説明

ダイカスト装置及びダイカスト方法

【課題】低速・低圧条件下で射出を行い、高品質のダイカスト製品を得ることができる真空ダイカスト装置及び真空ダイカスト方法の提供。
【解決手段】金属を溶解する溶解炉と、該溶解炉で作られた金属溶湯を保温容器9に注湯する注湯装置と、該注湯装置により金属溶湯が注湯された前記保温容器を把持するとともに搬送する把持供給装置と、該把持供給装置により搬送された保温容器を収容する開口部が形成された一の型72と、該一の型と重なり合って前記金属溶湯が充填されるキャビティ73を形成する他の型71を備えるダイカスト機からなり、前記開口部には、該開口部軸方向に沿って往復移動するプランジャチップ783が配され、該プランジャチップが前記他の型と協働して前記保温容器を圧縮破壊し、前記金属溶湯を前記キャビティ内で流動させることを特徴とするダイカスト装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカスト金属製品を成型するダイカスト装置及びダイカスト方法に関し、より詳しくは、低速且つ低圧で金属溶湯を射出することを可能とする真空ダイカスト装置及び真空ダイカスト方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の開発分野では、車両の軽量化やエンジン効率の向上等の観点から、軽量金属の成型加工技術の開発が行なわれ、車両重量の大部分を占めるエンジン、シャーシやボディへの軽金属の利用が試みられてきた。
これらに適用が期待される軽量金属としてアルミニウム合金を挙げることができ、エンジンやシャーシへの実用化が進んでいる。更に大きな部品であるボディへの展開については、これまでのところ、欧米において、アルミニウムで車両ボディ全体を形成した自動車が開発された実用例がある。また、日本においても、アルミニウムで車両ボディ全体を形成した自動車の試作或いは少量生産がなされた例がある。
しかしながら、いずれの例においても、プレス板材、展伸材や鋳造材の個々の部品を多数(例えば、300点)組み合わせたり、接合したりするものであり、高コスト及び低生産性の壁に阻まれ、生産が拡大するに至っていない。
【0003】
この高コスト及び低生産性の技術的障壁を克服するためには、ダイカスト技術の革新的発展が不可欠である。薄肉、大型、複雑な部品の製造が可能なダイカスト技術の開発により、車両ボディ全体を大幅に少ない部品点数(例えば、30点)で低コストに成型することが可能となれば、車両重量の大幅な低減を図ることができ、自動車の性能向上のみならず排ガス量低減等の地球環境への好影響を与えることが可能となる。
【0004】
図29は、従来の真空装置付ダイカスト装置を示す模式図である。
図29に示すダイカスト装置は、可動金型と、可動金型の反対側に配される固定金型を備える。可動金型と固定金型が型締めされると、可動金型と固定金型の境界にキャビティが形成される。キャビティは、所望の製品の外形輪郭を模っている。
ダイカスト装置は、プランジャを備える。プランジャは、可動金型に備えられ、プランジャの先端部は、ランナを通じて、キャビティに連通する。プランジャ内には、金属溶湯が装填され、プランジャが作動すると、金属溶湯がキャビティ内に射出され、キャビティ内に充填される。
【0005】
プランジャの射出口は、ランナ及びゲートを介して、キャビティから離れた位置に配される。プランジャの射出口の反対側のキャビティの縁部近傍には、オーバーフロー、真空バルブ及び吸引路が設けられる。吸引路の下流には、真空ポンプ等の真空発生装置(図示せず)が配され、真空発生装置はキャビティ内の空気を吸引する。
プランジャが作動し、プランジャから金属溶湯がランナ及びゲートを経由してキャビティ内に射出されると、金属溶湯はキャビティ縁部からキャビティ、オーバーフロー及び真空バルブ内に進入する。進入してきた金属溶湯はセンサにより検知され、この検知により真空バルブが閉じ、真空発生装置への金属溶湯の進入が防止される。
【0006】
固定金型(或いは可動金型)には加圧ピンが配され、可動金型には押出ピンが配される。
キャビティ内を金属溶湯が充填されると、加圧ピンが作動し、キャビティ内部を更に加圧し、凝固遅れ部位の凝固収縮を防ぐ。この後、キャビティ内で金属溶湯が固化し、成型が完了すると、可動金型と固定金型は型開工程にて互いに離間する。そして、押出ピンが作動し、固定金型から成型された製品が押し出され、ダイカスト金属製品がダイカスト装置から取り出される。
【0007】
図29に示すダイカスト装置においては、プランジャからの金属溶湯の射出は高速且つ高圧で行なう必要がある。なぜなら、上述の如く、金属溶湯は、射出を行なう金属製のプランジャ、金属溶湯の流れを制御並びに分配するとともに金属溶湯中の介在物や不純物を排除するためのランナ及びゲートを通じて、キャビティ内にもたされることとなり、金属溶湯は金型内で長距離を流動する必要を生じ、冷却が速く進行することとなるからである。金属溶湯が流動し、完全にキャビティを満たす前に金属溶湯が固化するならば、所望の製品形状を得ることができないこととなる。
一方、高速射出は空気の巻き込みの原因となり、その気泡を押し潰すために、射出には高圧(例えば、溶湯圧力が500気圧)が要求される。それ故、高速・高圧を可能にする巨大なダイカストマシン及び金型が必要となり、高コストにならざるを得ない。そこで、巻き込み空気を低減する目的で、複雑且つ高価な真空バルブを導入することとなるが、凝固が速く十分な真空吸引時間がとれないこと、金型の隙間からのリークが多いこと、離型剤・潤滑剤からのガス発生などにより十分な真空度を達成できないなどの問題がある。
【0008】
このような高速・高圧の金属溶湯の射出は、ダイカスト成型技術において、多くの品質の問題も引き起こす。
例えば、特許文献1及び特許文献2は、このような高速・高圧の射出が、キャビティ内で金属溶湯の乱流を引き起こすことに起因して、キャビティ内の不十分なガス抜けを生じさせることに言及している。更に、特許文献1及び2は、この不十分なガス抜けは、ダイカスト製品内の気泡となって現れ、ダイカスト製品の品質の低下をもたらすことについて言及している。
また、特許文献1及び特許文献2は、この不十分なガス抜けの対策として、キャビティ内を活性ガスで置換する無孔性ダイカスト法やキャビティ内を減圧する手法を紹介するとともに、このような対策手法を採用した場合には、ダイカスト装置の構造が複雑になるという問題点やキャビティ内を減圧する間にプランジャのスリーブ内で金属溶湯が冷却固化するという問題点に言及している。
更に、特許文献3は、高速・高圧の射出によるプランジャへの負荷の問題に言及している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭60−83762号公報
【特許文献2】特開2005−329464号公報
【特許文献3】特開平5−69104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1乃至3に例示する如く、高速・高圧条件での金属溶湯の射出はダイカスト成型技術において多くの問題を生じさせていることは既知であるが、従来において、低速・低圧条件下で金属溶湯を射出し、ダイカスト製品を得ることは成功していない。事実、上記特許文献1乃至3に例示される問題に対処すべく、特許文献1乃至3に開示される発明は、高速・高圧条件での金属溶湯の射出を前提として、それぞれの課題を解決している。
【0011】
しかしながら、現状において、真に望まれる技術は、低速・低圧条件下で射出を行なってダイカスト製品を得ることであり、本発明は低速・低圧条件下で射出を行い、巻き込みや引け巣などといった鋳造欠陥のない高品質の薄肉ダイカスト製品を得ることができるダイカスト装置及びダイカスト方法を提供することを目的とする。
更に、本発明は、低速・低圧条件下で射出を行い、自動車ボディのような大型の薄肉成型品を得ることを可能とするダイカスト装置及びダイカスト方法を提供することを目的とする。
加えて、本発明は簡素且つ小型の構造を備えるダイカスト装置を提供することを目的とする。
更に、本発明は、製品の種類に応じて、適切且つ精密な制御を可能とするダイカスト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の発明は、金属を溶解する溶解炉と、該溶解炉で作られた金属溶湯を保温容器に注湯する注湯装置と、該注湯装置により金属溶湯が注湯された前記保温容器を把持するとともに搬送する把持供給装置と、該把持供給装置により搬送された保温容器を収容する開口部が形成された一の型と、該一の型と重なり合って前記金属溶湯が充填されるキャビティを形成する他の型を備えるダイカスト機からなり、前記開口部には、該開口部軸方向に沿って往復移動するプランジャチップが配され、該プランジャチップが前記他の型と協働して前記保温容器を圧縮破壊し、前記金属溶湯を前記キャビティ内で流動させることを特徴とするダイカスト装置である。
【0013】
請求項2記載の発明は、搬送装置を更に備え、該搬送装置が、前記注湯装置から前記把持供給装置まで、前記金属溶湯を収容する前記保温容器を搬送することを特徴とする請求項1記載のダイカスト装置である。
請求項3記載の発明は、前記搬送装置による前記保温容器の搬送経路の途中に配される保温炉を更に備え、該保温炉が、前記金属溶湯が所定の温度以下になることを防ぐことを特徴とする請求項1又は2記載のダイカスト装置である。
【0014】
請求項4記載の発明は、前記搬送装置が更に、両端が開口した把持用筒体を搬送し、該把持用筒体が、前記保温容器を外嵌することを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のダイカスト装置である。
請求項5記載の発明は、前記把持用筒体の開口端部の少なくとも一部が、前記保温容器の開口端部と一致しないことを特徴とする請求項4記載のダイカスト装置である。
【0015】
請求項6記載の発明は、前記把持供給装置が、前記搬送装置から前記ダイカスト機まで移動する移動基台と、該移動基台に取付けられる第1の挟持機構を備え、該第1の挟持機構が、前記保温容器の内側に配される内側部材と、前記保温容器を外嵌する前記把持用筒体の外側に配される外側部材を備え、前記内側部材と前記外側部材のうち少なくとも一方が、他方に向けて移動し、前記保温容器と前記把持用筒体の周壁を同時に挟持することを特徴とする請求項5記載のダイカスト装置である。
請求項7記載の発明は、前記移動基台に取付けられる第2の挟持機構を備え、該第2の挟持機構が、前記保温容器を外嵌する前記把持用筒体の内側に配される内側部材と、前記保温容器を外嵌する前記把持用筒体の外側に配される外側部材を備え、前記内側部材と前記外側部材のうち少なくとも一方が、他方に向けて移動し、前記把持用筒体の周壁のみを挟持することを特徴とする請求項6記載のダイカスト装置である。
【0016】
請求項8記載の発明は、フィルタ取り付け装置を更に備え、該フィルタ取り付け装置が、前記ダイカスト装置の前記開口部にフィルタ部材を取り付けることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載のダイカスト装置である。
請求項9記載の発明は、フィルタを前記ダイカスト機に搬送するフィルタ取り付け装置を更に備え、前記フィルタが、前記金属溶湯中の不純物を濾過するフィルタ本体部と、一対の半円環形状の板材からなるリング部材からなり、該リング部材の少なくとも一部が、前記ダイカスト装置の前記開口部の端部に嵌め込み可能であり、前記フィルタ取り付け装置が、前記フィルタを前記ダイカスト機に搬送すると、前記フィルタが前記一の型の前記開口部を少なくとも部分的に閉塞することを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載のダイカスト装置である。
