説明

タービンシステム内の温度を測定するシステム及び方法

【課題】ガスタービン排ガス流全体の温度変動はHRSGの効率を低下させ、且つ/又は幾つかのHRSG部品の早期摩耗を引き起こすことがある。復水器内へと至る蒸気流全体の温度変動も効率を低下させることがある。熱交換器内の各種位置において、これら過剰な温度変動の検出を可能とする。
【解決手段】システム10は、タービン16、34から熱交換器26、40内へと至る流体流路内の複数の導管に向けて視野を配向するように構成された放射検出器アレイ52を含む。放射検出器アレイ52は、導管により発せられる熱放射に基づいて流体流路の多次元温度プロファイルを示す信号を出力するように構成される。このシステム10は更に、放射検出器アレイ52に通信可能に結合されたコントローラ54を含む。コントローラ54は信号に基づいて流体流路全体の温度変動を判定し、この温度変動と閾値とを比較するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の主題は、タービンシステム内の温度を測定するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
幾つかの発電システムは、燃料と圧縮空気との混合物を燃焼させて、高温燃焼ガスを生成するように構成されたガスタービンエンジンを含む。燃焼ガスは、タービンを通り、発電機等の負荷のための動力を生じる。効率を高めるために、幾つかの発電システムは、排熱回収ボイラ(HRSG)を用いて、タービンから排出される高温燃焼ガスからエネルギーを取り出す。一般に、HRSGでは、複数の導管を用いて、水等の流体を排ガスの流れに対して交差する方向(例えば実質的に垂直)に導く。排ガスが導管を流れると、熱が排ガスから水に伝達されることで、蒸気が生成される。この蒸気は、その後、蒸気タービンを通って回転運動を生じ、発電機等の負荷を駆動させる。蒸気は復水器へと排出され、復水器では蒸気が冷却され、HRSG用の水が生成される。例えば、復水器では、複数の導管を用いて、水等の流体を蒸気の流れに対して交差する方向(例えば実質的に垂直)に導く。蒸気が導管を流れると、蒸気の熱が水に伝達されることで、蒸気が凝縮されて水になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0143090号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
明らかなように、HRSG内へと至る排ガス流全体の温度変動は、蒸気発生プロセスの効率を低下させることがある。例えば、排ガス流の一部分が所望の温度よりも低温の場合は、幾つかの導管を通る水流が十分に加熱されず、蒸気を生成できないことがある。逆に、排ガス流の一部分が所望の温度よりも高温の場合は、一部の導管が過剰な蒸気圧に曝されることがある。このようなHRSG内の流れの変動は、HRSGの効率を低下させ、且つ/又は幾つかのHRSG部品の早期摩耗を引き起こすことがある。同様に、復水器内へと至る蒸気流全体の温度変動は、蒸気タービンの効率を低下させることがある。例えば、蒸気温度分布の変動により、蒸気タービンの最終段内の密度変動が誘発されることで、タービン効率が低下することがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
もとより特許を受けようとする発明に該当する幾つかの実施形態を以下に要約する。これらの実施形態に、特許を受けようとする発明の範囲を限定する意図はなく、これらの実施形態は、本発明に想到される形態の概要を提示することのみを意図している。勿論、本発明は、下記のものに類似の、或いは下記のものとは異なる様々な形態を包含する。
【0006】
第1の実施形態において、システムは、タービンから熱交換器内へと至る流体流路内の複数の導管に視野(ビューフィールド)を配向するように構成された放射検出器アレイを含む。この放射検出器アレイは、導管により発せられる熱放射に基づいて、流体流路の多次元温度プロファイルを示す信号を出力するように構成される。システムは更に、放射検出器アレイに通信可能に結合されたコントローラを含む。このコントローラは、信号に基づいて流体流路全体の温度変動を判定し、この温度変動を閾値と比較するように構成される。
【0007】
第2の実施形態において、システムは、第1の流体流を下流方向に供給するように構成されたタービンと、この第1の流体流を受け取って第1の流体から第2の流体に熱を伝達するように構成された熱交換器とを含む。熱交換器は、第1の流体流を介して第2の流体を導くように構成された複数の導管を含む。システムは更に、第1の流体の流れ方向に対して交差する方向に、熱交換器の断面に向かって配向された放射検出器アレイを含む。放射検出器アレイは、導管により発せられる熱放射に基づいて、断面の多次元温度プロファイルを示す信号を出力するように構成される。
【0008】
第3の実施形態において、方法は、放射検出器アレイを用いて、タービンから熱交換器内へと至る流体流路内の複数の導管から熱放射の測定値を得るステップを含む。この方法は更に、測定値に基づいて流体流路の多次元温度プロファイルを決定するステップを含む。この方法は更に、多次元温度プロファイルに基づいて流体流路全体の温度変動を判定するステップと、この温度変動を閾値と比較するステップとを含む。
【0009】
全図面を通じて同様の符号で同様の部品を示す添付図面を参照しながら下記の発明を実施するための形態を読むと、本発明のこれら及びその他の特徴、態様、及び利点の理解が深まるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ガスタービン、蒸気タービン、HRSG、復水器、及びタービンから熱交換器内へと至る流体流路全体の過剰な温度変動を検出するように構成された熱測定システムを有する、複合サイクル発電システムの実施形態の概略図である。
【図2】ガスタービンからHRSG内へと至る流体流路に向かって配向された熱測定システムの実施形態の概略図である。
【図3】流体導管の上流のHRSGの断面に向かって配向された熱測定システムの実施形態の概略図である。
