説明

ダナゾールを含む経真皮医薬組成物

本発明は、経真皮ダナゾール含有医薬組成物、例えばゲル等、ならびにその製造および使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダナゾール含有経真皮医薬組成物、例えばゲル等、ならびにそれを製造および使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、例えばダナゾール含有医薬組成物、例えばゲル等、ならびにそれを製造および使用する方法に関する。
【0003】
化合物ダナゾール、または(17α)−プレグナ−2,4−ジエン−20−イノ[2,3−d]イソキサゾール−17β−オールは、合成ステロイドエチステロンの誘導体、改変テストステロンである。下垂体ホルモンである卵胞刺激ホルモン(FSH)および黄体形成ホルモン(LH)のレベルを低下させるので、抗性腺刺激ホルモンとして分類される。
【0004】
ダナゾールは、例えば、商品名Danatrol(登録商標)およびDanocrine(登録商標)のもとで、経口投与用に商品化されている。この薬物の最初の適応症は、子宮内膜症の治療における使用のためであった。後に、ダナゾールはまた、乳房痛および女性化乳房症をはじめとする乳房の疾患の治療にも、皮膚障害の治療にも使用できることが実証された。しかし、ダナゾールを用いてこのような経口治療を受けている患者のコンプライアンスが低いことが観察されている(Wong A.Y.、Tang L.、 Fertil Steril 2004年;81巻6号、1522〜7頁)。実際に、典型的に処方される経口投与量(1日あたり100mg〜400mg)では、高いドロップアウト率が生じるが、その理由として最もありうるのが、有害な副作用、特に、顔の毛の成長、ざ瘡、体重増加、ふけおよび声が太くなる、などといったアンドロゲンの副作用が挙げられる。ダナゾールの全身投与は、健康に害のあるコレステロールレベルの危険性を増大させ得る。妊娠中または妊娠しようとしている女性は、出生異常を引き起こし得るので、この薬物を服用してはならない。血栓および脳卒中の症例が少数と、ならびに肝臓損傷の稀な症例が報告されている。
【0005】
ダナゾールは、実際、最初の肝臓通過時に顕著に代謝される。その上、その代謝産物は活性ではない。したがって、経口投与されたダナゾールの相当な量が、それらの最終標的に到達する前に不活性生成物に代謝される。
【0006】
FemmePharmaの文書WO2004/060322は、乳房の疾患および障害の治療のための、乳房または胸部への直接的な薬物の局所、または局部投与用製剤に関する。この文書には、一般的にプロピレングリコールの刺激および/または感作量であると考えられる95〜100%のプロピレングリコールを含有する製剤中にダナゾールを含む薬物製剤が開示されている。
【0007】
したがって、ダナゾールの非経口投与に適した医薬組成物に対する必要性は残っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、皮膚表面への局所投与用の医薬組成物を提供し、前記組成物は、
(i)治療上有効な量のダナゾール
(ii)少なくとも1種のモノアルコール
(iii)所望により、非刺激量および/または非感作量の少なくとも1種の浸透促進剤
(iv)所望により、少なくとも1種のゲル化剤
(v)所望により、少なくとも1種の保湿剤
(vi)水性賦形剤
を含む。
【0009】
一実施形態では、前記組成物は、
(i)0.01〜10%(w/w)のダナゾール
(ii)10〜90%(w/w)の少なくとも1種のモノアルコール
(iii)0〜10%(w/w)の少なくとも1種の浸透促進剤
(iv)0〜5%(w/w)の少なくとも1種のゲル化剤
(v)0〜30%(w/w)の少なくとも1種の保湿剤
(vi)100%(w/w)を満足させるだけの水
を含む。
【0010】
前記モノアルコールは、エタノールおよびイソプロパノールからなる群から選択できる。
【0011】
前記浸透促進剤は、ミリスチン酸イソプロピルおよびプロピレングリコールからなる群から選択できる。
【0012】
前記ゲル化剤は、ポリアクリル酸、セルロース誘導体およびそれらの混合物からなる群から選択できる。
【0013】
前記保湿剤は、グリセリンを含むことができる。
【0014】
本発明はまた、良性の乳房疾患、女性化乳房症、乳癌、乳房痛および高濃度乳腺組織を伴う状態から選択される乳房の障害を患っている、または発症する危険がある患者を治療するための、上記のおよび本明細書の他の場所に記載される医薬組成物を提供する。
【0015】
本発明はまた、そう痒症、紅斑、じんま疹および皮膚炎から選択される皮膚障害を患っている、または発症する危険がある患者を治療するための、上記のおよび本明細書の他の場所に記載される医薬組成物を提供する。
【0016】
本発明はまた、上記のおよび本明細書の他の場所に記載される医薬組成物の調製におけるダナゾールの使用を提供し、前記医薬組成物は、良性の乳房疾患、女性化乳房症、乳癌、乳房痛および高濃度乳腺組織を伴う状態から選択される乳房の障害を患っている、または発症する危険がある患者を治療するためのものである。
【0017】
本発明はまた、上記のおよび本明細書の他の場所に記載される医薬組成物の調製におけるダナゾールの使用を提供し、前記医薬組成物は、そう痒症、紅斑、じんま疹および皮膚炎から選択される皮膚障害を患っている、または発症する危険がある患者を治療するためのものである。
【0018】
本発明はまた、上記のおよび本明細書の他の場所に記載される医薬組成物を含有する、用量包装、単位用量包装または多数用量包装を提供する。
【0019】
本発明はまた。上記のおよび本明細書の他の場所に記載される医薬組成物を含有する、所望によりハンドポンプを備えた、ディスペンサーを提供する。
【0020】
本発明はまた、
(A)医薬組成物を含有するリザーバーで、
(i)治療上有効な量のダナゾール
(ii)少なくとも1種のモノアルコール
(iii)所望により、非刺激量および/または非感作量の少なくとも1種の浸透促進剤
(iv)所望により、少なくとも1種のゲル化剤
(v)所望により、少なくとも1種の保湿剤
を含むリザーバーと、
(B)局所塗布器
を含むデバイスを提供する。
【0021】
一実施形態では、上記および本明細書の他の場所に記載される医薬組成物を調製する方法を提供し、以下の混合物:
(i)少なくとも1種のモノアルコール
(ii)ダナゾール
(iii)水性賦形剤
(iv)所望により、非刺激量および/または非感作量の少なくとも1種の浸透促進剤
(v)所望により、少なくとも1種のゲル化剤
(vi)所望により、少なくとも1種の保湿剤
を含む混合物を調製するステップを含む方法を提供する。
【0022】
本発明は、治療上有効な量のダナゾールを、それを必要とする患者に投与する方法であって、前記患者の皮膚の表面に、上記のおよび本明細書の他の場所に記載される医薬組成物を局所投与するステップを含む方法を提供する。
【0023】
本発明は、乳房の障害を患っている、または発症する危険がある患者を治療する方法であって、上記のおよび本明細書の他の場所に記載される治療上有効な量の医薬組成物を、それを必要とする患者の皮膚の表面に局所投与するステップを含む方法を提供する。
【0024】
本発明はまた、皮膚障害を患っている、または発症する危険がある患者を治療する方法であって、上記のおよび本明細書の他の場所に記載される治療上有効な量の医薬組成物を、それを必要とする患者の皮膚の表面に局所投与するステップを含む方法も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示内容の目的上、特に断りのない限り、「1つの(a)」または「1つの(an)」とは、「1または複数の」を意味する。
【0026】
一態様に従って、本発明は、ダナゾールを含む医薬組成物を提供する。ある実施形態では、組成物は、経真皮または経皮送達に適している。
【0027】
経皮送達用の薬物を製剤することは困難で、予測不可能な技術である。特に、経皮的送達用のホルモン、ステロイドおよびステロイド様化合物の製剤は、例えば、各有効成分が経真皮における流束の点で異なった挙動をする傾向があるので細心の注意を要することが示されている。
【0028】
驚くべきことに、また予想外なことに、本明細書に記載される組成物は、実施例4に示されるように、フランツセルにおけるダナゾールの経真皮流束を測定するin vitro実験において良好な結果が得られることがわかった。以下でさらに詳細に記載されているように、ダナゾールの経真皮における流束についてコンピュータによる予測を実施した。ダナゾールがテストステロンに対して構造上の関係が密接であるため、テストステロンに対して行った同等の予測とこれらの予測とを比較した。(テストステロンはまた、経真皮適用に関して商業的に成功した薬剤テストステロンゲルが多く存在しているので、良好な対照化合物である。)この分析の結果から、ダナゾールの浸透度(流束)は、テストステロンより、およそ10倍低いということが予測された。ダナゾールの予測される浸透度が低いことを考慮すると、本明細書に記載される組成物が、テストステロンを用いて観察されたものに匹敵する流束を含む満足のいく流束を達成することは、驚くべき、予想外のことであった。