請求項10記載の発明は、前記一の型が固定金型であり、前記他の型が可動金型であり、該可動金型が、前記固定金型と接触する第1位置と、前記固定金型から離間する第2位置との間を移動することを特徴とする請求項1乃至9いずれかに記載のダイカスト装置である。
【0017】
請求項11記載の発明は、前記開口部が、前記一の型を貫通するとともに該一の型外方に延出する筒状のスリーブにより形成されることを特徴とする請求項1乃至10いずれかに記載のダイカスト装置である。
請求項12記載の発明は、前記一の型の外側に位置する前記スリーブの端部にアクチュエータが取り付けられ、該アクチュエータが前記プランジャチップを前記スリーブ軸方向に往復動させることを特徴とする請求項11記載のダイカスト装置である。
請求項13記載の発明は、前記スリーブ内部が、第1の真空発生装置と接続する管路を備えることを特徴とする請求項12記載のダイカスト装置である。
【0018】
請求項14記載の発明は、前記可動金型が、該可動金型を貫通するとともに該可動金型内を摺動する押出ピンを備え、該押出ピンの一端部が前記キャビティに現れることを特徴とする請求項10記載のダイカスト装置である。
請求項15記載の発明は、前記押出ピンと前記可動金型の間の境界に空気が流動可能な流路が形成され、該流路が第2の真空発生装置に接続することを特徴とする請求項14記載のダイカスト装置である。
【0019】
請求項16記載の発明は、前記キャビティ内で成型された成型品を前記ダイカスト機から取り出す取り出し装置を更に備え、前記可動金型が前記第2位置にあるとき、前記取り出し装置が前記固定金型と前記可動金型の間に配され、前記押出ピンから押し出された前記成型品を受け止めることを特徴とする請求項14又は15記載のダイカスト装置である。
請求項17記載の発明は、前記アクチュエータが前記プランジャチップを振動させることを特徴とする請求項12乃至16いずれかに記載のダイカスト装置である。
【0020】
請求項18記載の発明は、前記開口部が、前記キャビティ外周縁で囲まれる領域の内方に位置することを特徴とする請求項1乃至17いずれかに記載のダイカスト装置である。
請求項19記載の発明は、前記開口部を複数備えることを特徴とする請求項1乃至18いずれかに記載のダイカスト装置である。
【0021】
請求項20記載の発明は、減圧センサを更に備え、該減圧センサが前記キャビティ内の真空度を測定することを特徴とする請求項1乃至19いずれかに記載のダイカスト装置である。
請求項21記載の発明は、位置センサを更に備え、該位置センサが、前記プランジャチップの位置を測定することを特徴とする請求項1乃至20いずれかに記載のダイカスト装置である。
請求項22記載の発明は、圧力センサを更に備え、該圧力センサが前記キャビティ内の圧力を測定することを特徴とする請求項1乃至21いずれかに記載のダイカスト装置である。
請求項23記載の発明は、前記キャビティ内の真空度を測定する減圧センサと、前記プランジャチップの位置を測定する位置センサと、前記キャビティ内の圧力を測定する圧力センサと、前記キャビティ内の温度を測定する温度センサと、前記減圧センサ、前記位置センサ、前記圧力センサ、前記温度センサからなる群から選択される少なくとも1つからの信号を受信するとともに、該受信した信号に応じた信号を前記アクチュエータに送信する制御盤を備え、該アクチュエータが、前記送信された信号に基づき動作することを特徴とする請求項12記載のダイカスト装置である。
【0022】
請求項24記載の発明は、前記開口部が、前記キャビティ内に充填された金属溶湯が最後に凝固する最終凝固位置に配されることを特徴とする請求項1乃至23いずれかに記載のダイカスト装置である。
請求項25記載の発明は、前記開口部が、前記キャビティ内を流動する金属溶湯の流動距離が最短となる充填最適位置に配されることを特徴とする請求項1乃至24いずれかに記載のダイカスト装置である。
請求項26記載の発明は、前記開口部が、前記ダイカスト製品を前記固定金型から離脱させるときに最も力を要する部分に力を加える位置に配されることを特徴とする請求項1乃至25いずれかに記載のダイカスト装置である。
【0023】
請求項27記載の発明は、前記一の型の前記キャビティを形成する面に耐久塗型剤がコーティングされていることを特徴とする請求項1乃至26いずれかに記載のダイカスト装置である。
請求項28記載の発明は、前記他の型の前記キャビティを形成する面に耐久塗型剤がコーティングされていることを特徴とする請求項1乃至27いずれかに記載のダイカスト装置である。
請求項29記載の発明は、前記耐久塗型剤が、雲母を含むことを特徴とする請求項27又は28記載のダイカスト装置である。
請求項30記載の発明は、前記耐久塗型剤が、ボロンナイトライドを含むことを特徴とする請求項27又は28記載のダイカスト装置である。
請求項31記載の発明は、前記耐久塗型剤が更に、水ガラスを含むことを特徴とする請求項29又は30記載のダイカスト装置である。
請求項32記載の発明は、前記耐久塗型剤が更に、リン酸アルミニウムを含むことを特徴とする請求項29又は30記載のダイカスト装置である。
請求項33記載の発明は、前記一の型の前記キャビティを形成する面の少なくとも一部にセラミック溶射による表面処理が施されることを特徴とする請求項1乃至32いずれかに記載のダイカスト装置である。
請求項34記載の発明は、前記他の型の前記キャビティを形成する面の少なくとも一部にセラミック溶射による表面処理が施されることを特徴とする請求項1乃至32いずれかに記載のダイカスト装置である。
【0024】
請求項35記載の発明は、前記一の型の前記キャビティを形成する面に細溝状の補助湯道が設けられることを特徴とする請求項1乃至34いずれかに記載のダイカスト装置である。
請求項36記載の発明は、前記他の型の前記キャビティを形成する面に細溝状の補助湯道が設けられることを特徴とする請求項1乃至35いずれかに記載のダイカスト装置である。
請求項37記載の発明は、前記一の型の前記キャビティを形成する面に細溝状の補助湯道が設けられ、前記補助湯道が、前記保温容器を収容する開口部を横切ることを特徴とする請求項9記載のダイカスト装置である。
請求項38記載の発明は、前記保温容器が、一端有底筒状の断熱材からなることを特徴とする請求項1乃至37いずれかに記載のダイカスト装置である。
【0025】
請求項39記載の発明は、所望の金属を溶解し、金属溶湯を得る溶解工程と、前記金属溶湯を、一端有底筒状の保温容器に注ぐ注湯工程と、前記金属溶湯を収容する保温容器を、ダイカスト機を構成する一の型に形成された開口部に供給する供給工程と、前記ダイカスト機の一の型に、該一の型に対向して配される他の型を重ね合せ、キャビティを形成する型閉工程と、前記キャビティに、前記保温容器に収容された前記金属溶湯を押し流す射出工程からなり、前記射出工程が、前記開口部内に配されたプランジャチップと前記他の型との間で前記保温容器を圧縮破壊する段階を含むことを特徴とするダイカスト方法である。
【0026】
請求項40記載の発明は、前記保温容器が、該保温容器を外嵌する把持用筒体を備え、前記供給工程が、前記把持用筒体の周壁と前記保温容器周壁を同時に挟持する段階と、前記把持用筒体と前記保温容器をともに前記開口部に供給する段階を備えることを特徴とする請求項39記載のダイカスト方法である。
請求項41記載の発明は、前記保温容器の開口端が該保温容器の底部に対して傾斜し、前記供給工程が、前記把持用筒体の周壁を挟持し、前記開口部内に供給された把持用筒体を前記開口部から取り除く段階を備えることを特徴とする請求項40記載のダイカスト方法である。
【0027】
請求項42記載の発明は、前記注湯工程の後且つ前記供給工程の前に、搬送工程を更に備え、該搬送工程が、前記保温容器に注湯する注湯装置から、前記ダイカスト機に前記保温容器を供給する供給装置まで前記保温容器を搬送する段階を含むことを特徴とする請求項39乃至41いずれかに記載のダイカスト方法である。
請求項43記載の発明は、前記搬送工程が更に、搬送中の保温容器内の金属溶湯の温度低下を抑止する段階を含むことを特徴とする請求項42記載のダイカスト方法である。
請求項44記載の発明は、前記供給工程が更に、前記ダイカスト機の前記一の型に形成された前記開口部にフィルタを取付ける段階を含むことを特徴とする請求項39乃至43いずれかに記載のダイカスト方法である。
請求項45記載の発明は、前記フィルタが、一対の半円形状の板材からなるリング部材を備え、該リング部材を前記ダイカスト機の前記一の型に形成された前記開口部に嵌入させ、該開口部を部分的に閉塞する段階を備えることを特徴とする請求項39乃至43いずれかに記載のダイカスト方法である。
【0028】
請求項46記載の発明は、前記射出工程が、前記キャビティ内を減圧する段階を含み、前記プランジャチップによる前記保温容器の圧縮破壊が、前記キャビティの減圧の後に行なわれることを特徴とする請求項39乃至45いずれかに記載のダイカスト方法である。
請求項47記載の発明は、前記射出工程が、前記キャビティ内の真空度を測定する段階を含み、前記キャビティ内の真空度の測定値が所定の閾値以下となった後に、前記プランジャチップによる前記保温容器の圧縮破壊が行われることを特徴とする請求項46記載のダイカスト方法である。
請求項48記載の発明は、前記射出工程が、前記キャビティ内の圧力を測定する段階を含むことを特徴とする請求項39乃至47いずれかに記載のダイカスト方法である。
請求項49記載の発明は、前記射出工程が、前記キャビティ内の温度を測定する段階を含むことを特徴とする請求項39乃至48いずれかに記載のダイカスト方法である。
【0029】
請求項50記載の発明は、前記他の型を前記一の型から離間させる型開工程を更に備え、該型開工程が、前記射出工程の後に実行されることを特徴とする請求項39乃至49いずれかに記載のダイカスト方法である。
請求項51記載の発明は、前記型開工程が、前記プランジャチップを前記他の型の離間方向へ移動させる段階を備えることを特徴とする請求項50記載のダイカスト方法である。
請求項52記載の発明は、前記型開工程が、前記プランジャチップの移動時に、前記プランジャチップに振動を与える段階を備えることを特徴とする請求項51記載のダイカスト方法である。
【0030】
請求項53記載の発明は、前記型開工程にて離間した前記一の型と前記他の型との間に、取り出し装置を配設する取り出し工程を更に備えることを特徴とする請求項50乃至52いずれかに記載のダイカスト方法である。
請求項54記載の発明は、前記取り出し工程が、前記他の型に取付けられた押出ピンを前記一の型に向けて移動させ、前記他の型に付着した成型品を前記取り出し装置に供給する段階を備えることを特徴とする請求項53記載のダイカスト方法である。
請求項55記載の発明は、前記取り出し工程が、前記成型品を前記取り出し装置に供給した後に、前記一の型及び前記他の型に離型剤を塗布する段階を備えることを特徴とする請求項54記載のダイカスト方法である。
【発明の効果】
【0031】
請求項1乃至5に記載の発明によれば、保温容器を用いて、金属溶湯をダイカスト機に供給するので、金属溶湯の温度低下がほとんど生じず、低速・低圧条件下での射出が可能となる。したがって、巻き込みや引け巣などといった鋳造欠陥のない高品質の薄肉ダイカスト製品を得ることができる。また、低い速度並びに低い圧力での射出成型が可能となるため、ダイカスト機自体の機械的強度を必要としない。したがって、ダイカスト機自体を小型化することが可能となる。
また、保温容器をダイカスト機に形成された開口部内に収容し、その後、プランジャチップを用いて保温容器を圧縮破壊することにより、金属溶湯の射出を行なう方式を採用するため、金属溶湯の射出を所望の位置で行うことができるので、キャビティ内の金属溶湯の流動経路を短縮することができる。したがって、自動車ボディのような大型の薄肉成型品を得ることが可能となる。例えば、薄板棒状の成型品を得ようとする場合、従来技術においては、金属溶湯の最大流動距離は、スリーブ、ランナ及び成型品の長さの総和に等しい距離であったが、本発明においては、成型品長さの半分以下である。この例からも明らかな如く、本発明においては、キャビティ内充填不良を防止するために、高圧・高速条件下で金属溶湯を射出する必要はなく、従来技術と比して、格段に低い速度並びに低い圧力で清浄且つ温度低下のない金属溶湯を射出して、高品質の成型品を得ることが可能となる。また、溶湯の分配、溶湯中の介在物の排除及び初期過冷却溶湯の除去の役割を担うランナやオーバフローなどが不要となるため、製品の歩留を大幅に向上させることが可能となる。
