製剤の生成におけるPLGAの使用は制限されていた。患者体内におけるPLGA自体の変性は、酸を生じ、ゆえに微粒子のpHを低減するので、それはまたタンパク質薬物の変性および凝集を促進する。疎水性高分子を用いた微粒子の生成において一般に利用されている、有機溶媒の使用はまた、タンパク質薬物の不安定化を引き起こす。患者における高分子の比較的遅い消化はまた、外来物質を意識させる。
【0005】
天然高分子から作られた徐放性製剤の使用も提案されてきた。ゼラチン、コラーゲン、キトサン、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、またはヒアルロン酸などの天然高分子は、水を吸収すると粘性ゲルを形成する。天然高分子のゲルは、タンパク質薬物を含む、薬物の徐放を生じる。しかしながら、ゲルの粘性および密度は、身体内部での高分子の消化およびゲルの希釈により、患者体内において速く低下するので、患者の身体に導入されたとき、ゲルは薬物を保持するその能力を容易に喪失する。従って、天然高分子ゲルは、満足する徐放を提供しない。
【0006】
ヒアルロン酸は、N−アセチル−D−グルコサミンおよびD−グルクロン酸で作られた天然の生分解性高分子量の高分子である。それは、生体内の種々の器官および組織において見られる。それは、眼の手術およびリウマチ処置において用いられる。徐放性製剤においてヒアルロン酸ゲルを使用することが試みられてきた。一般に、ヒアルロン酸ゲルの粘性が高ければ高いほど、タンパク質薬物の徐放を生み出すのにより効果的である。しかしながら、数%のヒアルロン酸ゲルを含有する組成物は、粘性が高くかつ難し過ぎて、注射によっては患者に導入されない。
【0007】
他の天然高分子ゲル製剤のように、タンパク質薬物のヒアルロン酸ゲル製剤は、一度対象に導入されると、薬物の効果的な徐放をもたらさない。例えば、1% ヒアルロン酸ゲルを含むインスリン製剤(特許文献1に記載)がウサギに注射された場合、グルコース血液レベル低下効果は、長くても注射後24時間まで持続するものであった。特許文献2には、1.5%ヒアルロン酸および血漿タンパク質を含むインターフェロンの徐放性製剤が記載されている。インターフェロン製剤が対象に導入された場合、インターフェロンの血液レベルは、注射後24時間以内にその開始時のレベルの1/10まで急激に低下した。
【0008】
ゲル製剤の代替として、スプレー乾燥により生成される、タンパク質薬物およびヒアルロン酸またはその塩を含む微粒子が提案されてきた。例えば、特許文献3には、スプレー乾燥を用いて、タンパク質薬物を含むヒアルロン酸微粒子を生成すること、前記微粒子をレシチンなどの親油性材料でコーティングすること、および前記コーティングされた微粒子を油中に分散させることにより製造された徐放性製剤が記載されている。コーティングされた微粒子は、水中油型エマルジョンに製剤されることも記載されている。インターフェロン−αのレシチンコート微粒子の水中油型エマルジョンがウサギに注射された場合、インターフェロン−αの血液レベルは長期間維持された。
【0009】
上述のコーティング過程を撤廃するために、親油性材料が、ヒアルロン酸および有効成分を含有する溶液に分散されることができ、そして得られた溶液が乾燥(例えば、スプレー乾燥)の対象とされる(特許文献3)。
【0010】
特許文献4には、制御された薬物放出速度を有する薬物組成物が開示されている。薬物組成物は、(a)生分解性、生体適合性、高分子量の物質および/または多価金属イオンまたは多価金属イオン源、および(b)ヒアルロン酸またはその塩から形成されたマトリックス、および(c)前記マトリックス中に成分として取り込まれた薬物を含む。成分(a)は、ゼラチン、カゼインナトリウム、アルブミン、塩化リゾチーム、ポリ−L−リジン、キトサン、Ca2+、Al3+、およびFe3+を含む。薬物は、抗炎症薬物から関節炎治療剤まで、広範囲をカバーする。ヒアルロン酸またはその塩は、600,000〜2,000,000Da、特に、1,000,000〜2,000,000Daの範囲の分子量を有する。それは、タンパク質薬物の制御されたデリバリーを具体的に教示していない。特許文献4は、ヒアルロン酸またはその塩、アミノ酸、およびポリアルキルオキシドから本質的になる担体基質、および前記担体基質に取り込まれたタンパク質薬物を含み、タンパク質薬物の分子量(Da)対ポリアルキルオキシドの分子量(Da)の比が約1:0.5〜1:10である、徐放性組成物を教示しない。
【0011】
結論として、長期間の薬物の優れた徐放を示す一方、薬物の生理活性を保持している、タンパク質薬物の徐放性製剤の必要が依然として存在する。
【0012】
ポリエチレングリコール(PEG)は、ポリアルキルオキシドの一種である。低分子量のPEG(分子量1000Da未満)は室温で液体であり、一方、高分子量のPEG(分子量1000Da以上)は固体である。高分子量のPEGは、可塑剤、座剤基剤、および親水性賦形剤として用いられてきた(非特許文献1)。低分子量のPEGは、薬物組成物の溶媒またはビークルとして主に用いられてきた。低分子量のPEGを安定剤として用いて、タンパク質薬物の液体製剤中のタンパク質薬物の結晶化または沈殿が予防されてきた(非特許文献2)。
【0013】
液体形態中の低分子量のPEGを、タンパク質の固体製剤のビークルとして用いることが提案された。例えば、特許文献5には、コラーゲンと混合されたIGF−1またはB−hGHなどのタンパク質が凍結乾燥され、粉砕されて粉末を生じ、次に、液体PEGに分散される方法が記載されている。特許文献6には、PEGの結晶インターフェロンのビークルとしての使用が記載されている。特許文献6によると、異なる分子量のPEGの混合物が提案されている。例えば、それには、結晶インターフェロンの注射可能な徐放性組成物の生成におけるPEG3350およびPEG400またはPEG40,000およびPEG550の混合物の使用が記載されている。分子量8000Daまたは3350DaのPEGの使用も提案されている。しかしながら、特許文献6には、ヒアルロン酸またはその塩、アミノ酸およびポリアルキレンオキシドから本質的になる担体基質、および前記担体基質に取り込まれたタンパク質薬物を含み、前記タンパク質薬物の分子量(Da)対前記ポリアルキレンオキシドの分子量(Da)の比が約1:0.5〜1:10である、徐放性製剤は、教示も開示もされていない。特許文献6により教示されるインターフェロン−αの徐放性組成物は、注射後48時間までインターフェロン−αを放出した。
【0014】
低分子量のPEGをビークルとして含む薬物組成物は、薬物の徐放を短期間生じることが報告されてきた。例えば、特許文献7には、80% PEG400またはPEG300溶液のソマトスタチンのビークルとしての使用が記載されている。38% PEG400溶液中に分散されたソマトスタチン溶液は、ソマトスタチンの徐放を4時間示した。特許文献8には、PEG300またはPEG600を含む組成物からのタンパク質薬物の徐放が開示されている。容量40%以上の高濃度のPEG300は、注射部位の周りでの溶血作用を誘発し得るので、30%未満のPEG300を使用することがすすめられた(非特許文献1)。
【0015】
【特許文献1】特開平1(1989)−287041号公報
【特許文献2】米国特許第5,416,071号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0064105号明細書
【特許文献4】米国特許第6,375,988号明細書
【特許文献5】米国特許第5,385,738号明細書
【特許文献6】米国特許第6,004,549号明細書
【特許文献7】米国特許第4,041,155号明細書
【特許文献8】米国特許第6,011,011号明細書
【非特許文献1】Handbook of Pharmaceutical Excipients、第2版、The Pharmaceutical Press(1994年)
【非特許文献2】International Journal of Pharmaceuticals、185、129−188頁(1999年)
