説明

ダイバーシチ通信システム

【課題】集中基地局における受信系統の数を削減し、装置構成の簡易化および低コスト化を実現し、さらに高い通信品質を得ることができるダイバーシチ通信システムを提供する。
【解決手段】集中基地局10は、選択した遠隔基地局のみが光信号を送信するように複数の遠隔基地局40a,40b,40cを制御し、受信した複数の光信号を検波前合成し、合成した光信号を電気信号に変換して復調処理を行う。複数の遠隔基地局40a,40b,40cは、光信号の送信をオンオフする制御手段46を備え、集中基地局10は、通信を開始するときに、各遠隔基地局を経由する上り信号の伝搬チャネルベクトルを求め、各遠隔基地局に対応する伝搬チャネルベクトルの加算後の大きさが、加算前の各伝搬チャネルベクトルの大きさより大きくなる遠隔基地局を選択し、該選択した遠隔基地局のみが光信号を送信するように複数の遠隔基地局を制御する制御手段12を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集中基地局と互いに異なる位置に配置された複数の遠隔基地局とを光伝送路で接続し、各遠隔基地局が端末局から同一時刻、同一周波数で送信された信号(例えばTDMA信号、OFDMA信号)を集中基地局に転送し、集中基地局で各遠隔基地局からの信号をダイバーシチ合成受信するダイバーシチ通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の無線通信では、利用可能な周波数の逼迫に伴い、より少ない周波数資源で効率的に通信を行う必要がある。一般に、通信可能な領域を面的に拡大するには、図8に示すように領域を区切り、領域ごとに基地局を配置し、各領域に互いに異なる周波数を割り当てることにより、互いに干渉の生じない通信を可能にする方法がある。この例では、各領域を六角形とし、中心の領域で周波数F1を用い、その周囲の領域では干渉を回避するために周波数F2〜F7を用いるために、合計で7種類の周波数が必要になる。しかし、実際の周波数資源は有限であるため、このような面的展開が必ずしも可能であるとは限らない。さらに、端末局が図8の各領域間を移動しても通信を維持するためには、端末局が通信する基地局を変更するハンドオーバ処理が発生し、システム構成が複雑になる。
【0003】
そこで、単一の周波数で通信可能な領域を面的に拡大するSFN(Single Frequency Network)が提案されている。SFNは、図9に示すように、各領域に単一の周波数F1を用いる遠隔基地局を配置し、光伝送路を介して各遠隔基地局を集中基地局に接続する構成である。本構成において、基地局から端末局へ信号を送信する下りリンクでは、集中基地局からの信号が各遠隔基地局に伝送され、各遠隔基地局から同時に送信されて端末局に到達する。端末局から基地局へ信号を送信する上りリンクでは、端末局から送信された信号が各遠隔基地局に受信され、さらに集中基地局に到達し、集中基地局でダイバーシチ合成される。この結果、単一の周波数を用いて通信可能な領域を面的に拡大することができる。また、遠隔基地局は、上りと下りの各信号を中継するだけの簡易な構成であるので、SFNは全体の装置コストを低減することができる。さらに、集中基地局では端末局が領域を移動しても、移動を認識せずに通信を維持することができるので、ハンドオーバ処理が不要になる。
【0004】
図10は、SFNを実現する従来のダイバーシチ通信システムの構成例を示す。
図において、集中基地局10と遠隔基地局40a,40b,40cは、下りリンクの光伝送路30a,30b,30cおよび上りリンクの光伝送路31a,31b,31cを介して接続される。端末局50は、遠隔基地局40a,40b,40cに接続され、さらに集中基地局10に接続される。
【0005】
まず、下りリンクの信号について説明する。
集中基地局10は、外部のネットワーク100からのデータ信号をネットワークインタフェース11で受信し、このデータ信号と制御部12からのシステムの送受信タイミングを指示する制御信号とを変調器13で無線信号に変換する。なお、端末局50の送受信タイミングを指示する制御信号は、データ信号の周波数と同一であることが一般的であり、遠隔基地局40a,40b,40cを制御する制御信号はデータ信号の周波数と異なることが一般的である。これらの信号は、E/O変換器14で光信号に変換され、送信用光カプラ15で分配され、それぞれ光伝送路30a,30b,30cを介して遠隔基地局40a,40b,40cに到達する。
