説明

タービンエンジン用の燃料システムおよび燃料システム内の燃料を管理する方法

【課題】ガスタービンエンジンおよび航空機に燃料を供給する、簡単で信頼性の高い燃料システムを提供する。
【解決手段】電動モータ26によって駆動される容積式ポンプ24は、燃料をタービンエンジンに送給するために、第1の方向に回転され、燃料をタービンエンジンから排出するために、第2の方向に回転される。第1の方向では、遮断逆止弁38は、第1の方向に回転するポンプ24によって生じた第1の差圧に応じて開弁する。遮断逆止弁38は、ポンプ24が第2の方向に回転すると、閉位置に付勢される。エコロジー逆止弁46は、第1の方向では、閉位置に付勢され、第2の方向では、ポンプ24によって生じた第2の差圧に応じて開弁する。これらの逆止弁は、第1の回転方向および第2の回転方向の各々において、容積式ポンプによって生じた圧力に応じて、自動的に開閉する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮断弁およびエコロジー(ecology)機能を用いる、ガスタービンエンジン用の燃料調量ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料調量ユニットは、所望の量の燃料を、例えば、航空機に用いられるガスタービンエンジンに供給するのに用いられる。航空機燃料システムは、数多くの要件を満足しなければならない。例えば、燃料流は、タービンエンジンの燃料要求を満たすように正確に調整されねばならない。燃料がタービンエンジンにおいて、もはや必要とされない場合、漏れを生じさせないように、燃料流を遮断させなければならない。通常、ソレノイドを用いて開閉される遮断弁が設けられる。ソレノイドは、多数のセンサに基づいて遮断弁を管理する制御装置によって制御される。遮断弁の制御に使用される構成要素が故障すると、結果として、誤動作および燃料漏れが生じる恐れがある。
【0003】
エンジン停止中に、タービンエンジンの燃焼器に燃料を供給するのに用いられるノズルを有するマニホールドから、燃料をドレン排出することも望ましい。環境への影響、火災の危険、およびノズルのコークス化を回避するために、燃料は、マニホールドおよびノズルからドレン排出される。この燃料はタンクに戻されるが、ノズルからの燃焼生成物が、この燃料内に持ち込まれてはならない。ノズルからの燃焼生成物は、汚染および腐食を引き起こす恐れがある。このために、エコロジー弁を用いて、燃料流を燃料タンクに戻す。エコロジー弁は、通常、ソレノイドまたは他のアクチュエータによって作動される弁から構成される。センサは、制御装置によって監視され、エコロジー弁の開閉に用いられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料調量ユニット内の各弁は、タービンエンジンが停止したとき、航空機の燃料供給系の圧力に耐えなければならない。さらに、燃料システムの構成要素のいずれかの故障によって、タービンエンジンへの不正確な燃料流を生じさせてはならない。従来技術における電磁式の遮断弁およびエコロジー弁、ならびに関連するセンサは、複雑であり、これらの弁およびセンサの故障による悪影響を回避するようにシステムを設計すると、通常、コストが高くなると共に、複雑さが増す。従って、燃料をガスタービンエンジンおよび航空機に供給する、簡単で信頼性の高い燃料システムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
タービンエンジン用の燃料システムが提供される。この燃料システムは、電動モータによって駆動される容積式ポンプを備える。ポンプは、燃料をタービンエンジンに送給するために、第1の方向に回転され、燃料をタービンエンジンから排出するために、第2の方向に回転される。第1の方向では、遮断逆止弁が、第1の方向に回転するポンプによって生じた第1の差圧に応じて開弁する。遮断逆止弁は、ポンプが停止するかまたは第2の方向に回転するとき、閉位置に付勢される。ポンプに電力が供給されない場合、燃料は、漏れを生じることなく、遮断される。急速な遮断は、適切な逆駆動電流またはブレーキ電流によって、行なわれるとよい。エコロジー逆止弁は、第1の方向では、閉位置に付勢され、第2の方向では、ポンプによって生じた第2の差圧に応じて開弁する。これらの逆止弁は、第1の回転方向または第2の回転方向の各々において、容積式ポンプによって生じた圧力に応じて、自動的に開閉する。このようにして、簡単で信頼性の高い弁を用いて、燃料システム内の燃料流を調節することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1に、燃料システム10が概略的に示されている。燃料システム10は、燃料源12からの燃料をエンジン16に供給する。燃料調量ユニット14は、燃料源12とエンジン16との間の燃料流を調節する。
【0007】
一例では、エンジン16は、航空機用のガスタービンエンジンである。エンジン16は、燃料を多連ノズル20に供給するマニホールド18を備える。ノズル20は、燃料を燃焼器に供給する。エンジン16の停止中、マニホールド18およびノズル20内の燃料を排出することが望ましい。
【0008】
