説明

ダクト装置

【課題】ダクト装置の屈曲部を小さく構成する。吹き出す空気の流速を一定にする。
【解決手段】車両のインストルメントパネルの内側にエアバッグ装置とともに配置するダクト装置10を構成する。ダクト装置10は、ダクト本体部21と、このダクト本体部21に連続する屈曲部22と、この屈曲部22に取り付けるベンチレータ16とを備える。ベンチレータ16は、屈曲部22の導出口42に取り付ける。屈曲部22の内部の屈曲室25は、導入口41でダクト本体部21の内部の本体空間部24に連通する。導入口41から屈曲室25に入った空気は、一旦膨出部26に下降させ、案内面部47で案内して、ベンチレータ16に導入する。屈曲部22を薄型化でき、エアバッグ装置を大型化しても、ダクト装置10を容易に配置できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車の空調に用いるダクト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、自動車のインストルメントパネルの内側に配置され、空調装置から供給される空気を案内して下流端のベンチレータから吹き出すダクト装置が用いられている。この点、水平に配置されたベンチレータに向かってダクトが下方から屈曲する部分において、下方から上方に向かうダクトの上部を上方に膨出させるとともに、断面積は一定としつつ断面形状を次第に変化させることにより、ベンチレータから水平に空気を吹き出す構成が示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、例えば、ダクトが屈曲する部分の内側に、L字状に屈曲された変流翼体を複数配置し、各変流翼体は、コーナ部の内側はなだらかな曲面とし、コーナ部の外側は角張った形状とすることにより、屈曲部分の通風性能の低下の緩和を図った構成が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特公平4−5562号公報 (第1頁、第2−4図)
【特許文献2】特開2001−88545号公報 (第2−3頁、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
今日において、インストルメントパネルの内側には、エアバッグ装置などの種々の装置が配置され、ダクト装置を配置する空間が限られている。特に、両側方向の寸法が大きい助手席乗員用のエアバッグ装置が備えられる場合には、ダクト装置は、インストルメントパネルの両側の端部の限られた空間で屈曲され、そのままベンチレータに接続される構成となり、ダクトを膨出させる空間や変流翼体を配置する空間の確保が困難となる。そこで、整流が困難になり、ベンチレータに供給される空気の速度が各部で不均一になるなどの問題を有している。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、小さい空間に配置できるとともに流速の均一な流体を供給できるダクト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載のダクト装置は、本体空間部を設けた管状のダクト本体部と、前記本体空間部に連通する屈曲室を設けた屈曲部と、前記屈曲室に連通する吹出空間部を備えた管状の吹出口部とを具備し、前記屈曲部は、前記本体空間部の下流端と前記屈曲室とを連通し第1の方向に沿って前記本体空間部から前記屈曲室に流体が導入される導入口と、この導入口に対向する側壁部と、前記第1の方向と交差する第2の方向に開口し前記吹出口部が配置される導出口と、前記第1の方向及び第2の方向と交差し前記導入口から離間する第3の方向に前記屈曲室が膨出した膨出部と、この膨出部側から前記吹出口部の上流の端部側に向かって湾曲する曲面状をなす案内面部とを備えたものである。
【0006】
そして、この構成では、屈曲部で第1の方向から第2の方向に屈曲された流体が吹出口部から吹き出される。ダクト本体部の本体空間部から導入口を介して屈曲部の屈曲室に導入された流体は、側壁部あるいは吹出口部に当り膨出部側に流れる。この後、流体は曲面状をなす案内面部に案内されて吹出口部の吹出空間部に導入される。屈曲部は、第1の方向及び第2の方向に沿った寸法を小さくすることが可能になり、小さい空間に配置することが容易になるとともに、風は導入口から離間する方向に膨出する膨出部を経て曲面状をなす案内面部で案内することにより、吹出口部から吹き出される流体の流速が容易に均一になる。
【0007】
請求項2記載のダクト装置は、請求項1記載のダクト装置において、案内面部の少なくとも一部は、吹出口部の上流側の端部を中心とする円弧に沿って形成されたものである。
【0008】
そして、この構成では、流体を案内面部で円滑に案内し、吹出口部から吹き出される流体の流速が効果的に均一になる。
【0009】
請求項3記載のダクト装置は、請求項1または2記載のダクト装置において、導入口には、ダクト本体部の内面と屈曲部の内面とを連結する傾斜案内面が設けられたものである。
【0010】
そして、この構成では、傾斜案内面で円滑に流体を案内することが可能になり、ダクト装置を小さい空間に配置することが容易になる。
【0011】
請求項4記載のダクト装置は、請求項1ないし3いずれか一記載のダクト装置において、ダクト本体部は、車両の内装材の裏面側に配置され、吹出口部は、風向調整装置を構成するものである。
【0012】
