説明

ダイヤモンド薄膜界面における電解発光反応を利用した尿中シュウ酸の選択的微量検出法、ルテニウム錯体修飾BDD電極および電解発光分析装置

【課題】 ルテニウム錯体修飾BDD電極を用いて、溶液中のシュウ酸濃度、特に尿中シュウ酸濃度を選択的に検出できる技術の改良が課題である。
【解決手段】 ルテニウム錯体修飾BDD電極を用いることにより、ダイヤモンド薄膜界面における電解発光反応を利用したシュウ酸の選択的微量検出法、新規なルテニウム錯体修飾BDD電極および選択的なシュウ酸検出装置により、溶液中のシュウ酸濃度、特に尿中シュウ酸濃度の選択的検出を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤモンド電極をセンサー材料とし、微量の尿中シュウ酸を、電気化学発光を利用して高感度かつ高速度で選択的に検出できる検出法、ルテニウム錯体修飾ボロンドープダイヤモンド(BDD)電極および電解発光分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性ダイヤモンドと、その上に担持されるニッケル、銅、金、白金、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、コバルト、およびロジウムからなる群から選択される1種以上とを有してなる、ダイヤモンド電極が提供されている(特許文献1)。このダイヤモンド電極 は、その表面においてグルコースが電気化学的に特異的に酸化される性質を有し、グルコースの濃度を測定することが可能である。
【0003】
ボロンを高濃度でドープした導電性ダイヤモンド電極を作用電極として用い、参照電極に対する電位を負電位方向にスイープし、所望の堆積時間で前記導電性ダイヤモンド電極の表面に被分析対象となる溶液中の電気化学的活性物質(例えば、金属、とくに鉛イオン)を電着させて電着物質を形成する。その後、前記導電性ダイヤモンド電極の電位を正電位方向に電位ステップさせてスイープし、前記電着物質を溶出すると共に、その電位ステップに対する電流変化を測定して、電位に対する電流特性を得る。この電流特性からピーク電流、およびピーク電流が発生した電位を読み取ることにより、前記溶液中の電気化学的活性物質の分析が行われている(特許文献2)。
【0004】
0.1 M KOH溶液中において、2.4V(vs. SCE)の電位を75分間印加することにより陽極酸化処理したダイヤモンド薄膜を電極として使用することにより、尿酸とアスコルビン酸混合溶液における電位−電流曲線において、アスコルビン酸(AA)のピークをブロード化(不明瞭化)し、尿酸(UA)ピークを明瞭に分離測定することを可能とする尿酸測定方法および尿酸測定装置に関する特許も公開されている(特許文献3)。
【0005】
以前より、電解発光反応を応用した検出システムの簡易化とダウンサイジングを目的として、発光物質であるルテニウム錯体を電極表面に修飾する試みがなされている(非特許文献1、非特許文献2)。ダイヤモンド電極上にナフィオン( Nafion )を用いて修飾した場合、長期間の使用により、ルテニウム錯体の電解溶液中への溶出と、電極表面の酸素終端化による静電反発作用によってナフィオンの剥離が起こる。表面にルテニウム錯体を持つ単分子層を金属電極やITO電極上に自己形成させる修飾法では、電極表面のルテニウム錯体の酸化分解よりも、電極自身もしくは、ナフィオン膜自身の酸化が低電位で起こるために、不可逆で不安定な挙動を示すことが報告されている(非特許文献2)。ナフィオンや自己形成単分子層の修飾における耐久性の問題は、耐久性の低い基板材料の表面に、ルテニウム錯体誘導体を強度の低い物理吸着法によって修飾されていることが原因であると考えられる。
【特許文献1】特開2002−310977
【特許文献2】特開2001−091499
【特許文献3】特開2001−147211
【非特許文献1】Jian Zhang et al., Electrochimica Acta 44(1999)3367-3375
【非特許文献2】Yukari Sato et al., Journal of Electroanalytical Chemistry 384(1995)57-66
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、センサー部分にルテニウム錯体を修飾した新規な導電性ダイヤモンド電極を用いることにより、尿中シュウ酸を選択的に検出すること、試料中の蛋白質の共存下における測定データの信頼性向上を図ること、および高い電極安定性を実現することを課題とする。また、ダイヤモンド電極を用いる尿中シュウ酸の電解発光分析装置も、本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