【図4】熱放射検出器アレイを用いて流体導管の熱放射を測定することにより、流体流路全体の過剰な温度変動を検出する方法の実施形態の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の1つ以上の具体的な実施形態を説明する。これらの実施形態の説明を簡単にするために、本明細書では、実際の実施形態の特徴の全てを記載しないことがある。こうしたいかなる実際の実施形態の開発においても、いかなる工学的又は設計上の計画においても、実施形態ごとに異なり得るシステム上及びビジネス上の制約に合わせるといった、開発者の特定の目的を達成するための多くの選択が必要であることを理解されたい。また、このような開発努力は、煩雑で時間がかかるものであるが、本開示による利益を享受する当業者にとっては、日常的な設計、製作、製造上の仕事であることも理解されたい。
【0012】
本発明の様々な実施形態の要素を説明するにあたり、数詞がないことや「前記」などの冠詞は、その要素が1つ以上存在し得ることを意図している。「備える」「含む」「有する」といった表現は、包括的な意味で、列挙した要素以外にも追加の要素が存在し得ることを意図している。
【0013】
HRSG内へと至る排気流全体の温度変動は、蒸気発生プロセスの効率を低下させることがある。例えば、排気流の一部分が所望の温度よりも低温の場合は、幾つかの導管を通る水流が十分に加熱されず、蒸気を生成できないことがある。逆に、排気流の一部分が所望の温度よりも高温の場合は、幾つかの導管が過剰な蒸気圧に曝されることがある。このようなHRSG内の流れの変動は、実質的に温度分布が一様な(例えば温度変動が摂氏約25、20、15、10、7、5又は3度以下の)排気流を受け入れるHRSGと比べて、HRSGの効率を低下させ、且つ/又は幾つかのHRSG部品の早期摩耗を引き起こすことがある。例えば、過剰な蒸気圧及び/又は熱応力は、導管、弁、継手及び/又はHRSG内のその他の部品の耐用寿命を短縮することがある。したがって、HRSG内へと至る排気流の温度プロファイルを監視して、過剰な温度変動(例えば摂氏約3、5、7、10、15、20又は25度以上の温度変動)を検出することが望ましい。
【0014】
同様に、蒸気タービンから復水器内へと至る蒸気流全体の温度変動は、蒸気タービンの効率を低下させることがある。例えば、蒸気温度分布の変動は、蒸気タービンの最終段内の密度変動を誘発し、これによってタービン効率が低下することがある。加えて、こうした密度変動は、タービンブレードが密度の異なる領域を通過することで、ブレードが過剰に摩耗する要因となる。このため、蒸気温度変動は、温度分布が実質的に一様な(例えば温度変動が摂氏約25、20、15、10、7、5又は3度以下の)蒸気流を出力する蒸気タービンと比べて、蒸気タービン効率を低下させ、且つ/又は幾つかの蒸気タービン部品の早期摩耗を引き起こすことがある。したがって、復水器内へと至る蒸気流の温度プロファイルを監視して、過剰な温度変動(例えば摂氏約3、5、7、10、15、20又は25度以上の温度変動)を検出することが望ましい。
【0015】
本開示の実施形態では、熱放射検出器アレイを用いて、流体流路を通り延在する導管の熱放射を測定することによって、タービンから熱交換器内へと至る流体流路全体の過剰な温度変動をはじめとする温度変動を検出できる。例えば、幾つかの実施形態では、ガスタービンからHRSG内へと至る排気流全体及び/又は蒸気タービンから復水器内へと至る蒸気流全体の温度変動を検出できる。このような構成により、流体流路の二次元断面全体を監視し、タービン/熱交換器の部品の効率低下及び/又は早期摩耗を引き起こし得る動作状態の検出が容易になる。例えば、幾つかの実施形態は、タービンから熱交換器内へと至る流体流路内の複数の導管に向かって配向された、放射検出器アレイを含む。この放射検出器アレイは、導管により発せられる熱放射に基づいて流体流路の多次元(例えば二次元又は三次元)温度プロファイルを示す信号を出力するように構成される。加えて、熱放射検出器アレイに通信可能に結合されたコントローラが、この信号に基づいて(例えば、温度変動を判定し、温度変動と閾値とを比較することにより)流体流路全体の過剰な温度変動を検出するように構成される。例えば、コントローラを、少なくとも1つの導管の温度と流体流路の平均温度との差が閾値を超える場合に、過剰な温度変動を検出するように構成してもよい。或いは、コントローラを、第1の導管の温度と第2の導管の温度との差が閾値を超える場合に、過剰な温度変動を検出するように構成してもよい。熱放射検出器アレイは、流体流路の二次元断面全体を監視するので、流体流内の実質的に全ての温度変動を検出できる。こうして、オペレータは、過剰な温度変動の通知を受けることができ、且つ/又は、こうした状態がタービン及び/又は熱交換器に悪影響を及ぼす前に、コントローラで、熱交換器を介した流体の流れを停止させることができる。結果として、タービン/熱交換器の耐用寿命を延長できるので、発電システムの運転コストを削減できる。
【0016】
図1は、ガスタービン、蒸気タービン、HRSG、及び復水器を有する複合サイクル発電システム10の実施形態の概略図である。以下、タービンから熱交換器内へと至る流体流路全体の過剰な温度変動を検出するように構成された熱測定システムの実施形態のコンテクストを示す目的で、システム10について説明する。以下に説明する熱測定システムは、その他の発電システム、タービンシステム、処理プラント、又は流体流を熱交換器に供給するタービンを含む、その他あらゆるシステム内において、過剰な温度変動の検出に利用可能であることを理解されたい。本実施形態において、システム10は、燃焼器14、タービン16、駆動シャフト18、及び圧縮機20を有するガスタービンエンジン12を含む。燃焼器14は、燃料ノズルから圧力下で噴射される天然ガス等の燃料を受け取る。この燃料が圧縮空気と混合され、燃焼器14内で燃焼することにより、高温の加圧排ガスが発生する。燃焼器14は、この排ガスをタービン16の排気口へと導く。燃焼器14からの排ガスがタービン16を通ると、タービン16のブレードが駆動されて回転し、駆動シャフト18がガスタービンエンジン12の軸に沿って回転する。図示のように、駆動シャフト18は、圧縮機20を含むガスタービンエンジン12の様々な部品に接続可能である。
【0017】
