説明

チタンまたはチタン系合金フィルターの製造方法

【課題】プレス等の成型による粉末の粉砕量を少なくし、空孔率の低下、バラツキを抑え、また、取り扱いが安全でかつ微細粉末をフィルター原料として使用でき、含有酸素量の少ないチタンまたはチタン系合金フィルターを製造する。
【解決手段】本発明のチタンまたはチタン系合金フィルターの製造方法は、原料に水素化チタンを用いることを特徴とし、更にこの水素化チタンの水素含有量を0.05乃至4重量%とした。また、粒径50μm乃至400μmの水素化チタン粉末を原料に用いて構成した。更に水素化チタンをプレス成型し、これを焼結するよう構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結チタンまたはチタン系合金フィルターの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流体の異物などの不純物を除去するために用いられる金属その他のフィルターとしては、黄銅系、ブロンズ系、ステンレス系、チタン系、セラミック系のフィルターが知られている。これらのうち、チタン系フィルターは耐食性および耐酸化性に優れるという利点を有している。
焼結チタンまたはチタン系合金フィルターの製造方法としては、スポンジチタンを粉砕した時に得られるチタン粉末を金型に充填しこれをプレスして成型し、この圧縮成型体を焼結する方法や、ガスアトマイズ法により球状粒子とした球状チタン粉末を焼結容器内に充填し、これを焼結する方法が知られている。
【特許文献1】特開平07−238302号公報
【特許文献2】特開2002−066229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
化学量論的な水素化チタン粉末(TiH)は非常に脆く、プレス機により圧縮成型する場合、これにより粉砕され空孔率の低下や空孔率バラツキが発生し、また、微細なチタン粉末は、空気中の酸素と容易に反応し発火する恐れがあり、且つ製造されたフィルターは含有する酸素量が多くなり品質が安定せず、チタン焼結フィルタの製造が容易に行えないという不具合を生じていた。
本発明はこれら不具合を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のチタンまたはチタン系合金フィルターの製造方法は、原料に水素化チタンを用いることを特徴とし、更にこの水素化チタンの水素含有量を0.05乃至4重量%とした。また、粒径50μm乃至400μmの水素化チタン粉末を原料に用いて構成した。更に、本発明のチタンまたはチタン系合金フィルターの製造方法は、水素化チタンをプレス成型し、これを焼結することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明のチタンまたはチタン系合金フィルターの製造方法においては、原料に水素化チタンを用いることによりプレス等の成型による粉末の粉砕量を少なくすることができ、空孔率の低下、バラツキを抑えることができる。また、水素化チタンは大気中での酸化が起こりにくいので、取り扱いが安全でかつ微細粉末をフィルター原料として使用でき、含有酸素量の少ないフィルターを製造することが可能となるといった効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のチタンまたはチタン系合金フィルターの製造方法においては、原料に水素化チタンを用いる。
【実施例1】
【0007】
本実施例におけるチタンまたはチタン合金フィルターの原料としては、先ず、スポンジチタンを水素雰囲気中でSHS法として知られる自己燃焼法により合成し、その後機械粉砕した水素化チタン粉末を用いる。
この水素化チタン粉末を篩いにかけることにより、粒子サイズ(粉末粒径)が250μm乃至355μmの水素化チタン粉末を得、これをフィルターの原料として用いる。
次に、上記得られた水素化チタン粉末を、Ar雰囲気中で800℃、3時間加熱して脱水素を行う。この工程により、水素化チタン粉末の含有水素量を2重量%とすることができた。この工程における脱水素量の確認は、全体の重量変化より確認することが可能であり、加熱温度、時間等のパラメータを適宜調節することにより、脱水素量の制御を行うことが可能となる。
この所望の水素含有量に調整された水素化チタン粉末を金型に充填し、これを円板状にプレス成型して円板状の成型体を得た。尚、この工程におけるプレス成型の条件は、プレス圧2t/cmである。
【0008】
この水素化チタンを成型して得られたグリーン体を、真空中1100℃で約1時間焼結してチタンフィルターを製造する。
この焼結工程において、成型体に残留している水素は完全に除去され、またこれにより空孔率が約50%のチタンフィルターを得ることができた。
【0009】
本発明においては、原料として用いる水素化チタン粉末の粒子サイズを50μm乃至400μmの範囲で選択することにより、完成するチタンフィルターの空孔率を30%乃至60%の範囲で製造することが可能となる。原料として使用する水素化チタン粉末の平均粒径と製造されるチタンフィルターの空孔率は、図1に示すとおりであり、用途に応じて選択、設定することが可能となる。尚、水素化チタン粉末の粒子サイズが50μm以下の場合、製造されるチタンフィルターの空孔率は30%以下となり、一般的な金属フィルターとしての用途には不向きとなり、また、粒子サイズが400μm以上の場合、製造されるチタンフィルタの空孔率は60%以上となり、焼結後の粒子同士の結合が弱くなり、製造されるフィルター自体の強度が不足するとともに、空孔率のバラツキが大きくなるので、原料として用いる水素化チタンの粒径は50μm乃至400μmの範囲内にあることが望ましい。
【0010】
上述の実施例においては、スポンジチタンをSHS法により合成して水素化チタンを得るよう構成したが、これに限定されるものでなく、また、脱水素処理はAr雰囲気中に限定されるものでもなく、例えば真空中でも可能である。また、水素化チタン粉末の成型は上述のプレス成型のみならず、例えば金属射出成型機などを用いても良い。
更に、チタン系合金フィルターは、その用途に応じて水素化チタン粉末以外の金属粉末を添加し、混合、成型、焼結を行うことにより得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のチタンおよびチタン系合金フィルターの製造方法における水素化チタン粉末の平均粒径と製造されるフィルターの空孔率との関係を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタンまたはチタン系合金フィルターの製造方法であって、原料に水素化チタンを用いたことを特徴とするチタンまたはチタン系合金フィルターの製造方法。
【請求項2】
上記水素化チタンは、含有する水素量が0.05乃至4重量%であることを特徴とする請求項1記載のチタンまたはチタン系合金フィルターの製造方法。
【請求項3】
上記水素化チタンは、粒径50μm乃至400μmの水素化チタン粉末であることを特徴とする請求項1または2記載のチタンまたはチタン系合金フィルターの製造方法。
【請求項4】
上記水素化チタンは、チタン系原料を水素雰囲気中で水素化し、得られた水素化チタンまたは水素化チタン系合金を粉砕したものを用いることを特徴とする請求項1乃至3何れかに記載のチタンまたはチタン系合金フィルターの製造方法。
【請求項5】
上記水素化チタンを成型し、これを焼結することを特徴とする請求項1乃至4何れかに記載のチタンまたはチタン合金フィルターの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−218443(P2006−218443A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−35919(P2005−35919)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(596179988)株式会社ドッドウエル ビー・エム・エス (13)
【Fターム(参考)】