【0006】
遠隔基地局40a(遠隔基地局40b,40cも同様)は、光伝送路30aから到達した光信号をO/E変換器41で電気信号に変換する。この電気信号のうち、データ信号は送信用増幅器42で増幅された後、スイッチ43、アンテナ44を介して無線信号として送信され、端末局50に受信される。なお、スイッチ43は、制御部12から伝送される制御信号に応じて送受信の切り替え制御を行う(図示せず)。
【0007】
次に、上りリンクの信号について説明する。
端末局50の送信信号は、遠隔基地局40a,40b,40cに到達する。遠隔基地局40a(遠隔基地局40b,40cも同様)は、アンテナ44で受信した信号をスイッチ43を介して受信用増幅器45に入力し、受信用増幅器45で増幅された信号をE/O変換器46で光信号に変換し、光伝送路31aを介して集中基地局10に送出する。
【0008】
集中基地局10には、遠隔基地局40aからの光信号とともに、遠隔基地局40b,40cからの光信号も到達する。これらの光信号は、それぞれO/E変換器17a,17b,17cで電気信号に変換され、それぞれ復調器18a,18b,18cで復調される。復調された各信号は、検波後合成器20で検波後ダイバーシチ合成した後に符号判定器19でデータ信号に変換される。このデータ信号は、ネットワークインタフェース11を介して外部のネットワーク100に送出される。
【0009】
なお、検波後合成器20では検波後ダイバーシチ合成法として、非特許文献1に記載されているレベルが高い信号を選択する選択合成や、位相を揃えて合成する等利得合成や、信号雑音比を最大にする最大比合成等が用いられる。
【0010】
このような従来のダイバーシチ通信システムは、集中基地局10において、遠隔基地局の数と同数の受信系統を用意する必要があるため、SFNを用いた場合であってもコスト削減効果が十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−252616号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】斉藤洋一、ディジタル無線通信の変復調、電子情報通信学会、pp.189-193
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図10のダイバーシチ通信システムは、集中基地局において遠隔基地局と同数の受信系統が必要となり、装置構成が大規模となり、装置コストが増加する問題があった。
【0014】
本発明は、集中基地局における受信系統の数を削減し、装置構成の簡易化および低コスト化を実現し、さらに高い通信品質を得ることができるダイバーシチ通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、端末局と無線回線を介して接続される複数の遠隔基地局と、複数の遠隔基地局とそれぞれ光伝送路を介して接続される1つの集中基地局とを備え、複数の遠隔基地局が端末局から受信した上り無線信号を光信号に変換し、光伝送路を介して集中基地局に送信し、集中基地局が受信した複数の光信号をダイバーシチ合成するダイバーシチ通信システムにおいて、集中基地局は、選択した遠隔基地局のみが光信号を送信するように複数の遠隔基地局を制御し、受信した複数の光信号を検波前合成し、合成した光信号を電気信号に変換して復調処理を行う構成であり、複数の遠隔基地局は、光信号の送信をオンオフする制御手段を備え、集中基地局は、通信を開始するときに、各遠隔基地局を経由する上り信号の伝搬チャネルベクトルを求め、各遠隔基地局に対応する伝搬チャネルベクトルの加算後の大きさが、加算前の各伝搬チャネルベクトルの大きさより大きくなる遠隔基地局を選択し、該選択した遠隔基地局のみが光信号を送信するように複数の遠隔基地局を制御する制御手段を備える。
【0016】
遠隔基地局および集中基地局の制御手段は、遠隔基地局で無線信号を光信号に変換するE/O変換器の電源またはバイアスを制御してオンオフし、光信号を送信する遠隔基地局を選択する構成である。
【0017】
集中基地局の制御手段は、各遠隔基地局を経由する上り信号の伝搬チャネルベクトルを求め、各象限に属する伝搬チャネルベクトルの和の大きさを比較し、これが最大となる象限に属する伝搬チャネルベクトルに対応する遠隔基地局を選択する構成である。
【0018】