駆動シャフト18は、タービン16と、ブレードを含む圧縮機20のロータとを接続する。これにより、タービン16内のタービンブレードが回転することで、タービン16と圧縮機20とを接続する駆動シャフト18が、圧縮機20内のブレードを回転させる。圧縮機20のブレードが回転することにより、圧縮機20は、吸気口から受け取った空気を圧縮する。圧縮空気は、その後、燃焼器14に送られ、燃料と混合され、燃焼を促進する。駆動シャフト18は、発電所で電力を生成する発電機等の定置負荷等である、負荷22にも接続される。実際には、負荷22は、ガスタービンエンジン12の回転出力により動力供給される任意の適当な装置であってよい。
【0018】
ガスタービンエンジン12からの排ガス24は、HRSG26へと導かれる。以下に詳述するように、HRSG26は、HRSG26を通る排ガス24の流れに対して交差する方向(例えば実質的に垂直)に、水等の二次流体を導くように構成された複数の導管を含む熱交換器である。排ガス24が導管を流れると、熱が排ガスから水に伝達され、蒸気が発生する。加えて、排ガスの温度が大幅に低下する。HRSG26を通過した後、冷却された排ガスは、矢印30で示すように、排気筒28から大気中に放出される。図示のように、発生した蒸気32は、蒸気タービン34へと導かれる。
【0019】
高圧蒸気32が蒸気タービン34を通過すると、タービン34内のブレードが駆動されて回転し、第2の負荷36を駆動させる。なお、本実施形態は、2つの負荷22及び36を含むが、別の実施形態では、ガスタービンエンジン12及び蒸気タービン34が同じ負荷に結合されていてもよい。蒸気が蒸気タービン34を通過すると、圧力が低下して、低圧蒸気38がタービン34から放出される。図示のように、低圧蒸気38は復水器40内に流入し、蒸気が凝縮される。以下に詳述するように、復水器40は、蒸気の流れに対して交差する(例えば実質的に垂直な)方向に水等の二次流体を導くように構成された複数の導管を含む熱交換器である。蒸気が導管を流れると、蒸気の熱が水42に伝達されることで、蒸気が凝縮されて水44になる。水44は、HRSG26に戻り、排ガス24で加熱されて、より高圧の蒸気32が生成される。冷却水42は、復水器40内で加熱され、熱水46となって流出する。熱水46は、この熱水46を冷却して復水器40用の冷水42を生成する冷却塔48へと導かれる。なお、本実施形態においては、高圧蒸気32が蒸気タービン34へと導かれるが、別の実施形態では、高圧蒸気32を工業プロセス(例えばガス化)に利用した後で、低圧蒸気38を復水器40に戻してもよい。
【0020】
図示のように、発電システム10は、タービンから熱交換器内へと至る流体流路全体の過剰な温度変動等の温度変動を検出するように構成された熱測定システム50を含む。本実施形態において、熱測定システム50は、図示の熱放射検出器アレイ52等の、タービンから熱交換器内へと至る流体流路に向かって各々が配向される2つの放射検出器アレイを含む。特に、一方の熱放射検出器アレイ52は、ガスタービン16からHRSG26に流入する排ガス流24に向かって配向される。加えて、第2の熱放射検出器アレイ52は、蒸気タービン34から復水器40内へと至る蒸気流38に向かって配向される。熱放射検出器アレイ52は、HRSG26又は復水器40内の導管により発せられる熱放射に基づいて、流体流路の多次元(例えば二次元)温度プロファイルを示す信号を出力するように構成される。例えば、以下に詳述するように、各熱放射検出器アレイ52は、流体流路の異なる領域に向けて各々が配向される複数のサーモパイル素子から成ってよい。各サーモパイル素子は、それぞれの領域の温度を出力するように構成されているので、流体流路の二次元温度プロファイルを構築できる。幾つかの実施形態において、各熱放射検出器アレイ52は、流体流の方向に対して交差する(例えば実質的に垂直な)方向に、熱交換器の断面に向かって配向される。このような実施形態では、流体流路の二次元断面全体を監視することができるので、流体流路全体の実質的にあらゆる温度変動を確実に監視できる。更に、熱放射検出器アレイ52は、流体と直接接触することなく導管温度を監視可能なので、検出器アレイ52をHRSG26及び復水器40の外側に設置することで、検出器アレイ52を高温の流体流から保護し、検出器アレイ52の耐用寿命を実質的に延ばすことができる。
【0021】
明らかなように、熱放射検出器アレイ52は、物体からの電磁エネルギーを測定することで、その物体の温度を判定する。例えば、検出器アレイ52は、赤外スペクトルの範囲内の波長を有する熱放射を測定できる。以下に詳述するように、或る赤外線放射の強さが物体の温度に比例することがある。幾つかの実施形態において、熱放射検出器アレイ52は、このような放射を検出して、温度を示す信号を出力するように構成される。また、明らかなように、様々な熱放射検出器アレイの構成を用いて、タービンから熱交換器へと至る流体流路の二次元温度プロファイルを決定できる。前述のように、検出器アレイ52は、一連のサーモパイル素子から成る。明らかなように、サーモパイルは、より強い信号出力を得るために直列接続された、複数の熱電対から成る。熱電対は、熱接点と冷接点との間で起電力(emf)を生じることによってこれらの接点間の温度差を測定する。例えば、熱接点を熱交換器導管の方に向けて熱放射を測定し、冷接点の温度が周囲温度と実質的に等しくなるように冷接点をヒートシンクに結合させる。熱電対が直列に接続されているので、サーモパイルは全ての熱電対のemfを総計して、より高い電圧出力を供給する。サーモパイル素子の配列を設置することで、各サーモパイル素子がそれぞれの監視領域の温度を示すことを用いて、流体流路の二次元温度プロファイルを生成できる。幾つかの実施形態において、サーモパイルアレイは、各サーモパイル素子が装置の表面上に形成された、単一の固体装置であってよい。別の実施形態では、放射パイロメーター、赤外線検出器(例えば電荷結合素子(CCD)、焦点面アレイ素子(FPA)等)、又はタービンから熱交換器へと至る流体流路の二次元温度プロファイルを出力するように構成されたその他の熱放射検出器アレイを用いてよい。
【0022】
本実施形態において、各熱放射検出器アレイ52は、コントローラ54に通信可能に結合される。コントローラ54は、各熱放射検出器アレイ52により出力される二次元温度プロファイル出力を示す信号に基づいて(例えば温度変動を判定し、温度変動と閾値とを比較することにより)流体流路全体の過剰な温度変動を検出するように構成される。前述のように、流体流全体の過剰な温度変動は、発電システム10の効率を低下させ、且つ/又はタービン及び/又は熱交換器内の幾つかの部品を早期摩耗させることがある。そのため、コントローラ54は、各熱放射検出器アレイ52により測定される二次元温度プロファイルを監視して、流体流全体の温度変動がタービン/熱交換器の設計基準を超えるか否かを判定する。