【非特許文献3】The ELISA Guidebook、Humana Press、John R. Crowther、2001年
【非特許文献4】欧州薬局方「Interferon Alfa−2 Concentrated Solution」、l812〜1815頁、2005年、
【非特許文献5】Journal of Virology、37(2)、755〜758頁、(1981年)。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
技術的解決
担体基質および前記担体基質に取り込まれたタンパク質薬物を含んでなる徐放性組成物であって、前記担体基質が、(a)ヒアルロン酸またはその塩、(b)ポリアルキルオキシド、および(c)アミノ酸から本質的になり、前記タンパク質薬物の分子量(Da)対前記ポリアルキルオキシドの分子量(Da)の比が約1:0.5〜1:10である、徐放性組成物。
【0017】
本発明は、担体基質および前記担体基質に取り込まれた生理的に活性なタンパク質薬物を含んでなる徐放性組成物であって、前記担体基質が本質的に、前記タンパク質薬物の徐放を生じるのに十分な量のヒアルロン酸またはその塩、前記タンパク質薬物の徐放を生じるのに十分な量のポリアルキルオキシド、および前記タンパク質薬物の徐放を生じるのに十分な量のアミノ酸からなる徐放性組成物に関する。
【0018】
本発明の組成物において、タンパク質薬物の分子量(Da)対ポリアルキルオキシドの分子量(Da)の比は、約1:0.5〜1:10である。組成物は、好ましくは、タンパク質薬物の徐放をその有効な量またはそれより多い量で少なくとも7日間生じる。好ましくは、担体基質およびタンパク質薬物は、微粒子に形成され得る。微粒子は、1〜500μmの平均直径を有してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
発明の形態
本発明の徐放性組成物に含有される担体基質は本質的に、ヒアルロン酸またはその塩、ポリアルキルオキシド、およびアミノ酸からなる。
【0020】
本明細書で用いられる用語「担体基質」は、薬物の取り込みおよび徐放を可能にする基剤またはマトリックスを示す。担体基質は、組成物の乾燥重量に基づき約50〜99.95重量%、好ましくは、約70〜99.95重量%を占めてもよい。
【0021】
本発明によると、ヒアルロン酸またはその塩、アミノ酸、およびポリアルキルオキシド間の物理的相互作用またはファン・デル・ワールス相互作用が、担体基質の形成をもたらす。ヒアルロン酸またはその塩、アミノ酸、およびポリアルキルオキシドから形成された微粒子の緻密な構造または緻密なテクスチャは、そこに取り込まれたタンパク質薬物の徐放を長期間生じることを可能にする。微粒子は、各成分間で形成された架橋結合または化学結合を有してもよい。この場合、必要ならば、架橋結合剤が用いられてもよい。架橋結合剤は、当業者に既知である。
【0022】
本明細書で用いられる用語「本質的になる」は、担体基質が、ヒアルロン酸またはその塩、ポリアルキルオキシドおよびアミノ酸を必須成分として含有することを意味する。担体基質は、その徐放効果に実質的に作用しない他の非必須成分を含有してもよい。
【0023】
本発明において用いられ得るヒアルロン酸は、遊離酸またはその塩であってもよい。塩は、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸アンモニウム、ヒアルロン酸カルシウム、ヒアルロン酸マグネシウム、ヒアルロン酸亜鉛、およびヒアルロン酸コバルトを含み得るが、これらに限定されない。好ましくは、ヒアルロン酸ナトリウムが用いられ得る。ヒアルロン酸またはその塩は、単体で、または混合物として用いられてもよい。
【0024】
抽出、精製、および測定の種々の方法を用いて、種々の分子量のヒアルロン酸が生成され得る。本発明において用いられるヒアルロン酸またはその塩は、1,000,000Da以上、好ましくは、3,000,000Da以上の分子量を有していてもよい。ヒアルロン酸またはその塩の分子量の上限はないが、現時点で、4,000,000〜6,000,000Daまでのヒアルロン酸が市販されている。
【0025】
ヒアルロン酸またはその塩は、組成物の乾燥重量に基づき5〜90重量%、好ましくは、10〜60重量%、より好ましくは、20〜50重量%の量で本発明の組成物に取り込まれ得る。本発明の一実施形態において、本発明の組成物は、組成物の乾燥重量に基づき20〜50重量%の量で約3,000,000Daの分子量のヒアルロン酸ナトリウムを含む。
【0026】
本明細書で用いられる用語「乾燥重量」は、例えば、蒸発または濾過によって組成物から液体を除去することにより得られる固体重量を意味する。
【0027】
本出願において用いられる用語「ポリアルキルオキシド」は、ポリアルキルオキシドおよびポリアルキレンオキシドを含む。それらは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、およびポリエチレンおよびポリプロピレングリコールの共重合体(例えば、ポロクサマー)により例示され得るが、これらに限定されない。それらは、単体で、または混合物として用いられてもよい。ポリアルキルオキシドは、好ましくは、ポリエチレングリコールである。
【0028】
上述の通り、PEGは、医薬組成物、特に、徐放性組成物において用いられてきた。しかしながら、ヒアルロン酸およびアミノ酸と組み合わせた、タンパク質薬物の分子量と同様またはそれより大きい分子量を有するポリアルキルオキシド、特に、ポリエチレングリコールの使用は、タンパク質薬物の徐放を増強することは報告されていない。タンパク質薬物の分子量対ポリアルキルオキシドの分子量の比は、一般に、約1:0.5〜1:10の範囲、好ましくは、約1:0.8〜1:5、より好ましくは、約1:1である。PEG8000、PEG20,000、およびPEG35,000それぞれが、インターフェロン−α(M.W.20,000Da)の徐放性組成物において利用された場合、組成物のインターフェロン−αの血液レベルは、100pg/mlを5日間より長い間維持した(実施例3〜5)。特に、PEG20,000を利用した実施例4の組成物が、最も長い徐放効果を示した。
【0029】
ポリアルキルオキシドは、組成物の乾燥重量に基づき1〜90重量%、好ましくは、5〜60重量%、より好ましくは、10〜40重量%の量で本発明の組成物に取り込まれ得る。
【0030】
アミノ酸は、単体で、または他の既知の医薬賦形剤との混合物として、タンパク質の安定剤として用いられてきた(非特許文献2)。本発明において、アミノ酸は、担体基質の成分の一つであり、組成物の乾燥重量に基づき5重量%以上、好ましくは、10〜80重量%以上、より好ましくは、20〜60重量%の量で利用され得る。
【0031】
本発明によると、好ましくは、疎水性アミノ酸を用いて、タンパク質薬物の徐放が増強される(実験例5参照)。本出願で用いられる用語「疎水性アミノ酸」は、アスパラギン酸、アスパラギン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、トリプトファン、チロシン、またはバリンを含み得る。イソロイシン、ロイシン、メチオニン、またはバリンが都合良く用いられ得る。ロイシンが特に好ましい。置換基が組成物の疎水性または徐放性プロファイルに悪影響を与えない限り、アミノ酸は1個以上の置換基を有していてもよい。アミノ酸は、単体で、または混合物として用いられてもよい。
【0032】
それぞれが適当な量で、一緒に用いられるとき、ヒアルロン酸またはその塩、ポリアルキルオキシド、およびアミノ酸は、それらが個々に、または2種類の成分の混合物(実験例2を参照)として用いられるときと比較して、タンパク質薬物の増強された徐放を生じる。ヒアルロン酸またはその塩、ポリアルキルオキシドおよびアミノ酸の総量は、組成物の乾燥重量に基づき約50〜99.95重量%、好ましくは、約70〜99.95重量%の範囲内であってもよい。
【0033】
