説明

ダンパー機能付き蝶番

【課題】小型に構成することができると共に、位置調整を直感的に容易に行なうことができるダンパー機能付き蝶番を提供する。
【解決手段】開口部に取り付けられるベース部と、ベース部内でドア12の揺動軸に垂直な方向に移動する制動部材30と、ドアに取り付けられ、ベース部に対して旋回可能に支持されるドア取付部と、ドア取付部に設けられ、ドアの開閉時に制動部材をベース部内で進退させる連結部材50と、を有し、ベース部は、制動部材の移動路を挟むように互いに対向する二つの摺動面を有し、制動部材は、移動路に沿って摺動する本体部から摺動面に向かって付勢される一対のプッシャーを備え、制動部材の本体部及び各プッシャーは、制動部材の本体部がドアの揺動軸に向かって移動するにつれて二つのプッシャーが互いに離反するようなテーパーを有したダンパー機能付き蝶番10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部に開閉可能にドアを支持し、ドア閉鎖時のドア閉鎖速度を抑制するためのダンパー機能付き蝶番に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば住宅の玄関等の開口部の一側に蝶番により揺動可能に支持されたドアにおいて、ドア閉鎖速度を抑制するために、ダンパー機能付き蝶番が知られている。
このようなダンパー機能付き蝶番は、ドアが開口部に対して閉鎖位置まで移動する際に、ドアの閉鎖速度を抑制して、一定速度以下の閉鎖速度でゆっくりと閉鎖させる。
これにより、ドア閉鎖時におけるドアと開口部との間での人の手指の挟み込みを防止すると共に、ドアが開口部付近の固定部分例えば開口部の周囲の枠体に衝突して大きな音を発生させることを防止する。
【0003】
ダンパー機能付き蝶番としては、所謂油圧ダンパーを備えた蝶番が知られている。
このような油圧ダンパー付き蝶番は、油圧ダンパーの作用に基づいて、ドア閉鎖速度を確実に抑制し、一定速度以下のドア閉鎖速度を実現することが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、油圧ダンパーは、それ自体大きく、蝶番内に油圧ダンパーを備えるためには、蝶番も大型化してしまう。
さらに、蝶番内における油圧ダンパーの占有スペースが大きく、蝶番取付時における三軸方向の位置調整のための機構の配置の自由度が小さくなってしまう。
従って、例えば位置調整ネジの方向が調整すべき方向と一致しないことがあり、直感的な位置調整を実施することが困難である。
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、簡単な構成により、小型に構成することができると共に、位置調整を直感的に容易に行なうことができるダンパー機能付き蝶番を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、本発明の構成によれば、開口部に介してドアを揺動可能に支持し且つドア閉鎖時にドア閉鎖速度を抑制するダンパー機能付き蝶番であって、開口部の一側に取り付けられるベース部と、ベース部内でドアの揺動軸に垂直な方向に移動する制動部材と、ドアに取り付けられ、ベース部に対して旋回可能に支持されるドア取付部と、ドア取付部に設けられ、ドアの開閉時に制動部材をベース部内で進退させる連結部材と、を有し、ベース部は、制動部材の移動路を挟むように互いに対向する二つの摺動面を有し、制動部材は、移動路に沿って摺動する本体部から二つの摺動面に向かって付勢される一対のプッシャーを備え、制動部材の本体部及び各プッシャーは、制動部材の本体部がドアの揺動軸に向かって移動するにつれて二つのプッシャーが互いに離反するようなテーパーを有し、ドアの閉鎖に連動して連結部材を介して制動部材が移動路をドアの揺動軸に向かって接近する際に、各プッシャーがテーパーの形状に従って、ベース部の対応する摺動面に押圧され、二つのプッシャーと二つの摺動面との摩擦力によりドアの閉鎖が抑制されることを特徴とする、ダンパー機能付き蝶番により、達成される。
【0007】
