チオール化によるタンパク質プロファイリング方法
【課題】タンパク質の分析方法を提供する。
【解決手段】当初の反応性官能基を有するタンパク質を生体試料から分離し、実質的に全ての当初の反応性官能基をチオール基へと変換し、その後標識をチオール基を介してタンパク質へと結合することを含む、タンパク質の分析方法が提供される。
【解決手段】当初の反応性官能基を有するタンパク質を生体試料から分離し、実質的に全ての当初の反応性官能基をチオール基へと変換し、その後標識をチオール基を介してタンパク質へと結合することを含む、タンパク質の分析方法が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的に複雑な生体試料における検体の存在を検出、分析、及び同定するのに有用な方法に関し、特に、そのような生体資料のタンパク質又はペプチドのプロファイルを得るのに有用な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
的確にタンパク質又はペプチドをプロファイルすることが可能であることは、タンパク質同定、創薬、及び、癌の早期発見その他の重要な病理学等、多くの医学的診断用途等の多くの分野において重要である。現在、タンパク質をプロファイリングする典型的手順の一つにおいては、前もって任意に分離と変性を行った後に、タンパク質試料の修飾又は標識を行うことなしに、タンパク質のシグニチャー及び/又はプロファイルを直接検出している。現在用いられている別の手順においては、選択されたただ1つの、又は少数の官能基を修飾して「イエス‐ノー」シグニチャー又はプロファイル(つまり、特定のタンパク質が検出されたか検出されなかったかを示す)を生成している。利用されている別の技術によると、ただ1つの、又は複数の標識抗体を用いて、試料中の対応する特定のタンパク質を同定している。
【0003】
タンパク質プロファイリングにはラマン分光法も利用できる。典型的なタンパク質分子のラマンスペクトルには、500〜2000cm−1の範囲に約30個のバンドが含まれる。これらのバンドは、タンパク質主鎖又は芳香族アミノ酸の側鎖の伸縮・曲げ振動、硫黄含有アミノ酸のC−S及びS−S伸縮モード、酸性アミノ酸のカルボキシル基モード、及びその他のアミノ酸の多様なC−C伸縮モード及びメチル、メチレン、メチン変形モードに関連している。更に、2500〜3500cm−1の区間においては、システイニル側鎖の環境感受性スルフヒドリル伸縮振動を含むタンパク質サブグループの水素伸縮モードに起因して、より少数の、幅広くかつ互いに重なり合うバンドが存在し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0004】
<専門用語と定義>
本発明の趣旨において、以下の専門用語及び定義が適用される。しかし、本発明は以下に述べる定義例の範囲のみに限定されない。
【0005】
「生体試料」又は「複雑な生体試料」との用語は、宿主の体液等の、タンパク質含有検体を含む試料と定義してよい。「体液」との用語は、尿、血液、血漿、血清、唾液、精液、排泄物、痰、脳脊髄液、涙液、粘液等を含む。
【0006】
「タンパク質」との用語は、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、及びアミノ酸を含んだ分子化合物、また、抗原、糖タンパク質、リポタンパク質等のようなタンパク質含有検体を含むと定義してよい。「タンパク質」との用語は、更に、タンパク質の配列を含んでよい。「バイオマーカー」との用語は、特定の分子構造を有し、それにより病気の進展又は治療の効果を測定するのに有用となる体内の生化学物質であると定義してよい。バイオマーカーはタンパク質を含み得る。
【0007】
「官能基」又は「反応基」との用語は、全体で化学反応を起こすことができる原子団であると定義してよい。換言すると、官能基とは有機化合物内の反応部位となり得る場所を示す。「当初の官能基」との用語は、タンパク質又は変性したタンパク質に以下に述べるチオ化(thiolization)プロセスを施す前に、当該タンパク質又は変性したタンパク質に存在した官能基であると定義してよい。
【0008】
「チオール」との用語は、アルコールの硫黄含有誘導体であり、その一般式R―SHにおいてRがたとえば炭化水素誘導基等の有機基であるものと定義してよい。「チオ」又は「チオ基」との用語は、チオールから誘導される硫黄‐有機基であり、一般式がR―S―であるものと定義してよい。「非チオ基」 との用語は、チオールから誘導されない基であると定義してよい。
【0009】
「チオ化した(thiolized)」 との用語は、自身が誘導されたタンパク質よりも多くのチオ基を含む修飾タンパク質であると定義してよい。「チオ化」との用語は、タンパク質を修飾するプロセスであって、修飾以前にはチオ基を有さなかったタンパク質にチオ基を導入し、又は修飾以前にいくつかのチオ基を有していたタンパク質におけるチオ基の量を増加するプロセスであると定義してよい。
【0010】
「統合的チオ化(unified thiolization)」との用語は、タンパク質の非チオ基である当初の、及び/又は修飾された官能基の全量の少なくとも98%(モル)をチオ基と置換するチオ化プロセスであると定義してよい。「部分的チオ化(partial thiolization)」との用語は、タンパク質の非チオ基である当初の、及び/又は修飾された官能基の全量の98%(モル)未満をチオ基と置換するチオ化プロセスであると定義してよい。
【0011】
「チオ化剤(thiolizing agent)」との用語は、非チオ基である当初の、及び/又は修飾された官能基と反応させるために用いることができる化学物質であり、前者をチオール基へと変換させるものと定義してよい。「アミノ」及び「アミノ基又は部分」との用語は、一般式―N(R)Hを有し、Rが水素、又は、たとえば炭化水素誘導基等の有機基である基又は部分であると定義してよい。
【0012】
「カルボニル」及び「カルボニル基又は部分」との用語は、一般式>C=Oを有する基又は部分であると定義してよい。「カルボキシル」及び「カルボキシル基又は部分」との用語は、カルボニル基の一例であると定義してよく、一般式―COOHを有する基又は部分を示す。「カルボキシル」及び「カルボキシル基又は部分」との用語は、更に、有機酸、無水物、無水ハロゲン化物(halogen‐anhydrides)又はその塩を含むと定義してよい。
【0013】
「リン酸塩」及び「リン酸基又は部分」との用語は、そのネットの式(PO4)3−において、リン原子が3つの酸素原子のそれぞれに単結合により結合し、4つ目の酸素原子に二重結合により結合している基又は部分であると定義してよい。リン酸基全体はネットの負電荷が−3であり、一般構造体O=P(―O―)3により表わしてよい。
【0014】
「ハロゲン」及び「ハロゲン基又は部分」との用語は、Halがハロゲン原子、つまりフッ素、塩素、臭素、又はヨードの原子である―Hal基又は部分と定義してよい。「イミド」及び「イミド基又は部分」との用語は、一般構造体―CO―NH―CO―を有する基又は部分であると定義してよく、無水物の窒素類似体、又はアンモニアのジアシル誘導体であると考えてよい。
【0015】
「アジリジン基又は部分」との用語は、ジメチルエニミン(dimethylenimine)としても知られるアジリジンから誘導される基又は部分であると定義してよい。アジリジンとは、飽和した、三員による、窒素含有の複素環式化合物である。
【0016】
「アクリル又はアクリル系」及び「アクリル基又は部分」との用語は、アクリル酸から誘導される基又は部分、及びメタクリル酸から誘導される基又は部分を含むと定義してよい。アクリル酸及びメタクリル酸から誘導される両基又は部分を、Rが水素(アクリル系)又はメチル(メタクリル系)である一般式CH2=CR―CO―により記載してよい。
【0017】
「付加化合物」との用語は、少なくとも二種の物質の間の付加反応により形成される化合物であると定義してよい。「付加化合物」 の定義は、付加化合物を形成する元の物質がイオン結合、共有結合、及び物理的結合を含む結合の種類のいずれか、又は全てにより結合された化合物を含んでよい。本発明の実施形態において議論するタンパク質について例示すると、「付加化合物」の一種は、たとえば2,2'‐ジチオ‐ビス(エチルアミン)等のチオール化物質(thiolating substance)を、活性化したタンパク質に結合して、それらの間に新たなσ結合を形成し、活性化タンパク質の中の元の共役が分離するようにして形成された生成物を指してよい。
【0018】
「ナノコード」との用語は、自身に物理的に連携したプローブを検出、及び/又は同定するために用いることができる組成であると定義してよい。限定しない例において、ナノコードは、1つ又はそれより多くの、サブマイクロメーターの金属バーコード、カーボンナノチューブ、フラーレン、又は、走査型プローブ顕微鏡法により検出及び同定できるその他のいかなるナノスケール的部分をも含んでいる。ナノコードは単一の部分に限られず、本発明の特定の実施形態においては、ナノコードは、たとえば2つ又はそれより多くの互いに付着するフラーレンを含む場合もある。部分がフラーレンである場合、それらを、たとえば、特定の順序に従って付着し合う大小のフラーレンの連続により構成することが可能である。異なる大きさのフラーレンのナノコード内での順序は、走査型プローブ顕微鏡法により検出することができ、また、たとえば取り付けられたプローブを同定するために使用することができる。
【0019】
「混合有機‐無機粒子(composite organic−inorganic particles)」又は「COINS」との用語は、芯及び面を有するラマン活性プローブ構造体であって、芯が第1の金属及びラマン活性有機化合物を含んだ金属コロイドを含んでいるものと定義してよい。COINsは更に第1の金属とは異なる第2の金属を含む場合もあり、第2の金属はナノ粒子の面を覆う層を形成する。COINsは金属層を覆う有機層を更に含んでよく、当該有機層にプローブが含まれる。「ビオチニル化オリゴヌクレオチド」との用語は、ビオチニル基を含むよう修飾されたオリゴヌクレオチドであると定義してよい。
【0020】
「ラマン分光法」との用語は、ラマン散乱現象に基づいて関心対象の分子を特性化及び分析する方法であると定義してよい。「ラマン散乱」は、光が関心対象の媒質を透過して、当該光のある量がその本来の方向から逸れたときに発生する。散乱した光のいくらかは媒質分子により吸収され、それにより当該分子の電子がより高レベルのエネルギー状態へと励起され、その後異なる波長にて発光が生じる。吸収された光のエネルギーと発光光のエネルギーとの差は、媒質の振動エネルギーに一致する。この差がラマン散乱度の測定値であり、関心対象の分子の特性化及び分析に利用することができる。
【0021】
「表面増感ラマン分光法」又は「SERS」との用語は、通常のラマン分光法に比べて感度が増大したラマン分光技術であると定義してよい。SERSにおいては、ラマン分光法において用いられる電磁波放射の局部的効果を増大するためにいくつかの金属のナノ粒子を。このような粒子の近傍に位置する分子は、ラマン分光分析に対する感度が大変に増大する。SERSを実行するのに用いることのできる金属ナノ粒子の非限定的例には、金、銀、又は銅が含まれる。
【0022】
<本発明の実施形態>
図1に本発明の一実施形態を概略的に示す。本実施形態に従って、タンパク質の修飾方法を提供する。タンパク質の修飾の後に、当該タンパク質の分析を行うことができる。修飾においては、任意に生体試料から当初の反応性非チオ官能基を有するタンパク質を分離し(図1、A)、当該タンパク質に統合的チオ化プロセスを施す(図1、B)、又は代わりに、部分的チオ化プロセスを施す。タンパク質の分析においては、同定物質をチオ化したタンパク質へと結合してタンパク質/同定物質付加化合物を形成し(図1、C)、当該付加化合物に機器分析等の分析を施す(図1、D)ことができる。代わりに、望ましいのであれば、上述のタンパク質の分離(図1、A)を省略することができ、タンパク質の混合物全体を、混合物における各含有量を変化させない限り、統合的に又は部分的にチオール化することができる。バイオマーカー、抗原(たとえば、前立腺特異抗原)、インターロイキン、心臓トロポニン等を含む、あらゆるタンパク質、及び/又はペプチド、及び/又はタンパク質及びペプチドのいかなる混合物又は配列をも分析することができる。
【0023】
図1、Dに示すタンパク質/同定物質付加化合物の分析には多様な方法を用いることができる。いくつかの実施形態によると、付加化合物を分析してタンパク質の存在を検出することができる(図2)。他の実施形態によると、付加化合物を分析して付加化合物を形成するタンパク質を同定することができる(図3)。検出(図2、B)、又は同定(図3、B)、又はタンパク質のいずれかを、以下に述べる機器による方法を用いて達成することができる。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態によると、用い得る機器分析の一方法はラマン分光法であり、ラマン/SERSによるピークシグニチャーはタンパク質の検出、同定のいずれにも利用することができる。利用可能なピークシグニチャーを示す部分、及び/又は分子のいくつかの例は、
(a)ペプチド及び/又はタンパク質の内在性S−H及びSH...X部分であって、Xが適切な水素結合アクセプター基を示すもの、
(b)チオール化反応による翻訳後修飾を含むタンパク質修飾の結果得られるS−H及びSH...X部分、
(c)チオール化に基づいた抱合反応を通じてペプチド/タンパク質の官能基に標識された、好みの構成のラマン活性分子
を含む。
【0025】
利用可能なラマン活性分子には、本来的に強度かつ固有のラマン/SERSピークシグニチャー/プロファイルを示し得、チオール化を含む関連の抱合反応に適したあらゆる分子が含まれる。たとえば、アクリダイト系オリゴヌクレオチド(acrydite based oligonucleotides)、及び/又は蛍光染料、及び/又は芳香族アミノ酸(天然又は非天然)をペプチド/タンパク質のチオール/硫黄基を介して共役させ、強度のラマン/SERSピークシグニチャー/プロファイルを生成することができる。
【0026】
<A.タンパク質の分離(図1、A)>
生体試料からタンパク質を分離するためには、まず、試料を当業者において周知である標準的技術を用いて事前処理することができる。事前処理に用い得る方法例には、高圧液体クロマトグラフィー、キャピラリー電気泳動、超遠心分離、又は限外ろ過が含まれ、その後に当業者により選択されるペーハー、イオン強度、及び温度等の条件において水性緩衝液の中で分離したタンパク質を可溶化する。
