説明

ダイレクト成形機

【課題】成形位置の変更が容易なダイレクト成形機の提供。
【解決手段】本発明のダイレクト成形機1は、第1の金型5と、射出装置2と、取付面111を有する第1の取付盤11とを備え、第1の取付盤11の取付面111には射出装置2が固定され、射出装置2には第1の金型5が取り付けられ、あらかじめ成形された基材Bと第1の金型5とが接触することにより基材Bの表面と第1の金型5とで限られたキャビティが形成され、射出装置2は第1の金型5を通じてキャビティ内に樹脂材料を射出し、樹脂部品を射出成形しながら基材Bに固定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイレクト成形機に関する。詳しくは、あらかじめ成形された板状の基材に樹脂部品を射出成形しながら固定するダイレクト成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明におけるダイレクト成形とは、あらかじめ成形された基材(以下単に基材という)に対して金型を接触させ、基材の表面と金型とで限られたキャビティに樹脂材料を射出し、リベット、クリップ、リブ等の樹脂部品を成形しながら基材に固定する成形方法のことである。このダイレクト成形によれば、基材を成形する金型に変更を加えることなく、基材の自由な箇所へ目的とする形状の樹脂部品を成形できる利点がある。また、ダイレクト成形で結合部品を成形することによって2枚の基材を結合すれば、従来別個に用意していた結合部品の管理費用等がかからず、低コストに2枚の基材を結合することができる。なお、樹脂部品の樹脂材料としては220度程度で溶融するポリプロピレン等の樹脂が使用される。
このようなダイレクト成形を行うダイレクト成形機として、従来、下記特許文献1に開示されているような竪型射出成形機の技術が応用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−284759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、樹脂部品を単独に成形する一般の射出成形とは異なり、ダイレクト成形は基材のどの位置に樹脂部品を成形するかが問題となるため、ダイレクト成形機は成形位置を容易に変更できるものであることが望まれる。しかしながら、上述のような一般の射出成型機の技術をそのまま応用したダイレクト成形機では、図5にその一部9を示すように、射出側の金型91が取付盤92の取付面921に直接固定されている。この構成によると、樹脂材料を射出する射出装置93は取付盤92の取付面921ではない側922から固定せざるを得ず、取付盤92には射出装置93の射出ノズル931を挿入できる大きさの孔923を所望の成形位置に合わせてあらかじめ設けておく必要があった。
【0005】
このため、成形位置を変更したい場合、まず金型91と射出装置93とを別個に取付盤92から取り外し、次にタイバー94から取付盤92を取り外しこれとは異なる位置に孔923が設けられた新たな取付盤92を取り付け、さらに元の金型91と射出装置93とを別個に新たな取付盤92に取り付ける、という非常に手間のかかる作業を要していた。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、成形位置の変更が容易なダイレクト成形機の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係るダイレクト成形機は次のように構成される。
本発明の第1の発明は、第1の金型と、射出装置と、取付面を有する第1の取付盤とを備え、第1の取付盤の取付面には射出装置が固定され、射出装置には第1の金型が取り付けられ、あらかじめ成形された基材と第1の金型とが接触することにより基材の表面と第1の金型とで限られたキャビティが形成され、射出装置は第1の金型を通じてキャビティ内に樹脂材料を射出し、樹脂部品を射出成形しながら基材に固定するダイレクト成形機である。
【0008】
この構成によれば、射出側の金型と射出装置は他の部材を介さず直結されている。したがって、成形位置を変更するには、射出側の金型と射出装置を一体となったままで移動させるだけであり、成形位置の変更が容易である。
【0009】
