説明

ターンシグナルスイッチ

【課題】操作ノブの摺動操作に応じて連動部材の可動接点を比較的大きく動作させることができ、固定接点に対する可動接点の接触又は離間を確実に行わせることができるターンシグナルスイッチを提供する。
【解決手段】ハンドルスイッチケース1と、スライドノブ2a及びプッシュボタン2bを有した操作ノブ2と、操作ノブ2の操作によって固定接点8と接触又は離間し得る可動接点7を有した連動部材5とを具備し、スライドノブ2aの摺動操作により可動接点7と固定接点8とが接触して車両に配設された所望の側のウィンカを点滅させるとともに、プッシュボタン2bの押し込み操作により可動接点7と固定接点8とが離間して当該ウィンカの点滅をキャンセルさせ得るターンシグナルスイッチにおいて、連動部材5は、操作ノブ2の摺動操作及び押し込み操作と連動して所定の揺動軸Lを中心に揺動可能とされたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作ノブの摺動操作により、可動接点と固定接点とが接触して車両に配設された所望の側のウィンカを点滅させるとともに、当該操作ノブの押し込み操作により、可動接点と固定接点とが離間して当該ウィンカの点滅をキャンセルさせ得るターンシグナルスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、二輪車のハンドルバーの左右先端には、運転者が把持するための把持グリップが固定されており、その把持グリップの基端側近傍にはターンシグナルスイッチが固定されている。かかるターンシグナルスイッチは、二輪車の左右それぞれに配設されたウィンカを操作して、所望の側のウィンカを点滅させるためのスイッチであり、従来、ハンドルバーに固定されたケースと、該ケースから突出して形成された操作ノブ(左右に摺動操作可能なスライドノブ及び押し込み操作可能なプッシュボタン)と、スライドノブの左右の摺動操作に応じて左右方向に摺動する連動部材(ローラ部材)と、該連動部材に形成されて固定接点に対して接触又は離間可能な可動接点とを有して構成されていた(例えば、特許文献1或いは特許文献2にて開示されているものが挙げられる)。
【0003】
かかる従来のターンシグナルスイッチによれば、中立位置にあるスライドノブを左右何れかの方向に摺動操作すると、その方向に連動部材を摺動させることにより固定接点に可動接点が接触して所定の回路が形成され、二輪車が具備する左右何れかのウィンカが選択的に点滅し得るようになっている。また、プッシュボタンを押し込み操作すると、連動部材が元の位置(初期位置)に戻され、可動接点が固定接点から離間するので、ウィンカの点滅がキャンセル(選択されたウィンカが消灯)されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平1−73730号公報
【特許文献2】実開平2−143737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のターンシグナルスイッチにおいては、操作ノブ(スライドノブ)の摺動操作に伴って可動接点が形成された連動部材が同方向に摺動(スライド)するよう構成されていたので、以下の如き問題があった。
ターンシグナルスイッチは、通常、ハンドルバーの把持グリップ近傍に固定されたケース(ハンドルスイッチケース)に形成される複数のスイッチのうち一つのスイッチであるため、その操作ノブの操作範囲(スライドノブの摺動操作範囲)をあまり大きく設定することができない。一方、操作ノブと連動する連動部材は、固定接点と接触又は離間し得る可動接点が形成されているため、これら固定接点と可動接点とによる電気的導通及び当該導通の遮断を確実に行わせるには、連動部材を比較的大きく動作させる必要がある。
【0006】
