説明

チエノチオフェン共重合体及びその製造方法

【課題】半導体性を示し、アニオンでドープされた状態において高い導電性を有し、かつ大気暴露によって導電性が低下することなく大気安定性を有するチエノチオフェン共重合体を提供する。
【解決手段】チエノチオフェン共重合体は、下記化学式(1)
【化1】


(式中、Arは、エーテル結合による側鎖を有するヘテロアリーレン基又はアリーレン基であり、R及びRはそれぞれ同一又は異なり、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、及び置換基を有してもよいアルコキシ基から選ばれる何れかであり、mは1〜4の正数であり、nは最小でも2の正数である)で示される構成単位を有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体や導電体の有機材料として有用であるチエノチオフェン共重合体及びそれを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ピロール、チオフェン、アニリン等のようにヘテロ原子が環内外に存する五員環構造又は六員環構造を有する化合物を重合したり、炭化水素系芳香環構造を有する化合物を重合したりして得られる重合体は、半導体性を有している。これらの重合体を有機半導体材料として有機電解トランジスタ、薄膜トランジスタ、電波による個体識別(RFID)器等の様々な有機デバイスへの用途が検討されている。また、アニオンでドープされたこれらの重合体は導電性を有しており、共存させるドーパントのドーピング量を調整することにより電気特性及び光学特性を適切にコントロールすることができるため、各種電極、エレクトロクロミック材料、各種センサー、一次電池、二次電池、固体電解コンデンサー、帯電防止剤等の様々な有機材料への用途が検討されている。
【0003】
従来技術において[3,4−b]チエノチオフェンを含む重合体、特に[3,4−b]チエノチオフェンとアルキルチオフェンとを含む重合体は、耐酸化性を有する有機半導体として好適に用いられている。例えば、高キャリア移動度を示し、耐酸化性を有する活性層として用いられた薄膜トランジスタ(非特許文献1)や、p−型半導体として用いられた有機薄膜太陽電池(非特許文献2)が知られている。一方で、アニオンでドープされたこれらの重合体については、アニオンでドープされた[3,4−b]チエノチオフェンを含む重合体が導電性を有することが知られているが(特許文献1)、導電性や安定性については言及されていない。大気暴露によって導電性が大幅に低下することが報告されており(非特許文献3)、より高い導電性を有し、安定性の高い重合体が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−504379号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ネイチャー マテリアルズ(Nature Materials),2006年,第5巻,p.328
【非特許文献2】アプライド フィジカルレターズ(Applied Physics Letters),2009年,第92巻,p.113309
【非特許文献3】アドヴァンストファンクショナル マテリアルズ(Advanced Functional Materials),2009年,第19巻,p.1906
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、半導体性を示し、アニオンでドープされた状態において高い導電性を有し、かつ大気暴露によって導電性が低下することなく大気安定性を有するチエノチオフェン共重合体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載されたチエノチオフェン共重合体は、下記化学式(1)
【化1】

(式中、Arは、エーテル結合による側鎖を有するヘテロアリーレン基又はエーテル結合による側鎖を有するアリーレン基であり、R及びRはそれぞれ同一又は異なり、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、及び置換基を有してもよいアルコキシ基から選ばれる何れかであり、mは1〜4の正数であり、nは最小でも2の正数である)で示される構成単位を有することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載のチエノチオフェン共重合体は、請求項1に記載されたものであって、前記化学式(1)中、R及びRが水素原子であり、Arが下記化学式(2)
【化2】

(式中、Rは置換基を有してもよい炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル含有側鎖である)で示される前記エーテル結合による側鎖を有するヘテロアリーレン基であり、mが1又は2である前記構成単位であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載のチエノチオフェン共重合体は、請求項2に記載されたものであって、前記化学式(2)中、Rが下記化学式(3−a)
−〔(CHa−W−R ・・・(3−a)
(式中、Rは置換基を有してもよい炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、Wは酸素原子又は硫黄原子であり、aは1〜5の正数であり、bは1〜30の正数である)で示されることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載のチエノチオフェン共重合体は、請求項1に記載されたものであって、前記化学式(1)におけるR及びRが水素原子であり、Arが下記化学式(4)
【化3】

