説明

チオエーテルフルオレン骨格含有ポリマー及びその製造方法

【課題】高い屈折率を有し、耐熱性、成膜性、透明性、溶媒溶解性などの種々の特性に優れた新規なフルオレン骨格含有ポリマー及びその製造方法を提供する。
【解決手段】チオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーは、式(1)で表される構造単位(チオエーテルユニット)を有している。前記チオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーは、ジチオール類(2)(例えば、9,9−ビス(メルカプトフェニル)フルオレン、9,9−ビス(アルキル−メルカプトフェニル)フルオレン、9,9−ビス(メルカプト(ポリ)C2−4アルコキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(メルカプト−ヒドロキシ(ポリ)C2−4アルコキシフェニル)フルオレンなど)又はその誘導体と、芳香族炭化水素環を少なくとも含むジハライドとの重合物であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオレン骨格を有する新規なチオエーテル系ポリマー及びその製造方法に関する。詳細には、本発明は、耐熱性などに優れ、各種電子機器又は機器部品、光学機器用部品などに有用な新規なチオエーテル系ポリマー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
耐熱性、難燃性、耐薬品性などに優れ、電気・電子分野などの用途において好適なエンジニアリングプラスチックとして、ポリチオエーテルケトンなどのチオエーテル骨格を有するポリマーが知られている。
【0003】
このようなチオエーテル骨格を有するポリマーに関しては、種々の合成方法が知られており、例えば、特公平7−21053号公報(特許文献1)には、特定の芳香族(チオ)エーテルと、特定の芳香族ジカルボン酸ジハライド又はホスゲンとをルイス酸の存在下、非プロトン性有機溶媒中で反応させて、重合及び触媒を不活性化した後の後処理工程において、還元処理を行い、さらにその後の工程においてリン化合物を添加する芳香族ポリ(チオ)エーテルケトンの製造方法が開示されている。また、特許第3050568号公報(特許文献2)には、含水極性有機溶媒中で、ポリアリーレンチオエーテルにアルカリ金属硫化物を作用させて解重合して得られる少なくとも一方の末端にアルカリチオラート基を有するプレポリマーと、ジハロゲン置換芳香族化合物とを重合反応させるアリーレンチオエーテル系ポリマーの製造方法が開示されている。
【0004】
しかし、このようなポリ(チオ)エーテル化合物では、屈折率、耐熱性などが十分でない。
【0005】
特開2002−338540号公報(特許文献3)には、9,9−ビス(4−メルカプトフェニル)フルオレンなどのビスチオフェノールフルオレン類及びその製造方法が開示されている。この文献には、前記ビスチオフェノールフルオレン類が、ポリチオエーテルケトンなどの樹脂原料として用いられることが記載されている。しかし、ポリチオエーテルケトンの詳細については記載されていない。
【特許文献1】特公平7−21053号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特許第3050568号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2002−338540号公報(段落番号[0027])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、高い屈折率を有し、耐熱性、成膜性、透明性、溶媒溶解性などの種々の特性に優れた新規なフルオレン骨格含有ポリマー及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、上記のような優れた特性を有するチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーを効率よく製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、フルオレン骨格を有する特定のジチオール類と特定の芳香族ジハロゲン化合物とを反応させる方法などにより、特定のフルオレン骨格(詳細には、9,9−ビスアリールフルオレン骨格)と芳香族骨格とがチオエーテル結合を介して結合した新規なチオエーテルポリマーが得られること、このような新規なチオエーテル系ポリマーが、高い屈折率を有し、耐熱性、成膜性、透明性、溶媒溶解性などの種々の特性に優れていることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明のチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーは、下記式(1)で表される構造単位を有する。
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、環Z及び環Zは同一又は異なって芳香族炭化水素環を示し、R1a、R1b、R2a、及びR2bは同一又は異なって置換基を示し、R3a及びR3bは同一又は異なってアルキレン基を示し、Aは芳香族炭化水素環を少なくとも含む二価基を示し、k1及びk2は同一又は異なって0又は1以上の整数を示し、m1及びm2は同一又は異なって0又は1〜8の整数を示し、n1及びn2は同一又は異なって0又は1〜4の整数を示す。)
前記チオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーは、下記式(2)で表されるジチオール類又はその誘導体と、下記式(3)で表されるジハライドとの重合物であってもよい。
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、環Z、環Z、R1a、R1b、R2a、R2b、R3a、R3b、m1、m2、n1、n2、k1及びk2は前記に同じ。)
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、X及びXは同一又は異なってハロゲン原子を示し、Aは前記に同じ。)
式(2)において、環Z及び環Zは同一又は異なってベンゼン環又はナフタレン環であり、k1及びk2は同一又は異なって0又は1〜2の整数であってもよい。前記ジチオール類は、代表的には、9,9−ビス(メルカプトフェニル)フルオレン類、及び9,9−ビス(メルカプトアルコキシフェニル)フルオレン類から選択された少なくとも一種であってもよい。
【0016】
前記式(3)で表されるジハライドは、例えば、下記式(3a)で表されるジハライドであってもよい。
【0017】
【化4】

