説明

チオール−NCOの硬化に基づいたコーティング組成物

1以上のポリチオールおよび1以上のポリイソシアネートおよび水分によって活性化可能な潜在性塩基触媒を含んでおり、その当量比NCO:SHが1.2〜2.1であるコーティング組成物。潜在性触媒は、オキサゾリジン、アルジミン、ケチミン、およびエナミンの群から選択される。潜在性触媒は、硬化性物質の重量当たり20%までの量で存在する。該組成物はさらに、1以上の光開始剤を硬化性物質の重量当たり4%までの量で含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1以上のポリチオール、1以上のポリイソシアネート、および不活性化された塩基触媒を含んでいるコーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリチオールおよびポリイソシアネートに基づいたコーティング組成物は、塩基触媒によって触媒される。時期尚早の架橋を防ぐために、該塩基触媒は保護されまたは不活性化されることができる。国際特許出願公開第01/92362号は、光潜在性塩基を使用するチオール−イソシアネート架橋に基づいた組成物を開示する。このようなコーティングを硬化するためには、施与されたばかりの層が、適正な波長の化学線放射を照射される必要がある。したがって、広い表面、たとえばガレージの床等がコーティングされるべきときには、当該コーティングは低度に有用である。その上、該表面のいくつかの個所は、照射するのが比較的困難であることがある。このような影の個所の硬化速度は低い。
【特許文献1】国際特許出願公開第01/92362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、長いポットライフを有しながら、影の個所を含めて基体全体にわたって速い硬化速度を有するコーティング組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は、1以上のポリチオール、1以上のポリイソシアネート、および水分によって活性化可能な、不活性化された塩基触媒を含んでいるコーティング組成物によって達成される。その当量比NCO:SH、すなわちSH基の数当たりのNCO基の数は、1:2〜2:1である。
【発明の効果】
【0005】
水分で活性化可能な塩基化合物、たとえばオキサゾリジンは、一般にイソシアネート基と反応性である。この理由の故に、当該化合物はポリイソシアネート用の架橋剤として使用される。驚いたことに、チオール−イソシアネート架橋系では、これらの化合物は実質的な規模ではイソシアネート基によって結合されないで、むしろ水分の影響下にチオール−イソシアネート架橋のための触媒として作用することが発見された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
オキサゾリジンは、水分と反応して、SH−NCO反応を触媒する能力がある塩基を形成する好適な化合物である。好適なオキサゾリジンは、たとえばIncozol(商標)LVとして商業的に入手できるカルボナト−ビス−N−エチル−2−イソプロピル−1,3−オキサゾリジン、Incozol(商標)2として商業的に入手できる2−(3−ヘプチル)−N−ブチル−1,3−オキサゾラン、およびウレタンビス−オキサゾリジン、たとえばHardener OZとして商業的に入手できるようなものである。他の適当な潜在性塩基化合物は、たとえばエナミン、ケチミン、およびアルジミンである。
【0007】
硬化性物質の重量当たり、たとえば20%まで、たとえば0.01〜6%、たとえば3.5〜5%の量で、潜在性触媒は存在することができる。
【0008】
さらなる実施態様では、コーティング組成物は、光の影響下にラジカルを形成する1以上の光開始剤をさらに含んでいてもよい。驚いたことに、厚い層で施与された顔料入りの系においてさえも、相当に、約2〜20倍に、乾燥が促進されることが発見された。触媒としてオキサゾリジンを使用すると、特にこの効果は生じた。硬化性物質の重量当たり、たとえば0.01〜2.0%の量、たとえば0.1〜1.0%の量で、光開始剤は存在することができる。
【0009】
好適な光開始剤は、たとえば4−(ジメチルアミノ)安息香酸エチル(Speedcure(商標)EPD)、安息香酸2−(ジメチルアミノ)エチル(Speedcure(商標)DMB)、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド(Speedcure(商標)BMS)、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル(Speedcure(商標)EHA);1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(Speedcure(商標)TPO)であり、全てLambson社から入手できる。