説明

チオール化合物、その製造方法、および重合成組成物

【課題】高感度で酸素阻害がなく耐水性、耐アルカリ性および耐熱性に優れた光重合開始剤組成物、およびその光重合開始剤組成物を含む感光性組成物に好適な新規なチオール化合物を提供する。
【解決手段】一般式(1)


(式中の記号は明細書に記載の通り。)
で示される新規な芳香族エーテル系多官能一級チオール化合物、前記芳香族エーテル系多官能一級チオール化合物とエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を含む重合性組成物、およびその組成物を光重合して得られる硬化物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なチオール化合物、そのチオール化合物の製造方法、およびそのチオール化合物を含む重合成組成物に関する。さらに詳しく言えば、耐水性、耐アルカリ性および耐熱性に優れた樹脂組成物に用いられる新規な芳香族エーテル系多官能一級チオール化合物、そのチオール化合物の製造方法、およびそのチオール化合物を含む重合成組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多官能チオール化合物はハロゲン系樹脂安定剤や感光性組成物、エポキシ樹脂硬化剤など各種工業分野で様々な用途に広く用いられている。このような多官能チオール化合物は、その化学構造から脂肪族エーテル系、脂肪族エステル系などに分類することができる。
【0003】
脂肪族エーテル系としては、東レ(株)製チオコールLP(登録商標)やQE−340M、ADEKA(株)製EH−310、コグニス(株)製キャップキュア(登録商標)3−800などが知られている。また、脂肪族エステル系としては、堺化学(株)製TMMP、ADEKA(株)製EH−317、ジャパンエポキシレジン(株)製QX−40、昭和電工(株)製カレンズMT(登録商標)PE1、カレンズMT(登録商標)BD1、カレンズMT(登録商標)NR1などが知られている。
【0004】
多官能チオールの用途のうち、感光性組成物はコーティング、接着剤、印刷版、カラープルーフ、カラーフィルタ、ソルダーレジスト、光硬化インクなど様々な方面で用いられている。特に近年、これらの用途を含め環境問題、省エネルギー、作業安全性、生産コスト等の観点から、常温で短時間で硬化することおよび溶剤が不要であること等の光硬化の特徴が注目され、感光性組成物について数多く研究、開発が進められている。
【0005】
さらに、コーティング分野においては、成形加工が容易で、耐衝撃性が高く、耐水性に優れた樹脂組成物の需要が高まっている。
【0006】
多官能チオール化合物は、チオール・エン硬化型の樹脂組成物に使用した場合、酸素阻害がないこと、開始剤の使用量を少なくできること、硬化収縮が小さいこと、感度が高いことなどの特徴があることから、様々な用途が開発されている。しかしながら、従来の脂肪族エステル系多官能チオールはエステル構造を有しているため耐水性に劣るという欠点がある。また、特開平9−043907号公報(特許文献1)に開示されている従来の脂肪族エーテル系チオールは柔軟な構造のため、ガラス転移温度が低いという欠点がある。
【0007】
これらの欠点を解消するための検討が行われている。特開2007−70417号公報(特許文献2)には、ポリメルカプトカルボン酸アミドからなる光硬化モノマーが開示されており、従来のエステル系多官能チオール化合物の耐水性を向上させるために、アミド系多官能チオールとすることによりその欠点の解消を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−043907号公報
【特許文献2】特開2007−70417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、高感度で酸素阻害がなく耐水性、耐アルカリ性および耐熱性に優れた光重合開始剤組成物、およびその光重合開始剤組成物を含む感光性組成物に好適な新規なチオール化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、一級のメルカプト基を有する芳香族エーテル型の新規な多官能チオール化合物を光重合開始剤組成物の一成分として感光性組成物に用いることにより上記課題が解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は下記の新規な多官能一級チオール化合物、その製造方法、重合性組成物、およびその組成物を重合して得られる硬化物に関するものである。
[1]一般式(1)
【化1】

