説明

タンピング装置

【課題】従来のようにタンピング板を持ち上げては落とすことで、大きな加圧力を打設後のコンクリートに掛け、良好な締め固めを行うタンピング装置を提供する。
【解決手段】タンピング装置10は、支持フレーム11に回転可能に取り付けたローラ12と、このローラ12により回転されるカム機構部23とを備え、該カム機構部23は複数のカム25で構成されている。レバー22の一端部22aは、カム機構部23の回転中に各カム25に対する従節として各カム25により動かされる。タンピング板13は、カム機構部23により揺動するレバー22の他端部22bに接続されたワイヤ20により支持フレーム12から上下動可能に吊り下げられ、各カム25の先端部がレバー22の一端部22aを通過した時にタンピング板13を落下させ、その後方に取り付けられた均し板28で、タンピング後のコンクリート表面を均す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンピング装置に関し、更に詳細には、打設したコンクリートを締め固めると共にその表面を均すタンピング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートを打設してスラブなどを形成する場合、スラブの品質向上のために打設後のコンクリート表面をタンパーで叩いて締め固める作業が行われることがある。このような作業を「タンピング」と称し、このタンピングを行う機械をタンピングマシン(タンピング装置)などと呼んでいる。一般的に、スラブは、打設したコンクリート表面をタンピングした後に鏝などで均して仕上げられる。特に、近年では、スラブのひび割れを抑制するためにファイバーコンクリートを用いる場合がある。
【0003】
ファイバーコンクリートは、周知のように繊維(ファイバー)を混入させたコンクリートであり、このようなファイバーコンクリートを用いてスラブを形成する場合には、上述のタンピングは非常に重要な作業となる。すなわち、ファイバーが混入したコンクリートを打設すると、ファイバーが打設コンクリートの表面から飛び出すことがある。ファイバーが打設コンクリートの表面から飛び出していると、仕上げ工程である鏝による均し作業に支障を来すと共に美観上も好ましいものではない。このような理由から打設後のコンクリート表面をタンパーにより叩いて締め固めると共にファイバーをコンクリート内部に埋没させる必要がある。
【0004】
従来、この種のタンピング作業では、長方形状をした網板の上面に2つの柄を立設した簡易なタンピング板が用いられ、作業者がこのタンピング板の柄を持って該タンピング板を挙げては落とす、という動作を繰り返すことによって打設後のコンクリートを締め固めていた。そのため、面積の広いスラブを形成する場合、かかるタンピング作業は、非常に重労働となり、しかも作業者は、後ずさりをしながら作業をするので危険でもあった。このようなことから、かかるタンピング作業を機械化することが考えられ、特許文献1に開示されているような装置が開発されている。
【0005】
特許文献1には仕上げ鏝支持構造に係る発明が開示され、該仕上げ鏝支持構造を用いた床面仕上げ装置は、基本的に、平面均し機と、仕上げ鏝とを備え、平面均し機は、仕上げ対象床面に接触しながら回転するプロペラ状の回転鏝を備えている。このような床面仕上げ装置は、その操作ハンドを作業者が握って後退することにより仕上げ対象床面に沿って水平方向へ移動させられる。これにより、回転しながら仕上げ対象床面上を移動していく回転鏝が仕上げ鏝より先行し、仕上げ対象床面の加圧均しを行い、続いて仕上げ対象床面上を摺動していく仕上げ鏝により最終仕上げを行う。
【特許文献1】特開2006−307500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された仕上げ鏝支持構造を用いた床面仕上げ装置の主たる機能は、前述したようにプロペラ状の回転鏝を回転させて打設後のコンクリート表面を均すことにあり、タンパーを上方から落下させることによってコンクリート表面を叩き、その加圧力及び衝撃力をコンクリートの内部に伝搬させるようにして締め固めるものではない。もちろん、特許文献1において説明されている床面仕上げ装置でも、該装置の全体重量がプロペラ状の回転鏝を介してコンクリートに作用するので、一定の加圧力がコンクリート表面に掛かる。しかし、この特許文献1に説明されている床面仕上げ装置では、大きな衝撃力でコンクリート表面を叩きつけることにより内部にまで締め固め力を作用させるようなものではない。そのため、特許文献1に開示された床面仕上げ装置では、作業労力を軽減することができるもののコンクリートと鉄筋との付着力を向上させるようなことはできず、従って品質の高いスラブを得ることはできない。
