説明

チオール検出

チオールを選択的に検出するための化合物の態様が開示される。いくつかの態様では、化合物は架橋ビオローゲンであり、化合物は緩衝溶液中でホモシステインおよび/またはグルタチオンと反応して溶液の吸光度スペクトルおよび/または発光スペクトルの変化を生成することが可能である。開示される架橋ビオローゲンを用いてホモシステインおよび/またはグルタチオンを検出するための方法およびキットの態様も開示される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2009年12月30日出願の米国仮特許出願第61/335,101号の恩典を主張し、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
分野
グルタチオン、またはグルタチオンおよびホモシステインの両方などの、チオールの決定のための化合物、方法およびキットの態様が開示される。
【0003】
政府支援の承認
本発明は、米国国立衛生研究所が授与した助成金R01 EB002044の下での政府支援により行った。政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
背景
生物学的に重要なチオールの検出は多くの研究の焦点であった。同様の構造を有しうる異なった天然のチオールは、まったく異なった生理学的性質を有しうる。これらのチオールについて観察された生理学的作用および相関は、公衆衛生上の懸念事項である。多少なりとも同様の構造を有するが異なる生理学的性質を有する低分子チオールの例としてはシステイン(Cys)、ホモシステイン(Hcy)、グルタチオン(GSH)、N-アセチルシステインおよびペニシラミンが挙げられる。
【0005】
グルタチオンは医学研究者にとって特に関心の対象となる。グルタチオンレベルは酸化ストレスを示す。さらに、低グルタチオンレベルは、例えばミトコンドリア病、自閉症および水銀中毒に関連しうる。
【0006】
チオールは容易に酸化され、典型的には無色であり、可視波長で非蛍光である。大部分の報告されたチオール検出用の方法は、非特異的レドックス化学反応、イムノアッセイ、または発色団もしくはフルオロフォアによる誘導体化に基づいている。チオールを検出するための一般的方法は、構造上同様の種を容易には区別しない。生体チオールを検出および定量化するための改善された方法が大いに求められている。
【0007】
メチルビオローゲン(MV2+)は4,4'-ジピリジルジカチオン:

である。MV2+は、Hcy、CysおよびGSHに由来する還元性ジスルフィドとα-アミノ炭素中心ラジカルとの両方の平衡動力学の調査における酸化体として使用されている。生体チオールの存在下で形成されるメチルビオローゲンラジカルカチオンを含有する溶液の紫外可視スペクトルの変化を通じて、還元性ラジカルの形成をモニタリングした。R. Zhao et al., "Kinetics of one-electron oxidation of thiols and hydrogen abstraction by thiyl radicals from α-amino C-H bonds," J. Am. Chem. Soc., vol. 116, pp. 12010-12015 (1994)(非特許文献1); およびR. Zhao et al., "Significance of the intramolecular transformation of glutathione thiyl radicals to α-aminoalkyl radicals. Thermochemical and biological implications," J. Chem. Soc., Perkins Trans., vol. 2, pp. 569-574 (1997)(非特許文献2)を参照。5原子環遷移状態を包含する分子内水素引き抜き機構が理由で、Hcyに由来する還元性α-アミノアルキルラジカルの形成が特に好ましいはずであると推測された(図1A参照)。対照的に、CysまたはGSHの場合、H原子引き抜きによって還元性炭素中心ラジカルにすることは、比較的好ましくない4員環(図1B)または9員環(図示せず)の遷移状態の幾何学的配置を経てそれぞれ進行する。HcyおよびCysそれぞれのチイルラジカルからのα-アミノアルキルラジカルの形成を導く推定プロトン引き抜きを示す図1Aおよび図1Bを参照のこと。これらの参考文献はホモシステイン、システインおよびグルタチオンの間でのいかなる認識可能な比色選択性も開示していない。
【0008】
参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2008/0261315号(特許文献1)は、メチルビオローゲンによってホモシステインを選択的に決定するための方法を開示している。Hcyを含有する試料をメチルビオローゲンの無色溶液と共に約25℃〜110℃の温度および約3.9〜約9.5のpHで5分間以上加熱することで、目に見える色変化が生成される。398nmおよび605nmでの吸収ピークの出現によって色形成をモニタリングすることができる。対照的に、CysまたはGSHを含有する試料は、同様の条件下でメチルビオローゲン溶液と共に加熱しても無色のままである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0261315号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】R. Zhao et al., "Kinetics of one-electron oxidation of thiols and hydrogen abstraction by thiyl radicals from α-amino C-H bonds," J. Am. Chem. Soc., vol. 116, pp. 12010-12015 (1994)
【非特許文献2】R. Zhao et al., "Significance of the intramolecular transformation of glutathione thiyl radicals to α-aminoalkyl radicals. Thermochemical and biological implications," J. Chem. Soc., Perkins Trans., vol. 2, pp. 569-574 (1997)
【発明の概要】
【0011】
概要
システイン、ホモシステインおよび/またはグルタチオンを選択的に検出するための化合物の態様が開示される。検出を行うための方法およびキットの態様も開示される。
【0012】
溶液中で1つまたは複数のチオール、特にシステイン、ホモシステイン、グルタチオンまたはその組み合わせと反応する場合、開示される化合物の態様は、溶液の吸光度スペクトルおよび/または発光スペクトルの検出可能な変化を生成する。化合物の開示される態様は、式I、IIまたはIIIの構造を有する架橋ビオローゲン:

であり、式中、Rは低級アルキルニトリル、低級アルキル置換フェニル、アルケニル、アルキニル、置換クマリン、アセタール、カルボキシレート基、またはフルオロフォアである。いくつかの態様では、フルオロフォアは下記式の化合物:

であり、式中、Xは酸素、硫黄、CH2またはNHであり; R1、R2、R3、R4およびR6は-H、-OH、低級アルキル、カルボキシアルキル、アミノ、置換アミノ、アルコキシまたはハロゲンより独立して選択され、あるいは、R2およびR3は一緒になって置換もしくは非置換シクロアルキルまたはアリールを形成してもよく; R5は酸素、イミノ、置換アルキルイミノまたは置換もしくは非置換シクロアルキルイミノであり; R7は-H、アルキル、アシル、カルボキシル、ニトロ、アミノ、置換アミノであり; かつR8は存在しないかまたはアルキルである。
【0013】
いくつかの態様では、Rはシアノメチル、ベンジル、アリル、プロパルギル、1-(2-オキソ-2-2H-クロメン-3-イル)エチル、1-(2,2-ジヒドロキシエチル)、1-カルボキシメチルまたは3-(2-(10-(ジメチルイミノ)-1-ヒドロキシ-10H-ベンゾ[c]キサンテン-7-イル)ベンゾイルオキシ)プロピルである。特定の態様では、化合物は1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,3-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,2-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(ベンジル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-アリル-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-プロパルギル-l-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(2-オキソ-2-(2-オキソ-2H-クロメン-3-イル)エチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(2,2-ジヒドロキシエチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(カルボキシメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミドまたはモノ(1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(3-(2-(10-(ジメチルイミノ)-1-ヒドロキシ-10H-ベンゾ[c]キサンテン-7-イル)ベンゾイルオキシ)プロピル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム))テトラブロミドである。
【0014】
チオールを検出するための方法の態様も開示される。チオール(例えばシステイン、ホモシステイン、グルタチオンまたはその組み合わせ)を含む試料と、Rが既に列挙した通りである式I、IIまたはIIIを有する化合物とを組み合わせることによって溶液を形成する。チオールが存在することを示す、溶液の吸光度スペクトルおよび/または発光スペクトルの検出可能な変化を生成するために有効な期間、チオールと化合物との間の反応を溶液中で進行させる。次に変化を定性的に、例えば視覚的色比較、または吸光度スペクトルおよび/もしくは発光スペクトルの変化によって、あるいは定量的に、例えば1つもしくは複数の波長での溶液の吸光度および/もしくは発光の変化を時間関数としてモニタリングすることによって検出する。特定の態様では、溶液はHEPES(N'-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N'-2-エタンスルホン酸)、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)、リン酸およびTRIS(トリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン)緩衝液より選択される緩衝液をさらに含む。いくつかの態様では、反応は室温で1〜60分間または1〜30分間進行する。他の態様では、反応は還流条件下で1〜5分間進行する。特定の態様では、チオールはホモシステイン、グルタチオンまたはその組み合わせであり、緩衝液はリン酸またはTRIS緩衝液であり、化合物は1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,3-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(ベンジル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミドおよび1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-アリル-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミドまたはその組み合わせである。
【0015】
チオールを検出するためのキットの態様が開示される。いくつかの態様では、キットは、チオール(例えばシステイン、ホモシステイン、グルタチオンまたはその組み合わせ)を選択的に検出するために好適な少なくとも1つの化合物と、チオールと組み合わせる場合の該化合物が、チオールが存在しない場合の吸光度スペクトル、発光スペクトル、またはその両方とは異なる、吸光度スペクトル、発光スペクトル、またはその両方を示す緩衝液とを含む。
【0016】
化合物は、Rが既に列挙した通りである式I、IIまたはIIIを有する。いくつかの態様では、化合物は1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,3-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,2-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(ベンジル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-アリル-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-プロパルギル-l-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(2-オキソ-2-(2-オキソ-2H-クロメン-3-イル)エチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(2,2-ジヒドロキシエチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(カルボキシメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、モノ(1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(3-(2-(10-(ジメチルイミノ)-1-ヒドロキシ-10H-ベンゾ[c]キサンテン-7-イル)ベンゾイルオキシ)プロピル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム))テトラブロミドまたはその組み合わせより選択される。特定の態様では、化合物は1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,3-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(ベンジル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-アリル-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(2-オキソ-2-(2-オキソ-2H-クロメン-3-イル)エチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、モノ(1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(3-(2-(10-(ジメチルイミノ)-1-ヒドロキシ-10H-ベンゾ[c]キサンテン-7-イル)ベンゾイルオキシ)プロピル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム))テトラブロミドまたはその組み合わせより選択される。いくつかの態様では、緩衝液はHEPES(N'-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N'-2-エタンスルホン酸)、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)、リン酸またはTRIS(トリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン)緩衝液である。
【0017】
いくつかの態様では、キットは、(a) 化合物と、(b) システイン、ホモシステイン、グルタチオンまたはその組み合わせとの間の反応によって生成される色変化を評価するための色比較チャートをさらに含む。いくつかの態様では、キットは、化合物とチオールとの間の反応を行うことができる複数の使い捨て容器も含む。特定の態様では、チオールと反応する際に吸光度スペクトル、発光スペクトル、またはその両方の検出可能な変化が起こるのに有効な量の化合物が予め秤量されて複数の使い捨て容器に入れられる。
【0018】
本発明の前述のおよび他の目的、特徴および利点は、少なくともその一部がフルカラーで提示される添付図面を参照して進行する以下の詳細な説明よりさらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1Aおよび図1Bはそれぞれ、ホモシステインおよびシステインのチイルラジカルからのα-アミノアルキルラジカルの形成を導く推定プロトン引き抜きを示す。
【図2】架橋ビス-CNビオローゲンのオルト、メタおよびパラ異性体の紫外可視吸光度スペクトルである。
【図3】オルト架橋ビス-CNビオローゲンとチオールとの反応の534nmでの吸光度対時間のグラフである。
【図4】メタ架橋ビス-CNビオローゲンとチオールとの反応の534nmでの吸光度対時間のグラフである。
【図5】パラ架橋ビス-CNビオローゲンとチオールとの反応の534nmでの吸光度対時間のグラフである。
【図6】オルト架橋CNビオローゲンとチオールとの反応の25分での紫外可視スペクトルである。
【図7】メタ架橋CNビオローゲンとチオールとの反応の30分での紫外可視スペクトルである。
【図8】パラ架橋CNビオローゲンとチオールとの反応の30分での紫外可視スペクトルである。
【図9】50mMリン酸緩衝液pH 7.0中、20mV/秒でのパラ、オルトおよびメタ架橋ビス-CNビオローゲン対SCE、ガラス状炭素のボルタモグラムを示す。
【図10】50mM HEPES緩衝液pH 7.0中、室温で1分および30分後のパラ架橋ビス-CNビオローゲンとブランク、ホモシステイン、システインおよびグルタチオンとの反応を示す写真である。
【図11】50mM TES緩衝液pH 7.0中、室温で1分および30分後のパラ架橋ビス-CNビオローゲンとブランク、ホモシステイン、システインおよびグルタチオンとの反応を示す写真である。
【図12】50mM MOPS緩衝液pH 7.0中、室温で1分および30分後のパラ架橋ビス-CNビオローゲンとブランク、ホモシステイン、システインおよびグルタチオンとの反応を示す写真である。
【図13】50mMリン酸緩衝液pH 7.0中、室温で1分および30分後のパラ架橋ビス-CNビオローゲンとブランク、ホモシステイン、システインおよびグルタチオンとの反応を示す写真である。
【図14】50mM TRIS緩衝液pH 7.0中、室温で1分および30分後のパラ架橋ビス-CNビオローゲンとブランク、ホモシステイン、システインおよびグルタチオンとの反応を示す写真である。
【図15】50mMリン酸緩衝液pH 7.0:D2O 90:10中、室温で1時間後のパラ架橋ビス-CNビオローゲンと10mMホモシステインとの反応の1H NMRスペクトルである。
【図16】50mMリン酸緩衝液pH 7.0:D2O 90:10中、室温で1時間後のパラ架橋ビス-CNビオローゲンと10mMシステインとの反応の1H NMRスペクトルである。
【図17】50mMリン酸緩衝液pH 7.0:D2O 90:10中、室温で1時間後のパラ架橋ビス-CNビオローゲンと10mMグルタチオンとの反応の1H NMRスペクトルである。
【図18】室温で1分および10分後のパラ架橋ビス-カルボキシレートビオローゲンとブランク、ホモシステイン、システインおよびグルタチオンとの反応を示す写真である。
【図19】室温で1分および10分後のパラ架橋ビス-プロパルギルビオローゲンとブランク、ホモシステイン、システインおよびグルタチオンとの反応を示す写真である。
【図20】室温で1分および10分後のパラ架橋ビス-クマリンビオローゲンとブランク、ホモシステイン、システインおよびグルタチオンとの反応を示す写真である。
【図21】室温で10分後のパラ架橋ビス-アセタールビオローゲンとブランク、ホモシステイン、システインおよびグルタチオンとの反応を示す写真である。
【図22】1分間および5分間還流後のパラ架橋ビス-ベンジルビオローゲンとブランク、ホモシステイン、システインおよびグルタチオンとの反応を示す写真である。
【図23】1分間および5分間還流後のパラ架橋ビス-アリルビオローゲンとブランク、ホモシステイン、システインおよびグルタチオンとの反応を示す写真である。
【図24】パラ架橋ビス-CNビオローゲンと各種チオールおよびアミノ酸との反応によって生成する吸光度(534nmでの)を示す棒グラフである。
【図25】システインおよびシステインスルホン酸の一連のLC/MSパターンである。最上部のパターンは全イオン数である。
【図26】ホモシステイン、ホモシステインスルホン酸およびホモシステインスルフィン酸の一連のLC/MSパターンである。最上部のパターンは全イオン数である。
【図27】グルタチオン、グルタチオンスルホン酸およびグルタチオンジスルフィドの一連のLC/MSパターンである。最上部のパターンは全イオン数である。
【図28】一重架橋オルト、メタおよびパラ-ビスクマリンビオローゲン類似体のエネルギー最小化構造およびπ-πスタッキングを示す。
【図29】グルタチオンおよびパラ-ビスクマリンビオローゲンの超分子集合体のエネルギー最小化構造である。
【図30】一重架橋オルト-ビスロードールビオローゲン類似体のエネルギー最小化構造を示す。
【図31】一重架橋メタ-ビスロードールビオローゲン類似体のエネルギー最小化構造を示す。
【図32】一重架橋パラ-ビスロードールビオローゲン類似体のエネルギー最小化構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
I. 用語および定義
用語および略語の以下の説明は、本開示をより良く記述するために、かつ本開示の実施において当業者を指導するために示される。本明細書において使用する「含む(comprising)」は「含む(including)」を含み、単数形「a」もしくは「an」または「the」は、文脈上別途明らかな指示がない限り、複数に対する言及を含む。「または」という用語は、文脈上別途明らかな指示がない限り、述べられる代替要素のうちの単一の要素、または2つ以上の要素の組み合わせを意味する。
【0021】
別途説明しない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者が通常理解するものと同一の意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料を本開示の実施または試験において使用できるが、好適な方法および材料を以下に記載する。材料、方法および実施例は例示的なものでしかなく、限定的であるようには意図されていない。本開示の他の特徴は以下の詳細な説明および特許請求の範囲より明らかである。
【0022】
別途指示しない限り、本明細書または特許請求の範囲において使用される、成分の量、分子量、割合、温度、時間などを表すすべての数値は、「約」という用語によって修正されるものと理解すべきである。したがって暗示的または明示的に別途指示しない限り、記載される数値パラメータは、求められる所望の性質、および/または標準的試験条件/方法下での検出限界に依存しうる近似値である。態様と論じられる先行技術とを直接かつ明示的に区別する場合、「約」という用語が述べられない限り、態様の数値は近似値ではない。
【0023】
一般的な化学用語の定義はRichard J. Lewis, Sr. (ed.), Hawley's Condensed Chemical Dictionary, published by John Wiley & Sons, Inc., 1997 (ISBN 0-471-29205-2)に見出すことができる。
【0024】
本開示の各種態様の考察を容易にするために、具体的用語の以下の説明を示す。
【0025】
吸光度: 特定波長での入射光の化合物もしくは物質による保持率; 光が化合物もしくは物質または化合物もしくは物質の溶液を通過する際に吸収される特定波長での光の量の尺度。
【0026】
脂肪族という用語は、分岐または非分岐炭素鎖を有することを意味する。この鎖は飽和(全面的に単結合を有する)でも不飽和(1個または複数の二重または三重結合を有する)でもよい。
【0027】
アルキルとは、飽和炭素鎖を有する炭化水素基を意味する。この鎖は分岐でも非分岐でもよい。低級アルキルという用語は、この鎖が1〜10個の炭素原子を含むことを意味する。
【0028】
類似体または誘導体とは、同様の化合物より誘導される化合物、または、例えば1個の原子を別の原子もしくは原子団で置き換える際に別の化合物より生じると想像されうる化合物のことである。類似体は、他の原子、基または部分構造で置き換えられる1個または複数の原子、官能基または部分構造が互いに異なりうる。
【0029】
芳香族またはアリール化合物とは、典型的には、単結合および二重結合を交互に有する不飽和環状炭化水素のことである。3個の二重結合を含有する6炭素環であるベンゼンが典型的な芳香族化合物である。
【0030】
検出する: 例えば試料中に作用物質(標的分子などの)が存在するかまたは存在しないかを決定すること。「検出する」とは、何かが存在するかまたは存在しないかを決定する、例えば標的分子が生体試料中に存在するか否かを決定する任意の方法を意味する。例えば、「検出する」は、試料が特定の特性を示すか否かを決定するために視覚的または機械的装置を使用することを含みうる。
【0031】
発光または発光シグナル: 発生源から発生する特定波長の光。特定の例では、フルオロフォアがその励起波長で光を吸収した後に、発光シグナルがフルオロフォアより放出される。
【0032】
蛍光とは、高電子状態から低電子状態までを通過する原子または分子による可視光線の発光のことであり、ここでエネルギーの吸収と放出との間の時間間隔は10-8〜10-3秒である。原子または分子が励起光源(例えば紫外線ランプ)よりエネルギーを吸収した後、エネルギーを可視光線として放出する際に、蛍光が生じる。
【0033】
フルオロフォアまたは発蛍光団とは、蛍光が可能な化合物、例えば蛍光色素のことである。「フルオロフォア」という用語は、励起光源に露出される際に分子が蛍光を発するようにする分子の部分も意味する。
【0034】
官能基とは、分子の特徴的な化学反応の原因である分子内の特定の原子団のことである。例示的な官能基としてはアルカン、アルケン、アルキン、アレーン、ハロ(フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード)、エポキシド、ヒドロキシル、カルボニル(ケトン)、アルデヒド、炭酸エステル、カルボキシレート、エーテル、エステル、ペルオキシ、ヒドロペルオキシ、カルボキサミド、アミン(第一級、第二級、第三級)、アンモニウム、イミド、アジド、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、ニトレート、ニトライト、ニトリル、ニトロアルカン、ニトロソ、ピリジル、ホスフェート、スルホニル、スルフィド、チオール(スルフヒドリル)、ジスルフィドが挙げられるがそれに限定されない。
【0035】
ヘテロアリール化合物とは、少なくとも1個のヘテロ原子を有する芳香族化合物のことであり、すなわち、環中の1個または複数の炭素原子は、少なくとも1つの孤立電子対を有する原子、典型的には窒素、酸素または硫黄で置き換えられている。
【0036】
ロードールは、フルオレセインおよびローダミンの構造混成体である。ローダミンは、関連性のあるフルオロン色素のファミリーである。フルオレセイン、ローダミンおよび2つのロードール類似体の構造を以下に示す。