一実施形態において、本発明の組成物は、組成物の乾燥重量に基づき20〜50重量%の量の、約3,000,000Daの分子量を有するヒアルロン酸ナトリウム、組成物の乾燥重量に基づき10〜40重量%の量の、組成物に含有されたタンパク質薬物の分子量とほぼ同じ分子量を有するポリエチレングリコール、および組成物の乾燥重量に基づき20〜60重量%の量の、ロイシンなどの疎水性アミノ酸から本質的になる担体基質、および組成物の乾燥重量に基づき0.05〜5重量%の量のタンパク質薬物を含む。
【0034】
本発明の組成物は、生理的に活性なタンパク質薬物を含む。本出願において用いられる用語「生理的に活性なタンパク質薬物」は、種々の生理現象に対してアンタゴニスト効果を発揮し、活性型で存在するタンパク質または(ポリ)ペプチドを示す。
【0035】
本発明の組成物において用いられ得るタンパク質薬物の例は、ヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモン、ブタ成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロンおよびインターフェロン受容体(例えば、インターフェロン−α、−β、および−γ、I型可溶型インターフェロン受容体)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、グルカゴン様ペプチド(GLP−1など)、骨形態形成タンパク質、卵胞刺激ホルモン、エキセンディン、Gタンパク質共役型受容体、インターロイキン(例えば、インターロイキン−1、−2、−3、−4、−5、−6、−7、−8、−9、−10、−11、−12、−13、−14、−15、−16、−17、−18、−19、−20、−21、−22、−23、−24、−25、−26、−27、−28、−29、−30など)、インターロイキン受容体(例えば、IL−1受容体、IL−4受容体など)、酵素(例えば、グルコセレブロシダーゼ、イズロネート−2−スルファターゼ、α−ガラクトシダーゼ−A、アガルシダーゼアルファ、β−またはα−L−イズロニダーゼ、ブチリルコリンエステラーゼ、キチナーゼ、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、イミグルセラーゼ、リパーゼ、ウリカーゼ、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ、中性エンドペプシダーゼ、ミエロペルオキシダーゼなど)、インターロイキンまたはサイトカイン結合タンパク質(例えば、IL−18bp、TNF結合タンパク質)、マクロファージ活性化因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギーインヒビター、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンパ毒素、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、α1−アンチトリプシン、アルブミン、α−ラクトアルブミン、アポリポタンパク質−E、エリスロポエチン、高度にグリコシル化されたエリスロポエチン、アンジオポイエチン、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性化ペプチド、トロンボモジュリン、血液因子VII、血液因子VIIa、血液因子VIII、血液因子IX、血液因子XIII、プラスミノーゲン活性化因子、フィブリン結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、タンパク質C、C反応性タンパク質、レニンインヒビター、コラゲナーゼインヒビター、スーパーオキシド・ジスムターゼ、レプチン、血小板由来成長因子、上皮成長因子、表皮成長因子、アンギオスタチン、アンギオテンシン、骨髄造血性成長因子、骨髄造血刺激因子、カルシトニン、インスリン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、関節組織活性化因子、組織因子経路インヒビター、卵胞刺激ホルモン、プロゲステロン形成ホルモン、プロゲステロン形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子(例えば、神経成長因子、繊毛様神経栄養因子、軸索形成因子−1、脳性ナトリウム利尿ペプチド、グリア細胞由来神経栄養因子、ネトリン、神経網抑制因子、神経栄養因子、ニュートリンなど)、パラトルモン、リラキシン、シクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、グルカゴン、コレシストキニン、膵ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、受容体(例えば、TNFR(P75)、TNFR(P55)、IL−1受容体、VEGF受容体、B細胞活性化因子受容体など)、受容体アンタゴニスト(例えば、IL1−Raなど)、細胞表面抗原(例えば、CD2、3、4、5、7、11a、l1b、18、19、20、23、25、33、38、40、45、69など)、ウイルスワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体フラグメント(例えば、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)およびFd)、ウイルス由来ワクチン抗原、成長因子(例えば、EGF、PDGF、FGFなど)、抗体融合タンパク質、抗体フラグメント融合タンパク質などを含むが、これらに限定されない。
【0036】
インターフェロン、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、卵胞刺激ホルモン(FSH)などの、患者への頻繁な投与を必要とするタンパク質薬物が、本願発明において有利に用いられ得る。これらのタンパク質薬物のうち一種類を含有する徐放性組成物が、本発明により製造され、タンパク質薬物の徐放をその有効血清レベルで7日間より長い間生じる(実験例7および8)。
【0037】
本明細書で用いられる用語「有効血清レベル」または「有効濃度」は、生物系において意図される生理的変化が生じるか、またはそれより上の、対象の血液における薬物の濃度を意味する。有効血清レベルの値は、用いられる薬物の種類および対象に伴い変動する。
【0038】
担体基質および担体基質に取り込まれたタンパク質薬物を含む、本発明の組成物は、固体医薬組成物の種々の既知の生成方法により生成され得る。例えば、それは、フィルム、ペレット、糸状体、円柱体、桿状体または微粒子の形態に生成されてもよい。必要ならば、医薬的に許容される賦形剤が、組成物の生成のために用いられてもよい。医薬的に許容される賦形剤の種類および量は、当業者に既知である。
【0039】
組成物は、好ましくは、微粒子内に製剤される。微粒子は、球形、非球形または不規則な形であってもよい。微粒子の平均サイズは、約1μm〜約500μmの範囲であってもよい。注射の目的上、微粒子は、好ましくは、約100μm以下の平均サイズを有する。
【0040】
微粒子は、当業者に既知の種々の方法により生成され得る。凍結乾燥またはスプレー乾燥が用いられてもよい。例えば、ヒアルロン酸またはその塩、アミノ酸、およびポリアルキルオキシドの水溶液が、タンパク質薬物の溶液と混合され、得られた混合物が凍結乾燥またはスプレー乾燥の対象とされ、タンパク質薬物が担体基質に取り込まれた微粒子が生成される。タンパク質薬物、ヒアルロン酸またはその塩、ポリアルキルオキシドおよびアミノ酸の均一溶液混合物は、均一溶液のスプレーされた微細液滴から水を蒸発させるため、スプレー乾燥に適用されてもよい。乾燥された微粒子は元の溶液と同じ組成を有するが、薬物分子は得られた微粒子に封入されている。
【0041】
分散剤に容易に分散される、均一な球状微粒子を生成するので、スプレー乾燥が好ましくは用いられ得る。均一な球状微粒子は、皮下、筋肉内、病巣内または静脈内などの種々の注射方法により対象に投与されることも容易である。
【0042】