(式中、R1は単結合または炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表し、R2は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、R3は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、R4は炭素数1〜4のアルキル基またはアルコキシ基を表し、aは0または1であり、bは3または4であり、cは0〜4の整数であり、a+bは4である。)
で示される芳香族エーテル系多官能一級チオール化合物。
[2]前記一般式(1)において、a=1、b=3である前記[1]に記載の芳香族エーテル系多官能一級チオール化合物。
[3]前記一般式(1)において、R1が主鎖の炭素数が1または2の、直鎖状または分岐状のアルキレン基である前記[1]に記載の芳香族エーテル系多官能一級チオール化合物。
[4]前記一般式(1)において、R1がメチレン基、R3が水素原子またはメチル基、c=0である前記[1]に記載の芳香族エーテル系多官能一級チオール化合物。
[5]前記一般式(1)で示される化合物が、トリス(4−(3−メルカプトプロポキシ)フェニル)メタン、1,1,1−トリス(4−(3−メルカプトプロポキシ)フェニル)エタン、またはテトラキス(4−(3−メルカプトプロポキシ)フェニル)メタンである前記[1]に記載の芳香族エーテル系多官能一級チオール化合物。
[6]一般式(1)
【化2】

(式中、R1は単結合または炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表し、R2は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、R3は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、R4は炭素数1〜4のアルキル基またはアルコキシ基を表し、aは0または1であり、bは3または4であり、cは0〜4の整数であり、a+bは4である。)
で示される芳香族エーテル系多官能一級チオール化合物と、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物とを含むことを特徴とする重合性組成物。
[7]エチレン性不飽和二重結合を有する官能基が、アクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基、アリル基、ビニルオキシ基、スチリル基からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物がこれらの官能基を少なくとも2個有する化合物である前記[6]に記載の重合性組成物。
[8]光重合開始剤を含む前記[6]または[7]に記載の重合性組成物。
[9]重合禁止剤を含む前記[6]〜[8]のいずれかに記載の重合性組成物。
[10]二級アミンまたは三級アミンを含む前記[6]〜[9]のいずれかに記載の重合性組成物。
[11]前記[6]〜[10]のいずれかに記載の重合性組成物を重合して得られる硬化物。
[12]一般式(2)
【化3】

(式中、R3は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、R4は炭素数1〜4のアルキル基またはアルコキシ基を表し、aは0または1であり、bは3または4であり、cは0〜4の整数であり、a+bは4である。)
で示される多価フェノール化合物と、一般式(3)
【化4】

(式中、R1は単結合または炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表し、R2は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、Xは脱離基を表す。)
で示される化合物を反応させて一般式(4)
【化5】

(式中の記号は、前記式(2)および式(3)の定義と同じ意味を表す。)
で示される末端二重結合含有化合物を得る工程1、
前記末端二重結合含有化合物の二重結合部位にメルカプト基を付加する工程2
を含むことを特徴とする、一般式(1)
【化6】

(式中の記号は前記と同じ意味を表す。)
で示される芳香族エーテル系多官能一級チオール化合物の製造方法。
[13]前記一般式(3)において、Xがハロゲン、またはスルホネート基である前記[12]に記載の芳香族エーテル系多官能一級チオール化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の多官能一級チオール化合物は、特定の芳香族エーテル型構造を有しているため、チオール・エン硬化の硬化剤として使用した場合その硬化物の耐水性、耐アルカリ性が良好である。
【0013】
本発明のチオール化合物を含む光重合開始剤組成物を用いると、高感度で酸素阻害がなく、耐水性、耐アルカリ性および耐熱性に優れた感光性組成物を得ることができる。
本発明のチオール化合物を用いた感光性組成物は、コーティング組成物、接着剤、光製版用レジスト、ソルダーレジスト、エッチングレジスト、カラーフィルターレジスト、ホログラム、光造形、UVインク等の用途分野に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1で得られたトリス(4−(3−メルカプトプロポキシ)フェニル)メタン(TP−T1)の1H−NMRスペクトル。
【図2】実施例1で得られたTP−T1の13C−NMRスペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[I]芳香族エーテル系多官能一級チオール化合物
本発明のチオール化合物は、特定のメルカプト基含有基を有するチオール化合物であって、前記メルカプト基含有基が一級のメルカプト基である下記一般式(1)で示される芳香族エーテル系多官能チオール化合物である(以下、芳香族エーテル系多官能チオール化合物(1)と略記することがある。)。
【化7】