【0037】
置換基とは、反応の結果として分子中の別の原子を置き換える原子または原子団のことである。典型的には、「置換基」という用語は、親炭化水素鎖または環上の水素原子を置き換える原子または原子団を意味する。
【0038】
置換された: アリールもしくは脂肪族化合物などの基本化合物、または、典型的には水素原子の代わりに第2の置換基がそこに結合したそのラジカル。例えば、置換アリール化合物または置換基では、例えばトルエンを有するアリール基質の閉環体に脂肪族基が結合しうる。長鎖炭化水素では、置換基、例えば1個もしくは複数のハロゲン、アリール基、環式基、ヘテロアリール基または複素環基がそこに結合しうるが、これらはやはり単に例示的なものであり、限定するものではない。
【0039】
II. 代表的態様の概観
システイン、ホモシステインおよび/またはグルタチオンなどのチオールを選択的に検出するための化合物の態様が開示される。検出を行うための方法およびキットの態様も開示される。溶液中で1つまたは複数のチオール、特にシステイン、ホモシステイン、グルタチオンまたはその組み合わせと反応する場合の開示される化合物の態様は、溶液の吸光度スペクトルおよび/または発光(蛍光)スペクトルの変化を生成する。
【0040】
一態様では、化合物は下記式の構造を有する:
(a) 式I:

式中、Rは低級アルキルニトリル、低級アルキル置換フェニル、アルケニル、アルキニル、置換クマリン、アセタール、カルボキシレート基、またはフルオロフォアである; あるいは
(b) 式II:

式中、Rは低級アルキルニトリル、低級アルキル置換フェニル、アルケニル、アルキニル、置換クマリン、アセタール、カルボキシレート基、またはフルオロフォアである; あるいは
(c) 式III:

式中、Rは低級アルキルニトリル、アルケニル、アルキニル、置換クマリン、アセタール、カルボキシレート基、またはフルオロフォアである。
【0041】
上記態様のいずれかまたはすべてにおいて、Rは下記構造のフルオロフォア:

でありえ、式中、Xは酸素、硫黄、CH2またはNHであり; R1、R2、R3、R4およびR6は-H、-OH、低級アルキル、カルボキシアルキル、アミノ、置換アミノ、アルコキシまたはハロゲンより独立して選択され、あるいは、R2およびR3は一緒になって置換もしくは非置換シクロアルキルまたはアリールを形成してもよく; R5は酸素、イミノ、置換アルキルイミノまたは置換もしくは非置換シクロアルキルイミノであり; R7は-H、アルキル、アシル、カルボキシル、ニトロ、アミノ、置換アミノであり; かつ、R8は存在しないかまたはアルキルである。
【0042】
特定の態様では、Rは以下より選択される:


【0043】
特定の態様では、化合物は1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,3-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,2-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-アリル-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-プロパルギル-l-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(2-オキソ-2-(2-オキソ-2H-クロメン-3-イル)エチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(2,2-ジヒドロキシエチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(カルボキシメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミドまたはモノ(1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(3-(2-(10-(ジメチルイミノ)-1-ヒドロキシ-10H-ベンゾ[c]キサンテン-7-イル)ベンゾイルオキシ)プロピル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム))テトラブロミドである。
【0044】
一態様では、チオールを検出するための方法は、チオールを含む試料と上記の式I、式IIまたは式IIIを有する化合物とを組み合わせることによって溶液を形成する段階、チオールが存在することを示す、溶液の吸光度スペクトル、発光スペクトル、またはその両方の検出可能な変化を生成するために有効な期間、溶液中のチオールと化合物との間の反応を進行させる段階、および変化を検出する段階を含む。
【0045】
いくつかの態様では、チオールはシステイン、ホモシステイン、グルタチオンまたはその組み合わせである。上記態様のいずれかまたはすべてにおいて、化合物は1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,3-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,2-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(ベンジル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-アリル-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-プロパルギル-l-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(2-オキソ-2-(2-オキソ-2H-クロメン-3-イル)エチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(2,2-ジヒドロキシエチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(カルボキシメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミドまたはモノ(1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(3-(2-(10-(ジメチルイミノ)-1-ヒドロキシ-10H-ベンゾ[c]キサンテン-7-イル)ベンゾイルオキシ)プロピル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム))テトラブロミドでありうる。
【0046】
上記態様のいずれかまたはすべてにおいて、有効な期間は1〜60分でありうる。いくつかの態様では、反応は室温で生じ、有効な期間は1〜60分である。いくつかの態様では、反応は還流条件下で生じ、有効な期間は1〜5分である。
【0047】
上記態様のいずれかまたはすべてにおいて、溶液はHEPES(N'-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N'-2-エタンスルホン酸)、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)、リン酸およびTRIS(トリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン)緩衝液より選択される緩衝液をさらに含みうる。いくつかの態様では、チオールはホモシステイン、グルタチオンまたはその組み合わせであり、緩衝液はリン酸またはTRIS緩衝液であり、化合物は1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,3-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(ベンジル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-アリル-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(2-オキソ-2-(2-オキソ-2H-クロメン-3-イル)エチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミドまたはその組み合わせである。
【0048】
上記態様のいずれかまたはすべてにおいて、化合物との反応前の溶液の色を、化合物との反応後の溶液の色と比較することによって、溶液の吸光度スペクトルの変化を検出することができる。上記態様のいずれかまたはすべてにおいて、反応が有効な期間進行した後の少なくとも1つの波長での溶液の吸光度の変化を検出することによって、溶液の吸光度スペクトルの変化を検出することができる。上記態様のいずれかまたはすべてにおいて、試料および化合物を組み合わせた後の第1の時点での溶液の吸光度スペクトルを、反応が有効な期間進行した後の溶液の吸光度スペクトルと比較することによって、溶液の吸光度スペクトルの変化を検出することができる。
【0049】
上記態様のいずれかまたはすべてにおいて、反応が有効な期間進行した後の少なくとも1つの波長での溶液の発光の変化を検出することによって、溶液の発光スペクトルの変化を検出することができる。上記態様のいずれかまたはすべてにおいて、試料および化合物を組み合わせた後の第1の時点での溶液の発光スペクトルを、反応が有効な期間進行した後の溶液の発光スペクトルと比較することによって、溶液の発光スペクトルの変化を検出することができる。
【0050】
一態様では、チオールを検出するためのキットは、上記の式I、式IIまたは式IIIを有する、チオールを選択的に検出するために好適な少なくとも1つの化合物、およびチオールと組み合わせる場合の該化合物が、チオールが存在しない場合の吸光度スペクトル、発光スペクトル、またはその両方とは異なる吸光度スペクトル、発光スペクトル、またはその両方を示す、少なくとも1つの緩衝液を含む。いくつかの態様では、チオールはシステイン、ホモシステイン、グルタチオンまたはその組み合わせである。
【0051】
上記態様のいずれかまたはすべてにおいて、少なくとも1つの化合物は1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,3-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,2-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(ベンジル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-アリル-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-プロパルギル-l-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(2-オキソ-2-(2-オキソ-2H-クロメン-3-イル)エチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(2,2-ジヒドロキシエチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミドもしくは1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(カルボキシメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、モノ(1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(3-(2-(10-(ジメチルイミノ)-1-ヒドロキシ-10H-ベンゾ[c]キサンテン-7-イル)ベンゾイルオキシ)プロピル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム))テトラブロミドまたはその組み合わせより選択することができる。いくつかの態様では、少なくとも1つの化合物は1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,3-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(ベンジル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミドおよび1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-アリル-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(2-オキソ-2-(2-オキソ-2H-クロメン-3-イル)エチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、モノ(1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(3-(2-(10-(ジメチルイミノ)-1-ヒドロキシ-10H-ベンゾ[c]キサンテン-7-イル)ベンゾイルオキシ)プロピル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム))テトラブロミドまたはその組み合わせより選択される。上記態様のいずれかまたはすべてにおいて、緩衝液はHEPES(N'-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N'-2-エタンスルホン酸)、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)、リン酸またはTRIS(トリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン)緩衝液でありうる。
【0052】
上記態様のいずれかまたはすべてにおいて、キットは(a) 化合物と、(b) システイン、ホモシステイン、グルタチオンまたはその組み合わせとの間の反応によって生成される色変化を評価するための色比較チャートをさらに含み得る。上記態様のいずれかまたはすべてにおいて、キットは化合物とチオールとの間の反応を行うことができる複数の使い捨て容器も含みうる。いくつかの態様では、チオールと反応する際に吸光度スペクトル、発光スペクトル、またはその両方の検出可能な変化が起こるのに有効な量の化合物が予め秤量されて複数の使い捨て容器に入れられる。
【0053】
III. 架橋ビオローゲン
システイン(Cys)、ホモシステイン(Hcy)および/またはグルタチオン(GSH)などのチオールを選択的に検出する架橋ビオローゲンの態様が本明細書において開示される。本明細書において使用される「架橋ビオローゲン」という用語は、ジメチルベンゼン環などの共通の構造要素またはブリッジに結合した2個のビオローゲン部分を含む中心部分を有する化合物を意味する。各種の置換基をビオローゲン部分の遊離端に結合させることで、種々の性質を有する架橋ビオローゲン化合物を形成することができる。いくつかの態様では、架橋ビオローゲンは緩衝溶液中でチオールと反応することで、着色生成物を形成し、かつ/または吸光度スペクトルおよび/もしくは発光スペクトルの変化が起こる。生成物の形成および/またはスペクトルの差を視覚的に、または分光学的方法、例えば紫外可視もしくは蛍光分光法によってモニタリングすることができる。特定の態様では、架橋ビオローゲンはCys、HcyおよびGSHの1つまたは複数に対して選択的である。選択性は、着色がより強い生成物および/または着色が異なった生成物の形成によって示すことができる。選択性は、架橋ビオローゲンおよびチオールを含有する溶液の吸光度スペクトルおよび/もしくは発光スペクトルの検出可能な変化、または架橋ビオローゲンおよびチオールを含有する溶液の1つもしくは複数の波長での吸光度および/もしくは蛍光発光の検出可能な変化によって示すこともできる。特定の態様では、温度および/または緩衝液の組成が特定の架橋ビオローゲンの選択性に影響する。1つまたは複数のチオールに対するビオローゲンの選択性は、生体液などの試料中のCys、Hcyおよび/またはGSHの存在および/または量を決定する比色的および/または分光光度的方法の基礎を形成する。決定は定性的(例えば視覚的色変化をモニタリングするか、または反応の前後の吸光度スペクトルおよび/もしくは発光スペクトルの変化をモニタリングする)、あるいは定量的(例えば特定の1つもしくは複数の波長での吸光度もしくは発光の変化を測定する)でありうる。
【0054】
架橋ビオローゲンは一般式I、IIまたはIII:

を有し、式中、Rは置換基である。本明細書に開示されるいくつかの態様では、2個のR置換基は同一である。しかし、他の態様では、2個のR基を独立して選択することができる。好適なR置換基としては、置換および非置換アルカン、アルケンまたはアルキンなどの置換および非置換脂肪族基、1個または複数の置換または非置換芳香環および/または芳香族複素環を含むアリールまたはヘテロアリール基、特に、低級脂肪族、アリールまたはヘテロアリール置換基が挙げられ、ここで置換低級脂肪族、アリールまたはヘテロアリール置換基としては、ヒドロキシル、スルフヒドリル、ニトリル、アミド、ヒドロキシル、ならびにケトン、アルデヒドおよびカルボキシルなどのカルボニルを有する基を含む1つまたは複数の官能基が挙げられる。好適なR置換基としてはフルオロフォアも挙げられる。いくつかの態様では、フルオロフォアは一般式IVのロードール類似体:

であり、式中、Xは酸素、硫黄、CH2またはNHであり; R1、R2、R3、R4およびR6は-H、-OH、低級アルキル、カルボキシアルキル、アミノ、置換アミノ、アルコキシまたはハロゲンより独立して選択され、あるいは、R2およびR3は一緒になって置換もしくは非置換シクロアルキルまたはアリールを形成してもよく; R5は酸素、イミノ、置換アルキルイミノまたは置換もしくは非置換シクロアルキルイミノであり; R7は-H、アルキル、アシル、カルボキシル、ニトロ、アミノ、置換アミノであり; かつ、R8は存在しないかまたはアルキルである。
【0055】
いくつかの態様では、Rは低級アルキルニトリル、低級アルキル置換フェニル、アルケニル、アルキニル、置換クマリン(1-ベンゾピラン-2-オン)、アセタール、カルボキシレート基、または式IVの化合物である。特定の態様では、Rはシアノメチル(-CH2C≡N)、ベンジル(-CH2C6H5)、アリル(-CH2-CH=CH2)、プロパルギル(-CH2-C≡CH)、1-(2-オキソ-2-2H-クロメン-3-イル)エチル、1-(2,2-ジヒドロキシエチル)(-CH2CH(OH)2)、1-カルボキシメチル(-CH2COOH)または3-(2-(10-(ジメチルイミノ)-1-ヒドロキシ-10H-ベンゾ[c]キサンテン-7-イル)ベンゾイルオキシ)プロピルである。
【0056】
パラ、オルトおよびメタ架橋ビス-シアノメチル-ビオローゲンを合成した。