更に、保温容器を用いて金属溶湯をダイカスト機へ供給するので、従来のような金属溶湯が流動する供給用流路を形成する必要がなく、金属溶湯の温度管理或いは制御のための複雑なシステムを必要とせず、ダイカスト装置の構造や制御システムの簡素化を図ることが可能となる。更に、溶解炉からダイカスト機まで金属溶湯を搬送する間の金属溶湯の温度低下を最小限化できる。
請求項6及び7記載の発明によれば、ダイカスト機の開口部への保温容器の収容を容易且つ確実に行なうことが可能となる。
請求項8及び9記載の発明によれば、良質な金属溶湯を直接キャビティ内に射出することが可能となる。
【0032】
請求項10記載の発明によれば、可動金型が固定金型から離間した状態において、保温容器を開口部へ供給することが可能となる。
請求項11記載の発明によれば、所望の軸長寸法を有する保温容器を使用可能となる。
請求項12記載の発明によれば、プランジャチップが、射出、加圧及び押出の機能を発揮ことが可能となる。したがって、従来技術と比して、ダイカスト装置の構造の簡素化を図ることができる。
請求項13記載の発明によれば、管路からキャビティ内の空気を吸引し、キャビティ内を減圧することが可能となる。減圧する際に、管路へ向かう空気流れは保温容器周囲を通過することとなり、金属溶湯を吸い込む問題を生じない。したがって、金属溶湯射出前及び射出途中においても好適なガス抜きを行なうことが可能となる。更に、断熱性カプセル内部の金属溶湯は冷却されにくいため、吸引時間を長くとることが可能となり、従来技術と比してはるかに高い真空状態をキャビティ内に確保することが可能となる。即ち、従来技術においては、注湯後に即時射出工程をする必要があるため、吸引時間が不十分であるとともに、型構造の複雑さに起因してリーク量も多く、また、離型剤や潤滑剤からのガスの発生などにより、0.5〜0.1気圧程度の真空度が限界であったが、本発明によれば、0.1〜0.01気圧以下の高真空圧を達成可能となる。この高真空化により、従来、溶解工程で行われていた真空脱ガス処理をダイカスト機内で行うことが可能となり、非常に良質な金属溶湯を直接キャビティ内に射出することが可能となる。
【0033】
請求項14記載の発明によれば、様々な形状の成型品を成型し、ダイカスト機から取り出すことが可能となる。
請求項15記載の発明によれば、流路からキャビティ内の空気を吸引し、キャビティ内を減圧することが可能となる。減圧する際に、流路へ向かう空気流れは保温容器周囲を通過することとなり、金属溶湯を吸い込む問題を生じない。したがって、金属溶湯射出前及び射出途中においても好適なガス抜きを行なうことが可能となる。更に、保温容器内部の金属溶湯は冷却されにくいため、吸引時間を長くとることが可能となり、従来技術と比してはるかに高い真空状態をキャビティ内に確保することが可能となる。即ち、従来技術においては、注湯後に即時射出工程をする必要があるため、吸引時間が不十分であるとともに、型構造の複雑さに起因してリーク量も多く、また、離型剤や潤滑剤からのガスの発生などにより、0.5〜0.1気圧程度の真空度が限界であったが、本発明によれば、0.1〜0.01気圧以下の高真空圧を達成可能となる。この高真空化により、従来、溶解工程で行われていた真空脱ガス処理をダイカスト機内で行うことが可能となり、非常に良質な金属溶湯を直接キャビティ内に射出することが可能となる。
【0034】
請求項16記載の発明によれば、成型品の取り出し並びにその後の後工程への搬送を好適に実行することが可能となる。
請求項17記載の発明によれば、成型品の金型からの分離を好適に実行することが可能となる。
請求項18記載の発明によれば、プランジャチップを用いて、好適にダイカスト製品をキャビティから押し出すことが可能となる。
請求項19記載の発明によれば、複数のプランジャチップを必要な位置に最適配置することにより、大型の成型品を一体的に製造することが可能となる。
請求項20乃至22記載の発明によれば、射出前、射出途中、射出後の各成型工程における製造工程条件のパラメータデータを採取可能となる。
請求項23記載の発明によれば、射出前、射出途中、射出後の各成型工程における製造工程条件のパラメータデータに基づき、アクチュエータを制御することができ、精密な制御下での成型加工を行なうことができる。
請求項24乃至26記載の発明によれば、好適な射出、加圧や押出を実現可能となる。
請求項27乃至36記載の発明によれば、キャビティ内での金属溶湯の高い流動性を確保可能となる。
請求項37記載の発明によれば、成型されたダイカスト製品から保温容器を容易に除去可能となり、ダイカスト製品の軽量化を容易に図ることが可能となる。
請求項38記載の発明によれば、金属溶湯の温度低下を最小限化することが可能となる。
【0035】
請求項39記載の発明によれば、保温容器を用いて、金属溶湯をダイカスト機に供給するので、金属溶湯の温度低下がほとんど生じず、低速・低圧条件下での射出が可能となる。したがって、巻き込みや引け巣などといった鋳造欠陥のない高品質の薄肉ダイカスト製品を得ることができる。
また、保温容器をダイカスト機に形成された開口部内に収容し、その後、プランジャチップを用いて保温容器を圧縮破壊することにより、金属溶湯の射出を行なう方式を採用するため、金属溶湯の射出を所望の位置で行うことができるので、キャビティ内の金属溶湯の流動経路を短縮することができる。したがって、自動車ボディのような大型の薄肉成型品を得ることが可能となる。例えば、薄板棒状の成型品を得ようとする場合、従来技術においては、金属溶湯の最大流動距離は、スリーブ、ランナ及び成型品の長さの総和に等しい距離であったが、本発明においては、成型品長さの半分以下である。この例からも明らかな如く、本発明においては、キャビティ内充填不良を防止するために、高圧・高速条件下で金属溶湯を射出する必要はなく、従来技術と比して、格段に低い速度並びに低い圧力で清浄且つ温度低下のない金属溶湯を射出して、高品質の成型品を得ることが可能となる。また、溶湯の分配、溶湯中の介在物の排除及び初期過冷却溶湯の除去の役割を担うランナやオーバフローなどが不要となるため、製品の歩留を大幅に向上させることが可能となる。
【0036】
請求項40及び41記載の発明によれば、ダイカスト機の開口部への保温容器の収容を容易且つ確実に行なうことが可能となる。
請求項42記載の発明によれば、金属溶湯を収容する保温容器を注湯装置からダイカスト機まで搬送する工程を設けることにより、従来のような金属溶湯が流動する供給用流路を形成する必要がなく、金属溶湯の温度管理或いは制御のための複雑なシステムを必要とせず、ダイカスト機の構造や制御システムの簡素化を図ることが可能となる。
請求項43記載の発明によれば、ダイカスト機まで金属溶湯を搬送する間の金属溶湯の温度低下を最小限化できる。
請求項44及び45記載の発明によれば、良質な金属溶湯を直接キャビティ内に射出することが可能となる。
請求項46及び47記載の発明によれば、真空脱ガス処理をダイカスト機内で行うことが可能となり、非常に良質な金属溶湯を直接キャビティ内に射出することが可能となる。
請求項48及び49記載の発明によれば、射出前、射出途中、射出後の各成型工程における製造工程条件のパラメータデータに基づき、射出工程を制御することができ、精密な制御下での成型加工を行なうことができる。
請求項50記載の発明によれば、好適に成型品をダイカスト機から取り出すことが可能となる。
請求項51及び52記載の発明によれば、好適に成型品を金型から分離させることが可能となる。
請求項53記載の発明によれば、好適に成型品をダイカスト機から取り出すことが可能となる。
請求項54記載の発明によれば、様々な形状の成型品を成型し、ダイカスト機から取り出すことが可能となる。
請求項55記載の発明によれば、次の成型サイクルにおける金型と成型品との分離を好適に行なうことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係るダイカスト装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係るダイカスト方法のフローチャートである。
【図3】本発明のダイカスト方法に用いられる保温容器及び把持用筒体の一実施形態を示す縦断面図である。
【図4】本発明のダイカスト方法に用いられる保温容器及び把持用筒体の他の実施形態を示す縦断面図である。
【図5】本発明に係るダイカスト方法の溶解工程及び注湯工程を説明する図である。
【図6】本発明に係るダイカスト方法の注湯工程における制御形態を説明する図である。
【図7】本発明のダイカスト装置の搬送装置及び保温炉のレイアウト図である。
【図8】本発明のダイカスト装置を構成する把持供給装置を示す図である。
【図9】把持供給装置が搬送装置上の保温容器を取り上げる工程を示す図である。
【図10】本発明のダイカスト装置を構成するダイカスト機を示す図である。
【図11】本発明のダイカスト装置を構成するダイカスト機のトグル機構を説明する図である。
【図12】本発明のダイカスト装置を構成するダイカスト機の押出ピンの構造を説明する図である。
【図13】本発明に係るダイカスト方法の供給工程を説明する図である。
【図14】本発明のダイカスト方法に用いられるフィルタの一実施形態を示す縦断面図である。
【図15】保温容器にフィルタを取り付ける工程を示す図である。
【図16】本発明に係るダイカスト方法の射出工程のフローチャートである。
【図17】本発明に係るダイカスト方法から得られるダイカスト製品の一例を示す断面図である。
【図18】本発明のダイカスト装置を構成するダイカスト機の固定金型の平面図である。
【図19】本発明のダイカスト装置を構成するダイカスト機の制御形態を説明する図である。
【図20】本発明のダイカスト方法の取り出し工程に用いられる取り出し装置を説明する図である。
【図21】補助湯道を備えるダイカスト機の一例を示す図である。
【図22】図21に示すダイカスト機の固定金型の平面図である。
【図23】フィルタの他の実施形態を示す図である。
【図24】図21に示すダイカスト機及び図23に示すフィルタを用いた供給工程後の状態を示す図である。
【図25】図21に示すダイカスト機及び図23に示すフィルタを用いた射出工程後の状態を示す図である。
【図26】図25に示す射出工程を経て得られたダイカスト製品を示す図である。
【図27】図26に示すダイカスト製品から保温容器を除去した状態を示す図である。
【図28】図27に示すダイカスト製品からリング部材を除去した状態を示す図である。
【図29】従来のダイカスト装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明に係るダイカスト装置並びにダイカスト方法の実施形態について、図を参照しつつ説明する。
図1は、本発明のダイカスト装置の概略構成を示すブロック図である。
ダイカスト装置(1)は、金属を溶解するためのヒータ或いはガスバーナを備える溶解炉(2)と、溶解炉(2)にて溶解された金属からなる金属溶湯を注湯する注湯装置(3)と、注湯装置(3)により注湯された金属溶湯を搬送する搬送装置(4)と、搬送装置(4)により搬送される金属溶湯を保温する保温炉(5)と、搬送装置(4)からダイカスト機(7)に金属溶湯を供給する把持供給装置(6)と、ダイカスト機(7)により成型された成型品をダイカスト機(7)から取り出す取り出し装置(8)を備える。
【0039】
図2は、本発明に係るダイカスト方法のフローチャートである。