【0016】
上記一般式(1)中、R1は単結合または炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表し、置換基を有していてもよい。
【0017】
1が表す炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、iso−プロピレン基、n−ブチレン基、iso−ブチレン基、t−ブチレン基、n−ヘキシレン基、n−オクチレン基、n−デカニレン基等が挙げられる。
【0018】
1が表す炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基としては、反応性の高い原料を用いて前記一般式(1)のチオール化合物を製造できる等の観点から、主鎖の炭素数は、1〜5が好ましく、1〜2がより好ましい。具体的には、メチレン基、エチレン基が好ましい。
【0019】
上記一般式(1)中、R2は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、置換基を有していてもよい。
2が表す炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基が挙げられる。
2としては水素原子、メチル基またはエチル基が好ましい。
【0020】
上記一般式(1)中、R3は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、置換基を有していてもよい。
3が表す炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基が挙げられる。
3は、好ましくは水素原子、メチル基またはエチル基である。
【0021】
上記一般式(1)中、R4は炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基を表し、置換基を有していてもよい。
4が表す炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基などが挙げられ、好ましくはメチル基、t−ブチル基である。
【0022】
4が表す炭素数1〜4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、iso−プロポキシ基、t−ブトキシ基などが挙げられ、好ましくはメトキシ基、エトキシ基である。
【0023】
上記R1、R2、R3およびR4が表すアルキル基またはアルコキシ基が有していてもよい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、水酸基、ジメチルアミノ基などが挙げられる。
【0024】
上記一般式(1)中、aは0または1であり、bは3または4であり、a+bは4である。一般式(1)で表されるチオール化合物の構造的安定性の観点から、a=1およびb=3の場合が好ましい。
上記一般式(1)中、cは0〜4の整数である。
【0025】
一般式(1)で示される本発明のチオール化合物は、3〜4個のフェノール性水酸基を持つ芳香族化合物(多価フェノール化合物)から誘導され、そのフェノール性水酸基の水素原子を除いた芳香族骨格を有する。
【0026】
3〜4個のフェノール性水酸基を持つ芳香族化合物(多価フェノール化合物)としては、例えばトリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)メタンなどを使用することができるがこれらに限定されるものではない。
【0027】
本発明の上記一般式(1)の構造を有するチオール化合物としては、入手容易な原料を用いることができる等の観点などから、R1がメチレン基、R2およびR4が水素原子であるチオール化合物がさらに好ましい。
【0028】
本発明の上記一般式(1)の構造を有するチオール化合物の具体例としては、トリス(4−(2−メルカプトプロポキシ)フェニル)メタン、1,1,1−トリス(4−(2−メルカプトプロポキシ)フェニル)エタン、およびテトラキス(4−(2−メルカプトプロポキシ)フェニル)メタン等が挙げられる。
【0029】
[II]チオール化合物の製造方法
本発明のチオール化合物の製造方法は特に限定されるものではないが、多価フェノール化合物を原料とする方法が好適に使用される。多価フェノール化合物から本発明のチオール化合物を製造する方法としては、
一般式(2)
【化8】

(式中の記号は、一般式(1)の記号と同じ意味を表す。)
で示される多価フェノール化合物(以下、多価フェノール化合物(2)と略記することがある。)と、一般式(3)
【化9】

