ダクト付きフロアサイレンサー
【課題】断熱性及び防音性に優れており、且つ軽量であるダクト付きフロアサイレンサーを提供する。
【解決手段】本発明のヒータダクト付きフロアサイレンサー10は、車両内に配置され、防音材2(例えば、発泡ウレタン等の車両廃材からなるRSPP等)の成形体からなるものであって、前記成形体には、流体送風口11及び流体吹出し口12を備える筒状のダクト部1が形成されており、且つこのダクト部1の中を空調用の流体が流通可能とされているとともに、前記ダクト部1の内面は非通気層3(例えば、ポリエチレン/ポリアミド/ポリエチレン積層フィルム等)によって被覆されている。
【解決手段】本発明のヒータダクト付きフロアサイレンサー10は、車両内に配置され、防音材2(例えば、発泡ウレタン等の車両廃材からなるRSPP等)の成形体からなるものであって、前記成形体には、流体送風口11及び流体吹出し口12を備える筒状のダクト部1が形成されており、且つこのダクト部1の中を空調用の流体が流通可能とされているとともに、前記ダクト部1の内面は非通気層3(例えば、ポリエチレン/ポリアミド/ポリエチレン積層フィルム等)によって被覆されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダクト付きフロアサイレンサーに関する。更に詳しくは、本発明は、断熱性及び防音性に優れており、且つ軽量であるダクト付きフロアサイレンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、図19及び図20(図19におけるF−F断面を説明する模式図)に示すように、自動車の車両内に配置されているフロアカーペット5(フロントシート側)の下側には、空調設備からの流体をリヤシートの足元に送風するためのエアダクト6が配設されている。このようなエアダクトとしては、主に、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等の樹脂から構成されたもの(例えば、特許文献1及び特許文献2等参照)が用いられている。
また、図19に示すように、前記フロアカーペット5の下側には、前記エアダクト6とともに、フロアサイレンサー7が防音性及び断熱性の確保のために配置されている。
【0003】
しかしながら、前記エアダクトに用いられているPPやPE等の樹脂には、エアダクトとして保有すべき断熱性能が十分に備わっておらず、防音性能も有していないのが現状である。そして、設計上の制約により、図19及び図20に示すように、このフロアサイレンサー7(71,72,73)は前記エアダクト6の周囲に分割して配置する必要があり、エアダクト6が配置された部位においては、十分な断熱性及び防音性が得られていない。更には、前記エアダクト6と前記フロアサイレンサー7(71,72,73)との間には、設計上、所定の隙間を設ける必要があり、その隙間が防音性及び断熱性の低下の要因ともなっている。
また、前記樹脂製のエアダクトは、重量が重く、更なる軽量化が望まれている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−276852号公報
【特許文献2】特開2004−268807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたものであり、断熱性及び防音性に優れており、且つ軽量であるダクト付きフロアサイレンサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の通りである。
[1]車両内に配置され、防音材の成形体からなるダクト付きフロアサイレンサーであって、前記成形体には、筒状のダクト部が形成されており、且つ該ダクト部の中を空調用の流体が流通可能とされているとともに、前記ダクト部の内面は非通気層によって被覆されていることを特徴とするダクト付きフロアサイレンサー。
[2]前記ダクト部の車室側となる上壁が、該ダクト部の車両ボディー側となる下壁よりも密度の高い材料にて形成されている前記[1]に記載のダクト付きフロアサイレンサー。
[3]前記ダクト部の側壁が、該ダクト部の車両ボディー側となる下壁よりも密度の高い材料にて形成されている前記[2]に記載のダクト付きフロアサイレンサー。
[4]前記ダクト部の車室側となる上壁にリブが形成されている前記[1]乃至[3]のいずれかに記載のダクト付きフロアサイレンサー。
【発明の効果】
【0007】
本発明のダクト付きフロアサイレンサーは、従来では別々に配置されていたダクト部及びフロアサイレンサー部が一体化されているため、両者間の隙間が無く、断熱性及び防音性に優れている。また、ダクト部とフロアサイレンサー部とを一体化させているため、部品点数の削減、組み付け工数の削減及び部品の軽量化等につながり、作業時間等の生産性をより向上させることができる。更には、ダクト部を所望の位置に容易に形成することができるため、設計上の制約が少なくなり、従来よりも自由なレイアウトを行うことができる。
また、前記ダクト部の車室側となる上壁を、このダクト部の車両ボディー側となる下壁よりも密度の高い材料にて形成する場合には、十分な強度を備えるダクト付きフロアサイレンサーとすることができる。
更に、前記ダクト部の側壁を、このダクト部の車両ボディー側となる下壁よりも密度の高い材料にて形成する場合には、十分な強度を備えるダクト付きフロアサイレンサーとすることができる。
また、前記ダクト部の車室側となる上壁にリブを形成する場合には、より強度に優れるダクト付きフロアサイレンサーとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明のダクト付きフロアサイレンサーは、車両内に配置されるものであり、防音材の成形体からなる。このダクト付きフロアサイレンサーは、通常、自動車等の車両内に配置されているフロアカーペット(フロントシート側)の下側に配設される。
【0009】
前記「成形体」には、筒状のダクト部が形成されており、その内部を空調用の流体が流通可能となっている。具体的には、成形体の一端(車両前方側)に形成され且つ車両の空調ユニット部に連結される流体送風口と、成形体の他端(車両後方側)に形成され且つ空調ユニットから送風される流体をリヤシートの足元に吹出す流体吹出し口と、を備える筒状のダクト部が形成されている。