(式中、R及びRはそれぞれ同一又は異なり、置換基を有してもよい炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル含有側鎖である)で示される前記エーテル結合による側鎖を有するアリーレン基であり、mが1である前記構成単位であることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載のチエノチオフェン共重合体は、請求項4に記載されたものであって、前記化学式(4)中、R及び/又はRが下記化学式(3−b)
−〔(CH−W−R ・・・(3−b)
(式中、Rは置換基を有してもよい炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、Wは酸素原子又は硫黄原子であり、cは1〜5の正数であり、dは1〜30の正数である)で示されることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の導電組成物は、請求項1から請求項5の何れかに記載のチエノチオフェン共重合体とドーパントとを含有することを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載のチエノチオフェン共重合体を製造する方法は、下記化学式(5)
−(Ar)−X ・・・(5)
(式中、Arはエーテル結合による側鎖を有するヘテロアリーレン基又はエーテル結合による側鎖を有するアリーレン基であり、X及びXはそれぞれ同一又は異なるハロゲン原子であり、mは1〜4の正数である)で示される化合物と、下記化学式(6)
【化4】

(式中、R及びRはそれぞれ同一又は異なり、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、及び置換基を有してもよいアルコキシ基から選ばれる何れかであり、Y及びYはそれぞれ同一又は異なり、−MgCl、−MgBr、−MgI、−ZnCl、−ZnBr、−ZnI、−Sn(R、−B(OH)、−B(OR、及び−B(−OCH(CH)CH(CH)O−)から選ばれる何れかである(Rとは、アルキル基を表す))で示される化合物とを、カップリング重合して、下記化学式(1)
【化5】

(式中、R、R、Ar、m及びnは前記と同じである)で示される構成単位を有するチエノチオフェン共重合体を製造するというものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のチエノチオフェン共重合体は、半導体性を有しており、また導電体として好適な重合体であって、アニオンでドープされた状態において高い導電性を示すことができる。
【0015】
本発明の導電組成物は、高い導電性を有し、大気暴露でも導電性が低下することなく大気安定性を示すことができる。この導電組成物は、半導体材料及び導電性材料として用いることができる。
【0016】
本発明のチエノチオフェン共重合体を製造する方法によれば、半導体や導電体となり、高い導電性を維持し、大気に長時間曝されてもその導電性を持続させることが可能な導電組成物として有用であるチエノチオフェン共重合体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0018】
本発明のチエノチオフェン共重合体は、前記化学式(1)に示される構成単位が位置規則的にヘッド−テイル繰返構造、ヘッド−ヘッド繰返構造、及び/又はテイル−テイル繰返構造で結合配列し、その数平均分子量(Mn)が200〜1,000,000となり、重量平均分子量(Mw)が200〜1,000,000となるものである。
【0019】
この構成単位は、チエノチオフェン共重合体の主鎖骨格を構成する複素環又は芳香環として、側鎖にエーテル結合を介してアルキル基が連結されているエーテル側鎖含有ヘテロアリーレン基、又はエーテル側鎖含有アリーレン基が導入された共重合体である。エーテル結合による側鎖を有するヘテロアリーレン基又はエーテル結合による側鎖を有するアリーレン基の繰返し数であるmは1〜4で好ましくは1〜2である。このエーテル結合による側鎖を有するヘテロアリーレン基、又はエーテル結合による側鎖を有するアリーレン基の繰返しは、位置規則的にヘッド−テイル繰返構造、ヘッド−ヘッド繰返構造、及び/又はテイル−テイル繰返構造で結合配列することができる。また、構成単位の繰返し数であるnは、2以上で、チエノチオフェン共重合体の数平均分子量(Mn)を200〜1,000,000とする数である。
【0020】
チエノチオフェン共重合体は、単一構造の繰返し重合体であってもよく、2種以上を含む共重合体であってもよい。
【0021】
前記化学式(1)中のR及びRの置換基を有してもよいアルキル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基等が挙げられる。
【0022】
前記化学式(1)中のR及びRの置換基を有してもよいアルコキシ基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エチトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシル基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基、n−イコシルオキシ基等が挙げられる。
【0023】
前記化学式(1)中のArは、複素環にアルキル含有側鎖がエーテル結合を介して連結されている2価のヘテロアリーレン基、又は芳香環にアルキル含有側鎖がエーテル結合を介して連結されている2価のアリーレン基である。
【0024】
エーテル結合による側鎖を有するヘテロアリーレン基としては、例えば、チオフェン環、ピロール環、フラン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イソキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、テトラゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、インドール環、イソインドール環、インダゾール環、フタラジン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、β−カルボリン環等から誘導される2価のヘテロアリーレン基にアルキル含有側鎖がエーテル結合を介して連結されているものが挙げられる。中でも好ましくは下記化学式(2)で示される、エーテル結合による側鎖を有するヘテロアリーレン基である。
【0025】
【化6】