電気化学発光反応が、尿などの多数の化合物が存在する試料から、シュウ酸のみを選択的に検出することができること、さらにシュウ酸は、強酸中で電解発光反応を起こす唯一の尿中化合物であることを見出した。ダイヤモンド電極は、有機化合物の吸着をほとんど示さないため、蛋白質などを多く含む試料の電解発光分析においても、長期作動信頼性の極めて高い電極である。したがって、ダイヤモンド電極を電解発光反応のための電極材料として用いたダイヤモンド電解発光分析装置は、医療現場における精密分析や、自宅療養患者の自己検診機器としての応用が可能であり、特に、簡易な尿中シュウ酸分析器を実現可能である。
【0008】
成人の体内には、ほうれん草などの食物から摂取したシュウ酸がプールされていて、1日に1〜10mg程度が尿中に排泄される。この排泄量が40mgを超えると、体内でシュウ酸カルシウムの結晶が大きく成長し、尿管結石を誘発する。電解発光を用いた尿中シュウ酸の分析は、この問題を解消した選択的かつ高感度な分析手法である。現在、医療機関では、尿管結石患者の尿中シュウ酸の測定が、シュウ酸塩微結晶の顕微鏡観察のみに留まっているため、保険診療に尿中シュウ酸の測定の採用が望まれている。本発明においては、尿中シュウ酸を分離抽出することなく、検体を酢酸水溶液で希釈するだけの前処理により、簡易に選択的高感度分析ができる有用な手法である。従って、本発明によるダイヤモンド電極を用いる尿中シュウ酸の電解発光分析装置は、医療機関における高感度分析装置から一般家庭のトイレ等に設置可能な簡易分析器としての幅広い利用が期待できる。
【0009】
電解発光分析装置のターゲット市場は、成人病医療や泌尿器診療に携わる医療現場と尿管結石患者をもつ一般家庭である。成人病医療に携わる医療法人は、全国で9000以上を数える。尿管結石患者は年間10万人を数え、この内の半数が5年以内に再発する。また、健康管理への意識の高まりとともに、企業体の事業所数と同等の簡易な健康診断器の市場が想定され、体脂肪率計と同様の市場規模が見込まれる。
【発明の効果】
【0010】
本発明による電気化学発光検出システムは、センサー部分にルテニウム錯体を修飾した導電性ダイヤモンド電極を適用することにより、尿中シュウ酸を選択的に検出することが可能となり、蛋白質などの共存下における測定の信頼性を向上させるとともに、高い電極安定性を実現した新たな技術、新たな装置である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
低圧合成ダイヤモンド薄膜は、手軽に製造できる高品質の電極である。プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いることにより、低圧環境下かつコンパクトな装置で、シリコン基板上に大面積(直径5cm 程度)の多結晶ダイヤモンド薄膜を、作成することができる。原料としてアセトン/メタノールの混合溶液に、導電性賦与のための酸化ホウ素を溶解させたものを水素ガスとともにチャンバー内のプラズマに導入すると、厚さ50μm程度のダイヤモンド薄膜が、数時間で容易に作製できる。この導電性ダイヤモンド薄膜は、ダイヤモンド本来の高硬度や化学的安定性といった特性に加え、通常の炭素電極とは異なる、水溶液中で3.5Vに渡る広い電位窓や非常に低い残余電流といった驚異的な電気化学特性を示す。この特性のため、炭素電極では検出不可能な非常に高い酸化・還元電位を持つ物質を、電解発光により高感度に捕らえることができ、高い安定検出性を実現できる。
【0012】
ボロンドープダイヤモンド(BDD)電極は、水溶液中において広い電位窓を示すため、他の電極(白金,グラッシーカーボン電極)では酸素発生のため観測不能な高電位領域 (〜 2.5 V vs. Ag/AgCl)での電解発光 (ECL)反応を観測することができる。
【0013】
ECLを利用した分析システムの開発においては、選択性の賦与とダウンサイジングを目的とした電極表面への発光物質の導入が行われている。例えば、Nafionを用いた修飾法では、ルテニウム錯体の溶出とNafion膜の剥離が容易に起こり、耐久性に乏しい。
【0014】
本発明では、tris(2,2'-bipyrizine)ruthenium (Ru (bpy)32+)誘導体をBDD表面と共有結合させることで、耐久性を実現した光機能性BDD電極の創製を目的とし、尿路結石の主要原因物質である尿中シュウ酸の選択的検出を試みた。尿路結石は男性の10人に1人が発症すると言われており、尿中シュウ酸量が220 μMを超えると発症の確率が高い。また、再発率が30〜50 %と非常に高いという特徴がある。