本発明によるダンパー機能付き蝶番は、好ましくは、制動部材の本体部が、ドアの揺動軸に向かって弾性部材により付勢されている。
【0008】
本発明によるダンパー機能付き蝶番は、好ましくは、ドアが開口部に対してリンクを介して枢支されていて、ドアの閉鎖時に、ドアがリンクを介して揺動軸の周りに揺動することにより、連結部材が制動部材を移動させる。
【0009】
本発明によるダンパー機能付き蝶番は、好ましくは、連結部材が、制動部材側にドアの揺動軸に平行に延びるプッシャーピンを備えており、制動部材の本体部が、制動部材の本体部に設けられ、ドアの揺動軸及び制動部材の移動方向とは異なる方向に延びるスリットを備え、プッシャーピンが前記スリットに係合している。
【0010】
本発明によるダンパー機能付き蝶番は、好ましくは、ベース部が、制動部材の移動路を画成する可動部を備え、可動部がベース部に対して三軸方向に位置調整可能である。
【0011】
本発明によるダンパー機能付き蝶番は、好ましくは、可動部が、少なくとも一つの調整方向に延びる軸上に配置された第一の調整ネジを備えており、可動部は、第一の調整ネジを回動させることにより、対応する軸方向に平行移動して位置調整可能である。
【0012】
本発明によるダンパー機能付き蝶番は、好ましくは、可動部が、一側で少なくとも一つの調整方向に揺動可能に枢支され、且つ他側で調整方向に延びる軸上に配置された第二の調整ネジを備えており、可動部は、第二の調整ネジを回動させることにより、対応する軸方向に揺動して位置調整可能である。
【発明の効果】
【0013】
上記構成によれば、ドアが閉じられると、ドアの閉鎖に伴ってドア取付部が旋回して、連結部材により、制動部材がベース部内でドアの揺動軸に向かって移動する。
このとき、制動部材の移動により、テーパーの傾斜に基づいて制動部材の本体部により各プッシャーが対応する摺動面に対して押圧される。従って、各プッシャーの摺動面に対する摩擦力が増大して、移動速度が抑制される。
これにより、連結部材を介して、ドア取付部及びドアの揺動速度が抑制され、ドア閉鎖時のドアと開口部との間の手指等の挟み込みを確実に防止することができると共に、ドアが開口部の周囲の枠体への衝突による衝撃音の発生を防止することができる。
【0014】
これに対して、ドアが開かれると、ドアの開放に伴ってドア取付部が旋回して、連結部材により、制動部材がベース部内でドアの揺動軸から離反するように移動する。
このとき、制動部材の移動により、テーパーの傾斜に基づいて各プッシャーは対応する制動面から離反する。従って、各プッシャーの摺動面に対する摩擦力が減少して、制動部材は小さな力で移動する。
これにより、連結部材を介して、ドア取付部及びドアは、全開位置まで容易に移動して、開放される。
【0015】
この場合、ドアの閉鎖速度を抑制するために、従来のような油圧ダンパーを使用しておらず、上述した制動部材から成る摺動ダンパーを使用しているので、小型に且つ低コストでダンパー機能付き蝶番を構成することができる。
また、一対のプッシャーが互いに対向する摺動面に対して付勢されることによって、ドア閉鎖速度が抑制されるだけでなく、制動部材がベース部に対して位置決め調整される。従って、部品点数が少なくて済み、全体の部品コスト及び組立コストを低減することができる。
【0016】
ドアが開口部に対してリンクを介して枢支されている場合には、ドアの閉鎖時に、ドアがリンクを介して揺動軸の周りに揺動することにより、連結部材が円滑に制動部材を押動する。
【0017】
連結部材が、制動部材側にドアの揺動軸に平行に延びるプッシャーピンを備えており、制動部材の本体部が、制動部材の本体部に設けられ、ドアの揺動軸及び制動部材の移動方向とは異なる方向に延びるスリットを備え、プッシャーピンが前記スリットに係合している場合には、プッシャーピンがスリットに沿って案内されることにより、連結部材がプッシャーピンを介して制動部材を確実に移動させる。
【0018】