【0026】
式(2)中、−O−Rは、3位−置換基であってもよく、4位−置換基であってもよい。Rは置換基を有してもよい炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル含有側鎖であり、無置換のC2p+1(p=1〜20)のようなアルキル基、すなわち−O−Rとしてアルコキシ基であってもよく、アルキル鎖の水素原子の一部が酸素原子や硫黄原子で置き換えられているポリアルキレングリコール基又はポリアルキレンチオグリコール基であってもよいというものである。好ましくは、Rが下記化学式(3−a)で示されるものである。
【0027】
−〔(CHa−W−R ・・・(3−a)
【0028】
式(3−a)中、Rは置換基を有してもよい炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、Wは酸素原子又は硫黄原子であり、aは1〜5であり、bは1〜30である。
【0029】
前記化学式(1)中のArが前記化学式(2)で示されるエーテル結合による側鎖を有するヘテロアリーレン基であるとき、R及びRはそれぞれ水素原子であり、当該ヘテロアリーレン基の繰返し数であるmは1又は2であると好ましい。
【0030】
また、エーテル結合による側鎖を有するアリーレン基としては、炭化水素芳香環、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、ピレン環、ペリレン環、テトラセン環、ペンタフェン環、ペンタセン環、ルビセン環等から誘導される2価のアリーレン基にアルキル含有側鎖がエーテル結合を介して連結されているものが挙げられる。中でも好ましくは下記化学式(4)で示される、エーテル結合による側鎖を有するアリーレン基である。
【0031】
【化7】

【0032】
式(4)中、−O−R及び−O−Rは、その2つの置換基の位置関係がパラ位であり、それぞれ2位−置換基及び5位−置換基又は3位−置換基及び6位−置換基となる。R及びRはそれぞれ、置換基を有してもよい炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル含有側鎖であり、無置換のC2p+1(p=1〜20)のようなアルキル基、すなわち−O−R及び−O−Rとしてアルコキシ基であってもよく、アルキル鎖の一部が酸素原子や硫黄原子で置き換えられているポリアルキレングリコール基又はポリアルキレンチオグリコール基であってもよいというものである。好ましくは、R及び/又はRが下記化学式(3−b)で示されるものである。
【0033】
−〔(CH−W−R ・・・(3−b)
【0034】
式(3−b)中、Rは置換基を有してもよい炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、Wは酸素原子又は硫黄原子であり、cは1〜5であり、dは1〜30である。
【0035】
前記化学式(1)中のArが前記化学式(4)で示されるエーテル結合による側鎖を有するアリーレン基であるとき、R及びRはそれぞれ水素原子であり、当該アリーレン基の繰返し数であるmは1であると好ましい。
【0036】
これらのかかる置換基としては、例えば、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
【0037】
以上のようなチエノチオフェン共重合体は、例えば、下記反応式(7)に示すように、前記化学式(5)に示される化合物と前記化学式(6)に示される化合物とのカップリング重合により製造される。
【0038】
【化8】