集中基地局の制御手段は、各遠隔基地局を経由する上り信号の伝搬チャネルベクトルを求め、所定の角度θから90°以内に属する伝搬チャネルベクトルの和の大きさを角度θを変えて比較し、これが最大となる角度に属する伝搬チャネルベクトルに対応する遠隔基地局を選択する構成である。
【0019】
集中基地局の制御手段は、各遠隔基地局を経由する上り信号の伝搬チャネルベクトルを求め、大きさが最大の伝搬チャネルベクトルおよびこの±90°以内に属する伝搬チャネルベクトルに対応する遠隔基地局を選択する構成である。
【0020】
集中基地局の制御手段は、端末局ごとに異なる周波数チャネルを利用するときに、周波数チャネルごとに各遠隔基地局を経路する上り信号の伝搬チャネルベクトルを求め、周波数チャネルごとの伝搬チャネルベクトルの和から通信容量を計算し、その通信容量が最大となる遠隔基地局を選択する構成である。
【発明の効果】
【0021】
本発明のダイバーシチ通信システムは、集中基地局で選択した遠隔基地局からの光信号を検波前合成し、合成された光信号を電気信号に変換して復調する構成により、集中基地局の受信系統を遠隔基地局数より少ない数に集約することができる。これにより、装置構成の簡易化および低コスト化を実現することができる。
【0022】
本発明のダイバーシチ通信システムは、各遠隔基地局内のE/O変換器をオンオフ制御し、各遠隔基地局を通過する上り信号の集中基地局における伝搬チャネルベクトルを求め、各遠隔基地局に対応する伝搬チャネルベクトルの加算後の大きさが加算前より大きくなる遠隔基地局を選択し、オンとする。この結果、検波前合成によって十分に良好なダイバーシチ効果を得て通信品質を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のダイバーシチ通信システムの実施例1の構成例を示す図である。
【図2】遠隔基地局の選択方法の例1を示す図である。
【図3】遠隔基地局の選択方法の例2を示す図である。
【図4】遠隔基地局の選択方法の例3を示す図である。
【図5】端末局50が自律的に上り信号を送出する場合の動作例1を示す図である。
【図6】制御部12からの指示に従って端末局50が上り信号を送出する場合の動作例2を示す図である。
【図7】実施例2における遠隔基地局の選択方法の例を示す図である。
【図8】複数の周波数を用いた面的展開の例を示す図である。
【図9】SFNを用いた面的展開の例を示す図である。
【図10】SFNを実現する従来のダイバーシチ通信システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0024】
図1は、本発明のダイバーシチ通信システムの実施例1の構成例を示す。
図において、集中基地局10と遠隔基地局40a,40b,40cとは、下りリンクの光伝送路30a,30b,30cおよび上りリンクの光伝送路31a,31b,31cを介して接続される。端末局50は、遠隔基地局40a,40b,40cを介して集中基地局10に接続される。
【0025】
集中基地局10を構成するネットワークインタフェース11、制御部12、変調器13、E/O変換器14、送信用光カプラ15、O/E変換器17、復調器18、符号判定器19は、図10に示す従来の集中基地局10と同じ機能を有する。遠隔基地局40a(遠隔基地局40b,40cも同様)を構成するO/E変換器41、送信用増幅器42、スイッチ43、受信用増幅器45、E/O変換器46は、図10に示す従来の遠隔基地局40aと同じ機能を有する。
【0026】
本実施例の特徴は、集中基地局10に受信用光カプラ16を備え、各遠隔基地局40a,40b,40cから光伝送路31a,31b,31cを介して伝送された光信号を検波前合成し、1系統の光信号としてO/E変換器18に入力する構成であり、さらに各遠隔基地局40a(遠隔基地局40b,40cも同様)内の電源スイッチ47によりE/O変換器46の電源を制御してE/O変換器46をオンオフする構成であり、さらに制御部12における遠隔基地局の選択機能にある。
【0027】
なお、端末局から遠隔基地局までの空間および光伝送路を通過し、受信用光カプラ16で検波前合成される各光信号の遅延時間差は、例えばOFDM信号におけるガードインターバル内に収まる程度となる等、遠隔基地局間の到来時間差が大きく異なり、異なる情報が合成されることに起因したシンボル間干渉が発生しない範囲でほぼ等しくなるように調整されている。また、各々の遠隔基地局の光信号の波長は、温度制御ならびに発振波長の選択などにより、ビート雑音の影響が生じない波長の組み合わせに予め設定されている。