【0027】
事前処理の後、タンパク質を任意に消化、フラグメント分割、変性することができる。消化、フラグメント分割、及び変性の各プロセスに用い得る方法も技術的に周知であり、たとえば、トリプシンによる酵素的消化、極端なペーハー又はイオン強度を有する溶液での変性、化学的還元等を含む。
【0028】
<B.タンパク質のチオ化(図1、B)>
分離したタンパク質をチオ化するためには、当該タンパク質の1個の、又は複数の、当初の反応性非チオ官能基をチオール基へと変換することができる。タンパク質の当初の反応性非チオ官能基の98%(モル)より多くをチオール基へと変換することができる。従って、チオ化したタンパク質は、当初の反応性非チオ官能基の約2%(モル)未満を含有し得る。チオ化を達成するには、タンパク質を少なくとも一種のチオ化剤と反応させることができる。結果として、タンパク質の当初の反応性非チオ官能基うちの上記の画分をチオール基へと変換することができる。
【0029】
統合的又は部分的チオ化を実行するためには、タンパク質の当初の非チオ官能基を化学的にチオール基へと変換することができる。統合的チオ化プロセスを用いれば、結果的に、当初の非チオ官能基の全体の少なくとも98%(モル)をチオール基へと変換することができ、十分にチオ化したタンパク質が得られる。それゆえ、十分にチオ化したタンパク質は、典型的なペプチドであれば、当初の非チオ反応性官能基の約2%(モル)未満を含有し得る。希釈した小ペプチドであれば、十分にチオ化したタンパク質は、当初の非チオ反応性官能基の約0.2%(モル)未満を含有し得る。
【0030】
当業者により上述のようなプロファイリングを更に得られるようにするのには、十分にチオ化する代わりに、任意であるが部分的チオ化が十分であってよい。たとえば、当初の非チオ官能基の約40%より多くがチオ化されれば、プロファイリングは実行し得る。他の例においては、以下に述べる効率的な及び/又は強度の「信号」標識を用いれば、プロファイリングにおいて標識するためにチオ化することが必要となるのは当初の非チオ官能基のうちの約10%と低い。当初の非チオ官能基をチオール基へと変換するためには、タンパク質を少なくとも一種のチオ化剤と反応させることができる。
【0031】
典型的には、チオール基へと変換できる当初の反応性非チオ官能基には、アミノ基、カルボキシル基、カルボニル基、又はリン酸基が含まれる。タンパク質中に当初から存在するスルフヒドリル/チオール基も、以下に述べるようにプロセスの後の段階において利用することができる。以下に述べる段階毎の連続的チオ化プロセスを用いることができる。又は、当業者は適当であるならば、シングルステップの一括チオ化プロセスを選択することができる。
【0032】
用い得るチオ化剤であって、それによって当初の官能基がチオ化されるチオ化剤の例には、スクシンイミジルアセチルチオアセテート(SATA)、スクシンイミジル3‐(2‐ピリジルジチオ)プロピオン酸塩(SPDP)、2‐イミノチオラン(トラウト試薬としても知られる)、2,2'‐ジチオ‐ビス(エチルアミン)(シスタミン)、3‐(2‐ピリジルジチオ)プロピオニルヒドラジド(PDPH)、スクシンイミジルトランス‐4‐(マレイミジルメチル)シクロヘキサン‐1‐カルボン酸塩、及び2‐アセトアミド‐4‐メルカプト酪酸ヒドラジドが含まれる。一実施形態においては、チオ化プロセスにはチオ化に先立ってタンパク質を活性化することを含めることができる。活性化に用い得る試薬の一例は、1‐エチル‐3‐(3‐ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドである。
【0033】
一般的に説明すると、統合的チオ化プロセスは図4に示すように要約できる。図4において、記号「〜〜〜」は当初の官能基の末端の当初の及び/又は修飾した基ではないタンパク質を示し、「TA」 はチオ化剤であり、Xはチオ化剤の非チオール部分である。図4においては、(A)当初の及び/又は修飾したアミノ基、(B)当初の及び/又は修飾したカルボキシル基、及び(C)当初の及び/又は修飾した基(アルデヒド)基、のチオール基への基本変換を示す。図4の反応スキームは、完全にチオ化されたタンパク質は実質的にチオール基のみを含有することを示す。つまり、チオール基へと変換されなかった当初の非チオ基は説明上の意図により示されない。
【0034】
いくつかの実施形態においては、チオ化プロセスには、タンパク質付加化合物の脱保護又は還元という最終作業を含めることができる。脱保護に用い得る試薬の非限定的例にはヒドラジンが含まれる。脱保護剤としてのヒドラジンの使用を含む統合的チオ化プロセスを、図5に示す反応スキームにより示すことができる。図5からわかるように、まず、チオ化剤SATAをタンパク質に添加して、タンパク質の当初のアミノ基を用いた付加化合物を形成することができる。添加の後に、脱保護を行い、完全にチオ化したタンパク質を形成する。脱保護に用い得る試薬の一例は、ヒドラジンである。当業者は、望ましいのであれば他の適切な脱保護試薬を選択することができ、図5に示す反応を実行できる条件を決定することができる。
【0035】
タンパク質の当初のアミノ基を用いるチオ化プロセスの別の例には、タンパク質へのチオ化剤SPDPの添加が含まれ、それにより付加化合物を形成し、その後還元剤を用いて還元を行う。用い得る還元剤の一例は、硫黄含有還元剤でありクレランド試薬としても知られるジチオスレイトール(DTT)、又はトレオ‐1,4‐ジメルカプト‐2,3‐ブタンジオールである。DTTは、化学式HS―CH2―CH(OH)―CH(OH)―CH2―SHを有する。
【0036】
望ましいのであれば、当業者は他の適切な還元剤を選択することができる。このチオ化プロセスを図6により示すことができる。当業者は、図6に示す反応を実行できる条件を決定することができる。
【0037】
別の実施形態において、チオ化プロセスには、チオ化に先立ってタンパク質を活性化することを含めることができる。たとえば、タンパク質の当初のカルボキシル又はカルボニルの官能基を用いる場合にそのような活性化を行うことができる。活性化に用い得る試薬の一例は、1‐エチル‐3‐(3‐ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDAC)である。当業者は、望ましいのであれば他の活性化剤を選択することができる。
【0038】
本方法においては、タンパク質の当初のカルボキシル基を用いることができる。一方法を用いてチオ化するためには、まずタンパク質にEDACを添加することによりタンパク質を活性化することができる。次に、活性化したタンパク質をシスタミンと反応させることができ、その後DTT等の還元剤を用いて還元を行って完全にチオ化したタンパク質を形成する。シスタミンは、2,2'‐ジチオ‐ビス(エチルアミン)としても知られる硫黄含有ジアミンである。通例、このチオ化プロセスは、図7に示す反応により概略的に示す通りに要約することができる。当業者は、図7に示す反応を実行できる条件を決定することができる。
【0039】
活性化に用い得る試薬の別の例は、PDPHである。図8に示すように、本方法においては、タンパク質の当初のカルボニル(即ち、アルデヒド)基を用いることができる。図8に示す方法によってチオ化するためには、まず活性化剤及びチオ化剤の両方としての機能を併せ持ったPDPHを添加することによりタンパク質を活性化することができる。それゆえ、タンパク質の活性化にはチオ化をも含まれる。タンパク質とPDPHとが反応した結果形成されたタンパク質付加化合物を、次にDTT等の還元剤を用いて還元し完全にチオ化したタンパク質を形成することができる。当業者は、図8に示す反応を実行できる条件を決定することができる。
【0040】
<C.同定物質をチオ化したタンパク質へ結合(図1、C)>
本発明のいくつかの実施形態によると、を分析する方法には更に、少なくとも一種の同定物質をチオ化したタンパク質へ結合することを含めることができる。このような結合には、チオ化したタンパク質に標識化合物を化学的に共役させること、又はチオ化したタンパク質に標識化合物を吸収させることを含めてよい。標識化合物は、反応性部分と当該反応性部分に連結した標識を含むことができる。反応性部分はチオ化したタンパク質のチオール基と反応することができ、それにより同定物質をタンパク質へと結合する。
【0041】
少なくとも一種の同定物質をチオ化したタンパク質に結合することについて更に説明すると、図9に示す構造により概略的に示すように、同定物質は反応性部分に接続した標識を有することができる。図9において、RMは同定物質の反応性部分を記号化したものであり、TAGは以下に述べる後続のタンパク質プロファイリングに用いる標識を記号化したものであり、LMは反応性部分と標識を接続する任意の連結部分を記号化したものである。いくつかの実施形態においては、LM又はRMがたとえばラマン/SERSによるプロファイリングにおいて等、プロファイリングにおいて検出されるのであれば、LM部分又はRM‐LM部分はTAG部分の一部であってよい。
【0042】
一実施形態において、同定物質の反応性部分を完全にチオ化したタンパク質のチオール基と反応させることにより、同定物質を完全にチオ化したタンパク質へと結合することができる。それゆえ、同定物質を完全にチオ化したタンパク質へと化学的に共役させ(たとえば、共有結合を形成することにより)、図10に概略的に示す生成物を形成することができる。同定物質内に存在し得る反応性部分RM(図10)の一例は、6‐(N‐メチルアクリル)‐アミノヘキシル基等のアクリル基である。たとえば置換アクリルアミド基等のアクリル基を、ニューハンプシャー州ハドソン所在のMatrix Technologies社から入手できるアクリダイト族(ACRYDITE family)の製品により提供することができる。同定物質に存在し得る反応性部分の他の例には、ハロゲン、イミド基、アジリジン基、又はアクリル基、また、銀、金、又は銅等のチオールと反応することができる金属が含まれる。
【0043】
他の実施形態において、反応性部分RMは、スクシンイミジル基又はマレイミド基、又は両スクシンイミジル基及びマレイミド基を含有する化合物から誘導した部分を含むことができる。そのような化合物の具体的かつ非限定的例には、N‐スクシンイミジル(4‐ヨードアクテイル)アミノ安息香酸(N‐succinimidyl(4‐iodoacteyl)aminobenzoate)、スクシンイミジル‐トランス‐4‐(N‐マレイミドメチル)シクロヘキサン‐1‐カルボン酸塩)(SMCC)、m‐マレイミドベンゾイル‐N‐ヒドロキシスクシンイミドエステル、スクシンイミジル‐4‐(p‐マレイミドフェニル)酪酸塩(SMPB)、N‐γ‐(マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミドエステル(GMBS)、4‐(4‐N‐マレイミドフェニル)酪酸ヒドラジド(MPBH)、4‐(N‐マレイミドメチル)シクロヘキサン‐1‐カルボキシル‐ヒドラジド(MMCH)、スクシンイミジルオキシカルボニル‐α‐メチル‐α‐(2‐ピリジルジチオ)トルエン(SMPT)、及びN‐スクシンイミジル3‐(2‐ピリジルジチオ)プロピオン酸塩(SPDP)が含まれる。
【0044】
反応性部分を介してのタンパク質への共役に用い得る標識の例には、未修飾、被修飾、又は伸長したオリゴヌクレオチド等のオリゴヌクレオチドが含まれる。用い得る修飾オリゴヌクレオチドには、ラマン分光法又は表面増感ラマン分光法(SERS)に適した標識、及びビオチニル化オリゴヌクレオチドが含まれる。
【0045】
完全にチオ化したタンパク質への同定物質の共役について説明すると、アクリルアミドフォスフォラミダイト‐オリゴヌクレオチド(acrylamide phosphoramidite‐oligonucleotide)等のアクリダイト族の製品を使用することができる。この部分は、図11の反応によって示すように、完全にチオ化したタンパク質のチオール基と反応することができる。
【0046】
図11に示すアクリルアミドフォスフォラミダイト‐オリゴヌクレオチドには、反応性部分(アクリルアミド)、及び、オリゴヌクレオチドであって、その5'端において反応性部分へとヘキサメチレンリン酸塩連結部分を介して接続する標識が含まれる。図11からわかるように、アクリルアミドフォスフォラミダイト‐オリゴヌクレオチドのアクリル基はチオ化したタンパク質のチオール水素と反応することができ、形成されたチオエーテル結合を介してオリゴヌクレオチド標識をプロファイル対象のタンパク質へと結合する。当業者は、図11に示す反応を実行できる条件を決定することができる。
【0047】
別の実施形態においては、化学的共役に代えて、標識を含んだ同定物質をプロファイル対象のタンパク質に吸着させることができる。銀、金、銅等の幾種類かの金属はチオール基と共有結合を形成することができる。たとえば、一般的には、タンパク質、ペプチド、DNA/RNA、脂質、自己組織化単分子膜を調製するのに使用するものを含む、多様な有機化合物を、チオール‐金反応を利用して固定することができる。また、多くのタンパク質及びペプチド(たとえば、アルブミン)は、非特異結合により直接的に金属面へと吸着され得る。それゆえ、本発明のいくつかの実施形態によると、吸着及びチオール‐金/銀型システムの組み合わせを用いることができる。用い得る標識には、銀コロイド、銀ナノ微粒子、金コロイド、金ナノ微粒子、カーボンナノチューブ、微小球ナノコード(microspheres nanocodes)、プログラマブルバーコード、量子ドット(カリフォルニア州ヘイワード所在のQdot社から入手できる)、又は混合有機‐無機ナノ微粒子(COINs)が含まれる。銀コロイド、銀ナノ微粒子、金コロイド、又は金ナノ微粒子は、更に、ラマン分光法又はSERSに適した標識を含むことができる。
【0048】
COINsは、本発明の方法において使用するために、標準的な金属コロイドの化学反応を用いて容易に調製される。COINsの調製には、金属の有機化合物吸着力を利用する。事実、ラマン活性有機化合物は金属コロイドが形成される最中に金属へと吸着されるので、多様なラマン活性有機化合物を特別な付着化学反応なしにCOINへと取り込むことができる。
【0049】