【0039】
式(7)中、R、R及びArはそれぞれ前記と同じものが挙げられる。また、X及びXは同一又は異なるハロゲン原子である。Y及びYは同一又は異なり−MgCl、−MgBr、−MgI、−ZnCl、−ZnBr、−ZnI、−Sn(R、−B(OH)、−B(OR、及び−B(−OCH(CH)CH(CH)O−)から選ばれる何れかである。ここでRとは、アルキル基を示す。nは2以上の正数であり、mは1〜4の正数である。
【0040】
これらのカップリング重合反応は、公知の方法が用いられ、金属錯体の存在下で行われると好ましい。カップリング重合反応を用いて製造することにより、前記化学式(1)に示される構成単位がヘッド−テイル繰返構造で規則正しく配列したチエノチオフェン共重合体を得ることができる。
【0041】
上記反応により得られるチエノチオフェン共重合体は、ドーパントを添加するドーピング工程を経て、導電性を有する導電組成物となる。導電組成物に含まれるチエノチオフェン共重合体は、単一種類であってもよく、繰返し単位の異なるチエノチオフェン共重合体を複数含んでいてもよい。
【0042】
ドーパントは、チエノチオフェン共重合体を酸化還元させることにより導電性を向上できるものであれば、特に制限はなく、公知である種々の電子供与性物質や電子吸引性物質を適宜選択し、用いることができる。中でも、電子吸引性物質をドーパントとして用いることが好ましい。電子吸引性物質は、酸化され正の電荷を帯びた前記化学式(1)で示される構成単位を有するチエノチオフェン共重合体に対するカウンターアニオンとして機能する。
【0043】
ドーパントの具体例としては、PF、SbF、AsF等の5B族元素のハロゲン化アニオン、BF等の3B族元素のハロゲン化アニオン、I(I)、Br、Cl等のハロゲンアニオン、ClO等のハロゲン酸アニオン、AlCl、FeCl、SnCl等の金属ハロゲン化物アニオン、NOで示される硝酸アニオン、SO2−で示される硫酸アニオン、p−トルエンスルホン酸アニオン、ナフタレンスルホン酸アニオン、CHSO、CFSO等の有機スルホン酸アニオン、CFCOO、CCOO等のカルボン酸アニオン、及び、前記のアニオン種を主鎖又は側鎖に有する変性ポリマー等が挙げられる。これらのドーパントは、1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用して用いられてもよい。
【0044】
また、本発明のチエノチオフェン共重合体又はさらにドーパントを含有する導電組成物は、前記化学式(1)で示される構成単位となるモノマーを化学酸化重合又は電解重合することによっても製造することができる。化学酸化重合としては、酸化剤を用いてモノマー化合物から脱水素することにより重合体を得る方法が好適に採用される。
【0045】
化学酸化重合で用いられる酸化剤としては特に限定されないが、遷移金属塩であることが好ましい。遷移金属塩としては、例えば、塩化第二鉄(FeCl)、硫酸第二鉄(Fe(SO)、炭素数1〜16のアルコキシベンゼンスルホン酸鉄、炭素数1〜16のアルキルベンゼンスルホン酸鉄、ナフタレンスルホン酸鉄、フェノールスルホン酸鉄、スルホイソフタル酸鉄ジアルキルエステル、アルキルスルホン酸鉄、アルコキシナフタレンスルホン酸鉄、テトラリンスルホン酸鉄、炭素数1〜12のテトラリンスルホン酸鉄などの第二鉄塩や、これら前記化合物の鉄(III)塩の代わりにセリウム(IV)塩、銅(II)塩、マンガン(VII)塩、ルテニウム(III)塩になったもの等を用いることができる。中でも、鉄(III)塩が好適に用いられる。このとき、酸化剤由来のアニオンをドーパントとしてそのまま用いてもよい。
【0046】
電解重合により重合させる際の具体的な方法として、重合原料となるモノマー成分を溶媒に溶解させた溶液か、これにさらに支持電解質を溶解させる等して電解液を作製し、この溶液又は電解液を介して電極間に電圧印加することにより、陽極酸化された重合物として、目的のチエノチオフェン共重合体を陽極上に得る方法が好適に採用される。
【0047】
電解液に用いる支持電解質としては、例えば、リチウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン等アルカリ金属類のイオンや四級アンモニウムイオンといったカチオンと、過塩素酸イオン、四フッ化ホウ素イオン、六フッ化リンイオン、ハロゲン原子イオン、六フッ化ヒ素イオン、六フッ化アンチモンイオン、硫酸イオン、硫酸水素イオンといったアニオンの組み合わせからなる支持塩が挙げられる。電解液に用いる溶媒としてはニトロメタン、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、ニトロベンゼン、シアノベンゼン、o−ジクロロベンゼン、ジメチルスルホオキシド、γ−ブチロラクトン等が例示される。電解液としてはアルキルイミダゾリウム塩、アルキルピリジニウム塩などのイオン液体を用いることもできる。このとき、電解質由来のアニオンをドーパントとしてそのまま用いてもよい。
【0048】
導電組成物におけるドーパントの含有率は、特に制限はなく、用いるドーパントにより任意に調整することができるが、チエノチオフェン共重合体100質量部に対し1〜1000質量部であると好ましい。その含有量は、導電組成物の調製工程において、適宜調整することができる。
【0049】
本発明の導電組成物は、チエノチオフェン共重合体とドーパントとの必須構成成分の他に、必要に応じて任意の添加剤を含有してもよく、その添加するタイミングも任意に選択することができる。添加剤としては、公知の添加剤等の中から適宜選択することができ、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、劣化防止剤、重合禁止剤、表面改質剤、脱泡剤、可塑剤、抗菌剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を併用して使用してもよい。
【実施例】
【0050】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
本発明を適用するチエノチオフェン共重合体を実施例1〜8、本発明の適用外であるチエノチオフェン共重合体を比較例1〜2、及びそれらを含有する導電組成物である重合膜の作製を実施例9及び比較例3に示す。
【0052】
(実施例1)
温度計およびジムロート冷却器を備えた100mL三つ口フラスコに、クロロベンゼン25mL、2,5−ビス(トリメチルスズ)−[3,2−b]チエノチオフェン233mg(0.500mmol)、2,5−ジブロモ−3−ドデシルオキシチオフェン213mg(0.500mmol)、塩化リチウム21.2mg(0.500mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム9.2mg(0.0100mmol)、トリ(o−トリル)ホスフィン12.2mg(0.0400mmol)を加えた。反応容器を130℃に加熱した後、60時間攪拌した。反応終了後、メタノール300mLを加え粗生成物を得た。この粗生成物を、ソックスレー抽出器を用いてアセトンで8時間、n−ヘキサンで8時間洗浄した。その後、クロロホルムでソックスレー抽出することで、下記化学式(8)で示される構成単位を有するチエノチオフェン共重合体A1を92mg得た。得られたチエノチオフェン共重合体A1の数平均分子量は9000であった。なお、数平均分子量は、テトラヒドロフランを溶離液とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製;HLC−8020 EcoSEC)を用いて測定した。なお、カラムは、東ソー株式会社製のTSKgel Multipore HZの2本を直列に繋いだものを用いた。
【0053】
【化9】