尚、前記成形体の形状は、本発明のダクト付きフロアサイレンサーが配置される車種の車両ボディーやフロアカーペット等の形状等に応じて適宜調整できる。
【0010】
また、前記防音材の材質は特に限定されず、従来のフロアサイレンサーに用いられている公知の材料を用いることができる。例えば、ウレタン等の樹脂発泡体、フェルト、発泡ビーズ、不織布チップモールド等を挙げることができる。更には、車両廃材等の産業廃材からのリサイクル材〔「Recycled Sound−Proofing Products(RSPP)」〕等を挙げることができる。これらは、1種単独で用いられていてもよいし、2種以上が混合されて用いられていてもよい。
【0011】
前記防音材の密度は、0.02〜0.25g/cm3であることが好ましく、より好ましくは0.06〜0.2g/cm3、更に好ましくは0.08〜0.12g/cm3である。この密度が、0.02〜0.25g/cm3である場合には、防音性及び断熱性に優れるダクト付きフロアサイレンサーとすることができる。
【0012】
また、前記成形体において、前記ダクト部の車室側となる上壁は、このダクト部の車両ボディー側となる下壁よりも密度の高い材料(以下、「高密度材料」という。)にて形成されていることが好ましい。この場合、十分な強度を備えるダクト付きフロアサイレンサーとすることができる。
更には、前記ダクト部の側壁が、このダクト部の車両ボディー側となる下壁よりも密度の高い高密度材料にて形成されていることが好ましい。この場合、十分な強度を備えるダクト付きフロアサイレンサーとすることができる。
【0013】
前記高密度材料としては、例えば、雑反毛(反毛綿)等の再生繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の熱可塑性樹脂繊維等が挙げられる。これらの高密度材料は、1種のみ用いられていてもよいし、2種以上が混合されて用いられていてもよい。
尚、前記ダクト部の上壁及び側壁が共に高密度材料にて形成されている場合、上壁及び側壁を形成する高密度材料は同一のものであってもよいし、異なっていてもよい。
【0014】
前記高密度材料の密度は、0.15〜2.0g/cm3であることが好ましく、より好ましくは0.2〜1.0g/cm3、更に好ましくは0.3〜0.8g/cm3である。この密度が、0.15〜2.0g/cm3である場合には、十分な強度を備えるダクト付きフロアサイレンサーとすることができる。
【0015】
また、前記上壁を前記高密度材料にて形成した際の上壁の厚みは、必要に応じて適宜調整することができ、特に限定されないが、0.5〜10mmであることが好ましく、より好ましくは1〜5mm、更に好ましくは1〜3mmである。この厚みが0.5〜10mmである場合、十分な強度を備えるダクト付きフロアサイレンサーとすることができる。
更に、前記側壁を前記高密度材料にて形成した際の側壁の厚みは、必要に応じて適宜調整することができ、特に限定されないが、0.5〜10mmであることが好ましく、より好ましくは1〜5mm、更に好ましくは1〜3mmである。この厚みが0.5〜10mmである場合、十分な強度を備えるダクト付きフロアサイレンサーとすることができる。
【0016】
また、前記ダクト部の内面は、非通気層によって被覆されている。
前記非通気層の材質は、ダクト部を気密に保つことができる限り特に限定されず、例えば、樹脂フィルム、金属フィルム、ゴムフィルム、樹脂発泡体等が挙げられる。これらのなかでも、ポリエチレン、ポリアミド等の樹脂フィルムが好ましい。特に、少なくとも一方の面が熱融着可能な樹脂からなる樹脂フィルムが好ましく、具体的には、ポリエチレン/ポリアミド積層フィルム、ポリエチレン/ポリアミド/ポリエチレン積層フィルム等の積層フィルムが挙げられる。
【0017】
前記非通気層の厚みは特に限定されないが、5〜300μmであることが好ましく、より好ましくは30〜100μm、更に好ましくは45〜60μmである。この厚みが5〜300μmである場合、ダクト部を十分に気密に保つことができる。
【0018】
前記ダクト部の断面形状は、その内部を所定量の流体が流通可能となっている限り特に限定されない。
また、前記ダクト部の容積は特に限定されず、本発明のダクト付きフロアサイレンサーが配置される車種の車両ボディーやフロアカーペット等の形状等に応じて適宜調整することができる。
【0019】
前記ダクト部の車室側となる上壁には、強度をより向上させるために、リブを形成することができる。このリブの形状は特に限定されず、例えば、断面V字状や断面U字状等とすることができる。尚、このようなリブは、1箇所のみに形成されていてもよいし、2箇所以上に形成されていてもよい。
【0020】
また、前記ダクト部は、1箇所のみに形成されていてもよいし、2箇所以上に形成されていてもよい。
更に、前記ダクト部においては、前記流体送風口及び/又は流体吹出し口を複数形成すると共に、前記成形体内に岐路を形成することで、ダクト部を2股や3股等の複数に分岐させてもよい。
【実施例】
【0021】
以下、図面に基づいて実施例により本発明を具体的に説明する。
〔実施例1〕
<実施例1のダクト付きフロアサイレンサーの構成>
図1及び図2(図1におけるA−A断面を説明する模式図)に示すように、本実施例1のダクト付きフロアサイレンサー10は、筒状のダクト部1を備えており、流体が、流体送風口11から流体吹出し口12へ流通可能となっている。
前記ダクト付きフロアサイレンサー10本体は、防音材2[材質;RSPP〔発泡ウレタン等の車両廃材80質量%、バインダー(低融点PET芯鞘構造繊維)15質量%、PET繊維5質量%〕、密度;0.08g/cm3]からなる成形体である。
また、前記ダクト部1の内面は、熱融着された非通気層3(材質;ポリエチレン/ポリアミド/ポリエチレン積層フィルム、厚み;45μm)によって被覆されている。
尚、図に示す実施例1のダクト付きフロアサイレンサーは、車両の左側に用いられるものであり、右側用のものは車両の中心を軸として左側用のものと左右対称の構成となる。
【0022】
〔実施例2〕
<実施例2のダクト付きフロアサイレンサーの構成>