ベース部が、制動部材の移動路を画成する可動部を備え、可動部がベース部に対して三軸方向に位置調整可能であって、可動部が、少なくとも一つの調整方向に延びる軸上に配置された第一の調整ネジを備えており、可動部は第一の調整ネジを回動させることにより、対応する軸方向に移動調整可能である場合には、第一の調整ネジの調整方向が可動部のベース部に対する調整方向と一致していることにより、可動部のベース部に対する位置調整を直感的に行なうことができる。
【0019】
このようにして、本発明によれば、簡単な構成により、小型に構成することができると共に、位置調整を直感的に容易に行なうことができるダンパー機能付き蝶番を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明によるダンパー機能付き蝶番の一実施形態の構成を示す概略斜視図である。
【図2】図1のダンパー機能付き蝶番の断面図である。
【図3】図1のダンパー機能付き蝶番におけるベース部及び制動部材の分解斜視図である。
【図4】図1のダンパー機能付き蝶番におけるベース部の可動部と制動部材の関係を示す分解斜視図である。
【図5】図1のダンパー機能付き蝶番の構成を示す分解斜視図である。
【図6】図5のダンパー機能付き蝶番における制動部材のスリットを示す拡大側面図である。
【図7】図4のベース部の可動部と制動部材の関係を示す拡大断面図である。
【図8】図7の制動部材におけるプッシャーの作動を示す部分拡大断面図である。
【図9】図1のダンパー機能付蝶番における(A)ドア全開時(開度95度),(B)ドア半開時(開度65度),(C)ドア半開時(開度35度)及び(D)ドア全閉時(開度0度)の状態を示す横断面図である。
【図10】図1のダンパー機能付き蝶番の上下方向調整を示す概略側面図である。
【図11】図1のダンパー機能付き蝶番の上下方向調整を示す概略断面図である。
【図12】図1のダンパー機能付き蝶番の前後方向調整を示す概略平面図である。
【図13】図1のダンパー機能付き蝶番の左右方向調整を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1及び図2は、本発明によるダンパー機能付き蝶番の一実施形態の構成を示している。
図2に示すように、ダンパー機能付き蝶番10は、建物,家具等に設けられた開口部11に対して開閉可能にドア12を支持すると共に、ドア閉鎖時にドア12の閉鎖速度を抑制するためのものであって、開口部の一側に取り付けられるベース部20と、ベース部内でドアの揺動軸に垂直な方向、図1においてX方向に移動する制動部材30と、ドア12に取り付けられ、ベース部に対して旋回可能に支持されるドア取付部40と、ドア取付部に設けられ、ドアの開閉時に制動部材30をベース部20内で進退させる連結部材50と、から構成されている。
ここで、ドア12は、一側(図2において右側)が、開口部11に対して本ダンパー機能付き蝶番10により揺動可能に支持されている。
【0022】
ベース部20は、図3及び図4に示すように、取付部21,第一の可動部22,第二の可動部23及びフレーム24から構成されている。
取付部21は、例えば板金等により構成されていて、図2に示すように、平坦な底面が開口部11の表面に当接した状態で、開口部11に固定ネジ25により固定される。
さらに、取付部21は、そのX方向の両端に設けられた係合部21a及び21bと、X方向中央の両側から立ち上がる軸受部21cと、を備えている。
【0023】
第一の可動部22は、例えば板金等から構成されており、取付部21の底面上に載置されると共に、そのX方向の両端22a,22bが、取付部21の係合部21a,21bに係合して、図1におけるX方向及びZ方向の移動が規制されている。
また、第一の可動部22は、そのY方向の幅が、取付部21の底面の幅より狭く選定されている。
これにより、第一の可動部22は、取付部21の底面上でY方向に摺動可能に支持されている。
【0024】
さらに、第一の可動部22は、そのX方向中央付近に、Y方向に延びる雌ねじ部22cを備えている。
この雌ねじ部22cには、取付部21の軸受部21cを通って、第一の調整ネジ26が挿通され、螺合している。
第一の調整ネジ26は、一端がネジ頭部26aにより、他端が所謂Eリング26bにより、取付部21の両側面の外側に係止されている。