然るに、従来のターンシグナルスイッチにおいては、スライドノブの摺動操作に伴って連動部材が同方向に摺動(スライド)するよう構成されているので、当該連動部材の動作範囲はスライドノブの摺動操作範囲内に限られることとなって、あまり大きな動作を行わせることができず、固定接点と可動接点との接触又は離間を確実に行わせるのが困難になってしまう虞があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、操作ノブの摺動操作に応じて連動部材の可動接点を比較的大きく動作させることができ、固定接点に対する可動接点の接触又は離間を確実に行わせることができるターンシグナルスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、車両が具備するハンドルバーの把持グリップ近傍に固定可能なケースと、該ケースから突出形成されるとともに、中立位置から左右に摺動操作可能とされ、且つ、中立位置から押し込み操作可能とされた操作ノブと、該操作ノブの摺動操作及び押し込み操作と連動し、前記ケース側に固定された固定接点と接触又は離間し得る可動接点が形成される連動部材とを具備し、前記操作ノブの摺動操作により、前記可動接点と固定接点とが接触して車両に配設された所望の側のウィンカを点滅させるとともに、当該操作ノブの押し込み操作により、前記可動接点と固定接点とが離間して当該ウィンカの点滅をキャンセルさせ得るターンシグナルスイッチにおいて、前記連動部材は、前記操作ノブの摺動操作及び押し込み操作と連動して所定の揺動軸を中心に揺動可能とされたことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のターンシグナルスイッチにおいて、前記操作ノブは、中立位置に常時付勢されて左右に摺動操作可能なスライドノブと、該スライドノブに形成されて押し込み操作可能なプッシュボタンとから構成されるとともに、当該プッシュボタンは、前記スライドノブの摺動操作によって前記連動部材に形成された被操作側傾斜面と対峙可能な操作側傾斜面を有するとともに、押し込み操作時に当該操作側傾斜面及び被操作側傾斜面によるカム作用で当該連動部材を連動させて前記可動接点を固定接点から離間させ得るよう構成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載のターンシグナルスイッチにおいて、前記プッシュボタンは、前記連動部材に挿通される軸部材が突出形成されて成るとともに、当該軸部材に前記操作側傾斜面が形成されたことを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項2又は請求項3記載のターンシグナルスイッチにおいて、前記操作側傾斜面及び被操作側傾斜面は、前記連動部材の揺動軌跡に倣った曲線状に形成されて成ることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れか1つに記載のターンシグナルスイッチにおいて、前記操作ノブと前記連動部材の揺動軸との間の寸法より前記可動接点の固定接点との接触部と当該連動部材の揺動軸との間の寸法の方が大きく設定されたことを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5の何れか1つに記載のターンシグナルスイッチにおいて、前記連動部材に形成され、前記操作ノブの摺動操作による当該連動部材の揺動状態を保持し得るとともに、当該操作ノブの左右の摺動操作時に節度を付与する節度付与手段を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、連動部材は、操作ノブの摺動操作及び押し込み操作と連動して所定の揺動軸を中心に揺動可能とされたので、操作ノブの摺動操作に応じて連動部材の可動接点を比較的大きく動作させることができ、固定接点に対する可動接点の接触又は離間を確実に行わせることができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、プッシュボタンは、スライドノブの摺動操作によって連動部材に形成された被操作側傾斜面と対峙可能な操作側傾斜面を有するとともに、押し込み操作時に当該操作側傾斜面及び被操作側傾斜面によるカム作用で当該連動部材を連動させて可動接点を固定接点から離間させ得るよう構成されたので、ウィンカの点滅のキャンセルを比較的簡単な構成で行わせることができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、プッシュボタンは、連動部材に挿通される軸部材が突出形成されて成るとともに、当該軸部材に操作側傾斜面が形成されたので、スライドノブの摺動操作に伴う連動部材の揺動を許容させつつプッシュボタンの押し込み操作時の連動部材の揺動を確実且つスムーズに行わせることができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、操作側傾斜面及び被操作側傾斜面は、連動部材の揺動軌跡に倣った曲線状に形成されて成るので、プッシュボタンの押し込み操作時、当該被操作側傾斜面に対する操作側傾斜面の当接を良好に行わせてカム作用を確実に図ることができる。