説明

ダイズペプチド含有ゲル状食品

【課題】ダイズタンパク質やペプチド由来の苦味や異臭が低減され、さらに、ゲル化剤の含有量を低減することができるダイズペプチド含有ゲル状食品を提供すること。
【解決手段】ゲル化剤及びダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物を含有してなる、ゲル状食品。ダイズペプチドを含有しても、ダイズタンパク質やペプチド由来の苦味や異臭が低減され、風味が良好になり、また、ダイズペプチドとしてサーモリシン加水分解物を用いることで、ゲル強度を増強することができるので、ゲル化剤の配合量を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル化剤及びダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物を含有する、ゲル状食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばコラーゲンやヒアルロン酸等の美容効果を有する成分を含有するゲル状食品が市販され、手軽に摂取できる美容食品として脚光を浴びている。また、ダイズタンパク質やペプチドも手軽に摂取できる健康素材として着目されており、かかる成分を含有するゲル状食品も知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、乳酸菌とセラミドを含有する美容食品に、さらにダイズペプチドを含有させることで、総合的に肌の健康を維持する効果のある美容食品が開示されている。また、特許文献2では、タンパク質補給用として十分な量のタンパク質を含有し、さらに、食事代替品として手軽に摂取でき食感を楽しむことができるよう、良好な弾力性及び風味を有する、ダイズペプチド含有高タンパク質ゲル状食品が開示されている。
【0004】
一方、ゲル状食品の食感を改善する方法として、特定のゲル化剤を用いて作られたゲルを凍結した後に解凍することによって、食感を改良する方法が開示されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−254632号公報
【特許文献2】特開2006−304727号公報
【特許文献3】特開2002−119225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ダイズタンパク質やペプチドを含有させたゲル状食品は、該タンパク質やペプチド由来の苦味や異臭を呈すために、さらなる改良が求められている。また、特許文献3の方法によってゲル状食品の食感を改善することも可能であるが、ゲル化剤が限定され、また、操作が煩雑である等の問題もある。また、ゲル化剤を過剰に摂取すると、食事として摂取したタンパク質の消化率を減少させたり、ビタミンやミネラルの吸収率を低下させたりする場合があることも知られている。
【0007】
本発明の課題は、ダイズタンパク質やペプチド由来の苦味や異臭が低減され、さらに、ゲル化剤の含有量を低減することができるダイズペプチド含有ゲル状食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
〔1〕 ゲル化剤及びダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物を含有してなる、ゲル状食品、
〔2〕 ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物の含有量が0.1〜40重量%である、前記〔1〕記載のゲル状食品、
〔3〕 ゲル化剤が、寒天、グルコマンナン、カードラン、ジェランガム、ペクチン、カラギーナン及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一つである、前記〔1〕又は〔2〕記載のゲル状食品、
〔4〕 ゲル化剤の含有量が0.01〜10重量%である、前記〔1〕〜〔3〕いずれか記載のゲル状食品、並びに
〔5〕 ゲル状食品がゼリーである、前記〔1〕〜〔4〕いずれか記載のゲル状食品
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のゲル状食品は、ダイズペプチドを含有しても、従来のダイズペプチド含有ゲル状食品と比較して、ダイズタンパク質やペプチド由来の苦味や異臭が低減され、風味が良好になるという優れた効果を奏する。また、ダイズペプチドとしてサーモリシン加水分解物を用いることで、ゲル強度を増強することができるので、従来のダイズペプチド含有ゲル状食品と比較して、ゲル化剤の配合量を低減できるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のゲル状食品は、ゲル化剤及びダイズペプチドを含有するものであり、前記ペプチドがダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物(以下、サーモリシン加水分解物という)であることに大きな特徴を有する。