【0023】
本実施形態では、単一の二次元アレイが各熱交換器(例えばHRSG26及び復水器40)に向かって配向されるが、別の実施形態では複数の二次元アレイを用いて熱交換器の様々な部分を監視できることを理解されたい。例えば、熱放射検出器アレイ52は、流体流の方向に沿って熱交換器の様々な二次元断面に向かって配向される、複数の二次元アレイを含み得る。幾つかの実施形態では、二次元アレイが流れの方向に沿って緊密に離間しており、これによって、コントローラ54が流体流路の三次元温度プロファイルを生成し、熱交換器内の実質的にあらゆる位置において、過剰な温度変動の検出が可能である。
【0024】
本実施形態は更に、コントローラ54に通信可能に結合されたユーザーインターフェース56を含む。ユーザーインターフェース56は、熱放射検出器アレイ52の各素子により検出された温度を表示するように構成された、数字表示器及び/又は温度を時間の関数として表示するように構成されたグラフィカルインターフェースを含み得る。このようにして、オペレータは、温度プロファイルを監視し、過剰な温度変動を確認できる。加えて、ユーザーインターフェース56は、オペレータに過剰な温度変動を警告するように構成された視覚及び/又は可聴アラームを含み得る。例えば、コントローラ54は、流体流路内のある導管の温度が平均流体流路温度よりも実質的に高いと判定されると、可聴及び/又は視覚アラームを作動させる。幾つかの実施形態において、コントローラ54は、ガスタービンシステム10に通信可能に結合されており、過剰な温度変動の検出に応答して、熱交換器を介した流体の流れを自動的に減少又は停止させるように構成される。例えば、コントローラ54は、ガスがHRSG26をバイパスするように、排ガス24の流路を調節できる。同様に、過剰な温度変動が復水器40内で検出されると、蒸気タービン34の蒸気流32を減少又は停止させることができる。
【0025】
図2は、ガスタービン16からHRSG26内へと至る流体流路に向かって配向される熱測定システム50の実施形態の概略図である。図示のように、排ガス24は、下流方向58にHRSG26内へと流入する。HRSG26は、下流方向58に対して交差する方向(例えば実質的に垂直)に、水等の二次流体を導くように構成された複数の導管60を含む。排ガス24が導管60を通ると、熱が排ガス24から水に伝達され、蒸気が生成される。本実施形態では、水44は、第1のマニホルド62から導管60に供給され、蒸気32は第2のマニホルド64から放出される。前述のように、蒸気32は、負荷36を駆動させるべく蒸気タービン34へと導かれ、冷却された排気は、排気筒28へと導かれる。図示のHRSG26内には、6つの導管60が用いられているが、明らかなように、その他のHRSG構成では、それよりも大幅に多数の導管を使用可能である。幾つかの実施形態では、導管60は、下流方向58且つ流路に対して垂直な方向に沿って設置される。更に他の実施形態において、HRSG26は、別途の蒸気タービン用の蒸気を生成するように構成された複数の各段を含み得る。図示の熱放射検出器アレイ52は、ガスタービン16からHRSG26内へと至る流体流路に向かって配向されるが、明らかなように、同様の構成を用いて蒸気タービン34から復水器40内へと至る流体流路の二次温度プロファイルを監視することもできる。
【0026】
図示の構成において、熱放射検出器アレイ52は、HRSG26の外側に配置されており、これによって、熱測定システム50はHRSG26を通過する高温の排ガス24から保護されている。図示のように、HRSG26は、熱放射検出器アレイ52がHRSG26内の導管60により発せられる熱放射を受け取るように構成された覗き窓66を含む。明らかなように、覗き窓66はアレイ52により測定される波長を実質的に透過させる材料で構成される。例えば、検出器アレイ52が赤外線スペクトルの範囲内の熱放射を監視するように構成される場合、覗き窓66は、例えば赤外線放射を実質的に透過させるゲルマニウム又はケイ素等の材料により構成される。明らかなように、材料の選択は、HRSG26を通る流体流の予想温度にも依存し得る。幾つかの実施形態では、覗き窓66は、摂氏約500、600、700、800、900、1000、1100、又は1200度以上の温度よりも高温の流体温度に曝されることがある。そのため、透過性材料は、こうした温度に耐えるように選択される。覗き窓66により、検出器アレイ52をHRSG26の外側に配置できるので、熱放射検出器アレイ52は、高温の排ガスに曝されることなく、タービン16からHRSG26内へと至る流体流路の二次元温度プロファイルを測定することができ、したがって、検出器アレイ52の運用寿命を実質的に延ばすことができる。別の実施形態では、検出器アレイ52をHRSG26内の断熱容器の内部に配置してもよい。こうした実施形態では、断熱容器に結合された覗き窓66により、検出器アレイ52が流体流から分離されていることによって、アレイ52を過剰な温度から保護する。
【0027】
本実施形態では、フィルタ68及びレンズ70が覗き窓66と熱放射検出器アレイ52との間に配置される。幾つかの実施形態では、検出器アレイ52は複数のサーモパイル素子を含んでおり、導管60により発せられる熱放射を測定できる。こうした実施形態において、各サーモパイル素子は、より強い出力信号を供給するために、直列に電気接続された複数の熱電対を含む。明らかなように、サーモパイル素子は、様々な波長の熱放射を検出できる。例えば、幾つかのサーモパイル素子は、約0.8〜40ミクロンに亘る赤外線スペクトルの範囲内の電磁波長を検出できる。これもまた明らかなように、赤外線スペクトルの範囲内の特定の部分集合を構成する波長が温度測定に好適なことがある。そのため、帯域フィルタ68を用いて、検出器アレイ52に入射する波長範囲を制限できる。例えば、幾つかの実施形態において、帯域フィルタ68は、約2〜20、4〜18、6〜16、8〜14、又は約7.2〜12.4ミクロンの範囲を外れた波長を有する電磁放射を遮断するように構成される。そのため、フィルタ68は、測定された温度に比例する強さの信号を各サーモパイル素子が出力するに適した波長範囲を有する熱放射を、検出器アレイ52まで通過させる。検出器アレイ52は、サーモパイル素子からの信号を収集し、タービン16からHRSG26内へと至る流体流路の二次元温度プロファイルを示す信号をコントローラ54に出力する。