(式中、R1およびR2は一般式(1)の記号と同じ意味を表し、Xは脱離基を表す。)
で示される化合物を反応させる一般式(4)
【化10】

(式中の記号は、一般式(1)の記号と同じ意味を表す。)
で示される末端二重結合を含有する化合物(以下、末端二重結合含有化合物(4)と略記することがある。)を得る工程1、および前記末端二重結合含有化合物の二重結合部位にメルカプト基を付加する工程2を含む方法が挙げられる。
【0030】
一般式(3)中、Xが表す脱離基は、一般式(3)から脱離する任意の基を指し、−NR52(R5は水素原子、炭素数1〜7のアルキル基もしくはアリール基);メタンスルホネート等を含むアルキルスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート等を含むフルオロアルキルスルホネート、トシレート等を含むアリールスルホネートを包含するスルホネート類;カルボネート;ハロゲン;カルボキシレート;フェノレート;アルコキシド;N−ヒドロキシスクシンイミド;N−ヒドロキシベンゾトリアゾール等が挙げられる。好ましく用いられる脱離基としては、ハロゲン、スルホネートが挙げられ、反応性の面、原料入手容易性の面から、ハロゲンとしては臭素、塩素、ヨウ素が好ましく、スルホネートとしてはトリフルオロメタンスルホネート、メタンスルホネートが好ましい。
【0031】
工程1における多価フェノール化合物(2)と一般式(3)で示される化合物の反応は、収率の観点から塩基性条件下で行うことが好ましい。
【0032】
塩基性条件下で行うために使用する塩基性化合物は特に限定されないが、有機塩基、無機塩基を使用することができる。無機塩基としては、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウムなどを使用することができ、中でも水酸化ナトリウムは塩基性条件の調整が容易であり、かつ反応性の面からより好適である。有機塩基としては、トリエチルアミン、ピリジン、トリエチレンジアミンなどの三級アミンを好適に使用することができる。
【0033】
工程1において、多価フェノール化合物(2)と一般式(3)で示される化合物の反応モル比は特に限定されないが、好適には多価フェノール化合物(2)の水酸基に対して一般式(3)で示される化合物を0.9〜2.0当量用いることができ、さらに好適には1.0〜1.2当量使用することができる。また、塩基性化合物の使用量は、好適には一般式(3)で示される化合物に対して0.9〜3.0当量使用することができ、さらに好適には1.0〜1.2当量使用することができる。
【0034】
工程1において、原料および生成物の取り扱いを容易にするため、また、原料と塩基性化合物との接触を容易にするために溶媒を使用することができる。溶媒としては、原料、生成物と反応しない溶媒で通常の条件で蒸留可能な沸点を有するものを使用することができる。具体的には水溶性の高い溶媒として、ジメチルスルホキシド、アセトン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等が挙げられ、中でもジメチルスルホキシドが沸点や原料の溶解性の観点から好適である。
【0035】
工程1において、反応温度は特に限定されないが、原料の溶解性および溶媒の沸点などの点から、0〜120℃の温度で行うのが好適である。さらに、反応温度のコントロールの点から溶媒の沸点付近(沸点マイナス10℃〜沸点の範囲)の温度で行うことがより好ましい。
【0036】
工程2において、工程1で得た末端二重結合含有化合物(4)の末端二重結合部位にメルカプト基を付加する工程は、下記の2つの工程を含む。
(1)末端二重結合含有化合物(4)の末端二重結合部位にチオ酢酸を付加し、チオ酢酸エステル体とする工程2−1、
(2)該チオ酢酸エステル基部位を加水分解してメルカプト基に変換する工程2−2。
【0037】
チオ酢酸エステル体を得る工程2−1におけるチオ酢酸の使用量としては、末端二重結合含有化合物(4)の末端二重結合基総量1molに対し1.0〜3.0molが好ましく、1.0〜1.2molがより好ましい。
【0038】
工程2−1においては、ラジカル開始剤を用いてもよい。ラジカル開始剤の具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシー1−フェニルエタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩などのアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキシド、t−ブチルハイドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ハイドロパーオキシド、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネートなどの過酸化物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。反応性の観点からアゾ系開始剤が好ましく、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルがより好ましい。
【0039】
工程2−1において、原料の接触を容易にするために溶媒を使用することができる。溶媒としては、原料、生成物と反応しない溶媒で通常の条件で蒸留可能な沸点を有するものを使用することができる。具体的には、原料の溶解性の観点から、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、トルエン、キシレンなどが好適であり、脱水されたテトラヒドロフランがより好ましく、安定化剤を含まない脱水されたテトラヒドロフランがさらに好ましい。
【0040】
工程2−1において、反応温度は特に限定されないが、反応速度をコントロールするために、0〜150℃で行うのが好適である。さらに、副反応を抑える点から10〜120℃がより好ましく、50〜100℃で行うことが最も好ましい。
【0041】
工程2−2において、チオ酢酸エステル体を加水分解してメルカプト基に変換する工程としては、一般的に行われている加水分解反応を使用することができる。塩基性条件下で行うために使用する塩基性化合物は特に限定されないが、有機塩基、無機塩基を使用することができる。無機塩基としては、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウムなどを使用することができ、中でも水酸化ナトリウムは塩基性条件の調整が容易であり、かつ反応性の面からより好適である。
【0042】
工程2−2において、塩基性化合物の使用量は特に限定されないが、チオ酢酸エステル基に対して当量以上使用することが好ましく、1.0〜1.5当量使用するのがより好ましい。
【0043】