【0007】
本発明の目的は、かかる従来の問題点を解決するためになされたもので、従来のタンピング板のようにこれを持ち上げては落とすことで、大きな加圧力を打設後のコンクリートに掛け、これにより良好な締め固めを行うタンピング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、打設コンクリートの上を移動させながら前記打設コンクリートの表面をタンピングして締め固めると共にその表面を均すタンピング装置であり、その特徴とするところは、支持フレームに回転可能に取り付けられ、前記打設コンクリートの表面に接するローラと、前記ローラに対して前記タンピング装置の移動方向である前方とは反対側の後方において前記支持フレームに上下動可能に吊り下げられたタンピング板と、前記ローラの回転を利用して前記タンピング板を上昇させた後に前記打設コンクリートの表面に落下させる上昇落下装置と、前記タンピング板より前記後方において前記打設コンクリートの前記表面に摺接するように前記支持フレームに支持された均し板とを備え、前記タンピング装置が前記打設コンクリート上を前方に移動するとき、前記上昇落下装置が、前記ローラからの回転力を受けて前記タンピング板を引き上げ、所定高さに上がった前記タンピング板に対して該タンピング板への引き上げ力を解除することで前記打設コンクリートの前記表面に落下させてタンピングをし、その後にタンピングされた前記打設コンクリートの表面を前記均し板で均すことにある。
【0009】
本発明に係るタンピング装置の一実施形態としては、前記上昇落下装置が、複数のカムからなるカム機構部と、前記カム機構部の前記各カムにより動かされるレバーとから構成され、前記レバーの少なくとも一部が、前記カム機構部の前記カムにより上下動され、前記レバーの前記一部の上下動を前記タンピング板に伝達させて該タンピング板を上昇させ、かつ所定高さから落下させることにある。
【0010】
本発明に係るタンピング装置における他の実施形態としては、前記カム機構部が、前記ローラにより回転されるハブ部分を備え、前記カムのそれぞれが、前記ハブ部分の外周囲に周方向等間隔に形成され、前記各カムは、前記ハブ部分から径方向外方に延びると共に、前記ハブ部分の周方向に向いたカム面と、該カム面とは反対側の逃げ面とから形成され、前記カム面と前記逃げ面とは径方向外方で交わって前記カムの先端部を形成し、前記逃げ面の前記先端部とは反対側の端縁が、隣接する前記カムの前記カム面に交差し、前記レバーは、前記支持フレームに枢着され、その一端部が前記カムの前記カム面に接触する従節として作用し、且つ他端部が、前記カムによる前記一端部の動きに対応して上下動することにある。
【0011】
さらに、本発明に係るタンピング装置における他の実施形態としては、前記各カムの前記逃げ面が、前記レバーの前記一端部と前記レバーの揺動中心部との距離を半径とする円弧で形成された湾曲面である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のタンピング装置によれば、該タンピング装置が打設したコンクリート上を移動すると、コンクリート表面を転がるローラの回転力が上昇落下装置を動かしてタンピング板を上昇させ、そしてそれを落下させることによりコンクリートをタンピングする。これにより、従来と同様にタンピング板による打設コンクリートのタンピングを行うことができ、その結果、例えばスラブなどをコンクリートで形成するとき、作業者に過大な労力を掛けることなく高い品質のスラブを形成することができる。
【0013】
また、本発明のタンピング装置によれば、カム機構部を構成する複数のカムが、レバーを動かし、これによりレバーの一部が上下動してタンピング板を上昇させ、その後に所定高さから落下させるようにしているので、タンピング装置の移動に伴ってタンピング板の上昇と落下の繰り返しを簡単な構造で行うことができる。
