説明

タービンエンジンの補助機器のロータを駆動する装置

【課題】交流発電機からロータシャフト支持軸受と補助機器支持体歯車列とへの機械的負荷の伝達を回避または最低でも軽減する補助機器を提案する。
【解決手段】本発明の補助機器(11)のロータを駆動する装置は、ロータシャフト(13)を駆動する手段(15)を備えるタービンエンジン補助機器支持体(10)に取り付けられる。これは上記手段(15)の1つによって駆動される、補助機器支持体(10)に固定された第1軸受(18)と第2軸受(19)とによって支持される中空状シャフト(17)を備え、ロータシャフト(13)は中空状シャフト(17)と同軸であり、回転結合手段はロータシャフト(13)と中空状シャフト(17)との間に形成される。
本発明によって、補助機器(11)の機械的負荷は、小さな程度にしかロータシャフトの支持軸受(18、19)と、補助機器支持歯車列とに伝達されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンエンジンの分野に関し、補助機器、特に補助機器支持体に取り付けられた電気発生器を駆動することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
タービンエンジンは、付属機器駆動ギアボックスアセンブリとして知られる補助機器支持体を備える。このギアボックスアセンブリは、交流発電機、燃料オイルポンプ、始動器、および他の様々な品目などの多数の補助機器を備える。これらはタービンエンジンのシャフトによって、二重スプール式ターボジェットの場合には一般に高圧スプールのシャフトによって機械的に駆動される。
【0003】
ターボジェットでは、これらの補助機器の中に少なくとも2つの交流発電機があり、そのうちの1つはターボジェットによって推進される航空機に電力を供給し、他方は、航空機用よりも小さなターボジェット自体を作動させるのに必要な電力を供給する。このターボジェットの交流発電機は一般に、ダイナモ電気機械、または当業者にPMAとして知られている永久磁石交流発電機である。以下、ターボジェットの交流発電機は、交流発電機と呼ばれる。この交流発電機は特に、FADEC(当業者によって通常呼ばれている「全機能デジタルエンジン制御」に対する略語)として知られているターボジェット制御調整装置を作動させるのに必要な電力を供給する。
【0004】
交流発電機のロータは、一般的に毎分18000から30000回転という超高速で回転する。現在では、交流発電機が動作中に受ける負荷(機械的、電子機械的などの負荷)は充分には知られていない。さらにこの交流発電機は維持管理のために、頻繁に取り外し、再装着される。このために、ギアボックスアセンブリで最初にロータがそのシャフトに取り付けられ、次いでステータがギアボックスアセンブリでロータのまわりにボルト締めされる。
【0005】
従来技術の交流発電機のロータを駆動する装置を表す図1を参照する。この交流発電機のロータが備えるシャフト1は、交流発電機のここで図示していないステータ(アーマチャ)の内部で回転するインダクタ要素(図示せず)を支持する端部分2を備える。このシャフト1は付属機器駆動ギアボックスアセンブリの歯車3によって駆動され、歯車3自体はターボジェットから離れて、動力取出シャフトによって直接または間接的に駆動される。このシャフト1はまた、付属機器駆動ギアボックスアセンブリの固定式構造物に固定された2つの軸受4、5によって支持される。交流発電機のステータは、それをロータとは無関係に取り外すことができるようにこの構造物に固定される。したがってロータは片持梁式にステータに取り付けられる。
【0006】
ロータシャフトの軸受は小型であるが、これは、交流発電機の運転によって導入される負荷が存在しない場合(交流発電機の平衡が適切にとれているとき)、大型寸法の軸受のローリング要素(ボールまたはローラ)は、これら構成要素の寸法が大きいときにそれらが有する慣性のために、それらの軌道に沿って転がるのではなく、軌道上で滑動してしまう傾向をより大きく有することになるからである。このようなスリップのために、軸受は損傷を受け、破損してしまう場合があり、このことは油の循環が乏しい場合に尚一層起こり易くなる。
【0007】
寸法の小さな軸受は比較的大きな負荷を受けるので、交流発電機の平衡が適切にとれ、負荷が小さいとき、滑動してしまう危険は小さい。
【0008】
