説明

タービン

【課題】圧力差や熱伸び差によるサポート部(より詳しくは、円錐台部)の変形(傾き)を防止することができるタービンを提供すること。
【解決手段】長手方向に二分割された垂直分割型の車室3と、この車室3内に配置される静翼保持環8を支持するサポート部9とを備え、前記サポート部9が、前記車室3の一方の接合面と他方の接合面との間に挟み込まれて固定されるフランジ部9aと、前記フランジ部9aと前記静翼保持環8とを連結する円錐台部9bとを備えるタービン1であって、下半部に位置する前記フランジ部9aと前記静翼保持環8との間に、これらフランジ部9aおよび静翼保持環8の板厚よりも厚い板厚を有する肉厚部9cが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンに関し、特に、高温の作動流体によって回転力を得るタービンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高温の作動流体によって回転力を得るタービンとしては、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−264477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、高温の作動流体によって回転力を得るタービンの中には、長手方向(前後方向)に二分割された垂直分割型(つぼ型)の車室と、この車室内に配置される静翼保持環を支持するサポート部とを備えたものがある。
しかしながら、従来のサポート部は、フランジ部と静翼保持環とを連結するすり鉢状の円錐台部が、上下で非対称になるように、すなわち、頂部(上部)の側から底部(下部)の側にかけて、その長さ(幅)が漸次長くなるように形成されている。
そのため、下半部における表面積(受圧面積)が上半部における表面積(受圧面積)よりも大きくなって、サポート部(より詳しくは、円錐台部)の高圧側の表面に加わる圧力と、サポート部(より詳しくは、円錐台部)の低圧側の表面に加わる圧力との差(圧力差)により、サポート部(より詳しくは、円錐台部)がお辞儀をするように変形して(傾いて)しまうおそれがあった。
また、静翼保持環の内部を通過する高温の作動流体(例えば、燃焼ガスや蒸気)により、サポート部(より詳しくは、円錐台部)に非対称的な熱伸び差が生じ、これにより、サポート部(より詳しくは、円錐台部)がお辞儀をするように変形して(傾いて)しまうおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、圧力差や熱伸び差によるサポート部(より詳しくは、円錐台部)の変形(傾き)を防止することができるタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明に係るタービンは、長手方向に二分割された垂直分割型の車室と、この車室内に配置される静翼保持環を支持するサポート部とを備え、前記サポート部が、前記車室の一方の接合面と他方の接合面との間に挟み込まれて固定されるフランジ部と、前記フランジ部と前記静翼保持環とを連結する円錐台部とを備えるタービンであって、下半部に位置する前記フランジ部と前記静翼保持環との間に、これらフランジ部および静翼保持環の板厚よりも厚い板厚を有する肉厚部が設けられている。
【0007】
本発明に係るタービンによれば、サポート部に設けられた(形成された)肉厚部によって、サポート部全体の剛性が高められる(向上させられる)こととなるので、サポート部(より詳しくは、円錐台部)の高圧側の表面に加わる圧力と、サポート部(より詳しくは、円錐台部)の低圧側の表面に加わる圧力との差(圧力差)によって生じるサポート部(より詳しくは、円錐台部)の変形(傾き)を防止することができる。
また、サポート部に設けられた(形成された)肉厚部によって、静翼保持環の内部を高温の作動流体(例えば、燃焼ガスや蒸気)が通過することによって生じるサポート部(より詳しくは、円錐台部)の非対称的な熱伸び差を防止することができるとともに、この非対称的な熱伸び差によって生じるサポート部(より詳しくは、円錐台部)の変形(傾き)を防止することができる。