【0028】
明らかなように、別の実施形態では、その他の波長範囲を有するその他の帯域フィルタを用いてもよい。また、幾つかの実施形態では、ハイパスフィルタ又はローパスフィルタを用いても、フィルタを除去してもよい。また別の実施形態では、フィルタを覗き窓66に組み込んでもよい。更に、本実施形態では、サーモパイル素子を用いた熱放射検出器アレイ52を用いているが、明らかなように、別の実施形態ではCCD、FPA、又はパイロメーター等のその他の検出器素子を使用してもよい。
【0029】
本発明の熱測定システム50は更に、熱放射を検出器アレイ上に集束させるように構成されたレンズ70等の光学合焦装置を含む。明らかなように、レンズ70は、プラスチック又はガラス等の任意の適当な材料により構成される。幾つかの実施形態では、レンズ70をフィルタ68と組み合わせて単一の要素にできる。また別の実施形態では、レンズ70を除去して、熱放射を熱放射検出器アレイ52上へと直接通過させるようにしてもよい。
【0030】
本実施形態は更に、図示の鏡72等の第2の光学合焦装置を含む。鏡72は、導管60からの熱放射を熱放射検出器アレイ52上へと導くように構成される。幾つかの実施形態において、鏡72は、基板(例えばガラス、プラスチック等)、及び基板上に設けられた反射コーティング(例えば銀、クロム等)を含み得る。或いは、鏡72を、研磨されたステンレス鋼等の反射材料により形成してもよい。本実施形態では、凹面鏡72を用いて所望の視野74を得る。鏡72の形状と熱放射検出器アレイ52の位置により、角度76を有する視野74が得られる。例えば、幾つかの実施形態において、角度76は、約5、10、20、40、60、80、100、120、140、又は160度以上であってよい。幾つかの実施形態において、熱放射検出器アレイ52をHRSG26の断面78全体に向けて配向することで、流体流路の二次元温度プロファイルを決定してもよい。そのため、角度76は、視野74が所望の測定位置においてHRSG断面78全体を含むように選択される。結果として、熱測定システム50は、流体流路内のあらゆる温度変動を検出できる。明らかなように、別の実施形態では、凸面鏡又は実質的に平面状の鏡を用いて、熱放射を検出器アレイ52に向けてもよい。また別の実施形態では、鏡72を除去してもよく、熱放射検出器アレイ52を流体流路に向けてもよい。このような実施形態において、レンズ70を設ける場合、このレンズ70は、レンズ70の形状及び光学的特性に基づいた所望の視野74の確立に役立つ。
【0031】
前述のように、本発明の熱放射検出器アレイ52は、検出された熱放射を出力信号に変換するように構成されたサーモパイル素子を含む。サーモパイル素子は、直列に接続された複数の熱電対を含むので、サーモパイル素子は、それぞれの各素子の視野内の領域の温度に比例する強さを有する電気信号を出力する。検出器アレイ52は、サーモパイル素子からの信号を収集し、コントローラ54に対して、タービン16からHRSG26へと至る流体流路の二次元温度プロファイルを示す信号を出力する。コントローラ54はこの信号を受け取り、信号に基づいて(例えばルックアップテーブル、アルゴリズム等により)HRSG断面78の二次元温度プロファイルを決定するように構成される。本実施形態において、コントローラ54は、ディスプレイ80とアラーム82を含むユーザーインターフェース56に通信可能に結合される。ディスプレイ80は、各サーモパイル素子により検出された温度を時間の関数として表したグラフを提示するように構成される。
【0032】
図示のように、ディスプレイ80は、時間を表すx軸86と温度を表すy軸88とを有するグラフ84を含む。前述のように、検出器アレイ52の各サーモパイル素子は、その素子の視野内の領域の温度を示す信号を出力するように構成される。本実施形態では、グラフ84は、各領域の温度を時間の関数として表す一連の曲線90を含む。本実施形態のグラフ84は、4つの曲線90を含んでおり、熱放射検出器アレイ52が4つのサーモパイル素子を含むことがわかる。しかし、明らかなように、検出器アレイ52に更に多数又は少数の素子を含めてもよく、その結果としてグラフ84上に表示される曲線90が、更に多数又は少数になり得る。
【0033】
グラフ84は更に、流体流路の平均温度を示す破線92を含む。前述のように、熱放射検出器アレイ52をHRSG26の断面78全体に向けて、流体流路の二次元温度プロファイルを監視できる。各領域(例えば各サーモパイル素子の視野内の部分)内の温度の平均をとることにより、流体流路の平均温度を計算できる。幾つかの実施形態では、HRSGが、温度変動が所定の平均流体温度範囲内の流体流を受け取ることが望まれる。そのため、コントローラ54を、各領域の温度を平均温度と比較して、過剰な温度変動があるかどうかを決定するように構成してもよい。このような実施形態では、グラフ84は、所望の流体温度範囲に対応する下限閾値94と上限閾値96とを含む。例えば、幾つかのHRSGは、平均流体温度の範囲が摂氏25、20、15、10、7、5、又は3度以内の流体を受け取ることが望まれることがある。このような構成では、コントローラ54は、或る領域内の温度が上限閾値96よりも高温又は下限閾値94よりも低温の場合に、HRSG26内で過剰な温度変動があるとみなす。或いは、検出温度と平均温度との間におけるパーセント差に基づいて、上限閾値96及び下限閾値94を定義してもよい。例えば、幾つかの実施形態において、HRSG26は、平均流体温度の15%、12%、10%、8%、6%又は4%以下の範囲内の流体を受け取ることが望まれる場合がある。
【0034】
また別の実施形態において、コントローラ54は、領域間の温度差と閾値とを比較することにより、タービン16からHRSG26内へと至る流体流路内の過剰な温度変動を検出するように構成される。こうした実施形態において、ディスプレイ80は、領域の最高検出温度と領域の最低検出温度との差を示す単一の曲線を表示するように構成される。グラフには、所望の最大温度変動を示す閾値も含めてよい。最高検出温度と最低検出温度の間の差が閾値を超える場合、コントローラ54は流体流路内で過剰な温度変動があるとみなす。例えば、幾つかのHRSG構成において、過剰な温度変動を示す閾値は、摂氏約25、20、15、10、7、5、又は3度以下である。或いは、閾値を最低検出温度と最高検出温度の間のパーセント差として定義してもよい。このような構成において、閾値は30%、25%、20%、15%、10%、又は5%以下のパーセント差に対応可能である。明らかなように、別の実施形態において、過剰な温度変動をその他の統計学的方法(例えば標準偏差比較)により検出してもよい。