ここで、交流発電機はメンテナンスのために頻繁に取り外され、再装着されることから、装着段階中の不注意によって、片持梁式に取り付けられた交流発電機のロータシャフト上の、高速時に大きくなる負荷の平衡が失われてしまうという可能性がある。交流発電機の磁気的平衡異常もこうした負荷と組み合わさることがある。この場合も、軸受の小さな寸法とそれらの低い負荷支承能力とのために、これらの軸受が損傷を受ける危険があり、交流発電機と付属機器駆動ギアボックスアセンブリとの間の油の流れが乏しい場合はより一層受け易くなる。さらに負荷、急な動き、および平衡異常が付属機器駆動ギアボックスの歯車3から付属機器駆動ギアボックスの歯車に伝達されるが、これは望ましくない。
【特許文献1】仏国特許第2740187号明細書
【特許文献2】仏国特許第2841305号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、交流発電機のロータシャフトの支持軸受の寸法決めに関しては障害がある。その寸法が大きい場合は、交流発電機ラインの平衡が適切に取れているときの通常動作ではスリップのために軸受が損傷する危険があり、寸法が小さい場合は、予想不可能な大きな負荷(よく知られていない)の結果、軸受は破壊する危険があり、こうした負荷が付属機器ギアボックスアセンブリの歯車に伝達される。
【0010】
この問題を解決するための一案として、軸受を変更することがあった。即ちローラ軸受タイプの軸受を2つにする、あるいは1つの構成物に1つのローラ軸受と1つのボール軸受を設ける、またはその反対の構成にすることである。これらの組み合わせのいずれも満足のゆく結果をもたらさなかった。
【0011】
本発明は、交流発電機のロータを駆動する装置、より一般的には、交流発電機からロータシャフト支持軸受と補助機器支持体歯車列とへの機械的負荷の伝達を回避または最低でも軽減する補助機器を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的のために、本発明は、ロータシャフトを駆動する手段を備えるタービンエンジン補助機器支持体に取り付けられる補助機器のロータを駆動する装置であって、上記手段の1つによって駆動される、補助機器支持体に固定された第1軸受と第2軸受によって支持される中空状シャフトを備え、ロータシャフトが中空状シャフトと同軸であり、ロータシャフトと中空状シャフトとの間に回転結合手段が形成される装置に関する。
【0013】
回転結合手段とは、ロータシャフトに接線力しか加えない、即ちその回転軸に対して垂直の力しか加えない結合手段または連結手段を意味するものとして理解されたい。したがってロータシャフトは中空状シャフトに概ね同軸に結合され、それによって回転駆動される。これは、例えばスプライン連結、あるいは代替方法として相補的フラット(例えば角柱状シャフトなど)、キーおよびキー溝、または他の任意の接線連結を含む手段であることができる。このような回転結合手段は、中空状シャフトとロータシャフトとの間に、ある程度の移動の自由を長手方向にかつ旋回で可能にする。このようにロータシャフトと中空状シャフトとの連結はある程度の柔軟度を示す。
【0014】
本発明によって、ロータは補助機器支持体駆動手段または付属機器駆動ギアボックスアセンブリに直接固定されず、したがってそれらに、ロータ自体が受けることのある負荷、急な動き、または振動を伝達することはない。特定の振動は回転結合手段に吸収され、回転結合手段の構造が、接線方向以外の方向での柔軟性によってこのような振動を内因的に吸収する。したがって、ロータシャフトと付属機器ギアボックスアセンブリを駆動する手段、即ちロータシャフトと付属機器駆動ギアボックスアセンブリの歯車列とは、中空状シャフトの存在によって離脱される。このような回転結合手段の存在は、交流発電機のロータシャフトと中空状シャフトによって形成されるアセンブリに、ある程度の柔軟性を与える。
【0015】