3つの異性体はほぼ同一の紫外可視スペクトルを有し、3つすべての化合物について最大吸光度は262nmにある(図2)。
【0057】
0.5M TRIS緩衝液中での各異性体とCys、HcyおよびGSHとの反応を、534nmでの吸光度の変化を時間関数としてモニタリングすることによって調査した。それぞれ図3〜図5に見られるように、オルト、メタおよびパラ異性体は、チオールとのそれらの反応において有意な差を示した。オルト異性体は、GSHおよびHcyと反応した際に対照に対して増大した吸光度を示し、GSHについてはより大きな増大が見られた。メタ異性体はHcyについて増大した吸光度を示した。吸光度は約5〜20分で急速に増大した後、横ばいになり始めた。対照に対して著しく減少した吸光度がGSHについて見られた。反応はCysの存在下でほとんどまたは全く見られなかった。パラ異性体はHcyの存在下で約20分にわたって吸光度の急激な増大を示し、吸光度は20分後に実質的に一定のままであった。吸光度の比較的中程度の増大がGSHの存在下で見られ、吸光度は約20分後にやはり横ばいになった。これらの結果に基づけば、TRIS緩衝液中で、オルト異性体は選択的にGSHおよびより少ない程度でHcyと反応するようであり、メタ異性体は選択的にHcyおよびGSHと反応するようであり、パラ異性体は選択的にHcyおよびより少ない程度でGSHと反応するようであり、Cysとの認識可能な反応を示さない。したがって、いくつかの態様では、Hcyを選択的に検出するための方法は、Hcyを含有しうる試料とメタまたはパラ架橋ビス-CNビオローゲンとをTRIS緩衝液中、室温で1〜60分間反応させることによって行われる。他の態様では、GSHを選択的に検出するための方法は、GSHを含有しうる試料とメタ架橋ビス-CNビオローゲンとをTRIS緩衝液中、室温で1〜60分間反応させることによって行われる。
【0058】
いくつかの態様では、緩衝液の組成が架橋ビオローゲンのチオール選択性に影響する。室温でのパラ架橋ビス-CNビオローゲンとCys、HcyおよびGSHとの反応に対する緩衝塩の影響を調査した。HEPES(N'-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N'-2-エタンスルホン酸)、TES(N-トリス(ヒドロキシ-メチル)メチル-2-アミノ-エタンスルホン酸)、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパン-スルホン酸)、リン酸およびTRIS(トリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン)緩衝液を評価した(それぞれ図10〜図14)。すべての緩衝液濃度を50mMとした。パラ架橋ビス-CNビオローゲンは、HEPES、MOPS、リン酸およびTRIS緩衝液中で30分後にHcyに対する選択性(目に見える色変化によって定性的に決定される)を示した。TRIS中でのGSHに対する選択性も、1〜30分間の反応後に示された。したがって、いくつかの態様では、Hcyの存在を選択的に検出するための方法は、HEPES、MOPS、リン酸またはTRIS緩衝液中でパラ架橋ビス-CNビオローゲンを用いて、30分後のHcyの存在の決定によって行われる。別の態様では、GSHの存在を選択的に検出するための方法は、TRIS緩衝液中でパラ架橋ビス-CNビオローゲンを用いて、1〜30分後のGSHの存在の決定によって行われる。さらに別の態様では、GSHおよび/またはHcyの存在を選択的に検出するための方法は、TRIS緩衝液中でパラ架橋ビス-CNビオローゲンを用いて、1分後のGSHの存在の決定および30分後のHcyの存在の決定によって行われる。
【0059】
以下のスキームに従って、還流条件下、シアン化メチル(MeCN)中で3〜12時間、過剰な臭化アルキルを用いるビス架橋ビオローゲン前駆体のヘキサフルオロリン酸塩のアルキル化によって、パラ架橋ビス-CNビオローゲンの一連の類似体を合成した。

ベンジル、アリル、プロパルギル、クマリン、アセタールおよびカルボキシレート類似体を調製した。新規類似体の収率は25〜65%の範囲であった。
【0060】
各類似体をTRIS緩衝液中、室温でのCys、HcyおよびGSHとの反応について評価した。ベンジル、アリルおよびカルボキシレート類似体はいずれのチオールとも反応しなかった(例えば図18参照)。プロパルギル、クマリンおよびアセタール類似体は3つすべてのチオールと反応したが、色変化の定性的評価に基づく選択性を示さなかった。
【0061】
ベンジルおよびアリル類似体のさらなる調査を還流条件下、TRIS緩衝液中で行った。還流条件下、ベンジル類似体は、目に見える青色の形成を伴いHcyに対する強力な選択性を示した(図22)。CysまたはGSHを含有する試料は透明のままであった。アリル類似体は、使用するチオールに応じて異なった色の溶液を生成した(図23)。色変化は、HcyまたはGSHが存在する場合、より明白である。したがって、一態様では、Hcyを選択的に検出するための方法は、還流条件下、TRIS緩衝液中でベンジル類似体(1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド)を用いて行われる。別の態様では、Hcyおよび/またはGSHの存在を決定するための方法は、還流条件下、TRIS緩衝液中でアリル類似体(1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-アリル-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド)を用いて行われる。
【0062】
濃度6mMでのパラ-クマリン類似体の初期調査は選択性を示さなかった。しかし、TRIS緩衝液中1mMという減少した濃度では、クマリン類似体は室温で5分以内にHcyおよびCysによって濃紫色溶液を、GSHによって淡桃色溶液を生成し、それによりGSH選択性を示した。したがって、一態様では、GSHを選択的に検出するための方法は、TRIS緩衝液中、室温でクマリン類似体(1',1''-(1,4-フェニレンビス-(メチレン))ビス(1-(2-オキソ-2-(2-オキソ-2H-クロメン-3-イル)エチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド)を用いて行われる。
【0063】
表1は、評価される類似体のチオール選択性を要約する。
【0064】
(表1)

*数字はスキーム1〜4(実施例1〜2)の化合物を指す。
【0065】
超分子集合体型機構が、溶液中でのグルタチオンと架橋ビオローゲンの特定の態様、特に架橋ビオローゲンがフルオロフォアを含む態様との間の反応において観察される吸光度および/または発光(蛍光)スペクトルの変化に関与しうると仮定される。いくつかの態様では、架橋ビオローゲン骨格に結合したフルオロフォアはその蛍光能力を失う。ビオローゲンはフルオロフォアより電子を受容することによって蛍光を消光することができると考えられる。図28は、オルト、メタおよびパラ-ビスクマリン類似体のエネルギー最小化構造を示す。各構造は、2つのクマリン部分間のπ-πスタッキングを示す。しかし、パラ構造のみが、グルタチオン分子が嵌合されうる空洞を形成する。図29は、GSHおよびp-ビスクマリン類似体によって形成される潜在的な超分子集合体を示す。空洞へのGSHの挿入がπ-πスタッキングを分断すると予測される。さらに、架橋ビオローゲン類似体がGSH分子の周りに折りたたまれると、GSH分子内の負電荷の領域はクマリン部分内の正電荷中心に整列することにより、電荷移動機構を通じてクマリン部分の蛍光能力を修復することができる。したがって、特定の態様では、開示される架橋ビオローゲン類似体の特定の態様の蛍光を測定することによってグルタチオンを検出することができる。
【0066】
開示される架橋ビオローゲン類似体の態様は、血液などの生体液中のチオールを検出するために有用であると予測される。この化合物を使用して、血液試料からのチオールの分離または精製がほとんどまたは全くない血液試料中のチオールを検出できる場合、有用性は強化される。したがって、血液によって吸収または放出される波長以外の波長で検出されうる化合物が望ましい。架橋ビオローゲン骨格、すなわち一般式I〜IIIに結合しうる近赤外色素が特に対象となる。いくつかの態様では、近赤外色素はフルオロフォアである。好適でありうる近赤外色素の一例は、5員環内の酸素原子を通じて架橋ビオローゲンに結合可能なロードール類似体(以下に示す)である(スキーム5、実施例6および図30〜32も参照)。