【0035】
過剰な温度変動が検出されると、コントローラ54は、ユーザーインターフェース56内のアラーム82を作動させる。前述のように、アラーム82は、検出された状態をオペレータに警告するように構成された、可聴アラーム及び/又は視覚アラームであってよい。オペレータは、その後、適当な是正処置を講じて、流体温度変動を解消する。加えて、コントローラ54及び/又はユーザーインターフェース56は、発電システム10に通信可能に結合されており、過剰な温度変動の検出と同時にHRSG26を通る流体の流れを減少させるように且つ/又は停止させるように構成される。例えば、幾つかの実施形態において、温度変動が第1の閾値を超える場合は、コントローラ54が、タービンエンジン出力を低下させることで、HRSG26を通る流れを減少させる。温度変動が第1の閾値を上回る第2の閾値を超える場合は、コントローラ54が、HRSG26をバイパスさせる弁を作動させることで、HRSG26を通る流れを停止させる。明らかなように、HRSG26をバイパスさせると、発電効率が低下する可能性があるものの、発電システム10から消費者に電力を供給することはできる。
【0036】
HRSG26を参照して熱測定システム50を説明するが、熱測定システム50を用いて、その他の熱交換器内へと至る流体流路全体の温度変動の検出を行えることを理解されたい。例えば、熱測定システム50を用いて、復水器40内の温度変動を検出できる。HRSG26と同様に、復水器40は、復水器40を通る蒸気の流れに対して垂直な方向に水等の二次流体を導くように構成された複数の導管を含む。蒸気が導管を流れると、蒸気の熱が水42に伝達されることで蒸気が凝縮し、水44になる。前述のように、蒸気温度分布の変動は、蒸気タービン34の最終段内の密度変動を誘発するので、タービン効率を低下させ、且つ/又はタービンブレードの過剰な摩耗に繋がることがある。熱測定システム50が過剰な温度変動を検出することにより、蒸気タービン34及び復水器40を効率的に運転することができ、且つ/又は蒸気タービン部品の耐用寿命を延長する一助となる。
【0037】
例えば、過剰な温度変動が蒸気流38において検出されると、コントローラ54は、ユーザーインターフェース56のアラーム82を作動させ、検出された状況をオペレータに警告する。オペレータは、その後、適当な是正処置を講じて、流体温度変動を解消する。加えて、コントローラ54及び/又はユーザーインターフェース56は、発電システム10に通信可能に結合されており、過剰な温度変動の検出と同時に復水器40を通る流体流を減少させること及び/又は停止させることができる。例えば、幾つかの実施形態において、温度変動が第1の閾値を超える場合は、コントローラ54が蒸気タービン34への蒸気流32を減少させる。温度変動が第1の閾値を上回る第2の閾値を超える場合は、コントローラ54が、蒸気タービン34をバイパスさせる弁を作動させることで、蒸気タービン34を通る流れを停止させる。明らかなように、蒸気タービン34をバイパスさせると、発電効率が低下する可能性があるものの、発電システム10から消費者に電力を供給することはできる。
【0038】
図3は、流体導管60の上流においてHRSG26の断面に向かって配向された熱測定システム50の実施形態の概略図である。前述のように、排ガス24は、下流方向58にHRSG26に流入する。HRSG26は、下流方向58に対して交差する(例えば実質的に垂直な)方向に水等の二次流体を導くように構成された複数の導管60を含む。排ガス24が導管60を流れると、熱が排ガス24から水に伝達されることで、蒸気が生成される。本実施形態では、水44が第1のマニホルド62から導管60に供給され、蒸気32が第2のマニホルド64から放出される。その後、蒸気32は蒸気タービン34の方へと流れ、冷却された排ガスは排気筒28の方へと流れる。本実施形態では4つの導管60を用いるが、別の実施形態ではより多数又は少数の導管を用いてもよいことを理解されたい。例えば、幾つかのHRSG26は、約50、75、100、125、150、175、又は200以上よりも多数の導管60を含み得る。
【0039】
図示の熱放射検出器アレイ52は、導管60の上流の流体流路断面全体が検出器アレイ52の視野74の範囲内に含まれるように、導管60の方へと向けられている。このようにして、検出器アレイ52で導管60の上流の流体流路の二次元温度プロファイルを監視することにより、流体流内の実質的にあらゆる温度変動を確実に検出できる。前述のように、熱放射検出器アレイ52は、流体流断面の様々な領域に向かって配向される複数のサーモパイル素子98を含み得る。このような構成では、熱放射検出器アレイ52が各領域の温度を示す信号を出力することにより、コントローラ54で流体流路の二次元温度プロファイルを構築する。
【0040】
本実施形態において、熱放射検出器アレイ52は、4×4のマトリックス状のサーモパイル素子98を含む。この構成では、熱放射検出器アレイ52の各列をそれぞれの導管60に向かって配向することにより、各導管の温度を個別に監視できるようになっている。しかし、別の熱放射検出器アレイ52は、N×N又はM×Nのマトリックスを形成する、より多数又は少数のサーモパイル素子98を含み得ることを理解されたい。例えば、幾つかの熱放射検出器アレイ52は約1〜1000以上の行及び/又は約1〜1000以上の列を含み得る。加えて、図示の放射検出器アレイは、矩形のアレイを成す素子98を含むが、幾つかの熱放射検出器アレイ52は円形、楕円形、又は多角形のアレイを成す素子98を含み得ることを理解されたい。また別の熱放射センサ(例えばCCD、FPA、パイロメーター等)で、熱放射検出器アレイ52の素子を形成してもよいことも理解されたい。また、前述のように、検出器アレイ52に、流体流路の様々な二次元領域に向かって配向された複数のN×N又はM×Nの素子アレイを含めることにより、コントローラ54で流体流路の三次元温度プロファイルを生成するようにしてもよいことを理解されたい。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個以上の二次元アレイを流れの方向に沿って緊密に離間させることで、L×N×N又はL×M×N個の三次元検出器アレイ52を構築できる。
