チタン酸バリウムナノ結晶の製造方法
【課題】チタン酸バリウムナノ結晶の新規な製造方法を提供する。
【解決手段】水酸化バリウム水溶液と、水溶性チタン錯体の水溶液と、水酸化ナトリウム水溶液と、アミン化合物と、有機カルボン酸とを混合して溶液を得て、前記溶液を加熱して合成するチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法であって、前記溶液において、水酸化ナトリウムの濃度が1mol/L以上2mol/L以下であり、バリウム1モルに対するアミン化合物のモル数が2以上16以下であり、バリウム1モルに対する有機カルボン酸のモル数が2以上8以下であることを特徴とする。
【解決手段】水酸化バリウム水溶液と、水溶性チタン錯体の水溶液と、水酸化ナトリウム水溶液と、アミン化合物と、有機カルボン酸とを混合して溶液を得て、前記溶液を加熱して合成するチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法であって、前記溶液において、水酸化ナトリウムの濃度が1mol/L以上2mol/L以下であり、バリウム1モルに対するアミン化合物のモル数が2以上16以下であり、バリウム1モルに対する有機カルボン酸のモル数が2以上8以下であることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法に関し、特に、単分散性を有し、微細であり、かつ六面体状の構造を有するチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン酸バリウム(BaTiO3)は強誘電体材料として知られており、高い比誘電率を有することから積層コンデンサなどに使用されている。また、最近では、高い圧電特性も報告されている。近年の電子デバイスの微細化に伴い、積層コンデンサの小型大容量化が進んでおり、そのような状況の下では使用されるチタン酸バリウム粒子の形態及び粒径に対しても様々な要求がある。チタン酸バリウムナノ結晶は、単分散性を有し、微細であり、かつ制御された六面体状の構造を有する非常に興味深い材料である
【0003】
チタン酸バリウムに関しては、焼結法、水熱法、又はゾル−ゲル法などの方法を用いた合成例が報告されている。例えば、非特許文献1には、温度135℃の水熱条件下において脂肪酸金属塩の熱分解によりチタン酸バリウムナノ結晶を合成する方法が報告されている。また、非特許文献2には、チタン酸ストロンチウムナノ結晶を合成する方法が報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】S. Adireddy, C. Lin, B. Cao, W. Zhou, and G. Caruntu, Chem. Mater., 22, 1946-1948 (2010)
【非特許文献2】K. Fujinami, K. Katagiri, J. Kamiya, T. Hamanaka, and K. Koumoto, Nanoscale, 2, 2080-2083 (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
チタン酸バリウム粒子の形態及び粒径を制御することは、例えば電子デバイスなどの用途において重要であるが、上述のように、その合成に関してはこれまで数件の報告がされているにすぎない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、チタン酸バリウムナノ結晶の新規の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するべく鋭意検討を行なった結果、水酸化バリウム水溶液と、水溶性チタン錯体の水溶液と、水酸化ナトリウム水溶液と、アミン化合物と、有機カルボン酸とを混合して溶液を得て、前記溶液を加熱して合成することによって、単分散性を有し、微細であり、かつ六面体状の構造を有するチタン酸バリウムナノ結晶が得られることを見出し、本発明に想到した。
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
(1)水酸化バリウム水溶液と、水溶性チタン錯体の水溶液と、水酸化ナトリウム水溶液と、アミン化合物と、有機カルボン酸とを混合して溶液を得て、前記溶液を加熱して合成することを特徴とするチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法。
(2)前記水溶性チタン錯体が、チタニウムビス(アンモニウムラクテート)ジヒドロキシドであることを特徴とする(1)に記載のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法。
(3)前記アミン化合物がtert−ブチルアミンであり、前記有機カルボン酸がオレイン酸であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法。
(4)前記溶液において、前記水酸化ナトリウムの濃度が1mol/L以上2mol/L以下であることを特徴とする(1)から(3)の何れか一つに記載のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法。