従って、プッシュボタンの押し込み操作力をより確実に連動部材に伝達させることができ、ウィンカの点滅のキャンセルをより確実且つスムーズに行わせることができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、操作ノブと連動部材の揺動軸との間の寸法より可動接点の固定接点との接触部と当該連動部材の揺動軸との間の寸法の方が大きく設定されたので、操作ノブの摺動操作に応じて可動接点を比較的大きく動作させるのを容易且つ確実に図ることができ、固定接点に対する可動接点の接触又は離間を更に確実に行わせることができる。
【0019】
請求項6の発明によれば、連動部材に形成され、操作ノブの摺動操作による当該連動部材の揺動状態を保持し得るとともに、当該操作ノブの左右の摺動操作時に節度を付与する節度付与手段を具備したので、操作ノブの左右の摺動操作時の操作性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係るターンシグナルスイッチが適用されるハンドルスイッチケースを示す正面図
【図2】同ハンドルスイッチケースの内部構成を示す模式図
【図3】同ターンシグナルスイッチを示す断面図
【図4】同ターンシグナルスイッチを示す分解斜視図
【図5】同ターンシグナルスイッチを示す分解斜視図
【図6】同ターンシグナルスイッチを示す分解側面図
【図7】同ターンシグナルスイッチにおける連動部材を取り外した状態を示す斜視図
【図8】同ターンシグナルスイッチにおける連動部材を示す斜視図
【図9】同ターンシグナルスイッチにおける軸部材と連動部材との組付関係を示す斜視図
【図10】(a)同ターンシグナルスイッチにおける軸部材と案内手段との組付関係を示す斜視図(b)同案内手段を示す平面図
【図11】同ターンシグナルスイッチにおける連動部材の揺動動作を示す模式図
【図12】同ターンシグナルスイッチにおける可動接点と固定接点との接触状態又は離間状態を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るターンシグナルスイッチは、図1に示すように、二輪車(車両)が具備するハンドルバーHの把持グリップG近傍に固定されたハンドルスイッチケース1(ケース)に形成されたもので、操作ノブ2(スライドノブ2a)の図中左右方向の摺動操作により、可動接点と固定接点とが接触して二輪車に配設された所望の側(左右何れかの側)のウィンカ(ターンシグナルフラッシャ)を点滅させるとともに、操作ノブ2(プッシュボタン2b)の押し込み操作により、可動接点と固定接点とが離間して当該ウィンカの点滅をキャンセルさせ得るものである。
【0022】
より具体的には、本ターンシグナルスイッチは、図1〜10に示すように、ハンドルスイッチケース1(ケース)と、操作ノブ2を構成するスライドノブ2a及びプッシュボタン2bと、可動接点7が形成された連動部材5と、固定接点8が形成された端子板6とから主に構成されている。ハンドルスイッチケース1は、上述したように、二輪車(車両)が具備するハンドルバーHの把持グリップG近傍に固定可能なもので、本発明に係るターンシグナルスイッチの他、二輪車の前照灯を下方照射又は前方照射の何れかに切り換え操作するディマースイッチノブ3或いはホーンを鳴らすホーンスイッチノブ4等、二輪車が搭載する電装品を操作可能な複数のスイッチが配設されている。尚、図中符号nは、端子板6をハンドルスイッチケース1に固定させるためのネジを示しており、当該ネジnがハンドルスイッチケース1に形成されたボス1a(図8参照)のネジ穴に挿通可能とされている。
【0023】
操作ノブ2(スライドノブ2a、プッシュボタン2b)は、ハンドルスイッチケース1から突出形成されるとともに、中立位置から左右に摺動操作可能とされ、且つ、中立位置から押し込み操作可能とされたものである。本実施形態においては、操作ノブは、中立位置に常時付勢されて左右に摺動操作可能なスライドノブ2aと、該スライドノブ2aに形成されて押し込み操作可能なプッシュボタン2bとから構成されている。尚、中立位置から左右に摺動操作可能とされ、且つ、中立位置から押し込み操作可能とされた単一の操作ノブを有したものであってもよい。
【0024】