本発明は、補助機が、片持梁式に取り付けられる、補助機支持体に固定されたステータを備える交流発電機である場合に特に適用することができる。実際、本発明によって解決される問題が最初に起こったのはこの状況であった。付属機器ギアボックスアセンブリに一方でロータ、他方でステータが取り付けられ、頻繁に取り外し、再装着を行わなければならない限り、それらの相互に対する相対的な位置決めは、付属機器駆動ギアボックスアセンブリでのそれらの相対的な位置決めによって決まる。しかし、本発明の範囲はこの補助機器だけに限定されるべきではない。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、ロータシャフトは、補助機器支持体に固定された少なくとも1つの第3軸受によって支持される。したがってロータへの負荷の全てを、ロータシャフトを支持している第3軸受によって吸収し、補助機器支持体の固定構造物に伝達することができる。このような軸受はもっぱら交流発電機ロータの負荷に作用し、付属機器駆動ギアボックスアセンブリの歯車に関連付けられるものには作用しない。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、回転結合手段はスプライン式の連結部である。このような結合手段は使用し易い。スプラインを有するロータシャフトを、相補形スプラインを有する中空状シャフト内に挿入するのは容易である。
【0018】
本発明の好ましい実施形態では、交流発電機のロータシャフト支持軸受である第3軸受は、ボール軸受であり、その外輪に潤滑油排出手段を備える。
【0019】
このような実施形態は以下の利点を提供する。排出手段によって、軸受のボールが外輪で滑る危険が軽減されて、負荷により充分に耐えることが可能なより大きな寸法の軸受を使用することが可能になる。
【0020】
1つの選択としてこの場合は、第3軸受は3点接触または4点接触軸受として知られているものである。
【0021】
1つの選択として、油膜緩衝手段が第3軸受の外輪に配置される。
【0022】
ここでも1つの選択として、本発明の好ましい実施形態によって、中空状シャフト支持軸受である第1軸受および第2軸受の寸法は、交流発電機のロータシャフト支持軸受である第3軸受よりも小さい。
【0023】
したがって、大型軸受と小型軸受のそれぞれの利点を組み合わせることができる。小型軸受は、通常動作で付属機器ギアボックスアセンブリの歯車列によって生成される小さな負荷に耐えることが可能である。さらに大型軸受は、特に交流発電機が取り外され不正確に再装着される場合、うまく平衡がとれていないことから起こる可能性のある負荷をより簡単に吸収することができる。適切に平衡が取れている場合、潤滑油排出手段によって大型軸受のどのようなスリップも回避される。
【0024】
ここでも好ましくは、平衡異常および過熱の危険を軽減するために、交流発電機と同じ側で、第3の、交流発電機のロータシャフト支持体の軸受の付近にブラシシールを設けることができる。
【0025】
したがって交流発電機のロータ駆動装置と交流発電機自体との間の密閉はより優れたものであり、後ほど説明するように、このようにして交流発電機内への油の潜入と、これに続く平衡異常とを回避する。
【0026】
ここでも好ましくは、交流発電機のロータシャフトは、意図的に脆弱なリンクとして設計された脆弱化部分を備えてもよく、これによってロータに過剰な負荷が掛けられた場合にこれが破裂し、このようにしてこれらの負荷が付属機器駆動ギアボックスアセンブリの歯車に伝達されるのを防止するようにする。
【0027】
本発明はまた、上記の駆動装置を備える補助機器支持体または付属機器駆動ギアボックスアセンブリと、そのようなギアボックスアセンブリを備えるターボジェットとに関する。
【0028】
添付図面を参照してここに掲げる本発明の装置の幾つかの好ましい実施形態についての以下の記述を助けにすれば、本発明がより充分に理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
ここに表す様々な実施形態では、共通の要素を同じ参照符号によって示す。
【0030】
図2を参照すると、ターボジェットは補助機器支持体10、または付属機器駆動ギアボックスアセンブリ10を備え、その略語は当業者によく知られているAGBであるが、上記に概説したように以下ではギアボックス10と呼ぶ。ギアボックス10はターボジェットの周辺部に固定され、例えばバイパスターボジェットの場合はそのファンの外側ケーシングに固定される。ターボジェットは高圧シャフトに、ギアボックス10に連結されたシャフトと噛み合う動力取出手段を備えるが、これをここで動力取出シャフトと呼ぶ。したがってこのシャフトはターボジェットの高圧シャフトとギアボックス10との間を径方向に延びるが、ギアボックス10の内部に挿入され、多数の補助機器または付属機器を機械駆動する。これにはFADEC装置用の交流発電機11、燃料油ポンプ、始動機、ターボジェットによって推進される航空機用の電力を生成する交流発電機などがある。このため、ギアボックス10は、ターボジェットの高圧シャフトから動力を取り出す動力取出シャフトに直接または間接的に連結される複数の歯車を備える。これらの歯車は様々な付属機器を駆動するように構成されている。