【0028】
下りリンクの信号は従来構成と同様であり、集中基地局10から光伝送路30a,30b,30cを介して伝送された光信号は、各遠隔基地局40a,40b,40cで無線信号に変換してアンテナ44から送信され、端末局50が受信する。
【0029】
次に、上りリンクの信号について説明する。
端末局50の送信信号は、遠隔基地局40a,40b,40cに到達する。遠隔基地局40a(遠隔基地局40b,40cも同様)は、アンテナ44で受信した信号をスイッチ43を介して受信用増幅器45に入力し、受信用増幅器45で増幅された信号をE/O変換器46で光信号に変換し、光伝送路31aを介して集中基地局10に送出する。電源スイッチ47は、E/O変換器46の電源をオンオフすることにより、その遠隔基地局から集中基地局への送信動作を制御する。なお、電源スイッチ47に代えて、E/O変換器46のバイアスを制御することにより、その出力をオンオフするようにしてもよい。
【0030】
集中基地局10の制御部12は、遠隔基地局40a,40b,40cの電源スイッチ47を制御してE/O変換器46をオンオフし、オンとなる遠隔基地局の組み合わせを選択する。さらに制御部12は、遠隔基地局ごとに上り信号のチャネル状態を推定し、良好なチャネル状態が得られる遠隔基地局の組み合わせを決定し、その遠隔基地局のE/O変換器46をオンとし、他をオフとする制御を行う。これにより、端末局50が送信する上り信号は、集中基地局10におけるチャネル状態が良好な組み合わせの遠隔基地局を介して集中基地局10に受信され、検波前合成によって十分に良好なダイバーシチ効果を得て通信品質を改善することができる。
【0031】
図2は、遠隔基地局の選択方法の例1を示す。ここで、a,b,cは、遠隔基地局40a,40b,40cをそれぞれ経由する上り信号の集中基地局10における伝搬チャネルベクトルを示す。図3、図4、図7においても同様である。
【0032】
制御部12は、各遠隔基地局を1つずつオンとし、オンの遠隔基地局からの上り信号の伝搬チャネルベクトルを求め、各象限に属する伝搬チャネルベクトルの和の大きさを比較し、これが最大となる象限の伝搬チャネルベクトルに対応する遠隔基地局を選択し、そのE/O変換器46をオンとする。ここでは、第一象限の伝搬チャネルベクトルの和が最大となるので、その伝搬チャネルベクトルに対応する遠隔基地局40a,40bを選択し、その電源を投入する。これにより、同じ象限の伝搬チャネルのみがベクトル加算され、集中基地局における受信電力が高められ、通信品質を改善することができる。
【0033】
なお、各象限に1つの伝搬チャネルベクトルのみであれば、最大の伝搬チャネルベクトルに対応する1つの遠隔基地局が選択される。この場合は、複数の遠隔基地局の上り信号を無用に検波前合成するより、1つの遠隔基地局の上り信号のみを受信するようにした方が集中基地局における受信電力が低下せず、通信品質を改善することができる。
【0034】
図3は、遠隔基地局の選択方法の例2を示す。
制御部12は、各遠隔基地局を1つずつオンとし、オンの遠隔基地局を経由する上り信号の伝搬チャネルベクトルを求め、ある角度θから90°以内に属する伝搬チャネルベクトルの和の大きさを全てのθに対して計算し、これが最大となる角度に属する伝搬チャネルベクトルに対応する遠隔基地局を選択し、その電源を投入する。図3(a) は探索中の例をを示し、図3(b) は組み合わせの確定時を示す。これにより、ある角度θから90°以内に属する伝搬チャネルのみがベクトル加算され、集中基地局における受信電力が高められ、通信品質を改善することができる。
【0035】
ところで、任意の大きさの2つのベクトルの和の絶対値が、元のベクトルの絶対値の大きさに拘らず、元のベクトルの絶対値のいずれよりも大きくなるためには、この2つのベクトルの成す角が90°以内でなければならない。したがって、本例では、伝搬チャネルベクトルの和の絶対値を元の伝搬チャネルベクトルの絶対値よりも確実に増加させるために、ある角度θから90°以内に属する伝搬チャネルベクトルの和の大きさを評価している。なお、図2の例1は、ある角度θが0°、90°、 180°、 270°の4パターンの場合に相当するが、図3の例2は任意の角度θを用いるので、象限を跨がる伝搬チャネルベクトルの和を対象とすることができる。
【0036】
図4は、遠隔基地局の選択方法の例3を示す。