本発明の第2の発明は、請求項1に記載のダイレクト成形機であって、前記第1の取付盤の取付面と対向する取付面を有する第2の取付盤と、第2の金型と、型締装置とを備え、第2の取付盤の取付面には第2の金型が固定され、型締装置は第1の金型と第2の金型とを相対的に接近させてそれぞれ基材と接触させ、前記キャビティは第1の金型と基材の表面と第2の金型とで限られて形成されることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、型締装置が第1の金型と第2の金型とを相対的に接近させ、第1の金型と第2の金型が基材と接触することでキャビティが形成される。したがって、キャビティの形成を型締装置によって行うことができ、ダイレクト成形の効率が向上する。
【0011】
本発明の第3の発明は、請求項1又は2に記載のダイレクト成形機であって、前記射出装置は、前記第1の取付盤の取付面に対して固定される射出装置本体と、樹脂材料を射出する筒状の射出ノズルとから成り、前記射出装置に取り付けられる第1の金型は前記射出装置の射出ノズルの先端部に螺合することにより取り付けられており、射出装置本体は射出ノズルがその軸線周りに回転可能となるように射出ノズルの基端部を保持していることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、射出側の金型の射出ノズルに対する取り付けが螺合によっており、射出装置の本体は射出ノズルを回転可能に保持している。したがって、射出側の金型の取り付けが螺合によることでこの金型に所定の方向に対するずれが生じても、射出ノズルの回転により修正することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は本実施形態のダイレクト成形機を示す正面図である。
【図2】図2は本実施形態のダイレクト成形機の射出ノズル及び下型を示す断面図である。
【図3】図3は本実施形態のダイレクト成形機の射出ノズル及び下型を示す分解斜視図である。
【図4】図4は上型を備えず基材と下型のみでキャビティを形成するダイレクト成形機の正面図である。
【図5】図5は従来のダイレクト成形機の一部を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明を実施するための形態を図面を参照しながら説明する。図1は本実施形態のダイレクト成形機を示す正面図である。本実施形態のダイレクト成形機1は、図1に示すように、下部と上部にそれぞれ基板(後述の固定側取付盤11がこの機能を兼ねる)と天板12とを備えている。天板12と基板(固定側取付盤11)は四隅がそれぞれタイバー13で垂直に結ばれている。またダイレクト成形機1は、金型5,16及び射出装置2を取り付けるための対向する取付面を有する一対の取付盤として、可動側取付盤14と固定側取付盤11とを備えている。可動側取付盤14は、天板12と基板(固定側取付盤11)の間において、四隅にタイバー13が挿通された状態で設けられている。可動側取付盤14は、ダイレクト成形機1の上部に設けられた油圧シリンダ等の型締装置15によって駆動され、タイバー13に沿って昇降可能となっている。
【0015】
ダイレクト成形機1は、図1に示すように、基材Bの成形位置に合わせて3対の金型5,16が備え付けられている。可動側取付盤14の取付面141には、各々対を成す金型5,16のうち第2の金型として上型16が直接固定されている。固定側取付盤11の取付面111には、各対の金型5,16に対して樹脂材料を可塑化して射出する射出装置2が固定されている。なお、図示しないが、可動側取付盤14と固定側取付盤11にはあらかじめボルト孔を多数設けてあり、上型16と射出装置2をそれぞれ所望の位置に固定可能となっている。
【0016】
射出装置2は、固定側取付盤11の取付面111に直接固定される部分である射出装置本体20と、樹脂材料を可塑状態で射出する筒状の射出ノズル3とを備えている。射出ノズル3の先端部32には、各々上型16と対を成す第1の金型として下型5が、後述のように螺合により取り付けられている。すなわち、上述の上型16の場合と異なり、下型5は固定側取付盤11の取付面111に対して直接固定されるのではなく射出装置2を介し射出装置2の最上部に固定されている。射出装置本体20は、投入されたペレット状の樹脂材料を射出シリンダ4へ送る手段を有する材料供給部21と、樹脂材料を射出ノズル3内へ突き上げる射出シリンダ4とを備えている。
【0017】
次に、図2を参照しながら、射出ノズル3、ヒータ34、射出シリンダ4、下型5を順に説明する。図2は本実施形態のダイレクト成形機1の射出シリンダ4、射出ノズル3、ヒータ34及び下型5の縦断面図である。