通例、本発明の方法において使用するCOINsを以下のように調製することができる。適切な金属カチオン、還元剤、及び少なくとも一種の適切なラマン活性有機化合物を含む水溶液を調製する。次に、水溶液の成分を、金属カチオンが還元されて中性のコロイド金属粒子が形成される条件下に置く。適切なラマン活性有機化合物が存在しているときに金属コロイドが形成されているので、ラマン活性有機化合物はコロイド形成中に容易に金属へと吸着される。この簡単な種類のCOINを種類IのCOINと呼ぶ。通常、種類IのCOINは膜ろ過により分離することができる。また、大きさの異なるCOINsは、遠心分離により質を高めることができる。
【0050】
別の実施形態においては、COINsには第1の金属とは異なる第2の金属を含めることができ、第2の金属はナノ微粒子の表面を覆う層を形成する。この種のSERS活性ナノ微粒子を調製するためには、種類IのCOINsを適切な第2の金属のカチオン及び還元剤を含んだ水溶液中に置く。次に、水溶液の成分を、第2の金属のカチオンが還元されてナノ微粒子の表面を覆う金属層が形成される条件下に置く。特定の実施形態においては、第2の金属の層は、たとえば銀、金、白金、アルミニウム等の金属を含む。この種のCOINを種類IIのCOINsと呼ぶ。種類IIのCOINsは、種類IのCOINsと同じ方法によって分離及び/又は質向上することができる。通常、種類I及び種類IIのCOINsは、実質的に球状であり、大きさが約20ナノメートルから60ナノメートルの範囲である。ナノ微粒子の大きさは、検出中にCOINsに照射するために用いられる光の波長に対して大変小さくなるように選択される。
【0051】
通常、オリゴヌクレオチド等の有機化合物を、種類IIのCOINsにおいて第2に金属の層に付着させるには、共有結合により有機化合物を金属層の表面へと付着させる。有機層の金属層への共有結合による付着は、たとえばチオール‐金属結合等の、当業者において周知の多様な方法にて達成することができる。別の実施形態においては、金属層に付着した有機分子を架橋して分子ネットワークを形成することができる。
【0052】
本発明の方法において用いるCOINsは、たとえば酸化鉄等の磁性材料を含有した芯を含むことができる。磁性COINsは、遠心分離を行わずに、一般に用いられる磁性粒子処理システムを使用して処理することができる。実際に、磁性を、特定の生体プローブによって標識された磁性COIN粒子に付着した生物学的標的を分離するためのメカニズムとして利用することができる。
【0053】
適切なSERS信号を得られる金属がCOINには内在しており、多様なラマン活性有機化合物を粒子に含めることができる。実際に、異なる構造、混合、及び比率のラマン活性有機化合物を含んだナノ粒子を用いることにより、多数の独特なラマンシグニチャーが生成され得る。それゆえ、COINsを用いる、本明細書に記載の方法は、1個より多い、通常は10個より多い標的核酸からヌクレオチド配列情報を同時定量するのに有用である。更に、多くのCOINsを単一のナノ粒子に含めることができるので、単一のCOIN粒子からのSERS信号は、本明細書に記載のナノ粒子を含まないラマン活性材料から得られるSERS信号に比べて強度である。このような状況により、COINsを用いないラマン技術に比べて増大した感度が得られる。
【0054】
標識を含んだ同定物質をチオ化タンパク質に結合した後、タンパク質を、たとえば標準的な機器分析の方法を用いて、分析(図1参照)することができる。用い得る機器分析技術の例には、ラマン分光法、表面増感ラマン分光法、質量分析、ゲル電気泳動、高圧液体クロマトグラフィー、蛍光発光、又はリン光が含まれる。分析の結果、タンパク質のシグニチャー又はプロファイルが得られる。
【0055】
以下の実施例は、本発明を説明することを意図されているが、本発明を限定するものではない。
【0056】
<実施例1:試料の調製及び変性>
(高速/高圧液体クロマトグラフィー)(HPLC)、キャピラリー電気泳動、超遠心分離、又は限外ろ過等の方法のいずれでも用い、その後にペーハー、温度、イオン強度等の当業者により選択することができる適切な条件において緩衝液の中で可溶化することにより、試料を調製、分離、また必要であるならば脱脂することができる。任意に、タンパク質を、トリプシン消化(酵素による)、極端なペーハー又はイオン強度による変性、又は化学的還元等の方法を用いて、望ましいのであれば、消化、フラグメント分割、及び/又は変性することができる。
【0057】
たとえば、約150μgの総タンパクを含有する約10μLの血清を約37度Cにて約1時間、6モル濃度の尿素及び約5μLのDTTの200ミリモル濃度溶液と混合することができる。約20μLのアルキル化試薬の200ミリモル濃度溶液を添加して、暗所にて約1時間インキュベートすることができ、その後、約20μLのDTTの200ミリモル濃度溶液を室温にて約1時間添加する。次に、20μg/50μLのトリプシンと混合した約800μLのNH4HCO3の25ミリモル濃度溶液を添加し、約37度Cにて一晩インキュベートすることができる。その後、混合物を約−20度Cにて冷却することにより反応を止めることができる。
【0058】
<実施例2:カルボニル基を介したチオ化>
たとえばアルデヒド又はケトンに存在するカルボニル基、等のカルボニル基のチオ化にはPDPH(3‐(2‐ピリジルジチオ)プロピオニルヒドラジド)を用いることができる。また、たとえばAMBH(2‐アセトアミド‐4‐メルカプト酪酸ヒドラジド)等のヒドラジド含有剤をチオ化に用いることができる。試薬キット供給者が提示するチオ化プロセスの条件を使用することができる。チオ化反応を、結合へと進む前に止めることができる。チオ化反応の後、試料を親液化し、ペーハーが約7.4のリン酸緩衝液等の緩衝液にて洗浄することができる。
【0059】
<実施例3:アミン基を介したチオ化>
アミン基のチオ化には、SATA(スクシンイミジルアセチルチオアセテート)、SPDP(スクシンイミジル3‐(2‐ピリジルジチオ)プロピオン酸塩)、又は2‐イミノチオランのいずれでも用いることができる。試薬キット供給者が提示するチオ化プロセスの条件を使用することができる。チオ化反応の後、試料を親液化し、ペーハーが約7.4のリン酸緩衝液等の緩衝液にて洗浄することができる。
【0060】
<実施例4:カルボン酸基を介したチオ化>
カルボン酸基のチオ化には、EDAC(1‐エチル‐3‐(3‐ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)を用いることができる。試薬キット供給者が提示するチオ化プロセスの条件を使用することができる。チオ化反応の後、試料を親液化し、ペーハーが約7.4のリン酸緩衝液等の緩衝液にて洗浄することができる。
【0061】
<実施例5:リン酸基を介したチオ化>
リン酸基は、シスタミンとともにEDC(1‐エチル‐3‐(3‐ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)を用いて、カルボジイミド反応を介してチオ化することができる。試薬キット供給者が提示するチオ化プロセスの条件を使用することができる。
【0062】
<実施例6:結合>
試料を、実施例1〜4に記載したように調製することができる。試薬キット供給者が述べる通りにTAGsを結合するには、アクリダイト(登録商標)系結合等の、チオエーテル/ジスルフィド結合を用いることができる。代わりに、たとえばSIAB(N‐スクシンイミジル(4‐ヨードアセチル)アミノ安息香酸)等のハロアセチル及びハロゲン化アルキルの誘導体(ヨードアセチル誘導体が好ましい);たとえばSMCC(スクジンイミジル‐4‐(N‐マレイミドメチル)シクロヘキサナ‐1‐カルボン酸塩)等のマレイミド;MBS(m‐マレイミドベンゾイル‐N‐ヒドロキシスクシミドエステル)(m‐Maleimidobenzoyl‐N‐hydroxysuccimide ester);アジリジン;アクリロイル及びアクリレート化の誘導体(acryloyl and acrylating derivatives);チオール‐ジスルフィド交換試薬、等の他のいかなる適切かつ市販の結合方法をも用いることができる。更なる代わりとして、TAGsを付着するためには、共有結合及び標識と組み合わせてチオール吸着を行うこともできる。上記のいずれのTAGsでも使用することができる。
【0063】
本発明を上述の例を参照して説明したが、本発明の趣旨及び範囲には変形及や多様化が含まれていることは理解されよう。従って、本発明は添付の請求項によってのみ制限される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態に従う方法の特徴を示すブロック図である。
【0065】
【図2】本発明の別の実施形態に従う方法の特徴を示すブロック図である。
【0066】
【図3】本発明の更に別の実施形態に従う方法の特徴を示すブロック図である。
【0067】
【図4】本発明の一実施形態に従って統合的チオ化プロセスを実行するために使用できる一般的なスキームを示す。
【0068】
【図5】本発明の一実施形態に従って統合的チオ化プロセスを実行するために使用できる反応スキームを示す。
【0069】
【図6】本発明の一実施形態に従ってチオ化プロセスを実行するために使用できる反応スキームを示す。
【0070】
【図7】本発明の別の実施形態に従ってチオ化プロセスを実行するために使用できる反応スキームを示す。
【0071】
【図8】本発明の更に別の実施形態に従ってチオ化プロセスを実行するために使用できる反応スキームを示す。
【0072】
【図9】本発明の一実施形態に従う同定物質の一般的構造を示す。
【0073】
【図10】本発明の一実施形態に従う、チオ化したタンパク質に共役させる同定物質を含む付加化合物の一般的構造を示す。
【0074】
【図11】本発明の一実施形態に従ってチオ化したタンパク質に同定物質を共役させるプロセスを実行するために使用できる反応スキームを示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的に複雑な生体試料における検体の存在を検出、分析、及び同定するのに有用な方法に関し、特に、そのような生体資料のタンパク質又はペプチドのプロファイルを得るのに有用な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
的確にタンパク質又はペプチドをプロファイルすることが可能であることは、タンパク質同定、創薬、及び、癌の早期発見その他の重要な病理学等、多くの医学的診断用途等の多くの分野において重要である。現在、タンパク質をプロファイリングする典型的手順の一つにおいては、前もって任意に分離と変性を行った後に、タンパク質試料の修飾又は標識を行うことなしに、タンパク質のシグニチャー及び/又はプロファイルを直接検出している。現在用いられている別の手順においては、選択されたただ1つの、又は少数の官能基を修飾して「イエス‐ノー」シグニチャー又はプロファイル(つまり、特定のタンパク質が検出されたか検出されなかったかを示す)を生成している。利用されている別の技術によると、ただ1つの、又は複数の標識抗体を用いて、試料中の対応する特定のタンパク質を同定している。
【0003】
タンパク質プロファイリングにはラマン分光法も利用できる。典型的なタンパク質分子のラマンスペクトルには、500〜2000cm−1の範囲に約30個のバンドが含まれる。これらのバンドは、タンパク質主鎖又は芳香族アミノ酸の側鎖の伸縮・曲げ振動、硫黄含有アミノ酸のC−S及びS−S伸縮モード、酸性アミノ酸のカルボキシル基モード、及びその他のアミノ酸の多様なC−C伸縮モード及びメチル、メチレン、メチン変形モードに関連している。更に、2500〜3500cm−1の区間においては、システイニル側鎖の環境感受性スルフヒドリル伸縮振動を含むタンパク質サブグループの水素伸縮モードに起因して、より少数の、幅広くかつ互いに重なり合うバンドが存在し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0004】
<専門用語と定義>
本発明の趣旨において、以下の専門用語及び定義が適用される。しかし、本発明は以下に述べる定義例の範囲のみに限定されない。
【0005】
「生体試料」又は「複雑な生体試料」との用語は、宿主の体液等の、タンパク質含有検体を含む試料と定義してよい。「体液」との用語は、尿、血液、血漿、血清、唾液、精液、排泄物、痰、脳脊髄液、涙液、粘液等を含む。
【0006】
「タンパク質」との用語は、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、及びアミノ酸を含んだ分子化合物、また、抗原、糖タンパク質、リポタンパク質等のようなタンパク質含有検体を含むと定義してよい。「タンパク質」との用語は、更に、タンパク質の配列を含んでよい。「バイオマーカー」との用語は、特定の分子構造を有し、それにより病気の進展又は治療の効果を測定するのに有用となる体内の生化学物質であると定義してよい。バイオマーカーはタンパク質を含み得る。
【0007】
「官能基」又は「反応基」との用語は、全体で化学反応を起こすことができる原子団であると定義してよい。換言すると、官能基とは有機化合物内の反応部位となり得る場所を示す。「当初の官能基」との用語は、タンパク質又は変性したタンパク質に以下に述べるチオ化(thiolization)プロセスを施す前に、当該タンパク質又は変性したタンパク質に存在した官能基であると定義してよい。
【0008】
「チオール」との用語は、アルコールの硫黄含有誘導体であり、その一般式R―SHにおいてRがたとえば炭化水素誘導基等の有機基であるものと定義してよい。「チオ」又は「チオ基」との用語は、チオールから誘導される硫黄‐有機基であり、一般式がR―S―であるものと定義してよい。「非チオ基」 との用語は、チオールから誘導されない基であると定義してよい。
【0009】
「チオ化した(thiolized)」 との用語は、自身が誘導されたタンパク質よりも多くのチオ基を含む修飾タンパク質であると定義してよい。「チオ化」との用語は、タンパク質を修飾するプロセスであって、修飾以前にはチオ基を有さなかったタンパク質にチオ基を導入し、又は修飾以前にいくつかのチオ基を有していたタンパク質におけるチオ基の量を増加するプロセスであると定義してよい。
【0010】
「統合的チオ化(unified thiolization)」との用語は、タンパク質の非チオ基である当初の、及び/又は修飾された官能基の全量の少なくとも98%(モル)をチオ基と置換するチオ化プロセスであると定義してよい。「部分的チオ化(partial thiolization)」との用語は、タンパク質の非チオ基である当初の、及び/又は修飾された官能基の全量の98%(モル)未満をチオ基と置換するチオ化プロセスであると定義してよい。
