説明

タービンエンジン始動発電機およびその制御方法

タービンエンジン始動発電機は、ステータと巻線ロータインデューサおよびかご形を形成するダンパバーを有するロータ(22)とを有する主電気機械(20)と、ステータインデューサと回転整流器(36)を介して主電気機械のロータインデューサに接続されるロータ巻線を有するロータとを有する励磁機(30)とを備える。始動段階の第1のステップのときには、主電気機械(20)は、ACをステータ巻線に注入することにより非同期電動機モードで作動され、主電気機械のロータインデューサが始動トルクの発生に有意に寄与せずに、始動トルクはダンパバーによってのみ発生する。始動段階の次の第2のステップのときには、主電気機械(20)は、ACをステータ巻線に注入すると同時に、励磁機(30)を介してロータインデューサにDCを供給することにより同期電動機モードで作動される。始動段階の第1のステップから第2のステップへの切り替えは、シャフトの回転速度が所定値に達すると行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンエンジン始動発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の適用分野は、特に、ガスタービン推進航空エンジンまたは航空機に搭載されるガスタービン補助動力装置(APU)用の始動発電機の分野である。しかしながら、本発明は、他のタイプのタービンエンジン、例えば、工業用タービンにも適用できる。
【0003】
このような始動発電機(S/G)は、従来、関連するタービンエンジンが始動して点火した後に同期モードで動作する主発電機を形成する主電気機械を備える。主電気機械は、同期発電機モードで、交流電流(AC)の形の電気エネルギーを、ライン接触器が取り付けられた電源ラインを介して、航空機の機内配電網に送るロータインデューサとステータ巻線とを有する。主発電機によって送られたACは、発電機調整ユニットまたは発電機制御ユニット(GCU)によって調整される。GCUは、直流電流(DC)を、回転整流器を介して、主電気機械のロータインデューサに接続されるロータ巻線を有する励磁機のステータインデューサに送る。励磁機のインデューサに電力を供給するのに必要な電気エネルギーは、永久磁石同期発電機のような補助発電機によって送られてもよいし、または航空機の機内配電網から送られてもよい。
【0004】
主電気機械のロータおよび励磁機のロータおよび補助発電機のロータは、もしあれば、タービンエンジンのシャフトに機械的に結合される共通のシャフトに取り付けられ、これらのロータは2段または3段を有するブラシレス始動発電機を構成する。
【0005】
タービンエンジンを始動させるのに、ライン接触器を介して電源ラインに送られたACをステータ巻線に供給することによって、また励磁機を介してロータインデューサに供給することによって、同期電動機モードで主電気機械を作動させることが周知である。始動発電機のシャフトは最初は停止しているので、GCUを介して動作させて、励磁機のロータ巻線内でACを発生させるために励磁機のステータインデューサにACを注入することが必要である。ACは整流された後、主電気機械のロータインデューサに供給されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】英国特許出願公開第2443032号明細書
【特許文献2】米国特許第5055700号明細書
【特許文献3】米国特許第6844707号明細書
【特許文献4】欧州特許第2025926号明細書
【特許文献5】米国特許第3354368号明細書
【特許文献6】英国特許第175084号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
始動に必要なトルクを発生させるのに必要なACを注入できるためには、GCUは、発電機モードのDCを励磁機に供給するのに必要なものよりずっと大きなサイズになるように設計および寸法決めされる必要がある。
【0008】
上述の欠点を改善するために、英国特許出願公開第2443032号明細書では、主電気機械が同期モードで動作しているときに始動する際に主電気機械のロータインデューサ用の励磁電流を送るために、励磁機を回転変圧器モードで動作するように変更することが提案されている。このように変更すること、および低速で始動する際に励磁機のステータを介して高いレベルの電力を通す必要があるということは、この解決策には、重量およびサイズに関して追加のコストがかかる欠点があることを意味する。
【0009】
