説明

ダイカスト成形方法およびダイカストマシン

【課題】簡単な構成で、ピンと穴との間の隙間に離型剤が浸入するのを防止したり、浸入した離型剤を取り除くことができ、もって、ダイカスト製品の成形不良を低減させる。
【解決手段】ダイカストマシンは、ピン10が嵌挿される穴11を有するダイカスト金型1、2と、このダイカスト金型1、2のキャビティ面1a、2aに液状離型剤3を塗布する離型剤塗布手段5と、ダイカスト金型1、2のキャビティ面1a、2aに液状離型剤3を塗布するとき以後に、穴11を吸引する吸引手段6、または、穴11内に圧縮気体を吹き付ける吹き付け手段7とを有している。ダイカスト金型1、2のキャビティ面1a、2aに液状離型剤3を塗布するときと同時またはその後に、穴11を吸引するかまたは穴11内に圧縮気体を吹き付けることにより、穴11内に液状離型剤3が入り込むのを防止するかまたは穴11内に入り込んだ液状離型剤3を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカスト成形方法およびダイカストマシンに関し、特に、ダイカスト金型がピンが嵌挿される穴を有しており、キャビティ面に液状離型剤を塗布するダイカスト成形方法およびダイカストマシンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダイカスト成形では、キャビティ内への溶融金属材料の充填に先だって、ダイカスト金型のキャビティ面に液状離型剤を塗布することが一般に行われている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1には、成形品に鋳包み可能な被鋳包部材と、該成形品を成形するキャビティ型面及び該被鋳包部材が配置される保持部をもつ成形型とを用い、該被鋳包部材を該保持部に配置した該成形型のキャビティ型面に、液成分を含む離型剤を塗布する塗布操作と、塗布した余剰の該離型剤を除去する除去操作とを実施する方法であって、該成形型及び該被鋳包部材の少なくとも一方が所定の温度よりも低いときには、該除去操作による液成分の除去度合を高めるようにしたこと、およびこの発明において、離型剤は泡を含有することを特徴とする離型剤の塗布方法が開示されている。
【0004】
すなわち、特許文献1では、塗布した余剰の離型剤を除去する除去操作を実施するに際して、成形型及び被鋳包部材の少なくとも一方の温度に応じて余剰の離型剤を除去する度合を変更することが開示されている。
【0005】
そして、特許文献1には、「金型の保持部に配置したシリンダライナに離型剤の液成分が残留することがある。この場合には、液成分が溶湯の熱でガス化し、欠陥が生じたり、シリンダライナの密着性が低下したりし、成形不良の要因となるので好ましくない。」こと(0004)、「シリンダライナ等の被鋳包剤における離型剤の液成分の残留を抑え、成形不良を低減するのに有利な離型剤の塗布方法を提供することを課題とする。」こと(0006)などと記載されている。
【0006】
ところで、ダイカスト金型は、所定の鋳抜き穴を形成するための鋳抜きピンや、ダイカスト製品を取出すための押出しピンなど、ピンが嵌挿された穴を一般に有している。このようなピンと穴との間には、わずかな隙間が形成されている。
【0007】
【特許文献1】特開平9‐271928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1にあっては、成形型のキャビティ型面に塗布された余剰の離型剤を除去することができても、ピンと穴との間の隙間に離型剤が浸入するのを防止したり、浸入した離型剤を除去することができなかった。そのため、かかる隙間に侵入した離型剤の水分が溶湯の熱によって気化することから、離型剤の液成分の残留を抑えて成形不良を低減することを完全にはできないという問題があった。そして、穴とピンとの間に浸入した離型剤が固化してピンの穴に対する軸方向の移動が阻害されるなどの問題もあった。これらの問題は、特にキャビティ内を減圧する真空ダイカスト成形法の場合に顕著に発生することとなる。