【0014】
さらに、本発明のタンピング装置によれば、複数のカムが、ローラによって回転されるハブ部分の周囲に周方向等間隔に形成され、支持フレームに枢着されたレバーの一端部を各カムのカム面に接触する従節として作用させ、その一端部が回転する各カムのカム面により上昇して他端部を揺動させ、さらにレバーの一端部がカム面から外れたとき、カム面と反対側の逃げ面によりすぐに次のカム面に乗り移るので、一定の間隔で、挙げては落下させる、という繰り返し動作をタンピング板に対して作用させることができる。
【0015】
さらに、本発明のタンピング装置によれば、各カムのカム面とは反対側の逃げ面が、揺動中心部を支点として揺動するレバーの一端部の軌跡である円弧で形成された湾曲面であるから、各カムの先端部がレバーの一端部を通過した後に、該レバーの一端部が速やかに次のカムのカム面まで移動する。従って、レバーの揺動がスムーズで、タンピング板の急速な落下を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明のタンピング装置を図に示される好適な実施の形態について更に詳細に説明する。図1は、この発明の一実施形態に係るタンピング装置10を示す斜視図、図2〜図4は、それぞれ図1に示されるタンピング装置10の動作を説明する側面図である。タンピング装置10は、図1において矢印Fで示される方向に進みながらタンピングを行う。従って、矢印Fで示す方向を「前方」と称し、前方Fとは反対の方向Rを「後方」と称する。タンピング装置10は、支持フレーム11と、この支持フレーム11に回転可能に取り付けられたローラ12と、このローラ12に隣接して支持フレーム11に上下動可能に吊り下げられたタンピング板13とを備えている。支持フレーム11は、前後方向に対して左右方向となる該タンピング装置10の幅方向両側に配置された2つのサイドフレーム部14及びこれら2つのサイドフレーム部14の間に配置されたセンターフレーム部17とから構成されている。
【0017】
2つのサイドフレーム部14は、それぞれ所定の間隔を開けて並べられた同一形状の2枚の枠板15,16により構成され、これら2枚の枠板15,16の間には、前方Fから後方Rへ亘って所々に接続ロッド(図示せず)がスペーサとして配置され、各枠板15,16の間隔を保持すると共に該接続ロッドを介して各枠板15,16が連結されている。2つのサイドフレーム部14をそれぞれ構成している同一形状の枠板15,16は、図1から明らかなように前方Fから後方Rへ向かって斜め上方へ延びる前方枠部分15a、16aと、この前方枠部分15a,16aの後端からほぼ水平に後方Rに延びる中間枠部分15b,16bと、この中間枠部分15b,16bの後端から斜め下方へ延び、更に屈曲してほぼ垂直下方へ延びる後方枠部分15c,16cとから形成され、これら各枠部分15a〜15c,16a〜16cが一体につながって形成されている。また、センターフレーム部17もサイドフレーム部14を構成する枠板15,16と同一の形状で形成されており、従って、この枠板15又は16と同様に、傾斜した前方枠部分17a、水平な中間枠部分17b、上部が部分的に傾斜した垂直な枠部分17cとが一体につながって形成されている。
【0018】
支持フレーム11に回転可能に取り付けられているローラ12は、該支持フレーム11を構成している一方のサイドフレーム部14とセンターフレーム部15と間に配置された円筒状の第1ローラ部12aと、他方のサイドフレーム部14とセンターフレーム部15と間に配置された第2ローラ部12bとから構成されている。これら2つのローラ部12a,12bは、その中心部を通る共通の回転軸18を備え、この回転軸18の両端部はサイドフレーム部14に軸受けされ、また第1ローラ部12aと第2ローラ部12bとの間に露出する回転軸18はセンターフレーム部17の前端に回転可能に支持されている。
【0019】