工程2−2において、原料および生成物の取り扱いを容易にするため、また、原料と塩基性化合物との接触を容易にするために溶媒を使用することができる。溶媒としては、原料および生成物と反応せず、通常の条件で蒸留可能な沸点を有する溶媒を使用することができる。具体的にはテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、トルエン、キシレン等の疎水性溶媒が挙げられる。中でも沸点や原料の溶解性の観点から、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランが好ましい。
【0044】
工程2−2において、疎水性原料と塩基性化合物との反応を促進させる目的で、親水性溶媒を添加してもよい。溶媒としては親水性の高いアルコールやアセトンが好ましく、中でも沸点や原料の溶解性の観点からエタノールがより好ましい。
【0045】
工程2−2において、反応温度は特に限定されないが、反応温度をコントロールするために、0〜150℃で行うのが好適である。さらに、副反応を抑える点から10〜120℃がより好ましく、50〜100℃で行うことが最も好ましい。
【0046】
工程2−2の後に生成物を単離する方法としては、蒸留、再結晶、有機溶媒抽出、カラムクロマトグラフィーなど基質にあわせて一般的な単離方法を使用することができる。これらの中でも、工程2−1および工程2−2で副生する無機塩と分離するために有機溶媒抽出を使用することが好ましい。有機溶媒抽出において使用する有機溶媒としては、水との相溶性が低く通常の条件で留去することのできる溶媒であれば特に限定することなく使用することができる。具体的には、トルエン、クロロホルム、塩化メチレン、酢酸エチルなどを使用することができる。有機溶媒抽出した後にカラムクロマトグラフィーにより精製を行ってもよい。
【0047】
[III]エチレン性不飽和二重結合を有する化合物
本発明の重合性組成物で用いるエチレン性不飽和二重結合を有する化合物は特に限定されないが、前記芳香族エーテル系多官能一級チオール化合物(1)との反応速度が速いことから、アクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基、アリル基、ビニルオキシ基、スチリル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する化合物が好ましく、さらに硬化速度が速く感度が高いことから、その官能基を分子内に2個以上有する化合物が好ましい。
【0048】
本発明で用いるエチレン性不飽和二重結合を有する化合物の具体的な例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、2,2−ビス(4−(2−アクリロイルオキシエチル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アリルオキシフェニル)プロパン、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼンなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。本発明で用いるエチレン性不飽和二重結合を有する化合物の使用量としては、芳香族エーテル系多官能一級チオール化合物(1)のチオール官能基に対して、二重結合の官能基が通常1〜1000倍、好ましくは1〜100倍、より好ましくは5〜20倍使用することができる。1000倍よりも多い場合は芳香族エーテル系多官能一級チオール化合物(1)の添加効果が顕著に現れず、1倍よりも少ないと未反応の芳香族エーテル系多官能一級チオール化合物(1)が硬化物中に残るため硬化物の機械的特性が劣る。
【0049】
[IV]光重合開始剤
本発明の重合性組成物は光重合開始剤を含む。光重合開始剤の添加量は、組成物全体に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、1〜5質量%添加することがより好ましい。光重合開始剤を多く使用すると組成物の保存安定性が低くなり、光重合開始剤が少ないと硬化性が悪くなる。光重合開始剤の具体的な例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルベンゾイルフォメート、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物などが挙げられ、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製,商品名「イルガキュア(登録商標)184」)を好適に用いることができる。これらの光重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種以上組み合せて用いてもよい。
【0050】
[V]その他の添加剤
本発明の重合性組成物には、必要に応じて重合禁止剤を添加してもよい。重合禁止剤には、組成物の保存安定性を高くする効果があるが、多く入れすぎると硬化性が悪くなる。重合禁止剤の添加量は、重合性組成物に対して10〜50000質量ppm添加することが好ましく、100〜5000質量ppm添加することがより好ましい。本発明で用いる重合禁止剤の具体的な例としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンのモノエステル化物、N−ニトロソジフェニルアミン、フェノチアジン、p−t−ブチルカテコール、N−フェニルナフチルアミン、2,6−ジ−t−ブチル−p−メチルフェノール、クロラニール、ピロガロールなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0051】
本発明の重合性組成物には、必要に応じて二級あるいは三級アミンを添加してもよい。これらのアミンには、芳香族エーテル系多官能一級チオール化合物とエチレン性不飽和二重結合を有する化合物との反応性を高くする効果がある。また、連鎖移動剤としての効果もある。本発明の重合性組成物に添加する二級あるいは三級アミンの添加量は特に限定されないが、組成物全体に対して0.1〜5質量%、好ましくは1〜5質量%添加する。本発明で用いる二級あるいは三級アミンの具体的な例としては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルアニリンなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0052】