【0029】
一実施形態では、医薬組成物は、
(i)治療上有効な量のダナゾール
(ii)少なくとも1種のモノアルコール
(iii)所望により、非刺激量および/または非感作量の少なくとも1種の浸透促進剤
(iv)所望により、少なくとも1種のゲル化剤
(v)所望により、少なくとも1種の保湿剤
(vi)水性賦形剤
を含む。
【0030】
ある実施形態では、本発明の組成物は、パッチ型のものや閉鎖系のものとは対照的に、投与のための接着剤、マトリックスまたは皮膜を全く必要としない。このような実施形態は、刺激する可能性のある成分の使用を避けるなど、接着剤を必要とする既知組成物を上回る明確な利点を提供する。
【0031】
本発明の組成物はさらなる利点を提供し、皮膚に刺激を与えず、従って限られた副作用しかもたらさない利点を含む。本発明の組成物によって、ダナゾールの局部的、非全身送達が可能となり、薬物の局部効果をもたらす。これによって、胃腸刺激作用またはアンドロゲン活性に起因する効果、例えば、ざ瘡、油性の肌または頭髪、多毛、体重増加、声が太くなること、およびアンドロゲン性脱毛症などの全身性副作用が避けられる。
【0032】
これらおよび他の利点の結果として、本組成物は、患者のコンプライアンスを容易にする。
【0033】
組成物
上記のように、ある態様では、本発明の医薬組成物は:
(i)治療上有効な量のダナゾール
(ii)少なくとも1種のモノアルコール
(iii)所望により、非刺激量および/または非感作量の少なくとも1種の浸透促進剤
(iv)所望により、少なくとも1種のゲル化剤
(v)所望により、少なくとも1種の保湿剤
(vi)水性賦形剤
を含む。
【0034】
ある実施形態では、組成物は、指定の成分を含む。ある実施形態では、組成物は、指定された成分からなる。他の実施形態では、組成物は本質的に指定された成分からなる。本明細書において、指定の成分から「本質的に〜からなる」とは、組成物が、少なくとも指定の成分を含み、かつ本発明の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響しないその他の成分も含み得ることを意味する。
【0035】
上記のように、本発明の組成物は、経真皮投与に適している。例えば、組成物は直接非閉鎖経真皮/経皮適用の用途で、皮膚の表面に直接的に適用できる。本明細書において、用語「直接」/「間接」および「非閉鎖」とは、本発明の組成物が、投与を達成するためにマトリックスまたは皮膜を必要とせず、したがって、パッチ、絆創膏、テープ系などによって投薬される必要がないということを表している。しかし、本発明の組成物は、パッチ、絆創膏、テープ系などを介して投薬される場合もありうる。
【0036】
ある実施形態では、投与される組成物の量は、治療上有効な量(例えば、1日の単回用量)のダナゾールを提供する、規定された有限の量である。
【0037】
本明細書において、語句「治療上有効な量」とは、所与の患者において、特定の薬理学的反応を達成するために薬物が投与される、その投与量を意味する。前記投与量が、当業者によっては治療上有効な量であるとみなされるとしても、特定の例において、特定の被験体に投与される薬物の「治療上有効な量」が、標的状態/疾患の治療において必ずしも有効ではない場合もありうる、ということは強調しておく。当業者ならば、「治療上有効な量」は、患者ごとに、または状態ごとに変わり得るものであり、日常的な手段によって所与の患者/状態のための「治療上有効な量」を決定できるということは認識されよう。
【0038】
ある実施形態では、組成物は、規定の表面積上の皮膚表面に投与される。規定の表面積への、規定された有限の量の組成物を投与することによって、所与の表面積に適用される有効主成分、すなわちダナゾールの量の制御が可能になり、つまり局部濃度の制御が可能となる。局部濃度を制御すること(例えば、制限すること)によって、局部におけるアンドロゲンの効果(ざ瘡、油性肌を含むが、それだけに限らず)などの局部における副作用を最小にすることができる。
【0039】
ダナゾール
上記のように、本発明の組成物は、治療上有効な量のダナゾールを含む。
【0040】
本明細書において、用語「ダナゾール」とは、(17α)−プレグナ−2,4−ジエン−20−イノ[2,3−d]イソキサゾール−17β−オールを指す。当業者ならば、ダナゾールの製薬上許容される活性を持った鏡像異性体、異性体、互変異性体、塩、キレート、エステル、アミドおよび誘導体も使用できるということは理解するであろう。
【0041】
本発明の組成物は典型的に、0.01〜10%(w/w)のダナゾール、例えば、0.05〜5%(w/w)、例えば、0.5〜1.5%(w/w)のダナゾールを含む。本発明の組成物は典型的には、0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.5%または2%(w/w)のダナゾールを含むことができる。
【0042】
特に明記しない限り、パーセンテージ(%)とは、組成物の総重量に基づいた重量による量(w/w)を指す。
【0043】
モノアルコール
上記のように、本発明の組成物は、少なくとも1種のモノアルコールを含む。本明細書において、用語「モノアルコール」とは、少なくとも1つの炭素原子およびアルコール基−OHを1つのみ含有する有機分子を指す。
【0044】
例示的なモノアルコールとして、C2−C6モノアルコールがあり、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノールまたはそれらの混合物といったC2−C4アルコールを挙げることができる。本発明の組成物に適した例示的なモノアルコールとして、エタノールおよびイソプロパノールがある。
【0045】
このようなモノアルコールの存在は、ダナゾールの溶媒として作用し得る。典型的には、組成物中のダナゾールの量が多いほど、前記ダナゾールを可溶化するためにより多くのモノアルコールが使用されうる。
【0046】
このようなモノアルコールの存在はまた、皮膚上での組成物の乾燥を加速する一因となり得る。
【0047】
モノアルコールは典型的に、総組成物の10%から90%(w/w)の間の量で使用でき、例えば、総組成物の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%または90%の量で使用することができる。
【0048】
浸透促進剤
「浸透促進剤」は、皮膚を通る薬物の送達を加速することが知られている薬剤である。これらの薬剤はまた、アクセレラント、アジュバント、吸収促進剤と呼ばれることもあり、本明細書では、まとめて「促進剤」と呼ばれる。このクラスの薬剤には多様な作用機構を保持しているものがあり、薬物の溶解度や拡散度を改善する機能を有するもの、また、皮膚を柔らかくしたり、皮膚の透過性を改善したり、浸透補助物または毛包開口薬として作用したり、皮膚の状態もしくは角質層の細胞間脂質二重膜の状態や流動性を変えたりしながら、角質層が水分を保持するようにその能力を変更するものがある。
【0049】
一実施形態では、本発明の浸透促進剤は、脂肪酸の機能性誘導体であり、これは脂肪酸の立体異性変性体(isosteric modifications)、または脂肪酸もしくはその立体異性変性体のカルボン酸官能基の非酸性誘導体を含む。ある実施形態では、脂肪酸の機能性誘導体は、−COOH基が、アルコール、ポリオール、アミドおよびそれらの置換誘導体などのその機能性誘導体で置換されている不飽和アルカン酸である。用語「脂肪酸」とは、4〜24個の炭素原子を有する脂肪酸を意味する。浸透促進剤の限定されない例として、イソステアリン酸、オクタン酸およびオレイン酸などのC8−C22脂肪酸;オレイルアルコールおよびラウリルアルコールなどのC8−C22脂肪アルコール;オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチルおよびラウリン酸メチルなどのC8−C22脂肪酸の低級アルキルエステル;アジピン酸ジイソプロピルなどのC6−C8二酸のジ(低級)アルキルエステル;モノラウリン酸グリセリルなどのC8−C22脂肪酸のモノグリセリド;テトラヒドロフルフリルアルコールポリエチレングリコールエーテル;ポリエチレングリコール、プロピレングリコール;2−(2−エトキシエトキシ)エタノール;ジエチレングリコールモノメチルエーテル;ポリエチレンオキシドのアルキルアリールエーテル;ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル;ポリエチレンオキシドジメチルエーテル;ジメチルスルホキシド;グリセロール;酢酸エチル;アセト酢酸エステル;Nアルキルピロリドン;およびテルペンが挙げられる。
【0050】