制御部12は、各遠隔基地局を1つずつオンとし、オンの遠隔基地局を経由する上り信号の伝搬チャネルベクトルを求め、まず大きさが最大の伝搬チャネルベクトルを選択する。次に、この伝搬チャネルベクトルを基準に±90°の範囲に位置する伝搬チャネルベクトルを選択し、これらに対応する遠隔基地局を選択し、その電源を投入する。選択されたベクトルは全て、大きさが最大の伝搬チャネルのベクトルと同じ方向の成分を有するため、この方向にベクトルの大きさが増加し、集中基地局における受信電力が高められ、通信品質を改善することができる。
【0037】
図5は、端末局50が自律的に上り信号を送出する場合の動作例1である。
集中基地局10の制御部12は、1つの遠隔基地局の電源スイッチ47を制御し、当該遠隔基地局のE/O変換器46を駆動する。端末局50は、自律的にトレーニング信号またはデータ信号を送信している。この上り信号は、E/O変換器46がオンの遠隔基地局を介して集中基地局10に受信され、そのチャネル状態が推定される。制御部12は、全ての遠隔基地局に対する伝搬チャネルベクトルを比較し、上記の条件に応じた遠隔基地局を決定し、その遠隔基地局のE/O変換器46をオンとする。
【0038】
図6は、制御部12からの指示に従って端末局50が上り信号を送出する場合の動作例2である。端末局50が集中基地局10の制御部12からの指示に応じて信号を送信する他は、図5に示す動作例1と同様である。
【0039】
なお、探索の過程において、各遠隔基地局を経由する上り信号の伝搬チャネルベクトルの推定結果から、信号の伝送に寄与する受信レベルを有する伝搬チャネルベクトルのみを遠隔基地局決定の試行の対象とすることで、取り得る組み合わせの数を減少させ、探索を簡略化してもよい。
【実施例2】
【0040】
実施例2では、複数の周波数チャネルの利用が可能な無線通信を想定する。この複数の周波数チャネルは、使用する周波数が異なる複数のシングルキャリア信号であってもよいし、OFDM変調の各サブキャリアであってもよいし、また隣接する伝搬特性が類似した複数のサブキャリアをまとめたサブチャネルであってもよい。伝搬に周波数選択性フェージングを想定し、1端末局から見た各周波数チャネルの受信電力は異なるものとする。
【0041】
本実施例は、実施例1において、上記の周波数チャネルの条件において端末局毎に使用する遠隔基地局を選択する動作にある。下りリンクの信号経路および上りリンクの信号経路は実施例1と同様であるため省略する。
【0042】
以下、図7を参照し、本実施例に特有の集中基地局10の制御部12における遠隔基地局の選択方法について説明する。図7(a) は各遠隔基地局を経由する上り信号の周波数チャネル毎の伝搬チャネルベクトルの推定結果をチャネル毎に示している。簡単のため、ここではチャネル数を2としている。試行段階として、使用する遠隔基地局の組み合わせを与える。この組み合わせに対し、周波数チャネル毎の伝搬チャネルベクトルの和から導かれる通信容量を計算する。通信容量は、利用可能な変調方式としてもよいし、 log|S/N+1| (S/Nは信号対ノイズ比) から求められる伝送容量を用いてもよい。そして、得られた周波数チャネル毎の通信容量の和を求める。この動作を全ての遠隔基地局の組み合わせに対して実施し、通信容量が最大となる組み合わせを決定する。その決定例を図7(b) に示す。
【0043】
なお、使用する遠隔基地局の組は、実行可能な全ての組を試行してもよいし、遺伝的アルゴリズム等の発見的なアプローチを用いて準最適解を得てもよい。これにより、多くの周波数チャネルの伝搬チャネルベクトルは大きさが増加するように加算され、周波数チャネル全体で評価した場合の集中基地局における受信電力が高められ、通信品質を改善することができる。
【0044】
また、探索の過程において、各遠隔基地局を経由する上り信号の伝搬チャネルベクトルの推定結果から、信号の伝送に寄与する受信レベルを有する伝搬チャネルベクトルのみを遠隔基地局決定の試行の対象とすることで、取り得る組み合わせの数を減少させ、探索を簡略化してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のダイバーシチ通信システムは、集中基地局の受信系統を遠隔基地局数より少ない数に集約することができ、装置構成の簡易化および低コスト化を実現することができる。
【0046】
本発明のダイバーシチ通信システムは、十分な信号電力を有する遠隔基地局からの光信号のみを検波前合成することができるので、検波前合成によっても高い通信品質を確保することができる。さらに、検波後ダイバーシチ合成を組合せることにより、さらに高い通信品質を確保することができる。