さらに、第1ローラ12aと第2ローラ12bのそれぞれ幅方向外方に突出する回転軸18とサイドフレーム部14との支持構造について説明すると、回転軸18は、サイドフレーム部14を構成する2つの枠板15,16の前端を貫通して軸受けされている。これにより、この回転軸18は、第1ローラ12aと第2ローラ12bとを支持フレーム11に対して支持すると同時に該支持フレーム11を形成する各サイドフレーム部14とセンターフレーム部17との前方側を連結する連結体としても機能している。なお、図1から明らかなように第1ローラ12aと第2ローラ12bの周面には、タンピング装置10が打設後のコンクリートC表面上を移動させられるとき、コンクリートCに接する各ローラ12a,12bに確実な回転力が作用するように、各ローラ12a,12bの軸方向に延びる複数の突条部12cが周方向に等間隔に形成されている。
【0020】
両サイドフレーム部14を構成している2つの枠板15,16の間隔部には、その中間枠部分15b,16bにおいてプーリ19が配置されている。具体的には、プーリ19は、サイドフレーム部14の枠板15,16間に配置され、該プーリ19の中心軸部が各枠板15,16に回転可能に軸受けされている。支持フレーム11の前端に回転可能に支持されたローラ12の後方Rには、支持フレーム11の幅方向、即ち両サイドフレーム部14間に亘る長さを有する平面形状矩形のタンピング板13が配置されている。このタンピング板13は、四角い環状の枠体13aの内側に金網13bを張ったもので、この枠体13aの両側上部にはロープ掛け用の輪状係止部13cが設けられている。これら係止部13cには、それぞれワイヤ20の一端が結合され、これらのワイヤ20は、サイドフレーム部14に回転可能に支持されている各プーリ19の溝部に、前方側から後方側に巻き掛けられ、各ワイヤ20の他端部は、プーリ19の後方側から下方へ向かって延びている。
【0021】
タンピング板13に一端を連結したワイヤ20とプーリ19とは、上昇落下装置21を構成している。この上昇落下装置21は、2つのサイドフレーム14のそれぞれに枢着されたレバー22と、このレバー22を作動させるカム機構部23とをさらに含んでいる。レバー22は、各サイドフレーム14においてこれを構成している2つの枠板15,16の間隔部若しくはその下方部に配置されている。さらに、レバー22の両側面適所には、揺動中心となるピン22cが取り付けられ、これらのピン22cは、各サイドフレーム14の枠板15,16における前方枠部分15a,16aの前端近傍に形成された孔に回動可能に取り付けられ、従って、レバー22の一端側はこの揺動中心部から枠板15,16の間隙部内を前方Fに延び、また他端側は枠板15,16の間隙部内から出て後方Rに延びている。
【0022】
カム機構部23は、円盤状のハブ部分24とこのハブ部分24の外周囲から径方向外方へ突出する5つのカム25(動作の理解を容易にすべく各カムには符号25の他に英文字a〜eの符号を添えて示している)とから構成されている。このカム機構部23は、各サイドフレーム部14を構成している2枚の枠板15,16の間に配置され、かつローラ12の回転により共に回転するように第1ローラ12aの幅方向外側及び第2ローラ部12bの幅方向外方からそれぞれ突出して2つの枠板15,16間の間隔部を通過している回転軸18に取り付けられている。従って、この回転軸18は、ローラ12の回転軸であると共にカム機構部23の回転軸でもある。各カム25は、ハブ部分24の周方向に等間隔で形成され、その側面形状は概略三日月形状を呈している。
【0023】
すなわち、各カム25は、ハブ部分24の周方向に向いたカム面26と、該カム面26とは反対側の逃げ面27とから形成され、カム面26と逃げ面27とは径方向外方で交わってカム25の先端部を形成し、逃げ面27における先端部とは反対側の端縁が、前方Fへの回転方向とは反対方向側において隣接するカム25のカム面26に交差している。カム面26は、前方Fへの回転方向に膨らんだ湾曲面で形成され、また逃げ面27は、前方Fへの回転方向とは反対方向に向かって窪んだ湾曲面で形成されている。
【0024】
各サイドフレーム14に枢着されたレバー22の前方Fに延びる一端部22aは、ハブ部分24の中心部を回転中心として回転する各カム25のカム面26に接触する従節として作用し、かつ後方Rに延びる他端部22bは、カム25による一端部22aの動きに対応して上下動し、この他端部22bに前述したワイヤ20の他端が連結されている。
【0025】