図3及び図4(図3におけるB−B断面を説明する模式図)に示すように、本実施例2のダクト付きフロアサイレンサー20においては、ダクト部1の車室側となる上壁13(厚み;2mm)が、高密度材料[材質;高密度繊維〔反毛綿50質量%、バインダー(低融点PET芯鞘構造繊維)50質量%〕、密度;0.4g/cm3]によって構成されている以外は、前述の実施例1と同様の構成である。尚、前記高密度材料のダクト側となる面には、非通気層31(材質;ポリエチレン/ポリアミド/ポリエチレン積層フィルム、厚み;45μm)が形成されている。
【0023】
<実施例1及び2の性能評価>
(1)断熱性の評価
空調設備が配設された車両ボディーのフロント側の左方に、実施例1のダクト付きフロアサイレンサーを配置し、ダクト部における流体送風口を空調設備に固定した。一方、フロント側の右方には、比較例1として、下記構成の従来のエアダクト及びフロアサイレンサーを配置し、エアダクトの流体送風口を空調設備に固定した。
その後、空調設備から温風を6分間送風し、実施例1のダクト部及び比較例1のエアダクトにおける各流体吹出し口の流体の温度(即ち、ダクト内を通過してきた温風の温度)を測定し、それらの結果を図5に示した。
更に、空調設備から温風を6分間送風し、実施例1のダクト部及び比較例1のエアダクトにおける各流体吹出し口から車両前方側に50mm離れたダクト上部の各外壁の温度(即ち、ダクト自体の温度)を測定し、それらの結果を図6に示した。
また、実施例2においても、実施例1と同様に評価を行い、その結果を図7及び図8に示した。
【0024】
〔比較例1の構成〕
比較例1におけるエアダクト(図19及び図20におけるエアダクト6を参照)の材質はポリエチレン(PE)である。また、エアダクトにおける流体送風口及び流体吹出し口の形状及び寸法は、実施例1と略同一に形成されている。
また、比較例1における各フロアサイレンサー〔図19及び図20におけるフロアサイレンサー7(71,72,73)を参照〕の材質は、RSPP〔発泡ウレタン等の車両廃材80質量%、バインダー(低融点PET芯鞘構造繊維)15質量%、PET繊維5質量%〕である。
【0025】
(2)防音性の評価
以下のように、透過損失及び吸音率を測定し、防音性について評価した。
〔透過損失〕
実施例1,2及び比較例1の流体吹出し口付近(具体的には、流体吹出し口から車両前方側に50mmまでの領域)の厚み方向における透過損失を、JIS A 1416に準じて測定した(但し、インテンシティ法に基づき、測定室を無響室とするとともに、無響室の体積を小さく設定し、また測定試料の大きさを小さく設定した。)。この際、(i)全体の厚み〔上壁+空気層(ダクト厚)+下壁〕を一定とした場合、及び(ii)空気層の厚みを一定とした場合に分けて測定し、(i)の場合の結果を図9に示し、(ii)の場合の結果を図10に示す。尚、各実施例及び比較例における、前記上壁及び下壁の構造を表1に示す。また、上壁、空気層及び下壁の厚みは、表1に示すように設定した。
【0026】
【表1】
【0027】
〔吸音率〕
実施例1,2及び比較例1の流体吹出し口付近(具体的には、流体吹出し口から車両前方側に50mmまでの領域)の吸音率を、JIS A 1409に準じて測定した(但し、残響室の体積を小さく設定し、また測定試料の大きさを小さく設定した。)。この際、前述の(i)及び(ii)の場合に分けて測定し、(i)の場合の結果を図11に示し、(ii)の場合の結果を図12に示す。
【0028】
<実施例1及び2の効果>
(断熱性について)
図5によれば、比較例1よりも実施例1における流体吹出し口の流体温度の方が、空調温度〔温風;約55℃(送風開始時;約47℃)〕に近く、実施例1の方が空調設備からの温風の熱を逃さずに送風できることが分かった。具体的には、送風開始時においては実施例1の方が比較例1よりも最大で9℃高く、空調温度が一定になった後においても実施例1の方が比較例1よりも約4℃高い状態で温風を送風することができた。
そして、図6によれば、実施例1よりも比較例1におけるダクト部上方の外壁温度の方が、空調温度〔温風;約55℃(送風開始時;約47℃)〕に近く、比較例1の方が空調設備からの温風の熱を逃してしまっていることが確認できた。
【0029】
また、図7によれば、比較例1よりも実施例2における流体吹出し口の流体温度の方が、空調温度〔温風;約60℃(送風開始時;約50℃)〕に近く、実施例2の方が空調設備からの温風の熱を逃さずに送風できることが分かった。具体的には、送風開始時においては実施例2の方が比較例1よりも最大で15℃高く、空調温度が一定になった後においても実施例2の方が比較例1よりも約5℃高い状態で温風を送風することができた。
そして、図8によれば、実施例2よりも比較例1におけるダクト部上方の外壁温度の方が、空調温度〔温風;約60℃(送風開始時;約50℃)〕に近く、比較例1の方が空調設備からの温風の熱を逃してしまっていることが確認できた。
【0030】
(防音性について)
図9及び図10によれば、(i)ダクト部の全体の厚みが一定の場合、及び(ii)ダクト部の空気層の厚みが一定の場合、の両方の場合において、実施例1及び実施例2の透過損失の方が、比較例1よりも高いことが確認できた。
また、図11及び図12によれば、(i)ダクト部の全体の厚みが一定の場合、及び(ii)ダクト部の空気層の厚みが一定の場合、の両方の場合において、実施例1及び実施例2の吸音率の方が、比較例1よりも高いことが確認できた。
【0031】
以上のことから、実施例1及び実施例2のダクト付きフロアサイレンサーは、優れた断熱性及び防音性を有していることが分かった。
また、実施例1及び実施例2の各ダクト付きフロアサイレンサーは、従来では別々に配置されていたダクト部及びフロアサイレンサー部が一体化されているため、両者間の隙間が無く、断熱性及び防音性に優れている。更に、ダクト部とフロアサイレンサー部とを一体化させているため、部品点数の削減、組み付け工数の削減及び部品の軽量化等につながり、作業時間等の生産性をより向上させることができる。更には、ダクト部を所望の位置に容易に形成することができるため、設計上の制約が少なくなり、従来よりも自由なレイアウトを行うことができる。