また、主電気機械を同期電動機モードでなく非同期電動機モードで動作させることにより始動を行うことが提案されている。米国特許第5055700号明細書、米国特許第6844707号明細書、欧州特許第2025926号明細書を参照する。米国特許第5055700号明細書では、始動時に、主電気機械のステータ巻線は、電圧/周波数の一定比で制御されたインバータ回路を使用して、始動接触器を介してACが供給される。主電気機械のロータは、ロータを回転させることができる「かご形」を形成するダンパバーを備え、主電気機械のロータインデューサは、有害な過電圧を防ぐために専用スイッチによって周期的に短絡される。米国特許第6844707号明細書では、始動時に、主電気機械のステータ巻線は、同じように、電圧および周波数が制御されたインバータ回路を使用して、始動接触器を介してACが供給される。主機械のロータインデューサは、最初に専用スイッチを閉じることで短絡される。ロータインデューサを短絡することで、ロータは、ロータインデューサに結合され部分的な「かご形」を形成するダンパバーによって回転し始める。短絡スイッチは、始動発電機が発電機モードに切り替わるときに、励磁機のロータ巻線からの電流の制御下で開かれる。また、欧州特許第2025926号明細書では、始動時に、主電気機械は非同期電動機モードで動作し、始動トルクは、スイッチによって、場合によっては、ダンパバーの助けを借りて、ロータインデューサを抵抗器と直列の閉回路にすることで得られることが記載されている。
【0010】
非同期モードでの動作は同期モードでの動作に比べて劣るので、上述の先行技術の解決策は、始動時に高電力を必要とするタービンエンジン、特に、推進航空エンジンのタービンエンジンに結合されるS/Gには適さない。
【0011】
また、上述の先行技術の解決策では、制御可能なスイッチが主電気機械のロータインデューサと並列または直列に挿置される必要があり、このような要素は信頼性の欠如を招く可能性が高い。
【0012】
また、長年にわたって、巻線インデューサまたはかご形を形成するバーが取り付けられた同期電動機を始動させるのに非同期モードを使用することが周知である。同期速度に達するまでの始動段階は、非同期モードでのみ生じる。米国特許第3354368号明細書および英国特許第175084号明細書を参照されたい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、上述の欠点のないタービンエンジン始動発電機を提供することであり、その目的を達成するためには、一態様おいて、本発明は、
タービンエンジンが始動した後は同期発電機モードで動作し、タービンエンジンの始動段階では電動機モードで動作するように設計された主電気機械であって、ステータ巻線を備えるステータと、巻線ロータインデューサおよび端部が互いに電気的に接続されることでかご形を形成するダンパバーを有するロータとを有する主電気機械と、
ステータインデューサと、回転整流器を介して主電気機械のロータインデューサに接続されるロータ巻線を有するロータとを有する励磁機であって、主電気機械のロータと励磁機のロータとは、タービンエンジンのシャフトに機械的に結合するための共通のシャフトに取り付けられるような励磁機と、
主電気機械が発電機モードで動作しているときに、励磁機のステータインデューサにDCを供給するために励磁機のステータインデューサに接続される発電機調整ユニットと、
主電気機械が電動機モードで動作しているときに、主電気機械のステータ巻線にACを送るために、始動接触器を介して主電気機械のステータ巻線に接続される始動機調整ユニットとを備える始動発電機であって、
始動機調整ユニットは、非同期電動機モードで始動するための第1の調整回路と、同期電動機モードで始動するための第2の調整回路と、始動接触器を介して主電気機械のステータ巻線にACを送るためのインバータと、インバータを第1または第2の始動調整回路によって制御するための電動機モードスイッチと、非同期電動機モードで始動フェーズを開始して、始動段階でシャフトの回転速度が所定の閾値を超えると非同期電動機モードから同期電動機モードに切り替えるように電動機モードスイッチを制御するための回路とを含み、
ダンパバーにより形成されるかご形は、主電気機械のロータインデューサが始動トルクの発生に大きく寄与することなく、自然に非同期電動機モードで始動することができるような構造である始動発電機を提供する。
【0014】
このような構造配置は、推進航空エンジンのタービンエンジンに結合される始動発電機で、同期電動機モードへの切り替えが速度閾値で制御されており、閾値を超えると非同期電動機モードの動作では確実にタービンエンジンにとって十分な始動トルクが送られなくなるような始動発電機の場合に、特に有利である。また、本発明は、ロータインデューサが始動時に短絡される構造にしなくても、ダンパバーの配置が非同期電動機モードの動作を向上させるように設計されている点が画期的である。