【0015】
4,4'-bis(13-bromotridecyl)-2,2'-bipyridine (Compound 1)は、4,4'-dimethyl-2,2'-bipyridineと1,12-dibromododecaneをLDA試薬の存在下で反応させて得られた。Cis-dichloro-bis(bipyridine)-ruthenium (Compound 2)は、Ruthenium trichlorideと2,2'-bipyridineを過剰のLithium chlorideを溶解させたDMF中で10時間、約135℃で還流することで得られた。Compound 1とCompound 2をEthanol中で7時間、約85℃で還流し、 Ru(bpy)32+ 誘導体を得た。Ru(bpy)32+ 誘導体とアミノ終端BDD電極をTHF中で約73℃を保って長時間還流し、ダイヤモンド電極表面にルテニウム錯体を直接修飾することが可能である。
【0016】
ルテニウム錯体修飾電極を作用極として用い、対向する位置に光電子増倍管(浜松ホトニクス、R928)を配置してポテンシオ/ガルバノスタット(HOKUTO DENKO、HZ-3000)でリアルタイムにCVとECLを測定した。電解溶液にはシュウ酸を含む0.1 M硫酸水溶液を用いた。
【0017】
図1は、ルテニウム錯体修飾BDD電極を作用極として、電解溶液に50 mMのシュウ酸を含む0.1 M硫酸水溶液を用いた場合と、as-deposited BDD電極を作用極として、電解溶液に50 mMのシュウ酸と100 μMのRu (bpy)32+を含む0.1 M硫酸水溶液を用いた場合の電圧−発光曲線である。1.2 V vs. Ag/AgClにおける発光強度はルテニウム錯体修飾BDD電極が3.91倍強いことが判明した。これは、Ru(bpy)32+ 誘導体を電極表面に固定化したことで、多数のルテニウム錯体が電極上に拡散することなく存在するためである。
【0018】
図2に、ルテニウム錯体修飾BDD電極を作用極として用いた際のECL強度のシュウ酸濃度依存性を示した。シュウ酸濃度に対してECL強度は直線性の高い相関性を示した。
【実施例】
【0019】
水素終端化したBDD電極表面に、アンモニアプラズマを照射することにより、電極表面にアミノ基を導入した。アミノ基の導入量は、電極表面1 cm2あたり約0.1 nmolであった。
【0020】
ルテニウム錯体修飾BDD電極は、Tris(2,2'-bipyridine)rutheniumtridecanothiol 誘導体の1 mMのTHF溶液を5 ml調製し、アミノ終端BDD電極と共にナスフラスコに入れた。容器にジムロート氏冷却管を取り付け、オイルバスに浸し、攪拌しながら温度を73℃まで上昇させた。温度を保ちながら長時間還流した後、常温まで放冷した。ナスフラスコから電極を取り出し、アセトンに浸して10分間以上、超音波処理した。その後、2−プロパノ−ルに浸して、同様に超音波洗浄を行なった。溶液を乾燥させて、ルテニウム錯体修飾BDD電極を創製した。
【0021】
修飾電極のルテニウム錯体修飾BDD電極の発光性能の検証を行った。40時間還流処理したルテニウム錯体修飾BDD電極を作用極として、0.1 M硫酸水溶液中でCV測定を行い、その電流量からルテニウム錯体の担持量を検証した。参照極には銀/塩化銀電極を用い、対極には白金線電極を使用した。測定にはHSV−100(HOKUTO DENKOU)を使用し、0〜1.2V vs Ag/AgClの電位領域を、10 mV/sでスキャンした。1回の測定で3サイクルを行い、2サイクル目をデータとして採用した。
【0022】
修飾電極の電解発光反応の検証は、40時間還流処理したルテニウム錯体修飾BDD電極を作用極として、50 mMのシュウ酸を含む0.1 M硫酸水溶液中でECLを測定し、修飾電極の電解発光反応の検証を行った。参照極には銀/塩化銀電極を用い、対極には白金線電極を使用した。測定にはHZ−3000(HOKUTO DENKOU)を用い、光電子増倍管にR-928(HAMAMATSU)を使用した。本測定では光電子増倍管のコントロール電圧を4.00 Vに設定し、0〜1.2V vs Ag/AgClの電位領域を、50 mV/sでスキャンした。1回の測定で3サイクルを行い、2サイクル目をデータとして採用した。また、比較として作用極に水素終端BDD電極を用いて、電解溶液に50 mMのシュウ酸と100 mMの Ru(bpy)32+を含む0.1 M硫酸水溶液を使用し、同様の条件で測定を行なった。
【0023】