これにより、第一の調整ネジ26を回動することにより、第一の調整ネジ26のネジ部と第一の可動部22の雌ねじ部22cとの螺合に基づいて、第一の可動部22がY方向に関して平行移動して、Y方向の位置調整が行なわれる。
【0025】
第二の可動部23は、例えばダイカストから成る底部23aと、この底部23aの上面を両側及び上方から覆う例えば板金等から成るカバー部23bと、から構成されており、図2に示すように、底部23aのX方向前端下面に設けられた係合部23cが、取付部21の係合部21aに前側から係合している。
カバー部23bは、底部23aの上方に、X方向の前側に向かって開放した中空部23jを画成している。
ここで、カバー部23bの両側面は、その内面が後述する制動部材のための摺動面23dとして平滑に形成されている。
【0026】
また、第二の可動部23は、その後端付近にZ方向に延びる雌ねじ部23eを備えている。
この雌ねじ部23eには、図2にて上方から、第二の調整ネジ27が挿通され、螺合している。
第二の調整ネジ27は、Z方向上方の頭部が、後述するフレーム24の上面に対して回転可能に係止されている。
これにより、第二の調整ネジ27を回動することにより、第二の調整ネジ27のネジ部と第二の可動部23の雌ねじ部23eとの螺合に基づいて、フレーム24が第二の可動部23に対してZ方向に移動して、Z方向の位置調整が行なわれる。
【0027】
さらに、第二の可動部23は、後端に、Y方向に延びる軸23fの周りに揺動可能に支持されたレバー23gを備えている。
このレバー23gは、図示しないバネにより、図2において右旋性を付与されている。
また、レバー23gは、フック部23hを有しており、このフック部23hは、取付部21の後端に設けられた係合部21bに後方下側から係合する。
従って、第二の可動部23は、その底部23aの係合部23c及びレバー23gのフック部23hが取付部21に対して係合することにより、取付部21に着脱可能に取り付けられる。
そして、レバー23gが図2においてバネの張力に抗して左旋されると、フック部23hが取付部21の係合部21bから外れ、第二の可動部23は第一の可動部22から取り外すことができる。
【0028】
フレーム24は、例えば板金等から構成されており、第二の可動部23を上方及びY方向両側から覆うように被嵌されている。
ここで、フレーム24は、前述したように、上面24aの後端付近に設けられた係合穴24bに第二の調整ネジ27が係止され、この第二の調整ネジ27が第二の可動部23の雌ねじ部23eに螺合することにより、第二の可動部23に対して取り付けられる。
係合穴24bは、X方向に延びており、その前端は、第二の調整ネジ27の頭部より大きい拡大部として形成されている。
【0029】
また、フレーム24は、図3に示すように、そのY方向両側から、X方向の前方に突出した一対の張出部24cを備えている。
各張出部24cは、それぞれその上側先端付近に軸穴24dを、またその下側で軸穴24dより後方に軸穴24eを備えている。
軸穴24eには軸24fが挿通されており、この軸24fは、第二の可動部23の前端に設けられたY方向に延びる貫通穴23iを貫通している。
ここで、貫通穴23iは、X方向に細長い断面形状を有しており、軸24fは、貫通穴23i内でX方向に移動可能である。
これにより、フレーム24は、第二の可動部23に対してX方向に移動可能であると共に、軸24fの周りに揺動可能である。
【0030】
さらに、フレーム24は、そのX方向後端が下方に延びる立下り部24gを備えており、この立下り部24gには雌ねじ部24hが設けられている。
雌ねじ部24hには、第三の調整ネジ28が螺合しており、第三の調整ネジ28の先端は、第二の可動部23の後壁に当接している。
従って、第三の調整ネジ28の回動によって、第二の可動部23は、X方向に移動調整される。
【0031】
制動部材30は、図5に示すように、本体部31と、本体部31に対してY方向両側面に設けられた一対のプッシャー32と、から構成されている。