【符号の説明】
【0047】
10 集中基地局
11 ネットワークインタフェース
12 制御部
13 変調器
14 E/O変換器
15 送信用光カプラ
16 受信用光カプラ
17 O/E変換器
18 復調器
19 符号判定器
20 検波後合成器
21 逆拡散器
22 判別器
30 下りリンクの光伝送路
31 上りリンクの光伝送路
40 遠隔基地局
41 O/E変換器
42 送信用増幅器
43 スイッチ
44 アンテナ
45 受信用増幅器
46 E/O変換器
47 電源スイッチ
50 端末局
100 ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末局と無線回線を介して接続される複数の遠隔基地局と、
前記複数の遠隔基地局とそれぞれ光伝送路を介して接続される1つの集中基地局とを備え、
前記複数の遠隔基地局が前記端末局から受信した上り無線信号を光信号に変換し、前記光伝送路を介して前記集中基地局に送信し、前記集中基地局が受信した複数の光信号をダイバーシチ合成するダイバーシチ通信システムにおいて、
前記集中基地局は、選択した遠隔基地局のみが前記光信号を送信するように前記複数の遠隔基地局を制御し、受信した複数の光信号を検波前合成し、合成した光信号を電気信号に変換して復調処理を行う構成であり、
前記複数の遠隔基地局は、前記光信号の送信をオンオフする制御手段を備え、
前記集中基地局は、通信を開始するときに、前記各遠隔基地局を経由する上り信号の伝搬チャネルベクトルを求め、各遠隔基地局に対応する伝搬チャネルベクトルの加算後の大きさが、加算前の各伝搬チャネルベクトルの大きさより大きくなる遠隔基地局を選択し、該選択した遠隔基地局のみが前記光信号を送信するように前記複数の遠隔基地局を制御する制御手段を備えた
ことを特徴とするダイバーシチ通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載のダイバーシチ通信システムにおいて、
前記遠隔基地局および前記集中基地局の制御手段は、前記遠隔基地局で前記無線信号を前記光信号に変換するE/O変換器の電源またはバイアスを制御してオンオフし、前記光信号を送信する遠隔基地局を選択する構成である
ことを特徴とするダイバーシチ通信システム。
【請求項3】
請求項1に記載のダイバーシチ通信システムにおいて、
前記集中基地局の制御手段は、前記各遠隔基地局を経由する上り信号の伝搬チャネルベクトルを求め、各象限に属する伝搬チャネルベクトルの和の大きさを比較し、これが最大となる象限に属する伝搬チャネルベクトルに対応する遠隔基地局を選択する構成である
ことを特徴とするダイバーシチ通信システム。
【請求項4】
請求項1に記載のダイバーシチ通信システムにおいて、
前記集中基地局の制御手段は、前記各遠隔基地局を経由する上り信号の伝搬チャネルベクトルを求め、所定の角度θから90°以内に属する伝搬チャネルベクトルの和の大きさを角度θを変えて比較し、これが最大となる角度に属する伝搬チャネルベクトルに対応する遠隔基地局を選択する構成である
ことを特徴とするダイバーシチ通信システム。
【請求項5】
請求項1に記載のダイバーシチ通信システムにおいて、
前記集中基地局の制御手段は、前記各遠隔基地局を経由する上り信号の伝搬チャネルベクトルを求め、大きさが最大の伝搬チャネルベクトルおよびこの±90°以内に属する伝搬チャネルベクトルに対応する遠隔基地局を選択する構成である
ことを特徴とするダイバーシチ通信システム。
【請求項6】
請求項1に記載のダイバーシチ通信システムにおいて、
前記集中基地局の制御手段は、端末局ごとに異なる周波数チャネルを利用するときに、周波数チャネルごとに前記各遠隔基地局を経路する上り信号の伝搬チャネルベクトルを求め、周波数チャネルごとの伝搬チャネルベクトルの和から通信容量を計算し、その通信容量が最大となる遠隔基地局を選択する構成である
ことを特徴とするダイバーシチ通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−259144(P2011−259144A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131098(P2010−131098)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】