また、実施例2のダクト付きフロアサイレンサーにおいては、ダクト部の車室側となる上壁を、このダクト部の車両ボディー側となる下壁よりも密度の高い材料にて形成しているため、より強度に優れている。
【0032】
更に、本発明においては、他の実施形態として下記の実施例3〜5を例示することができる。以下、図面を参照して実施例3〜5を説明する。尚、前述の実施例1と同一の構成については、同一の符号を付し、構造及びその作用効果等の説明を省略する。
【0033】
〔実施例3〕
<実施例3のダクト付きフロアサイレンサーの構成及び効果>
図13及び図14(図13におけるC−C断面を説明する模式図)に示すように、本実施例3のダクト付きフロアサイレンサー30においては、ダクト部1の車室側となる上壁13(厚み;2mm)、及び側壁14(厚み;2mm)が、高密度材料[材質;高密度繊維〔反毛綿50質量%、バインダー(低融点PET芯鞘構造繊維)50質量%〕、密度;0.4g/cm3]によって構成されている以外は、前述の実施例1と同様の構成である。尚、前記高密度材料のダクト側となる面には、非通気層31(材質;ポリエチレン/ポリアミド/ポリエチレン積層フィルム、厚み;45μm)が形成されている。
この実施例3のダクト付きフロアサイレンサー30は、ダクト部1の車室側となる上壁13及びダクト部1の側壁14が、ダクト部1の車両ボディー側となる下壁15よりも密度の高い高密度材料にて形成されているため、強度に優れている。
【0034】
〔実施例4〕
<実施例4のダクト付きフロアサイレンサーの構成及び効果>
図15及び図16(図15におけるD−D断面を説明する模式図)に示すように、本実施例4のダクト付きフロアサイレンサー40においては、ダクト部1の車室側となる上壁13(厚み;2mm)、及び側壁14(厚み;2mm)が、高密度材料[材質;高密度繊維〔反毛綿50質量%、バインダー(低融点PET芯鞘構造繊維)50質量%〕、密度;0.4g/cm3]によって構成されている点、及び、この高密度材料にて形成されている上壁に断面V字状のリブ4が形成されている点以外は、前述の実施例1と同様の構成である。尚、前記高密度材料のダクト側となる面には、非通気層31(材質;ポリエチレン/ポリアミド/ポリエチレン積層フィルム、厚み;45μm)が形成されている。
この実施例4のダクト付きフロアサイレンサー40においては、ダクト部1の車室側となる上壁13及びダクト部1の側壁14が、ダクト部1の車両ボディー側となる下壁15よりも密度の高い高密度材料にて形成されており、且つ、ダクト部1の上壁13にはリブ4が形成されているため、より強度に優れている。
【0035】
〔実施例5〕
<実施例5のダクト付きフロアサイレンサーの構成及び効果>
図17及び図18(図17におけるE−E断面を説明する模式図)に示すように、本実施例5のダクト付きフロアサイレンサー50においては、ダクト部1は、流体送風口11と、流体吹出し口121,122と、を備えており、成形体内で2股に分岐した構造となっており、流体が、流体送風口11から流体吹出し口121,122へ流通可能となっていること以外は、前述の実施例1と同様の構成である。
この実施例5のダクト付きフロアサイレンサー50によれば、本発明のダクト付きフロアサイレンサーにおけるダクト部の構造や配設位置を、必要に応じて容易に変更して形成することが可能であり、ダクト部とサイレンサー部とを別体で形成していた従来よりもレイアウト性に優れていることが分かる。
【0036】
尚、本発明においては、前述の具体的な実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した形態とすることができる。例えば、前記実施例2〜4の各ダクト付きフロアサイレンサーにおけるダクト部を、実施例5のダクト付きフロアサイレンサーのように、2股等の複数に分岐した構造とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施例1のダクト付きサイレンサーを説明する模式図である。
【図2】図1におけるA−A断面を説明する模式図である。
【図3】実施例2のダクト付きサイレンサーを説明する模式図である。
【図4】図2におけるB−B断面を説明する模式図である。
【図5】流体吹出し口の流体の温度変化を示すグラフである。
【図6】ダクト部上側の外壁の温度変化を示すグラフである。
【図7】流体吹出し口の流体の温度変化を示すグラフである。
【図8】ダクト部上側の外壁の温度変化を示すグラフである。
【図9】透過損失を示すグラフである。
【図10】透過損失を示すグラフである。
【図11】吸音率を示すグラフである。
【図12】吸音率を示すグラフである。
【図13】実施例3のダクト付きサイレンサーを説明する模式図である。
【図14】図13におけるC−C断面を説明する模式図である。
【図15】実施例4のダクト付きサイレンサーを説明する模式図である。
【図16】図15におけるD−D断面を説明する模式図である。
【図17】実施例5のダクト付きサイレンサーを説明する模式図である。
【図18】図17におけるE−E断面を説明する模式図である。
【図19】従来のエアダクト及びサイレンサーを説明する模式図である。
【図20】図19におけるF−F断面を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0038】
10,20,30,40,50;ダクト付きフロアサイレンサー、1;ダクト部、11;流体送風口、12,121,122;流体吹出し口、13;上壁、14;側壁、15;下壁、2;防音材、3,31;非通気層、4;リブ、5;フロアカーペット、6;エアダクト、7,71,72,73;フロアサイレンサー。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダクト付きフロアサイレンサーに関する。更に詳しくは、本発明は、断熱性及び防音性に優れており、且つ軽量であるダクト付きフロアサイレンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、図19及び図20(図19におけるF−F断面を説明する模式図)に示すように、自動車の車両内に配置されているフロアカーペット5(フロントシート側)の下側には、空調設備からの流体をリヤシートの足元に送風するためのエアダクト6が配設されている。このようなエアダクトとしては、主に、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等の樹脂から構成されたもの(例えば、特許文献1及び特許文献2等参照)が用いられている。