【0011】
「チオ化剤(thiolizing agent)」との用語は、非チオ基である当初の、及び/又は修飾された官能基と反応させるために用いることができる化学物質であり、前者をチオール基へと変換させるものと定義してよい。「アミノ」及び「アミノ基又は部分」との用語は、一般式―N(R)Hを有し、Rが水素、又は、たとえば炭化水素誘導基等の有機基である基又は部分であると定義してよい。
【0012】
「カルボニル」及び「カルボニル基又は部分」との用語は、一般式>C=Oを有する基又は部分であると定義してよい。「カルボキシル」及び「カルボキシル基又は部分」との用語は、カルボニル基の一例であると定義してよく、一般式―COOHを有する基又は部分を示す。「カルボキシル」及び「カルボキシル基又は部分」との用語は、更に、有機酸、無水物、無水ハロゲン化物(halogen‐anhydrides)又はその塩を含むと定義してよい。
【0013】
「リン酸塩」及び「リン酸基又は部分」との用語は、そのネットの式(PO4)3−において、リン原子が3つの酸素原子のそれぞれに単結合により結合し、4つ目の酸素原子に二重結合により結合している基又は部分であると定義してよい。リン酸基全体はネットの負電荷が−3であり、一般構造体O=P(―O―)3により表わしてよい。
【0014】
「ハロゲン」及び「ハロゲン基又は部分」との用語は、Halがハロゲン原子、つまりフッ素、塩素、臭素、又はヨードの原子である―Hal基又は部分と定義してよい。「イミド」及び「イミド基又は部分」との用語は、一般構造体―CO―NH―CO―を有する基又は部分であると定義してよく、無水物の窒素類似体、又はアンモニアのジアシル誘導体であると考えてよい。
【0015】
「アジリジン基又は部分」との用語は、ジメチルエニミン(dimethylenimine)としても知られるアジリジンから誘導される基又は部分であると定義してよい。アジリジンとは、飽和した、三員による、窒素含有の複素環式化合物である。
【0016】
「アクリル又はアクリル系」及び「アクリル基又は部分」との用語は、アクリル酸から誘導される基又は部分、及びメタクリル酸から誘導される基又は部分を含むと定義してよい。アクリル酸及びメタクリル酸から誘導される両基又は部分を、Rが水素(アクリル系)又はメチル(メタクリル系)である一般式CH2=CR―CO―により記載してよい。
【0017】
「付加化合物」との用語は、少なくとも二種の物質の間の付加反応により形成される化合物であると定義してよい。「付加化合物」 の定義は、付加化合物を形成する元の物質がイオン結合、共有結合、及び物理的結合を含む結合の種類のいずれか、又は全てにより結合された化合物を含んでよい。本発明の実施形態において議論するタンパク質について例示すると、「付加化合物」の一種は、たとえば2,2'‐ジチオ‐ビス(エチルアミン)等のチオール化物質(thiolating substance)を、活性化したタンパク質に結合して、それらの間に新たなσ結合を形成し、活性化タンパク質の中の元の共役が分離するようにして形成された生成物を指してよい。
【0018】
「ナノコード」との用語は、自身に物理的に連携したプローブを検出、及び/又は同定するために用いることができる組成であると定義してよい。限定しない例において、ナノコードは、1つ又はそれより多くの、サブマイクロメーターの金属バーコード、カーボンナノチューブ、フラーレン、又は、走査型プローブ顕微鏡法により検出及び同定できるその他のいかなるナノスケール的部分をも含んでいる。ナノコードは単一の部分に限られず、本発明の特定の実施形態においては、ナノコードは、たとえば2つ又はそれより多くの互いに付着するフラーレンを含む場合もある。部分がフラーレンである場合、それらを、たとえば、特定の順序に従って付着し合う大小のフラーレンの連続により構成することが可能である。異なる大きさのフラーレンのナノコード内での順序は、走査型プローブ顕微鏡法により検出することができ、また、たとえば取り付けられたプローブを同定するために使用することができる。
【0019】
「混合有機‐無機粒子(composite organic−inorganic particles)」又は「COINS」との用語は、芯及び面を有するラマン活性プローブ構造体であって、芯が第1の金属及びラマン活性有機化合物を含んだ金属コロイドを含んでいるものと定義してよい。COINsは更に第1の金属とは異なる第2の金属を含む場合もあり、第2の金属はナノ粒子の面を覆う層を形成する。COINsは金属層を覆う有機層を更に含んでよく、当該有機層にプローブが含まれる。「ビオチニル化オリゴヌクレオチド」との用語は、ビオチニル基を含むよう修飾されたオリゴヌクレオチドであると定義してよい。
【0020】
「ラマン分光法」との用語は、ラマン散乱現象に基づいて関心対象の分子を特性化及び分析する方法であると定義してよい。「ラマン散乱」は、光が関心対象の媒質を透過して、当該光のある量がその本来の方向から逸れたときに発生する。散乱した光のいくらかは媒質分子により吸収され、それにより当該分子の電子がより高レベルのエネルギー状態へと励起され、その後異なる波長にて発光が生じる。吸収された光のエネルギーと発光光のエネルギーとの差は、媒質の振動エネルギーに一致する。この差がラマン散乱度の測定値であり、関心対象の分子の特性化及び分析に利用することができる。
【0021】
「表面増感ラマン分光法」又は「SERS」との用語は、通常のラマン分光法に比べて感度が増大したラマン分光技術であると定義してよい。SERSにおいては、ラマン分光法において用いられる電磁波放射の局部的効果を増大するためにいくつかの金属のナノ粒子を。このような粒子の近傍に位置する分子は、ラマン分光分析に対する感度が大変に増大する。SERSを実行するのに用いることのできる金属ナノ粒子の非限定的例には、金、銀、又は銅が含まれる。
【0022】
<本発明の実施形態>
図1に本発明の一実施形態を概略的に示す。本実施形態に従って、タンパク質の修飾方法を提供する。タンパク質の修飾の後に、当該タンパク質の分析を行うことができる。修飾においては、任意に生体試料から当初の反応性非チオ官能基を有するタンパク質を分離し(図1、A)、当該タンパク質に統合的チオ化プロセスを施す(図1、B)、又は代わりに、部分的チオ化プロセスを施す。タンパク質の分析においては、同定物質をチオ化したタンパク質へと結合してタンパク質/同定物質付加化合物を形成し(図1、C)、当該付加化合物に機器分析等の分析を施す(図1、D)ことができる。代わりに、望ましいのであれば、上述のタンパク質の分離(図1、A)を省略することができ、タンパク質の混合物全体を、混合物における各含有量を変化させない限り、統合的に又は部分的にチオール化することができる。バイオマーカー、抗原(たとえば、前立腺特異抗原)、インターロイキン、心臓トロポニン等を含む、あらゆるタンパク質、及び/又はペプチド、及び/又はタンパク質及びペプチドのいかなる混合物又は配列をも分析することができる。
【0023】
図1、Dに示すタンパク質/同定物質付加化合物の分析には多様な方法を用いることができる。いくつかの実施形態によると、付加化合物を分析してタンパク質の存在を検出することができる(図2)。他の実施形態によると、付加化合物を分析して付加化合物を形成するタンパク質を同定することができる(図3)。検出(図2、B)、又は同定(図3、B)、又はタンパク質のいずれかを、以下に述べる機器による方法を用いて達成することができる。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態によると、用い得る機器分析の一方法はラマン分光法であり、ラマン/SERSによるピークシグニチャーはタンパク質の検出、同定のいずれにも利用することができる。利用可能なピークシグニチャーを示す部分、及び/又は分子のいくつかの例は、
(a)ペプチド及び/又はタンパク質の内在性S−H及びSH...X部分であって、Xが適切な水素結合アクセプター基を示すもの、
(b)チオール化反応による翻訳後修飾を含むタンパク質修飾の結果得られるS−H及びSH...X部分、
(c)チオール化に基づいた抱合反応を通じてペプチド/タンパク質の官能基に標識された、好みの構成のラマン活性分子
を含む。
【0025】
利用可能なラマン活性分子には、本来的に強度かつ固有のラマン/SERSピークシグニチャー/プロファイルを示し得、チオール化を含む関連の抱合反応に適したあらゆる分子が含まれる。たとえば、アクリダイト系オリゴヌクレオチド(acrydite based oligonucleotides)、及び/又は蛍光染料、及び/又は芳香族アミノ酸(天然又は非天然)をペプチド/タンパク質のチオール/硫黄基を介して共役させ、強度のラマン/SERSピークシグニチャー/プロファイルを生成することができる。
【0026】
<A.タンパク質の分離(図1、A)>
生体試料からタンパク質を分離するためには、まず、試料を当業者において周知である標準的技術を用いて事前処理することができる。事前処理に用い得る方法例には、高圧液体クロマトグラフィー、キャピラリー電気泳動、超遠心分離、又は限外ろ過が含まれ、その後に当業者により選択されるペーハー、イオン強度、及び温度等の条件において水性緩衝液の中で分離したタンパク質を可溶化する。
【0027】
事前処理の後、タンパク質を任意に消化、フラグメント分割、変性することができる。消化、フラグメント分割、及び変性の各プロセスに用い得る方法も技術的に周知であり、たとえば、トリプシンによる酵素的消化、極端なペーハー又はイオン強度を有する溶液での変性、化学的還元等を含む。
【0028】
<B.タンパク質のチオ化(図1、B)>
分離したタンパク質をチオ化するためには、当該タンパク質の1個の、又は複数の、当初の反応性非チオ官能基をチオール基へと変換することができる。タンパク質の当初の反応性非チオ官能基の98%(モル)より多くをチオール基へと変換することができる。従って、チオ化したタンパク質は、当初の反応性非チオ官能基の約2%(モル)未満を含有し得る。チオ化を達成するには、タンパク質を少なくとも一種のチオ化剤と反応させることができる。結果として、タンパク質の当初の反応性非チオ官能基うちの上記の画分をチオール基へと変換することができる。
【0029】
統合的又は部分的チオ化を実行するためには、タンパク質の当初の非チオ官能基を化学的にチオール基へと変換することができる。統合的チオ化プロセスを用いれば、結果的に、当初の非チオ官能基の全体の少なくとも98%(モル)をチオール基へと変換することができ、十分にチオ化したタンパク質が得られる。それゆえ、十分にチオ化したタンパク質は、典型的なペプチドであれば、当初の非チオ反応性官能基の約2%(モル)未満を含有し得る。希釈した小ペプチドであれば、十分にチオ化したタンパク質は、当初の非チオ反応性官能基の約0.2%(モル)未満を含有し得る。
【0030】
当業者により上述のようなプロファイリングを更に得られるようにするのには、十分にチオ化する代わりに、任意であるが部分的チオ化が十分であってよい。たとえば、当初の非チオ官能基の約40%より多くがチオ化されれば、プロファイリングは実行し得る。他の例においては、以下に述べる効率的な及び/又は強度の「信号」標識を用いれば、プロファイリングにおいて標識するためにチオ化することが必要となるのは当初の非チオ官能基のうちの約10%と低い。当初の非チオ官能基をチオール基へと変換するためには、タンパク質を少なくとも一種のチオ化剤と反応させることができる。
【0031】
典型的には、チオール基へと変換できる当初の反応性非チオ官能基には、アミノ基、カルボキシル基、カルボニル基、又はリン酸基が含まれる。タンパク質中に当初から存在するスルフヒドリル/チオール基も、以下に述べるようにプロセスの後の段階において利用することができる。以下に述べる段階毎の連続的チオ化プロセスを用いることができる。又は、当業者は適当であるならば、シングルステップの一括チオ化プロセスを選択することができる。
【0032】
用い得るチオ化剤であって、それによって当初の官能基がチオ化されるチオ化剤の例には、スクシンイミジルアセチルチオアセテート(SATA)、スクシンイミジル3‐(2‐ピリジルジチオ)プロピオン酸塩(SPDP)、2‐イミノチオラン(トラウト試薬としても知られる)、2,2'‐ジチオ‐ビス(エチルアミン)(シスタミン)、3‐(2‐ピリジルジチオ)プロピオニルヒドラジド(PDPH)、スクシンイミジルトランス‐4‐(マレイミジルメチル)シクロヘキサン‐1‐カルボン酸塩、及び2‐アセトアミド‐4‐メルカプト酪酸ヒドラジドが含まれる。一実施形態においては、チオ化プロセスにはチオ化に先立ってタンパク質を活性化することを含めることができる。活性化に用い得る試薬の一例は、1‐エチル‐3‐(3‐ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドである。
【0033】
一般的に説明すると、統合的チオ化プロセスは図4に示すように要約できる。図4において、記号「〜〜〜」は当初の官能基の末端の当初の及び/又は修飾した基ではないタンパク質を示し、「TA」 はチオ化剤であり、Xはチオ化剤の非チオール部分である。図4においては、(A)当初の及び/又は修飾したアミノ基、(B)当初の及び/又は修飾したカルボキシル基、及び(C)当初の及び/又は修飾した基(アルデヒド)基、のチオール基への基本変換を示す。図4の反応スキームは、完全にチオ化されたタンパク質は実質的にチオール基のみを含有することを示す。つまり、チオール基へと変換されなかった当初の非チオ基は説明上の意図により示されない。
【0034】
いくつかの実施形態においては、チオ化プロセスには、タンパク質付加化合物の脱保護又は還元という最終作業を含めることができる。脱保護に用い得る試薬の非限定的例にはヒドラジンが含まれる。脱保護剤としてのヒドラジンの使用を含む統合的チオ化プロセスを、図5に示す反応スキームにより示すことができる。図5からわかるように、まず、チオ化剤SATAをタンパク質に添加して、タンパク質の当初のアミノ基を用いた付加化合物を形成することができる。添加の後に、脱保護を行い、完全にチオ化したタンパク質を形成する。脱保護に用い得る試薬の一例は、ヒドラジンである。当業者は、望ましいのであれば他の適切な脱保護試薬を選択することができ、図5に示す反応を実行できる条件を決定することができる。
【0035】