本発明の組成物の構造と関連して本明細書において用いられる用語「取り込まれる」または「担体基質に取り込まれる」は、タンパク質薬物が、得られた担体基質内に封入されることを意味し、そしてそれは、例えば、好ましくは、微粒子の形態であってもよい。用語「封入される」は、分子が、担体基質マトリックス自体または薬物とマトリックスとの間のイオン/非イオン結合などの任意の手段により、三次元空間に閉じ込められることを意味する。
【0043】
本発明の徐放性組成物は種々の経路により投与され得る。本明細書において用いられる用語「投与」は、種々の経路を介した患者へのある種の物質の導入またはデリバリーを意味する。薬物の標的組織へのデリバリーを可能にする限り、任意の経路が用いられ得る。例えば、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、局所、鼻腔内、肺内、および直腸投与が用いられてもよい。注射投与が都合よく用いられ得る。皮下投与が好ましい。本発明の組成物はまた、吸入、内視鏡または腹腔鏡経路などの他の経路を介して投与されてもよい。
【0044】
本発明の組成物は、投薬形態または投与経路に依存して、更なる担体を含んでいてもよい。タンパク質薬物の安定剤を用いてもよい。安定剤は、タンパク質薬物との共有結合または配位結合を形成してもよく、スクロース、ラクトース、またはグルコースなどの糖、マンニトールまたはグリセロールなどのポリオール、ツイーン(Tween)、レシチン、リン酸塩、および無機塩類などの界面活性剤を含むが、これらに限定されない。安定剤は、単体で、或いは混合物として用いられてもよい。安定剤の種類または量を決定することは当業者の範疇である。
【0045】
本発明者らは、本発明によるインターフェロン−αの組成物が、安定剤を含有するときより、安定剤を含有しないときにより長期間の徐放を発揮することを見出した。安定剤としてレシチンを含む組成物、およびレシチンを含まない別の組成物を用いた一の実験において、両方の組成物が、7日間より長い間、インターフェロン−αの徐放を生じた。興味深いことに、レシチンを含まない組成物は、より長い徐放を生じた(実験例6)。
【0046】
この結果は、当該技術分野の刊行物の教示と対照的である。例えば、特許文献3には、微粒子がレシチンなどの親油性材料でコートされて、ヒアルロン酸微粒子の分散性、そしてその結果徐放が増強されている、ヒアルロン酸微粒子の徐放性組成物が記載されている。
【0047】
本発明の組成物は、種々の注射経路により投与されてもよい。この目的上、組成物は、注射可能な溶液担体中に分散されてもよい。注射可能な溶液担体は、蒸留水または注射可能なバッファーなどの水性注射溶液、コーン油、ゴマ油、綿実油、大豆油、ピーナッツ油、モノ−、ジ−、およびトリ−グリセリド、鉱油、スクアランまたはそれらの混合物などの非水性注射溶液を含み得るが、これらに限定されない。必要ならば、注射用製剤は、分散剤、防腐剤、麻酔薬、バッファー、または保存剤を更に含んでいてもよい。
【0048】
組成物の投与についての正確な用量および投薬計画は、必然的には、処置される個々の対象のニーズ、処置の種類、投与経路、個々の対象の年齢、性別および体重、苦痛または必要性の程度および医療従事者の判断、並びに薬物の種類に依存するだろう。
【0049】
本発明は、以下の実施例により更に説明され、そこに記載された特定の手法および組成に、範囲または精神において本発明を制限するとして解されるべきではない。
【実施例】
【0050】
実施例1:インターフェロン−α微粒子の調製
インターフェロン−αを10mM 酢酸バッファー中に1〜2mg/mlの濃度に溶解し、インターフェロン−α溶液を調製した。ロイシン(3mg/ml)、メチオニン(1.5mg/ml)、およびPEG20,000(1.5mg/ml)を純水に溶解した。ヒアルロン酸ナトリウム(MW3,000,000Da)(3mg/ml)を得られた溶液に溶解した。
【0051】
インターフェロン−α溶液をロイシン、メチオニン、PEGおよびヒアルロン酸ナトリウムの溶液に0.015mg/mlの最終濃度まで添加し、溶液を得た。溶液を、スプレー乾燥機(モバイル マイナー(Mobile Minor(商標))、ニーロ(Niro))に20ml/分の速度で導入し、微粒子を生成した。注入口の空気の温度は100℃であった。生成した微粒子の直径は、2m〜200mの間である。
【0052】
実施例2:インターフェロン−α微粒子の調製
インターフェロン−αを10mM 酢酸バッファー中に1〜2mg/mlの濃度に溶解し、インターフェロン−α溶液を調製した。レシチンを、5mg/mlの濃度に純水で水和し、次に、ミクロフルイダイザー(ミクロフルイダイザー(Microfluidizer(商標))、ミクロフルイディクス・コーポレイション(Microfluidics Corporation))を通して、レシチン分散液を生成した。レシチン粒子は、50nm〜100nmの範囲のサイズを有する。
【0053】
ロイシン(3mg/ml)およびPEG20,000(1.5mg/ml)を純水に溶解した。得られた溶液に、分子量3,000,000Daを有するヒアルロン酸ナトリウム(3mg/ml)を溶解した。
【0054】
上で得た、ロイシン、PEG20,000およびヒアルロン酸ナトリウム含有溶液にレシチン分散液を0.525mg/mlの濃度まで添加し、均一に混合した。インターフェロン−α溶液を0.075mg/mlの最終濃度まで添加し、溶液を得た。得られた溶液を、スプレー乾燥機(モバイル マイナー(Mobile Minor(商標))、ニーロ(Niro))に20ml/分の速度で導入し、微粒子を生成した。注入口の空気の温度は100℃であった。生成した微粒子の直径は2m〜200mの間である。
【0055】
比較例1:PEGおよびアミノ酸を含まないインターフェロン−α微粒子の調製
インターフェロン−αを10mM 酢酸バッファー中に1〜2mg/mlの濃度に溶解し、インターフェロン−α溶液を調製した。レシチンを5mg/mlの濃度に純水で水和し、次に、ミクロフルイダイザー(ミクロフルイダイザー(Microfluidizer(商標))、ミクロフルイディクス・コーポレイション(Microfluidics Corporation))を通して、レシチン分散液を生成した。レシチン粒子は、50nm〜100nmの範囲のサイズを有する。
【0056】
ヒアルロン酸ナトリウム(分子量3,000,000Da)を純水に3mg/mlの濃度に溶解した。レシチン分散液をヒアルロン酸ナトリウム溶液に0.51mg/mlの濃度まで添加し、均一に混合した。インターフェロン−α溶液を0.15mg/mlの最終濃度まで添加し、溶液を得た。溶液をスプレー乾燥機(モバイル マイナー(Mobile Minor(商標))、ニーロ(Niro))に20ml/分の速度で導入し、微粒子を生成した。注入口の空気の温度は100℃であった。生成した微粒子の直径は、2m〜200mの間である。
【0057】
比較例2:PEGを含まないインターフェロン−α微粒子の調製
インターフェロン−αを10mM 酢酸バッファー中に1〜2mg/mlの濃度に溶解し、インターフェロン−α溶液を調製した。レシチンを5mg/mlの濃度に純水で水和し、次に、ミクロフルイダイザー(ミクロフルイダイザー(Microfluidizer(商標))、ミクロフルイディクス・コーポレイション(Microfluidics Corporation))を通して、レシチン分散液を生成した。レシチン粒子は、50nm〜100nmの範囲のサイズを有する。
【0058】
ロイシンを純水中に3mg/mlの濃度に溶解し、それに、ヒアルロン酸ナトリウム(分子量3,000,000Da)を3mg/mlの濃度に溶解した。
【0059】
レシチン分散液を、ロイシンおよびヒアルロン酸ナトリウム含有溶液に0.5025mg/mlの濃度に添加し、均一に混合した。インターフェロン−α溶液を0.075mg/mlの最終濃度に添加し、溶液を得た。溶液をスプレー乾燥機(モバイル マイナー(Mobile Minor(商標))、ニーロ(Niro))に20ml/分の速度で導入し、微粒子を生成した。注入口の空気の温度は100℃であった。生成した微粒子の直径は、2μm〜200μmの間である。