本発明の重合性組成物には、必要に応じて、(a)熱可塑性樹脂、(b)脱臭剤、(c)シランカップリング剤、チタンカップリング剤等の密着性向上剤、(d)ヒンダードアミン類、ハイドロキノン類、ヒンダードフェノール類等の酸化防止剤、(e)ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、サリチル酸エステル類、金属錯塩類等の紫外線吸収剤、(f)金属石けん類、重金属(例えば亜鉛、錫、鉛、カドミウム等)の無機および有機塩類、有機錫化合物等の安定剤、(g)フタル酸エステル、リン酸エステル、脂肪酸エステル、エポキシ化大豆油、ひまし油、流動パラフィンアルキル多環芳香族炭化水素等の可塑剤、(h)パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、重合ワックス、密ロウ、鯨ロウ低分子量ポリオレフィン等のワックス類、(i)ベンジルアルコール、タール、ピチューメン等の非反応性希釈剤、(j)炭酸カルシウム、カオリン、タルク、マイカ、ベントナイト、クレー、セリサイト、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ガラス粉、ガラスバルーン、シラスバルーン、石炭粉、アクリル樹脂粉、フェノール樹脂粉、金属粉末、セラミック粉末、ゼオライト、スレート粉等の充填剤、(k)カーボンブラック、酸化チタン、赤色酸化鉄、パラレッド、紺青等の顔料または染料、(l)酢酸エチル、トルエン、アルコール類、エーテル類、ケトン類等の溶剤、(m)発泡剤、(n)シランカップリング剤、モノイソシアネート化合物、カルボジイミド化合物等の脱水剤、(o)帯電防止剤、(p)抗菌剤、(q)防かび剤、(r)粘度調製剤、(s)香料、(t)難燃剤、(u)レベリング剤、(v)分散剤等を添加することができる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で組み合わせて用いてもよい。
【0053】
本発明の重合性組成物の硬化方法は、特に限定しないが、一般的に行われている重合性組成物の硬化方法を用いることができる。硬化方法としては、コーティングを行う場合は、ベースフィルム上に本発明の重合性組成物を塗布し、紫外線照射を行うことにより塗膜を硬化しコーティングを行う。フィルムやシートを作成する場合は、ベースフィルムとカバーフィルムの間に本発明の重合性組成物をはさみ、紫外線照射を行うことによりフィルムやシートを作成することができる。ベースフィルムやカバーフィルムの代わりにガラス板を用いてもよい。硬化時の酸素阻害を防止するために、硬化を不活性ガス雰囲気下で行うこともできる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例および参考例に基づいて本発明を説明するが、本発明は下記の例により何ら制限されるものではない。なお、下記の例中、部および%はそれぞれ質量を基準とするものである。
【0055】
実施例1:トリス(4−(3−メルカプトプロポキシ)フェニル)メタン(TP−T1)の合成
【0056】
工程1:トリス(4−アリルフェニル)メタン(TP−Allyl)の合成
トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(東京化成(株)試薬)60.0g(0.21mol)、ジメチルスルホキシド200mlを1L容ナスフラスコに仕込み、内容物を窒素雰囲気下室温で撹拌した。原料が溶解後0℃に冷やしながら、50質量%水酸化ナトリウム水溶液27.1gを加え、さらにアリルブロミド82.0g(0.68mol)を15分かけて滴下し、室温に戻し45分間撹拌した。薄層クロマトグラフィーにて原料の消失を確認後、濃塩酸3mLを加えて系を酸性とした。反応液を水、飽和食塩水にて順次洗浄し、有機層を酢酸エチルにて抽出・留去した。真空ポンプにて乾燥し、TP−Allylを得た。得られたTP−Allylは黄色液体であり、収量は78.5g、収率は93%であった。TP−Allylの組成式はC28H28O3、分子量は412.520である。
【0057】
工程2−1:トリス(4−(1−(アセチルスルファニル)プロポキシ)フェニル)メタン(TP−SAc)の合成
TP−Allyl 10.0g(24mmol)、脱水テトラヒドロフラン100mL(安定化剤不含有)を4口300mL容ナスフラスコに仕込み、冷却管を装着後、窒素バブリングを行いながら80℃に加熱撹拌した。アゾビスイソブチロニトリル0.40g(2.4mmol)を1時間半以内に3回に分けて加えた。反応系とは別に、二口20mL容ナスフラスコに、チオ酢酸6.64g(87.3mmol)、脱水テトラヒドロフラン10mL(安定化剤不含有)を加え1時間半窒素バブリングを行い、チオ酢酸/テトラヒドロフラン溶液を調製した。アゾビスイソブチロニトリルを入れ終わってから2時間経過後、二口20mL容ナスフラスコで混合したチオ酢酸/テトラヒドロフラン溶液を1時間以内に3回に分けて滴下した。50時間加熱撹拌、その後3日間室温撹拌し、液体クロマトグラフィーにて原料および中間体の消失を確認した。反応液に水酸化ナトリウム水溶液を加え中和し、水酸化ナトリウム水溶液、飽和食塩水にて順次洗浄、酢酸エチルにて有機層を抽出した。硫酸マグネシウムにて水分を除去した後、酢酸エチルを留去、真空ポンプで乾燥しTP−SAcを得た。得られたTP−SAcは黄色液体であり、収量は8.5g、収率は55%であった。TP−SAcの組成式はC34H40O6S3である。
【0058】
工程2−2:トリス(4−(3−メルカプトプロポキシ)フェニル)メタン(TP−T1)の合成
TP−Allyl 60.0g(0.15mol)、脱水テトラヒドロフラン300mL(安定化剤不含有)を4口1L容ナスフラスコに仕込み、冷却管を装着後、窒素バブリングを行いながら80℃に加熱撹拌した。アゾビスイソブチロニトリル1.76g(10.7mmol)を添加後、撹拌を続けた。別途2口200mL容ナスフラスコにチオ酢酸36.7g(0.48mmol)と脱水テトラヒドロフラン(安定化剤不含有)を混合し窒素バブリングを2時間行った。アゾビスイソブチロニトリル添加から3時間半後、チオ酢酸/脱水テトラヒドロフラン溶液を30分かけて滴下した。滴下終了後、アゾビスイソブチロニトリル0.56g(3.8mmol)を添加した。液体クロマトグラフィーにて反応進行を確認しながら、アゾビスイソブチロニトリル4回(計1.29g)、チオ酢酸1回(3mL)を追加し、合計60時間、計15日間反応させた。
原料および中間体の消失を確認後、室温に戻しエタノール20mL、20質量%水酸化ナトリウム88.5gを加え80℃に加熱撹拌した。2時間後、飽和硫酸水素カリウム水溶液にて中和し、底に生成した沈殿に水を加えて溶解させた。反応液を酢酸エチルにて抽出し、さらに飽和食塩水で洗浄した。この際、窒素を吹き込む等してなるべく空気に触れないようにした。抽出した有機層から酢酸エチルを留去し、真空ポンプにて乾燥し、TP−T1を得た。
【0059】
構造分析:
(1)TP−T1
1H−NMR]
TP−T1の1H−NMRチャートを図1に示した。1H−NMRはJEOL社製AL400を使用し、重クロロホルム中にて測定を行った。
【化11】