5員環を開環させてメチルエステル誘導体を形成することができ、これを架橋ビオローゲンに結合させることができる。

典型的には、ロードール類似体の吸光度および蛍光スペクトルはpH依存性である。例えば、0.1M NaOH中でのこのエステル誘導体の吸光度最大は620nmであり、同一溶媒中での発光最大は770nmである。この溶媒中でのストークスシフトは150nm(3142cm-1)である。
【0067】
III. キット
キットも本開示の特徴である。キットの態様は、a) システイン、ホモシステイン、グルタチオンまたはその混合物を選択的に検出するために好適な少なくとも1つの化合物と、b) Cys、Hcy、GSHまたはその混合物と組み合わせて溶液を形成する場合の該化合物が、Cys、HcyおよびGSHの非存在下での緩衝溶液中の該化合物に比べその吸光度スペクトルおよび/または発光スペクトルに関して変化する、少なくとも1つの緩衝液とを含む。キットは、検出を行うことができる1つまたは複数の容器、例えば使い捨て試験管またはキュベットも含みうる。キットは、検出を行うための説明書をさらに含みうる。いくつかの態様では、キットは、所与のチオールが存在するか否かを決定するために色変化を評価するための色比較チャートを含む。いくつかの態様では、キットはCys、Hcyおよび/またはGSHの対照試料を含む。典型的には、対照試料は固体形態で与えられる。
【0068】
キットのいくつかの態様では、化合物は固体として与えられ、緩衝液は液体形態で与えられる。緩衝液をCys、Hcy、GSHまたはその混合物を検出するために好適な濃度で与えることができる。あるいは、緩衝液を濃縮溶液として与えることもでき、これは続いて使用前に希釈される。特定の態様では、化合物が秤量されて1つまたは複数の容器(例えば試験管またはキュベット)に入れられることがあり、続いて容器に緩衝液および試験試料を加えることによって検出が行われる。
【実施例】
【0069】
IV. 実施例
実施例1
パラ、オルトおよびメタ架橋ビス-CNビオローゲン
スキーム1に従ってパラ架橋ビス-CNビオローゲン(1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド)を合成した。

【0070】
1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、5: ビピリジン(16.66g、106.65mmol)をアセトニトリル125mLに溶解し、溶液を還流させた。次にp-ビス-(ブロモ-メチル)ベンゼン(5g、18.94mmol)をアセトニトリル300mLに溶解させた。この溶液をビピリジン還流溶液に1時間中加えた。p-ビス-(ブロモ-メチル)ベンゼン溶液の添加完了後に、混合物をさらに24時間還流させた。形成された析出物を濾過し、アセトニトリル(2x50mL)で洗浄し、風乾した。一重架橋ビオローゲン3を淡黄色固体として得た。収量10.5g、96%。

【0071】
化合物3(3g、5.3mmol)を水30mLに懸濁させ、析出物の溶解完了まで混合物を加熱した。1M NH4PF6 20mLをゆっくりと加えた。混合物を室温に冷却し、濾過し、淡黄色析出物を水(3x50mL)で洗浄し、減圧乾燥させた。収量3.426g、93%。

【0072】
ブロモアセトニトリル(7.807g、65.09mmol)をアセトニトリル40mLに溶解し、溶液を還流させた。ヘキサフルオロリン酸塩4(4g、5.66mmol)をアセトニトリル200mLに溶解し、ブロモアセトニトリル還流溶液に1時間以内で加えた。ヘキサフルオロリン酸塩溶液の添加完了後に、混合物をさらに12時間還流させた。混合物を室温に冷却した。黄色析出物を濾過し、冷アセトニトリル(2x50mL)で洗浄した後、減圧乾燥した。収量1.61g、35%。

【0073】
スキーム1と同一の一般的手順を使用し、メタ-ビス-(クロロ-メチル)ベンゼンを化合物1の代わりに使用するスキーム2に従って、メタ架橋ビス-CNビオローゲン(1',1''-(1,3-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド)を合成した。

【0074】
1',1''-(1,3-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、9: 全収率(3工程)20%。

【0075】
スキーム1と同一の一般的手順を使用し、オルト-ビス-(ブロモ-メチル)ベンゼンを化合物1の代わりに使用するスキーム3に従って、オルト架橋ビス-CNビオローゲン(1',1''-(1,2-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド)を合成した。

【0076】
1',1''-(1,2-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、13: 全収率(3工程)7%。

【0077】
図2は、水中2x10-5Mのオルト、メタおよびパラ-ビスCNビオローゲンの紫外可視スペクトルを示す。3つすべての化合物のスペクトルが262nmで最大吸光度を示す。
【0078】
各類似体を、ホモシステイン、システインおよびグルタチオンの0.5M TRIS緩衝液pH 7.0中1mM溶液との反応について室温でスクリーニングした。反応を30〜60分間進行させた。類似体を最終濃度8mMまで加えた。
【0079】
図3〜図5は、それぞれオルト、メタおよびパラ異性体とチオールとの反応の534nmでの吸光度を時間関数として示す。534nmでの吸光度の変化はビオローゲンジラジカル種の形成に起因する。図6は、オルト異性体とチオールとの反応の25分での紫外可視スペクトルを示す。図7〜図8は、それぞれメタおよびパラ異性体とチオールとの反応の30分での紫外可視スペクトルである。
【0080】
40mMリン酸緩衝液pH 7.0中、20mV/秒でのオルト、メタおよびパラ異性体対SCE、ガラス状炭素のサイクリックボルタンメトリーは、これらのテトラカチオンが同様のパターンで2段階酸化還元系として挙動することを示した(図9)。しかし、それらの電流の差が観察された。ボルタモグラムが完全には対称ではないことから、報告されたように、可逆性が、吸着および遅い電荷移動によって妨害されうると考えられる。酸化および還元ピークが観察された電圧を表2に示す。
【0081】
(表2)

【0082】
室温でのパラ異性体とHcy、CysおよびGSHとの反応に対する緩衝塩の影響を評価した。緩衝液の濃度(50mM)およびpH(7.0)は一定に保たれた。HEPES(N'-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N'-2-エタンスルホン酸)、TES(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノ-エタンスルホン酸)、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)、リン酸およびTRIS(トリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン)緩衝液を評価した(それぞれ図10〜図14)。チオール濃度を1mMとした。結果は、パラ架橋ビス-CNビオローゲンがHEPES、MOPS、リン酸およびTRIS緩衝液中でHcyと選択的に反応することを示した。発色の点でより良好な結果がリン酸およびTRIS緩衝液について見られた。GSH選択性がTRIS緩衝液において見られた。
【0083】
50mMリン酸緩衝液pH 7中、室温でのパラ異性体と10mM Hcy、CysおよびGSHとの反応を1時間後に1H NMRによって評価した。NMRスペクトルは、Hcy(図15)およびCys(図16)の場合にα-C-H、およびCH2プロトンが低磁場シフトすること、および、ビオローゲンのピリジン部分からのプロトンのみが影響されて新たなシグナルが高磁場になることを示した。GSHと化合物5との反応について大きな変化は観察されなかった(図17)。
【0084】
実施例2
パラ架橋ビピリジンビス-シアノメチル類似体の合成
スキーム4に従ってパラ架橋ビス-CNビオローゲンのベンジル(化合物14)、アリル(化合物15)、プロパルギル(化合物16)、クマリン(化合物17)、アセタール(化合物18)およびカルボキシレート(化合物19)類似体を合成した。

【0085】
1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(ベンジル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、14: ブロモベンジル(2.78g、16.28mmol)をアセトニトリル10mLに溶解し、溶液を還流させた。化合物4のヘキサフルオロリン酸塩(1g、1.42mmol)をアセトニトリル50mLに溶解し、ブロモベンジル還流溶液に1時間以内で加えた。添加が完了した後、混合物をさらに3時間還流させた。混合物を室温に冷却した。黄色析出物を濾過し、冷アセトニトリルで洗浄した後、減圧乾燥させた。収量: 0.59g、46%。

【0086】
1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-アリル-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、15: 化合物14について還流時間3時間で上記のように化合物15を合成した。臭化アリル(1.97g、16.28mmol)、化合物4(1.0g、1.42mmol)。標的化合物を明黄色固体として単離した。収量: 0.48g、42%。

【0087】
1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-プロパルギル-l-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド16: 化合物14について還流時間3時間で上記のように化合物16を合成した。臭化プロパルギル(2.42g、16.28mmol)、化合物4(1.0g、1.42mmol)。標的化合物を褐色固体として単離した。収量: 0.48g、42%。

【0088】
1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(2-オキソ-2-(2-オキソ-2H-クロメン-3-イル)エチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、17: 化合物14について還流時間3時間で上記のように化合物17を合成した。ブロモアセチルクマリン(2.17g、8.14mmol)、化合物4(0.5g、0.707mmol)。標的化合物を青緑色固体として単離した。収量: 0.42g、54%。

【0089】
1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(2,2-ジヒドロキシエチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、18: 化合物14について還流時間5時間で上記のように化合物18を合成した。ブロモアセチルアセトアルデヒド(3.21g、16.28mmol)、化合物4(1.0g、1.42mmol)。標的化合物を濃緑色固体として単離した。収量: 0.30g、22%。

【0090】
1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(カルボキシメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、19: 化合物14について還流時間12時間で上記のように化合物19を合成した。ブロモ酢酸(2.26g、16.28mmol)、化合物4(1.0g、1.42mmol)。収量: 0.30g、22%。