【0054】
(実施例2)
温度計を備えた100mL三つ口フラスコに、2−ブロモ−3−ドデシルオキシチオフェン2.08g(6.00mmol)、パラジウムビスベンゾニトリルジクロリド23.0mg(0.0600mmol)、フッ化カリウム697mg(12.0mmol)、硝酸銀2.04g(12.0mmol)、ジメチルスルホキシド30mLを加えた。反応容器を90℃に加熱した後、8時間攪拌した。反応終了後、トルエン200mL及び飽和食塩水200mLを加え、セライトろ過後、有機層と水層とを分離した。有機層を200mLの水で2回、洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下で濃縮することにより、粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、下記化学式(9)で示される5,5’−ジブロモ−4,4’−ジドデシルオキシ−2,2’−ビチオフェンを982mg(1.42mmol,47.3%)得た。
【0055】
【化10】

【0056】
5,5’−ジブロモ−4,4’−ジドデシルオキシ−2,2’−ビチオフェンの核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定におけるH−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、化学式(9)で示す構造を支持する。
H−NMR(270MHz、CDCl、TMS)δ:6.74(2H,s)、4.04(4H,J=6.5Hz,t)、1.77(4H,m)、1.50−1.20(36H,m)、0.88(6H,J=6.5Hz,t)
【0057】
温度計およびジムロート冷却器を備えた100mL三つ口フラスコに、クロロベンゼン25mL、2,5−ビス(トリメチルスズ)−[3,2−b]チエノチオフェン233mg(0.500mmol)、先の反応で得られた5,5’−ジブロモ−4,4’−ジドデシルオキシ−2,2’−ビチオフェン346mg(0.500mmol)、塩化リチウム21.2mg(0.5000mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム9.2mg(0.0100mmol)、トリ(o−トリル)ホスフィン12.2mg(0.0400mmol)を加えた。反応容器を130℃に加熱した後、60時間攪拌した。反応終了後、メタノール300mLを加え粗生成物を得た。この粗生成物を、ソックスレー抽出器を用いてアセトンで8時間、n−ヘキサンで8時間洗浄した。その後、クロロホルムでソックスレー抽出することで、下記化学式(10)で示される構成単位を有するチエノチオフェン共重合体A2を108mg得た。得られたチエノチオフェン共重合体A2の数平均分子量は、前記と同様にして測定したところ、6000であった。
【0058】
【化11】

【0059】
(実施例3)
温度計およびジムロート冷却器を備えた100mL三つ口フラスコに、クロロベンゼン25mL、2,5−ビス(トリメチルスズ)−[3,2−b]チエノチオフェン233mg(0.500mmol)、2,5−ジブロモ−3−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)チオフェン180mg(0.500mmol)、塩化リチウム21.2mg(0.5000mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム9.2mg(0.0100mmol)、トリ(o−トリル)ホスフィン12.2mg(0.0400mmol)を加えた。反応容器を130℃に加熱した後、60時間攪拌した。反応終了後、メタノール300mLを加え粗生成物を得た。この粗生成物を、ソックスレー抽出器を用いてアセトンで8時間、n−ヘキサンで8時間洗浄した。その後、クロロホルムでソックスレー抽出することで、下記化学式(11)で示される構成単位を有するチエノチオフェン共重合体B1を88mg得た。得られたチエノチオフェン共重合体B1の数平均分子量は、前記と同様にして測定したところ、2500であった。
【0060】
【化12】

【0061】
(実施例4)
温度計を備えた100mL三つ口フラスコに、2−ブロモ−3−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)チオフェン1.69g(6.00mmol)、パラジウムビスベンゾニトリルジクロリド23.0mg(0.0600mmol)、フッ化カリウム697mg(12.0mmol)、硝酸銀2.04g(12.0mmol)、ジメチルスルホキシド30mLを加えた。反応容器を90℃に加熱した後、8時間攪拌した。反応終了後、トルエン200mL及び飽和食塩水200mLを加え、セライトろ過後、有機層と水層を分離した。有機層を200mLの水で2回、洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下で濃縮することにより、粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、下記化学式(12)で示される5,5’−ジブロモ−4,4’−ビス(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)−2,2’−ビチオフェンを1.10g(1.96mmol,65.6%)得た。
【0062】
【化13】