また、図19に示すように、前記フロアカーペット5の下側には、前記エアダクト6とともに、フロアサイレンサー7が防音性及び断熱性の確保のために配置されている。
【0003】
しかしながら、前記エアダクトに用いられているPPやPE等の樹脂には、エアダクトとして保有すべき断熱性能が十分に備わっておらず、防音性能も有していないのが現状である。そして、設計上の制約により、図19及び図20に示すように、このフロアサイレンサー7(71,72,73)は前記エアダクト6の周囲に分割して配置する必要があり、エアダクト6が配置された部位においては、十分な断熱性及び防音性が得られていない。更には、前記エアダクト6と前記フロアサイレンサー7(71,72,73)との間には、設計上、所定の隙間を設ける必要があり、その隙間が防音性及び断熱性の低下の要因ともなっている。
また、前記樹脂製のエアダクトは、重量が重く、更なる軽量化が望まれている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−276852号公報
【特許文献2】特開2004−268807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたものであり、断熱性及び防音性に優れており、且つ軽量であるダクト付きフロアサイレンサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の通りである。
[1]車両内に配置され、防音材の成形体からなるダクト付きフロアサイレンサーであって、前記成形体には、筒状のダクト部が形成されており、且つ該ダクト部の中を空調用の流体が流通可能とされているとともに、前記ダクト部の内面は非通気層によって被覆されていることを特徴とするダクト付きフロアサイレンサー。
[2]前記ダクト部の車室側となる上壁が、該ダクト部の車両ボディー側となる下壁よりも密度の高い材料にて形成されている前記[1]に記載のダクト付きフロアサイレンサー。
[3]前記ダクト部の側壁が、該ダクト部の車両ボディー側となる下壁よりも密度の高い材料にて形成されている前記[2]に記載のダクト付きフロアサイレンサー。
[4]前記ダクト部の車室側となる上壁にリブが形成されている前記[1]乃至[3]のいずれかに記載のダクト付きフロアサイレンサー。
【発明の効果】
【0007】
本発明のダクト付きフロアサイレンサーは、従来では別々に配置されていたダクト部及びフロアサイレンサー部が一体化されているため、両者間の隙間が無く、断熱性及び防音性に優れている。また、ダクト部とフロアサイレンサー部とを一体化させているため、部品点数の削減、組み付け工数の削減及び部品の軽量化等につながり、作業時間等の生産性をより向上させることができる。更には、ダクト部を所望の位置に容易に形成することができるため、設計上の制約が少なくなり、従来よりも自由なレイアウトを行うことができる。
また、前記ダクト部の車室側となる上壁を、このダクト部の車両ボディー側となる下壁よりも密度の高い材料にて形成する場合には、十分な強度を備えるダクト付きフロアサイレンサーとすることができる。
更に、前記ダクト部の側壁を、このダクト部の車両ボディー側となる下壁よりも密度の高い材料にて形成する場合には、十分な強度を備えるダクト付きフロアサイレンサーとすることができる。
また、前記ダクト部の車室側となる上壁にリブを形成する場合には、より強度に優れるダクト付きフロアサイレンサーとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明のダクト付きフロアサイレンサーは、車両内に配置されるものであり、防音材の成形体からなる。このダクト付きフロアサイレンサーは、通常、自動車等の車両内に配置されているフロアカーペット(フロントシート側)の下側に配設される。
【0009】
前記「成形体」には、筒状のダクト部が形成されており、その内部を空調用の流体が流通可能となっている。具体的には、成形体の一端(車両前方側)に形成され且つ車両の空調ユニット部に連結される流体送風口と、成形体の他端(車両後方側)に形成され且つ空調ユニットから送風される流体をリヤシートの足元に吹出す流体吹出し口と、を備える筒状のダクト部が形成されている。
尚、前記成形体の形状は、本発明のダクト付きフロアサイレンサーが配置される車種の車両ボディーやフロアカーペット等の形状等に応じて適宜調整できる。
【0010】
また、前記防音材の材質は特に限定されず、従来のフロアサイレンサーに用いられている公知の材料を用いることができる。例えば、ウレタン等の樹脂発泡体、フェルト、発泡ビーズ、不織布チップモールド等を挙げることができる。更には、車両廃材等の産業廃材からのリサイクル材〔「Recycled Sound−Proofing Products(RSPP)」〕等を挙げることができる。これらは、1種単独で用いられていてもよいし、2種以上が混合されて用いられていてもよい。
【0011】
前記防音材の密度は、0.02〜0.25g/cm3であることが好ましく、より好ましくは0.06〜0.2g/cm3、更に好ましくは0.08〜0.12g/cm3である。この密度が、0.02〜0.25g/cm3である場合には、防音性及び断熱性に優れるダクト付きフロアサイレンサーとすることができる。
【0012】
また、前記成形体において、前記ダクト部の車室側となる上壁は、このダクト部の車両ボディー側となる下壁よりも密度の高い材料(以下、「高密度材料」という。)にて形成されていることが好ましい。この場合、十分な強度を備えるダクト付きフロアサイレンサーとすることができる。
更には、前記ダクト部の側壁が、このダクト部の車両ボディー側となる下壁よりも密度の高い高密度材料にて形成されていることが好ましい。この場合、十分な強度を備えるダクト付きフロアサイレンサーとすることができる。
【0013】