【0018】
(式中、環Z、環Z、環Z、及び環Zは芳香族炭化水素環を示し、Dは芳香族炭化水素環、複素環、エーテル基、又はチオエーテル基を示し、Y及びYは同一又は異なって直接結合又は連結基を示し、R4a、R4b、R4c、R4d、及びR4eは同一又は異なって置換基を示し、s1及びs2は同一又は異なって0又は1を示し、s3は1〜6を示し、t1、t2、t3、t4、及びt5は同一又は異なって0又は1〜8の整数を示し、X及びXは前記に同じである。ただし、Dがエーテル基又はチオエーテル基であるとき、t3=0である。)
前記式(3a)で表される特定のジハライドを用いると、多数の芳香族環を導入することができ、チオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーの耐熱性、屈折率などの特性を効率よく高めることができる。
【0019】
代表的な前記ジハライドには、前記式(3a)において、環Z、環Z、環Z、及び環ZはC6−10芳香族炭化水素環であり、環DはC6−10芳香族炭化水素環、芳香族複素環、エーテル基又はチオエーテル基であり、Y及びYは直接結合、カルボニル基、オキシカルボニル基、アミド基、エーテル基、チオエーテル基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、置換基を有していてもよいアルキニレン基、又は置換基を有していてもよいアリーレン基である化合物などが含まれる。前記チオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーは、高屈折率であり、例えば、波長589nmにおいて、屈折率が1.62以上であってもよい。
【0020】
本発明には、前記式(2)で表されるジチオール類又はその誘導体と、芳香族炭化水素環を少なくとも含むジハライドとを重合させて、前記チオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーを製造する方法も含まれる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーは、特定のフルオレン骨格と芳香族骨格とがチオエーテル結合を介して結合した新規なチオエーテル系ポリマーであり、屈折率が高く、耐熱性、成膜性、透明性、溶媒溶解性などの種々の特性に優れている。また、本発明では、フルオレン骨格を有するジチオール類又はその誘導体と、芳香族炭化水素環を少なくとも含む特定のジハライドとを重合させることにより、前記のような優れた特性(高い屈折率、高い耐熱性など)を有するチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーを効率よく製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明のチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーは、前記式(1)で表される構造単位(チオエーテルユニット)を有している。前記チオエーテルユニット(1)は、前記式(2)で表されるジチオール類(又はその誘導体)に対応するフルオレン骨格を有するユニットと、このフルオレン骨格を有するユニットのチオエーテル基に結合したユニットであって、前記式(3)で表されるジハライドに対応するユニットAとで構成されている。
【0023】
前記チオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーは、前記チオエーテルユニット(1)を有する限り特に制限されないが、通常、前記式(2)で表されるジチオール類又はその誘導体と、前記式(3)で表されるジハライド(又はジハロゲン化物)との重合により得られる。
【0024】
(ジチオール類又はその誘導体)
環Z及び環Zで表される芳香族炭化水素環は、非縮合環及び縮合環のいずれであってもよく、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環などのC6−20芳香族炭化水素環(好ましくはC6−14芳香族炭化水素環)などであってもよい。これらの炭化水素環のうち、ベンゼン環などのC6−10芳香族炭化水素環が好ましい。なお、環Z及び環Zの種類は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。また、環Z(又は環Z)に置換するメルカプト基の置換位置は特に制限されないが、例えば、環Z(又は環Z)がベンゼン環である場合、メルカプト基は、2〜4位のいずれか、特に4位に置換していることが多い。
【0025】
また、R1a及びR1bで表される置換は、特に限定されず、例えば、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などのC1−20アルキル基、好ましくはC1−8アルキル基、さらに好ましくはC1−6アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5−10シクロアルキル基、好ましくはC5−8シクロアルキル基、さらに好ましくはC5−6シクロアルキル基など)、アリール基[フェニル基、アルキルフェニル基(メチルフェニル基(トリル基)、ジメチルフェニル基(キシリル基)など)などのC6−10アリール基、好ましくはC6−8アリール基、特にフェニル基など)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)などの炭化水素基;アルコキシ基(メトキシ基などのC1−4アルコキシ基など);アシル基(アセチル基などのC1−6アシル基など);アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシカルボニル基など);ニトロ基;シアノ基;ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)などが挙げられる。
【0026】
好ましいR1a及びR1bは、アルキル基(好ましくはC1−6アルキル基)、シクロアルキル基(好ましくはC5−8シクロアルキル基)、アルコキシ基(好ましくはC1−6アルコキシ基)、アリール基(好ましくはC6−10アリール基)、アラルキル基(好ましくはC6−8アリール−C1−2アルキル基)である。これらのうち、特に、C1−4アルキル基、C1−4アルコキシ基、C6−8アリール基が好ましい。R及びRは、単独で又は二種以上組み合わせて前記芳香族炭化水素環に置換していてもよい。また、R1a(又はR1b)は互いに同一又は異なっていてもよい。また、R1a(又はR1b)は、同一の芳香族炭化水素環において、異なっていてもよく、同一であってもよい。
【0027】
また、環Z(又は環Z)に置換するR1a(又はR1b)の置換位置は、特に限定されず、例えば、環Z及び環Zがベンゼン環であるとき、フルオレンの9位に置換するメルカプトフェニル基の2〜6位から選択できる。例えば、R1a(又はR1b)の置換位置は、例えば、2〜6位(好ましくは3又は5位、特に3位)であってもよく、m1(又はm2)が2の場合、例えば、3,4−位、3,5−位などであってもよい。置換数m1(又はm2)は、0又は1〜8の整数、好ましくは0〜2、さらに好ましくは0〜1(特に0)である。なお、置換数m1及びm2は、異なっていてもよいが、同一である場合が多い。
【0028】
また、R2a及びR2bで表される置換基は、特に限定されず、シアノ基、ニトロ基、炭化水素基(例えば、アルキル基など)などであってもよく、通常、アルキル基である場合が多い。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC1−6アルキル基(例えば、C1−4アルキル基、特にメチル基)などが挙げられる。R2a及びR2bは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、R2a(又はR2b)は、同一のベンゼン環において、異なっていてもよく、同一であってもよい。なお、フルオレン骨格を構成するベンゼン環に対するR2a(又はR2b)の置換位置は、特に限定されない。置換数n1及びn2は、0又は1〜4の整数、好ましくは0〜2、さらに好ましくは0〜1(特に0)である。なお、置換数n1及びn2は、異なっていてもよいが、同一である場合が多い。
【0029】
また、R3a及びR3bで表されるアルキレン基は、特に限定されないが、例えば、C2−6アルキレン基(エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ブタン−1,2−ジイル基など)、通常、C2−4アルキレン基などが例示でき、特に、C2−3アルキレン基(特に、エチレン基、プロピレン基)が好ましい。なお、R3a及びR3bは互いに同一の又は異なるアルキレン基であってもよいが、通常、同一のアルキレン基である。
【0030】
オキシアルキレン基の置換数(付加数)k1及びk2は、同一又は異なって、0又は1〜15程度の整数から選択でき、例えば、0〜12(例えば、1〜10)、好ましくは0〜8(例えば、1〜7)、さらに好ましくは0〜6(例えば、1〜5)、特に0〜4(例えば、1〜2)程度、通常0〜2(例えば、0〜1)であってもよい。また、k1とk2の和(k1+k2)は、0〜30程度の範囲から選択でき、例えば、0〜24(例えば、2〜20)、好ましくは0〜16(例えば、2〜14)、さらに好ましくは0〜12(例えば、2〜10)、特に0〜8(例えば、2〜4)程度、通常0〜4(例えば、0〜2)であってもよい。なお、k1(又はk2)が2以上の場合、ポリアルコキシ(又はポリオキシアルキレン)基は、同一のオキシアルキレン基で構成されていてもよく、異種のオキシアルキレン基(例えば、オキシエチレン基とオキシプロピレン基など)が混在して構成されていてもよいが、通常、同一のオキシアルキレン基で構成されている場合が多い。
【0031】
前記式(2)で表される代表的なジチオール類としては、9,9−ビス(メルカプトフェニル)フルオレン類、9,9−ビス(メルカプト(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類、9,9−ビス(メルカプトナフチル)フルオレン類、9,9−ビス(メルカプト(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類などが含まれる。
【0032】
9,9−ビス(メルカプトフェニル)フルオレン類としては、例えば、9,9−ビス(4−メルカプトフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メルカプトフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2−メルカプトフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(メルカプトフェニル)フルオレン;前記例示の置換基を有する9,9−ビス(メルカプトフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス(アルキル−メルカプトフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(3−メチル−4−メルカプトフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2−メチル−4−メルカプトフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,5−ジメチル−4−メルカプトフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2,6−ジメチル−4−メルカプトフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジアルキル−メルカプトフェニル)フルオレン(例えば、9,9−ビス(モノ又はジC1−6アルキル−メルカプトフェニル)フルオレンなど)など];9,9−ビス(シクロアルキル−メルカプトフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(3−シクロヘキシル−4−メルカプトフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC5−8シクロアルキル−メルカプトフェニル)フルオレンなど];9,9−ビス(アリール−メルカプトフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(3−フェニル−4−メルカプトフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC6−8アリール−メルカプトフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(アラルキル−メルカプトフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(3−ベンジル−4−メルカプトフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C6−8アリールC1−2アルキル−メルカプトフェニル)フルオレンなど]など}が挙げられる。