スライドノブ2aは、図4〜6に示すように、ハンドルスイッチケース1に対して左右方向直線状に摺動可能に組み付けられるとともに、コイルスプリングS1によって常時中立位置に付勢されるもので、中央部が突起した山形に形成された部品から成る。かかるスライドノブ2aの中央部には、貫通孔2abが形成されており、その貫通孔2abにプッシュボタン2bが嵌め込まれて組み付けられるようになっている。
【0025】
このプッシュボタン2bは、ハンドルスイッチケース1(スライドノブ2a)に対して押し込み操作可能に組み付けられるとともに、コイルスプリングS2によって常時突出する方向に付勢されるもので、略円筒状の部品から成る。これにより、スライドノブ2aを左右に摺動操作すると、プッシュボタン2bも追従するとともに、当該プッシュボタン2bを押圧すると、コイルスプリングS2の付勢力に抗して押し込み操作可能となるよう構成されている。
【0026】
本実施形態に係るプッシュボタン2bは、連動部材5に挿通される軸部材11が突出形成されている。この軸部材11は、棒状部材から成るものであり、その基端11b側に雄ネジが形成されており、当該雄ネジをプッシュボタン2bに形成された雌ネジに螺合させることにより当該プッシュボタン2bと一体化されているとともに、その先端部11aが基板11bよりも細径とされている。尚、図中符号9は、軸部材11に取り付けられるスペーサを示している。
【0027】
また、軸部材11の所定位置には、連動部材5に形成された被操作側傾斜面5g(後で詳述する)と対峙可能な操作側傾斜面12が形成されている。この操作側傾斜面12は、軸部材11の所定位置において、左右一対に一体形成された部位から成る。而して、軸部材11は、スライドノブ2aに対する摺動操作が行われると、プッシュボタン2bと共に左右方向に移動し、プッシュボタン2bの押し込み操作が行われると、その押し込み方向(軸部材11の長手方向)に移動することとなる。
【0028】
連動部材5は、スライドノブ2aの摺動操作及びプッシュボタン2bの押し込み操作と連動し、ハンドルスイッチケース1側(具体的には、端子板6)に固定された固定接点8と接触又は離間し得る可動接点7が形成されたもので、軸部材11を挿通させ得る凹部5aと、当該軸部材11の先端部11aを貫通させ得る貫通孔5bと、可動接点7を嵌入させ得る溝部5cと、揺動軸Lを挿通させ得る挿通孔5dと、突起部5eと、アーム部5fとから主に構成されている。尚、図中符号S3は、可動接点7を固定接点8側に常時付勢させるためのコイルスプリングを示している。
【0029】
凹部5aは、操作ノブ2側に大きく開口させた形状から成り、スライドノブ2aを左右何れかの方向に摺動操作すると、当該スライドノブ2aの一部2aa(図7参照)が凹部5aの開口壁部を押圧して連動部材5を連動させ得るようになっている。また、凹部5aの所定部位には、被操作側傾斜面5gが一体成形されており、スライドノブ2aの摺動操作がなされると、当該被操作側傾斜面5gと軸部材11に形成された操作側傾斜面12とが対峙可能とされている。
【0030】
ここで、本実施形態に係る連動部材5は、その挿通孔5dに対して、ハンドルスイッチケース1から端子板6側に向かって突出形成された揺動軸Lを挿通させて組み付けられており、スライドノブ2aの摺動操作及びプッシュボタン2bの押し込み操作と連動して当該揺動軸Lを中心に揺動可能とされている。一方、アーム部5fは、図8に示すように、揺動軸Lから所定方向に向かって延設されており、当該アーム部5fの延設方向に沿って可動接点7を取り付けるための溝部5cが形成されている。これにより、連動部材5の揺動動作に伴って可動接点7も同方向に揺動することとなる。
【0031】
可動接点7は、図12に示すように、スライドノブ2aが中立位置にあるとき、同図(a)の如く一端がアース接点gと接触しつつ他端が一対の固定接点8の略中間に位置しており、何れの固定接点8とも離間した状態とされている。この状態では、二輪車の左右何れのウィンカも点滅が行われていない。そして、スライドノブ2aを中立位置から右側に摺動操作すると、連動部材5が揺動軸Lを中心に時計周りに揺動し、同図(b)に示すように、可動接点7の一端はアース接点gとの接触を維持しつつ他端が一方の固定接点8と接触して右側のウィンカを点滅させるとともに、スライドノブ2aを中立位置から左側に摺動操作すると、連動部材5が揺動軸Lを中心に反時計周りに揺動し、同図(c)に示すように、可動接点7の一端はアース接点gとの接触を維持しつつ他端が他方の固定接点8と接触して左側のウィンカを点滅させるようになっている。
【0032】