そして、この構成では、屈曲部を小さく構成できるため、他の部材などにより空間が制限される車両の内装材の裏面側に空調用のダクト本体部を配置することが容易になる。空気を屈曲する屈曲部から吹出口部に均一な空気を供給することが可能であり、風向調整の効果が向上する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のダクト装置によれば、屈曲部で第1の方向から第2の方向に流体を屈曲し吹出口部から吹き出すことができる。屈曲部は、第1の方向及び第2の方向に沿った寸法を小さくすることが可能になり、小さい空間に容易に配置できるとともに、吹出口部から吹き出される流体の流速を容易に均一にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明のダクト装置の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0015】
図1ないし図4において、10はダクト装置で、このダクト装置10は、車両である自動車の空調装置に接続される車両用空調ダクトであり、図2及び図3に示す車室前部の内装材を構成するインストルメントパネル11の裏面側すなわち内側である前側に配置に配置されている。なお、以下、前後、両側、及び上下などの方向は、車両の直進方向を基準とし、以下、第1の方向としての一側方X、第2の方向としての後方Y、第3の方向としての下方Zとして説明する。そして、このダクト装置10は、空調装置から供給される流体としての空気を分岐などしながら案内し、インストルメントパネル11の例えば両側の端部近傍に設けた開口部分11aなどから後方Yすなわち乗員に向かって吹き出すようになっている。また、インストルメントパネル11の裏面側には、図2に示すように、助手席に対向して、エアバッグ装置14が配置されている。また、このエアバッグ装置14は、展開特性を向上するために、比較的両側方向の寸法が大きく、一側方Xの端部14aは、インストルメントパネル11の一側方Xの端部に接近して配置されている。
【0016】
そして、このダクト装置10は、例えば樹脂によるブロー成形などにて一体に形成された本体部15と、この本体部15に取り付けられる吹出口部としての風向調整装置であるベンチレータ16とを備えている。また、本体部15は、管状をなすダクト本体部21と、このダクト本体部21の下流側の端部に連続して形成された屈曲部22とを備えている。そして、ダクト本体部21は、四角筒状などの筒状すなわち中空状であり、内側に空気が流れる本体空間部24が形成されている。
【0017】
また、屈曲部22は、両側方向の寸法が小さい薄箱状をなし、内側に屈曲室25が形成されている。そして、この屈曲部22は、下方に膨出する膨出部26を有し、側方から見て、前側を曲面とする略扇状に形成されている。そして、屈曲部22は、それぞれ平板状で両側方向に相対向する側壁部31及び内側壁部32を備えるとともに、これら側壁部31及び内側壁部32を連結する構成として、後側上部に位置する平板状で傾斜した上板部33と、後側下部に位置する平板状で傾斜した下板部34と、前側部に位置する一部が湾曲した前板部35とを備えている。そして、内側壁部32には、本体空間部24と屈曲室25とを連通する導入口41が形成され、上板部33の後側部には、後方Yに開口する嵌合口である導出口42が形成されている。すなわち、膨出部26は、導出口42から離間する側に膨出するように形成されている。また、この導出口42の一側方Xから見た形状は、本体空間部24の一側方Xから見た形状とは異なるため、この導出口42に面した部分の少なくとも1辺に、本実施の形態では上下の2辺に、傾斜案内面44,45が形成され、通気抵抗の低減が図られている。さらに、前板部35の内面の中間部分は、端部としての両側方向に伸びる所定線Oを中心軸とする半径rの円弧面である案内面部47として形成され、この案内面部47の上下の端部が上板部33及び下板部34の前端部に連結している。また、導出口42は、上板部33の中央より後方に位置をずらして四角状に形成されている。
【0018】
さらに、ベンチレータ16は、略角筒状をなす外筒部51を備え、この外筒部51の内側が、吹出口空間部52となっている。そして、このベンチレータ16は、前端に位置する前部開口54が屈曲室25の内側に位置し、後端に位置する後部開口55が屈曲室25の外側に位置するようにして、導出口42に挿入して嵌合されているとともに外筒部51すなわち吹出口空間部52の軸方向が前後方向に沿うように配置されている。そして、前部開口54は、外筒部51を略垂直に切断した形状をなし、この前部開口54の下端の縁部が所定線Oに沿って配置されている。また、後部開口55は、インストルメントパネル11の形状などに応じて傾斜して形成されている。さらに、図3に示すように、吹出口空間部52には、風向調整手段となるルーバ58,59が縦横にそれぞれ複数配置されている。また、必要に応じて、後部開口55には、インストルメントパネル11に当接するフランジ部55aが形成されている。
【0019】
そして、このダクト装置10のダクト本体部21は、助手席に対向する位置では、車両のインストルメントパネル11の裏面側の、このインストルメントパネル11とエアバッグ装置14との間の狭い空間に配置されているとともに、屈曲部22は、車両のインストルメントパネル11の裏面側の端部の、車両の側部パネルとエアバッグ装置14との間の狭い空間に配置されている。
【0020】
次に、このダクト装置10に空気が供給された際の動作を説明する。
【0021】