【0011】
サーモリシン加水分解物は、ダイズタンパク質をサーモリシンにより加水分解することにより得られるが、サーモリシンのペプチド切断特性により、低分子量にまで加水分解が進まず、低分子量にまで加水分解が進んだ際に生じる遊離アミノ酸や該アミノ酸の分解物由来の臭い成分が少ないことから、ゲル状食品に含有させても、ダイズタンパク質やペプチド由来の苦味や異臭を強く感じることがないと推定される。また、後述の実施例にも示すように、サーモリシン加水分解物はゲル状食品のゲル強度を増強することから、ゲル状食品に含有させることで、配合されるゲル化剤の使用量を低減することも可能である。
【0012】
本発明におけるダイズタンパク質は、ダイズ植物に由来するタンパク質であれば特に限定されないが、好ましくはダイズ植物の種子に由来するタンパク質である。
【0013】
従って、本発明においては、ダイズ植物そのものやダイズ植物の種子そのもの、あるいは該植物や該種子の破砕物又は粉砕物等を、ダイズタンパク質として用いてもよいが、好ましくはダイズ植物中の全成分からタンパク質成分を分離、精製したもの、より好ましくは、ダイズ植物の種子中の全成分からタンパク質成分を分離、精製したものが用いられる。このように分離、精製して得られたダイズタンパク質は、ダイズ植物又はダイズ植物の種子中に含まれる実質的に全種類のタンパク質を含むものでもよく、また、一部のタンパク質を含むものであってもよい。
【0014】
ダイズタンパク質としては、市販品も好適に用いられ得、例えば、日清コスモフーズ(株)、ADMファーイースト(株)、昭和産業(株)、不二製油(株)、(株)光洋商会等の製造業者又は供給業者から容易に入手可能である。
【0015】
なお、本明細書において、ダイズ植物の種子とは、ダイズ種子と通常呼ばれる構造物全体を指すのみならず、例えば、脱皮ダイズ種子、脱脂ダイズ種子(粉末)、ダイズ種子全体より得られえる雪花菜(オカラ)等でもあり得る。
【0016】
本発明で使用されるサーモリシン(EC3.4.24.27)は、Bacillus thermoproteolyticusという耐熱性菌によって生産される耐熱性のプロテアーゼである。サーモリシンは一般に、大きな側鎖をもった疎水性のアミノ酸残基(例えばイソロイシン、ロイシン、バリン、フェニルアラニン、メチオニン、アラニン等)のアミノ基側のペプチド結合を切断することが知られている。
【0017】
サーモリシンは、市販品も好適に使用され得、大和化成(株)等の製造業者から容易に入手可能である。また、本発明においては、サーモリシンと同等のペプチド切断特性(切断配列特異性等)を有するプロテアーゼとして当該分野で公知のプロテアーゼを、サーモリシンとして用いることができる。
【0018】
なお、本発明では、ダイズタンパク質を加水分解する際に、本発明の効果を損なわない範囲で、サーモリシン以外の他のプロテアーゼを使用してもよい。他のプロテアーゼとしては、特に限定されず、例えば、パパイン、ブロメライン、トリプシン、キモトリプシン、パンクレアチン、スブリチン等が挙げられる。これらは、1種類又は2種類以上を組み合わせて、サーモリシンと併用してもよい。
【0019】
ダイズタンパク質をサーモリシンで加水分解する場合に用いられる反応条件は、特に制限されず、技術常識に従って当業者により適宜選択され得る。例えば、市販のサーモリシンを使用する場合には、その使用説明書に従って使用することができる。具体的な例としては、水等の溶媒に、ダイズタンパク質濃度が、好ましくは0.1〜30%(w/v)、より好ましくは1〜10%(w/v)程度となるようにダイズタンパク質又はダイズタンパク質を含む原料を懸濁し、この懸濁液に、好ましくは0.001〜3%(w/v)、より好ましくは0.01〜0.125%(w/v)程度となるようにサーモリシンを加えて加水分解反応を行なう態様が挙げられる。反応温度は30〜80℃が好ましく、40〜70℃がより好ましく、50〜60℃がさらに好ましい。また反応時間は、2〜30時間が好ましく、3〜24時間がより好ましく、10〜20時間がさらに好ましく、12〜18時間がさらにより好ましい。反応液のpHとしては、サーモリシンの至適pHであるpH7.0〜8.5付近であることが好ましい。
【0020】
反応の停止手段についても、特に制限はなく、公知の手段を用いることができる。かかる手段としては、例えば、加熱処理等が挙げられる。具体的には、上記反応物を80〜100℃程度の温度で好ましくは3〜20分間、より好ましくは5〜15分間加熱処理すればよく、85℃で15分間の加熱処理や100℃で5分間の加熱処理により、反応物中に含まれるサーモリシンを失活させることができる。
【0021】