そして、サポート部の変形を防止することができることにより、タービン・ブレードのチップ(先端)と静翼保持環の内周面との間のチップクリアランスを一定に保つことができ、タービン・ブレードのチップからの漏れ(チップリーク)を低減させることができて、タービン効率(性能)を向上させることができるとともに、タービン・ブレードのチップと静翼保持環の内周面との接触を防止することができて、タービン・ブレードおよびタービン・ノズルの損傷や破壊を防止することができ、タービンの信頼性を向上させることができる。
【0008】
本発明に係るタービンは、長手方向に二分割された垂直分割型の車室と、この車室内に配置される静翼保持環を支持するサポート部とを備え、前記サポート部が、前記車室の一方の接合面と他方の接合面との間に挟み込まれて固定されるフランジ部と、前記フランジ部と前記静翼保持環とを連結する円錐台部とを備えるタービンであって、前記フランジ部が、半径方向外側から半径方向内側にかけて漸次その板厚を増すように形成されているとともに、前記車室の接合面が、前記フランジ部の接合面と合致するように形成されている。
【0009】
本発明に係るタービンによれば、サポート部に設けられた(形成された)フランジ部によって、サポート部全体の剛性が高められる(向上させられる)こととなるので、サポート部(より詳しくは、円錐台部)の高圧側の表面に加わる圧力と、サポート部(より詳しくは、円錐台部)の低圧側の表面に加わる圧力との差(圧力差)によって生じるサポート部(より詳しくは、円錐台部)の変形(傾き)を防止することができる。
また、サポート部に設けられた(形成された)フランジ部によって、静翼保持環の内部を高温の作動流体(例えば、燃焼ガスや蒸気)が通過することよって生じるサポート部(より詳しくは、円錐台部)の非対称的な熱伸び差を防止することができるとともに、この非対称的な熱伸び差によって生じるサポート部(より詳しくは、円錐台部)の変形(傾き)を防止することができる。
そして、サポート部の変形を防止することができることにより、タービン・ブレードのチップ(先端)と静翼保持環の内周面との間のチップクリアランスを一定に保つことができ、タービン・ブレードのチップからの漏れ(チップリーク)を低減させることができて、タービン効率(性能)を向上させることができるとともに、タービン・ブレードのチップと静翼保持環の内周面との接触を防止することができて、タービン・ブレードおよびタービン・ノズルの損傷や破壊を防止することができ、タービンの信頼性を向上させることができる。
【0010】
また、本発明に係るタービンによれば、車室の接合面およびフランジ部の接合面が、例えば、それぞれテーパー面とされている(円錐台状に形成されている)ので、車室を組み上げる際の車室とサポート部との芯出し(芯合わせ)を容易に行うことができて、車室を組み上げるのに要する作業時間を短縮することができる。
【0011】
本発明に係るタービンは、長手方向に二分割された垂直分割型の車室と、この車室内に配置される静翼保持環を支持するサポート部とを備え、前記サポート部が、前記車室の一方の接合面と他方の接合面との間に挟み込まれて固定されるフランジ部と、前記フランジ部と前記静翼保持環とを連結する円錐台部とを備えるタービンであって、前記円錐台部の外周面と前部車室の内周面との間に、高熱膨張材料を材料として作られたリングが設けられている。
【0012】
本発明に係るタービンによれば、リングが、静翼保持環の内部を通過する高温の作動流体(例えば、燃焼ガスや蒸気)によって、車室およびサポート部よりも高い熱膨張率で膨張し、円錐台部の外周面とリングの内周面(半径方向内側の周面)とが密着するとともに、車室の内周面とリングの外周面(半径方向外側の周面)とが密着し、円錐台部の外周面と車室の内周面との間に形成された空間がリングによって隙間なく埋めつくされることとなる。
そして、タービン運転中において、圧力差や熱伸び差によってサポート部(より詳しくは、円錐台部)が変形しよう(傾こう)としても、円錐台部の外周面と車室の内周面との間に配置された(介在された)リングによって、サポート部(より詳しくは、円錐台部)の変形(傾き)が防止されることとなる。
これにより、タービン・ブレードのチップ(先端)と静翼保持環の内周面との間のチップクリアランスを一定に保つことができ、タービン・ブレードのチップからの漏れ(チップリーク)を低減させることができて、タービン効率(性能)を向上させることができるとともに、タービン・ブレードのチップと静翼保持環の内周面との接触を防止することができて、タービン・ブレードおよびタービン・ノズルの損傷や破壊を防止することができ、タービンの信頼性を向上させることができる。
【0013】