前記高密度材料としては、例えば、雑反毛(反毛綿)等の再生繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の熱可塑性樹脂繊維等が挙げられる。これらの高密度材料は、1種のみ用いられていてもよいし、2種以上が混合されて用いられていてもよい。
尚、前記ダクト部の上壁及び側壁が共に高密度材料にて形成されている場合、上壁及び側壁を形成する高密度材料は同一のものであってもよいし、異なっていてもよい。
【0014】
前記高密度材料の密度は、0.15〜2.0g/cm3であることが好ましく、より好ましくは0.2〜1.0g/cm3、更に好ましくは0.3〜0.8g/cm3である。この密度が、0.15〜2.0g/cm3である場合には、十分な強度を備えるダクト付きフロアサイレンサーとすることができる。
【0015】
また、前記上壁を前記高密度材料にて形成した際の上壁の厚みは、必要に応じて適宜調整することができ、特に限定されないが、0.5〜10mmであることが好ましく、より好ましくは1〜5mm、更に好ましくは1〜3mmである。この厚みが0.5〜10mmである場合、十分な強度を備えるダクト付きフロアサイレンサーとすることができる。
更に、前記側壁を前記高密度材料にて形成した際の側壁の厚みは、必要に応じて適宜調整することができ、特に限定されないが、0.5〜10mmであることが好ましく、より好ましくは1〜5mm、更に好ましくは1〜3mmである。この厚みが0.5〜10mmである場合、十分な強度を備えるダクト付きフロアサイレンサーとすることができる。
【0016】
また、前記ダクト部の内面は、非通気層によって被覆されている。
前記非通気層の材質は、ダクト部を気密に保つことができる限り特に限定されず、例えば、樹脂フィルム、金属フィルム、ゴムフィルム、樹脂発泡体等が挙げられる。これらのなかでも、ポリエチレン、ポリアミド等の樹脂フィルムが好ましい。特に、少なくとも一方の面が熱融着可能な樹脂からなる樹脂フィルムが好ましく、具体的には、ポリエチレン/ポリアミド積層フィルム、ポリエチレン/ポリアミド/ポリエチレン積層フィルム等の積層フィルムが挙げられる。
【0017】
前記非通気層の厚みは特に限定されないが、5〜300μmであることが好ましく、より好ましくは30〜100μm、更に好ましくは45〜60μmである。この厚みが5〜300μmである場合、ダクト部を十分に気密に保つことができる。
【0018】
前記ダクト部の断面形状は、その内部を所定量の流体が流通可能となっている限り特に限定されない。
また、前記ダクト部の容積は特に限定されず、本発明のダクト付きフロアサイレンサーが配置される車種の車両ボディーやフロアカーペット等の形状等に応じて適宜調整することができる。
【0019】
前記ダクト部の車室側となる上壁には、強度をより向上させるために、リブを形成することができる。このリブの形状は特に限定されず、例えば、断面V字状や断面U字状等とすることができる。尚、このようなリブは、1箇所のみに形成されていてもよいし、2箇所以上に形成されていてもよい。
【0020】
また、前記ダクト部は、1箇所のみに形成されていてもよいし、2箇所以上に形成されていてもよい。
更に、前記ダクト部においては、前記流体送風口及び/又は流体吹出し口を複数形成すると共に、前記成形体内に岐路を形成することで、ダクト部を2股や3股等の複数に分岐させてもよい。
【実施例】
【0021】
以下、図面に基づいて実施例により本発明を具体的に説明する。
〔実施例1〕
<実施例1のダクト付きフロアサイレンサーの構成>
図1及び図2(図1におけるA−A断面を説明する模式図)に示すように、本実施例1のダクト付きフロアサイレンサー10は、筒状のダクト部1を備えており、流体が、流体送風口11から流体吹出し口12へ流通可能となっている。
前記ダクト付きフロアサイレンサー10本体は、防音材2[材質;RSPP〔発泡ウレタン等の車両廃材80質量%、バインダー(低融点PET芯鞘構造繊維)15質量%、PET繊維5質量%〕、密度;0.08g/cm3]からなる成形体である。
また、前記ダクト部1の内面は、熱融着された非通気層3(材質;ポリエチレン/ポリアミド/ポリエチレン積層フィルム、厚み;45μm)によって被覆されている。
尚、図に示す実施例1のダクト付きフロアサイレンサーは、車両の左側に用いられるものであり、右側用のものは車両の中心を軸として左側用のものと左右対称の構成となる。
【0022】
〔実施例2〕
<実施例2のダクト付きフロアサイレンサーの構成>
図3及び図4(図3におけるB−B断面を説明する模式図)に示すように、本実施例2のダクト付きフロアサイレンサー20においては、ダクト部1の車室側となる上壁13(厚み;2mm)が、高密度材料[材質;高密度繊維〔反毛綿50質量%、バインダー(低融点PET芯鞘構造繊維)50質量%〕、密度;0.4g/cm3]によって構成されている以外は、前述の実施例1と同様の構成である。尚、前記高密度材料のダクト側となる面には、非通気層31(材質;ポリエチレン/ポリアミド/ポリエチレン積層フィルム、厚み;45μm)が形成されている。
【0023】
<実施例1及び2の性能評価>
(1)断熱性の評価
空調設備が配設された車両ボディーのフロント側の左方に、実施例1のダクト付きフロアサイレンサーを配置し、ダクト部における流体送風口を空調設備に固定した。一方、フロント側の右方には、比較例1として、下記構成の従来のエアダクト及びフロアサイレンサーを配置し、エアダクトの流体送風口を空調設備に固定した。
その後、空調設備から温風を6分間送風し、実施例1のダクト部及び比較例1のエアダクトにおける各流体吹出し口の流体の温度(即ち、ダクト内を通過してきた温風の温度)を測定し、それらの結果を図5に示した。
更に、空調設備から温風を6分間送風し、実施例1のダクト部及び比較例1のエアダクトにおける各流体吹出し口から車両前方側に50mm離れたダクト上部の各外壁の温度(即ち、ダクト自体の温度)を測定し、それらの結果を図6に示した。
また、実施例2においても、実施例1と同様に評価を行い、その結果を図7及び図8に示した。
【0024】
〔比較例1の構成〕
比較例1におけるエアダクト(図19及び図20におけるエアダクト6を参照)の材質はポリエチレン(PE)である。また、エアダクトにおける流体送風口及び流体吹出し口の形状及び寸法は、実施例1と略同一に形成されている。