本体部31は、第二の可動部23の中空部23j内にX方向に摺動可能に収容されており、中空部23jの閉鎖端内に収容された圧縮コイルバネ33により、X方向の前方に向かって、符号F1で示すように、付勢されている。
【0032】
また、本体部31は、そのX方向の前端上部が前方に向かって延びる延長部31aを備えていると共に、X方向の前端7にスロット31bを備えている。
このスロット31bは、図6に示すように、上側のZ方向に真っ直ぐ延びる直線状部分31cと、この直線状部分31cの下端からX方向の後方に向かって斜めに延びる円弧状部分31dと、から成る。
円弧状部分31dは、制動部材30が第二の可動部23の中空部23j内でX方向の後方に位置するとき、軸24fを中心とする円弧上に沿って形成されている。
【0033】
さらに、本体部31は、プッシャー32を受容するための凹陥部31eを備えている。この凹陥部31eは、それぞれX方向の後方に向かって浅くなるように、テーパーを有しており、所定角度、例えば25度の傾斜角度に形成されている。
各凹陥部31eは、背向する斜面をY方向に貫通する貫通穴31fを有している。
【0034】
これに対して、各プッシャー32は、それぞれ本体部31の対応する凹陥部31e内に収容された状態で、本体部31の側面に対応する外側面と、凹陥部31eのテーパーに対応するテーパーを有する内側面と、を有している。
さらに、各プッシャー32は、その内側面の中央付近に、X方向に突出した凸部32aを有している。
これにより、各プッシャー32は、本体部31の貫通穴31f内に第二の圧縮コイルバネ34を介装した状態で、それぞれ凹陥部31e内に装填される。
従って、各プッシャー32は、それぞれ対応する凹陥部31e内で、図7において符号F2で示すように、常にY方向に互いに離反する方向に、即ち符号F2で示すように、第二の圧縮コイルバネ34により付勢される。
これにより、制動部材30がベース部20を構成する第二の可動部23の中空部23j内に挿入されたとき、各プッシャー32は、中空部23jの両側の内面即ち摺動面23dに対して圧縮コイルバネ34により付勢されて当接する。
【0035】
このようにして第二の可動部23の中空部23j内に収容された制動部材30が中空部23j内でX方向の後方に向かって移動するとき、図8(A)に示すように、各プッシャー32は、第二の圧縮コイルバネ34の張力により中空部23jの摺動面23dに当接し、摩擦力が発生するので、制動部材30の移動に逆らって留まろうとして、テーパーに沿って凹陥部31e内に進入する。このとき、各プッシャー32の外面間の距離はWである。
これに対して、制動部材30が中空部23j内でX方向の前方に向かって移動するとき、図8(B)に示すように、各プッシャー32は、第二の圧縮コイルバネ34の張力により中空部23jの摺動面23dに当接し、摩擦力が発生するので、制動部材30の移動に逆らって留まろうとして、例えば制動部材が距離dだけ移動したとき、テーパーに沿って凹陥部31eから外側にΔwだけ突出する。このとき、各プッシャー32の外面間の距離は(W+Δw)である。従って、各プッシャー32の摺動面23dに対する摩擦力がさらに増大して、制動部材30の移動を抑制することになる。
【0036】
ドア取付部40は、中空直方体状に形成された本体部41と、本体部41の開放端からY方向両側に広がるフランジ部42と、から構成されている。
本体部41は、例えば板金等から形成されており、図2においてX方向後方にて、それぞれY方向に延びる二つの軸41a,41bを有している。
軸41aは、本体部41の後縁に近い領域で、開放端寄りに配置されていると共に、軸41bは、軸41aより前側で本体部41の底面付近に配置されている。
【0037】
フランジ部42は、本体部41と一体に構成されており、ネジ穴42aを有している。
これにより、ドア取付部40の本体部41がドア11に前もって設けられた凹陥部内に収容されると共に、フランジ部42のネジ穴42aに取付ネジ(図示せず)が挿入され、ねじ込まれることにより、ドア取付部40がドア11の所定位置に固定される。
【0038】
連結部材50は、二つのリンク51,52から構成されている。