【0031】
交流発電機11は、本明細書においては斜線表示ブロックとして概略的に示すステータ12とロータとを備えるが、このロータはシャフト13を備え、シャフト13は動力取出シャフトによって回転駆動され、シャフト13の端部分14はステータ12の内側に延びる。この端部分14は、ステータ12、即ちアーマチャと協働して電気を作り出す誘導器要素(図示せず)を知られているやり方で支持する。このようにしてロータシャフト13はステータの内部で回転するロータを支持する。ここで交流発電機11は永久磁石交流発電機式である。これは、少なくとも、航空機に対して電気を生成する交流発電機と比較して、比較的小型の交流発電機である。ロータは一般的に毎分18000回転から33000回転の高速で回転する。この回転速度は安定した電流を得ること、小型の交流発電機を使用することを可能にし、それによって交流発電機が占める空間の量を抑えることができる。
【0032】
本明細書においてはロータシャフト13はロータと1つの部片を成すものとして形成される。ここでロータとロータシャフトは同じ部片を指す。ロータシャフトは、独立した部片として形成され、任意の適切な手段によってロータに回転可能に固定されることも可能である。
【0033】
ギアボックス10は交流発電機11用の駆動手段15を備えるが、それは本明細書においては噛み合い手段、この事例ではピニオン15であり、ギアボックスの歯車に連結された、したがって動力取出シャフトに直接または間接的に連結されたシャフトに固定される。
【0034】
駆動ピニオン15は、中空状シャフト17に固定された大歯車16または他の任意の適切な駆動手段と噛み合う。この中空状シャフト17は、場合によっては本明細書においてはその長さに沿った概ね中間点に位置する部分に大歯車16を備える。中空状シャフト17はその両端部で、第1軸受18と第2軸受19によってそれぞれ支持される。この事例ではこれらの軸受18、19はローラ軸受であるが、同等にボール軸受けであることもできる。ローラ軸受は、より大きな負荷に耐えることが可能であるという利点を有する。軸受18、19はそれらの外輪によってギアボックス10の固定構造物に固定することができる。中空状シャフト17は、交流発電機11のステータ12の中心線に沿って、即ちロータハウジングの中心線に沿って位置する。
【0035】
中空状シャフト17は、好ましくは交流発電機11とは反対側の端部に位置するその内部面の一部分に、スプライン結合部分または連結部分20を備える。スプライン結合部分20は、中空状シャフト17の軸線のまわりで均等に分配されてこの軸線と平行な溝とリブを形成するスプラインの集合体を備える。
【0036】
中空状シャフト17と同心にかつその内部を通るのが、交流発電機11のロータシャフト13である。ロータシャフト13は、ステータ12内に挿入されたその端部分14とは反対側の端にシャフト部分21を備える。これは中空状シャフト17の中を延在するように設計される。ロータシャフト13は、シャフト部分21の端部にスプライン結合部分22を有するが、これは中空状シャフト17のスプライン結合部分20を補完し、そこに連結するように設計される。図面ではロータシャフト13のスプライン結合部分22の断面は表していないが、図面を理解する助けとなるようにその外形を示している。
【0037】
スプライン結合手段20、22は回転結合手段を形成する。ここで起こるのは、中空状シャフト17が回転するにつれて、このシャフト17のスプラインが、ロータシャフト13のスプラインに対してロータシャフト13に正接する、その回転軸に垂直な力を掛けてゆくということである。特に、中空状シャフト17はロータシャフト13の長手方向の応力または旋回する応力は掛けない。したがってある程度の移動の自由と、長手方向および旋回する上でのある程度の柔軟性とが存在する。
【0038】
交流発電機11に最も接近した中空状シャフト17の端部、この事例では軸受19によって支持された端部と交流発電機自体との間では、ロータシャフト13は軸受23によって支持される。この軸受23はその外輪25によってギアボックス10の固定構造物に固定される。ここで1つの選択として、軸受23はボール軸受である。これは中空状シャフト17と同軸である。