本発明に係るタービンは、長手方向に二分割された垂直分割型の車室と、この車室内に配置される静翼保持環を支持するサポート部とを備え、前記サポート部が、前記車室の一方の接合面と他方の接合面との間に挟み込まれて固定されるフランジ部と、前記フランジ部と前記静翼保持環とを連結する円錐台部とを備えるタービンであって、前記円錐台部が、周方向にわたって一定の長さを有するように形成されている。
【0014】
本発明に係るタービンによれば、円錐台部が、周方向にわたって一定の長さ(幅)を有するように設けられて(形成されて)いるので、サポート部(より詳しくは、円錐台部)の高圧側の表面に加わる圧力と、サポート部(より詳しくは、円錐台部)の低圧側の表面に加わる圧力との差(圧力差)、および静翼保持環の内部を高温の作動流体(例えば、燃焼ガスや蒸気)が通過することによって生じるサポート部(より詳しくは、円錐台部)の非対称的な熱伸び差を防止することができるとともに、サポート部(より詳しくは、円錐台部)の変形(傾き)を防止することができる。
そして、サポート部の変形を防止することができることにより、タービン・ブレードのチップ(先端)と静翼保持環の内周面との間のチップクリアランスを一定に保つことができ、タービン・ブレードのチップからの漏れ(チップリーク)を低減させることができて、タービン効率(性能)を向上させることができるとともに、タービン・ブレードのチップと静翼保持環の内周面との接触を防止することができて、タービン・ブレードおよびタービン・ノズルの損傷や破壊を防止することができ、タービンの信頼性を向上させることができる。
【0015】
上記タービンにおいて、前記円錐台部の下半部の板厚が、前記円錐台部の上半部の板厚よりも厚いとさらに好適である。
【0016】
このようなタービンによれば、サポート部の剛性をさらに向上させることができ、タービン・ブレードのチップ(先端)と静翼保持環の内周面との間のチップクリアランスを一定に保つことができ、タービン・ブレードのチップからの漏れ(チップリーク)をさらに低減させることができて、タービン効率(性能)をさらに向上させることができるとともに、タービン・ブレードのチップと静翼保持環の内周面との接触を防止することができて、タービン・ブレードおよびタービン・ノズルの損傷や破壊を防止することができ、タービンの信頼性をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、圧力差や熱伸び差によるサポート部(より詳しくは、円錐台部)の変形(傾き)を防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係るタービンの側断面図である。
【図2】図1に示すタービンの要部斜視断面図である。
【図3】図1に示すサポート部の要部縦断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るタービンの要部拡大図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係るタービンの要部拡大図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係るタービンの要部拡大図である。
【図7】本発明の第5実施形態に係るタービンの要部斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るタービンの第1実施形態について、図1から図3を参照しながら説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係るタービンの側断面図、図2は図1に示すタービンの要部斜視断面図、図3は図1に示すサポート部の要部縦断面図である。
【0020】
タービン1は、例えば、ボイラ(図示せず)からの高温蒸気によって回転力を得て、この回転力によって回転軸を介して連結された発電機を駆動するものであり、図1に示すように、タービン・ロータ2と、車室3とを主たる要素として構成されたものである。
【0021】
タービン・ロータ2は、各端部が軸受(ジャーナル軸受)を介して支持台(架台)に回転可能な状態で軸受け支持され、各タービン・ロータ2の外周部には、周方向に沿って複数枚のタービン・ブレード(動翼)が取り付けられている。
【0022】