【0015】
有利には、ダンパバーは、ほぼ均一に角度配置され、隣接する2本のダンパバー間の角度ピッチPは、0.8Pm<P<1.2Pm、好ましくは、0.9Pm<P<1.1Pmになるようにする。Pmは、ダンパバーの全ての角度ピッチの平均値である。ダンパバーのこのほぼ均一な配置により、非同期電動機モードの動作を向上させるだけでなく、著しいトルクリップルを防ぐことができる。
【0016】
本発明の始動発電機の一特徴によれば、本発明の始動発電機は、主電気機械のロータの角度位置を表す情報を第2の始動調整回路に提供するために、第2の始動調整回路に接続される角度位置センサを含む。
【0017】
さらに好ましくは、それぞれの始動調整回路は、主電気機械のステータ巻線のそれぞれの電流の大きさに関する情報を提供するセンサに接続され、それぞれの始動調整回路は、ステータ巻線の電流の大きさを表す情報から、送られている実際の始動トルクを求めるために、また送られている実際の始動トルクを事前に記録されているトルク設定値にサーボ制御するようにインバータを制御するための信号を生成するために、計算ユニットを含む。
【0018】
始動機調整ユニットは、シャフトの回転速度を表す情報を提供するセンサに接続されてもよいし、第1および第2の始動調整回路に、シャフトの回転速度に応じた始動トルクの変動の事前に記録されているプロファイルから得られたトルク設定値を送るための回路を含んでもよい。
【0019】
本発明の別の態様では、本発明は、さらに、上述の始動発電機が装備されたタービンエンジンを提供する。
【0020】
本発明のさらに別の態様では、本発明は、タービンエンジンの始動段階において、ステータ巻線を備えるステータと巻線ロータインデューサおよび端部が互いに電気的の接続されることでかご形を形成するダンパバーを有するロータとを有する主電気機械と、ステータインデューサと回転整流器を介して主電気機械のロータインデューサに接続されるロータ巻線を有するロータとを有する励磁機であって、主電気機械のロータと励磁機のロータとが共通のシャフトに取り付けられる励磁機とを備えるタービンエンジン始動発電機の制御方法であって、
最初のタービンエンジンが静止している始動段階の第1のステップのときには、主電気機械は、主電気機械のステータ巻線にACを注入することにより非同期電動機モードで作動され、主電気機械のロータインデューサが始動トルクの発生に寄与せずに、始動トルクは実際にはダンパバーによって発生する、
始動段階の次の第2のステップのときには、主電気機械は、主電気機械のステータ巻線にACを注入すると同時に、励磁機のステータインデューサにDCを注入することで主電気機械のロータインデューサにDCを送ることにより同期電動機モードで作動される、
始動段階の第1のステップから第2のステップへの切り替えは、ロータの回転速度が所定の値に達すると行われる、方法を提供する。
【0021】
有利には、ダンパバーがほぼ均一に角度配置され、2つの隣接するダンパバー間の角度ピッチPが0.8Pm<P<1.2Pm、好ましくは、0.9Pm<P<1.1Pmである(Pmは、ダンパバーの全ての角度ピッチの平均値である)主電気機械が使用される。
【0022】
始動段階では、始動発電機は、好ましくは、主電気機械により送られたトルクを、シャフトの回転速度に応じて予め決定された設定値にサーボ制御するように制御される。
【0023】
本発明は、非限定的な例として添付図面を参照して考察された以下の説明を読めば、より良く理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】ガスタービン航空エンジンの高度な簡易図である。
【図2】本発明の一実施形態の始動発電機の構造配置を示した高度な簡易図である。
【図3】図2の始動発電機における主電気機械のロータの一実施形態の半径方向断面図である。
【図4】図3のロータの端面図である。
【図5】図2の始動発電機における主電気機械のロータの別の実施形態の半径方向断面図である。
【図6】図2の始動発電機の始動調整ユニットの一実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
主に、図1で例として高度に簡略化して示されている航空機を推進するエンジン用のタービンエンジン始動発電機の用途に関して以下で本発明を説明する。
【0026】
しかしながら、本発明は、他のタービンエンジン、特に、ヘリコプタタービン、工業用タービン、または補助動力装置(APU)のタービン用の始動発電機にも適用できる。
【0027】
図1のタービンエンジンは、燃焼室1を含み、燃焼室1からの燃焼ガスが高圧(HP)タービン2および低圧(BP)タービン3に入る。タービン2は、シャフトによって、燃焼室1に圧力がかけられた空気を供給するHP圧縮機4に結合され、タービン3は、別のシャフトを介して、エンジンの吸気ファン5に結合される。