ダイカスト方法は、金属を溶解して、金属溶湯を得る溶解工程と、金属溶湯を注湯する注湯工程と、注湯された金属溶湯を把持供給装置(6)に搬送する搬送工程と、ダイカスト機(7)に金属溶湯を供給する供給工程と、ダイカスト機(7)を型締する型閉工程と、ダイカスト機(7)のキャビティに金属溶湯を射出する射出工程と、ダイカスト機(7)の金型から成型品を分離する型開工程と、ダイカスト機(7)から成型品を取り出す取り出し工程からなる。
溶解工程においては、溶解炉(2)が用いられる。注湯工程においては、注湯装置(3)が用いられる。搬送工程においては、搬送装置(4)が用いられる。供給工程においては、把持供給装置(6)及びダイカスト機(7)が用いられる。射出工程並びに型開工程においては、ダイカスト機(7)が作動する。取り出し工程においては、取り出し装置(8)及びダイカスト機(7)が用いられる。
【0040】
図3は、注湯工程に用いられる保温容器(9)及び把持用筒体(92)を示す。図3(a)は、保温容器(9)の縦断面図であり、図3(b)は、把持用筒体(92)の縦断面図であり、図3(c)は、図3(a)に示す保温容器(9)に図3(b)に示す把持用筒体(92)を外嵌させた状態を示す縦断面図である。
図3に示す保温容器(9)は一端有底円筒形状であり、上面に開口部を備える。保温容器(9)の上面は、保温容器(9)底面に対して平行である。
保温容器(9)は、耐熱セラミックファイバからなる成型体などからなり、保温容器(9)内に満たされた金属溶湯は、保温容器(9)周壁部或いは底部を通じて漏れ出すことはない。
把持用筒体(92)は、上下に開口した円筒形状をなし、把持用筒体(92)の上下縁は互いに平行である。把持用筒体(92)の内径は、保温容器(9)の外径に略等しく、把持用筒体(92)は、保温容器(9)を収容可能である。また、把持用筒体(92)の軸長寸法は、保温容器(9)の軸長寸法よりも長い。
【0041】
図4は、保温容器(9)及び把持用筒体(92)の他の形態を示す。図4(a)は、保温容器(9)の縦断面図であり、図4(b)は、把持用筒体(92)の縦断面図であり、図4(c)は、図4(a)に示す保温容器(9)に図4(b)に示す把持用筒体(92)を外嵌させた状態を示す縦断面図である。
図4(a)に示す保温容器(9)は、一端有底円筒形状であり、図3に示す保温容器(9)と異なり、上面縁は傾斜していない。一方、図4(b)に示す把持用筒体(92)は、円筒形状であるが、図3に示す把持用筒体(92)と異なり、上面縁から突出する突出部(921)を備える。把持用筒体(92)を保温容器(9)に外嵌させると、突出部(921)は、保温容器(9)の上縁から突出することとなる。
図3及び図4に示すように、本発明に用いられる保温容器(9)並びに把持用筒体(92)に対して、様々な形態を適用することが可能であり、本明細書に示す形態はほんの一例を示すものにすぎない。
【0042】
図5は、溶解工程及び注湯工程を説明する図である。図5(a)は、溶解工程及び注湯工程に用いられる溶解炉(2)及び注湯装置(3)を側方から見た図であり、図5(b)は、溶解工程及び注湯工程に用いられる溶解炉(2)及び注湯装置(3)を上方から見た図である。
図5には、溶解炉(2)が示される。溶解炉(2)上面には、原料投入用開口部(21)が形成される。原料投入用開口部(21)からは、アルミニウムやマグネシウムなどのダイカスト成型用金属材料が投入される。溶解炉(2)は、内部にヒータ或いはガスバーナを備え、溶解炉(2)の内部空間は、投入される原料の融点よりも高い温度となる。
溶解工程において、溶解炉(2)に電力が供給されるか、ガスへの点火がなされると、溶解炉(2)内部空間が加熱される。この結果、溶解炉(2)に投入された金属材料は、溶解炉(2)内部で溶解し、液状となる。
【0043】
注湯装置(3)は、溶解炉(2)内部空間に連通する管路(31)と、管路(31)途中部に取付けられた電磁ポンプや空気圧ポンプ等のポンプ(32)からなる。管路(31)は、エルボ管であり、管路(31)の先端部は、下方に向けて開口する。
管路(31)先端部下方を、搬送装置(4)が通過する。搬送装置(4)は、ベルトコンベアであり、搬送装置(4)のベルト上には、複数の保温容器(9)と把持用筒体(92)が組み合わされた状態で載置されている(図4(b)参照)。
搬送装置(4)の近傍には、近接センサ(33)が配される。近接センサ(33)は、レーザ光を照射する発光部(331)と、発光部(331)からのレーザ光を受ける受光部(332)から構成される。発光部(331)と受光部(332)は対向して配され、発光部(331)と受光部(332)の間を搬送装置(4)のベルトが通過する。発光部(331)から照射されるレーザ光の光路は、管路(31)の先端開口部下方を通過し、搬送装置(4)上の保温容器(9)及び把持用筒体(92)が管路(31)の先端開口部下方に存在すると、レーザ光の光路が保温容器(9)及び把持用筒体(92)により遮られる。
【0044】
図6は、注湯工程における信号のフローを示す図である。
保温容器(9)及び把持用筒体(92)により、発光部(331)と受光部(332)間のレーザ光の光路が遮られると、近接センサ(33)は、制御盤(10)に信号を送信する(S11)。制御盤(10)は、センサ(33)からの信号を受信すると、搬送装置(4)を駆動する駆動モータ(41)に停止信号を送信し、駆動モータ(41)を停止させる(S12)。駆動モータ(41)は、エンコーダを内蔵し、エンコーダからの信号に基づき、制御盤(10)が駆動モータ(41)の停止を確認する(S13)。駆動モータ(41)が停止したことを確認した後、制御盤(10)は、ポンプ(32)に信号を送信し、ポンプ(32)を動作させる(S14)。
ポンプ(32)が作動すると、溶解炉(2)内部の金属溶湯はその液圧により管路(3)先端部から流出する。管路(3)途中部には、流量計(34)が取り付けられており、流量計(34)により、管路(3)先端開口部から流出した金属溶湯の流量が測定され、測定データが制御盤(10)に送られる(S15)。制御盤(10)には、管路(3)から流出する金属溶湯の流量に対する所定の閾値が入力されており、ポンプ(32)が作動状態となった後からの金属溶湯の流量が入力された閾値を超えると、ポンプ(32)に信号を送信し、ポンプ(32)を停止させる(S16)。
ポンプ(32)を停止させた後、制御盤(10)は駆動モータ(41)に信号を送り、駆動モータ(41)を作動させる(S17)。その後、搬送装置(4)のベルト上に配された次の保温容器(9)及び把持用筒体(92)が、発光部(331)と受光部(332)間のレーザ光の光路を遮ると、上記の動作が再度実行される。
【0045】
図6に関連して説明した工程を経て、管路(3)先端開口部下方を通過した保温容器(9)内部には所定量の金属溶湯が収容されることとなる。金属溶湯が供給された保温容器(9)は、搬送装置(4)の駆動モータ(41)の作動により、管路(3)先端開口部直下から下流に搬送されることとなる。
【0046】
図7は、搬送装置(4)の概略平面図である。
管路(3)の下流には、保温炉(5)が配され、搬送装置(4)のベルトは、保温炉(5)の内部空間を通過する。保温炉(5)内部空間は、金属溶湯を形成する金属材料の温度よりも高い温度であり、保温容器(9)内の金属溶湯の流動性の低下の防止が図られる。
保温炉(5)を通過した保温容器(9)並びに把持用筒体(92)は、把持供給装置(6)により、ダイカスト機(7)に供給される。
【0047】
図8は、供給工程に用いられる把持供給装置(6)を示す。図8(a)は、把持供給装置(6)を側方から見た図であり、図8(b)は、把持供給装置(6)を底面から見た図である。
把持供給装置(6)は、円板状の基台部(61)を備える。基台部(61)の上面中央には、接続部(62)が設けられ、接続部(62)は多関節アームロボットと接続する。多関節アームロボットの操作により、把持供給装置(6)を3次元立体空間内の所望の位置に配することができる。また、多関節アームロボットの操作により、基台部(61)は、接続部(62)を軸にして、基台部(61)軸周りに回転可能である。
基台部(61)下面には、基台部(61)直径に沿って一対の溝部(63)が形成される。一対の溝部(63)は一線上に整列し、一対の溝部(63)を結ぶ線は、基台部(61)の中心点を通過する。一対の溝部(63)の内端は基台部(61)中心点を挟んで離間している。一対の溝部(63)それぞれの内端には、棒状の内側部材(64)が固定され、内側部材(64)は下方に延出する。
一対の溝部(63)それぞれには、棒状の外側部材(65)が配される。外側部材(65)は、溝部(63)に沿って移動可能である。
一対の溝部(63)の外端それぞれには、ピストンシリンダ(66)が固定される。ピストンシリンダ(66)のロッド(661)の先端は、外側部材(65)に接続する。ピストンシリンダ(66)を作動させ、ロッド(661)を伸縮させることにより、外側部材(65)は、溝部(63)に沿って移動する。
図8に示す把持供給装置(6)の内側部材(64)と外側部材(65)の組のうち、一方の組(左側に示される組)は、他方の組(右側に示される組)よりも長く形成されている。
【0048】
図9は、把持供給装置(6)が、搬送装置(4)上の保温容器(9)及び把持用筒体(92)を取り上げる工程を示す図である。
まず、多関節アームロボットを操作して、保温炉(5)を通過した直後の保温容器(9)上方に把持供給装置(6)を移動させる。その後、多間接アームロボットを更に操作し、基台部(61)を下方に移動させる。このとき、長い寸法を有する内側部材(64)は、保温容器(9)の内壁面に接触し、短い寸法を有する内側部材(64)は把持用筒体(92)の内壁面に接触する。その後、ピストンシリンダ(66)を作動させ、外側部材(65)を基台部(61)中心方向に移動させる。この結果、長い方の内側部材(64)と外側部材(65)の組は、保温容器(9)及び把持用筒体(92)を挟持することとなり、短い方の内側部材(64)と外側部材(65)の組は、把持用筒体(92)のみを挟持することとなる。この状態を維持して、多間接アームロボットを更に操作し、把持供給装置(6)をダイカスト機(7)に向けて移動させる。
【0049】
図10は、ダイカスト機(7)の概略図である。
ダイカスト機(7)は、可動金型(71)と、可動金型(71)の下方に配される固定金型(72)を備える。可動金型(71)と固定金型(72)の間にはキャビティ(73)が形成される。
可動金型(71)及び固定金型(72)の周縁近傍を案内棒(74)が通過する。可動金型(71)は、案内棒(74)に案内され、上下に移動可能である。案内棒(74)途中部には、案内棒(74)半径方向に突出する支持部材(741)が取り付けられ、支持部材(741)は、固定金型(72)を下方から支える。
【0050】
可動金型(71)の上方に上板(75)が配される。上板(75)は、案内棒(74)上部に取付けられるとともに案内棒(74)半径方向に突出する支持部材(742)により、上下に挟持され、案内棒(74)上部位置において固定されている。
可動金型(71)上方において、トグル機構(76)が構築される。トグル機構(76)は、上板(75)上面中央に固定されるモータ(761)と、モータ(761)と接続するとともに上板(75)を貫通して、上板(75)下方に延出するボールねじ(762)と、ボールねじ(762)と螺合する駆動子(763)と、駆動子(763)から左右に延出する一対の第1のリンク機構(764)と、第1のリンク機構(764)を介して駆動子(763)と接続するとともに上板(75)下面と可動金型(71)上面との間で上下方向に延出する第2のリンク機構(765)からなる。
【0051】
図11は、型開工程中のダイカスト機(7)の状態を示す図である。