車室3は、前後方向(図1において左右方向)に二分割された垂直分割型の車室であり、図1において右側に位置する前部車室3aと、図1において左側に位置する後部車室3bとを備えている。また、これら前部車室3aと後部車室3bとの間には、静翼保持環8を支持するサポート部9のフランジ部9aが挟み込まれるようになっている。
静翼保持環8は、タービン・ロータ2およびタービン・ブレードの半径方向外側を取り囲むように配置されており、その内周部には、周方向に沿って複数枚のタービン・ノズル(静翼)が取り付けられている。
【0023】
図1および図2に示すように、サポート部9は、フランジ部9aと、円錐台部9bと、肉厚部9cとを備えている。
フランジ部9aは、周方向にわたって一定の厚みと一定の長さ(幅)とを有する平面視環状(ドーナツ状)の板状部材であり、複数本のボルト(締結部材)を介して、前部車室3a(図1参照)の接合面と後部車室3b(図1参照)の接合面との間に着脱可能に固定される。
円錐台部9bは、周方向にわたって一定の厚みと一定の長さ(幅)とを有するとともに、後方に向かって(前部車室3aの側から後部車室3bの側に向かって)突出し、かつ、その上半部においてフランジ部9aと静翼保持環8とを連結するとともに、その下半部において肉厚部9cと静翼保持部8とを連結するすり鉢状の部材である。
図3に示すように、肉厚部9cは、平面視三日月状の板状部材であり、その板厚は、フランジ部9aおよび円錐台部9bの板厚よりも厚くなるように形成されている。
なお、肉厚部9cの「板厚」とは、図2中に符号Cで示すタービン1(図1参照)のタービン軸線(長手方向軸線:回転軸線)の延びる方向と平行な方向における厚み、すなわち、図1における左右方向の厚みをいう。
【0024】
本実施形態に係るタービン1によれば、サポート部9に設けられた(形成された)肉厚部9cによって、サポート部9全体の剛性が高められる(向上させられる)こととなるので、サポート部9(より詳しくは、円錐台部9b)の高圧側(図1において右側)の表面に加わる圧力と、サポート部9(より詳しくは、円錐台部9b)の低圧側(図1において左側)の表面に加わる圧力との差(圧力差)によって生じるサポート部9(より詳しくは、円錐台部9b)の変形(傾き)を防止することができる。
また、サポート部9に設けられた(形成された)肉厚部9cによって、静翼保持環8の内部を高温の作動流体(例えば、燃焼ガスや蒸気)が通過することによって生じるサポート部9(より詳しくは、円錐台部9b)の非対称的な熱伸び差を防止することができるとともに、この非対称的な熱伸び差によって生じるサポート部9(より詳しくは、円錐台部9b)の変形(傾き)を防止することができる。
そして、サポート部9の変形を防止することができることにより、タービン・ブレードのチップ(先端)と静翼保持環8の内周面との間のチップクリアランスを一定に保つことができ、タービン・ブレードのチップからの漏れ(チップリーク)を低減させることができて、タービン効率(性能)を向上させることができるとともに、タービン・ブレードのチップと静翼保持環8の内周面との接触を防止することができて、タービン・ブレードおよびタービン・ノズルの損傷や破壊を防止することができ、タービン1の信頼性を向上させることができる。
【0025】
本発明に係るタービンの第2実施形態について、図4を参照しながら説明する。
図2は本実施形態に係るタービンの要部拡大図である。
本実施形態に係るタービン21は、サポート部9の代わりにサポート部22を備えているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
【0026】
本実施形態に係るサポート部22は、フランジ部22aと、円錐台部22bとを備えている。
フランジ部22aは、周方向にわたって一定の厚みと一定の長さ(幅)とを有する平面視環状(ドーナツ状)の板状部材であり、複数本のボルト(締結部材)を介して、前部車室3aの接合面と後部車室3bの接合面との間に着脱可能に固定される。
円錐台部22bは、周方向にわたって一定の厚みを有するとともに、後方に向かって(前部車室3aの側から後部車室3bの側に向かって)突出し、かつ、周方向にわたってフランジ部22aと静翼保持環8とを連結するすり鉢状の部材である。
【0027】
また、円錐台部22bの外周面(半径方向外側の周面)23は、前部車室3aおよび後部車室3bの内周面24の近傍に位置するように、すなわち、前部車室3aおよび後部車室3bの内周面24に対してできるだけ近いところに位置するように設けられて(形成されて)いる。