タンパク質の当初のアミノ基を用いるチオ化プロセスの別の例には、タンパク質へのチオ化剤SPDPの添加が含まれ、それにより付加化合物を形成し、その後還元剤を用いて還元を行う。用い得る還元剤の一例は、硫黄含有還元剤でありクレランド試薬としても知られるジチオスレイトール(DTT)、又はトレオ‐1,4‐ジメルカプト‐2,3‐ブタンジオールである。DTTは、化学式HS―CH2―CH(OH)―CH(OH)―CH2―SHを有する。
【0036】
望ましいのであれば、当業者は他の適切な還元剤を選択することができる。このチオ化プロセスを図6により示すことができる。当業者は、図6に示す反応を実行できる条件を決定することができる。
【0037】
別の実施形態において、チオ化プロセスには、チオ化に先立ってタンパク質を活性化することを含めることができる。たとえば、タンパク質の当初のカルボキシル又はカルボニルの官能基を用いる場合にそのような活性化を行うことができる。活性化に用い得る試薬の一例は、1‐エチル‐3‐(3‐ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDAC)である。当業者は、望ましいのであれば他の活性化剤を選択することができる。
【0038】
本方法においては、タンパク質の当初のカルボキシル基を用いることができる。一方法を用いてチオ化するためには、まずタンパク質にEDACを添加することによりタンパク質を活性化することができる。次に、活性化したタンパク質をシスタミンと反応させることができ、その後DTT等の還元剤を用いて還元を行って完全にチオ化したタンパク質を形成する。シスタミンは、2,2'‐ジチオ‐ビス(エチルアミン)としても知られる硫黄含有ジアミンである。通例、このチオ化プロセスは、図7に示す反応により概略的に示す通りに要約することができる。当業者は、図7に示す反応を実行できる条件を決定することができる。
【0039】
活性化に用い得る試薬の別の例は、PDPHである。図8に示すように、本方法においては、タンパク質の当初のカルボニル(即ち、アルデヒド)基を用いることができる。図8に示す方法によってチオ化するためには、まず活性化剤及びチオ化剤の両方としての機能を併せ持ったPDPHを添加することによりタンパク質を活性化することができる。それゆえ、タンパク質の活性化にはチオ化をも含まれる。タンパク質とPDPHとが反応した結果形成されたタンパク質付加化合物を、次にDTT等の還元剤を用いて還元し完全にチオ化したタンパク質を形成することができる。当業者は、図8に示す反応を実行できる条件を決定することができる。
【0040】
<C.同定物質をチオ化したタンパク質へ結合(図1、C)>
本発明のいくつかの実施形態によると、を分析する方法には更に、少なくとも一種の同定物質をチオ化したタンパク質へ結合することを含めることができる。このような結合には、チオ化したタンパク質に標識化合物を化学的に共役させること、又はチオ化したタンパク質に標識化合物を吸収させることを含めてよい。標識化合物は、反応性部分と当該反応性部分に連結した標識を含むことができる。反応性部分はチオ化したタンパク質のチオール基と反応することができ、それにより同定物質をタンパク質へと結合する。
【0041】
少なくとも一種の同定物質をチオ化したタンパク質に結合することについて更に説明すると、図9に示す構造により概略的に示すように、同定物質は反応性部分に接続した標識を有することができる。図9において、RMは同定物質の反応性部分を記号化したものであり、TAGは以下に述べる後続のタンパク質プロファイリングに用いる標識を記号化したものであり、LMは反応性部分と標識を接続する任意の連結部分を記号化したものである。いくつかの実施形態においては、LM又はRMがたとえばラマン/SERSによるプロファイリングにおいて等、プロファイリングにおいて検出されるのであれば、LM部分又はRM‐LM部分はTAG部分の一部であってよい。
【0042】
一実施形態において、同定物質の反応性部分を完全にチオ化したタンパク質のチオール基と反応させることにより、同定物質を完全にチオ化したタンパク質へと結合することができる。それゆえ、同定物質を完全にチオ化したタンパク質へと化学的に共役させ(たとえば、共有結合を形成することにより)、図10に概略的に示す生成物を形成することができる。同定物質内に存在し得る反応性部分RM(図10)の一例は、6‐(N‐メチルアクリル)‐アミノヘキシル基等のアクリル基である。たとえば置換アクリルアミド基等のアクリル基を、ニューハンプシャー州ハドソン所在のMatrix Technologies社から入手できるアクリダイト族(ACRYDITE family)の製品により提供することができる。同定物質に存在し得る反応性部分の他の例には、ハロゲン、イミド基、アジリジン基、又はアクリル基、また、銀、金、又は銅等のチオールと反応することができる金属が含まれる。
【0043】
他の実施形態において、反応性部分RMは、スクシンイミジル基又はマレイミド基、又は両スクシンイミジル基及びマレイミド基を含有する化合物から誘導した部分を含むことができる。そのような化合物の具体的かつ非限定的例には、N‐スクシンイミジル(4‐ヨードアクテイル)アミノ安息香酸(N‐succinimidyl(4‐iodoacteyl)aminobenzoate)、スクシンイミジル‐トランス‐4‐(N‐マレイミドメチル)シクロヘキサン‐1‐カルボン酸塩)(SMCC)、m‐マレイミドベンゾイル‐N‐ヒドロキシスクシンイミドエステル、スクシンイミジル‐4‐(p‐マレイミドフェニル)酪酸塩(SMPB)、N‐γ‐(マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミドエステル(GMBS)、4‐(4‐N‐マレイミドフェニル)酪酸ヒドラジド(MPBH)、4‐(N‐マレイミドメチル)シクロヘキサン‐1‐カルボキシル‐ヒドラジド(MMCH)、スクシンイミジルオキシカルボニル‐α‐メチル‐α‐(2‐ピリジルジチオ)トルエン(SMPT)、及びN‐スクシンイミジル3‐(2‐ピリジルジチオ)プロピオン酸塩(SPDP)が含まれる。
【0044】
反応性部分を介してのタンパク質への共役に用い得る標識の例には、未修飾、被修飾、又は伸長したオリゴヌクレオチド等のオリゴヌクレオチドが含まれる。用い得る修飾オリゴヌクレオチドには、ラマン分光法又は表面増感ラマン分光法(SERS)に適した標識、及びビオチニル化オリゴヌクレオチドが含まれる。
【0045】
完全にチオ化したタンパク質への同定物質の共役について説明すると、アクリルアミドフォスフォラミダイト‐オリゴヌクレオチド(acrylamide phosphoramidite‐oligonucleotide)等のアクリダイト族の製品を使用することができる。この部分は、図11の反応によって示すように、完全にチオ化したタンパク質のチオール基と反応することができる。
【0046】
図11に示すアクリルアミドフォスフォラミダイト‐オリゴヌクレオチドには、反応性部分(アクリルアミド)、及び、オリゴヌクレオチドであって、その5'端において反応性部分へとヘキサメチレンリン酸塩連結部分を介して接続する標識が含まれる。図11からわかるように、アクリルアミドフォスフォラミダイト‐オリゴヌクレオチドのアクリル基はチオ化したタンパク質のチオール水素と反応することができ、形成されたチオエーテル結合を介してオリゴヌクレオチド標識をプロファイル対象のタンパク質へと結合する。当業者は、図11に示す反応を実行できる条件を決定することができる。
【0047】
別の実施形態においては、化学的共役に代えて、標識を含んだ同定物質をプロファイル対象のタンパク質に吸着させることができる。銀、金、銅等の幾種類かの金属はチオール基と共有結合を形成することができる。たとえば、一般的には、タンパク質、ペプチド、DNA/RNA、脂質、自己組織化単分子膜を調製するのに使用するものを含む、多様な有機化合物を、チオール‐金反応を利用して固定することができる。また、多くのタンパク質及びペプチド(たとえば、アルブミン)は、非特異結合により直接的に金属面へと吸着され得る。それゆえ、本発明のいくつかの実施形態によると、吸着及びチオール‐金/銀型システムの組み合わせを用いることができる。用い得る標識には、銀コロイド、銀ナノ微粒子、金コロイド、金ナノ微粒子、カーボンナノチューブ、微小球ナノコード(microspheres nanocodes)、プログラマブルバーコード、量子ドット(カリフォルニア州ヘイワード所在のQdot社から入手できる)、又は混合有機‐無機ナノ微粒子(COINs)が含まれる。銀コロイド、銀ナノ微粒子、金コロイド、又は金ナノ微粒子は、更に、ラマン分光法又はSERSに適した標識を含むことができる。
【0048】
COINsは、本発明の方法において使用するために、標準的な金属コロイドの化学反応を用いて容易に調製される。COINsの調製には、金属の有機化合物吸着力を利用する。事実、ラマン活性有機化合物は金属コロイドが形成される最中に金属へと吸着されるので、多様なラマン活性有機化合物を特別な付着化学反応なしにCOINへと取り込むことができる。
【0049】
通例、本発明の方法において使用するCOINsを以下のように調製することができる。適切な金属カチオン、還元剤、及び少なくとも一種の適切なラマン活性有機化合物を含む水溶液を調製する。次に、水溶液の成分を、金属カチオンが還元されて中性のコロイド金属粒子が形成される条件下に置く。適切なラマン活性有機化合物が存在しているときに金属コロイドが形成されているので、ラマン活性有機化合物はコロイド形成中に容易に金属へと吸着される。この簡単な種類のCOINを種類IのCOINと呼ぶ。通常、種類IのCOINは膜ろ過により分離することができる。また、大きさの異なるCOINsは、遠心分離により質を高めることができる。
【0050】
別の実施形態においては、COINsには第1の金属とは異なる第2の金属を含めることができ、第2の金属はナノ微粒子の表面を覆う層を形成する。この種のSERS活性ナノ微粒子を調製するためには、種類IのCOINsを適切な第2の金属のカチオン及び還元剤を含んだ水溶液中に置く。次に、水溶液の成分を、第2の金属のカチオンが還元されてナノ微粒子の表面を覆う金属層が形成される条件下に置く。特定の実施形態においては、第2の金属の層は、たとえば銀、金、白金、アルミニウム等の金属を含む。この種のCOINを種類IIのCOINsと呼ぶ。種類IIのCOINsは、種類IのCOINsと同じ方法によって分離及び/又は質向上することができる。通常、種類I及び種類IIのCOINsは、実質的に球状であり、大きさが約20ナノメートルから60ナノメートルの範囲である。ナノ微粒子の大きさは、検出中にCOINsに照射するために用いられる光の波長に対して大変小さくなるように選択される。
【0051】
通常、オリゴヌクレオチド等の有機化合物を、種類IIのCOINsにおいて第2に金属の層に付着させるには、共有結合により有機化合物を金属層の表面へと付着させる。有機層の金属層への共有結合による付着は、たとえばチオール‐金属結合等の、当業者において周知の多様な方法にて達成することができる。別の実施形態においては、金属層に付着した有機分子を架橋して分子ネットワークを形成することができる。
【0052】
本発明の方法において用いるCOINsは、たとえば酸化鉄等の磁性材料を含有した芯を含むことができる。磁性COINsは、遠心分離を行わずに、一般に用いられる磁性粒子処理システムを使用して処理することができる。実際に、磁性を、特定の生体プローブによって標識された磁性COIN粒子に付着した生物学的標的を分離するためのメカニズムとして利用することができる。
【0053】
適切なSERS信号を得られる金属がCOINには内在しており、多様なラマン活性有機化合物を粒子に含めることができる。実際に、異なる構造、混合、及び比率のラマン活性有機化合物を含んだナノ粒子を用いることにより、多数の独特なラマンシグニチャーが生成され得る。それゆえ、COINsを用いる、本明細書に記載の方法は、1個より多い、通常は10個より多い標的核酸からヌクレオチド配列情報を同時定量するのに有用である。更に、多くのCOINsを単一のナノ粒子に含めることができるので、単一のCOIN粒子からのSERS信号は、本明細書に記載のナノ粒子を含まないラマン活性材料から得られるSERS信号に比べて強度である。このような状況により、COINsを用いないラマン技術に比べて増大した感度が得られる。
【0054】
標識を含んだ同定物質をチオ化タンパク質に結合した後、タンパク質を、たとえば標準的な機器分析の方法を用いて、分析(図1参照)することができる。用い得る機器分析技術の例には、ラマン分光法、表面増感ラマン分光法、質量分析、ゲル電気泳動、高圧液体クロマトグラフィー、蛍光発光、又はリン光が含まれる。分析の結果、タンパク質のシグニチャー又はプロファイルが得られる。
【0055】
以下の実施例は、本発明を説明することを意図されているが、本発明を限定するものではない。
【0056】
<実施例1:試料の調製及び変性>
(高速/高圧液体クロマトグラフィー)(HPLC)、キャピラリー電気泳動、超遠心分離、又は限外ろ過等の方法のいずれでも用い、その後にペーハー、温度、イオン強度等の当業者により選択することができる適切な条件において緩衝液の中で可溶化することにより、試料を調製、分離、また必要であるならば脱脂することができる。任意に、タンパク質を、トリプシン消化(酵素による)、極端なペーハー又はイオン強度による変性、又は化学的還元等の方法を用いて、望ましいのであれば、消化、フラグメント分割、及び/又は変性することができる。
【0057】
たとえば、約150μgの総タンパクを含有する約10μLの血清を約37度Cにて約1時間、6モル濃度の尿素及び約5μLのDTTの200ミリモル濃度溶液と混合することができる。約20μLのアルキル化試薬の200ミリモル濃度溶液を添加して、暗所にて約1時間インキュベートすることができ、その後、約20μLのDTTの200ミリモル濃度溶液を室温にて約1時間添加する。次に、20μg/50μLのトリプシンと混合した約800μLのNH4HCO3の25ミリモル濃度溶液を添加し、約37度Cにて一晩インキュベートすることができる。その後、混合物を約−20度Cにて冷却することにより反応を止めることができる。
【0058】
<実施例2:カルボニル基を介したチオ化>
たとえばアルデヒド又はケトンに存在するカルボニル基、等のカルボニル基のチオ化にはPDPH(3‐(2‐ピリジルジチオ)プロピオニルヒドラジド)を用いることができる。また、たとえばAMBH(2‐アセトアミド‐4‐メルカプト酪酸ヒドラジド)等のヒドラジド含有剤をチオ化に用いることができる。試薬キット供給者が提示するチオ化プロセスの条件を使用することができる。チオ化反応を、結合へと進む前に止めることができる。チオ化反応の後、試料を親液化し、ペーハーが約7.4のリン酸緩衝液等の緩衝液にて洗浄することができる。