【0041】
明らかなように、熱測定システム50の全体的な感度は、その他のファクターの中でもとりわけ、サーモパイル素子98の感度、熱放射検出器アレイ52の精度、システム50内の光学ノイズ及び/電気ノイズ、コントローラ54内の信号コンディショナの精度、熱放射センサ光学系の品質、各サーモパイル素子の視野、及び/又は温度を計算するためにコントローラ54が用いる技術に依存することがある。例えば、幾つかの実施形態において、熱測定システム50は、摂氏約2、1、0.75、0.5、又は0.25度以下の温度変動を識別可能である。そのため、熱測定システム50で、HRSG効率が実質的に低下する前に流体流内の熱変動を検出することにより、発電システム10の効率を維持することができる。熱測定システム50の感度は、少なくとも部分的には各サーモパイル素子98の視野に依存するので、より多数のサーモパイル素子98を用いることによって熱測定システムの感度を高めることができることを理解されたい。このようにして、各サーモパイル素子98に流体流路のより小さい領域を監視させることにより、各素子98の感度を高めることができる。
【0042】
図2を参照して上述した熱測定システム50と同様に、図示の熱測定システム50は、コントローラ54に通信可能に結合されたユーザーインターフェース56を含む。図示のユーザーインターフェース56は、検出器アレイ52の視野74内の各領域の温度を数的に表現して表示するように構成された数字表示100を含む。本実施形態において、表示100は、各監視領域の平均温度と流体流路の平均温度との差を出力するように構成される。別の実施形態では、各領域の絶対温度を表示するように構成された表示100を含めてもよいことを理解されたい。本実施形態では、温度値を摂氏温度で示す。
【0043】
前述のように、コントローラ54を、各導管60の温度と平均流体流路温度との差と、閾値とを比較することにより、流体流路内の過剰な温度変動を検出するように構成してもよい。図示の実施形態において、閾値は摂氏5度であり、この温度は、HRSG26内へと至る流体流路内の最大所望温度変動に対応する。前述のように、別の実施形態では、より高値又は低値の閾値を用いてもよい。図示の熱放射検出器アレイ52は、4行のサーモパイル素子98を含むので、各行はそれぞれの導管60の温度を測定する。図示のように、表示100の左列内の各温度は、平均温度から摂氏5度未満の温度差であることがわかる。同様に、右列及び左から2つ目の列内の各温度差は、5度の許容差の範囲内である。そのため、表示100からわかるように、対応する導管60は所望の許容差の範囲内の流体流を受け取っている。これに対して、右から2つ目の導管60に対応する温度測定値は、この導管60が周囲の導管60よりも実質的に高温の流体流を受け取っていることを示している。具体的には、右から2つ目の導管60に対応する各領域の温度は、平均温度よりも摂氏5度超高い。したがって、コントローラ54は、過剰な温度変動を検出し、アラームを作動させ、HRSG26内への流体流を減少させ且つ/又はHRSG26への流れを停止させる。
【0044】
加えて、熱測定システム50を用いて、復水器40へと至る蒸気38の流れの温度変動を検出することができる。前述のように、蒸気温度分布の変動は、蒸気タービン34の最終段内の密度変動に繋がり、これによってタービン効率が低下することがある。加えて、このような密度変動により、タービンブレードが密度の異なる領域を通過する時に、ブレードが過剰に摩耗することがある。そのため、コントローラ54が、或る導管に隣接する蒸気流が平均蒸気流温度よりも高温であると検出すると、コントローラ54はアラームを作動させ、タービン34/復水器40へと至る蒸気流を減少させ、且つ/又は蒸気タービン34へと至る流れを停止させる。
【0045】
図4は、熱放射検出器アレイ52を用いて流体流導管60の熱放射を測定することによって、流体流路全体の過剰な温度変動を検出する方法102の実施形態を示す流れ図である。まず、ブロック104に示すように、熱放射検出器アレイ52を用いて、流体流路内の導管60の熱放射を測定する。前述のように、熱放射検出器アレイ52は、流体流の様々な領域に向かって配向された複数の各サーモパイル素子を含み得る。各サーモパイル素子は、それぞれの領域の温度に比例した大きさの信号を出力するように構成される。熱放射検出器アレイ52は、各素子からの信号を収集し、結果として得られた信号をコントローラ54に出力するように構成される。次に、ブロック106に示すように、熱放射測定に基づいて流体流路の二次元温度プロファイルを決定する。例えば、コントローラ54は、結果として得られた信号を熱放射検出器アレイ52から受け取り、各サーモパイル素子信号の大きさに基づいて二次元温度プロファイルを決定する。その後、ブロック108に示すように、二次元温度プロファイルの表示画面が生成され、表示される。例えば、このディスプレイ80は、各領域の温度を時間の関数として示す一連の曲線90を表示する。或いは、表示100は、各領域の温度の数的表現を表示するものであってもよい。
【0046】
次に、ブロック110に示すように、二次元温度プロファイルに基づいて流体流路全体の過剰な温度変動を検出する。例えば、コントローラ54は、少なくとも1つの導管60の温度と流体流路の平均温度との差が閾値を超える場合に、過剰な温度変動を検出するように構成される。或いは、コントローラ54を、第1の導管60と第2の導管60との間の温度差が閾値を超える場合に、過剰な温度変動を検出するように構成してもよい。ブロック112に示すように過剰な温度変動が検出されると、ブロック114に示すように可聴及び/又は視覚アラームを作動させてオペレータに状況を警告する。例えば、オペレータは、状況報告を受けると、HRSG26又は復水器40を通る流れを減少及び/又は停止させる。加えて、過剰な温度変動の検出と同時に、ブロック116に示すように熱交換器を通る流れを自動的に停止させてもよい。例えば、幾つかの実施形態において、コントローラ54は、発電システム10に通信可能に結合されており、過剰な温度変動の検出と同時にHRSG26及び/又は復水器40を通る流れを減少及び/又は停止させるように構成される。