そして、圧力差や熱伸び差によってサポート部22(より詳しくは、円錐台部22b)がわずかに変形した(傾いた)だけで、円錐台部22bの外周面23が前部車室3aの内周面24に当接し、サポート部22(より詳しくは、円錐台部22b)のそれ以上の変形(傾き)が防止されることとなる。
【0028】
本実施形態に係るタービン21によれば、圧力差や熱伸び差によるサポート部22(より詳しくは、円錐台部22b)の変形(傾き)を最小限に抑制する(大幅に低減させる)ことができるので、タービン・ブレードのチップ(先端)と静翼保持環8の内周面との間のチップクリアランスを略一定に保つことができ、タービン・ブレードのチップからの漏れ(チップリーク)を低減させることができて、タービン効率(性能)を向上させることができるとともに、タービン・ブレードのチップと静翼保持環8の内周面との接触を防止することができて、タービン・ブレードおよびタービン・ノズルの損傷や破壊を防止することができ、タービン21の信頼性を向上させることができる。
【0029】
本発明に係るタービンの第3実施形態について、図5を参照しながら説明する。
図5は本実施形態に係るタービンの要部拡大図である。
本実施形態に係るタービン31は、サポート部9の代わりにサポート部32を備えているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
【0030】
本実施形態に係るサポート部32は、フランジ部32aと、円錐台部32bとを備えている。
フランジ部32aは、半径方向外側から半径方向内側にかけて漸次その厚みを増すとともに、周方向にわたって一定の長さ(幅)を有するように形成された平面視環状(ドーナツ状)の板状部材であり、複数本のボルト(締結部材)を介して、前部車室3aの接合面と後部車室3bの接合面との間に着脱可能に固定される。なお、図5に示すように、本実施形態において前部車室3aの接合面33は、フランジ部32aの接合面34と合致(当接)するように設けられ(形成されて)いる。
円錐台部32bは、周方向にわたって一定の厚みを有するとともに、後方に向かって(前部車室3aの側から後部車室3bの側に向かって)突出し、かつ、周方向にわたってフランジ部32aと静翼保持環8とを連結するすり鉢状の部材である。
【0031】
本実施形態に係るタービン31によれば、サポート部32に設けられた(形成された)フランジ部32aによって、サポート部32全体の剛性が高められる(向上させられる)こととなるので、サポート部32(より詳しくは、円錐台部32b)の高圧側(図5において右側)の表面に加わる圧力と、サポート部32(より詳しくは、円錐台部32b)の低圧側(図5において左側)の表面に加わる圧力との差(圧力差)によって生じるサポート部32(より詳しくは、円錐台部32b)の変形(傾き)を防止することができる。
また、サポート部32に設けられた(形成された)フランジ部32aによって、静翼保持環8の内部を高温の作動流体(例えば、燃焼ガスや蒸気)が通過することよって生じるサポート部32(より詳しくは、円錐台部32b)の非対称的な熱伸び差を防止することができるとともに、この非対称的な熱伸び差によって生じるサポート部32(より詳しくは、円錐台部32b)の変形(傾き)を防止することができる。
そして、サポート部32の変形を防止することができることにより、タービン・ブレードのチップ(先端)と静翼保持環8の内周面との間のチップクリアランスを一定に保つことができ、タービン・ブレードのチップからの漏れ(チップリーク)を低減させることができて、タービン効率(性能)を向上させることができるとともに、タービン・ブレードのチップと静翼保持環8の内周面との接触を防止することができて、タービン・ブレードおよびタービン・ノズルの損傷や破壊を防止することができ、タービン31の信頼性を向上させることができる。
【0032】
また、本実施形態に係るタービン31によれば、前部車室3aの接合面33およびフランジ部32aの接合面34がそれぞれテーパー面とされている(円錐台状に形成されている)ので、車室3を組み上げる際の前部車室3aとサポート部32との芯出し(芯合わせ)を容易に行うことができて、車室3を組み上げるのに要する作業時間を短縮することができる。
【0033】
本発明に係るタービンの第4実施形態について、図6を参照しながら説明する。
図6は本実施形態に係るタービンの要部拡大図である。