更に、スライドノブ2aを左右何れかの方向に摺動操作した後、中立位置に戻った状態でプッシュボタン2bを押し込み操作すれば、操作側傾斜面12と被操作側傾斜面5gとが対峙した状態で軸部材11が長手方向に移動することとなり、当該操作側傾斜面12及び被操作側傾斜面5gによるカム作用で連動部材5を連動させて可動接点7を固定接点8から離間させ得るようになっている。
【0033】
尚、連動部材5の突起部5eには、コイルスプリングS4を収容する収容孔が形成されており、当該コイルスプリングS4にて付勢されたボール10が組み付けられている。これらコイルスプリングS4及びボール10は、スライドノブ2aの摺動操作による連動部材5の揺動状態を保持し得るとともに、当該スライドノブ2aの左右の摺動操作時に節度を付与する節度付与手段を構成している。
【0034】
また、ハンドルスイッチケース1側には、連動部材5の揺動に伴うボール10の移動軌跡に沿って凸状部13が形成されており、当該凸状部13には、連動部材5が初期状態にあるときボール10を嵌入させる嵌入凹部13a、時計周りに揺動した状態にあるときボール10を嵌入させる嵌入凹部13b、反時計周りに揺動した状態にあるときにボール10を嵌入させる嵌入凹部13cがそれぞれ形成されている。
【0035】
即ち、スライドノブ2aが中立位置にあるとき、図11(a)に示すように、連動部材5が初期状態とされており、嵌入凹部13aにボール10が嵌入した状態となっている。そして、例えばスライドノブ2aを右側に摺動操作すると、初期状態にある連動部材5が揺動軸Lを中心に揺動し、同図(b)の状態となってボール10が嵌入凹部13bに嵌入した状態とされる。これにより、連動部材5の揺動過程では、ボール10が嵌入凹部13aから脱し、隣接する嵌入凹部13bに嵌入されるので、スライドノブ2aの摺動操作時に節度を付与することができるとともに、連動部材5の揺動後は、ボール10が嵌入凹部13bに嵌入するので、その揺動状態が保持されることとなる。
【0036】
かかる状態でスライドノブ2aに対する操作力を緩めると、同図(c)に示すように、連動部材5の揺動した状態は保持される一方、スライドノブ2aは、コイルスプリングS1の付勢力によって中立位置に戻されることとなる。この状態において、可動接点7は、一方の固定接点8と接触した状態(図12(b)参照)となっており、例えば右側のウィンカを点滅させることができるとともに、一方(同図において左側)の操作側傾斜面12と一方(同図において左側)の被操作側傾斜面5gとが対峙した状態となっている。尚、スライドノブ2aを左側へ摺動操作した際は、他方(同図において右側)の操作側傾斜面12と他方(同図において右側)の被操作側傾斜面5gとが対峙した状態となる。
【0037】
その後、プッシュボタン2bを押し込み操作するのに伴って軸部材11が長手方向に移動することとなり、同図(d)に示すように、当該操作側傾斜面12及び被操作側傾斜面5gによるカム作用で連動部材5を連動させて初期状態まで戻し得るようになっている。これにより、可動接点7を一方の固定接点8から離間させて他方の固定接点8との中間位置に至らせることができ、ウィンカの点滅をキャンセル(点滅の停止)させることができる。然るに、キャンセル操作過程においても、ボール10が嵌入凹部13bから脱し、隣接する嵌入凹部13aに嵌入されるので、スライドノブ2aの摺動操作時に節度を付与することができるとともに、連動部材5の揺動後は、ボール10が嵌入凹部13aに嵌入するので、その初期状態が保持されることとなる。尚、スライドノブ2aを左側に摺動操作した際も、上記と同様の一連の作用が奏される。
【0038】
更に、本実施形態に係るターンシグナルスイッチおいては、操作ノブ2(プッシュボタン2b)の押し込み操作を案内する案内手段が配設されている。かかる案内手段は、図10に示すように、端子板6に形成された嵌入孔6aから成り、スライドノブ2aを左右何れかの方向に摺動操作した後、スライドノブ2aが中立位置にあるとき当該プッシュボタン2bを押し込み操作すると、軸部材11の先端部11aを当該嵌入孔6aに嵌入させ得るよう構成されている。
【0039】