【0039】
本発明の装置の好ましい実施形態では、ロータシャフト13は、軸受23の内輪26を支持する部分24を備えるが、これは、中空状シャフト17内に延在するそのシャフト部分21と比較してより大きな直径を有する。ロータシャフト13は、この拡張部分24から交流発電機11のステータ12に向かってその中へと延在し、その部分14はステータ12内に挿入され、このステータ12は、拡張部分24より小さい直径を有する。
【0040】
交流発電機11のロータシャフト13を支持する軸受23に対して、偏向器36が交流発電機11と同じ側に設けられることに留意されたい。このような偏向器は、この軸受23から出る潤滑剤、または駆動装置の他の部分を潤滑するための潤滑剤さえもが交流発電機11にふりかかるのを防止する。ここで起こるのは、交流発電機11のステータ12内に挿入されたロータシャフト13の端部分14に存在する油は、ロータ内の平衡異常を引き起こすということである。ロータとステータ12との間の空間が極めて小さいことから、油が昇温し、骸炭になるからである。このような偏向器は、その効率を高めるように回転式偏向器であることができる。偏向器36はフランジの形態であり、その内部壁は交流発電機11のロータシャフト13と接触せずに面一である。
【0041】
ここで、交流発電機11のロータシャフト13を駆動する装置がどのように稼動するかを記述する。
【0042】
動力取出シャフトによって直接または間接的に回転駆動されるピニオン15は、中空状シャフト17の大歯車16を回転駆動する。中空状シャフト17は、ギアボックス10の固定構造物に連結された2つの軸受18、19によってその動きを支持される。中空状シャフト17はスプライン連結部20、22を介して交流発電機のロータ11の回転を駆動し、ロータ11はその動きをスプライン連結部20、22によって、またギアボックス10の固定構造物に連結された軸受23によって支持される。ターボジェットに動力供給するための電気生成は、ステータ12内のロータの端部分14の回転からもたらされる。
【0043】
駆動装置はこのように構成されて、交流発電機11のロータからの負荷または平衡異常がギアボックス10の歯車に伝達されるのを回避することを可能にする。ここで起こるのは、特定の振動がスプライン連結部20、22によって吸収されるということであり、これは、回転結合手段を形成するこのタイプの連結部が、ある程度特有の柔軟性を提供することによる。負荷は全体的に、ロータシャフト13を支持する軸受23で吸収され、この軸受が充分に大きい場合、さらによく吸収される。この軸受23はもっぱら交流発電機11のロータの負荷に作用し、ギアボックス10の歯車に関連付けられる負荷には作用しない。これらの負荷は、ギアボックス10の歯車ではなく、このような負荷を吸収することによって影響を受けないギアボックスの固定構造物に伝達される。
【0044】
したがって、交流発電機11のロータとギアボックス10の歯車との間に離脱が存在する。さらに、中空状シャフト17を支持する転がり接触軸受18、19が交流発電機11のロータから離脱されることから、軸受18、19はロータに掛かる負荷を受けない。したがって、中空状シャフト17が最小限度の摩擦および最小限度の量で回転できるように、それらは小型の軸受であることができる。
【0045】
この特定の事例では、また1つの選択として、交流発電機11のロータシャフト13を支持する軸受23は、中空状シャフト17を支持する小型の軸受18、19と比較して大型である。このように交流発電機11のロータへの負荷は、ロータシャフト13を支持する軸受23による作用を受け、またより重要なこととして、特定の振動の場合には主としてこの軸受によって、さらにスプライン連結部20、22によって作用を受ける。一方中空状シャフト17の軸受18、19は極めて小さな負荷しか受けず、したがって極めて小さな摩擦しか伴わずに稼動する。
【0046】