昼光の可視波長域で使用される光開始剤は、たとえばビス(4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル]チタン(Irgacure(商標)784、Ciba Specialty社)である。他の好適な光開始剤は、ケトン、たとえばメチルエチルケトン、2,3−ブタンジオン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、および芳香族ケトン、たとえばアセトフェノン、ベンゾフェノン、4−アミノベンゾ−フェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、バレロ−フェノン、ヘキサノフェノン、o−メトキシベンゾフェノン、α−フェニルブチロフェノン、γ−フェニルブチロフェノン、p−モルホリノプロピオフェノン、ジベンゾスベロン、4−モルホリノベンゾフェノン、4−メトキシアセトフェノン、p−ジアセチルベンゼン、1,3,5−トリアセチルベンゼン;ベンゾイン化合物、たとえばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテルおよびベンゾインエチルエーテル、4−モルホリノデオキシベンゾイン;キノンおよびアンスロン化合物、たとえばヒドロキノン、アントラキノン、ナフトキノン、アセナフテンキノン、および3−メチル−1,3,−ジアゾ−1,9−ベンズアンスロン;フェノール性化合物、たとえば2,4−ジニトロフェノール;ホスフィン化合物、たとえばトリフェニルホスフィンおよびトリ−o−トリルホスフィン;アゾ化合物、たとえばアゾビスイソブチロニトリル;チオキサントン化合物、たとえば2,4−ジエトキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン(Speedcure(商標)ITX)、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン(Speedcure(商標)CPTX);および2−クロロチオキサントン;並びに他の化合物、たとえばベンジル、ベンズアルデヒド、1−ナフトアルデヒド、α−テトラロン、2−アセチルフェナントレン、3−アセチルフェナントレン、9−アセチル−フェナントレン、10−チオキサンテノン、3−アセチリンドール、9−フルオレノン、1−インダノン、9−キサンテノン、9−チオキサンテノン、7−H−ベンズ[デ]アントラセン−7−オン、1−アセトナフトンおよび2−アセトナフトンを包含する。あるいは、該光開始剤は、ホスフィンオキシド化合物、たとえば2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASF社から入手できるLucirin(商標)TPO)またはアシルホスフィンオキシド化合物、たとえばモノ−、ビス−若しくはトリ−アシルホスフィンオキシドまたはこれらの混合物であることができる。ビスアシルホスフィンオキシド光開始剤の例は、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(Ciba Specialty Chemicals社から入手できるIrgacure(商標)819)またはビス(2,6−ジメトキシ−ベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド(DMBAPO、Ciba Specialty Chemicals社から入手できるIrgacure(商標)403)である。種々の光開始剤の混合物が使用されてもよい。
【0010】
代わりに、または追加して、1以上の光潜在性塩基、たとえば国際特許出願公開第94/28075号および欧州特許出願公開第0882072号に開示された光潜在性塩基が使用されることができる。好適な光潜在性塩基は、任意的にアルキルエーテル基および/またはアルキルエステル基で置換されたN−置換4−(o−ニトロフェニル)ジヒドロピリジン並びに4級有機ホウ素光開始剤を包含する。N−置換4−(o−ニトロフェニル)ジヒドロピリジンの例は、N−メチルニフェジピン(Macromolecules誌、1998年刊、31巻、4798ページ)、N−ブチルニフェジピン、N−ブチル−2,6−ジメチル−4−(2−ニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボン酸ジエチルエステル、および次式に従うニフェジピン

すなわち、N−メチル−2,6−ジメチル−4−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボン酸ジエチルエステルである。4級有機ホウ素光開始剤の例は、英国特許出願公開第2307473号に開示され、たとえば

である。
【0011】