型開工程において、モータ(761)を作動させる。モータ(761)の作動に伴い、ボールねじ(762)が回転し、ボールねじ(762)と螺合する駆動子(763)が上方に移動する。駆動子(763)の上昇に伴い、第1のリンク機構(764)と駆動子(763)の接続点(641)は上方に移動し、第1のリンク機構(764)を構成するリンク棒(642)は、接続点(641)を軸に下方に回動する。この結果、第1のリンク機構(764)と第2のリンク機構(765)の接続点(643)は内側上方に斜めに移動することとなる。
上板(75)と接続するとともに第2のリンク機構(765)を構成する上側リンク棒(651)と、上側リンク棒(651)の下方に位置するとともに一端部が上側リンク棒(651)下端と回転可能に接続する下側リンク棒(652)の接続点(653)は、第1のリンク機構(764)と第2のリンク機構(765)との接続点(643)近傍に位置する。尚、図10及び図11に示す実施形態において、接続点(643)は、上側リンク棒(651)下端近傍に設けられている。
接続点(643)の内側上方へ向かう移動に伴い、上側リンク棒(651)と下側リンク棒(652)は、接続点(653)を軸に屈曲する。上述の如く、上板(75)は、案内棒(74)上端近傍で固定されているため、上側リンク棒(651)と下側リンク棒(652)間の屈曲により、可動金型(71)は案内棒(74)に案内され、上方に移動する。この結果、可動金型(71)は固定金型(72)から離間し、型開がなされることとなる。
【0052】
図10及び図11には、可動金型(71)に取付けられた押出ピン(711)が概略的に示されている。押出ピン(711)の下端部は、キャビティ(73)上面に現れる。また、押出ピン(711)は、可動金型(711)を貫通し、可動金型(71)上面から突出する。
図12は、押出ピン(711)周囲の詳細構造を示す。
可動金型(71)には、押出ピン(711)下部を収容する2段円筒形状の貫通穴(712)が形成される。貫通穴(712)は、可動金型(71)下面側で径大に形成されている。
押出ピン(711)は、可動金型(71)を貫通するとともに下部において貫通穴(712)に対して相補的形状をなす押出ピン本体部(111)と、本体部(111)上端と結合するとともに上方に延出するプランジャ棒(112)と、可動金型(71)上面に固定されるとともに本体部(111)上部を取り囲む円筒形状の支持部材(113)と、支持部材(113)内部に配されるとともにプランジャ棒(112)を上方に付勢するばね部材(114)を備える。
支持部材(113)は、上方に向けて延出する筒部(131)と、筒部(131)下端外周面から半径方向に延出する円板状の固定部(132)からなる。固定部(132)下面は可動金型(71)上面に当接する。固定部(132)と可動金型(71)の境界にはOリング(133)が配される。筒部(131)の上端は、本体部(111)とプランジャ棒(112)の接続部よりも上方に位置し、筒部(131)は、プランジャ棒(112)下端を取り囲む。プランジャ棒(112)の外周面と筒部(131)内周面との間には、Oリング(134)が配される。
【0053】
可動金型(71)を貫通する本体部(111)周面と可動金型(71)の貫通穴(712)内周面の間には僅かに空隙が形成される。この空隙の大きさは、空気が流動可能であり、且つ、金属溶湯が流入しない程度である。本体部(111)と貫通穴(712)間の空隙は、支持部材(113)内周面と2つのOリング(133,134)により定められる空間に連通する。
支持部材(113)は、筒部(131)周壁を貫通する管体(135)を更に備える。管体(135)の一端部は、真空発生装置(図示せず)に接続する。真空発生装置を作動させると、キャビティ(73)内の気体は、本体部(111)と貫通穴(712)間の空隙並びに支持部材(113)内周面と2つのOリング(133,134)により定められる空間を通じて、ダイカスト機(7)外部へ吸引される。
【0054】
プランジャ棒(112)の外径は、筒部(131)の内径よりも僅かに小さいが、本体部(111)の上部の径よりも大きい。ばね部材(114)の上端は、プランジャ棒(112)下面と当接し、ばね部材(114)の下端は、可動金型(71)の上面に当接する。
プランジャ棒(112)の上端は油圧シリンダ(図示せず)と接続し、油圧シリンダの作動により、下方に向けて押し出される。ばね部材(114)がプランジャ棒(112)を上方に付勢するため、油圧シリンダからの圧力が低下すると、プランジャ棒(112)は上方に向けて移動する。
【0055】
再度、図10を参照する。
固定金型(72)の下方には、下板(77)が配される。案内棒(74)の下部は下板(77)を貫通し、下板(77)は、案内棒(74)下端に配される支持部材(743)を用いて、案内棒(74)下端に固定される。
下板(77)と固定金型(72)の間には、複数のインジェクタ(78)が配される。
【0056】
インジェクタ(78)は、下板(77)上面に固定される電動サーボシリンダ(781)と、下端部が電動サーボシリンダ(781)に接続するとともに上端がキャビティ(73)下面に現れる円筒形状のスリーブ(782)と、スリーブ(782)内に収容されるとともに下端部が電動サーボシリンダ(781)のロッド(811)に支持されるプランジャチップ(783)を備える。
スリーブ(782)は、その下端外周面から半径方向に延出する円板状の固定部(821)を備え、固定部(821)は、電動サーボシリンダ(781)の筐体部(812)にねじなどの適切な固定手段を用いて固定される。
スリーブ(782)は、その上部外周面から半径方向に延出する円板状の固定部(822)を備え、固定部(822)は、固定金型(72)の下面にねじなどの適切な固定手段を用いて固定される。
このようにして、スリーブ(782)は、下板(77)と固定金型(72)の間で固定される。
【0057】
固定金型(72)には、開口部が形成され、固定部(822)より上方のスリーブ(782)の筒状部分は、固定金型(72)の開口部に挿入される。
プランジャチップ(783)の軸長寸法は、スリーブ(782)の軸長寸法よりも短くされる。電動サーボシリンダ(781)のロッド(811)が筐体部(812)内に引っ込んだ状態にあるとき、スリーブ(782)上端面からプランジャチップ(783)の上端面との間において、空間が形成される。この空間内に保温容器(9)が収容されることとなる。
プランジャチップ(783)は、略円柱形状をなすが、プランジャチップ(783)上下部は、プランジャチップ(782)軸長方向中間部分よりも径大に形成され、プランジャチップ(782)周面方向から見ると、I字形状をなす。プランジャチップ(783)上部の径大部周面とスリーブ(782)内周面との間には僅かに空隙が形成される。この空隙は、空気が流動可能であるが、金属溶湯が流入しない程度の大きさとされる。プランジャチップ(783)下側の径大部とスリーブ(782)内周面との間には、Oリング(784)が配される。
【0058】
スリーブ(782)は、管路(823)を備える。管路(823)の一端部は、スリーブ(782)周壁を貫通する。管路(823)の他端部は、真空発生装置(図示せず)に接続する。真空発生装置を作動させると、キャビティ(73)内の気体は、スリーブ(782)上部の空間及びプランジャチップ(783)周面とスリーブ(782)内周面との間の空隙を通じて、ダイカスト機(7)の外部へ放出される。
【0059】
図13は、供給工程の最終段階を説明する図である。尚、図13に示すダイカスト機(7)は、図11に関連して説明した型開工程を経た状態であり、可動金型(71)が固定金型(72)から離間した状態である。
多関節アームロボットを操作して、把持供給装置(6)を可動金型(71)下面と固定金型(72)上面との間の空間に移動させる。その後、更に、多関節アームロボットを操作して、把持供給装置(6)を下方に移動させ、把持供給装置(6)が把持する保温容器(9)をスリーブ(782)上端開口部からスリーブ(782)内に挿入する。
保温容器(9)の一部をスリーブ(782)内に挿入した後、保温容器(9)の周壁を挟持する側のピストンシリンダ(66)を作動させ、このピストンシリンダ(66)に接続する外側部材(65)を内側部材(64)から離れる方向に移動させる。この結果、保温容器(9)に対する把持供給装置(6)の把持が解除され、保温容器(9)は、スリーブ(782)内に落下し、プランジャチップ(783)の上面とスリーブ(782)内壁で囲まれる空間内に収容される。
短い寸法を有する外側部材(65)と内側部材(64)の組は、この間、把持用筒体(92)の周壁を把持し続ける。したがって、保温容器(9)をスリーブ(782)内に落下させた後、多関節アームロボットを操作して、把持供給装置(6)を上昇させると、把持用筒体(92)は、把持供給装置(6)とともに上昇し、把持用筒体(92)の下部はスリーブ(782)開口部から脱離することとなる。この状態で、多関節アームロボットを操作して、把持供給装置(6)を可動金型(71)下面と固定金型(72)上面との間の空間から脱離させる。把持供給装置(6)に把持された把持用筒体(92)は、その後、所定の保管場所に保管される。
保温容器(9)を、プランジャチップ(783)の上面とスリーブ(782)内壁で囲まれる空間内に収容した後、保温容器(9)の上端開口部は、フィルタにより閉塞される。
【0060】
図14は、保温容器(9)内の金属溶湯中に含まれる不純物を濾過除去するためのフィルタ(91)の断面図である。
フィルタ(91)は、円板形状の板状のフィルタ本体部(911)と、フィルタ本体部(911)を貫通する細いワイヤ部材(912)からなる。ワイヤ部材(912)の上端は、フィルタ本体部(911)から突出する。ワイヤ部材(912)の下端は、二又に分岐し、フィルタ本体部(911)の下面に沿って延出する。
フィルタ本体部(911)は、直径0.5mm以下の開口部が多数設けられたポーラス体であり、金属溶湯内に存する酸化アルミなどの不純物を濾過可能である。フィルタ本体部(911)は、保温容器(9)と同様の材料から形成されてもよいし、多孔性のセラミックフィルタや金網などから形成されてもよい。
【0061】
図15は、フィルタ取り付け装置を用いてフィルタを取り付ける工程を示す図である。
フィルタ取り付け装置のフィルタ支持部(350)は、ピストンシリンダ(351)と、ピストンシリンダ(351)のロッド(352)下端に接続する支持筒(353)からなる。
ピストンシリンダ(351)上端は、フィルタ取り付け装置を構成する多関節アームロボットのアーム(図示せず)に接続し、所望の3次元空間位置に配置可能である。ピストンシリンダ(351)の軸は上下方向に延び、ロッド(352)は上下方向に伸縮可能である。
支持筒(353)の下端内部には、環状のバルーン部材(531)が配される。バルーン部材(531)には、空気を供給可能であり、バルーン部材(531)に空気が供給されるとバルーン部材(531)が膨張し、バルーン部材(531)の内径寸法が減少する。
【0062】
多関節アームロボットを操作し、フィルタ支持部(350)をフィルタ(91)上方に配し、バルーン部材(531)の開口部にワイヤ部材(912)の上端を挿通させる。その後、バルーン部材(531)に空気を供給し、バルーン部材(531)を膨張させることにより、フィルタ支持部(350)はフィルタ(91)を支持することとなる。その後、多関節アームロボットを操作し、フィルタ支持部(350)をダイカスト機(7)に向けて移動させる。
図13に関連して説明した如く、ダイカスト機(7)の可動金型(71)は、固定金型(72)から離間した状態であり、プランジャチップ(783)の上面とスリーブ(782)内壁で囲まれる空間内には、保温容器(9)が収容されている。
ダイカスト機(7)に向けて移動したフィルタ支持部(350)は、固定金型(71)と可動金型(72)の間に配され、スリーブ(782)上端開口部の上方に位置づけられる。その後、多関節アームロボットを操作し、ロッド(352)を伸張させる。これにより、フィルタ支持部(350)に支持されたフィルタ(91)は、スリーブ(782)上端開口部を閉塞する。