【0033】
9,9−ビス(メルカプト(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類としては、例えば、9,9−ビス(メルカプトアルコキシフェニル)フルオレン類{例えば、9,9−ビス[4−(2−メルカプトエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−メルカプトプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−メルカプトプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(4−メルカプトブトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(メルカプトC2−4アルコキシフェニル)フルオレン;9,9−ビス(メルカプトアルコキシ−アルキルフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス[4−(2−メルカプトエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[2−(2−メルカプトエトキシ)−5−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−メルカプトエトキシ)−3−エチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−メルカプトエトキシ)−3−プロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−メルカプトプロポキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(4−メルカプトブトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−メルカプトエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−メルカプトエトキシ)−3,5−ジエチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−メルカプトプロポキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(4−メルカプトブトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(メルカプトC2−4アルコキシ−モノ又はジC1−6アルキルフェニル)フルオレンなど];9,9−ビス(メルカプトアルコキシ−シクロアルキルフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス[4−(2−メルカプトエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(メルカプトC2−4アルコキシ−モノ又はジC5−8シクロアルキルフェニル)フルオレンなど];9,9−ビス(メルカプトアルコキシ−アリールフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス[4−(2−メルカプトエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(メルカプトC2−4アルコキシ−モノ又はジC6−8アリールフェニル)フルオレンなど];9,9−ビス(メルカプトアルコキシ−アラルキルフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス[4−(2−メルカプトエトキシ)−3−ベンジルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−メルカプトエトキシ)−3,5−ジベンジルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[メルカプトC2−4アルコキシ−モノ又はジ(C6−8アリールC1−4アルキル)フェニル]フルオレン]など}、及びこれらの9,9−ビス(メルカプトアルコキシフェニル)フルオレン類に対応し、前記式(1)においてk1及びk2が2以上である9,9−ビス(メルカプトポリアルコキシフェニル)フルオレン類{例えば、9,9−ビス{4−[2−(2−メルカプトエトキシ)エトキシ]フェニル}フルオレンなどの9,9−ビス[(メルカプトC2−4アルコキシ)C2−4アルコキシフェニル]フルオレン(k1=k2=2の化合物)など}などが挙げられる。
【0034】
9,9−ビス(メルカプトナフチル)フルオレン類としては、例えば、9,9−ビス[6−(2−メルカプトナフチル)]フルオレン(又は6,6−(9−フルオレニリデン)−ジ(2−メルカプトナフタレン))、9,9−ビス[1−(5−メルカプトナフチル)]フルオレン(又は5,5−(9-フルオレニリデン)−ジ(1−メルカプトナフタレン))などの置換基を有していてもよい9,9−ビス(メルカプトナフチル)フルオレンなどが挙げられる。
【0035】
9,9−ビス(メルカプト(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類としては、前記9,9−ビス(メルカプトナフチル)フルオレン類に対応する化合物、例えば、9,9−ビス(メルカプトアルコキシナフチル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[6−(2−メルカプトエトキシナフチル)]フルオレン、9,9−ビス[1−(5−メルカプトエトキシナフチル)]フルオレンなどの置換基を有していてもよい9,9−ビス(メルカプトC2−4アルコキシナフチル)フルオレンなど}などが挙げられる。
【0036】
好ましい前記ジチオール類には、9,9−ビス(メルカプトフェニル)フルオレン類[例えば、9,9−ビス(メルカプトフェニル)フルオレン、9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−メルカプトフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(アルキル−メルカプトフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(メルカプト(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類[例えば、9,9−ビス(メルカプトC2−4アルコキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−メルカプトC2−4アルコキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(アルキル−メルカプトC2−4アルコキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(メルカプトアルコキシフェニル)フルオレン類]などが含まれる。
【0037】
なお、9,9−ビス(メルカプトフェニル)フルオレン類は、種々の合成方法、例えば、(a)ビスアニリンフルオレン類のアミノ基をアゾ化し、硫酸アニオンを反応させ、加水分解する方法、(b)フルオレノンと、メルカプト基が保護基で保護されたチオフェノールとを酸性下で反応させた後、酸により脱保護する方法などを利用して製造することができる。また、9,9−ビス(メルカプトナフチル)フルオレンは、例えば、前記9,9−ビス(メルカプトフェニル)フルオレン類の製造方法において、チオフェノールの代わりに、メルカプトナフタレンを使用することにより製造できる。
【0038】
さらに、9,9−ビス(メルカプト(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類又は9,9−ビス(メルカプト(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類は、(c)9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類又は9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類に、(ポリ)アルコキシ基(又は基OR3a及びOR3b)に対応する化合物)、例えば、アルキレンオキシド(エチレンオキシドなどのC2−4アルキレンオキシド)やハロアルカノール類(例えば、3−クロロ−1−プロパノールなどのハロC3−6アルカノールなど)などを反応させて、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類又は9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類を形成させたのち、チオニルクロリドなどのクロル化剤と反応させ、ヒドロキシル基をクロル化し、次にNaSなどにより−SNaに置換後、適量の硫酸などで酸処理する方法、(d)9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類又は9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類と、基OR3a及びOR3bに対応するハロゲン化チオール化合物(例えば、3−クロロ−1−プロパンチオールなどのハロC3−6アルカンチオールなど)とを反応させる方法などにより得られる。
【0039】
なお、9,9−ビス(メルカプトフェニル)フルオレン類および9,9−ビス(メルカプト(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類の製法については、特開2002−338540号公報を参照することもできる。
【0040】
前記ジチオール類の誘導体としては、前記ジチオール類のメルカプト基が保護基で保護された化合物などが挙げられる。前記保護基としては、前記誘導体が前記ジハライドとの反応によりチオエーテル結合を形成できる限り特に限定されず、例えば、N−置換カルバモイル基(例えば、N−メチルカルバモイル基、N−エチルカルバモイル基、N−プロピルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基などのモノ又はジC1−6アルキルカルバモイル基、好ましくはモノ又はジC1−4アルキルカルバモイル基など)などが挙げられる。
【0041】
これらのジチオール類又はその誘導体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0042】
(ジハライド)
前記式(3)において、X及びXで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。これらの原子のうち、フッ素原子、塩素原子などが好ましく、特にフッ素原子が好ましい。前記X及びXで表されるハロゲン原子は、異なっていてもよいが、同一であってもよい。
【0043】
前記ジハライド(又はポリハライド)は、前記式(3)で表される化合物(又は前記式(1)において二価基Aに対応する化合物、すなわち、芳香族炭化水素環を少なくとも含むジハライド)であればよく、例えば、ジ(ハロアリール)ケトン類(例えば、ジクロロベンゾフェノンなどのジ(ハロC6−10アリール)ケトンなど)などであってもよいが、代表的には、例えば、下記式(3a)で表される化合物などが挙げられる。
【0044】
【化5】