さらなる好適な代替物は、α−アミノアセトフェノンの群に属する光潜在性塩基である。使用されることができるα−アミノアセトフェノンの例は、4−(メチルチオベンゾイル)−1−メチル−1−モルホリノエタン(Ciba Specialty Chemicals社からのIrgacure(商標)907)、(4−モルホリノベンゾイル)−1−ベンジル−1−ジメチルアミノプロパン(Ciba Specialty Chemicals社からのIrgacure(商標)369)または次式に従うα−アミノアセトフェノン

である。
【0012】
さらに、これらの光促進性水分硬化系については、無機酸(たとえば硝酸)の添加によって、少量、たとえば0.005〜0.05重量%が使用されたときでも、ポットライフがかなり増加されることができることが発見された。酸の少量の添加は、硬化時間にほとんど影響しない。
【0013】
好適なポリチオールは、ヒドロキシル基含有化合物をチオール基含有酸、たとえば3−メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトプロピオン酸、チオサリチル酸、メルカプトコハク酸、メルカプト酢酸、またはシステインと反応させることによって調製されることができる。好適なヒドロキシル基含有化合物の例は、ジオール、トリオール、およびテトラオール、たとえば1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、1,2−、1,3−、および1,4−シクロヘキサンジオール、および対応するシクロヘキサンジメタノール、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,2,3−トリメチロールプロパン、並びにペンタエリスリトールである。このような方法に従って調製される化合物の例は、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトプロピオネート)、およびトリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)を包含する。トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)およびペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)で、良好な結果が得られた。このような方法に従って調製された化合物のさらなる例は、ポリオール出発物質、たとえばトリメチロールプロパンに基づいた超分岐ポリオールの核とジメチロールプロピオン酸とからなる。このポリオールは、続いて3−メルカプトプロピオン酸およびイソノナン酸によってエステル化される。これらの方法は欧州特許出願公開第0448224号および国際特許出願公開第93/17060号に記載されている。
【0014】
ポリチオールを含んでいる化合物を調製する他の合成反応は、
− ハロゲン化アリールまたはハロゲン化アルキルとNaHSとを反応させて、それぞれアリール化合物およびアルキル化合物中へペンダントのチオール基を導入すること、
− グリニアール試薬とイオウとを反応させて、該構造中へペンダントのチオール基を導入すること、
− ミカエル付加反応、求核反応、求電子反応またはラジカル反応に従う、ポリメルカプタンとポリオレフィンとの反応、
− チオール官能性アルコールとイソシアネート官能性化合物との反応、および
− ジスルフィドの還元
を含む。
【0015】
ポリチオールはたとえば、1以上のヒドロキシル基を有し、以下の式、すなわちT[(CO)CHCHOHCHSH]に従う構造を有してもよく、ここでTはトリオール、たとえばトリメチロールプロパンまたはグリセロールである。このような化合物の例は、Henkel Capcure(商標)3/800の商品名でHenkel社から商業的に入手できる。
【0016】
あるいは、ポリチオールはたとえば、骨格としてポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリレート樹脂、またはポリエーテル樹脂を有する樹脂であることができる。これらのイソシアネート反応性化合物はヒドロキシル基を含んでいてもよい。
【0017】
ポリチオールはたとえば、(a)少なくとも1のポリカルボン酸またはその反応性誘導体、(b)少なくとも1のポリオール、および(c)少なくとも1のチオール官能性カルボン酸から調製されたポリエステルであることができる。該ポリエステルは、好ましくは分岐構造を有する。反応物質のうち少なくとも1が少なくとも3の官能基を有するときに、ポリカルボン酸またはその反応性誘導体、たとえば対応する酸無水物または低級アルキルエステルと多価アルコールとの縮合によって、分岐エステルは慣用的に得られる。好適なポリカルボン酸またはその反応性誘導体の例は、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ジメチルシクロヘキサンジカルボキシレート、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、フタル酸無水物、イソフタル酸、テレフタル酸、5−第3級ブチルイソフタル酸、トリメリット酸無水物、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、コハク酸、コハク酸無水物、ドデシルコハク酸無水物、コハク酸ジメチル、グルタル酸、アジピン酸、アジピン酸ジメチル、アゼライン酸、およびこれらの混合物である。