適した浸透促進剤として、尿素、オレイン酸、ミリスチン酸イソプロピルおよびプロピレングリコールが挙げられる。
【0051】
本明細書において、表現「非刺激量および/または非感作量の少なくとも1種の浸透促進剤」とは、ヒト皮膚が良い耐容性を示す、すなわち、皮膚科学的に許容されると当業者が考える量を指す。当業者ならば、周知の一般知識を使用して、浸透促進剤の非刺激量および/または非感作量を決定できる。ある実施形態では、非刺激量および/または非感作量は、検出可能な、または持続的な皮膚の有害反応(例えば、そう痒、発赤、灼熱感)をもたらさない、または患者および医療提供者によって一般的に許容されると思われる最小の反応しかもたらさない。
【0052】
浸透促進剤は典型的に、総組成物の10%(w/w)を超えない量、例えば、総組成物の9%、8%、7%、6%以下、例えば、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%(w/w)以下で使用することができる。
【0053】
本発明の一実施形態では、浸透促進剤は、総組成物の少なくとも0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.1%、0.2%(w/w)の量で使用することができる。
【0054】
本発明の一実施形態では、浸透促進剤は、組成物の0.01%から10%(w/w)の間の量で、例えば、総組成物の0.02%から7%の間、0.05%から5%の間、0.1%から1%(w/w)の間の量で使用することができる。
【0055】
ゲル化剤
上記のように、本発明の組成物は、所望により、少なくとも1種のゲル化剤を含み得る。
【0056】
本明細書において用語「ゲル化剤」とは、所望により、特定の溶媒、例えば、水と接触するとゲルを形成する能力を有するポリマーの性質を持つ化合物を特定する。ゲル化剤(例えば、増粘剤)は、当技術分野で公知である。ゲル化剤は、本発明の医薬組成物の粘度を増大するよう作用することができる。例えば、ゲル化剤は、皮膚上への組成物の容易な塗布を可能にするのに十分な粘度を有する組成物を提供することができる。ゲル化剤は、追加的に、または選択的に可溶化剤として作用し得る。
【0057】
ゲル化剤の例として、アクリル酸ベースのポリマー(ポリアクリル酸ポリマー、例えば、Noveon、Ohio製CARBOPOL(登録商標)を含む)などのアニオン性ポリマー、セルロース誘導体、ポロキサマーおよびポロキサミン、より正確には、アクリル酸ベースのポリマー、例えば、Carbopol(登録商標)980または940、981または941、1342または1382、5984、934または934P(Carbopol(登録商標)は通常、アリルスクロースまたはアリルペンタエリスリトールで架橋されたアクリル酸のポリマーである)、Ultrez、Pemulen TR1(登録商標)またはTR2(登録商標)、Synthalen CRなどであるカルボマー;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(Klucel(登録商標))、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどといったセルロース誘導体、およびそれらの混合物;Lutrol(登録商標)等級68もしくは127、ポロキサミンなどのポロキサマーまたはポリエチレン−ポリプロピレン共重合体およびキトサン、デキストラン、ペクチンおよび天然ゴムなどのその他のゲル化剤が挙げられる。これらのゲル化剤のうち、任意の1種または複数を単独で使用しても、本発明の医薬組成物の中で組み合わせて使用してもよい。ある態様では、ゲル化剤は、ポリアクリル酸、セルロース誘導体およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0058】
ゲル化剤は典型的に、総組成物の5%(w/w)を超えない、例えば、総組成物の4%、3%、2%、1%、0.5%(w/w)以下の量で使用することができる。
【0059】
本発明の一実施形態では、ゲル化剤は、総組成物量の少なくとも0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.1%、0.2%(w/w)の量で使用することができる。
【0060】
本発明の一実施形態では、ゲル化剤は、組成物の0.01%から5%(w/w)の間の量、例えば、総組成物の0.02%から3%の間、0.05%から2%の間、0.1%から1%(w/w)の間の量で使用することができる。
【0061】
保湿剤
上記のように、本発明の組成物は、所望により、少なくとも1種の保湿剤を含むことができる。
【0062】
本明細書において「保湿剤」とは、皮膚に水分を補給する薬剤を特定する。保湿剤は、当技術分野で公知である。保湿剤は、単独または組み合わせて使用してよく、例えば、2種または3種(またはそれ以上)の異なる保湿剤の組合せを使用してよい。ある実施形態では、保湿剤は、皮膚軟化薬および/または湿潤剤から選択される。
【0063】
本明細書において「皮膚軟化薬」とは、皮膚を軟化し、皮膚の湿潤を改善する傾向のある物質を特定する。皮膚軟化薬は、当技術分野で周知であり、鉱油、ワセリン、ポリデセン、イソヘキサデカン、脂肪酸および10〜30個の炭素原子を有するアルコール;ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リシノール酸、アラキジン酸、ベヘン酸およびエルカ酸、ならびにそれらのアルコール;トリグリセリドエステル、ヒマシ油、ココアバター、ベニバナ油、ヒマワリ油、ホホバ油、綿実油、コーンオイル、オリーブオイル、タラ肝油、アーモンドオイル、アボカドオイル、パームオイル、ゴマ油、スクアレン、キクイオイル、大豆油、アセトグリセリドエステル、エトキシ化グリセリド、エトキシ化モノステアリン酸グリセリル、10〜20個の炭素原子を有する脂肪酸のアルキルエステル、ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸イソヘキシル、パルミチン酸イソヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、オレイン酸イソデシル、ステアリン酸ヘキサデシル、ステアリン酸デシル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソヘキシル、セバシン酸ジイソプロピル、乳酸ラウリル乳酸ミリスチル、乳酸アセチル;10〜20個の炭素原子を有する脂肪酸のアルケニルエステル、ミリスチン酸オレイル、ステアリン酸オレイル、オレイン酸オレイル、エトキシ化脂肪アルコールの脂肪エステル、多価アルコールエステル、エチレングリコールモノおよびジ脂肪酸エステル、ジエチレングリコールモノ−およびジ−脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、蝋エステル、蜜蝋、鯨ろう、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸ステアリル、シリコーンオイル、ジメチコン、シクロメチコンが挙げられる。ある実施形態では、組成物は1種または複数の、室温で液体である皮膚軟化薬を含む。
【0064】
本明細書において「湿潤剤」とは、大気から水を吸収する吸湿性物質を特定する。本発明において使用するための適した湿潤剤として、グリセリン、プロピレングリコール、三酢酸グリセリル、ポリオール、ソルビトール、マルチトール、高分子ポリオール、ポリデキストロース、キラヤ、乳酸および尿素が挙げることができる。
【0065】
本発明において使用するための適した保湿剤は、アミン、アルコール、グリコール、アミド、スルホキシドおよびピロリドンを含むことができる。ある態様では、保湿剤は、乳酸、グリセリン、プロピレングリコールおよび尿素からなる群から選択される。
【0066】
典型的に、保湿剤は総組成物の30%(w/w)を超えない、例えば、総組成物の20%以下、例えば、15%、10%、8%、7%、5%(w/w)以下の量で使用することができる。
【0067】
本発明の一実施形態では、保湿剤は、総組成物の少なくとも0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.1%、0.2%、0.5%(w/w)の量で使用することができる。
【0068】
本発明の一実施形態では、保湿剤は、組成物の0.01%から30%(w/w)の量、例えば、総組成物の0.05%から20%の間、0.1%から10%の間、0.5%から5%(w/w)の間の量で使用することができる。
【0069】
一実施形態では、組成物は、0.01%から30%(w/w)の間のグリセリン、例えば、0.05%から20%の間、0.1%から10%の間、0.5%から5%(w/w)の間のグリセリンを含む。
【0070】
水性賦形剤
上記のように、本発明の組成物は、水性賦形剤を含む。
【0071】