【0045】
(式中、環Z、環Z、環Z、及び環Zは芳香族炭化水素環を示し、Dは芳香族炭化水素環、複素環、エーテル基、又はチオエーテル基を示し、Y及びYは同一又は異なって直接結合又は連結基を示し、R4a、R4b、R4c、R4d、及びR4eは同一又は異なって置換基を示し、s1及びs2は同一又は異なって0又は1を示し、s3は1〜6の整数を示し、t1、t2、t3、t4、及びt5は同一又は異なって0又は1〜8の整数を示し、X及びXは前記に同じである。ただし、Dがエーテル基又はチオエーテル基であるとき、t3=0である。)
上記式(3a)において、環Z、環Z、環Z、及び環Zで表される芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、インデン環、ナフタレン環、アントラセン環などのC6−20芳香族炭化水素環(好ましくはC6−14芳香族炭化水素環)が挙げられる。これらの芳香族炭化水素環のうち、特にベンゼン環などのC6−10芳香族炭化水素環が好ましい。
【0046】
Dで表される芳香族炭化水素環としては、前記環Z、環Z、環Z、及び環Zで例示の芳香族炭化水素環が挙げられ、特に、ベンゼン環、ナフタレン環などのC6−10芳香族炭化水素環が好ましい。
【0047】
なお、s3は、1〜6の整数であればよく、例えば、1〜4、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2であってもよい。
【0048】
また、Dで表される複素環としては、非縮合複素環{複素5員環[一種のヘテロ原子を含む複素5員環(ピロール、イミダゾールなどの窒素原子のみを含む複素5員環;フランなどの酸素原子のみを含む複素5員環;チオフェンなどの硫黄原子のみを含む複素5員環など);二種以上のヘテロ原子を含む複素5員環(チアゾール環などの窒素原子及び硫黄原子を含む複素5員環;オキサジアゾール環(1,2,4−オキサジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環など)などの窒素原子及び酸素原子を含む複素5員環など)など]、複素6員環[一種のヘテロ原子を含む複素6員環(ピリジン環、ピリミジン環などの窒素原子のみを含む複素6員環など)など]など};縮合複素環[複素5員環と複素6員環との縮合複素環(プリンなど);2個以上の複素6員環の縮合複素環(プテリジン環など);前記複素環とベンゼン環との縮合複素環(インドール環、キノリン環など)などであってもよい。これらの複素環は、芳香族複素環又は非芳香族複素環のいずれであってもよい。なこれらのDで表される複素環のうち、特に、オキサジアゾール環などの芳香族複素5員環、ピリジン環などの芳香族複素6員環などが好ましい。
【0049】
なお、環Z〜Z、芳香族炭化水素環又は複素環Dなどにおいて、隣接基(例えば、X、X、Y、Yなど)に対するこれらの環の結合位置は、特に制限されない。例えば、環が、ベンゼン環であるとき、結合に対応するフェニレン基としては、特に、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基などが挙げられ、環がナフタレン環であるとき、結合に対応するナフチレン基としては、ナフタレン−1,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、ナフタレン2,7−ジイル基などが挙げられる。また、複素環では、複素環を構成する炭素原子と隣接基とが結合している場合が多い。
【0050】
前記式(3a)のY及びYにおいて、連結基としては、例えば、カルボニル基、オキシカルボニル基(又はエステル基、−COO−)、アミド基(−NHCO−)、エーテル基(−O−)、チオエーテル基(−S−)、置換基を有していてもよい二価の炭化水素基などが挙げられる。
【0051】
前記二価の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基[例えば、アルキレン基(又はアルキリデン基、例えば、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、トリメチレン基、プロピレン基、プロピリデン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ブタン−2−イリデン基、1,2−ジメチルエチレン基、ペンタメチレン基、ペンタン−2,3−ジイル基などのC1−8アルキレン基、好ましくはC1−4アルキレン基)、シクロアルキレン基(例えば、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、メチルシクロへキシレン基、シクロへプチレン基などのC5−10シクロアルキレン基(好ましくはC5−8シクロアルキレン基)、ビ又はトリシクロアルキレン基(ノルボルナン−ジイル基などの)などの飽和脂肪族炭化水素基;アルケニレン基(例えば、ビニレン、プロペニレンなどのC2−6アルケニレン基、好ましくはC2−4アルケニレン基)、アルキニレン基などの不飽和脂肪族炭化水素基など]、芳香族炭化水素基{例えば、アリーレン基(フェニレン基、ナフタレンジイル基などのC6−10アリーレン基)、アルキレン(又はアルキリデン)−アリーレン基[又はアリーレン−アルキレン基、例えば、メチレン−フェニレン基、エチレン−フェニレン基、エチレン−メチルフェニレン基、エチリデンフェニレン基などのC1−6アルキレン−C6−20アリーレン基(好ましくはC1−4アルキレン−C6−10アリーレン基、好ましくはC1−2アルキレン−フェニレン基)などの芳香脂肪族炭化水素基など]など}が例示できる。なお、アルキレン−アリーレン基とは、−R−R−(式中、Rはアルキレン基、Rはアリーレン基を示す)で表される基を示す。
【0052】
及びYで表される二価の炭化水素基は、置換基を有していてもよい。前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、ハロアルキル基(モノ乃至トリフルオロメチル基、モノ乃至トリクロロメチル基などのハロC1−4アルキル基など)、アシル基(アセチル基など)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基など)、シアノ基、ニトロ基などの電子求引性基などが挙げられる。
【0053】
チオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーの耐熱性を向上させるという観点からは、連結基Y及びYとしては、カルボニル基、オキシカルボニル基、アミド基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、置換基を有していてもよいアルキニレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基などが好ましい。
【0054】
4a、R4b、R4c、R4d、及びR4eで表される置換基は、例えば、前記R1a及びR1bの項で例示の基が挙げられる。好ましい置換基には、アルキル基[例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基などのC1−6アルキル基(好ましくはC1−4アルキル基)など]、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基などのC5−8シクロアルキル基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基などのC1−4アルコキシ基など)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基などのC6−10アリール基など)などが含まれ、特にC1−4アルキル基が好ましい。R4a、R4b、R4c、R4d、及びR4eの置換位置は特に制限されない。t1、t2、t3、t4、及びt5は同一又は異なって、好ましくは0又は1〜5の整数、さらに好ましくは0又は1〜3の整数である。なお、t1、t2、t4、及びt5は、0又は1〜2の整数(好ましくは0又は1)であってもよい。また、t3は0又は1〜4(好ましくは1〜3)の整数であってもよい。
【0055】
好ましい前記ジハライドとしては、少なくとも芳香族環を分子中に3以上有するジハライド、例えば、下記式(3a−1)で表されるカルボニル基を有するジハライド、下記式(3a−2)で表されるカルボニル基を有しないジハライドなどが挙げられる。
【0056】
【化6】