リンク51は、一端がドア取付部40の本体部41に設けられた軸41aに連結されていると共に、他端には図3に示すように、二つの軸穴51a及び51bを有している。
軸穴51aは、Z方向下側に配置されていて、フレーム24の軸24fが挿通され、フレーム24に対して回転可能に支持されている。
軸穴51bは、軸穴51aよりもX方向後方でやや上側に配置されていて、図2に示すようにプッシャーピン53が挿通されている。プッシャーピン53は、制動部材30の本体部31に設けられたスロット31bに係合する。
【0039】
これにより、リンク51が図2において軸24fの周りに左旋すると、まずプッシャーピン53がスロット31bの円弧状部分31dに沿って摺動し、その後プッシャーピン53がスロット31bの直線状部分31cに移行すると、制動部材30をX方向前方に移動させながら、リンク51は左旋する。
尚、制動部材30の本体部31は、プッシャーピン53,リンク51,軸24fを介してフレーム24にも連結されており、これによりフレーム24も圧縮コイルバネ33によりX方向前方に向かって付勢される。従って、フレーム24後端の第三の調整ネジ28の先端は、圧縮コイルバネ33の付勢力に基づいて第二の可動部23の後壁に常に当接することになる。
【0040】
リンク52は、ドア11と開口部12とを連結して、ドア12を開口部12に対して揺動可能に枢支するものであり、一端が、ドア取付部40の本体部41に設けられた軸41bに連結されていると共に、他端がフレーム24の軸穴24dに挿通された軸52aにより、フレーム24に対してY方向に延びる軸52aの周りに揺動可能である。
【0041】
ダンパー機能付き蝶番10は、以上のように構成されており、全開状態からドア12が閉鎖される場合、図9に示すように動作する。
即ち、まず図9(A)に示す全開状態(開度95度)においては、リンク51の軸穴51bに挿通されたプッシャーピン53は、制動部材30の底部31に設けられたスロット31bの下端に位置しており、制動部材30は、第二の可動部23の中空部23j内でX方向後方に位置している。
この状態から、ドア12が閉じられると、まずリンク52が軸52aの周りに右旋すると共に、リンク51が軸24fの周りに右旋する。そして、ドア12が開度65度まで半開された状態では、プッシャーピン53は、スロット31bの円弧状部分31dに沿って摺動するので、制動部材30は静止したままである。
【0042】
ドア12が開度35度の半開状態まで閉じられると、図9(C)に示すように、ドア12は軸41bの周りに右旋すると共に、リンク52は、軸52aの周りに左旋し、またリンク51は、軸24fの周りに右旋する。
これにより、プッシャーピン53は、スロット31bの円弧状部分31dの最上部即ち直線状部分31cとの境界を過ぎた位置まで距離d1だけ摺動する。従って、制動部材30は僅かにX方向前方に移動する。
【0043】
その後、ドア12が全閉状態(開度0度)まで閉じられると、図9(D)に示すように、ドア12は軸41bの周りにさらに右旋すると共に、リンク52は、軸52aの周りにさらに左旋し、またリンク51は、軸24fの周りにさらに右旋する。
これにより、プッシャーピン53は、スロット31bの直線状部分31cを摺動する。このとき、プッシャーピン53は、この直線状部分31cの形状に基づいて、制動部材30の本体部31をX方向前方に向かって距離d2だけ移動させる。
【0044】
ここで、制動部材30が第二の可動部23の中空部23jでX方向前方に移動しようとすると、図8(B)に示すように、プッシャー32が本体部31の側面から突出しようとして、摺動面23dに対してより強く当接する。これにより、プッシャー32の摺動面23dに対する摩擦力が増大する。従って、制動部材30のX方向前方への移動速度が抑制され、ドア12の閉鎖速度も抑制される。
この場合、プッシャー32の摺動面23dに対する摩擦力は、プッシャー32のテーパー形状(傾斜角度)及び第二の圧縮コイルバネ34の張力により一定である。従って、制動部材30のX方向前方への移動により増大する摩擦力も一定であるので、ドア12の閉鎖速度も一定速度となる。