これにより、ウィンカの点滅をキャンセルさせるべくプッシュボタン2bを押し込み操作する際、軸部材11の先端部11aが嵌入孔6aに嵌入されて、当該プッシュボタン2bの径方向の移動を規制しつつ長手方向(軸方向)の移動が案内されるので、操作性を向上させることができる。なお、本実施形態における軸部材11の先端部11aの形状をテーパ形状に形成し、プッシュボタン2bの押し込み操作時、軸部材11の先端部11aと嵌入孔6aとの位置が僅かにずれても、当該先端部11aを嵌入孔6aに確実且つスムーズに嵌入させるようにしてもよい。また、本実施形態の嵌入孔6aに代えて、有底形状から成る嵌入凹部としてもよい。
【0040】
また更に、本実施形態に係る案内手段は、嵌入孔6a(又は嵌入凹部)から左右方向に直線状に延びた溝形状6bを有するとともに、当該溝形状6bによりスライドノブ2aの摺動操作に伴って移動する軸部材11の先端部11aを案内し得るよう構成されている。即ち、軸部材11の先端部11aは、溝形状6bに挿通した状態とされており、スライドノブ2aの摺動操作に伴う軸部材11の移動が案内されるとともに、その溝形状6bの略中央に嵌入孔6a(又は嵌入凹部)が形成されているのである。
【0041】
これにより、溝形状6bにて軸部材11の左右方向の移動を案内することによってスライドノブ2aの摺動動作を案内することができるとともに、嵌入孔6a(又は嵌入凹部)によって軸部材11の長手方向の移動を案内することによってプッシュボタン2bの押し込み動作を案内することができ、摺動操作時及び押し込み操作時の双方の操作性を向上させることができる。また、本実施形態においては、案内手段を構成する嵌入孔6a(又は嵌入凹部)及び溝形状6bが端子板6に形成されているので、案内手段を配設するための別個新たな構成部品を不要とすることができる。
【0042】
上記実施形態によれば、連動部材5は、操作ノブ2の摺動操作及び押し込み操作と連動して所定の揺動軸Lを中心に揺動可能とされたので、操作ノブ2(スライドノブ2a)の摺動操作に応じて連動部材5の可動接点7を比較的大きく動作させることができ、固定接点8に対する可動接点7の接触又は離間を確実に行わせることができる。特に、本実施形態においては、操作ノブ2(軸部材11)と連動部材5の揺動軸Lとの間の寸法(図11(a)の寸法X)より可動接点7の固定接点8との接触部と当該連動部材5の揺動軸Lとの間の寸法(図11(a)の寸法Y)の方が大きく設定されている(X<Y)。これにより、操作ノブ2(スライドノブ2a)の摺動操作に応じて可動接点7を比較的大きく動作させるのを容易且つ確実に図ることができ、固定接点8に対する可動接点7の接触又は離間を更に確実に行わせることができる。
【0043】
また、プッシュボタン2bは、スライドノブ2aの摺動操作によって連動部材5に形成された被操作側傾斜面5gと対峙可能な操作側傾斜面12を有するとともに、押し込み操作時に当該操作側傾斜面12及び被操作側傾斜面5gによるカム作用で当該連動部材5を連動させて可動接点7を固定接点8から離間させ得るよう構成されたので、ウィンカの点滅のキャンセルを比較的簡単な構成で行わせることができる。
【0044】
特に、本実施形態においては、操作側傾斜面12及び被操作側傾斜面5gは、図9、11に示すように、連動部材5の揺動軌跡に倣った曲線状に形成されて成る。即ち、操作側傾斜面12及び被操作側傾斜面5gにおけるカムとして作用する面(対峙する面)が、連動部材5の揺動軌跡と同等の曲率を有した曲面とされている。これにより、プッシュボタン2bの押し込み操作時、当該被操作側傾斜面5gに対する操作側傾斜面12の当接を良好に行わせてカム作用を確実に図ることができる。従って、プッシュボタンの押し込み操作力をより確実に連動部材に伝達させることができ、ウィンカの点滅のキャンセルをより確実且つスムーズに行わせることができる。
【0045】
更に、本実施形態によれば、プッシュボタン2bは、連動部材5に挿通される軸部材11が突出形成されて成るとともに、当該軸部材11に操作側傾斜面12が形成されたので、スライドノブ2aの摺動操作に伴う連動部材5の揺動を許容させつつプッシュボタン2bの押し込み操作時の連動部材5の揺動を確実且つスムーズに行わせることができる。また更に、連動部材5に形成され、操作ノブ2(スライドノブ2a)の摺動操作による当該連動部材5の揺動状態を保持し得るとともに、当該操作ノブ2(スライドノブ2a)の左右の摺動操作時に節度を付与する節度付与手段を具備したので、操作ノブ(スライドノブ2a)の左右の摺動操作時の操作性をより向上させることができる。