フィルタ(91)のスリーブ(782)上端開口部への取り付けが完了すると、バルーン部材(531)への空気供給経路途中部に設けられたバルブが開状態となり、バルーン部材(531)内部の空気が外部へ放出される。この結果、ワイヤ部材(912)が支持筒(353)から開放される。この状態で、フィルタ支持部(350)を上方に移動させると、フィルタ(91)は、スリーブ(782)上端開口部に取付けられた状態のまま、フィルタ支持部(350)から分離する。
【0063】
図2に示す如く、供給工程が完了した後、型閉工程が実行される。型閉工程において、図11に関連して説明した動作と逆の動作が行われる。
モータ(761)を型開工程と逆方向に回転させる。この結果、駆動子(763)はボールねじ(762)に沿って、下方に移動する。駆動子(763)の下降に伴い、第1のリンク機構(764)は、第2のリンク機構(765)を外方に押出し、上側リンク棒(651)と下側リンク棒(652)の軸が一線上に並ぶ。これにより、可動金型(71)は案内棒(74)に案内されて下降し、固定金型(72)に当接し、可動金型(71)と固定金型(72)の境界にはキャビティ(73)が形成されることとなる。
【0064】
図2に示す如く、型閉工程が実行された後、射出工程が行われる。
図16は、射出工程の各段階を示すフローチャートである。
射出工程は、キャビティ(73)を真空状態にする真空化段階と、キャビティ(73)内に金属溶湯を射出する射出段階と、キャビティ(73)を満たした金属溶湯を冷却固化させる冷却段階からなる。
【0065】
真空化段階において、図10及び図12を用いて説明した管路(135,823)と接続する真空発生装置を作動させる。この結果、キャビティ(73)内の気体は、管路(135,823)を通じて、吸引され、キャビティ(73)が減圧される。押出ピン(711)の支持部材(113)或いはインジェクタ(78)のスリーブ(782)に圧力計(図示せず)が取り付けられ、キャビティ(73)内の圧力を計測可能とされることが好ましい。
圧力計は、制御盤(10)に信号を送信する。制御盤(10)には、キャビティ(73)内の圧力に対する所定の閾値が入力され、圧力計により測定されたキャビティ(73)内の圧力が、この入力閾値を下回るまで、制御盤(10)は管路(135,823)に接続する真空発生装置を作動させる。
【0066】
キャビティ(73)内の圧力が、制御盤(10)に入力された閾値を下回ると、射出段階が開始する。
制御盤(10)は、作動命令信号を電動サーボシリンダ(781)に送り、この信号を受け、電動サーボシリンダ(781)のロッド(811)は上方に伸長する。ロッド(811)の上方への伸長に伴い、スリーブ(782)内に収容されたプランジャチップ(783)は、キャビティ(73)に向けて移動する。
供給工程を経て、プランジャチップ(783)上面に載置された保温容器(9)は、プランジャチップ(783)とともに上昇し、可動金型(71)下面とプランジャチップ(783)との間に挟まれることとなる。その後、更にプランジャチップ(783)が押し上げられると、保温容器(9)は、可動金型(71)下面とプランジャチップ(783)との間で圧縮破壊されることとなる。
注湯工程を経て保温容器(9)内に収容された金属溶湯は、保温容器(9)の圧縮破壊により、保温容器(9)外に放出され、キャビティ(73)内を流動することとなる。保温容器(9)の圧縮破壊を通じての金属溶湯の射出の間、保温容器(9)に取付けられたフィルタ(91)は、金属溶湯中の不純物のキャビティ(73)内への流入を妨げる。
【0067】
図17は、ダイカスト機(7)により成型されたダイカスト製品の断面図である。
上述の如く、保温容器(9)は、可動金型(71)下面とプランジャチップ(783)との間で圧縮破壊される。その後、冷却段階を経て、金属溶湯がキャビティ(73)内で冷却固化されると、圧縮破壊された保温容器(9)はダイカスト製品(100)と一体化され、ダイカスト製品(100)の一部をなすこととなる。圧縮破壊された保温容器(9)は、ダイカスト製品(100)上で肉厚部(101)となって現れる。フィルタ(91)の存在により、肉厚部(101)には金属溶湯中に含まれる不純物が他の部分よりも多く存在することとなるが、当該部分は他の部分より大きな肉厚寸法を有するので、強度上の問題を生じない。
外観上の問題は、ダイカスト製品(100)の使用方法により解消可能である。例えば、ダイカスト製品(100)が自動車のボディである場合、肉厚部(101)がボディ裏面に現れるように使用すれば、何ら外観上の問題を生じない。或いは、機械的強度が許容される範囲で、肉厚部(101)を切削除去することも可能である。
本発明は、軽量金属の大型ダイカスト製品(100)の一体的成型が可能であるため、当該隆起部分により、ダイカスト製品(100)の一部の重量が増大したとしても、全体としての重量低減効果への貢献は大きなものである。
【0068】
図18は、固定金型(72)の平面図である。
固定金型(72)上面中央領域には、凹領域(721)が形成される。凹領域(721)の周縁はキャビティ(73)の周縁を構成する。凹領域(721)の周囲を取り囲むように耐熱性Oリング(722)が取付けられる。凹領域(721)より内方には、スリーブ(782)上端縁が現れる。
【0069】
スリーブ(782)の取り付け位置は、特に限定されるものではない。本発明においては、従来のダイカスト装置と比して、金属溶湯の射出位置に大きな自在性を有し、スリーブ(782)を、金属溶湯が最も遅く凝固する最終凝固位置に配したり、金属溶湯の流動距離を最短とする位置に配したりすることができる。或いは、キャビティ(73)内で成型されたダイカスト製品(100)を固定金型(72)から分離するのに最も力が要求される位置にスリーブ(782)を配することができる。
また、一のスリーブ(782)の内径を他のスリーブ(782)の内径と異なるものとしてもよい。小径のスリーブ(782)内に小容積の保温容器(9)を収容し、大径のスリーブ(782)内に大容積の保温容器(9)を収容してもよい。
これらスリーブ(782)の配置並びに寸法の設計は、キャビティ(73)の形状、キャビティ(73)内の圧力、保温容器(9)内の金属溶湯の体積並びに金属種、キャビティ(73)内の温度などのパラメータを用いた流動解析シミュレーションの結果に基づきなされてもよい。図示例においては、スリーブ(782)は凹領域(721)の内方に配されているが、流動解析シミュレーションの結果によっては、スリーブ(782)を凹領域(721)の外側領域に配し、スリーブ(782)の上端開口部と凹領域(721)とを細溝により連通させることも可能である。
【0070】
図19は、ダイカスト機(7)の制御形態の概略を示す図である。
ダイカスト機(7)には、温度センサ、位置センサ、減圧センサ及び圧力センサが取り付けられ、これらセンサは、制御盤(10)に信号を送信する。制御盤(10)は、電動サーボシリンダ(781)及び型閉・型開動作用のモータ(761)の動作を制御する。
【0071】
位置センサ(791)は、プランジャチップ(783)の位置を検出し、プランジャチップ(783)の位置に応じた信号を制御盤(10)に送信する。制御盤(10)は、位置センサ(791)から信号を受信し、この受信信号に基づき、プランジャチップ(783)の現在位置を把握する。そして、次の工程で必要とされるプランジャチップ(783)の位置と現在位置の差を算出し、当該算出値に応じた長さだけ電動サーボシリンダ(781)のロッド(811)を伸縮させる。
尚、位置センサ(791)は、プランジャチップ(783)の位置を検出する代わりに、電動サーボシリンダ(781)のロッド(811)の延出長さを測定するものであってもよい。
【0072】
減圧センサ(792)は、上述の如く、キャビティ(73)内の真空度を測定するために用いられ、本実施形態においては、管路(135,823)に据付けられている。減圧センサ(792)を用いて、真空度を測定し、キャビティ(73)内が十分に減圧されたことを確認した後に、射出段階を実行することができる。
従来技術において、減圧不良があった場合でも、射出を停止することができずに、不良品を生産する結果となっていたが、本発明においては、減圧工程で不具合を生じても、これを修正する予備時間を確保可能である。或いは、射出工程に移らずに、保温容器(9)をダイカスト機(7)から取り出し、他の保温容器(9)をスリーブ(782)内に収容し、再度、射出工程を開始することが可能である。したがって、本発明においては、不良品を生産することがない。
【0073】
圧力センサ(793)は、プランジャチップ(783)の下面と電動サーボシリンダ(781)のロッド(811)の間に配され、キャビティ(73)に充填された金属溶湯の圧力を測定するために用いられる。射出段階を実行した後、圧力センサ(793)が測定したキャビティ(73)内の金属溶湯の圧力が、制御盤(10)に予め入力された金属溶湯圧力に対する所定の閾値を超えたか否かを制御盤(10)が判断する。金属溶湯の圧力が閾値を下回っている場合、プランジャチップ(783)を押し上げるように、制御盤(10)は電動サーボシリンダ(781)に信号を送る。
【0074】
温度センサ(794)は、金属溶湯の温度を測定する。射出段階を実行した後の状態を所定時間保持する。温度センサ(794)は、この間の金属溶湯の温度をモニタし、制御盤(10)は温度センサ(794)から受信する信号に基づき、制御盤(10)に予め入力された金属溶湯温度に対する所定の閾値を、測定される金属溶湯温度が下回ったと判断すると、モータ(761)に信号を送り、型開工程を開始する。
【0075】
型開工程において、図11に関連して説明したダイカスト機(7)の動作が実行される。
型開工程において、制御盤(10)は、電動サーボシリンダ(781)に信号を送り、電動サーボシリンダ(781)は、プランジャチップ(783)に振動を与えながら、徐々にプランジャチップ(783)を上方に変位させる。この工程の間、離型抵抗が生じるが、この圧力の大きさは、ダイカスト製品(100)の形状や固定金型(72)の抜き勾配等に依存する。本発明においては、振動を与えることにより、離型抵抗を低減でき、ダイカスト製品(100)に変形や亀裂を与えることがなくなる。これにより、固定金型(72)とダイカスト製品(100)の分離が図られることとなる。
プランジャチップ(783)の押し上げ速度は、型開工程における可動金型(71)の上昇速度と略等しくされる。
固定金型(72)からのダイカスト製品(100)の分離がなされると、制御盤(10)は、電動サーボシリンダ(781)に信号を送り、プランジャチップ(783)を下方に移動させ、型開工程が完了する。
【0076】
図10及び図17から明らかな如く、図示例のダイカスト製品(100)は、可動金型(71)側に隆起した形状をなしている。このような形状の場合、固定金型(72)からダイカスト製品(100)を分離した後も、可動金型(71)側にダイカスト製品(100)が付着した状態となる。
【0077】
図2に示す如く、型開工程が実行された後、取り出し工程が行われる。
図20は、取り出し工程に用いられる取り出し装置(8)を側方から見た図である。
取り出し装置(8)は、板状の載置台(81)と載置台(81)下面中央から隆起する接続部(82)からなる。接続部(82)は、多関節アームロボットに接続する。したがって、取り出し装置(8)を3次元立体空間内の所望の位置に配置することが可能である。
取り出し工程において、多関節アームロボットを操作し、取り出し装置(8)を、型開工程により形成された固定金型(72)と可動金型(71)との間の空間に配置する。この後、押出ピン(711)を駆動する油圧シリンダを作動させ、プランジャ棒(112)を下方に移動させる。尚、油圧シリンダに代えて、インジェクタ(78)と同様に電動サーボシリンダとプランジャ棒(112)を接続し、プランジャ棒(112)に対して下方へ向かう力とともに振動を与えてもよい。