【0009】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、ピンと穴との間の隙間に液状離型剤が浸入するのを防止したり、浸入した液状離型剤を取り除くことができ、もって、ダイカスト製品の成形不良を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明のダイカスト成形方法に係る発明は、ピンが嵌挿される穴を有するダイカスト金型のキャビティ面に液状離型剤を塗布するダイカスト成形方法であって、前記ダイカスト金型のキャビティ面に前記液状離型剤を塗布するとき以後に、前記穴を吸引するかまたは前記穴内に圧縮気体を吹き付けることを特徴とするものである。
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明のダイカストマシンに係る発明は、ピンが嵌挿される穴を有するダイカスト金型と、該ダイカスト金型のキャビティ面に液状離型剤を塗布する離型剤塗布手段とを有するダイカストマシンであって、前記ダイカスト金型のキャビティ面に前記液状離型剤を塗布するとき以後に、前記穴を吸引する吸引手段と、前記穴内に圧縮気体を吹き付ける吹き付け手段との少なくとも一方を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、ダイカスト金型のキャビティ面に液状離型剤を塗布した後に穴を吸引するかまたは穴内に圧縮気体を吹き付けることにより、穴とピンとの間の隙間に侵入した液状離型剤を除去することができ、また、ダイカスト金型のキャビティ面に液状離型剤を塗布するのと同時に穴内に圧縮気体を吹き付けることにより、穴とピンとの間の隙間に液状離型剤が侵入するのを防止することが可能なダイカスト成形方法を提供することができる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、離型剤塗布手段によってダイカスト金型のキャビティ面に液状離型剤を塗布した後に、吸引手段によって穴を吸引するかまたは吹き付け手段によって穴内に圧縮気体を吹き付けることにより、穴とピンとの間の隙間に侵入した液状離型剤を除去することができ、また、離型剤塗布手段によってダイカスト金型のキャビティ面に液状離型剤を塗布するのと同時に吹き付け手段によって穴内に圧縮気体を吹き付けることにより、穴とピンとの間の隙間に液状離型剤が侵入するのを防止することが可能なダイカストマシンを提供することができる。
【0014】
(発明の態様)
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(4)項が請求項2に相当する。
【0015】
(1) ピンが嵌挿される穴を有するダイカスト金型のキャビティ面に液状離型剤を塗布するダイカスト成形方法であって、
前記ダイカスト金型のキャビティ面に前記液状離型剤を塗布するとき以後に、前記穴を吸引するかまたは前記穴内に圧縮気体を吹き付けることを特徴とするダイカスト成形方法。
【0016】
(1)項に記載の発明では、ダイカスト金型のキャビティ面に液状離型剤を塗布するのと同時に穴内に圧縮気体を吹き付けることにより、穴とピンとの間の隙間に液状離型剤が侵入するのを防止することができる。また、ダイカスト金型のキャビティ面に液状離型剤を塗布した後に穴を吸引するかまたは穴内に圧縮気体を吹き付けることにより、穴とピンとの間の隙間に侵入した液状離型剤を除去することができる。
【0017】
(2) 前記穴をキャビティ面側の開口から吸引することを特徴とする(1)項に記載のダイカスト成形方法。
【0018】
(2)項に記載の発明では、(1)項に記載の発明において、型開きした状態で穴をキャビティ面側の開口から容易に吸引して、穴とピンとの間の隙間に侵入した液状離型剤を除去することができる。
【0019】
(3) 前記穴のキャビティ面とは反対側開口から圧縮気体を吹き付けることを特徴とする(1)項または(2)項のいずれかに記載のダイカスト成形方法。
【0020】
(3)項に記載の発明では、(1)項または(2)項のいずれかに記載の発明において、穴のキャビティ面とは反対側開口から、ダイカスト金型のキャビティ面に液状離型剤を塗布するのと同時に圧縮気体を吹き付ける場合には、穴とピンとの間の隙間に液状離型剤が侵入するのを確実に防止することができ、また、ダイカスト金型のキャビティ面に液状離型剤を塗布した後に圧縮気体を吹き付ける場合には、穴とピンとの間の隙間に浸入した液状離型剤をキャビティ面に戻すよう除去することができる。
【0021】
(4) ピンが嵌挿される穴を有するダイカスト金型と、該ダイカスト金型のキャビティ面に液状離型剤を塗布する離型剤塗布手段とを有するダイカストマシンであって、
