説明

ダイバーシティ光伝送装置および方法

【課題】マルチコア光ファイバを用いたダイバーシティ伝送により、大容量かつ長距離伝送を可能とするダイバーシティ光伝送装置および方法を提供する。
【解決手段】光送信手段と光受信手段との間で、複数N以上のコアから構成されるマルチコア光ファイバを伝送媒体として信号光をダイバーシティ伝送するダイバーシティ光伝送装置において、光送信手段から送信される信号光の強度をN個に分割してマルチコア光ファイバのN個のコアへ入力する光分割手段と、マルチコア光ファイバのN個のコアから出力される各信号光に対して、各コアの特性に応じた重み付けを行ってそれぞれの振幅と位相を揃える光重み付け手段と、光重み付け手段から出力される各コアに対応の信号光を合成して光受信手段に出力する光合成手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチコア光ファイバを用いて大容量かつ長距離伝送を可能とするダイバーシティ光伝送装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、通信トラヒックは年率20〜40%で増加を続けている。2030年にはエクサビット(1018bit/s )クラスのスループットを可能にするフォトニックネットワークの必要性も論じられている。この通信トラヒックを支えるべく光ファイバ通信における伝送容量の開発競争が続いており、光位相を変調に組込む技術が高まって一段と加速した。2009年には30Tbit/s を記録し、2010年3月には69Tbit/s を記録している。いずれも単一コアを有する単一モード光ファイバにて達成された記録である。単一コアを有する単一モード光ファイバでは過去30年間で約4桁の大容量化を実現している。これらはディジタル・コヒーレント通信技術ならびに誤り訂正技術の進展によって飛躍的に光ファイバ伝送容量が伸びたと言える。いずれも電気的高速ディジタル信号処理(HS−DSP)によるところが大きい。光キャリア位相と局発光位相とが互いに同期状態になく数GHzで回転していても、HS−DSPにより光キャリア位相を推定できる。さらに1〜2桁の容量増加を目指して1波長あたり 100Gbit/s 以上、光ファイバ1本当たり 100Tbit/s 級の伝送システムの研究開発が活発に進められている(非特許文献1)。
【0003】
しかし、伝送路である光ファイバへの入力パワー制限や中継器を構成する光増幅器の帯域制限により、1本の光ファイバで伝送可能な容量も限界に達しつつある。2つの主な要因として、高パワーの信号光により光ファイバ中に誘起される非線形光学効果と、光ファイバ自体の熱破壊現象に由来するファイバフューズ限界である。ファイバフェーズの伝搬閾値限界は 1.2W〜 1.5Wであり、実用上は既存の光ファイバへの許容入力パワーは1W程度と考えられる。これ以上の光パワーを入力することは安全上好ましくないと考えられている(非特許文献1)。
【0004】
この2つの限界を克服するために、1つの技術候補としてマルチコア光ファイバの研究開発が始まっている。マルチコア光ファイバは、1本の光ファイバにおける芯線径は変更せず、複数のコアを構成するものであり、コア間結合型と非結合型として検討が進んでいる。非結合型マルチコア光ファイバは、各コアにおける信号光の伝搬に際し、コア間の結合を可能な限り小さくしようとする構成である。この場合、コア空間多重度には限界がある。結合型マルチコア光ファイバでは、コア間結合を密にして個々の結合モード(スーパーモード)を伝送チャネルに対応させる構成としている(非特許文献2)。図2に非結合型マルチコア光ファイバの一例を示す。クラッド径 125μmにコア径9μmの7個のコアをコア間隔40μmで三角配置した構成である。
【0005】
非結合型マルチコア光ファイバでは、コア数がNまで増加できたとすると、1本の光ファイバによって伝送容量をN倍まで増加することがねらいとなっている。非特許文献1では、既存光ファイバーでは、伝送距離1000kmに対して 100Tbit/s 程度が限界になると述べられている。マルチコア光ファイバを用いれば、同条件にてN× 100Tbit/s となる。現実的には、コア間結合をゼロとはできないので、マルチコア光ファイバでは、N芯線ケーブルに比較すると伝送容量が劣ることになると予想できる。
【0006】
一方、通信の基本性能指標である光SNRに関しては、伝送容量の飛躍ほど高まってはいないが、直交位相による変調は符号の多値化を可能にして光周波数利用効率(SE)を飛躍的に高めた。2007年に実用化されたRZ-DQPSK方式40Gbit/s DWDM伝送システムのSEは0.4bit/s/Hz であるが、2010年に報告されたSEは5bit/s/Hzを超えている。ディジタルコヒーレント受信技術は、光キャリア周波数の不安定性を高速ディジタル信号処理(HS−DSP)技術によって補う技術と捉えることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】盛岡敏夫、“光通信の現状と今後の飛躍のための光ファイバー技術、”日本光学会(応用物理学会)、光学、40,6 号、pp.258-263.
【非特許文献2】小柴正則”マルチコア光ファイバーの種類とその設計指針“、日本光学会(応用物理学会)、光学、40,6 号、pp.264-268 .
【非特許文献3】Mischa Schwartz, William T. Bennett, and Seymour Stein, ”Communication Systems and Techniques, ” IEEE Press
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