さらに、存在する負荷は、一般的に交流発電機の取り外しと再装着の際の不正確さによるものである。本明細書においては、交流発電機は、ロータシャフト13を中空状シャフト17およびその支持軸受23の中に挿入することによって装着され、次いでステータ12がロータの端部14のまわりに取り付けられる。ロータシャフト13は中空状シャフト17の中に困難なく挿入することができ、この際、長手方向の不正確さは影響を有さない。これは、ロータシャフト13のスプライン部分22の中空状シャフト17のスプライン部分20内への挿入が不完全になる可能性があり、あるいは過剰になる可能性があるからである。これは、スプラインが適切な伝達運動のために厳密に向かい合う必要がないからである。より重要なこととして、角度のどのような不正確さも、スプライン連結部20、22の柔軟性から、それらによって吸収され、そうでない場合も、ロータシャフト13を支持する軸受23によって吸収される。
【0047】
第2実施形態によると、また図3を参照すると、交流発電機11のロータを駆動する装置はあらゆる点で図2に表している装置と類似しているが、交流発電機11のロータシャフト13を支持する軸受23’がボール軸受であり、その外輪25’に潤滑剤排出手段27を備えている点はその限りではない。この特定の事例では、これらの手段は、外輪25’の厚み内にその中央域で形成された少なくとも1つのチャネル27を備える。1つの選択として、複数のチャネル27が形成され、外輪25’の円周に沿って均等に分配される。この事例では油である潤滑剤が効果的にチャネル27によって排出されるためには、軸受23’のボールがこれらのチャネルへの入口を塞いではならない。これを達成するために、軸受23’は、当業者によく知られている3点接触式の軸受となっている。このような軸受は外輪25’を備え、その内部面は、例えば、チャネル27のオリフィスを備える中心線で合致する、ボールの半径よりも大きな半径の2つの半蛋形部または半環部から形成される。したがって、ボールはこの線に沿って外輪25’と接触することはできず、2つの別個の線に沿ってのみ外輪25’と接触し、それぞれが一方の半蛋形部または半輪に位置する。したがって各ボールは2つの点で外輪25’と接触し、理論的にはその中心線に位置する1つの点で内輪26と接触する。これが「3点接触」という表現の意味するところである。
【0048】
1つの選択として、軸受23’は「4点接触」式の軸受であり、即ち内輪26’も潤滑剤排出手段(図示せず)を備えた環である。これらの手段は、潤滑剤を取り除くように、または反対に、潤滑剤を軸受23’内に導入しながら潤滑剤が外輪25’の排出手段27によって取り除かれように構成することができる。したがって後者の事例では、油が遠心作用によって内輪26’に送られ、外輪25’で除去される。
【0049】
このような4点接触軸受は、本出願人名義のFR2740187およびFR2841305に記載されている。
【0050】
このように、例えばノズルによって送られる軸受23’用の潤滑剤はチャネル27によって排出され、そのオリフィスがボールによって塞がれることは決してなく、潤滑剤除去システム28、例えば汲み上げ原理または吸い上げ原理で動作するダクトが外輪の外側に設けられて潤滑剤を排出する。特定目的の除去システムを設けずに、潤滑剤を単に、外輪25’でボールが回転する結果として除去することもでき、この回転は、潤滑剤を遠心力によってチャネル27内に押しやる。したがって潤滑剤がボールと外輪25’との間に溜まらず、このようにしてボールが外輪25’上でスリップするのを防止する。このように、スリップによって軸受23’が損傷する危険が回避され、軸受は保護され、軸受が支持するロータも同様に保護される。
【0051】
この結果、交流発電機11のロータシャフト13を支持するために、潤滑剤排出手段27を備えた軸受23’を使用することによって、ロータ駆動装置は既述した利点、即ちロータとギアボックス10の歯車との離脱をもたらして、負荷がこれらの2つの要素同士で伝達されるのを防止するという利点だけでなく、軸受23’が保護され、このようにして交流発電機11のロータ、したがって交流発電機11を保護するという追加の利点も有する。このように、ギアボックスの歯車、さらに交流発電機11も保護される。
【0052】
さらに潤滑剤排出手段27によって、軸受23’のボールは外輪25’上でスリップする傾向が小さく、ロータの負荷をよりよく吸収することが可能な大型寸法の軸受23’を使用することを可能にする。
【0053】