プランジャ棒(112)に伝達された力は、押し出しピン本体部(111)に伝達され、ダイカスト製品(100)と可動金型(71)との分離が図られる。
ダイカスト製品(100)が可動金型(71)から分離すると、重力作用により落下し、可動金型(71)下方に配された取り出し装置(8)の載置台(81)上に載置されることとなる。
その後、多関節アームロボットを操作して、取り出し装置(8)をダイカスト機(7)外方に移動させる。
【0078】
取り出し工程が終了した後、可動金型(71)及び固定金型(72)のキャビティ(73)形成面には離型剤が塗布される。この後、上記したダイカスト製品(100)成型工程サイクルが繰り返されることとなる。
【0079】
自動車の薄肉大型のダイカスト製品を成型する場合には、ダイカスト用離型剤を用いることができるが、必要に応じて、耐久塗型剤を用いて、可動金型(71)及び固定金型(72)のキャビティ(73)形成面を約100μm程度の膜厚でコーティングすることも可能である。耐久塗型剤としては、例えば、リン酸アルミニウムや水ガラスをバインダとした雲母やボロンナイトライドの保温性骨材を用いることができる。このような耐久塗型剤は、保温性及び伸縮性に優れ、キャビティ(73)内を流動する溶湯中の凝固片の発生、湯周り不良や異物不良を防止することができる。
更にキャビティ(73)内の保温性を高めるために、必要に応じて、キャビティ(73)形成面の少なくとも一部にセラミック溶射等の表面処理を施してもよい。
【0080】
耐久塗型剤及び/又はセラミック溶射等の表面処理を行なうことで、過度に離型剤を使用せずともキャビティ内の溶湯の流動性を確保可能となる。この結果、過度の離型剤の使用による離型剤の堆積を防止でき、鋳造不良を避けることが可能となる。更には、離型剤の堆積に起因するガスの発生量の増加を防止することができ、確実にキャビティ(73)内を高真空状態とすることが可能となる。
【0081】
図21は、補助湯道を備えるダイカスト機(7)を示し、図22は、図21に示すダイカスト機(7)の固定金型(72)の平面図である。
図21及び図22に示すように、固定金型(72)のキャビティ(73)形成面に、溝状の補助湯道(723)を形成してもよい。補助湯道(723)は、湯周りの促進、凝固遅れ部位への溶湯補給を目的とするものであり、図示例にその形状、配置等が限定されるものではない。また、図示例において、固定金型(72)に補助湯道(723)を形成したが、可動金型(71)のキャビティ(73)形成面に補助湯道(723)を形成してもよい。
補助湯道(723)は、ダイカスト製品上、突条となって現れるが、この突条は、製品の補強用リブとして使用してもよいし、後工程において、機械的に切除してもよい。
補助湯道(723)の形成により、従来のダイカスト工程で行われた凝固収縮のための高圧での溶湯補給が不要となる。尚、補助湯道(723)の表面には、上述の耐久塗型剤コーティングやセラミック溶射等の表面処理を施すことが好ましい。
【0082】
図23は、フィルタ(91)の他の実施形態を示す。図23(a)は、フィルタ(91)の断面図であり、図23(b)は、フィルタ(91)の底面図である。
図23に示すフィルタ(91)は、図14に関連して説明したフィルタ(91)に加えて、リング部材(913)を更に備える。リング部材(913)は、2つの半円環形状の金属板から形成される。リング部材(913)は、フィルタ本体部(911)底面に接続する。フィルタ本体部(911)とリング部材(913)の接続は、特に限定されるものではない。例えば、リング部材(913)上面に針状の突起部を設け、この突起部をフィルタ本体部(911)に挿入する方法を採用してもよいし、或いは、接着剤や半田等の固定剤を利用してもよい。
【0083】
図24は、図23に示すフィルタ(91)を図15に関連して説明したものと同様の工程を用いて、ダイカスト機(7)中に配した状態を示す。尚、図24に示すダイカスト機(7)の固定金型(72)は、補助湯道(723)を有している。
図24に示す如く、スリーブ(782)の上縁は、固定金型(72)のキャビティ(73)を形成する面よりも下方に位置し、固定金型(72)とスリーブ(782)上縁との間に円柱空間が形成される。リング部材(913)の外径は、この円柱空間の直径と略等しく形成される。フィルタ取り付け装置のフィルタ支持部(350)をダイカスト機(7)に移動させ、ロッド(352)を下方に伸ばすと、リング部材(913)は、スリーブ(782)と固定金型(72)で囲まれる円柱空間内に嵌め込まれ、リング部材(913)の上面は、固定金型(72)のキャビティ形成面と面一になる。
【0084】
図25は、図24に示すダイカスト機(7)のプランジャチップ(783)を上方に移動させ、保温容器(9)内の金属溶湯をキャビティ(73)内に射出した後の状態を示す。
プランジャチップ(783)を上方に移動させると、保温容器(9)は、プランジャチップ(783)上面と可動金型(71)の間で圧縮破壊される。保温容器(9)内の金属溶湯は主に、リング部材(913)を構成する半円環形状の金属板材の間の空隙を通じて、キャビティ(73)内に流入する。リング部材(913)は、プランジャチップ(783)の上方への移動後もその一部が固定金型(72)とスリーブ(782)の上縁との間に形成される円柱形状の空間内に留まるのに十分な厚さ寸法を有し、圧縮破壊された保温容器(9)は、キャビティ(73)内に流入することはない。したがって、保温容器(9)が、ダイカスト製品中の望ましくない位置に配されることを防止できる。
また、リング部材(913)は、固定金型(72)内に留まるとともにフィルタ本体部(911)と圧縮破壊された保温容器(9)の間で挟まれるので、キャビティ(73)内を流動することなく、保温容器(9)とフィルタ本体部(911)の間に留まることとなる。
【0085】
図26は、図25に示すキャビティ(73)部分により形成されたダイカスト製品(100)の部分を示す。図26(a)は、ダイカスト製品(100)の部分の平面図であり、図26(b)は、ダイカスト製品(100)の部分の正面図である。
図26に示すダイカスト製品(100)は、補助湯道(723)により形成されたリブ(123)を備える。図24及び図25に示すように、スリーブ(782)上端開口部を横切るように補助湯道(723)を形成すると、圧縮破壊された保温容器(9)、リング部材(913)及びフィルタ本体部(911)は、リブ(123)を横切って、ダイカスト製品(100)に組み込まれることとなり、リブ(123)正面及び背面から突出することとなる。
図26に示す如く、リング部材(913)を左右に引っ張ることにより、リング部材(913)をダイカスト製品(100)から除去することが可能となる。
【0086】
図27は、図26に示すダイカスト製品(100)からリング部材(913)を取り除いた状態を示す。図27(a)は、ダイカスト製品(100)の部分の平面図であり、図27(b)は、ダイカスト製品(100)の部分の正面図である。
図27に示す如く、リング部材(913)を除去した後、保温容器(9)がフィルタ本体部(911)上に立設した状態となり、リング部材(913)の内径部分に相当する固化後の金属溶湯成分を介して、保温容器(9)はフィルタ本体部(911)に接続する。保温容器(9)の接続部分に曲げモーメントを加えることにより、保温容器(9)をダイカスト製品から除去することが可能である。
【0087】
図28は、図27に示すダイカスト製品(100)から保温容器(9)を取り除いた状態を示す。図28(a)は、ダイカスト製品(100)の部分の平面図であり、図28(b)は、ダイカスト製品(100)の部分の正面図である。
図28に示す如く、保温容器(9)を除去した後、射出工程で用いられたリング部材(913)及び保温容器(9)はダイカスト製品(100)から除去され、ダイカスト製品(100)に不要な部分は完全に除去された状態となる。
【0088】
このように、スリーブ(782)上端開口部を横切るように細溝状の補助湯道(723)を可動金型(72)に形成し、リング部材(913)付のフィルタ(91)を用いることにより、ダイカスト製品(100)に組み込まれた保温容器(9)を簡単に除去することができ、ダイカスト製品(100)の軽量化を図ることが可能となる。
【0089】
上記の説明により開示された実施形態は、本発明の一例を示すものにすぎず、多くの変更・改良形態を構築可能である。例えば、上記実施形態において、把持供給装置(6)が単一の保温容器(9)をダイカスト機(7)に搬送していたが、複数の保温容器(9)を同時にダイカスト機(7)に搬送する形態を、本発明の技術的範囲内で構築可能である。更に、把持供給装置(6)の外側部材(65)を移動させる形態を説明してきたが、内側部材(64)を移動させる形態を採用することも可能である。また、これら外側部材(65)及び内側部材(64)の移動態様は水平移動に限らず、基台部(61)との接続部を軸とした回動動作とすることも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
また、保温容器(9)の形状も上記説明のものに限定されず、保温容器(9)の上縁の一部が突出する形状や他の形状を採用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、アルミニウムやマグネシウム等の軽量金属の成型加工に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0091】
1・・・・・ダイカスト装置
100・・・ダイカスト製品
2・・・・・溶解炉
3・・・・・注湯装置
4・・・・・搬送装置
5・・・・・保温炉
6・・・・・把持供給装置
7・・・・・ダイカスト機
8・・・・・取り出し装置
9・・・・・保温容器
10・・・・制御盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を溶解する溶解炉と、
該溶解炉で作られた金属溶湯を保温容器に注湯する注湯装置と、
該注湯装置により金属溶湯が注湯された前記保温容器を把持するとともに搬送する把持供給装置と、
該把持供給装置により搬送された保温容器を収容する開口部が形成された一の型と、該一の型と重なり合って前記金属溶湯が充填されるキャビティを形成する他の型を備えるダイカスト機からなり、
前記開口部には、該開口部軸方向に沿って往復移動するプランジャチップが配され、
該プランジャチップが前記他の型と協働して前記保温容器を圧縮破壊し、前記金属溶湯を前記キャビティ内で流動させることを特徴とするダイカスト装置。
【請求項2】
搬送装置を更に備え、
該搬送装置が、前記注湯装置から前記把持供給装置まで、前記金属溶湯を収容する前記保温容器を搬送することを特徴とする請求項1記載のダイカスト装置。
【請求項3】
前記搬送装置による前記保温容器の搬送経路の途中に配される保温炉を更に備え、
該保温炉が、前記金属溶湯が所定の温度以下になることを防ぐことを特徴とする請求項1又は2記載のダイカスト装置。
【請求項4】
前記搬送装置が更に、両端が開口した把持用筒体を搬送し、
該把持用筒体が、前記保温容器を外嵌することを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のダイカスト装置。
【請求項5】
前記把持用筒体の開口端部の少なくとも一部が、前記保温容器の開口端部と一致しないことを特徴とする請求項4記載のダイカスト装置。
【請求項6】
前記把持供給装置が、前記搬送装置から前記ダイカスト機まで移動する移動基台と、
該移動基台に取付けられる第1の挟持機構を備え、
該第1の挟持機構が、前記保温容器の内側に配される内側部材と、
前記保温容器を外嵌する前記把持用筒体の外側に配される外側部材を備え、
前記内側部材と前記外側部材のうち少なくとも一方が、他方に向けて移動し、前記保温容器と前記把持用筒体の周壁を同時に挟持することを特徴とする請求項5記載のダイカスト装置。