上記のような加水分解反応により得られるサーモリシン加水分解物は、必要に応じて、当業者に公知の任意の方法によりさらに処理され得る。例えば、ろ過等の処理により、該サーモリシン加水分解物中の大きな固体粒子を取り除くことが好ましい。ろ過条件等は、特に制限されず、技術常識に従って当業者により適宜選択され得る。例えば、ろ紙が目詰まりを起こしやすい場合等には、ろ過助剤等も好適に用いられ得る。
【0022】
また、前記サーモリシン加水分解物を減圧濃縮し、次いで凍結乾燥することにより、粉末化することもできる。減圧濃縮及び凍結乾燥の際に使用される条件や機器類は、特に制限されず、技術常識に従って当業者により適宜選択され得る。このようにして粉末化されたサーモリシン加水分解物は、そのまま又は水等の溶媒に溶かして、用いることができる。
【0023】
サーモリシン加水分解物は、ダイズタンパク質をサーモリシンで加水分解することにより生じた多種多様なペプチドを実質的に全て含んだ状態であってもよいし、又は、そのような多種多様なペプチドを、公知の方法で、さらに分画及び精製して得られる一部分であってもよい。しかし簡便には、ダイズタンパク質をサーモリシンで加水分解して得られる多種多様なペプチドを実質的に全て含んだ状態でそのまま用いる。
【0024】
本発明におけるサーモリシン加水分解物の平均分子量は、好ましくは300〜10000である。該平均分子量は、臭い成分の元になる遊離アミノ酸が少ないという観点から、より好ましくは400〜5000であり、さらに好ましくは500〜3500であり、さらにより好ましくは550〜3200である。サーモリシン加水分解物の平均分子量は、当業者に公知の任意の方法によりに測定され得、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定され得る。本明細書において、GPC法により測定される平均分子量は「ピーク平均分子量」を意味し、「ピーク平均分子量」とは、クロマトグラムのピークトップ(最も強い強度のピーク)の溶出時間に対応する分子量を意味する。
【0025】
本発明におけるサーモリシン加水分解物は、臭い成分の元になる遊離アミノ酸の含有量が少ないため、ゲル状食品に含有されてもダイズタンパク質やペプチド由来の苦味や異臭を低減することが可能である。本発明におけるサーモリシン加水分解物中の遊離アミノ酸の総含有量は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.01〜0.5重量%、さらに好ましくは0.01〜0.2重量%ある。サーモリシン加水分解物中の遊離アミノ酸の総含有量は、当業者に公知の方法により測定され得、例えば、アミノ酸自動分析法により測定され得る。
【0026】
本発明では、サーモリシン加水分解物として市販品である「コラプラスTMN」(ロート製薬社製、遊離アミノ酸の総含有量:0.14重量%、ピーク平均分子量:711)等を用いることができる。
【0027】
本発明のゲル状食品中のサーモリシン加水分解物の含有量は、該加水分解物そのものの苦味が低いため、高配合が可能であり、その配合量は制限されるわけではないが、0.1〜40重量%が好ましく、1〜30重量%がより好ましく、10〜25重量%がさらに好ましい。
【0028】
本発明におけるゲル化剤としては、寒天、グルコマンナン、カードラン、ジェランガム、ペクチン、カラギーナン、アルギン酸塩等の多糖系ゲル化剤や、ゼラチン等のタンパク質系ゲル化剤等が挙げられ、これらの中でも、寒天、グルコマンナン、カードラン、ジェランガム、ペクチン、カラギーナン、ゼラチン等がより好ましい。これらの一つ又は二つ以上を併用して用いることができる。
【0029】
本発明のゲル状食品はダイズペプチドとしてサーモリシン加水分解物を用いることによりゲル強度を増強することが可能であることから、ゲル化剤の配合量を低減することができる。本発明のゲル状食品中のゲル化剤の含有量(但し、二つ以上を併用する場合は総含有量を意味する)は、使用するゲル化剤によって異なるが、0.01〜10重量%が好ましく、0.1〜10重量%がより好ましく、0.1〜5重量%がさらに好ましい。
【0030】
本発明のゲル状食品は、サーモリシン加水分解物を含有するが、サーモリシン加水分解物がゲル化剤の凝固作用を増強する効果を有することから、良好なゲル強度を有する。本発明におけるゲル強度はゲルを圧縮し、ゲルが破断したときの破断強度(N)を意味する。ゲル強度の測定は、特に制限されず、当該分野に公知の方法によってなされ、その際に使用される条件や機器類は、特に制限されず、技術常識に従って当業者により適宜選択され得る。ゲル強度は、好ましくは0.1〜1.0N、より好ましくは0.5〜1.0N、さらに好ましくは0.6〜0.8Nである。
【0031】