第3の好ましい実施形態によると、また図4を参照すると、交流発電機11のロータを駆動する装置はあらゆる点で図3に述べた装置に類似しているが、交流発電機11のロータシャフト13を支持する軸受23’が、その外輪25”に潤滑剤排出手段17だけでなく、外輪25”とギアボックス10の固定構造物との間で緩衝手段29をも備える点はその限りではない。これらの手段29は、外輪25”とギアボックス10の固定構造物との間に配置される油膜30を備える。このような油膜緩衝手段は当業者によって「圧搾膜」という用語によって知られている。より詳しくは、外輪25”の外側にプレート31が設けられ、このプレートはそれと外輪25”との間に空間を残し、その中に排出チャネル27から出た油が導入される。このようなチャネル27内の油の流量が大きくないことは重要ではない。これは、本質的な特徴が、油膜30に特定の圧力があるということによる。矢印32、33によって示すように、油を外輪25”の縁部に形成された空間を介してこの外輪25”の各側で除去することができる。あるいは、他の除去手段を、例えば図3の実施形態の除去手段28と同様に、外輪25”の外側に向けて設けることができる。
【0054】
この油膜30は軸受23”のための緩衝手段を形成する。このような装置は、軸受23”に対する負荷の一部を緩衝するという追加の利点、したがってさらに、軸受23”を交流発電機11のロータと共に保護するという追加の利点を提供する。油膜30は排出チャネル27によって供給され、したがって簡単に実施できる。このように、ギアボックス10の歯車が離脱され、したがってロータから隔離されるだけでなく、油膜30もロータをギアボックス10の固定構造物から隔離し、したがって離脱させる限り、これは交流発電機11のロータとギアボックス10とが離脱される程度をさらに高める。このようにギアボックス10の歯車も固定構造物もロータから隔離される。
【0055】
本明細書においては、外輪25”の回転を防止するプレート34があり、外輪25”とギアボックス10の固定構造物とに対して、交流発電機11と同じ側に固定されて、外輪25”が交流発電機11のロータの軸のまわりで回転するのを防止するようになる。
【0056】
内輪26”は従来式のものであってよく、または例えば2つの半環として形成された潤滑剤供給手段を備えることもできる。
【0057】
第4の好ましい実施形態によれば、また図5を参照すると、交流発電機11のロータを駆動する装置は、あらゆる点で他の前述の実施形態の1つの装置と類似しているが、交流発電機11のロータシャフト13’は追加の特徴を備えている。本実施形態では、交流発電機11のロータシャフト13’は、中空状シャフト17内に延びるそのシャフト部分21で、意図的に脆弱なリンク35として設計された本明細書においては小径の脆弱化部分35を備える。したがって、過剰な負荷がロータに、したがってそのシャフト13’に掛けられる場合、意図的に脆弱なリンク35は壊れ、ロータを中空状シャフト17から、したがってギアボックス10の歯車から完全に離脱させる。これは追加の安全上の特徴であって、過剰の負荷が交流発電機11のロータに掛けられる場合に、ギアボックス10が損傷されないよう保証することを可能にする。この意図的に脆弱なリンク35は、当業者が交流発電機11のロータに掛けられるのに許容できると考える最大限度の負荷に応じて考案されて、このように規定された負荷の閾値を超える過剰負荷が掛けられる場合、このリンクは壊れるようになる。
【0058】
第5の好ましい実施形態によると、また図6を参照すると、交流発電機11のロータを駆動する装置は、あらゆる点で他の前述の実施形態の1つの装置と類似しているが、交流発電機11のロータを駆動する装置と交流発電機11自体との間の密閉は、前述の実施形態のように偏向器36ではなく、ブラシシール36’であることはその限りではない。このようなブラシシール36’は、軸受23の付近のギアボックス10の固定構造物に固定された環37を、軸受23と交流発電機11との間に備え、そこから炭素またはセラミックの剛毛38が内向きに延在する。これらの剛毛は例えば極めて密接している。このようなブラシシール36’はギアボックス10の固定構造物に静定して取り付けられ、剛毛38はロータシャフト13と接触する(剛毛38は、環37とロータシャフト13の表面との距離よりも長い)。これは、交流発電機11のロータとステータ12との間の油の存在の結果としてロータに現れる平衡異常をよりよく回避し、そのようにして交流発電機11を駆動する装置の動作をさらに高め、それはより小さな負荷しか受けない。
【0059】