また、比較例1における各フロアサイレンサー〔図19及び図20におけるフロアサイレンサー7(71,72,73)を参照〕の材質は、RSPP〔発泡ウレタン等の車両廃材80質量%、バインダー(低融点PET芯鞘構造繊維)15質量%、PET繊維5質量%〕である。
【0025】
(2)防音性の評価
以下のように、透過損失及び吸音率を測定し、防音性について評価した。
〔透過損失〕
実施例1,2及び比較例1の流体吹出し口付近(具体的には、流体吹出し口から車両前方側に50mmまでの領域)の厚み方向における透過損失を、JIS A 1416に準じて測定した(但し、インテンシティ法に基づき、測定室を無響室とするとともに、無響室の体積を小さく設定し、また測定試料の大きさを小さく設定した。)。この際、(i)全体の厚み〔上壁+空気層(ダクト厚)+下壁〕を一定とした場合、及び(ii)空気層の厚みを一定とした場合に分けて測定し、(i)の場合の結果を図9に示し、(ii)の場合の結果を図10に示す。尚、各実施例及び比較例における、前記上壁及び下壁の構造を表1に示す。また、上壁、空気層及び下壁の厚みは、表1に示すように設定した。
【0026】
【表1】
【0027】
〔吸音率〕
実施例1,2及び比較例1の流体吹出し口付近(具体的には、流体吹出し口から車両前方側に50mmまでの領域)の吸音率を、JIS A 1409に準じて測定した(但し、残響室の体積を小さく設定し、また測定試料の大きさを小さく設定した。)。この際、前述の(i)及び(ii)の場合に分けて測定し、(i)の場合の結果を図11に示し、(ii)の場合の結果を図12に示す。
【0028】
<実施例1及び2の効果>
(断熱性について)
図5によれば、比較例1よりも実施例1における流体吹出し口の流体温度の方が、空調温度〔温風;約55℃(送風開始時;約47℃)〕に近く、実施例1の方が空調設備からの温風の熱を逃さずに送風できることが分かった。具体的には、送風開始時においては実施例1の方が比較例1よりも最大で9℃高く、空調温度が一定になった後においても実施例1の方が比較例1よりも約4℃高い状態で温風を送風することができた。
そして、図6によれば、実施例1よりも比較例1におけるダクト部上方の外壁温度の方が、空調温度〔温風;約55℃(送風開始時;約47℃)〕に近く、比較例1の方が空調設備からの温風の熱を逃してしまっていることが確認できた。
【0029】
また、図7によれば、比較例1よりも実施例2における流体吹出し口の流体温度の方が、空調温度〔温風;約60℃(送風開始時;約50℃)〕に近く、実施例2の方が空調設備からの温風の熱を逃さずに送風できることが分かった。具体的には、送風開始時においては実施例2の方が比較例1よりも最大で15℃高く、空調温度が一定になった後においても実施例2の方が比較例1よりも約5℃高い状態で温風を送風することができた。
そして、図8によれば、実施例2よりも比較例1におけるダクト部上方の外壁温度の方が、空調温度〔温風;約60℃(送風開始時;約50℃)〕に近く、比較例1の方が空調設備からの温風の熱を逃してしまっていることが確認できた。
【0030】
(防音性について)
図9及び図10によれば、(i)ダクト部の全体の厚みが一定の場合、及び(ii)ダクト部の空気層の厚みが一定の場合、の両方の場合において、実施例1及び実施例2の透過損失の方が、比較例1よりも高いことが確認できた。
また、図11及び図12によれば、(i)ダクト部の全体の厚みが一定の場合、及び(ii)ダクト部の空気層の厚みが一定の場合、の両方の場合において、実施例1及び実施例2の吸音率の方が、比較例1よりも高いことが確認できた。
【0031】
以上のことから、実施例1及び実施例2のダクト付きフロアサイレンサーは、優れた断熱性及び防音性を有していることが分かった。
また、実施例1及び実施例2の各ダクト付きフロアサイレンサーは、従来では別々に配置されていたダクト部及びフロアサイレンサー部が一体化されているため、両者間の隙間が無く、断熱性及び防音性に優れている。更に、ダクト部とフロアサイレンサー部とを一体化させているため、部品点数の削減、組み付け工数の削減及び部品の軽量化等につながり、作業時間等の生産性をより向上させることができる。更には、ダクト部を所望の位置に容易に形成することができるため、設計上の制約が少なくなり、従来よりも自由なレイアウトを行うことができる。
また、実施例2のダクト付きフロアサイレンサーにおいては、ダクト部の車室側となる上壁を、このダクト部の車両ボディー側となる下壁よりも密度の高い材料にて形成しているため、より強度に優れている。
【0032】
更に、本発明においては、他の実施形態として下記の実施例3〜5を例示することができる。以下、図面を参照して実施例3〜5を説明する。尚、前述の実施例1と同一の構成については、同一の符号を付し、構造及びその作用効果等の説明を省略する。
【0033】
〔実施例3〕
<実施例3のダクト付きフロアサイレンサーの構成及び効果>
図13及び図14(図13におけるC−C断面を説明する模式図)に示すように、本実施例3のダクト付きフロアサイレンサー30においては、ダクト部1の車室側となる上壁13(厚み;2mm)、及び側壁14(厚み;2mm)が、高密度材料[材質;高密度繊維〔反毛綿50質量%、バインダー(低融点PET芯鞘構造繊維)50質量%〕、密度;0.4g/cm3]によって構成されている以外は、前述の実施例1と同様の構成である。尚、前記高密度材料のダクト側となる面には、非通気層31(材質;ポリエチレン/ポリアミド/ポリエチレン積層フィルム、厚み;45μm)が形成されている。
この実施例3のダクト付きフロアサイレンサー30は、ダクト部1の車室側となる上壁13及びダクト部1の側壁14が、ダクト部1の車両ボディー側となる下壁15よりも密度の高い高密度材料にて形成されているため、強度に優れている。
【0034】
〔実施例4〕
<実施例4のダクト付きフロアサイレンサーの構成及び効果>