【0057】
(式中、Dは、C6−10芳香族炭化水素環、芳香族複素環、エーテル基、又はチオエーテル基を示し、R4a、R4b、R4c、R4d、及びR4eは、同一又は異なって、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はアリール基を示し、t1、t2、t3、t4、及びt5は同一又は異なって0又は1〜2の整数を示し、X、X、s1、s2、及びs3は前記と同様である。)
【0058】
【化7】

【0059】
(式中、Y、Yは同一又は異なって直接結合、置換基を有していてもよいアルケニレン基、置換基を有していてもよいアルキニレン基、又は置換基を有していてもよいアリーレン基を示し、DはC6−10芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を示し、R4a、R4c、及びR4eは、同一又は異なって、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はアリール基を示し、t1、t3及びt5は同一又は異なって0又は1〜2の整数を示し、X及びXは前記と同様である。)
前記式(3a−1)で表される代表的なジハライドには、下記(i)〜(iii)に記載の化合物などが含まれる。
(i)DがC6−10芳香族炭化水素環[例えば、ベンゼン環(又はフェニレン基、例えば、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基など)又はナフタレン環(又はナフチレン基、例えば、1,5−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基など)]であり、R4a、R4b、R4c、R4d、及びR4eが、同一又は異なってアルキル基又はアルコキシ基(例えば、メチル基、t−ブチル基などのC1−4アルキル基)であり、s1及びs2が0であり、s3が1〜3(例えば、1又は2)であり、t1、t2、t3、t4、及びt5が同一又は異なって0又は1〜2(例えば、t1、t2、t4、及びt5が0、t3が0又は1〜2)であるジハライド;
(ii)Dが芳香族複素環[例えば、ピリジン環(又はピリジンジイル基、例えば、2,6−ピリジンジイル基など)などの芳香族複素6員環]であり、R4a、R4b、R4c、R4d、及びR4eが、同一又は異なってアルキル基又はアルコキシ基(例えば、メチル基、t−ブチル基などのC1−4アルキル基)であり、s1およびs2が0であり、s3が1であり、t1、t2、t3、t4、及びt5が同一又は異なって0又は1〜2(例えば、t1、t2、t3、t4、及びt5が0)であるジハライド;
(iii)Dがエーテル基又はチオエーテル基(例えば、エーテル基)であり、R4a、R4b、R4c、R4d、及びR4eが、同一又は異なってアルキル基又はアルコキシ基(例えば、メチル基、t−ブチル基などのC1−4アルキル基)であり、s1およびs2が1であり、s3が1であり、t1、t2、t3、t4、及びt5が同一又は異なって0又は1〜2(例えば、t1、t2、t3、t4、及びt5が0)であるジハライド。
【0060】
また、前記式(3a−2)で表される代表的なジハライドには、下記(iv)〜(v)に記載の化合物などが含まれる。
【0061】
(iv)DがC6−10芳香族炭化水素環[例えば、ベンゼン環(又はフェニレン基、例えば、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基など)など]であり、Y及びYが置換基を有していてもよいアルケニレン基(例えば、シアノビニレン基などの置換基を有していてもよいC2−4アルケニレン基、特に置換基を有していてもよいビニレン基)であり、R4a、R4c、及びR4eが、同一又は異なってアルキル基又はアルコキシ基(例えば、メチル基、t−ブチル基などのC1−4アルキル基)であり、t1、t3、及びt5が同一又は異なって0又は1〜2(例えば、t1、t3、及びt5が0)であるジハライド;
(v)芳香族複素環(例えば、オキサジアゾール環などの芳香族複素5員環)であり、Y及びYが直接結合であり、R4a、R4c、及びR4eが、同一又は異なってアルキル基又はアルコキシ基(例えば、メチル基、t−ブチル基などのC1−4アルキル基)であり、t1、t3、及びt5が同一又は異なって0又は1〜2(例えば、t1、t3、及びt5が0)であるジハライド。
【0062】
(チオエーテルフルオレン骨格含有ポリマー)
本発明のチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーは、前記ジチオール類又はその誘導体と、1種の前記ジハライドとを重合成分とするホモポリマーであってもよく、少なくとも1種の前記ジチオール類又はその誘導体と、2種以上(例えば2〜3種、特に2種)の前記ジハライドとを重合成分とするコポリマーであってもよい。例えば、ジハライドを2種使用する場合の割合は、第1のジハライド/第2のジハライド(モル比)=5/95〜95/5、好ましくは10/90〜90/10、さらに好ましくは20/80〜80/20(例えば、30/70〜70/30)程度であってもよい。また、チオエーテルフルオレン骨格含有コポリマーは、二成分で構成されたコポリマー、三成分で構成されたターポリマーなどであってもよい。前記チオエーテルフルオレンコポリマーは、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーなどであってもよい。
【0063】
前記チオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーは、ガラス転移温度Tg及び融点が高く、耐熱性に優れている。チオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーのガラス転移温度Tgは、180℃以上(例えば、180〜400℃程度)、好ましくは190〜360℃、さらに好ましくは200〜290℃程度である。また、融点Tmは、例えば、250〜550℃、好ましくは270〜400℃、さらに好ましくは300〜380℃程度である。
【0064】
また、前記チオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーは、屈折率が高い。前記チオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーの屈折率は、波長589nmにおいて、1.62以上(例えば、1.62〜1.9)、好ましくは1.63〜1.8、さらに好ましくは1.64〜1.75程度である。
【0065】
チオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーの数平均分子量Mnは、例えば、10,000〜500,000、好ましくは15,000〜200,000、さらに好ましくは18,000〜100,000程度であってもよい。また、分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、例えば、1.2〜10、好ましくは1.4〜8、さらに好ましくは1.6〜6(例えば、1.7〜4)程度であってもよく、3以下であってもよい。なお、上記、数平均分子量及び分子量分布は、ポリスチレンを基準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより評価した値である。
【0066】
(チオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーの製造方法)
本発明のチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーは、通常、式(2)で表されるジチオール類又はその誘導体と、式(3)で表される芳香族炭化水素環を少なくとも含むジハライドとを重合させることにより製造できる。前記ジハライドの割合は、前記ジチオール類又はその誘導体1当量に対して、0.5〜1.5当量、好ましくは0.8〜1.3当量、さらに好ましくは0.9〜1.1当量、通常1当量程度である場合が多い。
【0067】
また、少なくとも1種の前記ジチオール類又はその誘導体と、2種以上(例えば2〜3種、特に2種)の前記ジハライドとを反応させて、チオエーテルフルオレン骨格含有コポリマーを製造することもできる。前記ジハライドの総量の割合は、前記ジチオール類又はその誘導体1当量に対して、0.5〜1.3当量、好ましくは0.8〜1.5当量、通常1当量程度である場合が多い。例えば、ジハライドを2種使用する場合の割合は、第1のジハライド/第2のジハライド(モル比)=5/95〜95/5、好ましくは10/90〜90/10、さらに好ましくは20/80〜80/20(例えば、30/70〜70/30)程度であってもよい。
【0068】
前記重合反応は、触媒の存在下で行ってもよい。前記触媒としては、塩基触媒、酸触媒などが例示でき、通常、塩基触媒を使用することが多い。塩基触媒としては、金属水酸化物(水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属酸化物など)、金属炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸カルシウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸水素塩など)などの無機塩基;アミン類[例えば、第3級アミン類(N,N−ジメチルアニリンなどの芳香族第3級アミン、1−メチルイミダゾールなどの複素環式第3級アミン)など]、カルボン酸金属塩(酢酸ナトリウム、酢酸カルシウムなどの酢酸アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩など)などの有機塩基などが例示できる。これの触媒のうち、金属炭酸塩、特に、炭酸セシウムなどのアルカリ金属炭酸塩、炭酸カルシウムなどのアルカリ土類金属炭酸塩などが好ましい。触媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0069】
触媒の使用量は、触媒の種類に応じて調整でき、ジチオール類又はその誘導体1モルに対して、0〜5モルの範囲から選択でき、例えば、0.001〜4.5モル、通常、0.01〜4モル、好ましくは0.01〜3.5モル、さらに好ましくは0.05〜3モル程度であってもよい。
【0070】
重合反応は、溶媒の非存在下で行ってもよいが、通常、溶媒の存在下で行う場合が多い。溶媒は、特に限定されず、幅広い範囲で使用できる。代表的な溶媒(有機溶媒)としては、エーテル系溶媒(ジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類など)、ハロゲン系溶媒(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、複素環化合物(N−メチル−2−ピロリドンなど)、スルホン系溶媒(スルホラン、ジメチルスルホンなどの脂肪族スルホン、ジフェニルスルホンなどの芳香族スルホンなど)などが挙げられる。これらの溶媒のうち、特に、N−メチル−2−ピロリドンなどの複素環化合物;スルホラン、ジフェニルスルホンなどのスルホン系溶媒などの高沸点溶媒(例えば、沸点が180℃以上(例えば、200〜500℃、好ましくは210〜450℃、さらに好ましくは220〜400℃程度)の溶媒など)が好ましい。前記溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0071】
溶媒の使用量は、前記ジチオール類又はその誘導体及び前記ジハライドの総量1重量部に対して、0.1〜30重量部程度の範囲から選択でき、例えば、0.5〜20重量部、好ましくは1〜10重量部、さらに好ましくは2〜5重量部程度であってもよい。
【0072】
重合反応は、使用するジチオール類又はその誘導体、ジハライド、触媒などの種類に応じて異なるが、通常、加熱下で行うことが多く、例えば、120〜350℃、好ましくは130〜330℃、さらに好ましくは140〜310℃(例えば180〜250℃)程度で行う場合が多い。加熱は、昇温及び/又は降温操作などを適宜利用してもよく、略一定の温度にて一段階で行ってもよく、異なる温度で複数段階の加熱を行ってもよい。なお、反応時間は、例えば、30分〜48時間、好ましくは1〜24時間、さらに好ましくは1.5〜16時間(例えば、2〜10時間)程度であってもよい。
【0073】
分子量分布幅が狭く、均一で高分子量のチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーを得る場合には、複数の工程で加熱して重合を行ってもよい。複数の加熱工程では、順次加熱温度を高くする場合が多い。例えば、二段階加熱において、一段階目の加熱温度は、例えば、120〜180℃、好ましくは125〜175℃、さらに好ましくは130〜170℃程度であってもよい。また、二段階目の加熱温度は、例えば、190〜350℃、好ましくは200〜330℃、さらに好ましくは210〜310℃程度であってもよい。なお、複数段階の加熱により重合を行う場合、後続の加熱温度への移行は連続的に行ってもよく、時間的間隔を置いて行ってもよい。なお、二段階加熱による重合反応では、一段階目及び二段階目の加熱時間は、それぞれ、例えば、30分〜24時間、好ましくは1〜12時間、さらに好ましくは1.5〜6時間程度の範囲から適宜選択できる。なお、反応は、攪拌しながら行ってもよい。
【0074】
反応は、空気中で行ってもよいが、不活性ガス(ヘリウム、窒素、アルゴンなど)の雰囲気下又は流通下で行ってもよい。また、反応は、常圧又は加圧下でおこなってもよい。なお、反応の進行は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)などにより確認(又は追跡)できる。
【0075】
なお、反応終了後、生成物であるチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーは、慣用の分離方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーは、耐熱性に優れるため、各種電子機器又は機械部品(例えば、航空機用コネクタ、自動車エンジン部品、電子部品、プリント配線基板、電子機器や液晶部材の保護膜、純粋製造器部品など)、各種ケーブル用途(油田用信号ケーブル、電子力発電用ケーブル、船舶ケーブル、ロボット用ケーブルなど)、フィルム、モノフィラメントなどに利用できる。また、チオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーは、屈折率が高く、光学特性に優れるため、光学機器用部品、例えば、自動車用ヘッドランプレンズ、CD(コンパクトディスク)[CD−ROM(シーディーロム:コンパクトディスク−リードオンリーメモリー)など]、CD−ROMピックアップレンズ、フレネルレンズ、レーザープリンター用fθ(エフシータ)レンズ、カメラレンズ、リアプロジェクションテレビ用投影レンズなどの光学レンズ、位相差フィルム、拡散フィルムなどのフィルム、プラスチック光ファイバー、光ディスク基板などの用途にも有用である。
【実施例】
【0077】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0078】
チオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーの特性は以下の方法により測定又は評価した。
【0079】
(1)数平均分子量測定
チオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーの分子量(数平均分子量Mn)及びその分布(Mw/Mn)は、溶出液としてクロロホルムを用い、30℃(流速0.085mL/分)の条件で、2本の連続した線状ポリスチレンゲルカラム(Tosoh TSKgel G5000HXL、G4000HXL)を備えたJASCO Gulliverにより、ポリスチレン標準で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した。
【0080】
(2)ガラス転移温度(Tg)測定
示差走査熱量計(島津製作所(株)製、「DSC−60」)を用い、50mL/分の窒素流下、10℃/分の昇温条件で測定した。
【0081】
(3)熱重量分析(TGA)
熱重量分析(TGA)は、島津製作所(株)製、「TGA−50」装置を用いて、窒素雰囲気下及び空気雰囲気(流量50ml/分)中、加熱速度10℃/分で行い、熱分解温度を測定した。
【0082】
(4)FT−IRスペクトル
FT−IRスペクトルは、JASCO製、FT−IR−230分光光度計によって記録した。
【0083】
(5)H−NMRスペクトル
H−NMRスペクトルは、内標準としてテトラメチルシランを用い、溶媒としてCDClを用いて、JEOL GTX−400分光計によって記録した。
【0084】
(6)質量分析
MALDI−TOF−MSスペクトルを、Shimadzu AXIMA−CFR質量分析計によって得た。
【0085】
(7)溶媒溶解性
チオエーテルフルオレン骨格含有ポリマー3mgを表1に示す溶媒3mLに混合し、溶媒溶解性を以下の基準で評価した。
【0086】
++…瞬時に溶解した
+…溶解した
±…加熱により溶解した
−…溶解しなかった。
【0087】
(8)成膜性(フィルム特性)
チオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーをクロロホルムに溶解し、3%溶液を得た。この溶液をフィルター(ポアサイズ0.45μm)で濾過し、テフロン(登録商標)プレートの上に展延した。その後、室温で24時間放置した。さらに、乾燥オーブンにより60℃で24時間乾燥し、得られたフィルムの成膜性を評価した。
【0088】
(9)屈折率:多波長アッベ屈折計「DR−M2/1550」(アタゴ(株)製)を用い、589nmでの屈折率を測定した。なお、サンプルは、得られたチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーを2重量%の濃度でジオキサンに溶解した溶液をガラスシャーレに塗布し、自然乾燥後、一晩100℃で減圧乾燥して作成したものを用いた。
【0089】
(10)熱的特性
窒素雰囲気下と空気雰囲気下で10℃/分の加熱速度で熱重量分析機(TGA)により、チオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーの熱的特性を評価した。また、窒素存在下で10℃/分の加熱速度で示差走査熱量計により、チオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーの熱的特性を評価した。
【0090】
(ジチオール類の誘導体の合成)
ジチオール類の誘導体3bを以下の反応工程に従って製造した。
【0091】
【化8】