【0063】
5,5’−ジブロモ−4,4’−ビス(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)−2,2’−ビチオフェンのH−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、化学式(12)で示す構造を支持する。
H−NMR(270MHz、CDCl、TMS)δ:6.79(2H,s)、4.23(4H,m)、3.83(4H,m)、3.73(4H,m)、3.57(4H,m)、3.39(6H,s)
【0064】
温度計およびジムロート冷却器を備えた100mL三つ口フラスコに、クロロベンゼン25mL、2,5−ビス(トリメチルスズ)−[3,2−b]チエノチオフェン233mg(0.500mmol)、先の反応で得られた5,5’−ジブロモ−4,4’−ビス(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)−2,2’−ビチオフェン280mg(0.500mmol)、塩化リチウム21.2mg(0.5000mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム9.2mg(0.0100mmol)、トリ(o−トリル)ホスフィン12.2mg(0.0400mmol)を加えた。反応容器を130℃に加熱した後、60時間攪拌した。反応終了後、メタノール300mLを加え粗生成物を得た。この粗生成物を、ソックスレー抽出器を用いてアセトンで8時間、n−ヘキサンで8時間洗浄した。その後、クロロホルムでソックスレー抽出することで、下記化学式(13)で示される構成単位を有するチエノチオフェン共重合体B2を120mg得た。得られたチエノチオフェン共重合体B2の数平均分子量は、前記と同様にして測定したところ、2600であった。
【0065】
【化14】

【0066】
(実施例5)
2−ブロモ−3−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)チオフェンの代わりに2−ブロモ−3−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)チオフェン1.95gを用いた以外は実施例4と同様の手順で、下記化合物(14)で示される5,5’−ジブロモ−4,4’−ビス(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ−2,2’−ビチオフェンを1.17g(1.81mmol,60.2%)得た。
【化15】

【0067】
5,5’−ジブロモ−4,4’−ビス(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ−2,2’−ビチオフェンを1.17g(1.81mmol,60.2%)のH−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、化学式(14)で示す構造を支持する。
H−NMR(270MHz、CDCl、TMS)δ:6.79(2H,s)、4.21(4H,m)、3.83(4H,m)、3.74(4H,m)、3.67(8H,m)、3.55(4H,m)、3.38(6H,s)
【0068】
5,5’−ジブロモ−4,4’−ビス(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)−2,2−ビチオフェンの代わりに、先の反応で得られた5,5’−ジブロモ−4,4’−ビス(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ−2,2’−ビチオフェンを用いた以外は実施例4と同様の手順で、下記化合物(15)で示される構成単位を有するチエノチオフェン共重合体B3を150mg得た。得られたチエノチオフェン共重合体B3の数平均分子量は前記と同様に測定したところ、5100であった。
【化16】

【0069】
(実施例6)
2−ブロモ−3−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)チオフェンの代わりに2−ブロモ−3−(2−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)チオフェン2.22gを用いた以外は実施例4と同様の手順で、下記化合物(16)で示される5,5’−ジブロモ−4,4’−ビス(2−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ−2,2’−ビチオフェンを1.14g(1.54mmol,51.4%)得た。
【化17】

【0070】
5,5’−ジブロモ−4,4’−ビス(2−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ−2,2’−ビチオフェンのH−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、化学式(16)で示す構造を支持する。
H−NMR(270MHz、CDCl、TMS)δ:6.79(2H,s)、4.21(4H,m)、3.83(4H,m)、3.73(4H,m)、3.66(16H、m)、3.55(4H,s)、3.38(6H,s)
【0071】
5,5’−ジブロモ−4,4’−ビス(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)−2,2−ビチオフェンの代わりに、先の反応で得られた5,5’−ジブロモ−4,4’−ビス(2−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ−2,2’−ビチオフェンを用いた以外は実施例4と同様の手順で、下記化合物(17)で示される構成単位を有するチエノチオフェン共重合体B4を128mg得た。得られたチエノチオフェン共重合体B4の数平均分子量は前記と同様に測定したところ、6500であった。
【化18】

【0072】
(実施例7)
2−ブロモ−3−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)チオフェンの代わりに2−ブロモ−3−(2−(2−(2−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)チオフェン2.74gを用いた以外は実施例4と同様の手順で、下記化合物(18)で示される5,5’−ジブロモ−4,4’−ビス(2−(2−(2−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ−2,2’−ビチオフェンを1.43g(1.57mmol,52.3%)得た。
【化19】