好適なポリオールの例は、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセロール、1,2,6−ヘキサントリオール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメチロール、ネオペンチルグリコールとヒドロキシピバル酸とのモノエステル、水素化ビスフェノールA、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、ジメチロールプロピオン酸、ペンタエリスリトール、ジ−トリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、およびこれらの混合物を含む。好適なチオール官能性有機酸の例は、3−メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトプロピオン酸、チオ−サリチル酸、メルカプトコハク酸、メルカプト酢酸、システイン、およびこれらの混合物を含む。任意的に、モノカルボン酸およびモノアルコールが該ポリエステルの調製に使用されてもよい。好ましくは、C〜C18モノカルボン酸およびC〜C18モノアルコールが使用される。C〜C18モノカルボン酸の例は、ピバル酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、安息香酸、4−第3級ブチル安息香酸、およびこれらの混合物を含む。C〜C18モノアルコールの例は、シクロヘキサノール、2−エチルヘキサノール、ステアリルアルコール、および4−第3級ブチルシクロヘキサノールを含む。
【0018】
あるいは代りに、該ポリチオールは、チオール官能性ポリアクリレートであってもよい。このようなポリアクリレートは、(メタ)アクリル性モノマー、たとえば(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ビニル誘導体、たとえばスチレン、および任意的にヒドロキシ官能性アクリル性モノマー、たとえばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等、またはこれらの混合物から誘導されることができ、ここで(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸の語は、それぞれメタアクリレートおよびアクリレートの両者並びにメタアクリル酸およびアクリル酸の両者を言う。ジメチル−m−イソプロペニルベンジルイソシアネートとメルカプトエタノールとの反応生成物によって、チオール基は導入される。あるいは、グリシジルメタアクリレートがポリマー中に導入されて、エポキシ官能性ポリアクリレートが調製される。該エポキシ基は次に、適当なチオール官能性有機酸、たとえば上述のものと反応される。慣用の方法によって、たとえばアゾまたはペルオキシ開始剤のような適当な重合開始剤の溶液へ適当なモノマーをゆっくり添加することによって、該ポリアクリレートは調製される。
【0019】
同様に、本発明のコーティング組成物に含められることができるものは、ジ−、トリ−、またはそれ以上のチオール官能基を持つ希釈剤、たとえばエタンジチオールまたはビス−ベータ−メルカプト−エチルスルフィドである。使用が好まれるのは、比較的高分子量のチオール官能性化合物であり、これはポリチオール官能性化合物とポリイソシアネートとの反応によって得られることができる。
【0020】
好適な有機ポリイソシアネートは、多官能性の、好ましくは遊離のポリイソシアネートであって、2.5〜5の平均NCO官能基を有するものを包含し、性質において(環式)脂肪族、芳香脂肪族(araliphatic)、芳香族であることができる。該有機ポリイソシアネートは保護されていてもよい。該ポリイソシアネートはビウレット、ウレタン、ウレトジオン、およびイソシアヌレートの誘導体を包含することができる。これらの有機ポリイソシアネートの例は、1,6−ジイソシアナトヘキサン、イソホロンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタン−ジイソシアネート、4,4’−ビス(イソシアナト−シクロヘキシル)メタン、1,4−ジイソシアナトブタン、1,5−ジイソシアナト−2,2−ジメチルペンタン、2,2,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,10−ジイソシアナトデカン、4,4−ジイソシアナト−シクロヘキサン、2,4−ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、2,6−ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1−イソシアナト−3−(イソシアナトメチル)−1−メチルシクロヘキサン、m−α,α−α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、これらの上述の誘導体、およびこれらの混合物を含む。