尿中物質の電解発光強度のpH依存性の検証は、尿中物質としてシュウ酸、尿酸、アスコルビン酸、クエン酸を選択し、それぞれの電解発光強度のpH依存性を検証した。それぞれ50 mMの尿中物質と100 mMのRu(bpy)32+を含む0.1 Mリン酸緩衝溶液を電解溶液に用い、pH7から徐々にpHを下げ、各pHにおいてCVとECLをリアルタイムに測定した。pH調製には濃硫酸と水酸化ナトリウムを使用した。作用極に水素終端BDD電極、参照極に銀/塩化銀電極、対極に白金線電極を用い、HZ−3000(HOKUTO DENKOU)により測定を行った。光電子増倍管はR-928(HAMAMATSU)を使用し、測定時にはコントロール電圧を2.00 Vに設定して使用した。スキャンレートは全て50 mV/sに設定した。1回の測定で3サイクルを行い、2サイクル目をデータとして採用した。
【0024】
40時間還流処理したルテニウム錯体修飾BDD電極を作用極として、擬似尿とそれと同濃度のシュウ酸を含む溶液の電解発光強度を比較し、擬似尿中からの選択的検出の検証を行なった。擬似尿として、シュウ酸、尿酸、アスコルビン酸をそれぞれ1 mM含む混合溶媒をを使用した。比較対照として1 mMのシュウ酸水溶液を用いた。それぞれの溶液は、濃硫酸によりpHが1になるように調製した。作用極に40時間還流したルテニウム錯体修飾BDD電極、参照極に銀/塩化銀電極、対極に白金線電極を用い、HZ−3000(HOKUTO DENKOU)によりCVとECLをリアルタイムに測定した。光電子増倍管はR-928(HAMAMATSU)を使用し、測定時にはコントロール電圧を4.00 Vに設定して使用した。スキャンレートは全て50 mV/sに設定した。1回の測定で3サイクル行い、2サイクル目をデータとして採用した。
【0025】
40時間還流処理したルテニウム錯体修飾BDD電極を作用極として、0.1 M硫酸水溶液中に含まれるシュウ酸の濃度を、100 mM、500 mM, 1.0 mM、 5.0 mM、10 mM、50 mMと変化させ、それぞれの溶液について電界発光を測定した。それぞれのピーク速度をプロットして、シュウ酸濃度依存性を検証した。参照極に銀/塩化銀電極、対極に白金線電極を用い、HZ−3000(HOKUTO DENKOU)によりCVとECLをリアルタイムに測定した。光電子増倍管はR-928(HAMAMATSU)を使用し、測定時にはコントロール電圧を3.50 Vに設定して使用した。スキャンレートは全て50 mV/sに設定した。1回の測定で3サイクル行い、2サイクル目をデータとして採用した。
【0026】
修飾電極の安定性の検証を行った。40時間還流処理したルテニウム錯体修飾BDD電極を作用極、参照極に銀/塩化銀電極、対極に白金線電極を用い、50 mMのシュウ酸を含む0.1 M硫酸水溶液中で0〜1.2V vs Ag/AgClの電位領域を、スキャンレート50 mV/sで7時間スイープさせた。1時間おきに電界発光を測定し、ピーク強度の変化より安定性の検証を行なった。電解発光の測定はHZ−3000(HOKUTO DENKOU)によって行い、光電子増倍管はR-928(HAMAMATSU)を使用した。測定時の光電子増倍管のコントロール電圧は4.00 Vに設定した。
【0027】
ルテニウム錯体の直接修飾の有無を確認するため、XRD、Raman、FT−IRによる測定を行なった。FT−IRによる測定結果において、≧3000cm-1の領域にアルキル鎖による波形が認められたため,電極表面へルテニウム錯体のアルキル基を修飾することが可能であったことが確認された。電極の充分な洗浄の後に行った電気化学的な測定においては、ルテニウム錯体の酸化と電解発光反応が確認できた。
【0028】
尿中物質のCV及びECL曲線と、電解発光強度のpH依存性を示した(図3)。検証した尿中物質は、pH7においては、測定した全ての溶液で電解発光反応を確認できた。しかし、溶液のpHを1に調整することにより、シュウ酸の選択的な検出が可能であった。
【0029】
pHを1に調整した擬似尿と、それと同濃度のシュウ酸を含む水溶液の、電位―発光曲線を示した(図4)。これらはほぼ同じ発光強度を示し、pH調整によるシュウ酸の選択的測定が可能であることが判明した。同時に、今回創製した修飾電極を用いて、擬似尿中に存在するシュウ酸を選択的に検出可能であることを明らかにした。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のルテニウム錯体BDD電極と as-deposited BDD電極における、電圧―ECL強度の違いを示す図である。
【図2】被検溶液中のシュウ酸濃度が、ECL強度と直線に近い相関を有していることを示す図である。