前記ダイカスト金型のキャビティ面に前記液状離型剤を塗布するとき以後に、前記穴を吸引する吸引手段と、前記穴内に圧縮気体を吹き付ける吹き付け手段との少なくとも一方を有することを特徴とするダイカストマシン。
【0022】
(4)項に記載の発明では、離型剤塗布手段によってダイカスト金型のキャビティ面に液状離型剤を塗布するのと同時に吹き付け手段によって穴内に圧縮気体を吹き付けることにより、穴とピンとの間の隙間に液状離型剤が侵入するのを防止することができる。また、離型剤塗布手段によってダイカスト金型のキャビティ面に液状離型剤を塗布した後に、吸引手段によって穴を吸引するかまたは吹き付け手段によって穴内に圧縮気体を吹き付けることにより、穴とピンとの間の隙間に侵入した液状離型剤を除去することができる。
【0023】
(5) 前記吸引手段が穴のキャビティ面側の開口と接続可能であり、また、前記吹き付け手段が穴のキャビティ面側とは反対側の開口と接続可能であることを特徴とする(4)項に記載のダイカストマシン。
【0024】
(5)項に記載の発明では、(4)項に記載の発明において、型開きした状態で吸引手段を穴のキャビティ面側の開口と接続可能とすることにより、簡単な構造で、穴をキャビティ面側の開口から容易に吸引して、穴とピンとの間の隙間に侵入した液状離型剤を除去することができる。また、吹き付け手段を穴のキャビティ面側とは反対側の開口と接続可能とすることにより、ダイカスト金型のキャビティ面に液状離型剤を塗布するのと同時に圧縮気体を吹き付ける場合には、穴とピンとの間の隙間に液状離型剤が侵入するのを確実に防止することができ、また、ダイカスト金型のキャビティ面に液状離型剤を塗布した後に圧縮気体を吹き付ける場合には、穴とピンとの間の隙間に浸入した液状離型剤をキャビティ面に戻すよう除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
最初に、本発明のダイカストマシンの実施の一形態について、図1に基づいて説明する。同一符号は、同様または相当する部分を示すものとする。
本発明のダイカストマシンは、概略、ピン10が嵌挿される穴11を有するダイカスト金型1、2と、このダイカスト金型1、2のキャビティ面1a、2aに液状離型剤3を塗布する離型剤塗布手段5と、ダイカスト金型1、2のキャビティ面1a、2aに塗布するとき以後に、穴11を吸引する吸引手段6、または、穴11内に圧縮気体を吹き付ける吹き付け手段7とを有している。
【0026】
ダイカスト金型1、2は、互いに衝合して型締めすることにより内部に所定形状のキャビティを形成するもので、可動盤13および固定盤14にそれぞれ取付けられる。可動金型1には、ダイカスト製品に所定の鋳抜き穴を形成するための鋳抜きピンや、ダイカスト製品を取出すための押出しピン10などが嵌挿される穴11を有している。ピン10と穴11との間には、わずかな隙間が形成されている。
【0027】
離型剤塗布手段5は、液状離型剤3を噴霧するノズル50と、ノズル50を支持するとともに自在に移動させるロボットなどのアクチュエータ51と、を備えている。ノズル50は、例えば、圧縮空気を供給することによりベンチュリ作用によって、外部タンクから供給される液状離型剤3をダイカスト金型1、2のキャビティ表面1a、2aに噴霧するもので、固定金型2と可動金型1に対して同時に噴霧できるように構成されている。また、ノズル50は、アクチュエータによって、図1に矢印で示したように、昇降移動(図の上下方向)、型開きした状態の可動金型1と固定金型2との双方のキャビティ面に対する近接・離間方向への移動(図の左右方向)、およびノズル50の方向を変更する旋回の他、型開きした状態の可動金型1と固定金型2とのキャビティ面に対する水平方向(図の紙面に対する垂直方向)など、任意の位置および方向に液状離型剤3を噴霧できるよう支持されている。
【0028】
さらに、アクチュエータ51には、吸引手段6または吹き付け手段7がノズル50の下方に支持されている。吸引手段6または吹き付け手段7は、ダイカスト金型1、2の穴11に嵌挿されたピン10を内嵌し得る筒状部材8を有している。吸引手段6を採用する場合には、筒状部材8がフレキシブルホースを介して減圧ポンプなどが接続される。また、吹き付け手段7を採用する場合には、筒状部材8がフレキシブルホースを介してエアコンプレッサなどが接続される。
【0029】