【0091】
類似体を、室温でのホモシステイン、システインおよびグルタチオンの0.5M TRIS緩衝液pH 7.0中1mM溶液との反応についてスクリーニングした。反応を1分後および10分後に評価した。溶液中の類似体の最終濃度を6〜8mMの範囲とした。各類似体の濃度を以下の表3に示す。
【0092】
(表3)

【0093】
ベンジル、アリルおよびカルボキシレート類似体は室温でいずれのチオールとも反応しなかった。図18はカルボキシレート類似体反応の結果を示す。プロパルギル、クマリンおよびアセタール類似体はチオールと混合した際に濃色溶液を生成した(それぞれ図19〜21)。プロパルギル類似体は濃褐色溶液を生成した。クマリン類似体は濃紫色溶液を生成し、析出物を形成した。アセタール類似体は濃緑色溶液を生成した。
【0094】
ベンジルおよびアリル類似体を還流条件下、0.5M TRIS緩衝液(pH7.0)中でさらに調査した(それぞれ図22および図23)。ベンジル類似体は1mM Hcyと選択的に反応して5分後に青色を生成した。1mM Cysまたは1mM GSHでは反応は見られなかった。5分間の還流後、アリル類似体は、使用するチオールに応じて異なった色の溶液を生成した。
【0095】
実施例3
化合物5とチオールおよびアミノ酸との反応
化合物5(1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン,1,1'-ジイウム)ブロミド)と生体チオール(Hcy、CysおよびGSH)、他のチオール(例えばエタンチオール、ヘキサンチオールおよび3-メルカプトプロピオン酸)ならびにアミノ酸との反応を試験した。8mMの化合物5を1mMチオールまたはアミノ酸と0.5M TRIS緩衝液(pH 7.0)中で混合し、30分間反応させた。次に534nmでの吸光度を測定した。図24に示すように、Hcyのみが吸光度の有意な増大を示し、それによりHcy検出に対する化合物5の特異性が示された。
【0096】
実施例4
反応機構の調査
4.1 電気化学滴定
これらの種類の化合物が示す酸化還元特性により、可能な酸化還元型機構を、Hcy、Cys、GSHおよび3-メルカプトプロピオン酸(MPA)を用いて化合物5の電気化学滴定によって調査した。Hcyのチオール部分を模倣する対照としてMPAを使用した。

【0097】
電気化学滴定は室温および不活性(すなわちアルゴン)雰囲気下で行った。0.5、1、2、5および10当量の対応するチオールを化合物5(10mMリン酸緩衝液pH 7.0中8mM)に加えた後、20mV/秒、20分でサイクリックボルタモグラムを得た。作用電極はガラスとし、基準電極はSCEとし、対電極はPtとした。表4に示すように、わずか0.5当量のチオールを化合物5に加えた際に、カソード電流およびアノード電流の両方の変化がHcy、Cysおよび3-MPAについて観察され、10当量の添加後、これらの変化は一定のままであった。GSHによる滴定は異なった挙動を示し、アノード電流およびカソード電流の両方の小さな変化が観察された。しかし、5当量を加えた際にアノード電流の減少が観察された。
【0098】
(表4)

*電流のこの変化は、5当量をビオローゲン溶液に加えた後にのみ観察された。
【0099】
4.2 反応生成物の同定
可能な酸化還元機構を実証するために、化合物5とチオールとの間の反応による生成物をLC/MSで調査中である。Hcy、CysおよびGSHからの可能な酸化生成物を同定するLC/MS法が開発された。チオールまたは酸化生成物を濃度50μMで含有する試料混合物をLC/MSで評価した。溶媒系はシアン化メチル(MeCN):H2O:100mM酢酸アンモニウムpH 5、5:4:1とした。流量は0.2mL/分、注入量は10μLとした。LC/MS検出器をポジティブモードで操作した。
【0100】
図25は、Cysまたはその酸化生成物システインスルホン酸(CysSO3H)を濃度50μMで含有する対照試料混合物のLC/MSパターンを示す。

【0101】
図26は、Hcyならびにその酸化生成物ホモシステインスルホン酸(HcySO3H)およびホモシステインスルフィン酸(HcySO2H)を含有する対照試料混合物のLC/MSパターンを示す。

【0102】
図27は、グルタチオンならびにその酸化生成物グルタチオンスルホン酸(GSO3H)およびグルタチオンジスルフィド(GSSG)を含有する対照試料混合物のLC/MSパターンを示す。

【0103】
実施例5
化合物17とチオールとの反応
化合物5とチオールとの反応について行った比色滴定および電気化学滴定による予備的結果に基づいて、GSH検出のための化合物17(1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(2-オキソ-2-(2-オキソ-2H-クロメン-3-イル)エチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド)の使用についてさらに調査した。超分子集合体型機構が、GSHと、開示されるビオローゲン類似体との間の反応において観察される色変化に関与しうると仮定される。化合物17がフルオロフォアを含有することから、増大した感受性が蛍光ベースの方法によって典型的に得られる場合、蛍光検出法が有利でありうると想定された。
【0104】
実施例2に示すように、6mM濃度の化合物17とチオール(Hcy、Cys、GSH)との反応の初期の結果は目に見える選択性を示さなかった。化合物17の6mM濃度では、濃紫色溶液、および濃色析出物の形成が各チオールについて観察された。しかし、化合物17の濃度を500mM TRIS緩衝液pH 7.0中1mMに減少させた場合、室温でのHcyおよびCysとの反応時で5分以内に濃紫色溶液が得られ、GSHとの反応時に淡桃色溶液が得られた。
【0105】
一重架橋オルト、メタおよびパラ-ビスクマリンビオローゲン類似体のエネルギー最小化構造を図28に示す。クマリン部分のπ-πスタッキングは3つすべての類似体において観察されるが、図29に示すように、パラ架橋類似体のみが空洞内にGSHを嵌合させることができる。パラ-ビスクマリンビオローゲン(化合物17)へのGSHの結合は、π-πスタッキングを分断し、電荷移動機構を通じて該化合物の蛍光を「オンにする」と予測される。
【0106】
蛍光による化合物17とHcy、CysおよびGSHとの反応のスクリーニングは現在進行中である。一重架橋ビオローゲン類似体のこの系列を完成させるために、実施例2に既に記載のそれと同様の方法論を使用してメタおよびオルト異性体を現在合成中である。
【0107】
実施例6
一重架橋パラ-ビスロードールビオローゲンの合成
モノ(1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(3-(2-(10-(ジメチルイミノ)-1-ヒドロキシ-10H-ベンゾ[c]キサンテン-7-イル)ベンゾイルオキシ)プロピル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム))テトラブロミド、21: GSH検出用の対称および非対称の両方の一重架橋ビオローゲンを生成するための近赤外色素の使用は現在進行中である。一重架橋パラ-ビオローゲンビス-ロードール類似体である化合物21は、スキーム5に示すように合成することができる。

【0108】
公刊されたプロトコール(Strongin et al., "Developing Fluorogenic Reagents for Detecting and Enhancing Bloody Fingerprints," NCJ 227841, Grant Report, 2009)に従ってロードール20を合成した(スキーム6)。

【0109】
各ビス-ロードールビオローゲン異性体のエネルギー最小化構造を図30〜32に示す。
【0110】
開示される本発明の原理を適用することができる多くの可能な態様を考慮して、例示される態様が、単に本発明の好ましい例でしかなく、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではないということを認識すべきである。むしろ、本発明の範囲は以下の特許請求の範囲によって規定される。したがって本発明者らは、これら請求項に記載の範囲および主旨内にあるすべてを、本発明者らの発明として特許請求する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式を有する化合物:
(a) 式I:

式中、Rは低級アルキルニトリル、低級アルキル置換フェニル、アルケニル、アルキニル、置換クマリン、アセタール、カルボキシレート基、またはフルオロフォアである; あるいは
(b) 式II:

式中、Rは低級アルキルニトリル、低級アルキル置換フェニル、アルケニル、アルキニル、置換クマリン、アセタール、カルボキシレート基、またはフルオロフォアである; あるいは
(c) 式III:

式中、Rは低級アルキルニトリル、アルケニル、アルキニル、置換クマリン、アセタール、カルボキシレート基、またはフルオロフォアである。
【請求項2】
Rが下記構造のフルオロフォアである、請求項1記載の化合物:

式中、Xは酸素、硫黄、CH2またはNHであり; R1、R2、R3、R4およびR6は-H、-OH、低級アルキル、カルボキシアルキル、アミノ、置換アミノ、アルコキシまたはハロゲンより独立して選択され、あるいは、R2およびR3は一緒になって置換もしくは非置換シクロアルキルまたはアリールを形成してもよく; R5は酸素、イミノ、置換アルキルイミノまたは置換もしくは非置換シクロアルキルイミノであり; R7は-H、アルキル、アシル、カルボキシル、ニトロ、アミノ、置換アミノであり; かつ、R8は存在しないかまたはアルキルである。
【請求項3】
Rが以下より選択される、式Iまたは式IIの、請求項1記載の化合物:


【請求項4】
Rが以下より選択される、式IIIの、請求項1記載の化合物:


【請求項5】
1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,3-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,2-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-アリル-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-プロパルギル-l-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(2-オキソ-2-(2-オキソ-2H-クロメン-3-イル)エチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(2,2-ジヒドロキシエチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(カルボキシメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミドまたはモノ(1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(3-(2-(10-(ジメチルイミノ)-1-ヒドロキシ-10H-ベンゾ[c]キサンテン-7-イル)ベンゾイルオキシ)プロピル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム))テトラブロミドである、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
以下の段階を含む、チオールを検出するための方法:
チオールを含む試料と下記式:
(a) 式I:

(b) 式II:

または
(c) 式III:

を有する化合物とを組み合わせることによって溶液を形成する段階であって、式中、Rは低級アルキルニトリル、低級アルキル置換フェニル、アルケニル、アルキニル、置換クマリン、アセタール、カルボキシレート基、またはフルオロフォアである、段階;
溶液の吸光度スペクトル、発光スペクトル、またはその両方の検出可能な変化を生成するために有効な期間、溶液中のチオールと化合物との間の反応を進行させる段階であって、該変化によってチオールが存在することを示す、段階; および
該変化を検出する段階。
【請求項7】
Rが下記構造のフルオロフォアである、請求項6記載の方法:

式中、Xは酸素、硫黄、CH2またはNHであり; R1、R2、R3、R4およびR6は-H、-OH、低級アルキル、カルボキシアルキル、アミノ、置換アミノ、アルコキシまたはハロゲンより独立して選択され、あるいは、R2およびR3は一緒になって置換もしくは非置換シクロアルキルまたはアリールを形成してもよく; R5は酸素、イミノ、置換アルキルイミノまたは置換もしくは非置換シクロアルキルイミノであり; R7は-H、アルキル、アシル、カルボキシル、ニトロ、アミノ、置換アミノであり; かつR8は存在しないかまたはアルキルである。
【請求項8】
チオールが、システイン、ホモシステイン、グルタチオンまたはその組み合わせである、請求項6記載の方法。
【請求項9】
化合物が、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,3-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,2-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(ベンジル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-アリル-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-プロパルギル-l-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(2-オキソ-2-(2-オキソ-2H-クロメン-3-イル)エチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(2,2-ジヒドロキシエチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(カルボキシメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミドまたはモノ(1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(3-(2-(10-(ジメチルイミノ)-1-ヒドロキシ-10H-ベンゾ[c]キサンテン-7-イル)ベンゾイルオキシ)プロピル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム))テトラブロミドである、請求項6記載の方法。
【請求項10】
有効な期間が1〜60分である、請求項6記載の方法。
【請求項11】
反応が室温で生じ、かつ有効な期間が1〜60分である、請求項6記載の方法。
【請求項12】
反応が還流条件下で生じ、かつ有効な期間が1〜5分である、請求項6記載の方法。
【請求項13】
溶液が、HEPES(N'-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N'-2-エタンスルホン酸)、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)、リン酸、およびTRIS(トリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン)緩衝液より選択される緩衝液をさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項14】
チオールが、ホモシステイン、グルタチオンまたはその組み合わせであり、緩衝液が、リン酸またはTRIS緩衝液であり、かつ化合物が1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,3-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(ベンジル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-アリル-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(2-オキソ-2-(2-オキソ-2H-クロメン-3-イル)エチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミドまたはその組み合わせである、請求項6記載の方法。
【請求項15】
変化を検出する段階が、化合物との反応前の溶液の色を、化合物との反応後の溶液の色と比較する段階を含む、請求項6記載の方法。
【請求項16】
変化を検出する段階が、反応が有効な期間進行した後の、少なくとも1つの波長での溶液の吸光度の変化を検出する段階を含む、請求項6記載の方法。
【請求項17】
変化を検出する段階が、試料および化合物を組み合わせた後の第1の時点での溶液の吸光度スペクトルを、反応が有効な期間進行した後の溶液の吸光度スペクトルと比較する段階を含む、請求項6記載の方法。
【請求項18】
変化を検出する段階が、反応が有効な期間進行した後の少なくとも1つの波長での溶液の発光の変化を検出する段階を含む、請求項6記載の方法。
【請求項19】
変化を検出する段階が、試料および化合物を組み合わせた後の第1の時点での溶液の発光スペクトルを、反応が有効な期間進行した後の溶液の発光スペクトルと比較する段階を含む、請求項6記載の方法。
【請求項20】
以下を含む、チオールを検出するためのキット:
下記式:
(a) 式I:

(b) 式II:

または
(c) 式III:

を有し、チオールを選択的に検出するために好適な少なくとも1つの化合物であって、式中、Rは低級アルキルニトリル、低級アルキル置換フェニル、アルケニル、アルキニル、置換クマリン、アセタール、カルボキシレート基、またはフルオロフォアである、化合物; および
チオールと組み合わせる場合の該化合物が、チオールが存在しない場合の吸光度スペクトル、発光スペクトル、またはその両方とは異なる、吸光度スペクトル、発光スペクトル、またはその両方を示す、少なくとも1つの緩衝液。
【請求項21】
Rが下記構造のフルオロフォアである、請求項20記載のキット:

式中、Xは酸素、硫黄、CH2またはNHであり、R1、R2、R3、R4およびR6は-H、-OH、低級アルキル、カルボキシアルキル、アミノ、置換アミノ、アルコキシまたはハロゲンより独立して選択され、あるいは、R2およびR3は一緒になって置換もしくは非置換シクロアルキルまたはアリールを形成してもよく; R5は酸素、イミノ、置換アルキルイミノまたは置換もしくは非置換シクロアルキルイミノであり; R7は-H、アルキル、アシル、カルボキシル、ニトロ、アミノ、置換アミノであり; かつR8は存在しないかまたはアルキルである。
【請求項22】
チオールが、システイン、ホモシステイン、グルタチオンまたはその組み合わせである、請求項20記載のキット。
【請求項23】
少なくとも1つの化合物が、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,3-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,2-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(ベンジル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-アリル-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-プロパルギル-l-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(2-オキソ-2-(2-オキソ-2H-クロメン-3-イル)エチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(2,2-ジヒドロキシエチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(カルボキシメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、モノ(1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(3-(2-(10-(ジメチルイミノ)-1-ヒドロキシ-10H-ベンゾ[c]キサンテン-7-イル)ベンゾイルオキシ)プロピル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム))テトラブロミドまたはその組み合わせより選択される、請求項20記載のキット。
【請求項24】
少なくとも1つの化合物が1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,3-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(シアノメチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(ベンジル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-アリル-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(2-オキソ-2-(2-オキソ-2H-クロメン-3-イル)エチル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム)ブロミド、モノ(1',1''-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(3-(2-(10-(ジメチルイミノ)-1-ヒドロキシ-10H-ベンゾ[c]キサンテン-7-イル)ベンゾイルオキシ)プロピル)-4,4'-ビピリジン-1,1'-ジイウム))テトラブロミドまたはその組み合わせより選択される、請求項20記載のキット。
【請求項25】
(a) 化合物と、(b) システイン、ホモシステイン、グルタチオンまたはその組み合わせとの間の反応によって生成される色変化を評価するための色比較チャートをさらに含む、請求項20記載のキット。
【請求項26】
緩衝液が、HEPES(N'-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N'-2-エタンスルホン酸)、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)、リン酸またはTRIS(トリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン)緩衝液である、請求項20記載のキット。
【請求項27】
化合物とチオールとの間の反応を行うことができる複数の使い捨て容器をさらに含む、請求項20記載のキット。
【請求項28】
チオールと反応する際に、吸光度スペクトル、発光スペクトル、またはその両方の検出可能な変化が起こるのに有効な量の化合物が予め秤量されて複数の使い捨て容器に入れられる、請求項27記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公表番号】特表2013−516430(P2013−516430A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547315(P2012−547315)
【出願日】平成22年12月30日(2010.12.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/062582
【国際公開番号】WO2011/082354
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(512171504)ザ ステイト オブ オレゴン アクティング バイ アンド スルー ザ ステイト ボード オブ ハイヤー エデュケーション オン ビハーフ オブ ポートランド ステイト ユニバーシティー (1)
【Fターム(参考)】