【図3】シュウ酸の選択的検出と定量性の検証を目的として、尿中物質における電解発光強度のpH依存性を検証した結果を示す図である。
【図4】pHを1に調整した擬似尿と、それと同濃度のシュウ酸を含む水溶液の電位―発光曲線を示す図であり、これらは、ほぼ同じ発光強度を有しており、pH修正によるシュウ酸検出が可能であることを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解発光性電極であって、導電性基材と、該導電性基材の表面に共有結合を介して担持されており、電解液中に存在する電解発光性共反応物質と接触を可能とする電解発光性物質とを備えており、前記電解液中において、前期電解発光性物質に、前期電解発光共反応物質のラジカル化反応を生じる電位を該電極に印加した場合、前期電解発光性物質が前期電解発光共反応物質の濃度に応じた強度で発光することが可能であり、耐久性向上と安定した電解発光反応を実現した電極。
【請求項2】
前記導電基材が、導電性ダイヤモンド、導電性ダイヤモンドライクカーボン、グラッシーカーボン、および導電性アモルファスカーボンからなる群から選択される、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前期導電性基材が、導電性ダイヤモンドである請求項1に記載の電極。
【請求項4】
前期電解発光性物質が、アルキル鎖を有するルテニウムビピリジル錯体、ルミノール、ルブレン、フルオレッセイン、キニーネからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電極。
【請求項5】
前期電解発光性物質が,アルキル鎖を有するルテニウムビピリジル錯体(Ru(bpy)3)である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電極。
【請求項6】
前期電解液中の電界発光性共反応物質が、シュウ酸,アミン類(1,2,3級アミン)、アミノ酸類、有機酸類、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、塩化カリウム、硫酸カリウムのいずれかの群から選択される請求項1〜5のいずれか1項に記載の電極。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の電極を用いた、前期電解液中の電界発光性共反応物質がシュウ酸である場合の、シュウ酸の選択的微量検出法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の電極を用いた、前期電解液中の電界発光性共反応物質がシュウ酸である場合の、酸性溶液中のシュウ酸の選択的微量検出法。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の電極を用いた、前期電解液中の電界発光性共反応物質がシュウ酸である場合の、pH = 1に調整した電解液中のシュウ酸の選択的微量検出法。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の電極を用いた、前期電解液中の電界発光性共反応物質がシュウ酸の場合の、pH = 1に調整した尿が電解液である場合の、尿中シュウ酸の選択的微量検出法。
【請求項11】
請求項1から5のいずれかに記載の電解発光性物質を修飾した導電性基材による電極を用いる、選択的なシュウ酸検出装置.
【請求項12】
請求項7から10のいずれかに記載の選択的微量検出法を用いる、請求項11に記載の選択的なシュウ酸検出装置。
【請求項13】
シュウ酸の検出部がフローインジェクション分析器あるいは、高速液体クロマトグラフィー測定器の一部をなす、請求項11または12に記載の選択的なシュウ酸検出装置。
【請求項14】
電極体の先端にルテニウム錯体修飾BDD電極が付加されており、その電極体をpH=1に調整した尿サンプルに浸漬、電極に正電位を印加による、電極界面での発光強度から、簡易にシュウ酸量を測ることのできるシュウ酸メータ。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−17605(P2006−17605A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−196424(P2004−196424)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年3月5日 山口大学主催の「平成15年度 卒業論文発表会(山口大学理学部 化学・地球科学科)」において文書をもって発表
【出願人】(800000013)有限会社山口ティー・エル・オー (6)
【Fターム(参考)】