支持フレーム11の後方R側における下端には、均し板28が取り付けられている。具体的に説明すると、均し板28は、タンピング板13とほぼ同じ幅寸法の細長い板部材であり、その前縁部28a及び後縁部28bは上面側に反り返って樋状を呈している。このような均し板28における凹状の上面には、支持フレーム11を構成する各サイドフレーム部14とセンターフレーム部17とにおける各後方部材15c、16c,17cの下端部が固着されている。これにより、この均し板28は、支持フレーム11に支持されていると同時に該支持フレーム11を形成する各サイドフレーム部14とセンターフレーム部17との後方側を連結する連結体としても機能している。さらに、均し板28の下面28cは、打設後のコンクリートCの表面を摺接して均す面(均し面)であり、従ってタンピング装置10の前方に取り付けられているローラ12の接地面とほぼ同じ高さとなるように設計されている。
【0026】
次に、タンピング板13を上昇させた後に落下させる上昇落下装置21について、図5を参照しながらさらに詳細に説明する。図5は、タンピング板13の上昇落下動作を行わせる上昇落下装置21の機構を説明するために支持フレーム11などを省略してその機構部分のみを図示したものである。この上昇落下装置21を構成しているカム機構部23が、ハブ部分24から径方向外方へ突出した5つのカム25を備え、これら各カム25が、ハブ部分24の周方向に向いたカム面26及び該カム面26とは反対側の逃げ面27とから形成されていることは前述したとおりである。これらのカム25における逃げ面27の湾曲面は、レバー22の一端部22aとレバー22の揺動中心部22cとの距離Lを半径とする円弧で形成されている。レバー22における一端部22aの端面は、各カム25の逃げ面27に対して微少な隙間を開けた位置にあり、カム機構部23の回転中に各カム25の逃げ面27に沿って上下に揺動できる。
【0027】
カム機構部23のカム25は、この実施形態では5つ設けられているが、この数は、ローラ12の周囲長、即ちローラ12が一回転した時のタンピング装置10の移動距離をタンピング板13の前後方向長さ寸法Wで除して得られる。かかる計算によりカムの数を決定することによりタンピング装置10の移動中、その移動方向においてタンピング板13によりタンピングされた面域を連続させることができる。このことから明らかなようにカム機構部23におけるカム25の数は、ローラ12の直径及びタンピング板13の前後方向長さ寸法Wにより決定される。各カム25の先端部、すなわち、カム面26と逃げ面27との径方向外方における交差部と回転軸18の中心との距離は、該カム25の実質的な回転半径であり、この回転半径によってレバー22の揺動時における一端部22aの最大高さ位置が決定され、同時に、この一端部22aの最大高さ位置に対応して他端部22bの最下降位置も決定される。
【0028】
レバー22における他端部22bの最下降位置は、ワイヤ20を介して接続されたタンピング板13の上昇位置を決定し、かつその上昇位置から打設コンクリートCの表面に落下した時のタンピング力を決定することになる。なお、レバー22の他端部22bにおける最下降位置は、サイドフレーム部14におけるレバー22の枢着位置やレバー22の長さ方向における揺動中心22cの位置によっても異なり、これらはタンピング板13の重量や、タンピングされるコンクリートの性質などにより適宜選択的に設計される。
【0029】
次に、前述した実施形態に係るタンピング装置10の動作を、図2〜図4を参照しながら説明する。例えば、スラブなどを形成する際に、このタンピング装置10は、打設後のコンクリートCの表面上に置かれ、牽引ロープ(図示せず)などを使用して前方Fに引っ張って移動される。タンピング装置10が前方Fに移動すると、打設コンクリートCに接触しているローラ12が回転し、このローラ12の回転軸18によってカム機構部23が回転する。説明の便宜上、タンピング装置10が、図2に示される状態から前方Fに移動したとしてその後の動作を説明すると、図2は、レバー22の一端部22aがカム25aのカム面26に乗り移ろうとしている状態を示している。この時、レバー22の他端部22bはほぼ最大の上昇位置にあり、この時、タンピング板13は、打設コンクリートCの表面に落下した状態にある。
【0030】