このようにして、ドア12の閉鎖時に、ドア12の開度が35度以下になると、制動部材30のX方向前方への移動速度が一定に保持されることによって、ドア閉鎖速度が一定速度となる。従って、ドア閉鎖時のドア12と開口部11との間の手指等の挟み込みを確実に防止することができると共に、ドア12の開口部11の枠体等への衝突による衝撃音の発生を防止することができる。
【0045】
この場合、ドア閉鎖速度の抑制は、制動部材30のプッシャー32と第二の可動部23の摺動面23dとの間の摩擦力により行なわれるので、従来のような油圧ダンパーを使用する必要がない。このため、全体が小型に且つ低コストでダンパー機能付き蝶番10を構成することができる。
【0046】
これに対して、ドア12が全閉状態から開放される場合には、ドア閉鎖時と逆に、即ち順次に図9(D),図9(C),図9(B)及び図9(A)に示すように、ドア12が閉じられる。
その際、ドア開度0度の全閉状態からドア開度35度の半開状態までの間は、ドア11の開放に伴って、リンク51の揺動により、プッシャーピン53は、スロット31bの直線状部分31cを摺動し、これにより制動部材30をX方向後方に移動させる。
このとき、制動部材30のプッシャー32は、図8(A)に示すように、それぞれ凹陥部31d内に進入するので、制動部材30の側面から突出しない。従って、制動部材30は、プッシャー32の摺動面23dに摩擦力がないので、円滑に移動する。これにより、ドア12は閉鎖速度が抑制されることなく、円滑に開放される。
【0047】
次に、ダンパー機能付き蝶番の開口部11への取付の際の位置調整について説明する。
まず、Y方向の位置調整は、第一の調整ネジ26を回動することにより行なわれる。
第一の調整ネジ26の両端が取付部21に回転可能に固定されているので、第一の調整ネジ26を回動させると、第一の調整ネジ26が螺合する雌ねじ部22cがY方向に移動することになり、第一の可動部22がY方向に移動調整される。これにより、図10及び図11に示すように、第一の可動部22に取り付けられた第二の可動部23,フレーム24及び制動部材30もY方向に距離dyだけ移動調整される。この場合、Y方向に延びる第一の調整ネジ26を回動することにより、Y方向の移動調整が直感的に行なわれることになる。
【0048】
次に、X方向の位置調整は、第三の調整ネジ28を回動することにより行なわれる。
即ち、第三の調整ネジ28はフレーム24のネジ穴24hに螺合しているので、第三の調整ネジ28をねじ込むと、第三の調整ネジ28の先端はX方向前方に向かって移動し、第二の可動部23の後壁を押動する。ここで、実際には第二の可動部23はX方向に関して固定されているので、相対的にフレーム24がX方向後方に向かって距離dxだけ移動する。このとき、フレーム24の軸24fは、第二の可動部23の貫通穴23i内をX方向に移動し、また第二の調整ネジ27は、係合穴24b内をX方向に移動する。
これにより、X方向に延びる第三の調整ネジ28を回動することにより、X方向の移動調整が直感的に行なわれることになる。
【0049】
最後に、Z方向の位置調整は、第二の調整ネジ27を回動することにより行なわれる。
即ち、第二の調整ネジ27は、その頭部がフレーム24の上面24aの係合穴24bに係合すると共に、第二の可動部23の雌ねじ部23eに螺合しているので、第二の調整ネジ27を緩めると、第二の調整ネジ27は雌ねじ部23e内を上昇し、フレーム24の係合穴24b付近を上方に向かって移動させる。
ここで、フレーム24の前部が軸24fに枢支されているので、フレーム24は、軸24fを中心として揺動し、軸24fよりX方向前方の部分がZ方向下方に向かって揺動する。これにより、フレーム24のX方向前端に取り付けられた軸52aは、距離dzだけZ方向下方に移動調整される。
従って、Z方向に延びる第二の調整ネジ27を回動することにより、Z方向の移動調整が直感的に行なわれる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができる。