通常、これらの生成物は環境温度で液状であり、広い範囲で商業的に入手できる。特に好適なイソシアネート硬化剤はトリイソシアネートおよび付加物である。これらの例は、1,8−ジイソシアナト−4−(イソシアナトメチル)オクタン、トルエンジイソシアネート3モルとトリメチロールプロパン1モルとの付加物、1,6−ジイソシアナトヘキサンのイソシアヌレート3量体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート3量体、1,6−ジイソシアナトヘキサンのウレトジオン2量体、1,6−ジイソシアナトヘキサンのビウレット3量体、m−α,α−α’,α’−テトラメチルキシレンジイソシアネート3モルとトリメチロールプロパン1モルとの付加物、およびこれらの混合物である。好まれるのは、1,6−ヘキサンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートの環式3量体(イソシアヌレート)およびウレトジオンである。普通、これらの化合物は、これらの高級同族体の少量を含有する。
【0021】
任意的に、少なくとも2のヒドロキシル官能基を含んでいるヒドロキシル官能性化合物が、該硬化性物質中に存在することができる。該少なくとも2のヒドロキシル官能基を含んでいるヒドロキシル官能性化合物は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリオール、セルロースアセトブチレート、ヒドロキシル官能性エポキシ樹脂、アルキド、およびデンドリマー状ポリオール、たとえば国際特許出願公開第93/17060号に記載されたものから選択されることができる。また、ヒドロキシル官能性オリゴマーおよびモノマー、たとえばヒマシ油およびトリメチロールプロパンが含められてもよい。好適なポリオールは、アクリレートポリオール、たとえばNuplex社から入手できるSetalux(商標)1157である。
【0022】
ポリイソシアネートは、ポリチオールと任意の適当な手法によって混合されることができる。しかし、単に撹拌することが普通には十分である。時には、ポリイソシアネートを有機溶媒、たとえば酢酸エチルまたは酢酸1−メトキシ−2−プロピルで多少希釈して、その粘度を低減することが有用であり得る。
【0023】
環境温度におけるコーティング組成物のポットライフは、使用された触媒およびその量並びに保護用の酸が使用されたか否かに応じて、普通、1/4時間超、たとえば半時間超、約5時間まで、またはさらにそれより長い。
【0024】
本発明に従う組成物は、溶剤媒体型組成物または無溶剤型組成物であることができる。該組成物は液状オリゴマーから構成されることができるので、高固形分組成物または無溶剤型組成物としての使用にとりわけ適している。該コーティング組成物は、粉体コーティング組成物およびホットメルトコーティング組成物にも使用されることができる。好ましくは、該組成物中の理論的揮発性有機物含有量(VOC)は、約450g/l未満、より好ましくは約350g/l未満、最も好ましくは約250g/l未満、またはさらに100g/l未満である。
【0025】
該コーティング組成物は、さらに他の成分、添加剤または助剤、たとえば顔料、染料、乳化剤(界面活性剤)、顔料分散助剤、光増感剤、レベリング剤、クレーター防止剤、消泡剤、タレ防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、およびフィラーを含むことができる。
【0026】
本発明のコーティング組成物は、任意の基体に施与されることができる。基体は、たとえば金属、プラスチック、木材、ガラス、セラミック、またはある他のコーティング層であることができる。該他のコーティング層は、本発明のコーティング組成物からなるものでもよいし、別のコーティング組成物でもよい。フロアコーティング、たとえばコンクリート床上のフロアコーティングとして、またはコーティング若しくは補修コーティングとして、たとえば自動車、列車、飛行機等のような乗物用のプライマーコートとして若しくはクリアコートとして、本発明のコーティング組成物は特に有用性を示す。
【0027】
該コーティング組成物は慣用の手段によって、たとえばスプレーガン、ブラシ、またはローラーによって施与されることができ、スプレー法が好まれる。硬化温度は一般に0〜100℃、たとえば0〜30℃である。
【0028】
本発明は、以下の実施例によってさらに例証される。これらの実施例では、以下に列挙された組成物が、示されたように入手可能である。


【0029】
実施例においては、他様に示されない限り、全ての含有量はグラムで示される。
【0030】