なお、本発明のゲル状食品は、サーモリシン加水分解物及びゲル化剤以外に、必要により、糖類(砂糖、果糖、乳糖、グラニュー糖等)、香料(バニラエッセンス等)、ビタミン類、果汁(オレンジ果汁、リンゴ果汁、イチゴ果汁、ブドウ果汁、バナナ果汁等)、果実(オレンジ、リンゴ、イチゴ、ブドウ、バナナ等)、酸味料、卵(卵黄、卵白も含む)、ミネラル、安定剤、乳化剤、色素、フルーツ、ワイン、乳製品(ヨーグルト、牛乳、生クリーム、脱脂粉乳、発酵乳、乳清等)、こしあん、酒類(コアントロー等)等を含有してもよい。ゲル状食品の例としては、好ましくはゼリー、より具体的には、フルーツゼリー、コーヒーゼリー、ワインゼリー、ヨーグルトゼリー等や、和風ゼリー(水ようかん、ところてん、ういろう等)、ゼリー飲料(ゼリー入り飲料、スパウト容器入りゼリー飲料等)が挙げられる。他にも、ムース、ババロア、プリン、ヨーグルト、ジャム、コンニャク、コンニャクゼリー、グミ、ゼリービーンズ等が挙げられる。
【0032】
本発明のゲル状食品は、ゲル化剤及びサーモリシン加水分解物、並びに必要により、上記の他の成分を混合した後にゲル化を行なうことにより得ることができる。例えば、ゲル化剤として、寒天、カラギーナン、グルコマンナン及びジェランガムを使用する場合は、ゲル化剤及びサーモリシン加水分解物、並びに上記の他の成分を水に分散させ混合液を調製し、好ましくは90℃まで加熱し、溶解、混合した後、25℃まで冷却することにより得ることができる。ペクチンについては、80℃以上で溶解させた後、カルシウムイオンを添加することによりゲル化させることが可能である。ゼラチンを使用する場合は、ゼラチン粉末を10〜25℃の温度で撹拌し、60分程度かけて膨潤させた後、50〜60℃に加温して溶解させる。これを室温以下に冷却することにより得ることができる。ゲル化剤として、カードランを使用する場合は、ゲル化剤及びサーモリシン加水分解物、並びに上記の他の成分を水に分散させ混合液を調製し、80℃以上に加熱して熱不可逆性のハイセットゲルを形成させることにより得ることができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明について実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0034】
〔ダイズペプチドの分子量〕
ダイズペプチドを25mM Tris-HCl緩衝液(150mM NaCl含有、pH7.5)に溶解し、1mg/mLの被験溶液を調製する。HPLCカラムSuperdex peptide HR(10mm I.D.×30cm,Amersham Biosciences社製)を同じ緩衝液で平衡化し、このカラムに被験溶液を100μL注入する。カラムの流速は0.5mL/分、カラム温度は室温、ペプチドの検出は214nmで行い、溶出時間から分子量分布及びピーク平均分子量を推定する。なお、分子量既知のペプチド標品として、Cytochrome C(シグマ社製、分子量12327)、Aprotinin(シグマ社製、分子量6518)、Hexaglycine(シグマ社製、分子量360)、Triglycine(シグマ社製、分子量189)、及びGlycine(シグマ社製、分子量75)を用いた。
【0035】
〔ダイズペプチド中の遊離アミノ酸の総含有量〕
アミノ酸自動分析法によりサーモリシン加水分解物、あるいは市販ダイズペプチド中の各種遊離アミノ酸を定量し、それらを合計することにより遊離アミノ酸の総含量を求める。
【0036】
〔ゲル状食品のゲル強度〕
丸型バネ式テンションゲージ(商品名:豆腐用硬度計SOWB、(株)大場計器製作所製)を用いて、ゲル状食品のゲル強度を測定する。
【0037】
実施例1 ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物含有ゼリーの作製
表1に示される原料を用いて、ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物(商品名:コラプラスTMN、ロート製薬社製、ピーク平均分子量:711、遊離アミノ酸の総含有量:0.14重量%)の含有量が10重量%である混合液を調製し、95℃まで加熱し、溶解、混合した後、直ちに冷却してサーモリシン加水分解物含有ゼリーを作製した。得られたゼリーのゲル強度は0.64±0.06N(4回測定の平均値±標準偏差)であった。
【0038】
比較例1 市販ダイズペプチド含有ゼリーの作製
コラプラスTMNの代わりに、ダイズタンパク質の三種のプロテアーゼ(メタロプロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、カルボキシルプロテアーゼ)分解物である市販ダイズペプチド(ピーク平均分子量:543、遊離アミノ酸の総含有量:3.0重量%)を使用する以外は、実施例1と同様にして、市販ダイズペプチド含有ゼリーを作製した。得られたゼリーのゲル強度は0.11±0.04N(4回測定の平均値±標準偏差)であった。
【0039】
参考例1 ダイズペプチド無添加ゼリーの作製
ダイズペプチドを添加しない以外は、実施例1と同様にして、ダイズペプチド無添加含有ゼリーを作製した。得られたゼリーのゲル強度は0.55±0.07N(4回測定の平均値±標準偏差)であった。
【0040】
【表1】