図2に示される状態からタンピング装置10が前方Fにさらに移動すると、図3に示されるようにカム機構部23が回転し、これに伴ってカム25aのカム面26によりレバー22の一端部22aが次第に持ち上げられ、これによりレバー22が揺動中心部22cを支点として揺動し、他端部22bが次第に下降する。レバー22における他端部22bの下降は、ワイヤ20を引っ張り、タンピング板13を引き上げる。引き続いて、タンピング装置10が前方Fに移動すると、図4に示されるようにカム機構部23が回転し、レバー22の一端部22aが、相対的にカム25aにおけるカム面26の先端部まで持ち上がって最大高さ位置まで揺動する。さらに、タンピング装置10が前方Fへ移動すると、カム25aの先端部は、レバー22の一端部22aを通過する。
【0031】
カム25aの先端部がレバー22の一端部22aを通過した瞬間に、図2に示されるようにレバー22の一端部22aを持ち上げていた力が解除されるので、ワイヤ20を介して持ち上げられていたタンピング板13は、一気に打設コンクリートCの表面に落下する。その際、カム25aにおける前方Fへの回転方向とは反対側に向いた逃げ面27は、揺動中心部22cと一端部22aとの距離Lによる円弧で画成された湾曲面として形成されているので、カム25aの先端部が通過した後のレバー22の一端部22aは何の抵抗を受けることなく揺動し、次のカム25bのカム面26上に乗り移る。このようなレバー22における一端部22aの自由な下降が、レバー22における他端部22bの一気の持ち上がりを許し、タンピング板12の落下を可能としている。
【0032】
かかる動作がカム機構部23の回転中に繰り返して発生し、その結果、タンピング装置10の前方Fへの移動により打設コンクリートCが連続してタンピングされる。なお、タンピング板13により打設コンクリートCがタンピングされた後は、後続の均し板28によってタンピングされたコンクリートCの表面が均される。
【0033】
前述した説明から明らかなように、この実施形態に係るタンピング装置10によれば、従来、作業者がタンピング板を持ち上げては落下させていたのと同じようにタンピング板13を引き上げては落下させる動作を、タンピング装置10の前方Fへの移動に伴って繰り返し行わせることができるので、打設後のコンクリートCの締め固め作業を過大な労力を必要としないで実施でき、かつコンクリートとその内部に配筋された鉄筋との付着力を向上させることができ、その結果、品質の高いスラブなどを形成することができる。
【0034】
なお、前述した実施形態のタンピング装置10では、支持フレーム11が2つのサイドフレーム部14とセンターフレーム部17と構成され、さらに2つのサイドフレーム部14は、それぞれ2枚の枠板15,16が間隔を開けた状態で重ねられて形成され、この枠板15,16の間にプーリ19、レバー22の一部、及びカム機構部23を配置したものであったが、本発明ではこのような例に限定されるものではなく、必要な強度を確保できる限りどのような形状のフレーム部で支持フレームが構成されていてもよい。要するには、支持フレームにより前方Fの側にローラ12が回転可能に取り付けられ、それより後方にタンピング板13が落下可能に支持され、さらにその後方に均し板28が取り付けられ、ローラ12の回転によりタンピング板13が持ち上げられて落下されるようになっていることが重要である。
【0035】
また、前述した実施形態のタンピング装置10は、タンピング板13として、四角い環状の枠体13aの内側に金網13bを張ったものを例にしたが、本発明では、このようなタンピング板に限定されるものではない。一般的に、タンピングは、コンクリートがまだ柔らかい状態(通常は打設直後から2時間程度以内)で行う場合と、コンクリートがある程度固くなってから(通常は打設後4時間程度)で行う場合とがある。後者の「コンクリートがある程度固くなる」とは、人間がコンクリートに乗っても沈むことはないが、足跡が若干残る程度の状態であるといえる。使用するタンピング板の構成は、かかる2つのコンクリート状態によって異なり、金網13bは前者の場合に専ら使用される。他方、後者の場合には、金網13bに代えて平坦な鉄板などの金属板やプラスチック板が用いられる。このような理由から、この発明のタンピング装置において使用されるタンピング板13は、四角い環状の枠体13aの内側に平坦な金属板やプラスチック板を取り付けたものであってもよい。その場合、四角い環状の枠体13aそのものを内側の金属板やプラスチック板と一体に形成することができることはいうまでもない。