供給ライン22が、燃料源12からの燃料をポンプ24に供給する。一例では、ポンプ24は、容積式ポンプである。容積式ポンプは、予測可能な量の燃料をポンプの回転ごとに送給する。ポンプの回転速度は、エンジン16によって必要とされる所望の量の燃料に依存して増減される。電動モータ26は、例えば、シャフト28を介して、ポンプ24を所望の方向に回転駆動する。制御装置30は、ポンプ24の回転方向および回転速度を指令する。
【0009】
ポンプ24は、第1のポート32および第2のポート34を備える。第1のポート32は、供給ライン22から燃料を受ける。バイパスライン36は、供給ライン22を遮断弁38に流体接続する。バイパスライン36は、第1のポート32および遮断弁38の一方の側と流体連通する。燃料回路40は、第1のライン42によって、遮断弁38の他方の側および第2のポート34と流体連通する。燃料回路40は、第2のライン44によって、エコロジー弁46を第2のポート34に流体接続する。送給ライン48は、第3のライン50および第4のライン52を用いて、遮断弁38およびエコロジー弁46をそれぞれマニホールド18に流体接続する。
【0010】
図1は、オフ状態のポンプ24を示している。供給ライン22、バイパスライン36および第1のポート32は、第1の圧力P1下にある。燃料回路40および第2のポート34は、第2の圧力P2下にある。送給ライン48は、第3の圧力P3下にある。ポンプがオフ状態にあるので、第1の圧力P1、第2の圧力P2および第3の圧力P3は、互いに概ね等しい。エンジン16への燃料漏れを防ぐために、ポンプ24がオフ状態にあるとき、遮断弁38およびエコロジー弁46は閉弁される。
【0011】
いくつかの例では、遮断弁38およびエコロジー弁46は、弁を開閉するのにいかなるアクチュエータも必要としない逆止弁である。逆止弁は、弁の両側の差圧に応じて、単純に開閉する。各逆止弁は、通常、シート56を有するハウジング54を備える。バネ60が、このシート56に対してボール58を付勢して閉弁する。逆止弁の両側の差圧がバネ60の付勢力を超えると、ボール58が、シート56から離れ、バネ60を圧縮する開位置に移動する。
【0012】
図2は、燃料をエンジン16に送給するために、第1の方向つまり順方向に駆動されるポンプを概略的に示している。この場合、第2のポート34の出口圧が、第1のポート32の入口圧を上回る。従って、第2の圧力P2が第1の圧力P1よりも大きくなり、この結果、遮断弁38の両側に第1の差圧が生じる。さらに具体的には、第2の圧力P2が、ボール58への付勢力に第1の圧力P1を加えた力を上回り、これによって、燃料回路40が、開弁した遮断弁38を通して、送給ライン48に流体接続される。遮断弁38の両側の圧力降下は、バネを支援し、エコロジー弁46を閉位置に保持する。
【0013】
エンジンの停止中、図3に概略的に示されるように、制御装置は、逆方向に回転するように、電動モータ26に指令する。ポンプ24が逆回転すると、第2のポート34が入口ポートになり、第1のポート32が出口ポートになる。エンジン停止シーケンス中の時期によるが、第3の圧力P3は、大気圧に向かって減少していく。ポンプ24の逆回転によって、燃料回路40に真空が生じ、その結果、エコロジー弁46の両側に第2の差圧が生じる。この第2の差圧は、第2の圧力P2および第3の圧力P3によって、もたらされる。第3の圧力P3は、第2の圧力P2よりも大きい。さらに具体的には、第3の圧力P3が、エコロジー弁46内のバネによる付勢力に第2の圧力P2を加えた力を上回ると有効であり、これによって、エコロジー弁が開弁する。
【0014】
遮断弁38の一方の側には、燃料回路40内の第2の圧力P2が作用する。この第2の圧力P2は、ポンプ24の入口圧力に対応する。バイパスライン36は、ポンプ24の出口圧下にある。このポンプ24の出口圧は、遮断弁38の他方の側に作用する第1の圧力P1に対応する。第1のポート32の出口圧力(P1)は、第2のポート34の入口圧(P2)よりも大きいので、遮断弁38は、閉位置に付勢される。これによって、遮断弁は、ポンプによって開弁の指令がなされない限り、燃料供給のどのような圧力によっても、開弁することができない。ポンプ24のこの逆回転によって、マニホールド18およびノズル20からの燃料が、開弁したエコロジー弁46を通して、燃料源12に排出される。
【0015】
本発明の例示的な実施形態を開示したが、当業者であれば、いくつかの実施形態が本発明の範囲内でなされてもよいことを認めるだろう。この理由から、本発明の真の範囲および内容を決定するには、特許請求の範囲を検討されたい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ポンプがオフ状態にある燃料システムの概略図である。
【図2】ポンプが第1の方向に回転している図1に示される燃料システムの概略図である。
【図3】ポンプが第1の方向と逆の第2の方向に回転している図1に示される燃料システムの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンエンジン用の燃料システムであって、
モータによって、互いに反対の第1の方向および第2の方向に回転するポンプであって、前記第1の方向が、燃料をタービンエンジンに送給する方向であり、前記第2の方向が、燃料を前記タービンエンジンの燃料マニホールドから排出する方向である、ポンプと、