【0059】
<実施例3:アミン基を介したチオ化>
アミン基のチオ化には、SATA(スクシンイミジルアセチルチオアセテート)、SPDP(スクシンイミジル3‐(2‐ピリジルジチオ)プロピオン酸塩)、又は2‐イミノチオランのいずれでも用いることができる。試薬キット供給者が提示するチオ化プロセスの条件を使用することができる。チオ化反応の後、試料を親液化し、ペーハーが約7.4のリン酸緩衝液等の緩衝液にて洗浄することができる。
【0060】
<実施例4:カルボン酸基を介したチオ化>
カルボン酸基のチオ化には、EDAC(1‐エチル‐3‐(3‐ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)を用いることができる。試薬キット供給者が提示するチオ化プロセスの条件を使用することができる。チオ化反応の後、試料を親液化し、ペーハーが約7.4のリン酸緩衝液等の緩衝液にて洗浄することができる。
【0061】
<実施例5:リン酸基を介したチオ化>
リン酸基は、シスタミンとともにEDC(1‐エチル‐3‐(3‐ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)を用いて、カルボジイミド反応を介してチオ化することができる。試薬キット供給者が提示するチオ化プロセスの条件を使用することができる。
【0062】
<実施例6:結合>
試料を、実施例1〜4に記載したように調製することができる。試薬キット供給者が述べる通りにTAGsを結合するには、アクリダイト(登録商標)系結合等の、チオエーテル/ジスルフィド結合を用いることができる。代わりに、たとえばSIAB(N‐スクシンイミジル(4‐ヨードアセチル)アミノ安息香酸)等のハロアセチル及びハロゲン化アルキルの誘導体(ヨードアセチル誘導体が好ましい);たとえばSMCC(スクジンイミジル‐4‐(N‐マレイミドメチル)シクロヘキサナ‐1‐カルボン酸塩)等のマレイミド;MBS(m‐マレイミドベンゾイル‐N‐ヒドロキシスクシミドエステル)(m‐Maleimidobenzoyl‐N‐hydroxysuccimide ester);アジリジン;アクリロイル及びアクリレート化の誘導体(acryloyl and acrylating derivatives);チオール‐ジスルフィド交換試薬、等の他のいかなる適切かつ市販の結合方法をも用いることができる。更なる代わりとして、TAGsを付着するためには、共有結合及び標識と組み合わせてチオール吸着を行うこともできる。上記のいずれのTAGsでも使用することができる。
【0063】
本発明を上述の例を参照して説明したが、本発明の趣旨及び範囲には変形及や多様化が含まれていることは理解されよう。従って、本発明は添付の請求項によってのみ制限される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態に従う方法の特徴を示すブロック図である。
【0065】
【図2】本発明の別の実施形態に従う方法の特徴を示すブロック図である。
【0066】
【図3】本発明の更に別の実施形態に従う方法の特徴を示すブロック図である。
【0067】
【図4】本発明の一実施形態に従って統合的チオ化プロセスを実行するために使用できる一般的なスキームを示す。
【0068】
【図5】本発明の一実施形態に従って統合的チオ化プロセスを実行するために使用できる反応スキームを示す。
【0069】
【図6】本発明の一実施形態に従ってチオ化プロセスを実行するために使用できる反応スキームを示す。
【0070】
【図7】本発明の別の実施形態に従ってチオ化プロセスを実行するために使用できる反応スキームを示す。
【0071】
【図8】本発明の更に別の実施形態に従ってチオ化プロセスを実行するために使用できる反応スキームを示す。
【0072】
【図9】本発明の一実施形態に従う同定物質の一般的構造を示す。
【0073】
【図10】本発明の一実施形態に従う、チオ化したタンパク質に共役させる同定物質を含む付加化合物の一般的構造を示す。
【0074】
【図11】本発明の一実施形態に従ってチオ化したタンパク質に同定物質を共役させるプロセスを実行するために使用できる反応スキームを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質を修飾する方法であって、
(a)当初の反応性非チオ官能基を有する前記タンパク質を生体試料から分離することと、
(b)前記当初の反応性非チオ官能基をチオール基へと変換してチオ化したタンパク質を得ることと
を含み、
前記チオ化したタンパク質は、前記当初の反応性非チオ官能基の約2%(モル)未満を含有する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記チオ化したタンパク質には、前記当初の反応性非チオ官能基が実質的にないことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記当初の反応性官能基は、アミノ基、カルボキシル基、カルボニル基、スルフヒドリル/チオール基、又はリン酸基を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記変換することは、前記タンパク質を少なくとも一種のチオ化剤と反応させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記チオ化剤は、スクシンイミジルアセチルチオアセテート、スクシンイミジル3‐(2‐ピリジルジチオ)プロピオン酸塩、2‐イミノチオラン(トラウト試薬としても知られる)、2,2'‐ジチオ‐ビス(エチルアミン)(シスタミン)、3‐(2‐ピリジルジチオ)プロピオニルヒドラジド、スクシンイミジルトランス‐4‐(マレイミジルメチル)シクロヘキサン‐1‐カルボン酸塩、及び2‐アセトアミド‐4‐メルカプト酪酸ヒドラジドからなる群から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記当初の反応性非チオ官能基はアミノ基であり、前記チオ化剤は、スクシンイミジルアセチルチオアセテート、スクシンイミジル3‐(2‐ピリジルジチオ)プロピオン酸塩、及び2‐イミノチオランからなる群から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
(a)前記タンパク質をスクシンイミジルアセチルチオアセテートと反応させてタンパク質付加化合物を形成することと、
(b)前記付加化合物をヒドラジンと反応させることと
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
(a)前記タンパク質をスクシンイミジル3‐(2‐ピリジルジチオ)プロピオン酸塩と反応させてタンパク質付加化合物を形成することと、
(b)前記付加化合物をジチオスレイトールと反応させることにより前記付加化合物を還元することと
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記当初の反応性官能基はカルボキシル基であり、前記チオ化剤は2,2'‐ジチオ‐ビス(エチルアミン)であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
(a)前記タンパク質を1‐エチル‐3‐(3‐ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドと反応させることによって前記タンパク質を活性化して中間体を形成することと、
(b)前記中間体を2,2'‐ジチオ‐ビス(エチルアミン)と反応させてタンパク質付加化合物を形成することと、
(c)前記付加化合物をジチオスレイトールと反応させることにより前記付加化合物を還元することと
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記当初の反応性非チオ官能基はカルボニル基であり、前記チオ化剤は、3‐(2‐ピリジルジチオ)プロピオニルヒドラジド、及び2‐アセトアミド‐4‐メルカプト酪酸ヒドラジドから選択されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
(a)前記タンパク質を3‐(2‐ピリジルジチオ)プロピオニルヒドラジドと反応させてタンパク質付加化合物を形成することと、
(b)前記付加化合物をジチオスレイトールと反応させることにより前記付加化合物を還元することと
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記当初の反応性非チオ官能基はリン酸基であり、前記チオ化剤は2,2'‐ジチオ‐ビス(エチルアミン)であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項14】
(a)前記タンパク質を1‐エチル‐3‐(3‐ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドと反応させることによって前記タンパク質を活性化して中間体を形成することと、
(b)前記中間体を2,2'‐ジチオ‐ビス(エチルアミン)と反応させてタンパク質付加化合物を形成することと、
(c)前記付加化合物をジチオスレイトールと反応させることにより前記付加化合物を還元することと
を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に従ってタンパク質を修飾してチオ化したタンパク質を得ることを含み、
少なくとも一種の同定物質を前記チオ化したタンパク質に結合してタンパク質/同定物質付加化合物を得ることと、前記付加化合物に分析を施して前記タンパク質の存在を検出することとを更に含む、
タンパク質の検出方法。
【請求項16】
前記同定物質を結合することは、標識化合物を前記チオ化したタンパク質に化学的に共役させることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記標識化合物は、反応性部分、及び該反応性部分に連結した標識を含み、前記反応性部分は前記チオ化したタンパク質のチオール基と反応することにより前記同定物質を前記タンパク質へと結合することを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記反応性部分は、ハロゲン、イミド基、アジリジン基、又はアクリル基、ハロゲン、イミド基、アジリジン基、アクリル、銀、金、又は銅を含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記反応性部分は、6‐(N‐メチルアクリル)‐アミノヘキシルであることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記反応性部分は、N‐スクシンイミジル(4‐ヨードアクテイル)アミノ安息香酸(N‐succinimidyl(4‐iodoacteyl)aminobenzoate)、スクシンイミジル‐4‐(N‐マレイミドメチル)シクロヘキサン‐1‐カルボン酸塩)、m‐マレイミドベンゾイル‐N‐ヒドロキシスクシンイミドエステル、スクシンイミジル‐4‐(p‐マレイミドフェニル)酪酸塩(SMPB)、N‐γ‐(マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミドエステル(GMBS)、4‐(4‐N‐マレイミドフェニル)酪酸ヒドラジド(MPBH)、4‐(N‐マレイミドメチル)シクロヘキサン‐1‐カルボキシル‐ヒドラジド(MMCH)、スクシンイミジルオキシカルボニル‐α‐メチル‐α‐(2‐ピリジルジチオ)トルエン(SMPT)、及びN‐スクシンイミジル3‐(2‐ピリジルジチオ)プロピオン酸塩(SPDP)からなる群から選択される生成物から誘導されることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記標識は、オリゴヌクレオチド、銀コロイド、銀ナノ微粒子、金コロイド、金ナノ微粒子、カーボンナノチューブ、微小球ナノコード(microspheres nanocodes)、プログラマブルバーコード、量子ドット、又は混合有機‐無機ナノ微粒子(composite organic−inorganic nanoparticles)を含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記オリゴヌクレオチドは、修飾した又は伸長したオリゴヌクレオチドを含むことを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記修飾したオリゴヌクレオチドは、ラマン分光法又は表面増感ラマン分光法に適した標識を含むことを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記修飾したオリゴヌクレオチドは、ビオチニル化したオリゴヌクレオチドを含むことを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記銀コロイド、銀ナノ微粒子、金コロイド、又は金ナノ微粒子のいずれも、ラマン分光法、又は表面増感ラマン分光法に適した標識を更に含むことを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記同定物質を結合することは、標識化合物を前記チオ化したタンパク質により吸着することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項27】
前記タンパク質は、バイオマーカー、抗原、インターロイキン、又は心臓トロポニンを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記分析は、機器分析であることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項29】
前記機器分析は、ラマン分光法、表面増感ラマン分光方法、質量分析、ゲル電気泳動、高圧液体クロマトグラフィー、蛍光発光、又はリン光を含むことを特徴とする、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記タンパク質は、タンパク質の配列を含むことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項31】
請求項1に従ってタンパク質を修飾してチオ化したタンパク質を得ることを含み、