【0092】
水酸化カリウムのメタノール溶液25mL(1.68g、30.0mmol)を9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン1b(5.00g、13.2mmol)(大阪ガスケミカル株式会社製)に添加し、0℃で1時間撹拌した。この混合物に、さらに、N,N−ジメチルチオカルバモイルクロライド(3.74g、30.2mmol)を添加したのち、60℃に昇温し、温度を保持したまま3時間撹拌を続けた。得られた白色沈殿物を濾過により収集し、メタノール水溶液(メタノール/水(体積比)=1:1、室温)で洗浄した。さらに、白色沈殿物を、メタノールとクロロホルムの混合液で再結晶し、白色結晶2bを得た(収率95%(6.90g))。なお、結晶の融点は259〜262℃であった。
【0093】
以下に、得られた2bのH−NMRスペクトルデータ及びMALDI−TOF−MSスペクトルデータを示す。
【0094】
H−NMR(400MHz,CDCl,d),2.06ppm(s,6H),3.29ppm(s,6H),3.43ppm(s,6H),6.85ppm(d,J=8.8,2H),7.02−7.42ppm(m,6H),7.75ppm(d,j=7.6,2H).
MALDI−TOF−MS:551.2(M).
得られた2b(6.30g、12.0mmol)とジフェニルエーテル(5mL)の混合液を窒素の入口を備えた丸底フラスコに入れ、260℃で2時間加熱を続けた。室温に冷却した後、メタノール(50mL)を沈殿物3bに添加し、濾過により白色沈殿を収集し、メタノール水溶液(メタノール/水(体積比)=1:1、室温)で洗浄した。さらに、白色沈殿物を、メタノールとクロロホルムの混合液で再結晶し、白色結晶3bを得た(収率60%(4.00g))。なお、結晶の融点は232〜234℃であった。
【0095】
以下に、得られた3bのH−NMRスペクトルデータ及びMALDI−TOF−MSスペクトルデータを示す。
【0096】
H−NMR400MHz,CDCl,d),2.26ppm(s,6H),3.03ppm(s,br,12H),6.99−7.08ppm(m,4H),7.22−7.36ppm(m,8H),7.74ppm(d,J.9,2H).
MALDI−TOF−MS:551.2(M).
3332:Calcd;C,71.71;H,5.84;N,5.07;S,11.60;found:C,70.12;H,5.77;N,4.72;S,10.91.
また、上記反応工程において、9,9−ビス(3−メチル−4ヒドロキシフェニル)フルオレン(1b)に代えて、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(1a)を用いる以外は前記同様にして3aを得た。
【0097】
(チオエーテルフルオレン骨格含有ポリマー)
(実施例1)
チオカルバメート(3a)(0.157g、0.300mmol)、2,5−ビス(4−フルオロフェニル)−1,3,4−オキサゾール(4a)(0.077g、0.300mmol)、炭酸セシウム(0.048g、0.150mmol)、炭酸カルシウム(0.09g、0.900mmol)、及びジフェニルスルホン(0.9g)をアルゴン流通下で30mLの二口丸底フラスコに仕込んだ。この混合液を200℃で2時間加熱を続けた。その後240℃に昇温し、この温度で2時間保ち重合反応を行った。得られた混合液を室温に冷却し、酢酸(0.5mL)でクエンチしたのち、メタノールを注入し、白色粉状ポリマーの沈殿物を得た。沈殿物を濾過により収集し、沸騰メタノールで洗浄した。得られた粗ポリマーを、クロロホルム(2.0mL)に溶解し、メタノール中で再沈殿により精製した。収集したポリマーを70℃で12時間乾燥し、下記式で表される構造単位を有するポリチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーを得た(収率95%)。得られたポリチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーの数平均分子量Mnは76000、分子量分布Mw/Mnは2.2であった。
【0098】
【化9】