【0028】
変速装置または補助ギアボックス6は、機械式動力取出装置7を介して、タービンシャフトに接続され、種々の機器、特に、ポンプ、および少なくとも1つの電気始動発電機(以降、「S/G」とする)10を駆動するための1組のギアを備える。
【0029】
図2は、3つの段、すなわち、主電気機械20と励磁機30と補助発電機40とを有するS/G10の図である。これらのロータは、図1に示されるような航空エンジンのタービンシャフトに機械的に接続される共通のシャフト12に取り付けられる。
【0030】
主電気機械20は、ロータに巻線ロータインデューサ22を備え、ステータに星形接続され得るステータ巻線24a、24b、24cを備える。励磁機30は、ステータにインデューサ巻線34を備え、ロータに星形接続され得るロータ巻線32a、32b、32cを備える。励磁機30のロータで発生したACは、主電気機械のロータインデューサに供給するために、回転ダイオードブリッジのような回転整流器36によって整流される。例として、補助発電機40は、永久磁石を備えるロータ42と、星形接続され得るステータ巻線44a、44b、44cとを有する永久磁石同期発電機である。
【0031】
タービンエンジンが始動されて動作している発電機モードでは、主電気機械20は、(この例では)ラインスイッチ28が挿置された電源ライン26でステータに三相の電圧を送る同期発電機となる。電源ライン26は、電圧を航空機の機内配電網(図示せず)に送る。生成された電圧は、ライン26上の基準点における電圧Urefを設定値になるようにサーボ制御するために、DC励磁機のインデューサ34に供給された電力を制御する発電機調整ユニットまたは発電機制御ユニット(GCU)50によって調整される。このために、電圧Urefの瞬時値を表す情報がGCU50に送られる。励磁機30に供給するのに必要な電気エネルギーは補助発電機40よって送られ、CGU50は、補助発電機40のステータに送られたACを受け取って整流する。変形形態では、GCU50への電力供給は、航空機の機内配電網から得られる。このような発電機モードでのS/Gの動作は周知である。
【0032】
始動機モードでは、主電気機械20は、タービンエンジンを回転させるのに必要なトルクを送る電動機となる。始動段階では、主電気機械20のステータ巻線24a、24b、24cは、始動接触器64が挿置されたライン62によって巻線24a、24b、24cに接続されるインバータを備える始動調整ユニット60によって、ACが供給される。
【0033】
最初のタービンエンジンが静止している始動段階の第1のステップのときには、主電気機械20は、主電気機械20の回転インデューサ22に結合されるダンパバーを利用する非同期電動機モードで動作する。周知の方法では、ダンパバーは、同期発電機モードで動作しているときは、ロータの機械的挙動に寄与する働きをして、空隙において磁場をより均一にすることで正弦波の波形率を改善し、バランスの悪い三相負荷の影響を低減し、負荷過渡時の振動を減衰する。
【0034】
本発明の一特徴によれば、ダンパバーは、高始動トルクの発生の促進を優先して配置される。
【0035】
図3および図4に示されるように、ダンパバー222は、有利には、ほぼ均一に角度配置され、「かご形」を形成するようにそれぞれの端部で互いに電気的に接続される。図示された例では、主電気機械のロータは、インデューサ22のロータ巻線226を備えた凸極224を有する。バー222は、極224の端部付近でロータの軸に平行に伸び、バー222の軸は共通の円柱面上に位置する。軸方向端部の一方で、バー222は、リング228によって結合される(図4)。他方の軸方向端部では、バーは別の同様のリングによって同じように結合される。バー222の「ほぼ均一な角度配置」という用語は、本明細書では、2本のバー間の角度ピッチPが0.8Pm<P<1.2Pm、好ましくは、0.9Pm<P<1.1Pm(Pmはバー全ての平均角度ピッチである)を満たすような配置を意味するのに使用されている。
【0036】
ダンパバーのほぼ均一な角度配置は、非同期電動機モードの動作を最適化するだけでなく、非常に不規則な配置により生じる高いレベルのトルクリップルを防ぐ利点がある。
【0037】
しかしながら、バーをほぼ均一に配置するには、極224同士の端部における間隔を比較的小さくする必要がある。この間隔は、ピッチP未満でなければならない。この間隔は極間の漏れ磁束につながる可能性があるが、漏れ磁束の量は比較的制限され、同期モードでの主電気機械20の動作にあまり不利益をもたらすものではない。図3に示されている例では、極224の数は6個で、バーの数は21本であり、1個の極につき3本のバーと1個の極につき4本のバーが交互に配置されている。バーの角度配置は、極の中心を通る軸に関して必ずしも対称であるとは限らないことに留意されたい。