【0073】
5,5’−ジブロモ−4,4’−ビス(2−(2−(2−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ−2,2’−ビチオフェンのH−NMRスペクトルデータは、下記の通りであり、化学式(18)で示す構造を支持する。
H−NMR(270MHz、CDCl、TMS)δ:6.79(2H,s)、4.21(4H,m)、3.82(4H,m)、3.73(4H,m)、3.65(32H,m)、3.55(4H,s)、3.38(6H,s)
【0074】
5,5’−ジブロモ−4,4’−ビス(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)−2,2−ビチオフェンの代わりに、先の反応で得られた5,5’−ジブロモ−4,4’−ビス(2−(2−(2−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ−2,2’−ビチオフェンを用いた以外は実施例4と同様の手順で、下記化合物(19)で示される構成単位を有するチエノチオフェン共重合体B5を133mg得た。得られたチエノチオフェン共重合体B5の数平均分子量は前記と同様に測定したところ、3300であった。
【化20】

【0075】
(実施例8)
温度計およびジムロート冷却器を備えた100mL三つ口フラスコに、クロロベンゼン25mL、2,5−ビス(トリメチルスズ)−[3,2−b]チエノチオフェン233mg(0.500mmol)、1,4−ジブロモ−2,5−ジデシルオキシベンゼン274mg(0.500mmol)、塩化リチウム21.2mg(0.5000mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム9.2mg(0.0100mmol)、トリ(o−トリル)ホスフィン12.2mg(0.0400mmol)を加えた。反応容器を130℃に加熱した後、20時間攪拌した。反応終了後、メタノール300mLを加え粗生成物を得た。この粗生成物を、ソックスレー抽出器を用いてアセトンで8時間、n−ヘキサンで8時間洗浄した。その後、クロロホルムでソックスレー抽出することで、下記化学式(20)で示される構成単位を有するチエノチオフェン共重合体C1を112mg得た。得られたチエノチオフェン共重合体C1の数平均分子量は、前記と同様にして測定したところ、6100であった。
【0076】
【化21】

【0077】
(比較例1)
温度計およびジムロート冷却器を備えた100mL三つ口フラスコに、クロロベンゼン25mL、2,5−ビス(トリメチルスズ)−[3,2−b]チエノチオフェン233mg(0.500mmol)、2,5−ジブロモ−3−ドデシルチオフェン205mg(0.500mmol)、塩化リチウム21.2mg(0.500mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム9.2mg(0.0100mmol)、トリ(o−トリル)ホスフィン12.2mg(0.0400mmol)を加えた。反応容器を130℃に加熱した後、60時間攪拌した。反応終了後、メタノール300mLを加え粗生成物を得た。この粗生成物を、ソックスレー抽出器を用いてアセトンで8時間、n−ヘキサンで8時間洗浄した。その後、クロロホルムでソックスレー抽出することで、下記化学式(21)で示される構成単位を有する重合体X1を92mg得た。得られた重合体X1の数平均分子量は、前記と同様にして測定したところ、8500であった。
【0078】
【化22】

【0079】
(比較例2)
温度計およびジムロート冷却器を備えた100mL三つ口フラスコに、クロロベンゼン25mL、2,5−ビス(トリメチルスズ)−[3,2−b]チエノチオフェン233mg(0.500mmol)、5,5’−ジブロモ−4,4’−ジドデシル−2,2−ビチオフェン330mg(0.500mmol)、塩化リチウム21.2mg(0.5000mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム9.2mg(0.0100mmol)、トリ(o−トリル)ホスフィン12.2mg(0.0400mmol)を加えた。反応容器を130℃に加熱した後、60時間攪拌した。反応終了後、メタノール300mLを加え粗生成物を得た。この粗生成物を、ソックスレー抽出器を用いてアセトンで8時間、n−ヘキサンで8時間洗浄した。その後、クロロホルムでソックスレー抽出することで、下記化学式(22)で示される構成単位を有する重合体X2を108mg得た。得られた重合体X2の数平均分子量は、前記と同様にして測定したところ、5900であった。
【0080】
【化23】