以下の試験方法が使用された。
ポットライフ − 成分を混合した後、その系が刷毛塗りされることができた期間。
乾燥時間 − コーティング組成物が、引出し棒(drawing bar)によってガラス板上に施与された。層厚さは125μmであり、温度は20℃であった。乾燥は、BK Drying Recorderを用いて試験された。その結果は以下のように分類されることができる。
第1段階: ピンによって引かれた線が再び塞がる(「オープン時間」)。
第2段階: ピンが塗料中に直線を引き、それは再び塞がらない(「タックフリー時間」)。
第3段階: ピンが引っかき跡の残る線を引く(「ダストフリー」)。
第4段階: ピンが引っかき跡を残さない(「スクラッチフリー時間」)。
粘度 − Rheometer(Rheolab MC1、スピンドル:Z2 DIN)を使用して測定された。15分間の休止後、毎分150回転の速度で1分間にわたって粘度が測定された。このプログラムが数回繰り返された。
【実施例1】
【0031】
2成分コーティング組成物が調製された。第1成分は、ペンタエリスリトール3−メルカプトプロピオネートおよび酢酸ブチル40%を含んでいた。第2成分は、ポリイソシアネート(Tolonate(商標)HDT LV)およびオキサゾリジン(Hardener OZ)6%を含んでいた。
【0032】
これら成分は、施与前に化学量論的に混合された。第4段階の硬化時間は(85%RHで)60分間であり、その時刻における缶中の粘度は0.13Pa.秒であった。ポットライフは3時間であった。
【実施例2】
【0033】
2成分コーティング組成物が調製された。第1成分は、ペンタエリスリトール3−メルカプトプロピオネートおよび酢酸ブチル40%を含んでいた。第2成分は、ポリイソシアネート(Tolonate(商標)HDT LV)およびオキサゾリジン(Incozol(商標)2)6%を含んでいた。
【0034】
これら成分は、施与前に化学量論的に混合された。第4段階の硬化時間は(85%RHで)80分間であり、その時刻における粘度は0.25Pa.秒であった。
【実施例3】
【0035】
2成分コーティング組成物が調製された。第1成分は、ペンタエリスリトール3−メルカプトプロピオネートおよび酢酸ブチル40%を含んでいた。第2成分は、ポリイソシアネート(Tolonate(商標)HDT LV)およびオキサゾリジン(Incozol(商標)LV)6%を含んでいた。
【0036】
これら成分は、施与前に化学量論的に混合された。第4段階の硬化時間は(85%RHで)80分間であり、その時刻における粘度は0.10Pa.秒であった。
【実施例4】
【0037】
実施例1の配合物に、Speedcure(商標)BMS1%が添加された。このサンプルがパネル上に施与され、該パネルは20cmの距離からのA領域紫外線ランプ(UVAHAND−250、35mW/cm)で照射された。第4段階の硬化時間は10分間へ低減された。Speedcure(商標)BMSの添加によってポットライフは影響されず、3時間のままであった。
【実施例5】
【0038】
Speedcure(商標)BMS1%、TiO(Tipure(商標)R902−38)10%、および有機カーボンブラック(Colour Black FW2)1%が、実施例1の配合物に添加された。このサンプルがパネル上に施与され、該パネルは20cmの距離からのA領域紫外線ランプで照射された。第4段階の硬化時間は20分間へ低減された。
【実施例6】
【0039】
実施例1の配合物に、Irgacure(商標)784が1%添加された。このサンプルがパネル上に施与され、該パネルは50cmの距離からの1000Wの組立てランプで照射された。第4段階の硬化時間は3分間へ低減された。Irgacure(商標)784の添加によってポットライフは影響されなかった。
【実施例7】
【0040】
実施例4の配合物に、HNOが0.03%添加された。このサンプルがパネル上に施与され、該パネルは20cmの距離からのA領域紫外線ランプで照射された。第4段階の硬化時間は10分間のままであった。ポットライフは2倍になった。
【実施例8】
【0041】
無溶剤型2成分コーティング組成物が調製された。第1成分は、ペンタエリスリトール3−メルカプトプロピオネートおよびSpeedcure(商標)BMS1%を含んでいた。第2成分は、ポリイソシアネート(Tolonate(商標)HDT LV)およびオキサゾリジン(Incozol(商標)LV)2%を含んでいた。このサンプルがパネル上に施与され、該パネルは20cmの距離からのA領域紫外線ランプで照射された。第4段階の硬化時間は(60%RHで)20分間であった。ポットライフは45分間であった。
【実施例9】
【0042】
2成分コーティング組成物が調製された。第1成分は、ペンタエリスリトール3−メルカプトプロピオネートおよび酢酸ブチル40%を含んでいた。第2成分は、ポリイソシアネート(Desmodur(商標)E14、Bayer社)およびオキサゾリジン(Hardener OZ)6%を含んでいた。