本実施形態に係るタービン41は、円錐台部22bの外周面23と前部車室3aの内周面24との間にリング42が設けられているという点で上述した第2実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第2実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
【0034】
リング42は、周方向にわたって一定の厚みと一定の長さ(幅)とを有する平面視環状(ドーナツ状)の薄板状の部材であり、高熱膨張材料(例えば、SUS304)を材料として作られている。なお、車室3およびサポート部22は、リング42よりも熱膨張率の低い金属材料(例えば、2Crを含む合金)を材料として作られている。
すなわち、リング42は、静翼保持環8の内部を通過する高温の作動流体(例えば、燃焼ガスや蒸気)によって、車室3およびサポート部22よりも高い熱膨張率で膨張し、円錐台部22bの外周面23とリング42の内周面(半径方向内側の周面)とが密着するとともに、前部車室3aの内周面24とリング42の外周面(半径方向外側の周面)とが密着し、円錐台部22bの外周面23と前部車室3aの内周面24との間に形成された空間がリング42によって隙間なく埋めつくされることとなる。
そして、タービン運転中において、圧力差や熱伸び差によってサポート部22(より詳しくは、円錐台部22b)が変形しよう(傾こう)としても、円錐台部22bの外周面23と前部車室3aの内周面24との間に配置された(介在された)リング42によって、サポート部22(より詳しくは、円錐台部22b)の変形(傾き)が防止されることとなる。
【0035】
本実施形態に係るタービン41によれば、圧力差や熱伸び差によるサポート部22(より詳しくは、円錐台部22b)の変形(傾き)を防止することができるので、タービン・ブレードのチップ(先端)と静翼保持環8の内周面との間のチップクリアランスを一定に保つことができ、タービン・ブレードのチップからの漏れ(チップリーク)を低減させることができて、タービン効率(性能)を向上させることができるとともに、タービン・ブレードのチップと静翼保持環8の内周面との接触を防止することができて、タービン・ブレードおよびタービン・ノズルの損傷や破壊を防止することができ、タービン41の信頼性を向上させることができる。
【0036】
本発明に係るタービンの第5実施形態について、図7を参照しながら説明する。
図7は本実施形態に係るタービンの要部斜視断面図である。
本実施形態に係るタービン51は、サポート部9の代わりにサポート部52を備えているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
【0037】
本実施形態に係るサポート部52は、フランジ部52aと、円錐台部52bとを備えている。
フランジ部52aは、周方向にわたって一定の厚みと一定の長さ(幅)とを有する平面視環状(ドーナツ状)の板状部材であり、複数本のボルト(締結部材)を介して、前部車室3a(図1参照)の接合面と後部車室3b(図1参照)の接合面との間に着脱可能に固定される。
円錐台部52bは、周方向にわたって一定の厚みと一定の長さ(幅)を有するとともに、後方に向かって(前部車室3aの側から後部車室3bの側に向かって)突出し、かつ、周方向にわたってフランジ部52aと静翼保持環8とを連結するすり鉢状の部材である。
【0038】
本実施形態に係るタービン51によれば、円錐台部52bが、周方向にわたって一定の長さ(幅)を有するように設けられて(形成されて)いるので、サポート部52(より詳しくは、円錐台部52b)の高圧側(図7において右側)の表面に加わる圧力と、サポート部52(より詳しくは、円錐台部52b)の低圧側(図7において左側)の表面に加わる圧力との差(圧力差)、および静翼保持環8の内部を高温の作動流体(例えば、燃焼ガスや蒸気)が通過することによって生じるサポート部52(より詳しくは、円錐台部52b)の非対称的な熱伸び差を防止することができるとともに、サポート部52(より詳しくは、円錐台部52b)の変形(傾き)を防止することができる。
そして、サポート部52の変形を防止することができることにより、タービン・ブレードのチップ(先端)と静翼保持環8の内周面との間のチップクリアランスを一定に保つことができ、タービン・ブレードのチップからの漏れ(チップリーク)を低減させることができて、タービン効率(性能)を向上させることができるとともに、タービン・ブレードのチップと静翼保持環8の内周面との接触を防止することができて、タービン・ブレードおよびタービン・ノズルの損傷や破壊を防止することができ、タービン51の信頼性を向上させることができる。