【0081】
(実施例9)
実施例1〜8で得られた重合体A1、A2、B1、B2、B3、B4、B5及びC1をそれぞれ5.0mg秤量し、クロロホルム1.0mL中に溶解させ、各重合体溶液を得た。得られた各重合体溶液をスピンコーターMS−A100(ミカサ株式会社製)を用いて、白板ガラス(30mm×30mm×1.0mm)に0.3mL滴下し、1000rpmで30秒間スピンコートすることにより、各重合膜を作製した。ヨウ素粉末100mgを入れた容器内に各重合膜を入れ、容器を密閉した後5分間保持した。その後、各重合膜を大気中に取り出し、表面抵抗測定器ロレスタGP(株式会社三菱化学製)を用いて表面抵抗値を測定した。この測定結果を表1に示す。
【0082】
(比較例3)
比較例1〜2で得られた重合体X1及びX2を、実施例9と同様に各重合膜を作製し、各表面抵抗値を測定した。この測定結果を表1に示す。
【0083】
【表1】

【0084】
表1中の経過時間とは、重合膜を大気中に取り出してからの経過時間を示す。表1から、本発明の導電組成物である重合膜は、優れた導電性を示し、大気に長時間曝された後でも、導電性が低下しにくく大気安定性を示すことが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明のチエノチオフェン共重合体は、アニオンでドープされることで、高い導電性を有し、また大気安定性を示す導電組成物となる。この導電組成物は、半導体及び導電体となる有機材料として有用であり、有機薄膜太陽電池、有機電解トランジスタ、薄膜トランジスタ、有機発光ダイオード(OLED)、RFID、各種電極、エレクトロクロミック材料、アクチュエーター、各種センサー、圧電素子、熱電素子、一次電池、二次電池、固体電解コンデンサー、帯電防止剤等として用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)
【化1】

(式中、Arは、エーテル結合による側鎖を有するヘテロアリーレン基又はエーテル結合による側鎖を有するアリーレン基であり、R及びRはそれぞれ同一又は異なり、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、及び置換基を有してもよいアルコキシ基から選ばれる何れかであり、mは1〜4の正数であり、nは最小でも2の正数である)
で示される構成単位を有することを特徴とするチエノチオフェン共重合体。
【請求項2】
前記化学式(1)中、R及びRが水素原子であり、Arが下記化学式(2)
【化2】

(式中、Rは置換基を有してもよい炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル含有側鎖である)
で示される前記エーテル結合による側鎖を有するヘテロアリーレン基であり、mが1又は2である前記構成単位であることを特徴とする請求項1に記載のチエノチオフェン共重合体。
【請求項3】
前記化学式(2)中、Rが下記化学式(3−a)
−〔(CHa−W−R ・・・(3−a)
(式中、Rは置換基を有してもよい炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、Wは酸素原子又は硫黄原子であり、aは1〜5の正数であり、bは1〜30の正数である)
で示されることを特徴とする請求項2に記載のチエノチオフェン共重合体。
【請求項4】
前記化学式(1)におけるR及びRが水素原子であり、Arが下記化学式(4)
【化3】

(式中、R及びRはそれぞれ同一又は異なり、置換基を有してもよい炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル含有側鎖である)
で示される前記エーテル結合による側鎖を有するアリーレン基であり、mが1である前記構成単位であることを特徴とする請求項1に記載のチエノチオフェン共重合体。
【請求項5】
前記化学式(4)中、R及び/又はRが下記化学式(3−b)
−〔(CH−W−R ・・・(3−b)
(式中、Rは置換基を有してもよい炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、Wは酸素原子又は硫黄原子であり、cは1〜5の正数であり、dは1〜30の正数である)
で示されることを特徴とする請求項4に記載のチエノチオフェン共重合体。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れかに記載のチエノチオフェン共重合体とドーパントとを含有することを特徴とする導電組成物。
【請求項7】
下記化学式(5)
−(Ar)−X ・・・(5)
(式中、Arはエーテル結合による側鎖を有するヘテロアリーレン基又はエーテル結合による側鎖を有するアリーレン基であり、X及びXはそれぞれ同一又は異なるハロゲン原子であり、mは1〜4の正数である)
で示される化合物と、下記化学式(6)
【化4】

(式中、R及びRはそれぞれ同一又は異なり、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、及び置換基を有してもよいアルコキシ基から選ばれる何れかであり、Y及びYはそれぞれ同一又は異なり、−MgCl、−MgBr、−MgI、−ZnCl、−ZnBr、−ZnI、−Sn(R、−B(OH)、−B(OR、及び−B(−OCH(CH)CH(CH)O−)から選ばれる何れかである(Rとは、アルキル基を表す))
で示される化合物とを、カップリング重合して、下記化学式(1)
【化5】

(式中、R、R、Ar、m及びnは前記と同じである)
で示される構成単位を有するチエノチオフェン共重合体を製造する方法。

【公開番号】特開2012−214730(P2012−214730A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−66860(P2012−66860)
【出願日】平成24年3月23日(2012.3.23)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】