【請求項7】
前記移動基台に取付けられる第2の挟持機構を備え、
該第2の挟持機構が、前記保温容器を外嵌する前記把持用筒体の内側に配される内側部材と、
前記保温容器を外嵌する前記把持用筒体の外側に配される外側部材を備え、
前記内側部材と前記外側部材のうち少なくとも一方が、他方に向けて移動し、前記把持用筒体の周壁のみを挟持することを特徴とする請求項6記載のダイカスト装置。
【請求項8】
フィルタ取り付け装置を更に備え、
該フィルタ取り付け装置が、前記ダイカスト装置の前記開口部にフィルタ部材を取り付けることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載のダイカスト装置。
【請求項9】
フィルタを前記ダイカスト機に搬送するフィルタ取り付け装置を更に備え、
前記フィルタが、前記金属溶湯中の不純物を濾過するフィルタ本体部と、一対の半円環形状の板材からなるリング部材からなり、
該リング部材の少なくとも一部が、前記ダイカスト装置の前記開口部の端部に嵌め込み可能であり、
前記フィルタ取り付け装置が、前記フィルタを前記ダイカスト機に搬送すると、前記フィルタが前記一の型の前記開口部を少なくとも部分的に閉塞することを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載のダイカスト装置。
【請求項10】
前記一の型が固定金型であり、前記他の型が可動金型であり、
該可動金型が、前記固定金型と接触する第1位置と、前記固定金型から離間する第2位置との間を移動することを特徴とする請求項1乃至9いずれかに記載のダイカスト装置。
【請求項11】
前記開口部が、前記一の型を貫通するとともに該一の型外方に延出する筒状のスリーブにより形成されることを特徴とする請求項1乃至10いずれかに記載のダイカスト装置。
【請求項12】
前記一の型の外側に位置する前記スリーブの端部にアクチュエータが取り付けられ、
該アクチュエータが前記プランジャチップを前記スリーブ軸方向に往復動させることを特徴とする請求項11記載のダイカスト装置。
【請求項13】
前記スリーブ内部が、第1の真空発生装置と接続する管路を備えることを特徴とする請求項12記載のダイカスト装置。
【請求項14】
前記可動金型が、該可動金型を貫通するとともに該可動金型内を摺動する押出ピンを備え、
該押出ピンの一端部が前記キャビティに現れることを特徴とする請求項10記載のダイカスト装置。
【請求項15】
前記押出ピンと前記可動金型の間の境界に空気が流動可能な流路が形成され、
該流路が第2の真空発生装置に接続することを特徴とする請求項14記載のダイカスト装置。
【請求項16】
前記キャビティ内で成型された成型品を前記ダイカスト機から取り出す取り出し装置を更に備え、
前記可動金型が前記第2位置にあるとき、前記取り出し装置が前記固定金型と前記可動金型の間に配され、前記押出ピンから押し出された前記成型品を受け止めることを特徴とする請求項14又は15記載のダイカスト装置。
【請求項17】
前記アクチュエータが前記プランジャチップを振動させることを特徴とする請求項12乃至16いずれかに記載のダイカスト装置。
【請求項18】
前記開口部が、前記キャビティ外周縁で囲まれる領域の内方に位置することを特徴とする請求項1乃至17いずれかに記載のダイカスト装置。
【請求項19】
前記開口部を複数備えることを特徴とする請求項1乃至18いずれかに記載のダイカスト装置。
【請求項20】
減圧センサを更に備え、
該減圧センサが前記キャビティ内の真空度を測定することを特徴とする請求項1乃至19いずれかに記載のダイカスト装置。
【請求項21】
位置センサを更に備え、
該位置センサが、前記プランジャチップの位置を測定することを特徴とする請求項1乃至20いずれかに記載のダイカスト装置。
【請求項22】
圧力センサを更に備え、
該圧力センサが前記キャビティ内の圧力を測定することを特徴とする請求項1乃至21いずれかに記載のダイカスト装置。
【請求項23】
前記キャビティ内の真空度を測定する減圧センサと、
前記プランジャチップの位置を測定する位置センサと、
前記キャビティ内の圧力を測定する圧力センサと、
前記キャビティ内の温度を測定する温度センサと、
前記減圧センサ、前記位置センサ、前記圧力センサ、前記温度センサからなる群から選択される少なくとも1つからの信号を受信するとともに、該受信した信号に応じた信号を前記アクチュエータに送信する制御盤を備え、
該アクチュエータが、前記送信された信号に基づき動作することを特徴とする請求項12記載のダイカスト装置。
【請求項24】
前記開口部が、前記キャビティ内に充填された金属溶湯が最後に凝固する最終凝固位置に配されることを特徴とする請求項1乃至23いずれかに記載のダイカスト装置。
【請求項25】
前記開口部が、前記キャビティ内を流動する金属溶湯の流動距離が最短となる充填最適位置に配されることを特徴とする請求項1乃至24いずれかに記載のダイカスト装置。
【請求項26】
前記開口部が、前記ダイカスト製品を前記固定金型から離脱させるときに最も力を要する部分に力を加える位置に配されることを特徴とする請求項1乃至25いずれかに記載のダイカスト装置。
【請求項27】
前記一の型の前記キャビティを形成する面に耐久塗型剤がコーティングされていることを特徴とする請求項1乃至26いずれかに記載のダイカスト装置。
【請求項28】
前記他の型の前記キャビティを形成する面に耐久塗型剤がコーティングされていることを特徴とする請求項1乃至27いずれかに記載のダイカスト装置。
【請求項29】
前記耐久塗型剤が、雲母を含むことを特徴とする請求項27又は28記載のダイカスト装置。
【請求項30】
前記耐久塗型剤が、ボロンナイトライドを含むことを特徴とする請求項27又は28記載のダイカスト装置。
【請求項31】
前記耐久塗型剤が更に、水ガラスを含むことを特徴とする請求項29又は30記載のダイカスト装置。
【請求項32】
前記耐久塗型剤が更に、リン酸アルミニウムを含むことを特徴とする請求項29又は30記載のダイカスト装置。
【請求項33】
前記一の型の前記キャビティを形成する面の少なくとも一部にセラミック溶射による表面処理が施されることを特徴とする請求項1乃至32いずれかに記載のダイカスト装置。
【請求項34】
前記他の型の前記キャビティを形成する面の少なくとも一部にセラミック溶射による表面処理が施されることを特徴とする請求項1乃至32いずれかに記載のダイカスト装置。
【請求項35】
前記一の型の前記キャビティを形成する面に細溝状の補助湯道が設けられることを特徴とする請求項1乃至34いずれかに記載のダイカスト装置。
【請求項36】
前記他の型の前記キャビティを形成する面に細溝状の補助湯道が設けられることを特徴とする請求項1乃至35いずれかに記載のダイカスト装置。
【請求項37】
前記一の型の前記キャビティを形成する面に細溝状の補助湯道が設けられ、
前記補助湯道が、前記保温容器を収容する開口部を横切ることを特徴とする請求項9記載のダイカスト装置。
【請求項38】
前記保温容器が、一端有底筒状の断熱材からなることを特徴とする請求項1乃至37いずれかに記載のダイカスト装置。
【請求項39】
所望の金属を溶解し、金属溶湯を得る溶解工程と、
前記金属溶湯を、一端有底筒状の保温容器に注ぐ注湯工程と、
前記金属溶湯を収容する保温容器を、ダイカスト機を構成する一の型に形成された開口部に供給する供給工程と、
前記ダイカスト機の一の型に、該一の型に対向して配される他の型を重ね合せ、キャビティを形成する型閉工程と、
前記キャビティに、前記保温容器に収容された前記金属溶湯を押し流す射出工程からなり、
前記射出工程が、前記開口部内に配されたプランジャチップと前記他の型との間で前記保温容器を圧縮破壊する段階を含むことを特徴とするダイカスト方法。
【請求項40】
前記保温容器が、該保温容器を外嵌する把持用筒体を備え、
前記供給工程が、前記把持用筒体の周壁と前記保温容器周壁を同時に挟持する段階と、
前記把持用筒体と前記保温容器をともに前記開口部に供給する段階を備えることを特徴とする請求項39記載のダイカスト方法。
【請求項41】
前記保温容器の開口端が該保温容器の底部に対して傾斜し、
前記供給工程が、前記把持用筒体の周壁を挟持し、前記開口部内に供給された把持用筒体を前記開口部から取り除く段階を備えることを特徴とする請求項40記載のダイカスト方法。
【請求項42】
前記注湯工程の後且つ前記供給工程の前に、搬送工程を更に備え、
該搬送工程が、前記保温容器に注湯する注湯装置から、前記ダイカスト機に前記保温容器を供給する供給装置まで前記保温容器を搬送する段階を含むことを特徴とする請求項39乃至41いずれかに記載のダイカスト方法。
【請求項43】
前記搬送工程が更に、搬送中の保温容器内の金属溶湯の温度低下を抑止する段階を含むことを特徴とする請求項42記載のダイカスト方法。
【請求項44】
前記供給工程が更に、前記ダイカスト機の前記一の型に形成された前記開口部にフィルタを取付ける段階を含むことを特徴とする請求項39乃至43いずれかに記載のダイカスト方法。
【請求項45】
前記フィルタが、一対の半円環形状の板材からなるリング部材を備え、該リング部材を前記ダイカスト機の前記一の型に形成された前記開口部に嵌入させ、該開口部を部分的に閉塞する段階を備えることを特徴とする請求項39乃至43いずれかに記載のダイカスト方法。
【請求項46】
前記射出工程が、前記キャビティ内を減圧する段階を含み、
前記プランジャチップによる前記保温容器の圧縮破壊が、前記キャビティの減圧の後に行なわれることを特徴とする請求項39乃至45いずれかに記載のダイカスト方法。
【請求項47】
前記射出工程が、前記キャビティ内の真空度を測定する段階を含み、
前記キャビティ内の真空度の測定値が所定の閾値以下となった後に、前記プランジャチップによる前記保温容器の圧縮破壊が行われることを特徴とする請求項46記載のダイカスト方法。
【請求項48】
前記射出工程が、前記キャビティ内の圧力を測定する段階を含むことを特徴とする請求項39乃至47いずれかに記載のダイカスト方法。
【請求項49】
前記射出工程が、前記キャビティ内の温度を測定する段階を含むことを特徴とする請求項39乃至48いずれかに記載のダイカスト方法。
【請求項50】
前記他の型を前記一の型から離間させる型開工程を更に備え、
該型開工程が、前記射出工程の後に実行されることを特徴とする請求項39乃至49いずれかに記載のダイカスト方法。
【請求項51】
前記型開工程が、前記プランジャチップを前記他の型の離間方向へ移動させる段階を備えることを特徴とする請求項50記載のダイカスト方法。
【請求項52】
前記型開工程が、前記プランジャチップの移動時に、前記プランジャチップに振動を与える段階を備えることを特徴とする請求項51記載のダイカスト方法。
【請求項53】
前記型開工程にて離間した前記一の型と前記他の型との間に、取り出し装置を配設する取り出し工程を更に備えることを特徴とする請求項50乃至52いずれかに記載のダイカスト方法。
【請求項54】
前記取り出し工程が、前記他の型に取付けられた押出ピンを前記一の型に向けて移動させ、前記他の型に付着した成型品を前記取り出し装置に供給する段階を備えることを特徴とする請求項53記載のダイカスト方法。
【請求項55】
前記取り出し工程が、前記成型品を前記取り出し装置に供給した後に、前記一の型及び前記他の型に離型剤を塗布する段階を備えることを特徴とする請求項54記載のダイカスト方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2010−179331(P2010−179331A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24206(P2009−24206)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(509093026)公立大学法人高知工科大学 (95)