【0039】
なお、上述した各実施形態において、下半部に位置する円錐台部が、上半部に位置する円錐台部の板厚よりも厚い板厚を有するように形成されているとさらに好適である。
これにより、サポート部の剛性をさらに向上させることができ、タービン・ブレードのチップ(先端)と静翼保持環の内周面との間のチップクリアランスを一定に保つことができ、タービン・ブレードのチップからの漏れ(チップリーク)をさらに低減させることができて、タービン効率(性能)をさらに向上させることができるとともに、タービン・ブレードのチップと静翼保持環の内周面との接触を防止することができて、タービン・ブレードおよびタービン・ノズルの損傷や破壊を防止することができ、タービンの信頼性をさらに向上させることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 タービン
2 タービン・ロータ
3 車室
3a 前部車室
3b 後部車室
8 静翼保持環
9 サポート部
9a フランジ部
9b 円錐台部
9c 肉厚部
22 サポート部
22a フランジ部
22b 円錐台部
23 外周面
24 内周面
31 タービン
32 サポート部
32a フランジ部
32b 円錐台部
33 接合面
34 接合面
41 タービン
42 リング
51 タービン
52 サポート部
52a フランジ部
52b 円錐台部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に二分割された垂直分割型の車室と、この車室内に配置される静翼保持環を支持するサポート部とを備え、
前記サポート部が、前記車室の一方の接合面と他方の接合面との間に挟み込まれて固定されるフランジ部と、前記フランジ部と前記静翼保持環とを連結する円錐台部とを備えるタービンであって、
下半部に位置する前記フランジ部と前記静翼保持環との間に、これらフランジ部および静翼保持環の板厚よりも厚い板厚を有する肉厚部が設けられていることを特徴とするタービン。
【請求項2】
長手方向に二分割された垂直分割型の車室と、この車室内に配置される静翼保持環を支持するサポート部とを備え、
前記サポート部が、前記車室の一方の接合面と他方の接合面との間に挟み込まれて固定されるフランジ部と、前記フランジ部と前記静翼保持環とを連結する円錐台部とを備えるタービンであって、
前記フランジ部が、半径方向外側から半径方向内側にかけて漸次その板厚を増すように形成されているとともに、前記車室の接合面が、前記フランジ部の接合面と合致するように形成されていることを特徴とするタービン。
【請求項3】
長手方向に二分割された垂直分割型の車室と、この車室内に配置される静翼保持環を支持するサポート部とを備え、
前記サポート部が、前記車室の一方の接合面と他方の接合面との間に挟み込まれて固定されるフランジ部と、前記フランジ部と前記静翼保持環とを連結する円錐台部とを備えるタービンであって、
前記円錐台部の外周面と前部車室の内周面との間に、高熱膨張材料を材料として作られたリングが設けられていることを特徴とするタービン。
【請求項4】
長手方向に二分割された垂直分割型の車室と、この車室内に配置される静翼保持環を支持するサポート部とを備え、
前記サポート部が、前記車室の一方の接合面と他方の接合面との間に挟み込まれて固定されるフランジ部と、前記フランジ部と前記静翼保持環とを連結する円錐台部とを備えるタービンであって、
前記円錐台部が、周方向にわたって一定の長さを有するように形成されていることを特徴とするタービン。
【請求項5】
前記円錐台部の下半部の板厚が、前記円錐台部の上半部の板厚よりも厚いことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のタービン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−174795(P2010−174795A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19797(P2009−19797)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】