水性賦形剤は、当技術分野で公知である。本発明の一態様によれば、水性賦形剤は、水に加えて、pHの調整において有用な成分、例えば、少なくとも1種の緩衝剤を含む。緩衝剤、特に、製薬上許容される緩衝剤は、当技術分野で公知である。ある態様では、前記水性賦形剤は、少なくとも1種のバッファーを含み、典型的にはクエン酸バッファー、例えば、クエン酸ナトリウムおよび/またはクエン酸カリウム;トリスバッファー、例えば、トリスマレエート;ソレンセン型バッファー、二塩基性または一塩基性ホスフェート、例えば、リン酸水素二ナトリウムまたはリン酸二水素ナトリウムを含むリン酸バッファーからなる群から選択される。
【0072】
別の態様では、本発明の医薬組成物は、塩基をさらに含む。前記塩基は、例えば、製薬上許容されることが有利であり、典型的にはトリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、アルギニン、アミノメチルプロパノールまたはトロメタミンおよびそれらの混合物からなる群から選択される。前記医薬組成物のpHが、経真皮投与にとって最適化されていない場合、例えば、ゲル化剤が少なくとも1種のアクリル酸ベースのポリマーを含む場合には、塩基の使用は、皮膚表面上への局所投与のための前記医薬組成物の中和に貢献する。さらに、前記塩基(中和剤)の使用は、電荷の中和およびポリマー塩の形成の際にポリマー鎖が最適な膨張をすることを可能にし得る。前記ゲル化剤がアクリル酸ベースのポリマーを含む実施形態では、塩基は典型的にトリエタノールアミンを含む。塩基の使用はまた、最適粘度が達成されることも可能にし得る。当業者ならば、組成物において使用するための適した量の塩基を選択する方法は承知し、中に存在するゲル化剤の性質および組成物のアルコール含量に基づいて塩基を選択できるであろう。例えば、カルボマーを用いる場合、および/または高アルコール含量がある場合は、塩基として、トロメタミンおよび/またはNaOHを、組成物において所望の最終pHに達するよう選択された量で使用できる。
【0073】
さらなる任意成分
本発明の医薬組成物は、所望により、塩(単数または複数)、安定剤(単数または複数)、パラベン化合物などの抗菌剤(単数または複数)、香料(単数または複数)および/または噴射剤(単数または複数)をはじめとするその他の通常の医薬品添加物を含むことができる。
【0074】
選択された成分の性質に応じて、界面活性剤を含むことが有利であり得る。界面活性剤は、当技術分野で公知であり、当業者ならば、本発明の使用に適した界面活性剤、例えば皮膚科学的に、および/または美容業上許容されているような界面活性剤を選択することができる。
【0075】
その例として、非イオン性界面活性剤、例えば:
−エステル、例えば、
○モノ、ジおよびトリグリセリドと、ポリエチレングリコールおよび脂肪酸のモノおよびジエステルとの混合物であるLabrasol(登録商標)をはじめとするポリエチレングリコールおよび脂肪酸のエステル;
○ラウリン酸スクロースとHLB16;パルミチン酸スクロースとHLB16などのサッカロースおよび脂肪酸のエステル;
○Tween(登録商標)20、60および/または80をはじめとするTween(登録商標)化合物などの、ソルビタンポリオキシエチレンのエステル;
−エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの共重合体、例えば、Pluronics(登録商標)などのアルキレンオキシド共重合体が挙げられる。
【0076】
さらなる例として、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)などといった陰イオン性界面活性剤およびセトリミド(アルキルトリメチルアンモニウムブロミド)などといった陽イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0077】
典型的に界面活性剤は、本発明の組成物において、総組成物の5%(w/w)を超えない、例えば、4%、3%、2%、1%、0.5%以下の量で使用することができる。
【0078】
本発明の一実施形態では、界面活性剤は、総組成物の少なくとも0.01%、例えば、少なくとも0.02%、0.05%、0.1%の量で使用することができる。
【0079】
例示的組成物
以下に、例示的で限定されない組成物を提供する。上記にあるように、パーセンテージ(%)とは、組成物の総重量に基づいた重量による量(w/w)を指す。組成物中の種々の化合物についての合計は、最大、総組成物の100%(w/w)まで加算する。
【0080】
ある態様では、本発明は、皮膚表面への局所投与のための医薬組成物であって:
(i)0.01〜10%(w/w)のダナゾール
(ii)10〜90%(w/w)の少なくとも1種のモノアルコール、例えば、エタノールまたはイソプロパノール
(iii)0〜10%(w/w)の少なくとも1種の浸透促進剤、例えば、ミリスチン酸イソプロピルまたはプロピレングリコール
(iv)0〜5%(w/w)の少なくとも1種のゲル化剤、例えば、ポリアクリル酸、セルロース誘導体またはそれらの混合物
(v)0〜30%(w/w)の少なくとも1種の保湿剤、例えば、グリセリン
(vi)100%(w/w)を満足させるだけの水
を含む医薬組成物に関する。
【0081】
別の態様では、本発明は、皮膚表面への局所投与のための医薬組成物であって、前記組成物は:
(i)0.02〜5%(w/w)のダナゾール
(ii)20〜80%(w/w)の少なくとも1種のモノアルコール、例えば、エタノールまたはイソプロパノール
(iii)0〜8%(w/w)、例えば、0.01〜7%(w/w)および例えば、0.05%〜5%(w/w)の少なくとも1種の浸透促進剤、例えば、ミリスチン酸イソプロピルまたはプロピレングリコール
(iv)0〜4%(w/w)、例えば、0.01〜3%(w/w)、例えば、0.05〜2%(w/w)の、少なくとも1種のゲル化剤、例えば、ポリアクリル酸、セルロース誘導体またはそれらの混合物
(v)0〜20%(w/w)、例えば、0.01〜10%、および例えば、0.05〜5%(w/w)の少なくとも1種の保湿剤、例えば、グリセリン
(vi)100%(w/w)を満足させるだけの水
を含む医薬組成物に関する。
【0082】
別の態様では、本発明は、皮膚表面への局所投与のための医薬組成物であって、前記組成物は:
(i)0.05〜2.5%(w/w)のダナゾール
(ii)30〜70%(w/w)の少なくとも1種のモノアルコール、例えば、エタノールまたはイソプロパノール
(iii)0〜5%(w/w)、例えば、0.01〜4%、および例えば、0.05〜3%(w/w)の少なくとも1種の浸透促進剤、例えば、ミリスチン酸イソプロピルまたはプロピレングリコール
(iv)0〜2%(w/w)、例えば、0.01〜1.5%、および例えば、0.05〜1%の少なくとも1種のゲル化剤、例えば、ポリアクリル酸、セルロース誘導体またはそれらの混合物
(v)0〜10%(w/w)、例えば、0.01〜5%、および例えば、0.05〜3%(w/w)の少なくとも1種の保湿剤、例えば、グリセリン
(vi)100%(w/w)を満足させるだけの水
を含む医薬組成物に関する。
【0083】
別の態様では、本発明は、皮膚表面への局所投与のための医薬組成物であって、前記組成物は:
(i)1%(w/w)のダナゾール
(ii)50〜70%(w/w)の少なくとも1種のモノアルコール、例えば、エタノールまたはイソプロパノール
(iii)0〜1%(w/w)、例えば、0.01〜0.7%、および例えば、0.05〜0.5%(w/w)の少なくとも1種の浸透促進剤、例えば、ミリスチン酸イソプロピルまたはプロピレングリコール
(iv)0〜1%(w/w)、例えば、0.01〜0.7%、および例えば、0.05〜0.5%(w/w)の少なくとも1種のゲル化剤、例えば、ポリアクリル酸、セルロース誘導体またはそれらの混合物
(v)0〜5%(w/w)、例えば、0.01〜4%、および例えば、0.05〜3%(w/w)の少なくとも1種の保湿剤、例えば、グリセリン
(vi)100%(w/w)を満足させるだけの水
を含む医薬組成物に関する。
【0084】
ある実施形態では、本発明の組成物は、
−1%(w/w)のダナゾール
−0.9%(w/w)のCarbopol980(0.1NのNaOHで中和された)
−0.5%(w/w)のミリスチン酸イソプロピル
−67%(w/w)のエタノール
−100%(w/w)を満足させるだけの水
を含む。
【0085】
ある実施形態では、本発明の組成物は、
−0.84%(w/w)のダナゾール
−67%(w/w)のエタノール
−100%(w/w)を満足させるだけの水
を含む。
【0086】
ある実施形態では、本発明の組成物は、
−2%(w/w)のダナゾール
−67%(w/w)のエタノール
−3%(w/w)のセトリミド
−100%(w/w)を満足させるだけの水
を含む。
【0087】
例示的投与様式