図15及び図16(図15におけるD−D断面を説明する模式図)に示すように、本実施例4のダクト付きフロアサイレンサー40においては、ダクト部1の車室側となる上壁13(厚み;2mm)、及び側壁14(厚み;2mm)が、高密度材料[材質;高密度繊維〔反毛綿50質量%、バインダー(低融点PET芯鞘構造繊維)50質量%〕、密度;0.4g/cm3]によって構成されている点、及び、この高密度材料にて形成されている上壁に断面V字状のリブ4が形成されている点以外は、前述の実施例1と同様の構成である。尚、前記高密度材料のダクト側となる面には、非通気層31(材質;ポリエチレン/ポリアミド/ポリエチレン積層フィルム、厚み;45μm)が形成されている。
この実施例4のダクト付きフロアサイレンサー40においては、ダクト部1の車室側となる上壁13及びダクト部1の側壁14が、ダクト部1の車両ボディー側となる下壁15よりも密度の高い高密度材料にて形成されており、且つ、ダクト部1の上壁13にはリブ4が形成されているため、より強度に優れている。
【0035】
〔実施例5〕
<実施例5のダクト付きフロアサイレンサーの構成及び効果>
図17及び図18(図17におけるE−E断面を説明する模式図)に示すように、本実施例5のダクト付きフロアサイレンサー50においては、ダクト部1は、流体送風口11と、流体吹出し口121,122と、を備えており、成形体内で2股に分岐した構造となっており、流体が、流体送風口11から流体吹出し口121,122へ流通可能となっていること以外は、前述の実施例1と同様の構成である。
この実施例5のダクト付きフロアサイレンサー50によれば、本発明のダクト付きフロアサイレンサーにおけるダクト部の構造や配設位置を、必要に応じて容易に変更して形成することが可能であり、ダクト部とサイレンサー部とを別体で形成していた従来よりもレイアウト性に優れていることが分かる。
【0036】
尚、本発明においては、前述の具体的な実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した形態とすることができる。例えば、前記実施例2〜4の各ダクト付きフロアサイレンサーにおけるダクト部を、実施例5のダクト付きフロアサイレンサーのように、2股等の複数に分岐した構造とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施例1のダクト付きサイレンサーを説明する模式図である。
【図2】図1におけるA−A断面を説明する模式図である。
【図3】実施例2のダクト付きサイレンサーを説明する模式図である。
【図4】図2におけるB−B断面を説明する模式図である。
【図5】流体吹出し口の流体の温度変化を示すグラフである。
【図6】ダクト部上側の外壁の温度変化を示すグラフである。
【図7】流体吹出し口の流体の温度変化を示すグラフである。
【図8】ダクト部上側の外壁の温度変化を示すグラフである。
【図9】透過損失を示すグラフである。
【図10】透過損失を示すグラフである。
【図11】吸音率を示すグラフである。
【図12】吸音率を示すグラフである。
【図13】実施例3のダクト付きサイレンサーを説明する模式図である。
【図14】図13におけるC−C断面を説明する模式図である。
【図15】実施例4のダクト付きサイレンサーを説明する模式図である。
【図16】図15におけるD−D断面を説明する模式図である。
【図17】実施例5のダクト付きサイレンサーを説明する模式図である。
【図18】図17におけるE−E断面を説明する模式図である。
【図19】従来のエアダクト及びサイレンサーを説明する模式図である。
【図20】図19におけるF−F断面を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0038】
10,20,30,40,50;ダクト付きフロアサイレンサー、1;ダクト部、11;流体送風口、12,121,122;流体吹出し口、13;上壁、14;側壁、15;下壁、2;防音材、3,31;非通気層、4;リブ、5;フロアカーペット、6;エアダクト、7,71,72,73;フロアサイレンサー。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内に配置され、防音材の成形体からなるダクト付きフロアサイレンサーであって、
前記成形体には、筒状のダクト部が形成されており、且つ該ダクト部の中を空調用の流体が流通可能とされているとともに、
前記ダクト部の内面は非通気層によって被覆されていることを特徴とするダクト付きフロアサイレンサー。
【請求項2】
前記ダクト部の車室側となる上壁が、該ダクト部の車両ボディー側となる下壁よりも密度の高い材料にて形成されている請求項1に記載のダクト付きフロアサイレンサー。
【請求項3】
前記ダクト部の側壁が、該ダクト部の車両ボディー側となる下壁よりも密度の高い材料にて形成されている請求項2に記載のダクト付きフロアサイレンサー。
【請求項4】
前記ダクト部の車室側となる上壁にリブが形成されている請求項1乃至3のいずれかに記載のダクト付きフロアサイレンサー。
【請求項1】
車両内に配置され、防音材の成形体からなるダクト付きフロアサイレンサーであって、
前記成形体には、筒状のダクト部が形成されており、且つ該ダクト部の中を空調用の流体が流通可能とされているとともに、
前記ダクト部の内面は非通気層によって被覆されていることを特徴とするダクト付きフロアサイレンサー。
【請求項2】
前記ダクト部の車室側となる上壁が、該ダクト部の車両ボディー側となる下壁よりも密度の高い材料にて形成されている請求項1に記載のダクト付きフロアサイレンサー。
【請求項3】
前記ダクト部の側壁が、該ダクト部の車両ボディー側となる下壁よりも密度の高い材料にて形成されている請求項2に記載のダクト付きフロアサイレンサー。
【請求項4】
前記ダクト部の車室側となる上壁にリブが形成されている請求項1乃至3のいずれかに記載のダクト付きフロアサイレンサー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2008−273333(P2008−273333A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−117626(P2007−117626)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
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