【0041】
サーモリシン加水分解物のゲル状食品のゲル強度に与える影響を調べるために、実施例1、比較例1及び参考例1のゲル強度の比較を行ったところ、市販ダイズペプチドの添加によりゲル強度が減少することが分かった。すなわちゲル強度は、実施例1>参考例1>比較例1の順であり、サーモリシン加水分解物を添加することで、ゲル状食品のゲル強度を増加させることが判明した。このことから、ダイズペプチドとして、サーモリシン加水分解物を使用することで、使用するゲル化剤を減量することが可能であることが示唆される。
【0042】
試験例1 実施例1及び比較例1のゼリーの官能評価
実施例1及び比較例1のゼリーについて、パネラー5名により、苦味の少なさ、異臭の少なさ、風味の3項目について官能評価を行なった。パネラーには、いずれか良かったものを項目毎に選択してもらい、その回答数を合計した。結果を表2に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
表2の結果より、ダイズペプチドとしてサーモリシン加水分解物を使用することで、苦味や異臭が低減され、さらに比較例1よりも優れた風味を示すことが見出された。以上のことから、本発明で使用したサーモリシン加水分解物は、ゲル状食品に適していると言える。
【0045】
配合例1〜100 サーモリシン加水分解物含有ゲル状食品の作製
表3〜8に示す原材料を用い、当業者に公知の方法に従って、ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物(コラプラスTMN)を含有するゲル状食品を作製する。
【0046】
【表3】

【0047】
【表4】

【0048】
【表5】

【0049】
【表6】

【0050】
【表7】

【0051】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、ダイズタンパク質やペプチド由来の苦味や異臭が低減され、さらにゲル化剤の含有量を低減することができるゲル状食品を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル化剤及びダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物を含有してなる、ゲル状食品。
【請求項2】
ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物の含有量が0.1〜40重量%である、請求項1記載のゲル状食品。
【請求項3】
ゲル化剤が、寒天、グルコマンナン、カードラン、ジェランガム、ペクチン、カラギーナン及びゼラチンからなる群より選択される少なくとも一つである、請求項1又は2記載のゲル状食品。
【請求項4】
ゲル化剤の含有量が0.01〜10重量%である、請求項1〜3いずれか記載のゲル状食品。
【請求項5】
ゲル状食品がゼリーである、請求項1〜4いずれか記載のゲル状食品。

【公開番号】特開2013−31453(P2013−31453A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−226304(P2012−226304)
【出願日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【分割の表示】特願2008−33476(P2008−33476)の分割
【原出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】