本組成物は、組成物を皮膚の表面に塗布するのに、有効な任意の手段によって投与することができる。例えば本組成物は、スポイトまたはピペットなどの塗布器、綿棒、ブラシ、布、パッド、スポンジなどの塗布器、または紙、ボール紙、または集められ、接着され、もしくは固定された繊維をはじめとする材料を含む積層材を含む固相支持体など、任意のその他の塗布器を用いて、手作業によって適用してよい。あるいは、組成物は、加圧または非加圧容器からエアゾールまたは非エアゾールスプレーとして適用してもよい。ある実施形態では、組成物は、定量塗布器から、または組成物の単回用量を含む塗布器から定まった量で投与される。
【0088】
デバイス
本発明の一態様は、組成物を投与するためのデバイスを提供する。ある実施形態では、デバイスは、組成物を含有するリザーバーおよび組成物を皮膚の表面に適用するための局所塗布器を含む。
【0089】
ある実施形態では、デバイスは、本発明の組成物を光がもたらす有害な影響から保護する不透明なデバイスである。実際、ダナゾールは、長期の光に対する露光の際に劣化する光感受性化合物である。
【0090】
リザーバーは、組成物を含有するのに適した任意の形状、および任意の材料のものであり得る。例えばリザーバーは、剛体であっても、柔軟性があるものであってもよく、単一構造(成形物など)であっても、例えば、積層法、ヒートシールすること、接着すること、溶接すること、リベット打ちなどによって一緒に固定された種々の断片から形成されるものであってもよい。例えば、リザーバーは、丸めた壁、その周辺で近くに結合されている実質的に平行な2つの壁(ここで壁は、例えば、熱形成されたブリスターによって形成される柔軟性がある/変形可能なものであってもよく、または剛体であってもよい)、もしくは底壁および円筒壁、または組成物を含有するのに適した任意のその他の形状を含むことができる。ある実施形態では、リザーバーは、バッグ、ポーチ、サシェ、ブリスター、アンプル、ピペット、バイアル、キャニスターまたは瓶を含む。ある実施形態では、リザーバーは、特許出願WO9527569、WO9615045またはUS5630531に記載されるもののように、変形させると組成物の流動を起こさせるように適応している変形可能な壁を含む。変形可能な気密性リザーバーは、組成物の漏出に対して良好な安全性を提供し、任意の大気による接触から保護することによって、組成物を保存に関する改善を可能にする。ある実施形態では、リザーバーは、単回用量の組成物を含有するよう適応している。
【0091】
本明細書において「局所塗布器」とは、組成物を皮膚の表面に塗布するのに適した任意の形状、および任意の材料の塗布器を特定する。局所塗布器は、リザーバーおよび局所塗布器が単一構造を含むようにリザーバーとともに一体形成されたものであり得る。または、局所塗布器は、リザーバーから取り外し可能なものであり得る、またはリザーバーとは別個に提供され得る。
【0092】
例えば、局所塗布器は、スポイト、ピペット、綿棒、ブラシ、布、パッド、スポンジ、または紙、ボール紙または集められ、接着され、もしくはそうでなければ固定された繊維をはじめとする材料を含む積層材を含む支持体など、任意の固相支持体を含むことができる。ある実施形態では、塗布器は、組成物を予め充填されていてもよく、例えば、塗布器が単位用量の組成物などの組成物によって含浸されていてもよい。他の実施形態では、使用の際に組成物を塗布器に充填する。
【0093】
あるいは、局所塗布器は、ハンドポンプなどのエアゾールまたは非エアゾールスプレーデバイスを含むことができる。
【0094】
他の実施形態では、局所塗布器は、製剤がそれを通って投与されるのを可能にする開口部である。ある実施形態では、開口部は、開閉するために分離交換可能なデバイス、例えばキャップ、ストッパー、またはプラグのようなもので、例えば挿入、スクリュー、擦り合わせ、はめこみ、またその他の方法によって開口部の内部、または表面に設置されうるデバイスが提供されている。もう1つの実施形態では、開口部を開ける際に取り外し可能で使い捨て可能なデバイス、例えば開口部を覆うにあたって取り外し可能、分割可能、壊れやすい、はがすことが出来る、または引き裂くことが出来るようなデバイスが、開口部に提供されている。他の実施形態では、開口部は、定量バルブなどのノズルまたはバルブとともに提供される。
【0095】
ある実施形態では、局所塗布器は、定量の組成物、例えばその組成物について治療上有効な単位用量を投薬するのに適している。ある実施形態では、局所塗布器はシリンジではなく、デバイスは、静脈内投与のためのシリンジを含まない。
【0096】
ある実施形態では、デバイスは単一のリザーバーを含む。他の実施形態では、デバイスは2個以上のリザーバーを含有し、各リザーバーは、単回用量または任意の量の組成物を含有し得る。ある実施形態では、デバイスは、2つ以上のリザーバーから組成物を適用するための単一の塗布器を含む。他の実施形態では、デバイスは、各リザーバーから組成物を適用するための1つの塗布器を含む。
【0097】
ある実施形態では本発明は、用量パッケージ、単位用量パッケージまたは多数用量パッケージなどにおける、医薬組成物の用量、単位用量、または多数用量を提供する。ある実施形態では、パッケージングは、投与計画または適用のスケジュール、例えば、毎日、毎週または週に2回の投与といった計画を反映する。医薬組成物のこのようなパッケージングによって、治療上有効な量といった組成物の量についての正確な適用が容易になることは有利である。
【0098】
ある実施形態によれば、組成物、デバイスまたは包装は、本明細書に記載される方法に従って使用説明書と共に提供される。
【0099】
治療法
本発明はまた、乳房の障害を患っている、または発症する危険がある患者を治療する方法であって、本発明の医薬組成物の治療上有効な量を投与することを含む方法を提供する。本発明はまた、皮膚障害を患っている、または発症する危険がある患者を治療する方法であって、本発明の医薬組成物の治療上有効な量を投与することを含む方法を提供する。
【0100】
本明細書において、用語「治療する」または「治療すること」または「治療」とは、ある状態、障害または疾患を患っている、または発症する危険がある哺乳類被験体への治療上有効な量の本発明による医薬組成物の投与を指す。状態、障害または疾患を起こしやすい可能性があるが、まだ状態、障害または疾患を有すると診断されていない患者において、本発明のいくつかの態様に従って投与の結果、その状態、障害または疾患が臨床上診断可能な程度に生じることを防ぐことができる。その他の態様に従って投与の結果、状態、障害もしくは疾患が阻害することができ、例えば、状態、障害もしくは疾患の発生の抑制、軽減、もしくは退行が可能であり、または例えば疾患もしくは障害によって引き起こされる状態の阻止、例えば、疾患もしくは障害の症状が停止もしくは低減が可能である。任意のこのような結果は、患者における所望の治療効果の達成を構成することができる。
【0101】
一実施形態では、投与は、本発明の組成物の治療上有効な量を、それを必要とする患者の皮膚の表面上に適用することによって実施される。ある実施形態では、治療される患者は、ヒトなどの哺乳類である。患者は、男性であっても、女性であってもよい。
【0102】
ある実施形態では、投与は、組成物を患者の皮膚中に擦り込むことをさらに含む。この擦り込みは、例えば組成物が患者の皮膚中に実質的に完全に浸透するよう、選択された表面積上に組成物を優しく擦り込むことを含むことができる。
【0103】
投与は、当業者によって決定され得る任意の適した投与計画を従うことができる。例えば一態様では、本発明の方法は毎日1回の投与を含む。別の態様では、本方法は1週間に2回、または1週間に1回の投与を含む。他の適した計画は、本発明の範囲内に含まれる。
【0104】
本発明はまた、乳房の障害を患っている、または発症する危険がある患者を治療するための医薬を製造するための上記の組成物のうち、1種の使用に関する。本発明はまた、皮膚障害を患っている、または発症する危険がある患者を治療するための医薬を製造するための上記の組成物のうち、1種の使用に関する。
【0105】
特に、本発明の医薬組成物、ゲル、包装および容器は、以下にとって有用である:
−乳房の障害を患っている、または発症する危険がある患者を治療すること、例えば:
−高濃度乳腺組織を伴う状態。高濃度乳腺組織は、乳癌の危険の前兆であり、マンモグラフィの感受性を損なう。これは、癌検出および診断の主要な問題である。前記の高濃度乳腺組織は、拡散性または結節性であり得る。
【0106】