【0043】
これら成分は、施与前に化学量論的に混合された。第4段階の硬化時間は(60%RHで)1.5時間であり、ポットライフは2時間であった。
【実施例10】
【0044】
2成分コーティング組成物が調製された。第1成分は、ペンタエリスリトール3−メルカプトプロピオネートおよび酢酸ブチル40%を含んでいた。第2成分は、ポリイソシアネート(Desmodur(商標)DN)およびオキサゾリジン(Hardener OZ)6%を含んでいた。
【0045】
これら成分は、施与前に化学量論的に混合された。第4段階の硬化時間は(60%RHで)1.5時間であり、ポットライフは2時間であった。
【実施例11】
【0046】
2成分コーティング組成物が調製された。第1成分は、ペンタエリスリトール3−メルカプトプロピオネートおよび酢酸ブチル40%を含んでいた。第2成分は、ポリイソシアネート(Tolonate(商標)HDT LV)およびケチミン(Vestamin(商標)A 139)6%を含んでいた。
【0047】
これら成分は、施与前に化学量論的に混合された。第4段階の硬化時間は(60%RHで)2.0時間であり、ポットライフは2時間であった。
[比較例1]
【0048】
2成分コーティング組成物が調製された。第1成分は、ペンタエリスリトール3−メルカプトプロピオネート、酢酸ブチル15%、およびトリフェニルホスフィン0.25%を含んでいた。第2成分は、ポリイソシアネート(Tolonate(商標)HDT LV)およびアクリレート(Actilane(商標)411)2%を含んでいた。
【0049】
これら成分は、施与前に化学量論的に混合された。第4段階の硬化時間は(20℃および85%RHで)1.5時間であり、ポットライフは30分間であった。
[比較例2]
【0050】
2成分コーティング組成物が調製された。第1成分は、ペンタエリスリトール3−メルカプトプロピオネート、酢酸ブチル15%、およびAncamin(商標)K54(Air Products社)0.05%を含んでいた。第2成分は、ポリイソシアネート(Tolonate(商標)HDT LV、Rhodia社)を含んでいた。
【0051】
これら成分は、施与前に化学量論的に混合された。第4段階の硬化時間は(20℃および85%RHで)3.0時間であり、ポットライフは20分間であった。
【実施例12】
【0052】
チオール成分A、イソシアネート成分Bおよび触媒成分Cを含有する3成分フロアコーティングが調製された。成分Aは、ペンタエリスリトールテトラ(3−メルカプトプロピオネート)83重量%、TiO(Tipure(商標)R902)16.5重量%およびケイ素に基づいた消泡剤(Byk(商標)A−525)約0.5重量%を含んでいた。任意の所望量で、顔料ペーストも成分Aに添加される。黒色顔料ペーストが使用されるならば、該ペーストは、カーボンブラック(Farbruss FW2)1重量部当たり(pbw)、ペンタエリスリトールテトラ(3−メルカプトプロピオネート)20pbw、消泡剤Byk(商標)A−525の0.2pbw、および酸性を中和するためのメチル−ジ−エタノールアミン0.04pbwを含有しなければならない。成分Bは、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート(Tolonate(商標)HDT−LV2)100%からなる。成分Cは、砂120pbw、ケイ砂15pbwおよびIncozol(商標)2の1〜4重量%を含んでいる。
【0053】
成分Aおよび成分Bは、A:B=48:52の比で混合され、コンクリート基体上に施与された。その後、砂成分Cが、施与されたばかりの層の上全面に散布されて、NCO−SH架橋を触媒した。第1の層上全面に砂が散布された後、成分A+Bの第2の層が施与される。
【実施例13】
【0054】
2成分クリアコートが調製された。第1成分は、ペンタエリスリトール3−メルカプトプロピオネート、Speedcure(商標)BMS(固形バインダーの全重量当たり)0.8重量%、酢酸ブチル(固形バインダーの全重量当たり)14.6重量%および表面張力を低減するための添加剤(Byk(商標)306)を含んでいた。
【0055】
第2成分は、ポリイソシアネート(Tolonate(商標)HDT LV)、キシレン(全固形バインダー当たり)7.7%およびオキサゾリジン(Hardener OZ、Bayer社)(全固形バインダー当たり)5.2%を含んでいた。
【0056】
これら成分は、施与前に化学量論的に混合された。ポットライフは20分間であった。青色(Halcyon Blue M.2c)の溶剤媒体型ベースコート(Akzo Nobel Car Refinishes社のAutobase(商標)Plus)を塗られたパネル上にクリアコート(約60μm)を施与するために、該サンプルが使用された。3分間のフラッシュオフ後、4個のTL−10R管(Philips Lightning社:11〜13mW/cm)からのA領域紫外光を、これらのパネルは照射された。該クリアコートの全硬化時間は(45%RHで)14分間であった。紫外線なし(シャドーキュア)のこれらのパネルの全硬化時間は(45%RHで)約90分間であった。