次に、本発明のダイカストマシンの別の実施の形態について、図2に基づいて説明する。なお、この第2に実施の形態においては、上述した第1の実施の形態と異なる部分についてのみ説明することとする。
【0030】
この実施の形態においては、アクチュエータ51にノズル50のみが支持されている。そして、ピン10を設ける穴11を有する可動金型1が取付けられる可動盤13には、その背面を覆うようにチャンバ9が設けられている。チャンバ9には、吸引手段6を構成する減圧ポンプなど、または、吹き付け手段7を構成するエアコンプレッサなどが管路を介して接続される。
【0031】
次に、本発明のダイカスト成形方法の実施の形態を、上述したように構成されたダイカストマシンを使用する場合により、図3に基づいて詳細に説明する。
本発明のダイカスト成形方法は、概略、ピン10が嵌挿される穴11を有するダイカスト金型1、2のキャビティ面1a、2aに液状離型剤3を塗布する工程(図3のS1)と、このダイカスト金型1、2のキャビティ面1a、2aに塗布するときと同時またはその後に、穴11を吸引するかまたは穴11内に圧縮気体を吹き付けることにより、穴11内に液状離型剤3が入り込むのを防止するかまたは穴11内に入り込んだ液状離型剤3を除去する工程(図3のS2)とを行うものである。
なお、この実施の形態では、図1において、ダイカストマシンが、ノズル50の下方に吸引手段6を支持しているものである場合により説明する。
【0032】
ダイカスト成形を行うにあたり、最初に、固定金型2から可動金型1を離間させて型開きした状態とし、アクチュエータ51の作動によってノズル50を固定金型2と可動金型1との間で移動させながら、両金型1、2の相対向するキャビティ面1a、2aに液状離型剤3を噴霧することにより塗布する(図3のS1)。その後、型開きを維持した状態で、アクチュエータ51の作動により吸引手段6を移動させて、可動金型1のピン10が嵌挿された穴11の周囲に吸引手段6の筒状部材8の先端を当接して、吸引手段6の減圧ポンプを駆動して吸引する(図3のS2)。先にノズル50から噴霧されてピン10の穴11に侵入した液状離型剤3は、減圧ポンプにより、穴11のキャビテイ面1a側の開口から容易に吸い出され、確実に除去される。
【0033】
次いで、可動金型1を固定金型2に近接移動させて型締し(図3のS3)、真空ダイカストの場合にはキャビティ内を減圧し(図3のS4)、キャビティ内へ溶湯を射出し(図3のS5)、溶湯が固化してから型開きし(図3のS6)、製品を取り出して(図3のS7)一成形サイクルを完了する。本発明では、ピン10と穴11との隙間に液状離型剤3が存在しないため、液状離型剤3が溶湯の熱でガス化することによる成形不良を防止することができる。
【0034】
次に、本発明のダイカスト成形方法の第2の実施の形態を説明する。この実施の形態においては、図1において、ダイカストマシンが、ノズル50の下方に吹き付け手段7を支持しているものである場合により、上述した第1の実施の形態と異なる部分のみについて説明する。
【0035】
型開きした状態で、ノズル7をアクチュエータ51の作動により移動させながら、ノズル50から可動金型1と固定金型2との相対向するキャビティ面1a、2aに液状離型剤3を噴霧する(図3のS1)。その後、型開きを維持した状態で、アクチュエータ51の作動により吹き付け手段7を移動させて、可動金型1のピン10が嵌挿された穴11の周囲に吹き付け手段7の筒状部材8の先端を当接させて、吹き付け手段3のエアコンプレッサを駆動して穴11内に圧縮空気を吹き付ける。先にノズル50から噴霧されてピン10の穴11に侵入した液状離型剤3は、エアコンプレッサにより所定の圧力で空気を吹き付けられて、穴11のキャビテイ面1a側の開口から反対側の開口へと容易にエアブローされて、確実に除去される(図3のS2)。
【0036】
次に、本発明のダイカスト成形方法の第3の実施の形態を説明する。この実施の形態においては、図2において、ダイカストマシンが、可動盤13の背面を覆うように設けられたチャンバ9に、吸引手段6を接続したものである場合により、上述した第1および第2の実施の形態と異なる部分のみについて説明する。
【0037】