【0060】
比較例3:アミノ酸を含まないインターフェロン−α微粒子の調製
インターフェロン−αを10mM 酢酸バッファー中に1〜2mg/mlの濃度に溶解し、インターフェロン−α溶液を調製した。レシチンを5mg/mlの濃度に純水で水和し、次に、ミクロフルイダイザー(ミクロフルイダイザー(Microfluidizer(商標))、ミクロフルイディクス・コーポレイション(Microfluidics Corporation))を通して、レシチン分散液を生成した。レシチン粒子は、50nm〜100nmの範囲のサイズを有する。
【0061】
PEG20,000を純水に1.5mg/mlの濃度に溶解し、それに、ヒアルロン酸ナトリウム(分子量3,000,000Da)を3mg/mlの濃度に溶解した。
【0062】
レシチン分散液を、PEGおよびヒアルロン酸ナトリウム含有溶液に0.5025mg/mlの濃度まで添加し、均一に混合した。インターフェロン−α溶液を0.075mg/mlの最終濃度まで添加し、溶液を得た。溶液をスプレー乾燥機(モバイル マイナー(Mobile Minor(商標))、ニーロ(Niro))に20ml/分の速度で導入し、微粒子を生成した。注入口の空気の温度は100℃であった。生成した微粒子の直径は、2μm〜200μmの間である。
【0063】
実施例3〜5:異なる分子量のPEGを含むインターフェロン−α微粒子の調製
インターフェロン−αを10mM 酢酸バッファー中に1〜2mg/mlの濃度に溶解し、インターフェロン−α溶液を調製した。レシチンを5mg/mlの濃度に純水で水和し、次に、ミクロフルイダイザー(ミクロフルイダイザー(Microfluidizer(商標))、ミクロフルイディクス・コーポレイション(Microfluidics Corporation))を通して、レシチン分散液を生成した。レシチン粒子は、50nm〜100nmの範囲のサイズを有する。
【0064】
ロイシンおよびPEG(分子量8,000(実施例3)、20,000(実施例4)、または35,000(実施例5))を純水中に以下の表1に示す濃度に溶解した。得られた溶液に、ヒアルロン酸ナトリウム(分子量3,000,000Da)を表1に示す濃度に溶解した。
【0065】
レシチン分散液を、ロイシン、PEGおよびヒアルロン酸ナトリウム含有溶液に0.5025mg/mlの濃度まで添加し、均一に混合した。インターフェロン−α溶液を表1に示す最終濃度まで添加した。得られた溶液をスプレー乾燥機(モバイル マイナー(Mobile Minor(商標))、ニーロ(Niro))に20ml/分の速度で導入し、微粒子を生成した。注入口の空気の温度は100℃であった。生成した微粒子の直径は、2μm〜200μmの間である。
【0066】
【表1】

【0067】
実施例6〜10:種々の量のPEGを含むインターフェロン−α微粒子の調製
レシチンを5mg/mlの濃度に純水で水和し、次に、ミクロフルイダイザー(ミクロフルイダイザー(Microfluidizer(商標))、ミクロフルイディクス・コーポレイション(Microfluidics Corporation))を通して、レシチン分散液を生成した。レシチン粒子は、50nm〜100nmの範囲のサイズを有する。インターフェロン−αを10mM 酢酸バッファー中に1〜2mg/mlの濃度に溶解し、インターフェロン−α溶液を調製した。
【0068】
ロイシンおよびPEG20,000を純水中に以下の表2に示す濃度に溶解した。得られた溶液中に、ヒアルロン酸ナトリウム(分子量3,000,000Da)を表2に示す濃度に溶解した。
【0069】
レシチン分散液を、ロイシン、PEGおよびヒアルロン酸ナトリウム含有溶液に表2に示す濃度まで添加し、均一に混合した。インターフェロン−α溶液を表2に示す最終濃度まで添加した。溶液をスプレー乾燥機(モバイル マイナー(Mobile Minor(商標))、ニーロ(Niro))に20ml/分の速度で導入し、微粒子を生成した。注入口の空気の温度は100℃であった。生成した微粒子の直径は、2μm〜200μmの間である。
【0070】
【表2】

【0071】
実施例11〜14:種々のアミノ酸を含むインターフェロン−α微粒子の調製
レシチンを5mg/mlの濃度に純水で水和し、次に、ミクロフルイダイザー(ミクロフルイダイザー(Microfluidizer(商標))、ミクロフルイディクス・コーポレイション(Microfluidics Corporation))を通して、レシチン分散液を生成した。レシチン粒子は、50nm〜100nmの範囲のサイズを有する。インターフェロン−αを10mM 酢酸バッファー中に1〜2mg/mlの濃度に溶解し、インターフェロン−α溶液を調製した。
【0072】
表3に示す種々のアミノ酸およびPEG20,000を純水中に以下の表3に示す濃度に溶解した。得られた溶液中に、ヒアルロン酸ナトリウム(分子量3,000,000Da)を表3に示す濃度に溶解した。
【0073】
レシチン分散液をアミノ酸、PEGおよびヒアルロン酸ナトリウム含有溶液に表3に示す濃度まで添加し、均一に混合した。インターフェロン−α溶液を表3に示す最終濃度まで添加した。溶液をスプレー乾燥機(モバイル マイナー(Mobile Minor(商標))、ニーロ(Niro))に20ml/分の速度で導入し、微粒子を生成した。注入口の空気の温度は100℃であった。生成した微粒子の直径は、2μm〜200μmの間である。
【0074】
【表3】

【0075】
実施例15〜19:インターフェロン−α微粒子の調製
レシチンを5mg/mlの濃度に純水で水和し、次に、ミクロフルイダイザー(ミクロフルイダイザー(Microfluidizer(商標))、ミクロフルイディクス・コーポレイション(Microfluidics Corporation))を通して、レシチン分散液を生成した。レシチン粒子は、50nm〜100nmの範囲のサイズを有する。インターフェロン−αを10mM 酢酸バッファー中に1〜2mg/mlの濃度に溶解し、インターフェロン−α溶液を調製した。
【0076】
アミノ酸(ロイシンまたはメチオニン)およびPEG20,000を純水中に表4に示す濃度に溶解した。得られた溶液に、ヒアルロン酸ナトリウム(分子量3,000,000Da)を表4に示す濃度に溶解した。
【0077】
レシチン分散液を、アミノ酸、PEGおよびヒアルロン酸ナトリウム含有溶液に表4に示す濃度まで添加し、均一に混合した。インターフェロン−α溶液を表4に示す最終濃度まで添加した。得られた溶液をスプレー乾燥機(モバイル マイナー(Mobile Minor(商標))、ニーロ(Niro))に20ml/分の速度で導入し、微粒子を生成した。注入口の空気の温度は100℃であった。生成した微粒子の直径は、2μm〜200μmの間である。表4は、微粒子の乾燥重量に基づく、得られた微粒子の各成分の量を示す。
【0078】
【表4】

【0079】
実施例20:エリスロポエチン微粒子の調製
レシチンを5mg/mlの濃度に純水で水和し、次に、ミクロフルイダイザー(ミクロフルイダイザー(Microfluidizer(商標))、ミクロフルイディクス・コーポレイション(Microfluidics Corporation))を通して、レシチン分散液を生成した。レシチン粒子は、50nm〜100nmの範囲のサイズを有する。ヒト組換えエリスロポエチンを10mM 酢酸バッファー中に1〜2mg/mlの濃度に溶解し、ヒト組換えエリスロポエチン溶液を調製した。
【0080】
ロイシンおよびPEG20,000を純水中にそれぞれ3mg/mlおよび1.5mg/mlの濃度に溶解した。得られた溶液中に、ヒアルロン酸ナトリウム(分子量3,000,000Da)を3mg/mlの濃度に溶解した。
【0081】
レシチン分散液を、ロイシン、PEGおよびヒアルロン酸ナトリウム含有溶液に0.5025mg/mlの濃度まで添加し、均一に混合した。ヒト組換えエリスロポエチン溶液を0.075mg/mlの最終濃度まで添加した。得られた溶液をスプレー乾燥機(モバイル マイナー(Mobile Minor(商標))、ニーロ(Niro))に20ml/分の速度で導入し、微粒子を生成した。注入口の空気の温度は100℃であった。生成した微粒子の直径は、2μm〜200μmの間である。