例えば、上述した実施形態においては、ベース部20は、二つの可動部、即ち第一の可動部22及び第二の可動部23を有しており、第二の可動部23が第一の可動部22にたいして着脱可能に構成されているが、これらの可動部22,23は一体に構成されていてもよい。
【0051】
以上述べたように、本発明によれば、簡単な構成により、小型に構成することができると共に、位置調整を直感的に容易に行なうことができる、極めて優れたダンパー機能付き蝶番が提供される。
【符号の説明】
【0052】
10 ダンパー機能付き蝶番
11 開口部
12 ドア
20 ベース部
21 取付部
22 第一の可動部
23 第二の可動部
24 フレーム
25 固定ネジ
26 第一の調整ネジ
27 第二の調整ネジ
28 第三の調整ネジ
30 制動部材
31 本体部
32 プッシャー
33,34 圧縮コイルバネ
40 ドア取付部
41 本体部
42 フランジ部
50 連結部材
51,52 リンク
53 プッシャーピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部に介してドアを揺動可能に支持し且つドア閉鎖時にドア閉鎖速度を抑制するダンパー機能付き蝶番であって、
前記開口部の一側に取り付けられるベース部と、前記ベース部内で前記ドアの揺動軸に垂直な方向に移動する制動部材と、前記ドアに取り付けられ、前記ベース部に対して旋回可能に支持されるドア取付部と、前記ドア取付部に設けられ、前記ドアの開閉時に前記制動部材を前記ベース部内で進退させる連結部材と、を有し、
前記ベース部は、前記制動部材の移動路を挟むように互いに対向する二つの摺動面を有し、
前記制動部材は、前記移動路に沿って摺動する本体部から前記二つの摺動面に向かって付勢される一対のプッシャーを備え、
前記制動部材の本体部及び各プッシャーは、前記制動部材の本体部が前記ドアの揺動軸に向かって移動するにつれて前記二つのプッシャーが互いに離反するようなテーパーを有し、
前記ドアの閉鎖に連動して前記連結部材を介して前記制動部材が前記移動路を前記ドアの揺動軸に向かって接近する際に、前記各プッシャーがテーパーの形状に従って、前記ベース部の対応する摺動面に押圧され、前記二つのプッシャーと前記二つの摺動面との摩擦力によりドアの閉鎖が抑制される
ことを特徴とする、ダンパー機能付き蝶番。
【請求項2】
前記制動部材の本体部が、前記ドアの揺動軸に向かって弾性部材により付勢されている、請求項1に記載のダンパー機能付き蝶番。
【請求項3】
前記ドアが、前記開口部に対してリンクを介して枢支されていて、
前記ドアの閉鎖時に、前記ドアが前記リンクを介して揺動軸の周りに揺動することにより、前記連結部材が前記制動部材を移動させる、
請求項1に記載のダンパー機能付き蝶番。
【請求項4】
前記連結部材が、前記制動部材側に前記ドアの揺動軸に平行に延びるプッシャーピンを備えており、
前記制動部材の本体部が、前記制動部材の本体部に設けられ、前記ドアの揺動軸及び前記制動部材の移動方向とは異なる方向に延びるスリットを備え、
前記プッシャーピンが前記スリットに係合している、
請求項1に記載のダンパー機能付き蝶番。
【請求項5】
前記ベース部が、前記制動部材の移動路を画成する可動部を備え、
前記可動部が、前記ベース部に対して三軸方向に位置調整可能である、
請求項1に記載のダンパー機能付き蝶番。
【請求項6】
前記可動部が、少なくとも一つの調整方向に延びる軸上に配置された第一の調整ネジを備えており、
前記可動部は、前記第一の調整ネジを回動させることにより、対応する軸方向に平行移動して位置調整可能である、
請求項5に記載のダンパー機能付き蝶番。
【請求項7】
前記可動部が、一側で少なくとも一つの調整方向に揺動可能に枢支され、且つ他側で前記調整方向に延びる軸上に配置された第二の調整ネジを備えており、
前記可動部は、前記第二の調整ネジを回動させることにより、対応する軸方向に揺動して位置調整可能である、
請求項5に記載のダンパー機能付き蝶番。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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