(5)前記溶液において、バリウム1モルに対するアミン化合物のモル数が2以上16以下であり、バリウム1モルに対する有機カルボン酸のモル数が2以上8以下であることを特徴とする(1)から(4)の何れか一つに記載のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法。
(6)前記溶液において、アミン化合物のモル数と有機カルボン酸のモル数とが等しいか、又はアミン化合物のモル数が有機カルボン酸のモル数よりも大きいことを特徴とする(5)に記載のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法。
(7)前記溶液において、バリウムと有機カルボン酸とのモル比(バリウム:有機カルボン酸)が1:8であり、バリウム1モルに対するアミン化合物のモル数が8以上16以下であることを特徴とする(6)に記載のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法。
(8)前記加熱を、150℃以上240℃以下の温度で、かつ1時間以上80時間以下の間実施することを特徴とする(1)から(7)の何れか一つに記載のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法。
(9)前記合成の後、前記溶液を遠心分離して沈殿物を回収することを特徴とする(1)から(8)の何れか一つに記載のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法によれば、水酸化バリウム水溶液と、水溶性チタン錯体の水溶液と、水酸化ナトリウム水溶液と、アミン化合物と、有機カルボン酸とを混合して溶液を得て、前記溶液を加熱して合成することにより、単分散性を有し、微細であり、かつ制御された六面体状の構造を有するチタン酸バリウムナノ結晶を合成することができる。また、このように製造されたチタン酸バリウムナノ結晶は、サイズ及び形状が揃っているため、例えば基板上に2次元又は3次元の配列を有するように集積させて構造体を形成することが可能となる。したがって、新たな性能や機能を有するデバイスへの応用が期待される。また、微細であるため、電子デバイスの微細化にも対応し得る。さらに、本願の製造方法により製造されたナノキューブは、自己配列しやすいという特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1のチタン酸バリウムナノ結晶のTEM像を拡大して示す図である。
【図2a】実施例2のチタン酸バリウムナノ結晶を示すTEM像である。
【図2b】実施例3のチタン酸バリウムナノ結晶を示すTEM像である。
【図2c】実施例4のチタン酸バリウムナノ結晶を示すTEM像である。
【図3a】実施例5のチタン酸バリウムナノ結晶を示すTEM像である。
【図3b】実施例6のチタン酸バリウムナノ結晶を示すTEM像である。
【図3c】実施例7のチタン酸バリウムナノ結晶を示すTEM像である。
【図3d】実施例8のチタン酸バリウムナノ結晶を示すTEM像である。
【図3e】実施例9のチタン酸バリウムナノ結晶を示すTEM像である。
【図4a】実施例10のチタン酸バリウムナノ結晶を示すTEM像である。
【図4b】実施例11のチタン酸バリウムナノ結晶を示すTEM像である。
【図5a】実施例12のチタン酸バリウムナノ結晶を示すTEM像である。
【図5b】実施例13のチタン酸バリウムナノ結晶を示すTEM像である。
【図5c】実施例14のチタン酸バリウムナノ結晶を示すTEM像である。
【図6】実施例15のチタン酸バリウムナノ結晶を示すTEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を適用した一実施形態であるチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法について詳細に説明する。
【0012】
本発明のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法は、水酸化バリウム水溶液と、水溶性チタン錯体の水溶液と、水酸化ナトリウム水溶液と、アミン化合物と、有機カルボン酸とを混合して溶液を得て、前記溶液を加熱して合成する。
【0013】
本発明において「ナノ結晶」とは、六面体状の結晶である、いわゆるナノキューブの他、ナノキューブの合成若しくは作製工程において同時に生成される、六面体の頂点が面取りされた不完全な六面体状の結晶をも含む。なお、この六面体の頂点が面取りされた不完全な六面体状の結晶は六面体状の結晶になる途上のものである。また、そのサイズとしてはチタン酸バリウム及び/又はチタン酸ストロンチウムが六面体状になりえるナノメートルサイズであれば、サイズは限定しないが、例えば1〜20nm程度である。
【0014】
本発明の水酸化バリウム水溶液に含まれるバリウムと、水溶性チタン錯体の水溶液に含まれるチタンとのモル比(バリウム:チタン)は1:2〜2:1の範囲であることが好ましい。
【0015】