1.37ppm:td;3H;チオール基の水素原子、
2.04ppm:tt;6H;9、9'、9''の炭素につく水素原子、
2.71ppm:t;6H;10、10'、10''の炭素につく水素原子、
4.03ppm:t;6H;8、8'、8''の炭素につく水素原子、
6.79ppm:d;6H;芳香環につく水素原子、
6.98ppm:d;6H;芳香環につく水素原子。
13C−NMR]
TP−T1の13C−NMRチャートを図2に示した。13C−NMRは、JEOL社製AL400を使用し、重クロロホルム中にて測定を行った。
21.0ppm、33.0ppm:9、9'、9''、10、10'、10''の炭素原子、
54.0ppm:1の炭素原子、
113.7ppm、129.7ppm、136.4ppm:2、2'、2''、3,3'、3''、4,4'、4''、6,6'、6''、7,7'、7''の炭素原子、
156.6ppm:5,5'、5''の炭素原子。
【0060】
実施例2:本発明重合性組成物の硬化実験
本発明の多官能チオール化合物とポリエン化合物の組成物を光重合開始剤存在下、紫外線硬化させることにより硬化物を作製し、その耐水性について検討した。
TP−T1 0.50gとTMP3A(共栄社化学(株)製,トリメチロールプロパントリアクリレート,商品名「ライトアクリレートTMPA」)0.50gとIrg184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製,商品名「イルガキュア(登録商標)184」)0.02gを混合し均一に溶解させた。この液を、フッ素コートした2枚のガラス板にはさみ、ウシオ電機(株)製超高圧水銀ランプにて紫外線照射(3J/cm2)することにより厚さ0.7mmの硬化物を作成した。この硬化物をコマックス製レーザー加工機(VD7050−15W)にてカットし、幅10mm長さ20mmの試験片を作成した。試験片を水あるいは5質量%水酸化ナトリウム水溶液に入れ、23℃で7日間浸漬し、浸漬前後の質量を比較した。結果を表1に示す。
【0061】
比較例1〜2:比較重合性組成物の硬化実験
TP−T1の代わりにPE1(昭和電工(株)製,ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート),商品名「カレンズ(登録商標)PE1」,チオール基当量139g/eq)0.50g(比較例1)あるいは3−800(コグニスジャパン(株)製,商品名「キャップキュア(登録商標)3−800」,チオール基当量278g/eq)0.50g(比較例2)を用いた以外は実施例2と同様の操作により耐水・耐アルカリ試験を行った。結果を表1に示す。
【0062】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、R1は単結合または炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表し、R2は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、R3は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、R4は炭素数1〜4のアルキル基またはアルコキシ基を表し、aは0または1であり、bは3または4であり、cは0〜4の整数であり、a+bは4である。)
で示される芳香族エーテル系多官能一級チオール化合物。
【請求項2】
前記一般式(1)において、a=1、b=3である請求項1に記載の芳香族エーテル系多官能一級チオール化合物。
【請求項3】
前記一般式(1)において、R1が主鎖の炭素数が1または2の、直鎖状または分岐状のアルキレン基である請求項1に記載の芳香族エーテル系多官能一級チオール化合物。
【請求項4】
前記一般式(1)において、R1がメチレン基、R3が水素原子またはメチル基、c=0である請求項1に記載の芳香族エーテル系多官能一級チオール化合物。
【請求項5】
前記一般式(1)で示される化合物が、トリス(4−(3−メルカプトプロポキシ)フェニル)メタン、1,1,1−トリス(4−(3−メルカプトプロポキシ)フェニル)エタン、またはテトラキス(4−(3−メルカプトプロポキシ)フェニル)メタンである請求項1に記載の芳香族エーテル系多官能一級チオール化合物。
【請求項6】
一般式(1)
【化2】