【0047】
流体流路全体の過剰な温度変動が検出された場合に、オペレータ又はコントローラ54で、別の処置を講じ得ることを理解されたい。例えば、HRSG26内で過剰な温度変動が検出された場合は、排ガス流24の方向を大気中へと変更することで、HRSG26をバイパスさせる。このような措置は、発電システム10の効率を低下させる可能性があるものの、発電システム10から電力を消費者に供給することはできる。同様に、過剰な温度変動が復水器40内で検出された場合は、蒸気流32の送出先を変更することで、蒸気タービン34及び復水器40をバイパスさせる。このような措置により、不均一な蒸気温度分布に伴う密度変動に起因する過剰な摩耗から蒸気タービン34内のブレードを保護できる。
【0048】
本明細書では、最適な態様も含め、例を用いて本発明を開示しており、これによって当業者は、あらゆる装置又はシステムの作製及び使用、並びに付随するあらゆる方法の実行を含め、本発明を実施できる。本発明の特許請求の範囲は、請求項に明示されると共に、当業者に想到可能なその他の例も含む。こうしたその他の例は、請求項の文言と相違ない構成要素を含む場合、又は請求項の文言と実質的な差異を有さない等価の構成要素を含む場合、特許請求の範囲に含まれることを意図している。
【符号の説明】
【0049】
10 発電システム
12 ガスタービンエンジン
14 燃焼器
16 タービン
18 シャフト
20 圧縮機
22 負荷
24 排ガス
26 排熱回収ボイラ
28 排気筒
30 冷却された排ガスの流れの方向
32 高圧蒸気
34 蒸気タービン
36 負荷
38 低圧蒸気
40 復水器
42 冷却水
44 水
46 熱水
48 冷却塔
50 熱測定システム
52 熱放射検出器アレイ
54 コントローラ
56 ユーザーインターフェース
58 下流方向
60 導管
62 第1のマニホルド
64 第2のマニホルド
66 覗き窓
68 フィルタ
70 レンズ
72 鏡
74 視野
76 視野角
78 HRSG断面
80 ディスプレイ
82 アラーム
84 グラフ
86 X軸
88 Y軸
90 一連の曲線
92 平均温度
94 下限閾値
96 上限閾値
98 サーモパイル素子
100 数字表示
102 方法の流れ図
104 熱放射検出器アレイにより流体流路内の導管の熱放射を測定する
106 流体流路の二次元温度プロファイルを決定する
108 二次元温度プロファイルの表示画面を作成して表示する
110 流体流路全体の過剰な温度変動を検出する
112 過剰な温度変動が検出されたか?
114 可聴アラーム又は視覚アラームを作動させる
116 流体流を停止させる

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン(16、34)から熱交換器(26、40)内へと至る流体流路内の複数の導管(60)に向けて視野(74)を配向するように構成された放射検出器アレイ(52)であって、前記複数の導管(60)により発せられる熱放射に基づいて前記流体流路の多次元温度プロファイルを示す信号を出力するように構成された放射検出器アレイ(52)と、
前記放射検出器アレイ(52)に通信可能に結合されており、前記信号に基づいて前記流体流路全体の温度変動を判定し、前記温度変動と閾値とを比較するように構成されたコントローラ(54)と、を含むシステム(10)。
【請求項2】
前記放射検出器アレイ(52)が複数のサーモパイル素子(98)から成る、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項3】
前記複数の導管(60)により発せられる前記熱放射を前記放射検出器アレイ(52)上に集束させるように構成された光学合焦装置(70、72)を含む、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項4】
前記光学合焦装置(70、72)が、鏡(72)、レンズ(70)、及びこれらを組み合わせたもののうち1つから成る、請求項3に記載のシステム(10)。
【請求項5】
前記放射検出器アレイ(52)と前記複数の導管(60)との間に設置された帯域フィルタ(68)を含む、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項6】
前記放射検出器アレイ(52)が、赤外線スペクトルの範囲内の波長を有する熱放射を検出するように構成された、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項7】
前記コントローラ(54)が、前記複数の導管(60)のうち少なくとも1つの温度と前記流体流路の平均温度との差に基づいて前記温度変動を判定するように構成された、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項8】
前記コントローラ(54)が、第1の導管(60)の温度と第2の導管(60)の温度と差に基づいて前記温度変動を判定するように構成された、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項9】
前記タービン(16、34)と前記熱交換器(26、40)とを含むシステムであって、前記タービン(16、34)がガスタービン(16)から成り、前記熱交換器(26、40)が排熱回収ボイラ(26)から成る、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項10】
前記タービン(16、34)と前記熱交換器(26、40)とを含むシステムであって、前記タービン(16、34)が蒸気タービン(34)から成り、前記熱交換器(26、40)が復水器(40)から成る、請求項1に記載のシステム(10)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−37227(P2012−37227A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170602(P2011−170602)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)