光ファイバ通信では、1990年代後半以降大容量化のために波長分割多重(WDM: Wavelength Division Multiplexing)技術が採用されている。採用している実用化システムでは、標準化された光周波数グリッドに合致した光周波数(波長)を有する個別の半導体レーザを多重相当数実装して実現している。この場合、光ファイバ伝搬中に、光ファイバ非線形現象の発現に伴い伝送能力が制限される。光ファイバ伝送では、3次の非線形現象が出現し、自己位相変調、相互位相変調、ブリルアン散乱、ラマン散乱など様々な現象が観測されるが、伝送特性を大きく劣化させる主な現象の1つに4光波混合がある。4光波混合によって隣接グリッドの光周波数位置に新たな光が誘発されてしまう。この誘発された光は、当該グリッドに配置されたレーザ光源の信号にとってビート雑音として影響を及ぼし、伝送特性を劣化させる。したがって、光ファイバへの入力信号光強度Pinをある一定値以上にまで高めると、再生無中継伝送距離の低減、または伝送容量の低下を引き起こす。
【0009】
一方、容量拡大には伝送基本性能指数である光SNRを高めることが最も重要な課題となる。この光SNRを確保するには、光ファイバへの入力信号光強度Pinを高める必要があるが、上記のように一定値以上に高めることができる。
【0010】
このような状況の中で、エクサビットクラスのスループットを可能にするフォトニックネットワークの実現へ向けて、マルチコア光ファイバの研究開発が活発化してきている。ひとつのコアで伝送可能な光電力値の限界、すなわちエネルギー密度が限界に達しつつあるために、マルチコア化して1本の光ファイバにおける伝送容量を増やそうという試みである。実際、光強度はコアあたり 500mWを超え始めており、コア径を10μmと近似すると 600W/cm2 となり、核融合時エネルギー密度を超えている。ファイバフェーズとなるシリカ系光ファイバの溶融限界である1〜2Wに近づいており、物理限界である。
【0011】
マルチコア光ファイバによる伝送では、個々のコアに従来通りの信号を入力して伝送することにより空間多重としての伝送容量を増加させる、という方針で現在研究が進められている。また、複数のコアに同一の光源からの信号を分離して入力し、等価的に高い光強度を入力して伝送するダイバーシティ伝送を行うことも可能である。それだけ光非線形耐力が向上するとともに、同じ伝送距離の場合に受信光SNRも高まる。伝送距離を拡大できる通信技術であるとも言える。
【0012】
本発明は、マルチコア光ファイバを用いたダイバーシティ伝送により、大容量かつ長距離伝送を可能とするダイバーシティ光伝送装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の発明は、光送信手段と光受信手段との間で、複数N以上のコアから構成されるマルチコア光ファイバを伝送媒体として信号光をダイバーシティ伝送するダイバーシティ光伝送装置において、光送信手段から送信される信号光の強度をN個に分割してマルチコア光ファイバのN個のコアへ入力する光分割手段と、マルチコア光ファイバのN個のコアから出力される各信号光に対して、各コアの特性に応じた重み付けを行ってそれぞれの振幅と位相を揃える光重み付け手段と、光重み付け手段から出力される各コアに対応の信号光を合成して光受信手段に出力する光合成手段とを備える。
【0014】
第1の発明のダイバーシティ光伝送装置において、光重み付け手段は、信号光を増幅する光増幅器を用いた振幅調整器と、コアの特性に応じて生じる位相遅延の調整、群速度遅延およびその分散に対する補償を行う遅延調整器とを備える。
【0015】
第2の発明は、光送信手段と光受信手段との間で、複数N以上のコアから構成されるマルチコア光ファイバを伝送媒体として信号光をダイバーシティ伝送するダイバーシティ光伝送方法において、光送信手段から送信される信号光の強度を光分割手段でN個に分割してマルチコア光ファイバのN個のコアへ入力し、マルチコア光ファイバのN個のコアから出力される各信号光を光重み付け手段に入力して各コアの特性に応じた重み付けを行ってそれぞれの振幅と位相が揃え、光重み付け手段から出力される各コアに対応の信号光を光合成手段で合成して光受信手段に出力する。
【0016】
第2の発明のダイバーシティ光伝送方法において、光重み付け手段は、信号光を増幅する光増幅器を用いた振幅調整を行い、コアの特性に応じて生じる位相遅延の調整、群速度遅延およびその分散に対する補償を行う。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、マルチコア光ファイバを伝送媒体として用い、信号光をマルチコアにて経路分割伝送、すなわちダイバーシティ伝送を行うことによって、コアあたりの入力光強度をファイバ非線形現象の影響が小さくなるまで減少させることができる。一方、受信端では最大比合成の原理に従って経路分割伝送信号光を合波して受信処理を行うことにより、光SNRが経路分割前の全光強度による伝送と等価な値を回復させることができる。
【0018】
これにより、等価的に光ファイバへの送信電力を高めることができるので、それだけ光SNRが高まり、再生中継間隔を飛躍的に拡大し、多値数を増加できる。その結果として、単位光ファイバあたりの伝送容量を大きく増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のダイバーシティ光伝送装置の構成例を示す図である。
【図2】非結合型マルチコア光ファイバの一例を示す図である。
【図3】N=2における光受信系の構成例を示す図である。
【図4】N=4における光受信系の構成例を示す図である。
【図5】並列数をパラメータとするチャネル容量を計算した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明のダイバーシティ光伝送装置の構成例を示す。
図1において、半導体レーザ(LD)のようなCW光源11からの光を光変調器12で変調し、出力される信号光を光カプラのような光分岐器13で複数に分割する。分割数をNとする。N分割された信号光は、マルチコア光ファイバ14のそれぞれのコアへ結合させる。各コアを伝搬した信号光は、それぞれ光重み付け回路15−1,15−2を介して振幅と位相が調整され、振幅と位相が揃った状態で光合成器16に入力して合成され、光受信器17で電気信号に変換される。ここで、マルチコア光ファイバ14では、各コアを伝搬した信号光間の位相揺らぎが均一であるので、相互位相を揃えることが可能である。以下、詳しく説明する。
【0021】
i番目(iは1〜Nの整数)のコアへの結合光強度をP(i)in とすると、全信号光強度Ptotal は、
【数1】