少なくとも一種の同定物質を前記チオ化したタンパク質に結合してタンパク質/同定物質付加化合物を得ることと、前記付加化合物に分析を施して前記タンパク質を同定することとを更に含む、
タンパク質の同定方法。
【請求項32】
前記同定物質を結合することは、標識化合物を前記チオ化したタンパク質に化学的に共役させることを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記標識化合物は、反応性部分、及び該反応性部分に連結した標識を含み、前記反応性部分は前記チオ化したタンパク質のチオール基と反応することにより前記同定物質を前記タンパク質へと結合することを特徴とする、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記反応性部分は、ハロゲン、イミド基、アジリジン基、又はアクリル基、ハロゲン、イミド基、アジリジン基、アクリル、銀、金、又は銅を含むことを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記反応性部分は、6‐(N‐メチルアクリル)‐アミノヘキシルであることを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記反応性部分は、N‐スクシンイミジル(4‐ヨードアクテイル)アミノ安息香酸(N‐succinimidyl(4‐iodoacteyl)aminobenzoate)、スクシンイミジル‐4‐(N‐マレイミドメチル)シクロヘキサン‐1‐カルボン酸塩)、m‐マレイミドベンゾイル‐N‐ヒドロキシスクシンイミドエステル、スクシンイミジル‐4‐(p‐マレイミドフェニル)酪酸塩(SMPB)、N‐γ‐(マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミドエステル(GMBS)、4‐(4‐N‐マレイミドフェニル)酪酸ヒドラジド(MPBH)、4‐(N‐マレイミドメチル)シクロヘキサン‐1‐カルボキシル‐ヒドラジド(MMCH)、スクシンイミジルオキシカルボニル‐α‐メチル‐α‐(2‐ピリジルジチオ)トルエン(SMPT)、及びN‐スクシンイミジル3‐(2‐ピリジルジチオ)プロピオン酸塩(SPDP)からなる群から選択される生成物から誘導されることを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記標識は、オリゴヌクレオチド、銀コロイド、銀ナノ微粒子、金コロイド、金ナノ微粒子、カーボンナノチューブ、微小球ナノコード(microspheres nanocodes)、プログラマブルバーコード、量子ドット、又は混合有機‐無機ナノ微粒子(composite organic−inorganic nanoparticles)を含むことを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記オリゴヌクレオチドは、修飾した又は伸長したオリゴヌクレオチドを含むことを特徴とする、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記修飾したオリゴヌクレオチドは、ラマン分光法又は表面増感ラマン分光法に適した標識を含むことを特徴とする、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記修飾したオリゴヌクレオチドは、ビオチニル化したオリゴヌクレオチドを含むことを特徴とする、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記銀コロイド、銀ナノ微粒子、金コロイド、又は金ナノ微粒子のいずれも、ラマン分光法、又は表面増感ラマン分光法に適した標識を更に含むことを特徴とする、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
前記同定物質を結合することは、標識化合物を前記チオ化したタンパク質により吸着することを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項43】
前記タンパク質は、バイオマーカー、抗原、インターロイキン、又は心臓トロポニンを含むことを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項44】
前記分析は、機器分析であることを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項45】
前記機器分析は、ラマン分光法、表面増感ラマン分光方法、質量分析、ゲル電気泳動、高圧液体クロマトグラフィー、蛍光発光、又はリン光を含むことを特徴とする、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記タンパク質は、タンパク質の配列を含むことを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項47】
チオ化したタンパク質に結合した同定部分を含み、前記チオ化したタンパク質は反応性非チオ官能基の約2%未満を含むことを特徴とする、組成物。
【請求項48】
前記チオ化したタンパク質には、前記反応性非チオ官能基が実質的にないことを特徴とする、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
前記同定部分は、前記チオ化したタンパク質に化学的に共役していることを特徴とする、請求項47に記載の組成物。
【請求項50】
前記同定部分は、前記チオ化したタンパク質のチオール基を介して共役していることを特徴とする、請求項49に記載の組成物。
【請求項51】
前記同定部分は、反応基及び該反応基に連結した標識を含む物質から誘導されることを特徴とする、請求項49に記載の組成物。
【請求項52】
前記反応基は、ハロゲン、イミド基、アジリジン基、又はアクリル基を含むことを特徴とする、請求項51に記載の組成物。
【請求項53】
前記反応基は、6‐(N‐メチルアクリル)‐アミノヘキシルであることを特徴とする、請求項51に記載の組成物。
【請求項54】
前記反応基は、N‐スクシンイミジル(4‐ヨードアクテイル)アミノ安息香酸(N‐succinimidyl(4‐iodoacteyl)aminobenzoate)、スクシンイミジル‐4‐(N‐マレイミドメチル)シクロヘキサン‐1‐カルボン酸塩)、m‐マレイミドベンゾイル‐N‐ヒドロキシスクシンイミドエステル、スクシンイミジル‐4‐(p‐マレイミドフェニル)酪酸塩(SMPB)、N‐γ‐(マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミドエステル(GMBS)、4‐(4‐N‐マレイミドフェニル)酪酸ヒドラジド(MPBH)、4‐(N‐マレイミドメチル)シクロヘキサン‐1‐カルボキシル‐ヒドラジド(MMCH)、スクシンイミジルオキシカルボニル‐α‐メチル‐α‐(2‐ピリジルジチオ)トルエン(SMPT)、及びN‐スクシンイミジル3‐(2‐ピリジルジチオ)プロピオン酸塩(SPDP)から選択される生成物により提供されることを特徴とする、請求項51に記載の組成物。
【請求項55】
前記標識は、オリゴヌクレオチド、銀コロイド、銀ナノ微粒子、金コロイド、金ナノ微粒子、カーボンナノチューブ、微小球ナノコード(microspheres nanocodes)、プログラマブルバーコード、量子ドット、又は混合有機‐無機ナノ微粒子(composite organic−inorganic nanoparticles)を含むことを特徴とする、請求項51に記載の組成物。
【請求項56】
前記オリゴヌクレオチドは、修飾した又は伸長したオリゴヌクレオチドを含むことを特徴とする、請求項55に記載の組成物。
【請求項57】
前記修飾したオリゴヌクレオチドは、ラマン分光法又は表面増感ラマン分光法に適した標識を含むことを特徴とする、請求項56に記載の組成物。
【請求項58】
前記修飾したオリゴヌクレオチドは、ビオチニル化したオリゴヌクレオチドを含むことを特徴とする、請求項56に記載の組成物。
【請求項59】
前記銀コロイド、銀ナノ微粒子、金コロイド、又は金ナノ微粒子のいずれも、ラマン分光法、又は表面増感ラマン分光法に適した標識を更に含むことを特徴とする、請求項55に記載の組成物。
【請求項60】
前記同定部分は、前記チオ化したタンパク質に吸着されることを特徴とする、請求項30に記載の組成物。
【請求項61】
前記タンパク質は、バイオマーカー、抗原、インターロイキン、又は心臓トロポニンを含むことを特徴とする、請求項47に記載の組成物。
【請求項62】
チオ化したタンパク質を含み、該チオ化したタンパク質は非チオ反応性官能基の約2%未満を含むことを特徴とする、組成物。
【請求項63】
前記チオ化タンパク質には、前記反応性非チオ官能基が実質的にないことを特徴とする、請求項62に記載の組成物。
【請求項1】
タンパク質を修飾する方法であって、
(a)当初の反応性非チオ官能基を有する前記タンパク質を生体試料から分離することと、
(b)前記当初の反応性非チオ官能基をチオール基へと変換してチオ化したタンパク質を得ることと
を含み、
前記チオ化したタンパク質は、前記当初の反応性非チオ官能基の約2%(モル)未満を含有する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記チオ化したタンパク質には、前記当初の反応性非チオ官能基が実質的にないことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記当初の反応性官能基は、アミノ基、カルボキシル基、カルボニル基、スルフヒドリル/チオール基、又はリン酸基を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記変換することは、前記タンパク質を少なくとも一種のチオ化剤と反応させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記チオ化剤は、スクシンイミジルアセチルチオアセテート、スクシンイミジル3‐(2‐ピリジルジチオ)プロピオン酸塩、2‐イミノチオラン(トラウト試薬としても知られる)、2,2'‐ジチオ‐ビス(エチルアミン)(シスタミン)、3‐(2‐ピリジルジチオ)プロピオニルヒドラジド、スクシンイミジルトランス‐4‐(マレイミジルメチル)シクロヘキサン‐1‐カルボン酸塩、及び2‐アセトアミド‐4‐メルカプト酪酸ヒドラジドからなる群から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記当初の反応性非チオ官能基はアミノ基であり、前記チオ化剤は、スクシンイミジルアセチルチオアセテート、スクシンイミジル3‐(2‐ピリジルジチオ)プロピオン酸塩、及び2‐イミノチオランからなる群から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
(a)前記タンパク質をスクシンイミジルアセチルチオアセテートと反応させてタンパク質付加化合物を形成することと、
(b)前記付加化合物をヒドラジンと反応させることと
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
(a)前記タンパク質をスクシンイミジル3‐(2‐ピリジルジチオ)プロピオン酸塩と反応させてタンパク質付加化合物を形成することと、
(b)前記付加化合物をジチオスレイトールと反応させることにより前記付加化合物を還元することと
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記当初の反応性官能基はカルボキシル基であり、前記チオ化剤は2,2'‐ジチオ‐ビス(エチルアミン)であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
(a)前記タンパク質を1‐エチル‐3‐(3‐ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドと反応させることによって前記タンパク質を活性化して中間体を形成することと、
(b)前記中間体を2,2'‐ジチオ‐ビス(エチルアミン)と反応させてタンパク質付加化合物を形成することと、
(c)前記付加化合物をジチオスレイトールと反応させることにより前記付加化合物を還元することと
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記当初の反応性非チオ官能基はカルボニル基であり、前記チオ化剤は、3‐(2‐ピリジルジチオ)プロピオニルヒドラジド、及び2‐アセトアミド‐4‐メルカプト酪酸ヒドラジドから選択されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
(a)前記タンパク質を3‐(2‐ピリジルジチオ)プロピオニルヒドラジドと反応させてタンパク質付加化合物を形成することと、
(b)前記付加化合物をジチオスレイトールと反応させることにより前記付加化合物を還元することと
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記当初の反応性非チオ官能基はリン酸基であり、前記チオ化剤は2,2'‐ジチオ‐ビス(エチルアミン)であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項14】
(a)前記タンパク質を1‐エチル‐3‐(3‐ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドと反応させることによって前記タンパク質を活性化して中間体を形成することと、
(b)前記中間体を2,2'‐ジチオ‐ビス(エチルアミン)と反応させてタンパク質付加化合物を形成することと、
(c)前記付加化合物をジチオスレイトールと反応させることにより前記付加化合物を還元することと
を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に従ってタンパク質を修飾してチオ化したタンパク質を得ることを含み、
少なくとも一種の同定物質を前記チオ化したタンパク質に結合してタンパク質/同定物質付加化合物を得ることと、前記付加化合物に分析を施して前記タンパク質の存在を検出することとを更に含む、
タンパク質の検出方法。
【請求項16】