本発明の水溶性チタン錯体としては、水に溶解された後チタン原子から配位子がはずれてチタン原子と酸素原子との結合が形成されるような化合物を用いることができる。そのような化合物としては、例えばチタニウムビス(アンモニウムラクテート)ジヒドロキシド(Titanium bis(ammonium lactate) dihydroxide、以下「TALH」)、配位子がグリコール酸(HOCH2COOH)である(NH4)6[Ti4(C2H2O3)4(C2H3O3)2(O2)4O2]・6H2O、配位子がクエン酸((CH2COOH)2C(OH)COOH)である(NH4)8[Ti4(C6H4O7)4(O2)4]・8H2O、又は配位子がリンゴ酸(CH2CHOH(COOH)2)若しくは酒石酸((CHOH)2(COOH)2)であるチタン錯体などが挙げられるが、特にTALHを用いることが好ましい。
【0016】
本発明のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法によれば、水溶性チタン錯体をチタニウムビス(アンモニウムラクテート)ジヒドロキシドとすることにより、制御された六面体状の構造を有するチタン酸バリウムナノ結晶を合成することができる。
【0017】
本発明のアミン化合物としては、窒素原子の非共有電子対が反応に寄与し得る化合物を用いることができる。そのような化合物としては、例えばtert−ブチルアミン又はn−ブチルアミンが挙げられるが、特にtert−ブチルアミンを用いることが好ましい。
【0018】
本発明の有機カルボン酸としては、ナノ結晶合成の間ナノ結晶の(100)面に配位して、ナノ結晶の(100)面の結晶成長を抑制することができる化合物を用いることができる。そのような化合物としてオレイン酸が挙げられるが、デカン酸(カプリン酸)CH3(CH2)8COOHなど炭素鎖が長いカルボン酸であれば、二重結合を含まないものであっても使用することができる。
【0019】
本発明のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法によれば、アミン化合物をtert−ブチルアミンとし、有機カルボン酸をオレイン酸とするとすることにより、制御された六面体状の構造を有するチタン酸バリウムナノ結晶を合成することができる。
【0020】
本発明の反応溶液のpHは水酸化ナトリウム水溶液を添加することによって調節される。添加される水酸化ナトリウム水溶液の量は、得られる反応溶液における水酸化ナトリウムの濃度が1mol/L以上2mol/L以下となるように決定されるが、前記濃度が1.5mol/Lであることが最も好ましい。
【0021】
上記濃度が1mol/L未満の場合には、合成反応が十分に進行しないという問題点がある。また、上記濃度が2mol/Lを超える場合には、ナノ結晶の凝集が起こり易くなるという問題点がある。
【0022】
ここで、水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液はpH調整剤として添加している。水熱合成においてpH調整剤としてよく用いられるアンモニアでは合成が進みやすい十分な強塩基条件になりにくいが(pH14の条件にさらにアンモニアを加えてもより強塩基にはならないが)、水酸化ナトリウム(NaOH)を用いれば十分な強塩基条件になり、チタン酸バリウムナノ結晶の合成が進みやすい。
【0023】
本発明のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法によれば、水酸化バリウム水溶液と、水溶性チタン錯体の水溶液と、水酸化ナトリウム水溶液と、アミン化合物と、有機カルボン酸とを混合した溶液において、水酸化ナトリウムの濃度が1mol/L以上2mol/L以下であることにより、合成反応を十分に進行させることができ、かつナノ結晶の凝集を抑制することができる。
【0024】
本発明の溶液において、バリウム1モルに対するアミン化合物のモル数が2以上16以下であり、バリウム1モルに対する有機カルボン酸のモル数が2以上8以下であることが好ましい。その溶液において、アミン化合物のモル数と有機カルボン酸のモル数とが等しいか、又はアミン化合物のモル数が有機カルボン酸のモル数よりも大きいことがより好ましい。その溶液において、バリウムと有機カルボン酸とのモル比(バリウム:有機カルボン酸)が1:8であり、バリウム1モルに対するアミン化合物のモル数が8以上16以下であることがさらに好ましい。
【0025】
言い換えれば、本発明の溶液に含まれるバリウム、アミン化合物、及び有機カルボン酸のモル比は、1:2:2〜1:16:8の範囲であることが好ましく、その範囲の中でもアミン化合物のモル数と有機カルボン酸のモル数とが等しいか、又はアミン化合物のモル数が有機カルボン酸のモル数よりも大きいことがより好ましく、1:8:8〜1:16:8の範囲であることがさらに好ましい。
【0026】
本発明の溶液に含まれるバリウム、アミン化合物、及び有機カルボン酸のモル比は、例えばアミン化合物と有機カルボン酸とが等しいモル数で含まれるとき、1:2:2〜1:8:8の範囲であることが好ましく、中でも1:8:8であることが最も好ましい。
【0027】