【実施例14】
【0057】
溶剤媒体型ベースコートにオキサゾリジン4重量%が添加されて、実施例13が繰り返された。該ベースコートの乾燥後、実施例1の2成分組成物が、このベースコート上に60μmのクリアコートを施与するのに使用された。フラッシュオフ後、A領域紫外光によって該パネルは照射された。全硬化は14分間から9分間へ促進された。
【実施例15】
【0058】
30の顔料容積濃度PVCを有する2成分紫外線プライマーが作られた。第1成分は、ペンタエリスリトール3−メルカプトプロピオネート、酢酸イソブチル、Disperbyk(商標)110(固形バインダーの全重量当たり)0.3重量%、Zeeospheres(商標)W−210(3M社から入手可能)(固形バインダーの全重量当たり)52.8重量%、Aerosil(商標)R 972(Degussa社から入手可能)およびASP600(Engelhard社から入手可能)(固形バインダーの全重量当たり)35.9重量%を含んでいた。
【0059】
第2成分は、ポリイソシアネート(Tolonate(商標)HDT LV)、キシレン、オキサゾリジン(Hardener OZ、Bayer社)(固形バインダーの全重量当たり)5.6重量%およびSpeedcure(商標)BMS(固形バインダーの全重量当たり)0.7重量%を含んでいた。
【0060】
これら成分は、施与前に混合された(当量比SH:NCO=100:125)。ポットライフは約20分間であった。該コーティング組成物は引出し棒によってブリキ板の上に塗布された。(乾燥)層厚さは110〜120μmであった。3分間のフラッシュオフ後、これらのパネルはA領域紫外光を照射された。該プライマーの全硬化時間は(45%RHで)15分間であった。該コーティングは、60分間で十分にサンディング可能であった。紫外線なし(シャドーキュア)のこれらのパネルの全硬化時間は(45%RHで)約60分間であった。3時間後にサンディングに問題はなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のポリチオールおよび1以上のポリイソシアネートおよび水分によって活性化可能な潜在性塩基触媒を含んでおり、当量比NCO:SHが1.2〜2.1であるコーティング組成物。
【請求項2】
潜在性触媒がオキサゾリジン、アルジミン、ケチミン、およびエナミンの群から選択されることを特徴とする、請求項1に従うコーティング組成物。
【請求項3】
不活性化された触媒が、硬化性物質の重量当たり20%まで、たとえば0.01〜10重量%または0.9〜6重量%の量で存在することを特徴とする、請求項1または2に従うコーティング組成物。
【請求項4】
1以上の光開始剤をさらに含んでいることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に従うコーティング組成物。
【請求項5】
光開始剤が、硬化性物質の重量当たり4%まで、好ましくは0.001〜1.2重量%の量で存在することを特徴とする、請求項4に従うコーティング組成物。
【請求項6】
オキサゾリジンと光開始剤との組み合わせを含んでいることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に従うコーティング組成物。
【請求項7】
無機酸、たとえば硝酸を含んでいることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に従うコーティング組成物。
【請求項8】
塩基で触媒されるコーティング組成物における触媒としてオキサゾリジンと光開始剤との組み合わせを使用する方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に従うコーティング組成物を自動車補修プライマーとしてまたは自動車補修クリアコートとして使用する方法。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に従うコーティング組成物をコンクリート床用コーティングとして使用する方法。

【公表番号】特表2008−513560(P2008−513560A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531756(P2007−531756)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【国際出願番号】PCT/EP2005/054628
【国際公開番号】WO2006/030029
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(500286643)アクゾ ノーベル コーティングス インターナショナル ビー ヴィ (67)
【Fターム(参考)】