上述の様々な実施形態は、異なる実施形態のそれぞれが別の部分に関することが分かることから、別個に、部分的に、または全体的に相互に組み合わせることができる。ギアボックス10の歯車と交流発電機11のロータとを離脱させ、保護し、それらが受ける負荷を軽減するという同じ目的で、各実施形態の利点を共に加え、組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】従来技術の駆動装置の概略断面図である。
【図2】本発明の装置の第1実施形態の概略断面図である。
【図3】本発明の装置の第2実施形態の概略断面図である。
【図4】本発明の装置の第3実施形態の交流発電機のロータシャフトの支持軸受の概略断面図である。
【図5】本発明の装置の第4実施形態の概略断面図である。
【図6】本発明の装置の第5実施形態の概略断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 従来技術のシャフト
2 従来技術のインダクタ要素を支持する端部分
3 従来技術の歯車
4、5 従来技術の軸受
10 補助機器支持体、ギアボックス
11 交流発電機
12 ステータ
13、13’ ロータシャフト
14 ロータシャフト13の端部分
15 駆動手段
16 大歯車
17 中空状シャフト
18、19、23、23’、23” 軸受
20、22 スプライン結合部分
21 シャフト部分
24 拡張部分
25、25’、25” 外輪
26、26’、26” 内輪
27 潤滑剤排出手段
28 潤滑剤除去システム
29 緩衝手段
30 油膜
31、34 プレート
35 脆弱化部分
36 偏向器
36’ ブラシシール
37 環
38 剛毛

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータシャフトを駆動する手段を備えるターボエンジン補助機器支持体に取り付けられる、補助機器のロータを駆動する装置であって、前記手段の1つによって駆動される、補助機器支持体に固定された第1軸受と第3軸受によって支持される中空状シャフトを備え、ロータシャフトが中空状シャフトと同軸であり、ロータシャフトと中空状シャフトとの間に回転結合手段が形成され、ロータシャフトが、補助機器支持体に固定された少なくとも1つの第3軸受によって支持される、装置。
【請求項2】
補助機器が、補助機器支持体に固定されたステータを備える交流発電機である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
回転結合手段がスプライン式の連結部である、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
第3軸受がボール軸受であり、その外輪に潤滑剤排出手段を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
第3軸受が、3点接触または4点接触の軸受として知られているものである、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
第3軸受の外輪に配置された油膜緩衝手段を備える、請求項4または5に記載の装置。
【請求項7】
第1軸受と第2軸受の寸法が第3軸受よりも小さい、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
装置で使用される潤滑剤に対して補助機器を密閉するように、第3軸受の付近に、補助機器と同じ側でブラシシールが配置される、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
ロータシャフトが、過剰な負荷がロータに掛けられた場合に壊れるように考案された意図的に脆弱なリンクとして設計された部分を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
ロータシャフトを駆動する前記手段が噛み合い手段である、請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
請求項1から10の一項に記載の駆動装置を駆動する歯車を備える、タービンエンジン用補助機器支持体。
【請求項12】
請求項11の補助機器支持体の歯車を駆動するシャフトと、シャフト動力取出手段とを備えるタービンエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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