【0082】
実施例21:卵胞刺激ホルモン(FSH)微粒子の調製
レシチンを5mg/mlの濃度に純水で水和し、次に、ミクロフルイダイザー(ミクロフルイダイザー(Microfluidizer(商標))、ミクロフルイディクス・コーポレイション(Microfluidics Corporation))を通して、レシチン分散液を生成した。レシチン粒子は、50nm〜100nmの範囲のサイズを有する。
【0083】
ロイシンおよびPEG35,000を純水中にそれぞれ3mg/mlおよび1.5mg/mlの濃度に溶解した。得られた溶液中に、ヒアルロン酸ナトリウム(分子量3,000,000Da)を3mg/mlの濃度に溶解した。
【0084】
レシチン分散液を、ロイシン、PEGおよびヒアルロン酸ナトリウム含有溶液に0.51mg/mlの濃度まで添加し、均一に混合した。尿由来FSH(MW40,000)を0.01mg/mlの濃度まで添加した。得られた溶液をスプレー乾燥機(モバイル マイナー(Mobile Minor(商標))、ニーロ(Niro))に20ml/分の速度で導入し、微粒子を生成した。注入口の空気の温度は100℃であった。生成した微粒子の直径は、2μm〜200μmの間である。
【0085】
実施例22:エリスロポエチンの微粒子の調製
ヒト組換えエリスロポエチンを10mM 酢酸バッファー中に1〜2mg/mlの濃度に溶解し、ヒト組換えエリスロポエチン溶液を調製した。
【0086】
ロイシン、メチオニン、およびPEG20,000を純水中に、それぞれ3mg/ml、1.5mg/ml、および1.5mg/mlの濃度に溶解した。得られた溶液中に、ヒアルロン酸ナトリウム(分子量3,000,000Da)を3mg/mlの濃度に溶解した。
【0087】
上で得たヒト組換えエリスロポエチン溶液を、ロイシン、メチオニンおよびPEG20,000溶液に0.015mg/mlの濃度まで添加した。最終溶液をスプレー乾燥機(モバイル マイナー(Mobile Minor(商標))、ニーロ(Niro))に20ml/分の速度で導入し、微粒子を生成した。注入口の空気の温度は100℃であった。生成した微粒子の直径は、2μm〜200μmの間である。
【0088】
実施例23:卵胞刺激ホルモン(FSH)微粒子の調製
ロイシン、メチオニン、およびPEG35,000を純水中にそれぞれ3mg/ml、1.5mg/mlおよび1.5mg/mlの濃度に溶解した。得られた溶液中に、ヒアルロン酸ナトリウム(分子量3,000,000Da)を3mg/mlの濃度に溶解した。
【0089】
ロイシン、メチオニン、PEG、およびヒアルロン酸ナトリウム含有溶液に、ヒト組換えFSH(MW約40,000)を0.015mg/mlの濃度まで添加した。最終溶液をスプレー乾燥機(モバイル マイナー(Mobile Minor(商標))、ニーロ(Niro))に20ml/分の速度で導入し、微粒子を生成した。注入口の空気の温度は100℃であった。生成した微粒子の直径は、2μm〜200μmの間である。
【0090】
実験例1:本発明の微粒子の徐放
インターフェロン−α微粒子を、インターフェロン−αの徐放についてラットを用いて試験した。実施例1または比較例1のインターフェロン−α微粒子を、中鎖トリグリセリド(MCT)(ミグリオール(Myglyol)812、サソール(Sasol))中に336μg IFNα/mlの濃度に分散させ、注射用分散液を得た。インターフェロン−α(24μg/ml)を含む10mM 酢酸バッファーを対照として用いた。
【0091】
各微粒子分散液および対照(0.5ml)をスプラーグドーリーラット(オス、7〜8週齢)に皮下注射した。注射の8時間後、そして毎日1週間、血液試料を採取した。血清を血液試料から分離し、インターフェロン−αの血液レベルを、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)(バイオトラック・ELISA・システム(Biotrak ELISA System)(RPN2789)、アマシャム・バイオサイエンス(Amersham Biosciences))を用いて測定した。
【0092】
結果を図1に示す。
【0093】
図1に示すように、実施例1の微粒子の分散液を注射したラットのインターフェロン−αの血液レベルは、7日目で1×10pg/mlより上であった。比較例1の微粒子の分散液を注射したラットのインターフェロン−αの血液レベルは、2日目に急激に低下し、4日目には検出できなくなった。対照は、1日目にほとんどのインターフェロン−αを放出した。
【0094】
実験例2:本発明の微粒子の徐放
実施例2または比較例1、2または3のインターフェロン−α微粒子を、中鎖トリグリセリド(ミグリオール(Myglyol)812、サソール(Sasol))中に336μg IFNα/mlの濃度に分散させて、注射用分散液を得た。
【0095】
各微粒子分散液(0.5ml)をスプラーグドーリーラット(オス、7〜8週齢)に皮下注射した。一日一回一週間、血液試料を採取した。血清を血液試料から分離し、インターフェロン−αのレベル(pg/ml)を、ELISAを用いて測定した。結果を表5に示す。
【0096】
【表5】

【0097】
表5に示すように、実施例2の微粒子の分散液を注射したラットのインターフェロン−αの血液レベルは、7日目で1×10pg/mlより上であった。比較例1の微粒子の分散液を注射したラットのインターフェロン−αの血液レベルは、2日目に急激に低下し、3日目には1×10pg/mlより低かった。
【0098】
PEGを含まず、ヒアルロン酸ナトリウムおよびアミノ酸を含む、比較例2の微粒子の分散液を投与したラットのインターフェロン−αの血液レベルは、3日目まで1×10pg/mlより上を維持した。ヒアルロン酸ナトリウムおよびPEGを含むが、アミノ酸を含まない、比較例3の微粒子の分散液を投与したラットのインターフェロン−αの血液レベルは、およそ5日間1×10pg/mlより上を維持した。
【0099】
実験例3:徐放に対するPEGの分子量の効果
微粒子の徐放プロファイルに対する微粒子中のPEGの分子量の効果を評価した。
【0100】
実施例3、4または5のインターフェロン−α微粒子を、中鎖トリグリセリド(ミグリオール(Myglyol)812、サソール(Sasol))中に336μg IFNα/mlの濃度に分散させ、注射用分散液を得た。各微粒子分散液(0.5ml)をスプラーグドーリーラット(オス、7〜8週齢)に皮下注射した。一日一回一週間、血液試料を採取した。血清を血液試料から分離し、インターフェロン−αのレベル(pg/ml)を、ELISAを用いて測定した。結果を表6に示す。
【0101】
【表6】

【0102】
表6に示すように、実施例3の微粒子の分散液を注射したラットのインターフェロン−αの血液レベルは、およそ5日目まで1×10pg/mlより上であった。対照的に、実施例4および5の微粒子の分散液を投与したラットのインターフェロン−αの血液レベルは、投与後7日間またはそれより長い間、1×10pg/ml以上を維持した。PEG20,000を含む、実施例4の微粒子は、インターフェロン−αの最も長い徐放を示した。このことは、本発明の組成物が、タンパク質薬物の分子量と同様または実質的に同じ分子量を有するPEGを用いたとき、タンパク質薬物の最も好ましい徐放を示すことを示している。
【0103】
表6の結果は、ポリアルキルオキシドの分子量が、タンパク質薬物の分子量と同様であるか、またはそれより大きいとき、より好ましくは、約1:1であるとき、組成物がタンパク質薬物の最も長い放出を生じたことを示す。
【0104】
実験例4:徐放に対するPEGの量の効果
微粒子の徐放プロファイルに対する微粒子中のPEGの量の効果を評価した。
【0105】