となる。マルチコア光ファイバ14におけるコア数MとNとの間にはN≦Mの関係がある。
【0022】
光強度P(i)in を有する信号光は、情報伝送上の変調を受けており変調信号電界si(t)は、
【数2】

と表される。ai(t)は光強度に対する変調情報を示し、位相θsigiは θsigi=ωct+bi(t)π+φn
と表される。ωc は光キャリア周波数、bi(t)は位相変調情報、φn は位相雑音である。
【0023】
2値PSK変調では、
Re{si(t)}=(P(i)ini(t))1/2 cosjθsigi
において、ai(t)=1、bi(t=mT)=1 or -1である。4値QPSKでは、
i(t)=(P(i)ini(t))1/2{cos(ωct+bci(t)π+φn)
+jsin(ωct+bsi(t)π+φn)}
において、ai(t)=1、bci(t=mT)=1 or -1、bsi(t=mT)=1 or -1である。M値QAMでは、さらにai(t)がMの値に応じて多値をとる。
【0024】
N分割して信号光を伝送すると、時刻mにおける信号光Y(m) は、i番目のコア(チャネル)の伝達関数をhi と表し、そのN要素からなるチャネル行列をhを用いて、
【数3】

となる。z(m) は信号光中に含まれる雑音成分を表し、アスタリスク*は畳込み和を表す。1番目のコアについて具体的に伝搬後の信号光を行列要素として表現すると、
【数4】