(式中、R1は単結合または炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表し、R2は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、R3は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、R4は炭素数1〜4のアルキル基またはアルコキシ基を表し、aは0または1であり、bは3または4であり、cは0〜4の整数であり、a+bは4である。)
で示される芳香族エーテル系多官能一級チオール化合物と、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物とを含むことを特徴とする重合性組成物。
【請求項7】
エチレン性不飽和二重結合を有する官能基が、アクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基、アリル基、ビニルオキシ基、スチリル基からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物がこれらの官能基を少なくとも2個有する化合物である請求項6に記載の重合性組成物。
【請求項8】
光重合開始剤を含む請求項6または7に記載の重合性組成物。
【請求項9】
重合禁止剤を含む請求項6〜8のいずれかに記載の重合性組成物。
【請求項10】
二級アミンまたは三級アミンを含む請求項6〜9のいずれかに記載の重合性組成物。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれかに記載の重合性組成物を重合して得られる硬化物。
【請求項12】
一般式(2)
【化3】

(式中、R3は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、R4は炭素数1〜4のアルキル基またはアルコキシ基を表し、aは0または1であり、bは3または4であり、cは0〜4の整数であり、a+bは4である。)
で示される多価フェノール化合物と、一般式(3)
【化4】

(式中、R1は単結合または炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表し、R2は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、Xは脱離基を表す。)
で示される化合物を反応させて一般式(4)
【化5】

(式中の記号は、前記式(2)および式(3)の定義と同じ意味を表す。)
で示される末端二重結合含有化合物を得る工程1、
前記末端二重結合含有化合物の二重結合部位にメルカプト基を付加する工程2
を含むことを特徴とする、一般式(1)
【化6】

(式中の記号は前記と同じ意味を表す。)
で示される芳香族エーテル系多官能一級チオール化合物の製造方法。
【請求項13】
前記一般式(3)において、Xがハロゲン、またはスルホネート基である請求項12に記載の芳香族エーテル系多官能一級チオール化合物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−122011(P2012−122011A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274558(P2010−274558)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】