実施例6〜10のインターフェロン−α微粒子を、中鎖トリグリセリド(MCT、ミグリオール(Myglyol)812、サソール(Sasol))中に336μg IFNα/mlの濃度に分散させ、注射用分散液を得た。各微粒子分散液(0.5ml)をスプラーグドーリーラット(オス、7〜8週齢)に皮下注射した。一日一回一週間、血液試料を採取した。血清を血液試料から分離し、インターフェロン−αのレベル(pg/ml)を、ELISAを用いて測定した。表7は、7日目のインターフェロン−αの血液レベル(C)および注射時の微粒子中のPEGの量を示す。
【0106】
【表7】

【0107】
表7に示すように、微粒子中のPEGの含有量が約10%(w/w)以上であるとき、7日目のラットのインターフェロン−αの血液レベルは、1×10pg/mlより上であった。
【0108】
実験例5:アミノ酸の種類の効果
この実験は、本発明の微粒子に含有されるアミノ酸の種類の徐放に対する効果を試験する。
【0109】
実施例11〜14のインターフェロン−α微粒子を、中鎖トリグリセリド(MCT、ミグリオール(Myglyol)812、サソール(Sasol))中に336μg IFNα/mlの濃度に分散させ、注射用分散液を得た。各微粒子分散液(0.5ml)をスプラーグドーリーラット(オス、7〜8週齢)に皮下注射した。一日一回一週間、血液試料を採取した。血清を血液試料から分離し、インターフェロン−αのレベル(pg/ml)を、ELISAを用いて測定した。表8は、7日目のインターフェロン−αの血液レベル(C)を示す。
【0110】
【表8】

【0111】
表8から見出されるように、ヒスチジン、アスパラギン酸、またはメチオニンを含む微粒子の分散液を投与したラットは、1〜7日目においてインターフェロン−αの血液レベル1×10pg/mlより上を維持した。スレオニンを含む微粒子の分散液を注射したラットの血液レベルは、7日目に約13pg/mlのインターフェロン−αであった。スレオニンは高い水溶性である。スレオニン含有微粒子は、ヒスチジン、アスパラギン酸、またはメチオニンなどの疎水性アミノ酸を含有するものと比較して、対象の体内での体液吸収を速め、インターフェロン−αをより速く放出すると推測される。
【0112】
実験例6:レシチンを含む、または含まない、インターフェロン−α微粒子
この実験は、本発明の微粒子に含有された賦形剤(レシチン)のインターフェロン−αの徐放に対する効果を試験する。
【0113】
実施例15〜19のインターフェロン−α微粒子を、中鎖トリグリセリド(MCT、ミグリオール(Myglyol)812、サソール(Sasol))中に336μg IFNα/mlの濃度に分散させ、注射用分散液を得た。各微粒子分散液(0.5ml)をスプラーグドーリーラット(オス、7〜8週齢)に皮下注射した。一日一回一週間、血液試料を採取した。血清を血液試料から分離し、インターフェロン−αのレベル(pg/ml)を、ELISAを用いて測定した。表9は、7日目のインターフェロン−αの血液レベル(C)を示す。
【0114】
【表9】

【0115】
実施例15〜19の分散液全てが、微粒子中に30重量%以上の量のアミノ酸を含む。表9から見出されるように、試験した全ての分散液が、7日目に1×10pg/mlより高い濃度でインターフェロン−αを放出した。興味深いことに、レシチンを含有しない実施例15および16の分散液は、レシチンを含有する実施例17〜19の分散液より、多い量のインターフェロン−αを7日目に放出した。
【0116】
実験例7:エリスロポエチン微粒子
本発明の微粒子のエリスロポエチンの徐放を試験した。
【0117】
実施例20のエリスロポエチン微粒子を、中鎖トリグリセリド(MCT、ミグリオール(Myglyol)812、サソール(Sasol))中に85μg EPO/mlの濃度に分散させ、注射用分散液を得た。各微粒子分散液(0.5ml)をスプラーグドーリーラット(オス、7〜8週齢)に皮下注射した。一日一回一週間、血液試料を採取した。血清を血液試料から分離し、エリスロポエチンのレベル(mIU/ml)を、ELISA(カタログ番号DEP00、アール・アンド・ディ・システムズ(R&D Systems)、非特許文献3)を用いて測定した。結果を図2に示す。
【0118】
図2の結果は、本発明の組成物が、エリスポエチンに適用されたとき、7日間より長い間、徐放を有効に生じることを示す。
【0119】
実験例8:FSH微粒子
本発明の微粒子のFSHの徐放を試験した。
【0120】
実施例21の卵胞刺激ホルモン(FSH)微粒子を、中鎖トリグリセリド(MCT、ミグリオール(Myglyol)812、サソール(Sasol))中に53μg FSH/mlの濃度に分散させ、注射用分散液を得た。各微粒子分散液(0.5ml)をスプラーグドーリーラット(オス、7〜8週齢)に皮下注射した。一日一回一週間、血液試料を採取した。血清を血液試料から分離し、FSHのレベル(mIU/ml)を、ELISA(カタログ番号RE52121、IBL、非特許文献3)を用いて測定した。結果を図3に示す。
【0121】
図3から見出されるように、7日目のラットにおいてFSHを検出した。
【0122】
実験例9:インターフェロン−α微粒子
インターフェロン−α微粒子を、インターフェロン−αの徐放についてサルを用いて試験した。実施例1のインターフェロン−α微粒子を、中鎖トリグリセリド(MCT、ミグリオール(Myglyol)812、サソール(Sasol))中に110μg IFNα/mlの濃度に分散させ、注射用分散液を得た。
【0123】
微粒子分散液(1.5ml)をカニクイザル(オス)に皮下注射した。一日一回一週間、血液試料を採取した。血清を血液試料から分離し、インターフェロン−αの血液レベル(pg/ml)を、CPE(細胞変性効果阻害)アッセイおよびELISA(高感度IFN−αELISAシステム(アマシャム(Amersham)、RPN2789)、非特許文献3)を用いて測定した。5日目、6日目および7日目のインターフェロン−αの血液レベル(それぞれ、C、CおよびC)を表10および図6に示した。
【0124】
【表10】

【0125】
CPEは、タンパク質活性を測定するためのアッセイである。細胞株MDBKを、VSV(水疱性口内炎ウイルス)の攻撃により殺傷する。この現象を、「細胞変性効果」と呼ぶ。ウイルスが細胞を攻撃する時点で、細胞がインターフェロン−αを含有しているとき、細胞変性効果が阻害、即ち、細胞はウイルスの致命的攻撃から防御される。インターフェロン−αの生理活性を、阻害を測定することにより決定することができる。
【0126】
MDBK細胞を96ウェルマイクロタイタープレートにて24時間培養した。予め決定した濃度のインターフェロン−α希釈溶液をウェルに添加し、24時間培養した。ウェルをD−PBSで洗浄し、インターフェロン−αを除去し、VSVを投与した。細胞を更に成長させ、染色し、次に、吸光度(OD)を測定した(非特許文献4、非特許文献5)。
【0127】
表10に示すように、ELISAは、インターフェロン−αの血液レベルが、5日目、6日目および7日目に100pg/mlより上を維持されたことを示す。CPEの結果は、ELISAの結果と実質的に同じであり、サル体内のインターフェロン−αが、7日目においてその生理活性を維持していることを示す。結果は、本発明の組成物が、長期間、例えば、7日間以上生理的に活性なインターフェロン−αの徐放を生じたことを示す。それゆえ、本発明によるインターフェロン−αの徐放性組成物は、7日間徐放性インターフェロン−α製剤に適している。
【0128】
実験例10:エリスロポエチンの徐放
実施例22のエリスロポエチン微粒子を、中鎖トリグリセリド(MCT、ミグリオール(Myglyol)812、サソール(Sasol))中に336g EPO/mlの濃度に分散させ、注射用分散液を得た。
【0129】
分散液(0.5ml)をスプラーグドーリーラット(オス、7〜8週齢)に皮下注射した。一日一回一週間、血液試料を採取した。血清を血液試料から分離し、エリスロポエチンのレベル(mIU/ml)を、ELISA(カタログ番号DEP00、アール・アンド・ディ・システムズ(R&D Systems)、非特許文献3)を用いて測定した。結果を図4に示す。
【0130】
図4の結果は、本発明の組成物が、エリスロポエチンの徐放性製剤における使用に適していることを示す。