と畳込みによって表すことができる。
【0025】
i番目のコアに対応するチャネル行列要素hi は、損失係数α、伝搬定数β(i) 、距離lを用いて、
【数5】

と表現し、伝搬定数β(i) を角振動周波数ω0 の周りでテイラー展開すると
【数6】

となる。ここで、
【数7】

であって、それぞれ群速度νg の逆数、群速度分散を表している。n,c,λは、それぞれファイバ屈折率、光速、波長を表す。
【0026】
伝搬の途中において光増幅器によって損失補償が行われ、受信端では光前置増幅器で増幅された後に、各コア対応の光重み付け回路15−1,15−2を介して光合成器16で電界合成され、光受信器17のフォトダイオードによって電気信号に変換される。電界合成後の信号光は、i番目のコアを応答信号である式(3) を異なるコアを伝播してきたNの信号について合成して一般化表現すると
【数8】

となる(非特許文献3)。
【0027】
よって、ダイバーシティ出力s0(m)における信号電力は、Ensemble AverageをE[ ]でで表記すると、
【数9】

となる。ここで、w= [w1,w2,w3,…, wN]T 、σ2 は雑音電力の分散であり、係数2はI成分(cos) とQ成分(sin) との和であることを意味している。この結果、ダイバーシティ出力s0(m)におけるSNRは、
【数10】

となる。
【0028】
このSNRを最大にする条件を次に求める。信号電力は、光重み付け回路15−1,15−2を介して光合成器16で電界合成するときに、SNRを最大化にするために最大比合成が行われる。チャネル関数に対する重み関数をwi とするとき、最大比合成の条件は、i番目のコアに対応するチャネル行列要素hi に対して従属関係、wi =dhi*を満足するときである。dは任意の複素数である。この条件を式(9) に代入して整理すると、
【数11】

となる。ただし、チャネル行列要素hi は、伝送途中に光増幅器を含む系として捉えることができ、|hi |=1と近似すると、
【数12】

となる。
【0029】
光増幅器を多段に含む系では各伝送路(チャネル)における雑音電力Pz は当然大きくなるが、式(10)は空間多重数NだけSNRを向上できることを示している。
ここで、|d|=1/|hi |と選ぶと、
【数13】

となる。これは、チャネルiについて、位相遅延を調整する回路と群速度遅延およびその分散に対する補償回路とを挿入することが必要であることを示している。
【0030】
ここで重要な点は、異なるチャネルi間における相対的遅延偏差は無視できることである。多芯ファイバケーブルとマルチコア光ファイバの最も大きな差は、このコア間相互の遅延変動にあると考えられる。多芯ファイバケーブルでは、光ファイバが相互に独立であるので遅延変動も無相関にランダムな振舞いをする。これに対して、マルチコア光ファイバは、2次元光導波路とみなすことができるので遅延変動はあってもコア間相互では相対的にゼロと考えられる。したがって、個々のコアに対して分散および群速度遅延差補償を行う回路と、波長レベルでの伝搬定数β(i) の差を調整する回路を用いる。なお、式(12)は位相共役光を生成して合成する回路でも実現できることを示している。
【0031】
図2に示すマルチコア光ファイバは、比屈折率差が異なる不均一コアファイバと呼ばれており、それぞれの伝搬定数も異なると考えられる。
【0032】
図3は、N=2における光受信系の構成例を示す。
図3において、各コアを伝搬した信号光を入力する光重み付け回路15−1,15−2は、それぞれ振幅調整器と位相調整器により構成される。振幅調整器は、光増幅器を用いて|d|=1/|hi |を実現できる。位相調整器は、例えばLN位相変調器やPLC熱光学効果型遅延調整器を用い、式(4) に相当する遅延量制御を行う。位相調整器は、信号光の包絡線の位置を一致させるシンボル速度の逆数に相当する時間調整部と、波長(1.5μm) 相当量の遅延調整部の2種類から構成される。異種コアファイバにおけるコアの伝搬定数差にもよるが、伝搬定数差が小さい場合には、包絡線用遅延調整器は不要となる。
【0033】
光重み付け回路15−1、15−2の出力は、光合成器16で合成される。光合成器16は、各コアからの信号光に対してモード結合を行う方向性結合器、光位相が同相であれば損失なく合成できるY合波器や、複数の光導波路から入力する光を中央の光導波路に合成する光導波路型光結合器などを用いることができる。図3の例では2×2方向性結合器の例を示す。図4に示すN=4における光受信系では、光合成器16は第1段の2つのY合波器と第2段の方向性結合器を接続した構成である。
【0034】
その電界出力は、結合係数が1/2、P(1)in=P(2)in=Pinの理想状態では、
【数14】