【0038】
例えば、図5に示されるように、ロータが4個の凸極を有し、バーの数が18本であり、1個の極につき4本のバーと1個の極につき5本のバーが交互に配置されるような異なる配置を採用することもできる。
【0039】
当然、特に、特別に意図する用途に応じて、図示されている例に示されている数以外の数のバーを採用することも可能である。
【0040】
かご形220を使用するときに非同期電動機モードで高いトルクを発生させるためには、かご形の電気抵抗は最小限に抑えられるのが好ましい。バー222とリング228とによって形成されるかご形の電気抵抗が高すぎる場合、始動調整ユニットのインバータからの利用可能なレベルの電源電圧を使用して所望のレベルのトルクに達するのに十分な電流をバーに誘導できない可能性がある。さらに、抵抗が高すぎると、高レベルのジュール効果の損失を引き起こし、これは、効率の観点から、また発熱の観点から不利益となる。ダンパバー222およびダンパバーの端部をつなぐリング228は、好ましくは、この場合、優れた電流導体、例えば、銅で作られ、ダンパバーは実際にバーが減衰機能を果たすことができるのに必要な断面より大きい断面で作られる。
【0041】
また、磁束が通過する磁石断面をできるだけ小さくするために、バー228が所与の断面積に対して円形でなく長方形の断面を有するのが有利な場合もある。
【0042】
非同期電動機モードでの始動トルクの全てはかご形220によって発生し、それ自体は環状でないロータ巻線が始動トルクの発生に寄与しないことに留意されたい。
【0043】
シャフト12の回転速度が閾値に達して、主電気機械の非同期電動機モードの動作によって必要なトルクが確実に供給されなくなると、主電気機械は、始動段階の第2のおよび最後のステップを実行するために、非電動機モードから同期電動機モードに切り替えられる。励磁機は回転しているので、DCはGCU50によって励磁機のインデューサ34に注入されて、回転整流器36を介して巻線インデューサ22にDCが供給される。同時に、主電気機械のステータ巻線24a、24b、24cは、始動調整ユニット60によってACが供給されると同時に、確実にステータ磁束がロータの位置に向かって最適に配向される。
【0044】
従来の方法では、タービンエンジンにより発生したトルクが十分になってS/Gが必要でなくなると、S/Gの速度、ひいてはその周波数が十分になれば、GCU50によって、始動接触器64が開かれ、ライン接触器28が閉じられ得る。
【0045】
図6を参照しながら、始動調整ユニット60の特定の実施形態について説明する。
【0046】
主電気機械のステータ巻線に供給される電圧は、電圧と周波数とがインバータ制御回路604によって制御された始動インバータ602によって生成される。インバータ602に必要な電圧を生成するために、また始動調整ユニット60の種々の構成部品を作動させるために必要な電気エネルギーは、地上のAPUまたは発電ユニットによって作動される航空機の機内配電網からの電源ライン(図示せず)によって提供される。
【0047】
電動機モードスイッチ606の位置に応じて、インバータ制御回路604では、その入力は非同期モードで始動するために調整回路608に接続され、または同期モードで始動するために調整回路610に接続される。
【0048】
主電気機械のステータ巻線の相電流の大きさを表す情報を回路608および610に提供するために、回路614の入力は、ライン62の導体に挿置された電流センサ620a、620b、620cに接続される。
【0049】
シャフト12の回転速度を表す情報を回路608および610に提供するために、回路616の入力は、S/Gのシャフト12に取り付けられたセンサ14(図2)に接続される。同様に、シャフト12の角度位置を表す、すなわち、主電気機械20のロータの角度位置を表す情報を回路610に提供するために、回路618の入力は、センサ14に接続される。例として、センサ14は角度位置センサであり、位置速度情報がセンサによって送られた信号から得られる。このようなセンサ自体は周知である。
【0050】
角度位置センサは、角度位置に応じた電気の大きさを測定することで角度位置が算出できる場合には、省略してもよい。
【0051】
始動調整ユニット60は、以下のように動作する。
【0052】
始動命令Stに応答して、デジタル制御ユニット600は、接触器64を閉じて、電動機モードスイッチ606を非同期モードの始動調整回路608をインバータ制御回路604に接続するように操作する。
【0053】