【0099】
以下に、得られたポリチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーのH−NMRスペクトルデータ及びIRスペクトルデータを示す。
【0100】
H−NMR(400MHz,CDCl,δ),7.90−7.93ppm(m,4H,オキサジアゾール−Φ−H),7.74ppm(d,J=6.9,2H),7.38−7.40ppm(m,4H,F−Φ−H),7.20−7.32ppm(m,14H,フルオレン−Φ−H).
FT−IR(KBr)1607cm−1(−C=N−),1027,963cm−1(オキサジアゾール),1600,1440cm−1(ベンゼン環).
(実施例2)
チオカルバメート(3a)(0.157g、0.300mmol)、5−t−ブチル−1,3−ビス(4−フルオロベンゾイル)ベンゼン(4b)(0.300mmol)、炭酸セシウム(0.048g、0.150mmol)、炭酸カルシウム(0.09g、0.900mmol)、及びジフェニルスルホン(0.9g)をアルゴン流通下で30mLの二口丸底フラスコに仕込んだ。この混合液を200℃で2時間加熱を続けた。その後240℃に昇温し、この温度で2時間保ち重合反応を行った。得られた混合液を室温に冷却し、酢酸(0.5mL)でクエンチしたのち、メタノールを注入し、白色粉状ポリマーの沈殿物を得た。沈殿物を濾過により収集し、沸騰メタノールで洗浄した。得られた粗ポリマーを、クロロホルム(2.0mL)に溶解し、メタノール中で再沈殿により精製した。収集したポリマーを70℃で12時間乾燥し、下記式で表される構造単位を有するポリチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーを得た(収率95%)。得られたポリチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーの数平均分子量Mnは14000、分子量分布Mw/Mnは2.2であった。なお、実施例1と同様にして、得られたポリマーのH−NMRスペクトル及びIRスペクトルを測定し、下記式で表されるポリチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーであることを確認した。
【0101】
【化10】

【0102】
(実施例3)
チオカルバメート(3a)(0.157g、0.300mmol)、1,4−ビス(4−フルオロベンゾイル)ベンゼン(4c)(0.300mmol)、炭酸セシウム(0.048g、0.150mmol)、炭酸カルシウム(0.09g、0.900mmol)、及びジフェニルスルホン(0.9g)をアルゴン流通下で30mLの二口丸底フラスコに仕込んだ。この混合液を200℃で2時間加熱を続けた。その後240℃に昇温し、この温度で2時間保ち重合反応を行った。得られた混合液を室温に冷却し、酢酸(0.5mL)でクエンチしたのち、メタノールを注入し、白色粉状ポリマーの沈殿物を得た。沈殿物を濾過により収集し、沸騰メタノールで洗浄した。得られた粗ポリマーを、クロロホルム(2.0mL)に溶解し、メタノール中で再沈殿により精製した。収集したポリマーを70℃で12時間乾燥し、下記式で表される構造単位を有するポリチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーを得た(収率95%)。得られたポリチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーの数平均分子量Mnは74000、分子量分布Mw/Mnは2.6であった。なお、実施例1と同様にして、得られたポリマーのH−NMRスペクトル及びIRスペクトルを測定し、下記式で表されるポリチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーであることを確認した。
【0103】
【化11】

【0104】
(実施例4)
チオカルバメート(3a)(0.157g、0.300mmol)、4,4'−ビス(4−フルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル(4d)(0.300mmol)、炭酸セシウム(0.048g、0.150mmol)、炭酸カルシウム(0.09g、0.900mmol)、及びジフェニルスルホン(0.9g)をアルゴン流通下で30mLの二口丸底フラスコに仕込んだ。この混合液を200℃で2時間加熱を続けた。その後240℃に昇温し、この温度で2時間保ち重合反応を行った。得られた混合液を室温に冷却し、酢酸(0.5mL)でクエンチしたのち、メタノールを注入し、白色粉状ポリマーの沈殿物を得た。沈殿物を濾過により収集し、沸騰メタノールで洗浄した。得られた粗ポリマーを、クロロホルム(2.0mL)に溶解し、メタノール中で再沈殿により精製した。収集したポリマーを70℃で12時間乾燥し、下記式で表される構造単位を有するポリチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーを得た(収率95%)。得られたポリチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーの数平均分子量Mnは48000、分子量分布Mw/Mnは3.8であった。なお、実施例1と同様にして、得られたポリマーのH−NMRスペクトル及びIRスペクトルを測定し、下記式で表されるポリチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーであることを確認した。
【0105】
【化12】

【0106】
(実施例5)
チオカルバメート(3a)(0.157g、0.300mmol)、6−ジ(4−フルオロベンゾイル)ピリジン(4e)(0.300mmol)、炭酸セシウム(0.048g、0.150mmol)、炭酸カルシウム(0.09g、0.900mmol)、及びジフェニルスルホン(0.9g)をアルゴン流通下で30mLの二口丸底フラスコに仕込んだ。この混合液を200℃で2時間加熱を続けた。その後240℃に昇温し、この温度で2時間保ち重合反応を行った。得られた混合液を室温に冷却し、酢酸(0.5mL)でクエンチしたのち、メタノールを注入し、白色粉状ポリマーの沈殿物を得た。沈殿物を濾過により収集し、沸騰メタノールで洗浄した。得られた粗ポリマーを、クロロホルム(2.0mL)に溶解し、メタノール中で再沈殿により精製した。収集したポリマーを70℃で12時間乾燥し、下記式で表される構造単位を有するポリチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーを得た(収率95%)。得られたポリチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーの数平均分子量Mnは27000、分子量分布Mw/Mnは5.4であった。なお、実施例1と同様にして、得られたポリマーのH−NMRスペクトル及びIRスペクトルを測定し、下記式で表されるポリチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーであることを確認した。
【0107】
【化13】