前記同定物質を結合することは、標識化合物を前記チオ化したタンパク質に化学的に共役させることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記標識化合物は、反応性部分、及び該反応性部分に連結した標識を含み、前記反応性部分は前記チオ化したタンパク質のチオール基と反応することにより前記同定物質を前記タンパク質へと結合することを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記反応性部分は、ハロゲン、イミド基、アジリジン基、又はアクリル基、ハロゲン、イミド基、アジリジン基、アクリル、銀、金、又は銅を含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記反応性部分は、6‐(N‐メチルアクリル)‐アミノヘキシルであることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記反応性部分は、N‐スクシンイミジル(4‐ヨードアクテイル)アミノ安息香酸(N‐succinimidyl(4‐iodoacteyl)aminobenzoate)、スクシンイミジル‐4‐(N‐マレイミドメチル)シクロヘキサン‐1‐カルボン酸塩)、m‐マレイミドベンゾイル‐N‐ヒドロキシスクシンイミドエステル、スクシンイミジル‐4‐(p‐マレイミドフェニル)酪酸塩(SMPB)、N‐γ‐(マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミドエステル(GMBS)、4‐(4‐N‐マレイミドフェニル)酪酸ヒドラジド(MPBH)、4‐(N‐マレイミドメチル)シクロヘキサン‐1‐カルボキシル‐ヒドラジド(MMCH)、スクシンイミジルオキシカルボニル‐α‐メチル‐α‐(2‐ピリジルジチオ)トルエン(SMPT)、及びN‐スクシンイミジル3‐(2‐ピリジルジチオ)プロピオン酸塩(SPDP)からなる群から選択される生成物から誘導されることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記標識は、オリゴヌクレオチド、銀コロイド、銀ナノ微粒子、金コロイド、金ナノ微粒子、カーボンナノチューブ、微小球ナノコード(microspheres nanocodes)、プログラマブルバーコード、量子ドット、又は混合有機‐無機ナノ微粒子(composite organic−inorganic nanoparticles)を含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記オリゴヌクレオチドは、修飾した又は伸長したオリゴヌクレオチドを含むことを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記修飾したオリゴヌクレオチドは、ラマン分光法又は表面増感ラマン分光法に適した標識を含むことを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記修飾したオリゴヌクレオチドは、ビオチニル化したオリゴヌクレオチドを含むことを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記銀コロイド、銀ナノ微粒子、金コロイド、又は金ナノ微粒子のいずれも、ラマン分光法、又は表面増感ラマン分光法に適した標識を更に含むことを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記同定物質を結合することは、標識化合物を前記チオ化したタンパク質により吸着することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項27】
前記タンパク質は、バイオマーカー、抗原、インターロイキン、又は心臓トロポニンを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記分析は、機器分析であることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項29】
前記機器分析は、ラマン分光法、表面増感ラマン分光方法、質量分析、ゲル電気泳動、高圧液体クロマトグラフィー、蛍光発光、又はリン光を含むことを特徴とする、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記タンパク質は、タンパク質の配列を含むことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項31】
請求項1に従ってタンパク質を修飾してチオ化したタンパク質を得ることを含み、
少なくとも一種の同定物質を前記チオ化したタンパク質に結合してタンパク質/同定物質付加化合物を得ることと、前記付加化合物に分析を施して前記タンパク質を同定することとを更に含む、
タンパク質の同定方法。
【請求項32】
前記同定物質を結合することは、標識化合物を前記チオ化したタンパク質に化学的に共役させることを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記標識化合物は、反応性部分、及び該反応性部分に連結した標識を含み、前記反応性部分は前記チオ化したタンパク質のチオール基と反応することにより前記同定物質を前記タンパク質へと結合することを特徴とする、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記反応性部分は、ハロゲン、イミド基、アジリジン基、又はアクリル基、ハロゲン、イミド基、アジリジン基、アクリル、銀、金、又は銅を含むことを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記反応性部分は、6‐(N‐メチルアクリル)‐アミノヘキシルであることを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記反応性部分は、N‐スクシンイミジル(4‐ヨードアクテイル)アミノ安息香酸(N‐succinimidyl(4‐iodoacteyl)aminobenzoate)、スクシンイミジル‐4‐(N‐マレイミドメチル)シクロヘキサン‐1‐カルボン酸塩)、m‐マレイミドベンゾイル‐N‐ヒドロキシスクシンイミドエステル、スクシンイミジル‐4‐(p‐マレイミドフェニル)酪酸塩(SMPB)、N‐γ‐(マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミドエステル(GMBS)、4‐(4‐N‐マレイミドフェニル)酪酸ヒドラジド(MPBH)、4‐(N‐マレイミドメチル)シクロヘキサン‐1‐カルボキシル‐ヒドラジド(MMCH)、スクシンイミジルオキシカルボニル‐α‐メチル‐α‐(2‐ピリジルジチオ)トルエン(SMPT)、及びN‐スクシンイミジル3‐(2‐ピリジルジチオ)プロピオン酸塩(SPDP)からなる群から選択される生成物から誘導されることを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記標識は、オリゴヌクレオチド、銀コロイド、銀ナノ微粒子、金コロイド、金ナノ微粒子、カーボンナノチューブ、微小球ナノコード(microspheres nanocodes)、プログラマブルバーコード、量子ドット、又は混合有機‐無機ナノ微粒子(composite organic−inorganic nanoparticles)を含むことを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記オリゴヌクレオチドは、修飾した又は伸長したオリゴヌクレオチドを含むことを特徴とする、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記修飾したオリゴヌクレオチドは、ラマン分光法又は表面増感ラマン分光法に適した標識を含むことを特徴とする、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記修飾したオリゴヌクレオチドは、ビオチニル化したオリゴヌクレオチドを含むことを特徴とする、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記銀コロイド、銀ナノ微粒子、金コロイド、又は金ナノ微粒子のいずれも、ラマン分光法、又は表面増感ラマン分光法に適した標識を更に含むことを特徴とする、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
前記同定物質を結合することは、標識化合物を前記チオ化したタンパク質により吸着することを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項43】
前記タンパク質は、バイオマーカー、抗原、インターロイキン、又は心臓トロポニンを含むことを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項44】
前記分析は、機器分析であることを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項45】
前記機器分析は、ラマン分光法、表面増感ラマン分光方法、質量分析、ゲル電気泳動、高圧液体クロマトグラフィー、蛍光発光、又はリン光を含むことを特徴とする、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記タンパク質は、タンパク質の配列を含むことを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項47】
チオ化したタンパク質に結合した同定部分を含み、前記チオ化したタンパク質は反応性非チオ官能基の約2%未満を含むことを特徴とする、組成物。
【請求項48】
前記チオ化したタンパク質には、前記反応性非チオ官能基が実質的にないことを特徴とする、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
前記同定部分は、前記チオ化したタンパク質に化学的に共役していることを特徴とする、請求項47に記載の組成物。
【請求項50】
前記同定部分は、前記チオ化したタンパク質のチオール基を介して共役していることを特徴とする、請求項49に記載の組成物。
【請求項51】
前記同定部分は、反応基及び該反応基に連結した標識を含む物質から誘導されることを特徴とする、請求項49に記載の組成物。
【請求項52】
前記反応基は、ハロゲン、イミド基、アジリジン基、又はアクリル基を含むことを特徴とする、請求項51に記載の組成物。
【請求項53】
前記反応基は、6‐(N‐メチルアクリル)‐アミノヘキシルであることを特徴とする、請求項51に記載の組成物。
【請求項54】
前記反応基は、N‐スクシンイミジル(4‐ヨードアクテイル)アミノ安息香酸(N‐succinimidyl(4‐iodoacteyl)aminobenzoate)、スクシンイミジル‐4‐(N‐マレイミドメチル)シクロヘキサン‐1‐カルボン酸塩)、m‐マレイミドベンゾイル‐N‐ヒドロキシスクシンイミドエステル、スクシンイミジル‐4‐(p‐マレイミドフェニル)酪酸塩(SMPB)、N‐γ‐(マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミドエステル(GMBS)、4‐(4‐N‐マレイミドフェニル)酪酸ヒドラジド(MPBH)、4‐(N‐マレイミドメチル)シクロヘキサン‐1‐カルボキシル‐ヒドラジド(MMCH)、スクシンイミジルオキシカルボニル‐α‐メチル‐α‐(2‐ピリジルジチオ)トルエン(SMPT)、及びN‐スクシンイミジル3‐(2‐ピリジルジチオ)プロピオン酸塩(SPDP)から選択される生成物により提供されることを特徴とする、請求項51に記載の組成物。
【請求項55】
前記標識は、オリゴヌクレオチド、銀コロイド、銀ナノ微粒子、金コロイド、金ナノ微粒子、カーボンナノチューブ、微小球ナノコード(microspheres nanocodes)、プログラマブルバーコード、量子ドット、又は混合有機‐無機ナノ微粒子(composite organic−inorganic nanoparticles)を含むことを特徴とする、請求項51に記載の組成物。
【請求項56】
前記オリゴヌクレオチドは、修飾した又は伸長したオリゴヌクレオチドを含むことを特徴とする、請求項55に記載の組成物。
【請求項57】
前記修飾したオリゴヌクレオチドは、ラマン分光法又は表面増感ラマン分光法に適した標識を含むことを特徴とする、請求項56に記載の組成物。
【請求項58】
前記修飾したオリゴヌクレオチドは、ビオチニル化したオリゴヌクレオチドを含むことを特徴とする、請求項56に記載の組成物。
【請求項59】
前記銀コロイド、銀ナノ微粒子、金コロイド、又は金ナノ微粒子のいずれも、ラマン分光法、又は表面増感ラマン分光法に適した標識を更に含むことを特徴とする、請求項55に記載の組成物。
【請求項60】
前記同定部分は、前記チオ化したタンパク質に吸着されることを特徴とする、請求項30に記載の組成物。
【請求項61】
前記タンパク質は、バイオマーカー、抗原、インターロイキン、又は心臓トロポニンを含むことを特徴とする、請求項47に記載の組成物。
【請求項62】
チオ化したタンパク質を含み、該チオ化したタンパク質は非チオ反応性官能基の約2%未満を含むことを特徴とする、組成物。
【請求項63】
前記チオ化タンパク質には、前記反応性非チオ官能基が実質的にないことを特徴とする、請求項62に記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2008−525806(P2008−525806A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548570(P2007−548570)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/046993
【国際公開番号】WO2006/069366
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(591003943)インテル・コーポレーション (1,101)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/046993
【国際公開番号】WO2006/069366
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(591003943)インテル・コーポレーション (1,101)
【Fターム(参考)】
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