前記第1の方向では前記ポンプによって生じた第1の差圧に応じて開弁し、前記第2の方向では閉位置に付勢される、遮断逆止弁と、
前記第1の方向では閉位置に付勢され、前記第2の方向では前記ポンプによって生じた第2の差圧に応じて開弁する、エコロジー逆止弁と、
を備える燃料システム。
【請求項2】
前記ポンプは、燃料を前記タービンエンジンに調量供給する容積式ポンプであることを特徴とする請求項1に記載の燃料システム。
【請求項3】
前記ポンプが、第1の圧力および第2の圧力をそれぞれ受ける第1のポートおよび第2のポートを備え、前記第1のポートおよび前記第2のポートが、前記第1の方向では、それぞれ、入口および出口をなし、前記第2の方向では、それぞれ、出口および入口をなすことを特徴とする請求項1に記載の燃料システム。
【請求項4】
前記遮断逆止弁に前記第1の圧力および前記第2の圧力を作用させることによって、前記第1の差圧が生じ、前記第1の方向では、前記第2の圧力が前記第1の圧力よりも大きいことを特徴とする請求項3に記載の燃料システム。
【請求項5】
前記第2の圧力が前記エコロジー逆止弁の一方の側に作用し、第3の圧力が前記エコロジー逆止弁の他方の側に作用し、前記第1の方向では、前記第3の圧力が、前記エコロジー逆止弁内の付勢力に前記第2の圧力を加えた力よりも小さいことを特徴とする請求項4に記載の燃料システム。
【請求項6】
前記第2の差圧が、前記エコロジー逆止弁の一方の側に作用する前記第2の圧力と前記エコロジー逆止弁の他方の側に作用する第3の圧力によって生じ、前記第2の方向では、前記エコロジー逆止弁内の付勢力に前記第2の圧力を加えた力が、前記第3の圧力よりも小さいことを特徴とする請求項3に記載の燃料システム。
【請求項7】
前記第2の方向では、前記第1の圧力が前記第2の圧力よりも大きく、前記遮断逆止弁が閉弁することを特徴とする請求項6に記載の燃料システム。
【請求項8】
前記第1のポートに供給ラインによって流体接続された燃料源を備え、該第1のポートが、バイパスラインによって、前記遮断逆止弁の一方の側に流体接続されることを特徴とする請求項3に記載の燃料システム。
【請求項9】
前記第2のポートを前記遮断逆止弁の他方の側に流体接続する燃料回路を備えることを特徴とする請求項8に記載の燃料システム。
【請求項10】
前記遮断逆止弁の他方の側が、燃料を前記タービンエンジンに供給する送給ラインに流体接続されることを特徴とする請求項9に記載の燃料システム。
【請求項11】
前記燃料回路が、前記第2のポートを前記エコロジー逆止弁の一方の側に流体接続することを特徴とする請求項10に記載の燃料システム。
【請求項12】
前記エコロジー逆止弁の他方の側が、前記送給ラインに流体接続されることを特徴とする請求項11に記載の燃料システム。
【請求項13】
ノズルを有するマニホールドを備えるタービンエンジンを備え、前記第1の方向では、燃料が前記ノズルに送給され、前記第2の方向では、燃料が前記ノズルから排出されることを特徴とする請求項1に記載の燃料システム。
【請求項14】
前記遮断逆止弁および前記エコロジー逆止弁の各々が、シートを有するハウジングと、前記閉位置にある場合にバネによって前記シートに付勢されるボールと、を備えることを特徴とする請求項1に記載の燃料システム。
【請求項15】
タービンエンジン用の燃料システム内の燃料を管理する方法であって、
(a)第1の差圧を生じさせるために、ポンプを第1の方向に回転させるステップと、
(b)燃料をタービンエンジンに供給するために、前記第1の差圧によって、遮断弁を自動的に開弁させるステップと、
(c)第2の差圧および第3の差圧を生じさせるために、前記ポンプを第2の方向に逆回転させるステップと、
(d)燃料を前記タービンエンジンから排出するために、前記第2の差圧によってエコロジー弁を自動的に開弁させ、かつ前記第3の差圧によって前記遮断弁を自動的に閉弁させるステップと、
を含む方法。
【請求項16】
前記遮断弁および前記エコロジー弁が、各々、逆止弁であることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ステップ(b)を実行している間に、前記エコロジー弁が閉弁されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ステップ(c)および前記ステップ(d)が、エンジン停止手順中に行なわれることを特徴とする請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−242502(P2010−242502A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1730(P2008−1730)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(500107762)ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション (165)
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
【住所又は居所原語表記】One Hamilton Road, Windsor Locks, CT 06096−1010, U.S.A.