となる。これが各コアを伝搬した信号光の最大比合成における位相に対する理想状態であり、このとき平均電力は2GP=GPtotal となり、全入力光強度と一致する。雑音電力は位相がランダムであるためモード結合されず、雑音電力Pz となる。強度変調光をPDで直接検波する場合、光増幅器ASE雑音が支配的領域では、雑音電力Pz の電力スペクトル密度は単一コアのそれと等しく2nspi(i)inで決まる。nspは光増幅器における反転分布パラメータである。
【0035】
光受信器17は、光合成器16の2つの出力E1 ,E2 と局発光LOをそれぞれ光合成器を介して結合して受光するバランスド受光器により構成される。I成分出力およびQ成分出力は、
【数15】

となる。このとき、SNRは局発光とASE間ビート雑音が支配的となり、バランスド受光器の出力では
【数16】

となる。ここで、hはプランク定数、ηはPDにおける光/電気変換効率である。式(14)は、1番目のコアへの入力光強度をP(1)in として、当該コアにおける伝送後SNRに対して2コアを用いて伝送することにより因子2だけSNRが大きいことを示している。このように、ダイバーシティ伝送(並列伝送)することによってSNRを高めることができる。N並列伝送時帯域に対するチャネル容量C/Wは、
【数17】

である。
【0036】
図5は、並列数をパラメータとするチャネル容量を計算した結果を示す。
γ=10, 20dBのとき、単一コア伝送では、3.5, 6.7 bit/sec/Hz 、5コア並列伝送すると、それぞれ7.9, 21.6 bit/sec/Hzである。γ=10dBでは2倍、γ=20dBでは3倍以上の容量拡大が期待できるのが分かる。非線形効果のためにこれまでは光ファイバ入力光強度Pinがある一定値以下に抑圧されていたが、等価的にPinをN倍に高めることができるので、γを10log10N(dB) 高めることが可能となる。したがって、より大きな拡大効果が期待できる。
【符号の説明】
【0037】
11 CW光源
12 光変調器
13 光分岐器
14 マルチコア光ファイバ
15−1,15−2 光重み付け回路
16 光合成器
17 光受信器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光送信手段と光受信手段との間で、複数N以上のコアから構成されるマルチコア光ファイバを伝送媒体として信号光をダイバーシティ伝送するダイバーシティ光伝送装置において、
前記光送信手段から送信される信号光の強度をN個に分割して前記マルチコア光ファイバのN個のコアへ入力する光分割手段と、
前記マルチコア光ファイバのN個のコアから出力される各信号光に対して、各コアの特性に応じた重み付けを行ってそれぞれの振幅と位相を揃える光重み付け手段と、
前記光重み付け手段から出力される前記各コアに対応の信号光を合成して前記光受信手段に出力する光合成手段と
を備えたことを特徴とするダイバーシティ光伝送装置。
【請求項2】
請求項1に記載のダイバーシティ光伝送装置において、
前記光重み付け手段は、前記信号光を増幅する光増幅器を用いた振幅調整器と、前記コアの特性に応じて生じる位相遅延の調整、群速度遅延およびその分散に対する補償を行う遅延調整器とを備えた
ことを特徴とするダイバーシティ光伝送装置。
【請求項3】
光送信手段と光受信手段との間で、複数N以上のコアから構成されるマルチコア光ファイバを伝送媒体として信号光をダイバーシティ伝送するダイバーシティ光伝送方法において、
前記光送信手段から送信される信号光の強度を光分割手段でN個に分割して前記マルチコア光ファイバのN個のコアへ入力し、
前記マルチコア光ファイバのN個のコアから出力される各信号光を光重み付け手段に入力して各コアの特性に応じた重み付けを行ってそれぞれの振幅と位相が揃え、
前記光重み付け手段から出力される前記各コアに対応の信号光を光合成手段で合成して前記光受信手段に出力する
ことを特徴とするダイバーシティ光伝送方法。
【請求項4】
請求項3に記載のダイバーシティ光伝送方法において、
前記光重み付け手段は、前記信号光を増幅する光増幅器を用いた振幅調整を行い、前記コアの特性に応じて生じる位相遅延の調整、群速度遅延およびその分散に対する補償を行う
ことを特徴とするダイバーシティ光伝送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−46230(P2013−46230A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182727(P2011−182727)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(304028726)国立大学法人 大分大学 (181)
【Fターム(参考)】