射出ノズル3の外形は概して円柱形状であり、射出シリンダ4側を基端部31、下型5側を先端部32、これらの中間を胴部33とする。射出ノズル3の基端部31の側面には、一定の厚み及び外径で外側へ張り出した鍔部311が形成されている。射出ノズル3の先端部32の側面には、下型5を固定するための雄ねじ部321が形成されている。射出ノズル3の胴部33には、樹脂材料を可塑化する円筒状のヒータ34が差し込まれている。射出ノズル3の軸線上の先端には、樹脂材料が下型5へ射出されるノズル出口35が形成されている。射出ノズル3は、内部の樹脂通路に、樹脂の流路を外方向へ制限し可塑化を助ける紡錘形のトーピード36と、ニードル弁37とを備えている。ニードル弁37は、トーピード36内部にある図示しないばねによってノズル出口35方向へ付勢されている。
【0018】
射出シリンダ4は、射出シリンダ本体40と、射出ノズル3の鍔部311を押さえて保持する鍔押さえ板41とに分かれる。射出シリンダ本体40には、頂面付近の樹脂通路を拡径するようにノズル嵌合部401が形成され、射出ノズル3の鍔部311より基端側が嵌合している。鍔押さえ板41には、ノズル挿通孔411が貫通して形成され、射出ノズル3の胴部33が挿通している。さらに、鍔押さえ板41には、ノズル挿通孔411の下部を拡径するように鍔嵌合部412が形成され、射出ノズル3の鍔部311が嵌合している。鍔押さえ板41はボルトによって射出シリンダ本体40の頂面に固定され、鍔押さえ板41と射出シリンダ本体40とで射出ノズル3の鍔部311を挟持している。ノズル嵌合部401、ノズル挿通孔411及び鍔嵌合部412は、射出ノズル3及び鍔部311と同軸に形成されており、射出ノズル3は射出装置本体20に対して軸線周りに回転可能となっている。
【0019】
下型5の下部には雌ねじ部51が形成され、射出ノズル3の雄ねじ部321に対して螺合することによって下型5が取り付けられている。下型5には、この取り付け状態においてノズル出口35と連通する受入口52と、キャビティへの入口であるのゲート53が形成されている。受入口52はゲート53まで縮径する錐面を有している。このように、射出ノズル3と下型5は組み付け状態において一体的な樹脂通路を形成し、下型5のゲート53が可塑化樹脂の射出口となっている。射出ノズル3のニードル弁37は、射出時には可塑化樹脂の射出圧によってニードル弁37が後退しゲート53が開放され、非射出時には下型5のゲート53を塞ぎ可塑化樹脂の流れを遮断する。下型5の周縁近傍には、樹脂の冷却水を通す冷却水路54が設けられている。
【0020】
次に、図3を参照しながら、射出シリンダ4、射出ノズル3、ヒータ34及び下型5の組み付け手順を説明する。図3は本実施形態のダイレクト成形機1の射出シリンダ4、射出ノズル3、ヒータ34及び下型5の分解斜視図である。まず、射出シリンダ本体40のノズル嵌合部401に、射出ノズル3の基端部31を嵌合する。次に、鍔押さえ板41のノズル挿通孔411を射出ノズル3の胴部33に挿通する。最後まで挿通したとき、射出ノズル3の鍔部311は鍔押さえ板41の鍔嵌合部412に嵌合する。ここで鍔押さえ板41をボルトによって射出シリンダ本体40に対して固定する。次に、ヒータ34を射出ノズル3の胴部33に挿通する。最後に、下型5の雌ねじ部51を射出ノズル3の先端部32に形成された雄ねじ部321に対して螺合し、下型5を取り付ける。
【0021】
しかし、下型5の組みつけがこのように螺合によっているので、下型5が所定の方向で止まるとは限らない。下型5に所定の方向に対するずれが生じた場合は、射出ノズル3を射出シリンダ本体40に対して回転させることでこのずれを修正可能である。以上の手順により射出ノズル3、ヒータ34、及び下型5が射出シリンダ4に対して組み付けられる。
【0022】
本発明の実施形態は以上のように構成されている。この構成によれば、下型5と射出装置2は他の部材を介さず直結されている。したがって、下型5と射出装置2を一体となったままで移動できるため、成形位置の変更が容易である。
【0023】
また、この構成によれば、型締装置15が下型5と上型16とを相対的に接近させ、下型5と上型16とが基材Bと接触することでキャビティが形成される。したがって、キャビティの形成を型締装置15によって行うことができ、ダイレクト成形の効率が向上する。
【0024】
また、この構成によれば、下型5の射出ノズル3に対する取り付けが螺合によっており、射出装置2の本体は射出ノズル3を回転可能に保持している。したがって、下型5の取り付けが螺合によることで下型5に所定の方向に対するずれが生じても、射出ノズル3の回転により修正することが可能である。
【0025】