図6に示されているように、テーブル612は、S/Gのシャフトの回転速度Nの関数として始動トルクCの設定値を表す情報を含む。この例では、必要なトルク値は、始動段階の始めからほぼ一定で、始動段階の終わりに近づくにつれて減少する。デジタル制御回路600は、回路616から回転速度Nを表す情報を受け取り、トルク設定値Csを回路608に提供するためにテーブル612から読み取る。さらに、回路608は、特に、主電気機械により得られる実トルクを表す大きさを算出するために、またインバータ604の電圧および周波数を制御する回路に電圧および周波数の設定情報を提供して、実トルクの値を、特に、速度の関数としての設定値Csにサーボ制御するために、計算ユニットを有する。
【0054】
このためには、ステータ巻線の相電流の値に基づいて、電気機械のトルク電流Iqおよび磁束電流Idを、それ自体周知の方法で算出することができる。実トルクのイメージである電流Iqは、設定トルクCsに一致する設定値にサーボ制御される。磁束電流Idは、ロータ磁束のイメージであり、飽和状態の前の最大値にサーボ制御され得る。
【0055】
速度が増すと、非同期電動機モードで動作している機械により送られることのできる最大トルクは、一定の速度から小さくなる。このとき、回転速度Nが存在し、Nからは機械は必要な設定トルクを送ることができなくなる。この値Nは、機械の特性に応じて決まる。
【0056】
値Nに達すると、デジタル制御ユニット600は、電動機モードスイッチ606を切り替えて、同期モードの始動調整回路610をインバータ制御回路604に接続し、GCU50に励磁機30のステータ巻線にDCを供給させる。上述したように、デジタル制御ユニット600は、テーブル612を使用して速度の関数としての回路610のトルク設定値Csを取得する。
【0057】
回路608と同様に、同期モードの始動調整回路は、実トルクを算出するための手段を有する。回路610は、インバータ制御回路604に電圧および周波数の設定情報を提供して、実トルクを速度の関数としての設定値Csにサーボ制御すると同時に、ロータの角度位置に対するステータ磁束の最適な位置を保証する。このためには、上述したように、電流IqおよびIdが算出される。電流Iqは、設定トルクCsに一致する設定値にサーボ制御される。磁束電流は、値ゼロにサーボ制御されてもよい。励磁機において、ステータに、インデューサ磁束のレベルが主電気機械内で最大となるように電流が供給されて、所与のレベルのトルクが送られるように主電気機械のステータ電流をできる限り小さく低減する。速度が増すと、励磁機のインデューサ電流は、主電気機械の磁束を低減するために小さくなり、起動力がインバータ602の電源電圧に比べて大きくなりすぎるのを防ぐ。
【0058】
回転速度が所定値に達すると、制御ユニット600はラインスイッチ64を開く。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンエンジンが始動した後は同期発電機モードで動作し、タービンエンジンの始動段階では電動機モードで動作するように設計された主電気機械(20)であって、ステータ巻線(24a、24b、24c)を備えるステータと、巻線ロータインデューサ(22)および端部が互いに電気的に接続されることでかご形を形成するダンパバー(222)を有するロータとを有する主電気機械(20)と、
ステータインデューサ(34)と、回転整流器(36)を介して主電気機械のロータインデューサに接続されるロータ巻線(32a、32b、32c)を有するロータとを有する励磁機(30)であって、主電気機械のロータと励磁機のロータとは、タービンエンジンのシャフトに機械的に結合するための共通のシャフト(12)に取り付けられるような励磁機(30)と、
主電気機械が同期発電機モードで動作しているときに、励磁機のステータインデューサにDCを供給するために励磁機のステータインデューサに接続される発電機調整ユニット(50)と、
主電気機械が電動機モードで動作しているときに、主電気機械のステータ巻線にACを送るために、始動接触器(64)を介して主電気機械のステータ巻線に接続される始動機調整ユニット(60)と
を備える、タービンエンジン始動発電機であって、
始動機調整ユニット(60)は、非同期電動機モードで始動するための第1の調整回路(608)と、同期電動機モードで始動するための第2の調整回路(610)と、始動接触器を介して主電気機械のステータ巻線にACを送るためのインバータ(602)と、インバータを第1または第2の始動調整回路によって制御するための電動機モードスイッチ(606)と、非同期電動機モードで始動フェーズを開始して、始動段階でシャフトの回転速度が所定の閾値を超えると非同期電動機モードから同期電動機モードに切り替えるように電動機モードスイッチを制御するための回路(600)とを含み、