−良性の乳房疾患。良性の乳房の疾患とは、通常、乳房組織における一群のよく見られる非悪性の異常を指す。これらの異常は、明確に定義された組織学的特徴を有する多数の病変を含み、増殖性または非増殖性として分類できる。本方法によって治療可能な例示的な良性の乳房疾患として、腺疾患、嚢胞、管拡張症、線維腺腫、繊維症、過形成、異形成およびその他の線維嚢胞性の変化が挙げられる。これらの疾患の各々は、その有病率のために「変化」または「状態」と呼ばれることが多く、明確に定義された組織学的および臨床的特徴を有する。「腺疾患」とは、乳房の全身性の腺疾患を指し、典型的には通常よりも多くの腺を含有する乳房小葉の拡大を含む。「硬化性腺疾患」または「線維化性腺疾患」では、拡大した小葉が瘢痕様線維組織によって歪められる。「嚢胞」は、流体または半固体物質が詰まっている異常な嚢であり、内面が乳房上皮細胞によって覆われており、小葉構造から発生する。それらは、乳房の腺の内側における過剰な流体として始まるが、周囲の乳房組織を引き伸ばす規模まで成長し、疼痛を引き起こす場合がある。「線維性嚢胞」は、顕著な量の線維性結合組織によって取り囲まれた、またはその内部にある嚢胞性病変である。「管拡張症」とは、脂質および細胞残屑による乳管の拡張を指す。管の破裂は、顆粒球および形質細胞による浸潤を誘導する。「線維腺腫」とは、腺上皮に由来する良性腫瘍を指し、増殖性線維芽細胞の顕著な間質および結合組織を含む。「線維症」とは単純に、乳房における線維組織が目立つことを指す。「過形成」とは、細胞の過剰増殖を指し、数層の細胞が基底膜に並ぶが、腫瘍形成は伴わない。過形成は、乳房組織の容積を増大させる。「上皮の過形成」では、乳管および小葉に並んでいる細胞が関与しており、用語「管の過形成」および「小葉の過形成」のもととなっている。過形成は、組織学的判定に基づいて、「通常」または「非定型」と特徴付けることができる。「異形成」とは、ある種類の分化組織が、別の種類の分化組織に変わる現象を指す。異形成は、環境変化に起因することが多く、細胞がより良好に変化に耐えることを可能にする。
【0107】
−女性化乳房症。女性化乳房症は、よくある臨床状態であり、根底にある障害に対して二次的に症状が見つかることが多く、少年および成人男性における乳房組織の良性の、時には、有痛性の増殖を表す;
−乳癌、特に非侵襲性乳癌;
−乳房痛。乳房痛(mastalgia)はまた、「乳房痛(mastodynia)」または乳房痛(breast pain)とも呼ばれ、女性が一般開業医に相談する最もよく見られる乳房の問題を構成する。その重篤度は多様であるが、乳房痛は、長期および激しいものであり、通常の日常活動を干渉し、時には苦しんでいる個人を不具にすることさえあり得る。乳房痛は、疼痛の一般的な発生源に従って3種に分類できる:(1)周期性の乳房疼痛、(2)非周期性の乳房疼痛および(3)乳房外疼痛。周期性乳房痛は、月経周期の黄体期の間におけるエストロゲン依存性血管変化によって引き起こされる生理的乳房拡大に起因し、閉経前の女性の大部分に影響を及ぼす。周期性乳房痛はまた、エストロゲン補充療法を受けている閉経後女性においても再発し得、用量依存効果を有する。「非周期性乳房痛」は、その名前が示唆するように、月経周期と関連しない乳房における疼痛を指す。硬化性腺疾患、ティーツェ症候群および稀に、乳癌をはじめとするいくつかの状態が、非周期性乳房痛を引き起こす。最後に、乳房外乳房痛は、例えば、患者が乳房の下にある筋肉または肋骨からの疼痛を感じる時に起こるように、その他の発生源から乳房へ投影されている乳房痛を含む。
【0108】
−皮膚障害を患っている、または発症する危険がある患者の治療、例えば:
−そう痒症、特に、コリン作動性そう痒症。そう痒症またはそう痒は、薬物反応、食物アレルギー、腎臓または肝臓疾患、癌、寄生虫、加齢または乾燥肌、ツタウルシおよび未知の理由などによる接触皮膚反応に起因し得る。コリン作動性そう痒症では、症状は汗によって引き起こされる。
【0109】
−毛細血管鬱血によって引き起こされる皮膚の発赤である、紅斑。
【0110】
−じんま疹。じんま疹は一般的にアレルギー反応によって引き起こされ、隆起した赤色の皮膚膨疹(みみず腫れ)を特徴とする。また、蕁麻疹(nettle rash)または皮膚的灼熱感(uredo)としても知られている。膨疹は、大きさが、直径約5mm(0.2インチ)から大皿の大きさまで変化し得る;通常、ひどく痒く、ヒリヒリし、ほてり、蒼白色の境界を有することも多い。じんま疹は、通常、アレルゲン性物質との直接接触または食物、もしくは一部のその他のアレルゲンに対する免疫応答によって引き起こされるが、その他の理由、特に、情緒的ストレスで現れる場合もある。
【0111】
−皮膚炎、特に、慢性日光性皮膚炎。慢性日光性皮膚炎は光線過敏性皮膚炎/光線性類細網症症候群としても知られ、皮膚が特に日光または人工光にさらされた領域で炎症を起こす状態である。
【0112】
ある態様では、前記皮膚障害は皮下脂肪組織障害、特にセルライトではない。
【0113】
本医薬組成物およびゲルはまた、1種または複数のさらなる活性薬剤との「併用療法」において使用できる。
【0114】
ある実施形態では、本医薬組成物およびゲルは、その他の治療が有効でない患者を治療するのに、または、ホルモン補充療法(HRT)下にある女性を治療するのに特に適している。
【0115】
組成物を製造する方法
本発明はまた、本発明の医薬組成物を製造する方法を提供する。当業者は、本発明の医薬組成物を、周知の一般知識に基づき、任意の適した手段によって調製できる。例えば、ダナゾールをモノアルコールに溶解させ、水性溶媒と混合し、続いて、保湿剤などのその他の賦形剤を添加し、さらに混合してもよい。ゲル化剤が存在する場合には、ゲル化剤を撹拌下で導入してもよい。中和剤が存在する場合には、中和剤は通常、方法の最後または最後近くに、さもなければ最終組成物に添加される。例えば、組成物がCarbopolを含む場合には、NaOHまたはトリエタノールアミンを使用して、組成物を中和してもよい。その他の任意選択の成分を、既知手順に従って、方法のその他の段階で加えてもよい。例えば、防腐剤が存在する場合には、防腐剤は適当な溶媒中で、工程の任意の適した時間に添加される。
【実施例】
【0116】
実施例1
【0117】
ダナゾールのHPLC分析
HPLC法
UV検出を使用するHPLC(JascoモデルPU−2080 PlusポンプおよびモデルAS−2051 Plusオートサンプラー)によってダナゾールを分析した。ガードカラム(ODS Hypersil 5μm 10×4mm、Thermo Electron Corporation、UK)を備えたC18逆相カラム(5μm、150mm×4.6mm、Dionex)でクロマトグラフィーによる分離が得られた。移動相は、アセトニトリル:水(65:35)とした。移動相は、0.45μm PVDFメンブレンフィルターを通して濾過した。注射容量は、50μlとし、流速は、1ml/分で設定した。UV検出器(モデルUV−2975 Plus)は287nmで設定し、実行時間は10分とした。ダナゾールの保持時間は、7.7分であった。各実験は2回繰り返して実施した。較正は、外部標準法を使用した。ダナゾールの較正曲線は、0.1〜20μg/mLの範囲で確立した(ダナゾールの直線性区間;r2=0.999)。
【0118】
保存溶液の調製
ダナゾールの標準溶液を、10mgの薬物を10mlのメタノールに溶解することによって調製した。希釈は、HPLC移動相を用いて行った。サンプルを0.45μm PVDFメンブレンフィルターを通して濾過した。
【0119】
アッセイの正確度および精度
分析法の正確度は、サンプル中に回収された分析物の既知添加量のパーセンテージから算出した(±CV)。ダナゾールについてのHPLC法の正確度は、2種の濃度で3回繰り返して評価した(1.0μg/mLおよび20μg/mL)。
【0120】
ダナゾールについてのHPLC法の正確度(すなわち、回収率)は、102.08%(CV:0.68)であった。
【0121】
精度は、分析法の再現性を計る度合として測定した。精度は、2種の濃度で3回繰り返して評価した(1.0μg/mLおよび20μg/mL)。
【0122】
ダナゾールの再現性CVは、0.36%であった。
【0123】
この方法を使用して、検出限界(LOD)は、30ng/mlであり、定量化限界(LOQ)は、100ng/mlであった。
【0124】
分析媒体(3%セトリミド溶液)中のダナゾールの安定性
分析媒体(移動相)およびレセプター相(3%セトリミド溶液)におけるダナゾールの安定性を調べた。24時間にわたって種々の時間で、サンプル中のダナゾールの濃度を測定した。ダナゾールは、分析媒体およびレセプター相において30時間安定であった。
【0125】
方法の特異度
方法の特異度を調べた。ドナーチャンバー中に薬物を用いずに「偽の」皮膚拡散実験を実施した。24時間後、レセプター相をサンプリングし、上記の条件を使用するHPLC分析に付した。実験目的は、薬物の分析を干渉する可能性のある、皮膚を起源とする、またはセトリミド含有レセプター相を起源とする任意の吸収ピークがあるか否かを調べることであった。ダナゾールと同一の保持時間では、その他のピークは全く観察されなかった。
【0126】
実施例2
【0127】
溶解度研究
ダナゾールの飽和溶解度を、一連の無水エタノール/水混合物(40:60、50:50、60:40および70:30、w/w)において、1mlの共溶媒系中において過剰量の薬物を、室温で少なくとも24時間振盪することによって調べた。適当な希釈の後、HPLC分析によって飽和溶液の濃度を調べた。一連の無水エタノール/水混合物におけるダナゾールの飽和溶解度は、表1に示されている。
【0128】
【表1】