なお、上述の内容は、あくまで本発明の一実施形態であって、本発明がその内容に限定されることを意味するものではない。上述の実施形態では、射出装置2を取り付ける取付盤が固定側取付盤11、他方の取付盤が可動側取付盤14であった。しかし、射出装置2を取り付ける取付盤を可動、他方の取付盤を固定とする構成でも良い。すなわち、射出装置2の取付盤を型締装置15によって駆動しても良い。
【0026】
また、上述の実施形態では、射出装置2は下型5を通してキャビティに可塑化樹脂を射出する構成であった。しかし、上型16を通してキャビティに可塑化樹脂を射出する構成であっても良い。すなわち、上の取付盤の取付面に射出装置2を固定し、その射出装置2の最下部に上型16を取り付け、下型5は下の取付盤の取付面に直接固定する構成であっても良い。
【0027】
また、上記の実施形態では、図1に示すように、基材Bに対して上型16と下型5とを接触させることで、上型16と基材Bと下型5の三者でキャビティを形成するものであった。そのため、上型16側にも樹脂材料が充填されるよう基材Bにはあらかじめ貫通孔を形成しておく必要があった。しかし、基材Bに貫通孔を設けず基材Bと下型5のみでキャビティを形成する構成であってもよい。この場合、上型16は金型ではなく、単に基材Bの上面を受けるための受け部材であればよい。
【0028】
さらに、この場合、型締装置15、可動側取付盤14、受け部材以外の構成によって基材Bを下型5と接触させキャビティを形成した状態で保持できれば、これら型締装置15、可動側取付盤14、受け部材は必ずしも必要ではない。例えば、図4に示すように、ブラケットとビスからなる基材保持手段17がタイバー13に取り付けられ、この基材保持手段17によって基材Bを保持させる構成としてもよい。さらに、基材保持手段17に代えて作業員が手で基材Bを保持してもよい。
【0029】
また、上記の実施形態では上下で対を成す金型5,16を垂直に締める竪型であったが、左右に対を成す金型を水平に締める横型であっても良い。本発明のダイレクト成形機1は、既製の基材Bに対して樹脂部品を成形し固定するダイレクト成形の他、単体の樹脂部品を成形する目的で用いることを妨げない。また、上型16、下型5と射出装置2は3組に限らず、取付盤に取り付け可能な限り1組以上であれば何組取り付けても良い。また、基材Bは樹脂製でも金属製でもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 ダイレクト成形機
11 固定側取付盤(基板)
111 取付面
14 可動側取付盤
141 取付面
15 型締装置
16 上型
2 射出装置
20 射出装置本体
3 射出ノズル
5 下型
B 基材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金型と、射出装置と、取付面を有する第1の取付盤とを備え、
第1の取付盤の取付面には射出装置が固定され、
射出装置には第1の金型が取り付けられ、
あらかじめ成形された基材と第1の金型とが接触することにより基材の表面と第1の金型とで限られたキャビティが形成され、
射出装置は第1の金型を通じてキャビティ内に樹脂材料を射出し、
樹脂部品を射出成形しながら基材に固定するダイレクト成形機。
【請求項2】
請求項1に記載のダイレクト成形機であって、
前記第1の取付盤の取付面と対向する取付面を有する第2の取付盤と、第2の金型と、型締装置とを備え、
第2の取付盤の取付面には第2の金型が固定され、
型締装置は第1の金型と第2の金型とを相対的に接近させてそれぞれ基材と接触させ、
前記キャビティは第1の金型と基材の表面と第2の金型とで限られて形成されることを特徴とするダイレクト成形機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のダイレクト成形機であって、
前記射出装置は、前記第1の取付盤の取付面に対して固定される射出装置本体と、樹脂材料を射出する筒状の射出ノズルとから成り、
前記射出装置に取り付けられる第1の金型は前記射出装置の射出ノズルの先端部に螺合することにより取り付けられており、
射出装置本体は射出ノズルがその軸線周りに回転可能となるように射出ノズルの基端部を保持していることを特徴とするダイレクト成形機。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−158114(P2012−158114A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19657(P2011−19657)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】