【0046】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば操作ノブ2(プッシュボタン2b)の押し込み操作を案内する案内手段(嵌入孔6a及び溝形状6b)を具備しないもの、コイルスプリングS4及びボール10から成る節度付与手段に代えてスライドノブ2aの摺動操作による連動部材5の揺動状態を保持し得るとともに当該スライドノブ2aの左右の摺動操作時に節度を付与する他の形態の節度付与手段を具備したもの等としてもよい。また、本実施形態においては二輪車のハンドルバーに取り付けられたターンシグナルスイッチに適用されているが、スノーモービルや3輪又は4輪バギーなど、ハンドルバーを具備した他の車両においても適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
操作ノブの摺動操作及び押し込み操作と連動して所定の揺動軸を中心に揺動可能とされた連動部材を具備したターンシグナルスイッチであれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 ハンドルスイッチケース(ケース)
2 操作ノブ
2a スライドノブ
2b プッシュボタン
3 ディマースイッチノブ
4 ホーンスイッチノブ
5 連動部材
5g 被操作側傾斜面
6 端子板
6a 嵌入孔(案内手段)
6b 溝形状(案内手段)
7 可動接点
8 固定接点
9 スペーサ
10 ボール(節度付与手段)
11 軸部材
12 操作側傾斜面
13 凸状部
13a〜13c 嵌入凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が具備するハンドルバーの把持グリップ近傍に固定可能なケースと、
該ケースから突出形成されるとともに、中立位置から左右に摺動操作可能とされ、且つ、中立位置から押し込み操作可能とされた操作ノブと、
該操作ノブの摺動操作及び押し込み操作と連動し、前記ケース側に固定された固定接点と接触又は離間し得る可動接点が形成される連動部材と、
を具備し、前記操作ノブの摺動操作により、前記可動接点と固定接点とが接触して車両に配設された所望の側のウィンカを点滅させるとともに、当該操作ノブの押し込み操作により、前記可動接点と固定接点とが離間して当該ウィンカの点滅をキャンセルさせ得るターンシグナルスイッチにおいて、
前記連動部材は、前記操作ノブの摺動操作及び押し込み操作と連動して所定の揺動軸を中心に揺動可能とされたことを特徴とするターンシグナルスイッチ。
【請求項2】
前記操作ノブは、中立位置に常時付勢されて左右に摺動操作可能なスライドノブと、該スライドノブに形成されて押し込み操作可能なプッシュボタンとから構成されるとともに、当該プッシュボタンは、前記スライドノブの摺動操作によって前記連動部材に形成された被操作側傾斜面と対峙可能な操作側傾斜面を有するとともに、押し込み操作時に当該操作側傾斜面及び被操作側傾斜面によるカム作用で当該連動部材を連動させて前記可動接点を固定接点から離間させ得るよう構成されたことを特徴とする請求項1記載のターンシグナルスイッチ。
【請求項3】
前記プッシュボタンは、前記連動部材に挿通される軸部材が突出形成されて成るとともに、当該軸部材に前記操作側傾斜面が形成されたことを特徴とする請求項2記載のターンシグナルスイッチ。
【請求項4】
前記操作側傾斜面及び被操作側傾斜面は、前記連動部材の揺動軌跡に倣った曲線状に形成されて成ることを特徴とする請求項2又は請求項3記載のターンシグナルスイッチ。
【請求項5】
前記操作ノブと前記連動部材の揺動軸との間の寸法より前記可動接点の固定接点との接触部と当該連動部材の揺動軸との間の寸法の方が大きく設定されたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載のターンシグナルスイッチ。
【請求項6】
前記連動部材に形成され、前記操作ノブの摺動操作による当該連動部材の揺動状態を保持し得るとともに、当該操作ノブの左右の摺動操作時に節度を付与する節度付与手段を具備したことを特徴とする請求項1〜5の何れか1つに記載のターンシグナルスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−249209(P2011−249209A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122698(P2010−122698)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000213954)朝日電装株式会社 (184)
【Fターム(参考)】