型開きした状態で、ノズル50をアクチュエータ51の作動により移動させながら、ノズル50から可動金型1と固定金型2との相対向するキャビティ面1a、2aに液状離型剤3を噴霧することにより塗布する(図3のS1)。その後、型開きを維持した状態または型締めした状態で、吸引手段の減圧ポンプを駆動する。先にノズル50から噴霧されてピン10の穴11に侵入した液状離型剤3は、減圧ポンプにより、穴11のキャビテイ面1a側の開口から反対側(背面側)の開口を介してチャンバ9内へと容易に吸引されて、確実に除去される(図3のS2)。なお、チャンバ9には、吸引され貯まった液状離型剤3を排出するためのドレンを設けることが望ましい。
【0038】
次に、本発明のダイカスト成形方法の第4の実施の形態を説明する。この実施の形態においては、図2において、ダイカストマシンが、可動盤13の背面を覆うように設けられたチャンバ9に、吹き付け手段7を接続したものである場合により、上述した第1〜第3の実施の形態と異なる部分のみについて説明する。
【0039】
型開きした状態で、ノズル50をアクチュエータ51の作動により移動させながら、ノズル50から可動金型1と固定金型2との相対向するキャビティ面1a、2aに液状離型剤3を噴霧することにより塗布する(図3のS1)。その後、型開きを維持した状態または型締めした状態で、吹き付け手段7のエアコンプレッサにより圧縮空気を穴11内に吹き付ける。先にノズル50から噴霧されてピン10の穴11に侵入した液状離型剤3は、穴11の背面側からキャビテイ面1a側に向けてエアブローされて、確実に除去される。この実施の形態ではチャンバ9が可動盤13の背面に設けられているので、型開きした状態でなく型閉じした状態であっても、穴11内に侵入した液状離型剤3を除去することができる。そのため、成形サイクルの短縮化を図ることができる。
【0040】
次に、本発明のダイカスト成形方法の第5の実施の形態を説明する。この実施の形態においては、図2において、ダイカストマシンが、可動盤13の背面を覆うように設けられたチャンバ9に、吹き付け手段7を接続したものである場合により、上述した第1〜第4の実施の形態と異なる部分のみについて説明する。
【0041】
上述した第4の実施の形態では、キャビティ面1a、2aに液状離型剤3を噴霧した後に穴11内に圧縮空気3を吹き付けて穴11に侵入した液状離型剤3を除去していたのに対して、この第5の実施の形態においては、ノズル50から可動金型1と固定金型2との相対向するキャビティ面1a、2aに液状離型剤3を噴霧するのと同時に、吹き付け手段7のエアコンプレッサによりチャンバ9内に圧縮空気を供給して穴11内に吹き付ける。これにより、この実施の形態では、ノズル50から噴霧された液状離型剤3がピン10の穴11に侵入するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明によるダイカストマシンの、実施の一形態の要部を示す断面図である。
【図2】本発明によるダイカストマシンの、別の実施の形態の要部を示す断面図である。
【図3】本発明を含む一連の工程を説明するためのブロック図である。
【符号の説明】
【0043】
1:可動金型、 2:固定金型、 3:液状離型剤、 5:塗布手段、 6:吸引手段、 7:吹き付け手段、 9:チャンバ、 10:ピン、 11:穴


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピンが嵌挿される穴を有するダイカスト金型のキャビティ面に液状離型剤を塗布するダイカスト成形方法であって、
前記ダイカスト金型のキャビティ面に前記液状離型剤を塗布するとき以後に、前記穴を吸引するかまたは前記穴内に圧縮気体を吹き付けることを特徴とするダイカスト成形方法。
【請求項2】
ピンが嵌挿される穴を有するダイカスト金型と、該ダイカスト金型のキャビティ面に液状離型剤を塗布する離型剤塗布手段とを有するダイカストマシンであって、
前記ダイカスト金型のキャビティ面に前記液状離型剤を塗布するとき以後に、前記穴を吸引する吸引手段と、前記穴内に圧縮気体を吹き付ける吹き付け手段との少なくとも一方を有することを特徴とするダイカストマシン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−212979(P2008−212979A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−54006(P2007−54006)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】