【0129】
このようなヒドロアルコール性製剤におけるダナゾールの溶解度は、アルコールのパーセンテージを上げることによって増大される。
【0130】
薬物の溶解度はまた、3%セトリミド溶液においても調べた。3%セトリミド溶液におけるダナゾールの溶解度は、2113±15μg/mLであると決定した。
【0131】
実施例3
【0132】
皮膚浸透のコンピュータによる予測
−ダナゾール、および
−構造的に関連する化合物テストステロン
の経真皮送達を、以下のアプローチに従って皮膚を通過する最大の理論上の流束(Jmax)を算出することによってコンピュータによって推定した。
【0133】
化学物質が皮膚を通過することができる最大流束(Jmax)は、それが表面上で飽和溶液中として(または適切な化学形態として)維持される場合に理論上達成される。これらの状況に適用される関連方程式は、フィックの第一法則である。
【0134】
【数1】

[式中、Dは、皮膚を通過する化学薬品の拡散率(典型的には、角質層、皮膚の最も少ない浸透性の最外層を通る)、hは拡散路長、Kskin/vehicle皮膚と、表面に接触する賦形剤間の化合物の分配係数であり、
【0135】
【数2】

は、賦形剤における飽和溶解度である。] Kskin/vehicleは、以下のように定義され得る:
【0136】
【数3】

[式中、
【0137】
【数4】

および
【0138】
【数5】

は、それぞれ、皮膚および賦形剤における濃度である。]
【0139】
ここで数式1は、さらに単純な数式へと還元できる:
【0140】
【数6】

【0141】
これは、境界を越える達成可能な最大の流束は、製剤が飽和しているならば、製剤とは無関係であることを示す。すなわち、化学薬品が賦形剤中で、その熱力学的活性が最大の状態にある(すなわち、飽和である)限り、また製剤中の賦形剤が皮膚の境界特性を変更しない(例えば、浸透増強または遅延特徴を示すことがない)という条件下で、Jmaxは一定である。
【0142】
したがって、Jmaxの値が第一法則から予測できる場合には、特定の製剤中についての化学薬品の飽和度に関する知識を用いて、そこから特定のシナリオに従って皮膚を越えて吸収される最大量を算出することが可能である。
【0143】
この目的は、in vitroでのヒト皮膚を通過する約100種の化学薬品について、水中での適用後の浸透係数に関する広範なデータベースから、Potts & Guy(Pharm Res. 1992年、第9巻第5号、663〜9頁)によって導かれたアルゴリズムを使用して達成することができる。水性賦形剤からの化学薬品の浸透係数(K)は、以下のように定義される:
【0144】
【数7】

【0145】
種々の物理化学的変数に対するKの実験値についての複数の回帰分析によって、方程式が導かれるが(Potts & Guy 1992)、これは妥当な予測力を有することがわかっている:
log K=−2.7+0.71*log P−0.0061*MW (方程式5)
[式中、Pは、化学薬品のオクタノール−水分配係数であり、MWは、分子量である]。
【0146】
上記の形態では、浸透係数の単位はcm/hである。極めて親油性の化学薬品については、方程式5から算出されたKの値を、生きている皮膚層(生きている表皮および真皮)の浸透過程への寄与を考慮して補正する必要がある(Cleek and Bunge、Pharm Res、1993年、第10巻第4号、497〜506頁):
【0147】
【数8】

【0148】
方程式1、2および6を組み合わせることによって、以下が得られる:
【0149】
【数9】

【0150】
浸透係数は、方程式5および6ならびに、容易に入手可能な物理化学的パラメータ(MWおよびlog P)から算出できる。なお、その値に関して非常に大きなデータベースが存在し、インターネットで入手可能な多数の様々なアプローチを用いても算出できる。同様に、水溶解度については相当な数のものが表にされているか、および/またはウェブに通じて入手可能である。
【0151】
ダナゾールおよびテストステロンの水溶解度
【0152】
【数10】