ダンパバー(222)により形成されるかご形は、主電気機械のロータインデューサが始動トルクの発生に寄与することなく、非同期電動機モードで始動することができるような構造であることを特徴とする、始動発電機。
【請求項2】
ダンパバー(222)は、隣接する2本のダンパバー間の角度ピッチPは、0.8Pm<P<1.2Pmになるようにほぼ均一に角度配置され、ここでPmはダンパバーの全ての角度ピッチの平均値であることを特徴とする、請求項1に記載の始動発電機。
【請求項3】
主電気機械のロータの角度位置を表す情報を第2の始動調整回路(610)に提供するために、第2の始動調整回路(610)に接続される角度位置センサ(14)を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の始動発電機。
【請求項4】
それぞれの始動調整回路(608、610)は、主電気機械のステータ巻線のそれぞれの電流の大きさに関する情報を提供するセンサ(620a、620b、620c)に接続され、それぞれの始動調整回路は、ステータ巻線の電流の大きさを表す情報から、送られている実際の始動トルクを求めるために、また送られている実際の始動トルクを事前に記録されているトルク設定値にサーボ制御するようにインバータ(602)を制御するための信号を生成するために、計算ユニットを含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の始動発電機。
【請求項5】
始動機調整ユニット(60)は、シャフトの回転速度を表す情報を提供するセンサ(14)に接続され、第1の始動調整回路(608)および第2の始動調整回路(610)に、シャフトの回転速度に応じた始動トルクの変動の事前に記録されているプロファイルから得られたトルク設定値を送るための回路を含むことを特徴とする、請求項4に記載の始動発電機。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の始動発電機が装備されたタービンエンジン。
【請求項7】
タービンエンジンの始動段階において、ステータ巻線を備えるステータと巻線ロータインデューサおよび端部が互いに電気的の接続されることでかご形を形成するダンパバー(222)を有するロータとを有する主電気機械と、ステータインデューサと回転整流器(36)を介して主電気機械のロータインデューサに接続されるロータ巻線を有するロータとを有する励磁機(30)であって、主電気機械のロータと励磁機のロータとが共通のシャフト(12)に取り付けられるような励磁機(30)とを備えるタービンエンジン始動発電機の制御方法であって、
最初のタービンエンジンが静止している始動段階の第1のステップのときには、主電気機械(20)は、主電気機械のステータ巻線にACを注入することにより非同期電動機モードで作動され、主電気機械のロータインデューサが始動トルクの発生に寄与せずに、始動トルクはダンパバー(222)によって発生し、
始動段階の次の第2のステップのときには、主電気機械(20)は、主電気機械のステータ巻線にACを注入すると同時に、励磁機(30)のステータインデューサにDCを注入することで主電気機械のロータインデューサにDCを送ることにより同期電動機モードで作動され、
始動段階の第1のステップから第2のステップへの切り替えは、ロータの回転速度が所定の値に達すると行われることを特徴とする方法。
【請求項8】
ダンパバー(222)が2つの隣接するダンパバー間の角度ピッチPが0.8Pm<P<1.2Pmになるようにほぼ均一に角度配置され、ここでPmは、ダンパバーの全ての角度ピッチの平均値である主電気機械が使用される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
始動段階では、始動発電機は、主電気機械により送られたトルクをシャフトの回転速度に応じて予め決定された設定値にサーボ制御するように制御されることを特徴とする、請求項7または8に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−509525(P2013−509525A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535899(P2012−535899)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052252
【国際公開番号】WO2011/051598
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(502150878)イスパノ・シユイザ (44)