【0131】
実験例11:FSHの徐放
本発明による、FSH含有組成物の徐放をラットにおいて決定した。
【0132】
実施例23のFSH微粒子を、中鎖トリグリセリド(ミグリオール(Myglyol)812、サソール(Sasol))中に336μg FSH/mlの濃度に分散させ、注射用分散液を得た。分散液(0.5ml)をラット(スプラーグドーリーラット、オス、7〜8週齢)に皮下注射した。一日一回一週間、血液試料を採取した。血清を血液試料から分離し、FSHのレベル(mIU/ml)を、ELISA(カタログ番号RE52121、IBL、非特許文献3)を用いて測定した。結果を図5に示す。
【0133】
図5の結果は、本発明の組成物が、FSHの徐放性製剤における使用に適していることを示す。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明は上で示した特定の実施形態と共に記載されてきたが、多くの代替、修飾およびそれらのバリエーションが当業者にとって明らかであろう。かかる代替、修飾およびバリエーションの全てが、本発明の精神および範囲内にあることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】実施例1(−●−)、比較例1(−○−)、および対照(−▼−)のインターフェロン−α微粒子のインビボ(ラット)放出プロファイルを示す。
【図2】実施例20のエリスロポエチン微粒子のインビボ放出プロファイルを示す。
【図3】実施例21のFSH微粒子のインビボ放出プロファイルを示す。
【図4】実施例22のエリスロポエチン微粒子のインビボ放出プロファイルを示す。
【図5】実施例23のFSH微粒子のインビボ放出プロファイルを示す。
【図6】ELISA(−●−)およびCPE(−□−)により測定された、実施例1のインターフェロン−α微粒子のインビボ(サルにおける)放出プロファイルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体基質および前記担体基質に取り込まれたタンパク質薬物を含んでなる徐放性組成物であって、
前記担体基質は本質的に(a)ヒアルロン酸またはその塩、(b)ポリアルキルオキシドおよび(c)アミノ酸からなり、
前記タンパク質薬物の分子量(Da)対ポリアルキルオキシドの分子量(Da)の比は1:0.5〜1:10である
ことを特徴とする徐放性組成物。
【請求項2】
前記ヒアルロン酸またはその塩、前記ポリアルキルオキシドおよび前記アミノ酸の総量は、前記組成物の乾燥重量に基づき50〜99.95重量%であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ヒアルロン酸またはその塩、前記ポリアルキルオキシドおよび前記アミノ酸の総量は、前記組成物の乾燥重量に基づき70〜99.95重量%であることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ヒアルロン酸またはその塩は、少なくとも1,000,000Daの分子量を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ヒアルロン酸またはその塩は、少なくとも3,000,000Daの分子量を有することを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記アミノ酸は疎水性アミノ酸であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記アミノ酸は、アスパラギン酸、アスパラギン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、トリプトファン、チロシンおよびバリンからなる群より選択される単体またはそれらの混合物であることを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリアルキルオキシドは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、それらの共重合体またはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリアルキルオキシドはポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリアルキルオキシドは少なくとも1,000Daの分子量を有することを特徴とする請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記タンパク質薬物は、インターフェロン、エリスロポエチンまたは卵胞刺激ホルモンであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
安定剤を更に含んでなることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記タンパク質薬物の分子量(Da)対前記ポリアルキルオキシドの分子量(Da)の比は1:1であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
微粒子、ペレット、桿状体、糸状体、円柱体またはフィルムに製剤されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
注射用媒体に分散された請求項1〜14のいずれかに記載の組成物を含んでなる注射用医薬製剤。
【請求項16】
前記注射用媒体は、注射用蒸留水、注射用バッファー、コーン油、ゴマ油、綿実油、大豆油、ピーナッツ油、モノ−、ジ−、およびトリ−グリセリド、鉱油、スクアランおよびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする請求項15に記載の医薬製剤。
【請求項17】
請求項1〜14のいずれかに記載の組成物を含んでなるエアロゾル製剤。
【請求項18】
担体基質および前記担体基質に取り込まれたタンパク質薬物を含んでなる徐放性組成物であって、
前記担体基質は本質的に(a)少なくとも1,000,000Daの分子量を有するヒアルロン酸またはその塩、(b)ポリエチレングリコールおよび(c)疎水性アミノ酸からなり、
前記タンパク質薬物の分子量(Da)対前記ポリエチレングリコールの分子量(Da)の比は、1:0.5〜1:5であり、
前記ポリエチレングリコールの分子量は少なくとも1,000Daである
ことを特徴とする徐放性組成物。
【請求項19】
前記タンパク質薬物は、前記組成物の乾燥重量に基づき0.05〜5重量%の量で取り込まれることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記ヒアルロン酸またはその塩は、前記組成物の乾燥重量に基づき20〜50重量%の量で取り込まれることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
前記ポリアルキルオキシドは、前記組成物の乾燥重量に基づき5〜60重量%の量で取り込まれることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
前記アミノ酸は、前記組成物の乾燥重量に基づき10〜80重量%の量で取り込まれることを特徴とする請求項1に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−530204(P2008−530204A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556079(P2007−556079)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【国際出願番号】PCT/KR2006/000571
【国際公開番号】WO2006/088336
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(507274777)エルジー ライフ サイエンス リミテッド (5)
【Fターム(参考)】