図示しない空調装置から供給された空気が、図1ないし図3の矢印Aに示すように、ダクト本体部21の本体空間部24内を流れてくると、この空気は、傾斜案内面44,45に案内されつつ、導入口41を介して屈曲部22の屈曲室25に入る。ここで、導入された空気は、側壁部31あるいはベンチレータ16に当接し、下方に膨出した膨出部26に導入される。ここで、この膨出部26の一では、空気の流速が抑えられ、少なくとも第1の方向Xから見た流速が抑えられ、いわば静圧室Bが構成される。そして、この静圧室Bで、あるいは静圧室Bを通った後、図4に示すように、空気は案内面部47で案内され、ベンチレータ16の前部開口54に導入される。この際、風は、導入口41から離間し流速が比較的低下する膨出部26から曲面状をなす案内面部47で案内され、遠心力と屈曲部22あるいはベンチレータ16との剥離を利用して整流される。そして、このベンチレータ16のルーバ58,59により、風向が調整され、後部開口55から車室内の所望の方向に吹き出すようになっている。
【0022】
ここで、図5に、屈曲室25からベンチレータ16を介して車室に吹き出される空気の風向と風速とを計算したシミュレーション結果を示す。矢印の向きが風向を示し、矢印の濃さが風速を示している。そして、このシミュレーションにより、ベンチレータ16から吹き出される時点で、各部の風速を略一定にできることが示された。
【0023】
このように、本実施の形態によれば、風向を曲げる屈曲部22を小さくできるとともに、流速の均一な風を吹き出すことができ、内装材であるインストルメントパネル11の内側に配置され乗員に向けて吹き出す空気を案内するために好適なダクト装置を提供できる。
【0024】
すなわち、インストルメントパネル11の内側に配置される他の部材の嵩が大きくなっても、特に、幅寸法の大きいエアバッグ装置14を搭載したインストルメントパネル11であっても、薄型の屈曲部22をエアバッグ装置14などの周辺形状を回避するようにして容易に配置でき、インストルメントパネル11内の小さい空間の部品の配置を容易にできる。
【0025】
また、屈曲部22では、ベンチレータ16に対して、横側から下側を経て、後方から廻り込むとの複雑な経路で風を送るとともに、ベンチレータ16の上流側の一辺を中心とする円弧に沿って形成された案内面部47で案内し、遠心力と剥離とを利用して整流して風の流れを制御し、流速の均一な風を吹き出すことができる。
【0026】
また、導入口41には、ダクト本体部21の内面と屈曲部22の内面とを連結する傾斜案内面44,45を設けたため、流路の断面積を容易に確保できるとともに、これら傾斜案内面44,45で円滑に空気を案内し、通気抵抗を低減できる。
【0027】
さらに、膨出部26は、図3などに示すように、屈曲部22の側壁部31と傾斜案内面44とで両側部が区画形成されているため、屈曲部22を小さく構成することが可能になるとともに、別体の部材で膨出部を形成する構成に比べ、部品点数を削減して構成を簡略化し、製造コストを低減できる。
【0028】
また、膨出部26は静圧室Bとなっているとともに、曲面状の案内面部47で空気を案内するため、導入口41の位置を変位させたとしても、流速の均一な風を吹き出すことが可能であり、設計の自由度を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、車両のインストルメントパネル内に配置されるダクト装置の他、ダクト全般に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のダクト装置の一実施の形態を示す一部の分解斜視図である。
【図2】同上ダクト装置の上方から見た一部の断面図である。
【図3】同上ダクト装置の後方から見た一部の断面図である。
【図4】同上ダクト装置の動作を示す側方から見た説明図である。
【図5】同上ダクト装置のシミュレーション結果を示す側方から見た説明図である。
【符号の説明】
【0031】
10 ダクト装置
11 内装材としてのインストルメントパネル
16 吹出口部としてのベンチレータ
21 ダクト本体部
22 屈曲部
24 本体空間部
25 屈曲室
26 膨出部
31 側壁部
41 導入口
42 導出口
44 傾斜案内面
47 案内面部
O 端部としての所定線
X 第1の方向としての一側方
Y 第2の方向としての後方
Z 第3の方向としての下方

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体空間部を設けた管状のダクト本体部と、前記本体空間部に連通する屈曲室を設けた屈曲部と、前記屈曲室に連通する吹出空間部を備えた管状の吹出口部とを具備し、
前記屈曲部は、
前記本体空間部の下流端と前記屈曲室とを連通し第1の方向に沿って前記本体空間部から前記屈曲室に流体が導入される導入口と、
この導入口に対向する側壁部と、
前記第1の方向と交差する第2の方向に開口し前記吹出口部が配置される導出口と、
前記第1の方向及び第2の方向と交差し前記導入口から離間する第3の方向に前記屈曲室が膨出した膨出部と、
この膨出部側から前記吹出口部の上流の端部側に向かって湾曲する曲面状をなす案内面部とを備えた
ことを特徴とするダクト装置。
【請求項2】
案内面部の少なくとも一部は、吹出口部の上流側の端部を中心とする円弧に沿って形成された
ことを特徴とする請求項1記載のダクト装置。
【請求項3】
導入口には、ダクト本体部の内面と屈曲部の内面とを連結する傾斜案内面が設けられた
ことを特徴とする請求項1または2記載のダクト装置。
【請求項4】
ダクト本体部は、車両の内装材の裏面側に配置され、吹出口部は、風向調整装置を構成する
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載のダクト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−36140(P2006−36140A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222498(P2004−222498)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】