【0153】
および、オクタノールと水の間における分配係数(logP)は、Osiris Property Explorer計算機(Actelion’s inhouse registration system製)を使用して推定した(http://www.chemexper.com)。
【0154】
この計算機によれば、所与の分子の特性は、その特性が実験によって決定されている分子と比較することによる、断片ベースのアプローチによって予測される(薬物様化合物の水溶解度のコンピュータによる予測に関する概説については、Balakinら、Current Medicinal Chemistry、2006年、13巻、223〜241頁、「In Silico approaches to prediction of aqueous and DMSO solubility of drug−like compounds: trends、problems and solutions」参照)。
【0155】
以下の結果が得られた:
【0156】
【表2】

【0157】
テストステロンの予測された最大流束は、0.13μg/cm/hであり、これは0.13〜0.2μg/cm/hの範囲にある、実験的に決定された値と同様である(http://edetox.ncl.ac.uk/searchinvitro.aspx参照)。
【0158】
前述した通り、テストステロンおよびダナゾールは、構造的に密接に関連した分子である。したがって、上記で示されたコンピュータによる予測は、テストステロンの場合にはおいて正確であるという知見から、ダナゾールの場合にも予測は同様に正確であると当業者は予測するであろう。
【0159】
このモデルによれば、ダナゾールの予測された最大流束は、0.014μg/cm/hであり、これは、テストステロンの流束よりおよそ10倍低い。したがって、ダナゾールを投与するための経真皮送達経路に関して不十分な結果、特に不十分な流束値を予測されるので、当業者であればその送達経路を想定することを強く断念させられるであろう。このように、コンピュータによる予測は、ダナゾールを用いた経真皮治療の実現可能性を厳しく否定するものである。
【0160】
実施例4
【0161】
皮膚浸透研究(フランツセル)
0.71cmの有効拡散面積を有する、不透明な拡散セルを横に並べて使用することで、浸透研究を実施した。レセプターコンパートメントは3.2mlの容量を有しており、37±0.5°Cの温度を維持した。レセプター溶液は3% w/vセトリミド溶液とし、シンクコンディションを維持することを可能にした。レセプター相は、100rpmで磁気的に撹拌した。皮膚採取機によって採取されたブタ腹部皮膚(750μm)を使用した。皮膚は、実験を開始する前に、等張生理食塩水溶液を用いて1時間水和させた。t=0で、70:30 w/wのエタノール/水に溶解したダナゾールの飽和溶液を3ml、ドナーチャンバーに入れた。実験は、完全閉塞下で実施した。適用後、予定した時間(3、6、9、20および24時間)に、レシーバーコンパートメントから1mlのサンプルを採取し、同容量の新鮮な、温度を平衡化したレセプター液で置換した。サンプルは0.45μmのPVDFメンブレンフィルターを通して濾過した。先に記載された方法を使用し、HPLCによってサンプル中のダナゾール量を調べた。
【0162】
【表3】

【0163】
結果、ダナゾールの実験的に決定された観察された最大流束は、約7.2/24=0.3μg/cm/hであった。この値は、テストステロンについて観察されたものに匹敵し(コンピュータによるものおよびin vitroの両方とも)、コンピュータによる算出によって予測されたものよりも1桁高い。
【0164】
【表4】

【0165】
このように、本出願者は驚くべきことに、本発明の組成物を使用するダナゾールの経真皮送達は、コンピュータによる予測に反して実際に実施可能であるということを決定した。
【0166】
上記で報告された結果は、本発明の組成物が、効果的な治療のための皮膚表面への局所投与について、優位に適していることを示す。
【0167】
経口ダナゾールの生物学的利用量が11%、および経口治療用経口用量が100mgであることに基づくと、治療効果を提供するダナゾールの量は、11mgである。
【0168】
上記で観察された流束(24時間では7.2μg/cm)に基づくと、局所組成物は、11mgを1500cmに渡る表面に送達でき、これは乳房あたり、最大2回の塗布で達成され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚表面への局所投与のための医薬組成物であって:
(i)治療上有効な量のダナゾール
(ii)少なくとも1種のモノアルコール
(iii)所望により、非刺激量および/または非感作量の少なくとも1種の浸透促進剤
(iv)所望により、少なくとも1種のゲル化剤
(v)所望により、少なくとも1種の保湿剤
(vi)水性賦形剤
を含む医薬組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の医薬組成物であって:
(i)0.01〜10%(w/w)のダナゾール
(ii)10〜90%(w/w)の少なくとも1種のモノアルコール、例えば、エタノールまたはイソプロパノール
(iii)0〜10%(w/w)の少なくとも1種の浸透促進剤、例えば、ミリスチン酸イソプロピルまたはプロピレングリコール
(iv)0〜5%(w/w)の少なくとも1種のゲル化剤、例えば、ポリアクリル酸、セルロース誘導体、またはそれらの混合物
(v)0〜30%(w/w)の少なくとも1種の保湿剤、例えば、グリセリン
(vi)100%(w/w)を満足させるだけの水
を含む医薬組成物。
【請求項3】
良性の乳房疾患、女性化乳房症、乳癌、乳房痛および高濃度乳腺組織を伴う状態から選択される乳房の障害を患っている、または発症する危険がある患者を治療するための、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
そう痒症、紅斑、じんま疹および皮膚炎から選択される皮膚障害を患っている、または発症する危険がある患者を治療するための、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
請求項1または2に記載の医薬組成物の調製におけるダナゾールの使用であって、前記医薬組成物が、良性の乳房疾患、女性化乳房症、乳癌、乳房痛および高濃度乳腺組織を伴う状態から選択される乳房の障害を患っている、または発症する危険がある患者を治療するためのものである、使用。
【請求項6】
請求項1または2に記載の医薬組成物の調製におけるダナゾールの使用であって、前記医薬組成物が、そう痒症、紅斑、じんま疹および皮膚炎から選択される皮膚障害を患っている、または発症する危険がある患者を治療するためのものである、使用。
【請求項7】
請求項1または2に記載の医薬組成物を含有する、用量包装、単位用量包装または多数用量包装。
【請求項8】
請求項1または2に記載の医薬組成物を含有する、所望によりハンドポンプを備えた、ディスペンサー。
【請求項9】
(A)医薬組成物を含有するリザーバーであって、
(i)治療上有効な量のダナゾール
(ii)少なくとも1種のモノアルコール
(iii)所望により、非刺激量および/または非感作量の少なくとも1種の浸透促進剤
(iv)所望により、少なくとも1種のゲル化剤
(v)所望により、少なくとも1種の保湿剤
を含むリザーバーと、
(B)局所塗布器
を含むデバイス。
【請求項10】
請求項1または2のいずれか一項に記載の医薬組成物を調製する方法であって、
(i)少なくとも1種のモノアルコール
(ii)ダナゾール
(iii)水性賦形剤
(iv)所望により、非刺激量および/または非感作量の少なくとも1種の浸透促進剤
(v)所望により、少なくとも1種のゲル化剤
(vi)所望により、少なくとも1種の保湿剤
を含む混合物を調製するステップを含む方法。
【請求項11】
治療上有効な量のダナゾールを、それを必要とする患者に投与する方法であって、前記患者の皮膚の表面に、請求項1または2に記載の医薬組成物を局所投与するステップを含む方法。
【請求項12】
乳房の障害を患っている、または発症する危険がある患者を治療する方法であって、治療上有効な量の請求項1または2に記載の医薬組成物を、それを必要とする患者の皮膚の表面に局所投与するステップを含む方法。
【請求項13】
皮膚障害を患っている、または発症する危険がある患者を治療する方法であって、治療上有効な量の請求項1または2に記載の医薬組成物を、それを必要とする患者の皮膚の表面に局所投与するステップを含む方法。

【公表番号】特表2011−528700(P2011−528700A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−519181(P2011−519181)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059538
【国際公開番号】WO2010/010168
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(511019432)
【Fターム(参考)】