【0108】
(実施例6)
チオカルバメート(3b)(0.300mmol)、2,5−ビス(4−フルオロフェニル)−1,3,4−オキサゾール(4a)(0.077g、0.300mmol)、炭酸セシウム(0.048g、0.150mmol)、炭酸カルシウム(0.09g、0.900mmol)、及びジフェニルスルホン(0.9g)をアルゴン流通下で30mLの二口丸底フラスコに仕込んだ。この混合液を200℃で2時間加熱を続けた。その後240℃に昇温し、この温度で2時間保ち重合反応を行った。得られた混合液を室温に冷却し、酢酸(0.5mL)でクエンチしたのち、メタノールを注入し、白色粉状ポリマーの沈殿物を得た。沈殿物を濾過により収集し、沸騰メタノールで洗浄した。得られた粗ポリマーを、クロロホルム(2.0mL)に溶解し、メタノール中で再沈殿により精製した。収集したポリマーを70℃で12時間乾燥し、下記式で表される構造単位を有するポリチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーを得た(収率95%)。得られたポリチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーの数平均分子量Mnは27000、分子量分布Mw/Mnは2.5であった。なお、実施例1と同様にして、得られたポリマーのH−NMRスペクトル及びIRスペクトルを測定し、下記式で表されるポリチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーであることを確認した。
【0109】
【化14】

【0110】
(実施例7)
チオカルバメート(3b)(0.300mmol)、4,4'−ビス(4−フルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル(4d)(0.300mmol)、炭酸セシウム(0.048g、0.150mmol)、炭酸カルシウム(0.09g、0.900mmol)、及びジフェニルスルホン(0.9g)をアルゴン流通下で30mLの二口丸底フラスコに仕込んだ。この混合液を200℃で2時間加熱を続けた。その後240℃に昇温し、この温度で2時間保ち重合反応を行った。得られた混合液を室温に冷却し、酢酸(0.5mL)でクエンチしたのち、メタノールを注入し、白色粉状ポリマーの沈殿物を得た。沈殿物を濾過により収集し、沸騰メタノールで洗浄した。得られた粗ポリマーを、クロロホルム(2.0mL)に溶解し、メタノール中で再沈殿により精製した。収集したポリマーを70℃で12時間乾燥し、下記式で表される構造単位を有するポリチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーを得た(収率95%)。得られたポリチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーの数平均分子量Mnは45000、分子量分布Mw/Mnは4.2であった。なお、実施例1と同様にして、得られたポリマーのH−NMRスペクトル及びIRスペクトルを測定し、下記式で表されるポリチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーであることを確認した。
【0111】
【化15】

【0112】
実施例で得られたポリチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーについて、溶媒溶解性を評価した結果を表1に示す。なお、NMPは「N−メチルピロリドン」、CHClは「クロロホルム」、DMAcは「ジメチルアセトアミド」、THFは「テトラヒドロフラン」、CHClは「塩化メチレン」を示す。
【0113】
【表1】

【0114】
また、実施例で得られたポリチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーについて、成膜性を評価した結果を表2に示す。
【0115】
【表2】

【0116】
また、実施例で得られたポリチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーについて、屈折率を波長589nmで測定した結果を表3に示す。なお、参考のため、汎用ポリマーの屈折率も併せて表3に示す。PCは「ポリカーボネート」、PESは「ポリエーテルスルホン」、PVDCは「ポリビニリデンクロライド」、PVCは「ポリビニルカルバゾール」、PTEFは「ポリテトラフルオロエチレン」を示す。
【0117】
【表3】

【0118】
また、実施例で得られたポリチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーについて、熱的特性を測定した結果を表4に示す。なお、表4において、「Tg」とはガラス転移温度を示し、「Td」とは、熱分解温度を示し、「N」は窒素雰囲気下、「Air」とは空気雰囲気下での測定値であることを示し、「5%」などの値は、ポリマー重量が5%減少する温度を示す。例えば、T(5%,N)とは、窒素雰囲気下において、ポリマー全体の5重量%が減少する温度を示す。
【0119】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造単位を有するチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマー。
【化1】


(式中、環Z及び環Zは同一又は異なって芳香族炭化水素環を示し、R1a、R1b、R2a、及びR2bは同一又は異なって置換基を示し、R3a及びR3bは同一又は異なってアルキレン基を示し、Aは芳香族炭化水素環を少なくとも含む二価基を示し、k1及びk2は同一又は異なって0又は1以上の整数を示し、m1及びm2は同一又は異なって0又は1〜8の整数を示し、n1及びn2は同一又は異なって0又は1〜4の整数を示す。)
【請求項2】
下記式(2)で表されるジチオール類又はその誘導体と、下記式(3)で表されるジハライドとの重合物である請求項1記載のチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマー。
【化2】


(式中、環Z、環Z、R1a、R1b、R2a、R2b、R3a、R3b、m1、m2、n1、n2、k1及びk2は前記に同じ。)
【化3】


(式中、X及びXは同一又は異なってハロゲン原子を示し、Aは前記に同じ。)
【請求項3】
式(2)において、環Z及び環Zが同一又は異なってベンゼン環又はナフタレン環であり、k1及びk2が同一又は異なって0又は1〜2の整数である請求項2記載のチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマー。
【請求項4】
ジチオール類が、9,9−ビス(メルカプトフェニル)フルオレン類、及び9,9−ビス(メルカプトアルコキシフェニル)フルオレン類から選択された少なくとも一種である請求項2記載のチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマー。
【請求項5】
式(3)で表されるジハライドが、下記式(3a)で表されるジハライドである請求項2記載のチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマー。
【化4】


(式中、環Z、環Z、環Z、及び環Zは芳香族炭化水素環を示し、Dは芳香族炭化水素環、複素環、エーテル基、又はチオエーテル基を示し、Y及びYは同一又は異なって直接結合又は連結基を示し、R4a、R4b、R4c、R4d、及びR4eは同一又は異なって置換基を示し、s1及びs2は同一又は異なって0又は1を示し、s3は1〜6の整数を示し、t1、t2、t3、t4、及びt5は同一又は異なって0又は1〜8の整数を示し、X及びXは前記に同じである。ただし、Dがエーテル基又はチオエーテル基であるとき、t3=0である。)
【請求項6】
式(3a)において、環Z、環Z、環Z、及び環ZがC6−10芳香族炭化水素環であり、DがC6−10芳香族炭化水素環、芳香族複素環、エーテル基又はチオエーテル基であり、Y及びYが直接結合、カルボニル基、オキシカルボニル基、アミド基、エーテル基、チオエーテル基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、置換基を有していてもよいアルキニレン基、又は置換基を有していてもよいアリーレン基である請求項5記載のチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマー。
【請求項7】
波長589nmにおいて、屈折率が1.62以上である請求項1記載のチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマー。
【請求項8】
請求項2記載の式(2)で表されるジチオール類又はその誘導体と、芳香族炭化水素環を少なくとも含むジハライドとを重合させて、請求項1記載のチオエーテルフルオレン骨格含有ポリマーを製造する方法。

【公開番号】特開2008−69212(P2008−69212A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−247310(P2006−247310)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年3月13日 社団法人 日本化学会発行の「日本化学会第86春季年会(2006)講演予稿集CD−ROM」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年3月13日 社団法人 日本化学会発行の「日本化学会第86春季年会−講演予稿集1」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年3月13日 社団法人 日本化学会発行の「日本化学会第86春季年会−講演予稿集2」に発表
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】