【0036】
さらに、前述した実施形態のタンピング装置10は、カム機構部23をローラ12の両側部に設置し、該ローラ12の回転軸18を共通の回転軸とした構造であったが、本発明は、このようなカム機構部23の設置位置に限定されるものではなく、ローラ12の回転をチェーンとスプロケット、タイミングベルトとホイール、或いは歯車列などを用いて支持フレームの適所に支持した別な回転体に伝達し、この回転体にカム機構部23を設けるなどして該カム機構部を回転させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係るタンピング装置を示す斜視図。
【図2】図1に示されるタンピング装置の動作を示す側面図。
【図3】図1に示されるタンピング装置の動作を示す側面図。
【図4】図1に示されるタンピング装置の動作を示す側面図。
【図5】上昇落下装置の機構を説明する概略構成説明図。
【符号の説明】
【0038】
10 タンピング装置
11 支持フレーム
12 ローラ
13 タンピング板
14 サイドフレーム部
15,16 サイドフレーム部の枠板
17 センターフレーム部
18 ローラ及びカム機構部の回転軸
19 プーリ
20 ワイヤ
21 上昇落下装置
22 レバー
22a 一端部
22b 他端部
22c 枢着部
23 カム機構部
25 カム
26 カム面
27 逃げ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
打設コンクリートの上を移動させながら前記打設コンクリートの表面をタンピングして締め固めると共にその表面を均すタンピング装置であって、
支持フレームに回転可能に取り付けられ、前記打設コンクリートの表面に接するローラと、前記ローラに対して前記タンピング装置の移動方向である前方とは反対側の後方において前記支持フレームに上下動可能に吊り下げられたタンピング板と、前記ローラの回転を利用して前記タンピング板を上昇させた後に前記打設コンクリートの表面に落下させる上昇落下装置と、前記タンピング板より前記後方において前記打設コンクリートの前記表面に摺接するように前記支持フレームに支持された均し板とを備え、
前記タンピング装置が前記打設コンクリート上を前方に移動するとき、前記上昇落下装置が、前記ローラからの回転力を受けて前記タンピング板を引き上げ、所定高さに上がった前記タンピング板に対して該タンピング板への引き上げ力を解除することで前記打設コンクリートの前記表面に落下させてタンピングをし、その後にタンピングされた前記打設コンクリートの表面を前記均し板で均すことを特徴とするタンピング装置。
【請求項2】
前記上昇落下装置が、複数のカムからなるカム機構部と、前記カム機構部の前記各カムにより動かされるレバーとから構成され、
前記レバーの少なくとも一部が、前記カム機構部の前記カムにより上下動され、前記レバーの前記一部の上下動を前記タンピング板に伝達させて該タンピング板を上昇させ、かつ所定高さから落下させる請求項1に記載のタンピング装置。
【請求項3】
前記カム機構部が、前記ローラにより回転されるハブ部分を備え、前記カムのそれぞれが、前記ハブ部分の外周囲に周方向等間隔に形成され、前記各カムは、前記ハブ部分から径方向外方に延びると共に、前記ハブ部分の周方向に向いたカム面と、該カム面とは反対側の逃げ面とから形成され、前記カム面と前記逃げ面とは径方向外方で交わって前記カムの先端部を形成し、前記逃げ面の前記先端部とは反対側の端縁が、隣接する前記カムの前記カム面に交差し、
前記レバーは、前記支持フレームに枢着され、その一端部が前記カムの前記カム面に接触する従節として作用し、且つ他端部が、前記カムによる前記一端部の動きに対応して上下動する請求項2に記載のタンピング装置。
【請求項4】
前記各カムの前記逃げ面が、前記レバーの前記一端部と前記レバーの揺動中心部との距離を半径とする円弧で形成された湾曲面である請求項3に記載のタンピング装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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