バリウム1モルに対するアミン化合物のモル数が2未満の場合には、合成反応が十分に進行しないという問題点がある。また、バリウム1モルに対する有機カルボン酸のモル数が2未満の場合には、ナノ結晶の形状が十分に制御されず、きれいな六面体にならないという問題点がある。さらに、バリウム1モルに対するアミン化合物のモル数が16を超える場合、及び/又は有機カルボン酸のモル数が8を超える場合には、合成反応終了後にこれらの物質を完全に取り除くのが困難になるという問題点がある。
【0028】
本発明のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法によれば、水酸化バリウム水溶液と、水溶性チタン錯体の水溶液と、水酸化ナトリウム水溶液と、アミン化合物と、有機カルボン酸とを混合した溶液において、バリウム1モルに対するアミン化合物のモル数が2以上16以下であり、バリウム1モルに対する有機カルボン酸のモル数が2以上8以下であることにより、合成反応が十分に進行し、ナノ結晶の形状が適切に制御され、かつ合成反応終了後には取り除くことになる物質の量を無駄に増やすことがない。
【0029】
本発明のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法によれば、水酸化バリウム水溶液と、水溶性チタン錯体の水溶液と、水酸化ナトリウム水溶液と、アミン化合物と、有機カルボン酸とを混合した溶液において、アミン化合物のモル数と有機カルボン酸のモル数とが等しいか、又はアミン化合物のモル数が有機カルボン酸のモル数よりも大きくなるように調製することにより、ナノ結晶の形状がさらに適切に制御される。
【0030】
本発明のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法によれば、水酸化バリウム水溶液と、水溶性チタン錯体の水溶液と、水酸化ナトリウム水溶液と、アミン化合物と、有機カルボン酸とを混合した溶液において、バリウムと有機カルボン酸とのモル比(バリウム:有機カルボン酸)が1:8であり、バリウム1モルに対するアミン化合物のモル数が8以上16以下であることにより、ナノ結晶の形状がさらに適切に制御される。
【0031】
チタン酸バリウムナノ結晶は成長初期において、表面エネルギーの一番小さな(111)面で囲まれた正八面体になるが、その八面体状のナノ結晶になる途中段階では(111)面のほかに、八面体状の頂点が面取りされた(100)面を最大6個有する形状の状態がある。この際、(111)面よりも(100)面の方が表面エネルギーが大きいために、オレイン酸等の有機カルボン酸の分子は(111)面よりも(100)面に吸着し易い。そのため、チタン酸バリウムナノ結晶の合成において、オレイン酸等の有機カルボン酸が(100)面に付着した状態で結晶成長が進むことになる。この結果、(100)面は結晶成長が進みにくくなるのに対して、(111)面の結晶成長は有機カルボン酸分子に邪魔されずに進み、8個全ての(111)面の成長が進んで頂点を形成し、全体として立方形状になって完全な六面体状のナノ結晶となりやすい。
有機カルボン酸の量が多いと(111)面の結晶成長も抑制される。有機カルボン酸のモル数と比較してアミン化合物のモル数を等しいか又は多くしたほうが、生成されるナノ結晶の形状が完全な六面体に近くなる。
【0032】
本発明の反応溶液の加熱は、150℃以上240℃以下の温度で実施されることが好ましく、200℃以上220℃以下の温度で実施されることがより好ましい。加熱温度が150℃未満の場合には、合成反応が十分に進行しないという問題点がある。また、加熱温度が240℃を超える場合には、反応中にナノ結晶表面に配位した有機カルボン酸が脱離したり、反応溶液内で有機カルボン酸が分離してしまうなどして、制御された六面体状の構造が最終的に得られないという問題点がある。
【0033】
本発明の反応溶液の加熱は、1時間以上80時間以下の間実施されることが好ましく、48時間以上72時間以下の間実施されることがより好ましい。加熱時間が1時間未満の場合には、合成反応が十分に進行しないという問題点がある。また、加熱時間が80時間を超えてもナノ結晶の形状はさほど変化しないため、これ以上の加熱は必要ではないと考えられる。
【0034】
本発明の反応溶液を加熱して反応を進行させるには既に知られている様々な方法を適宜使用することができるが、水熱合成を用いることが好ましい。
【0035】
本発明のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法によれば、加熱を、150℃以上240℃以下の温度で、かつ1時間以上80時間以下の間実施することにより、合成反応を十分に進行させかつ無駄な加熱を実施することなく、制御された六面体状の構造を得ることができる。
【0036】
本発明では、合成の後、前記溶液を遠心分離して沈殿物を回収することが好ましい。
【0037】
本発明のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法によれば、合成の後溶液を遠心分離して沈殿物を回収することにより、不要な小さな結晶などを取り除き、制御された六面体状の構造を持つナノ結晶を得ることができる。
【実施例】
【0038】
〔チタン酸バリウムナノ結晶の合成及び同定〕
(1)チタン酸バリウムナノ結晶の合成
以下の手順に従ってチタン酸バリウムナノ結晶を合成した(実施例1)。
濃度0.05mol/Lの水酸化バリウム水溶液24mlを準備した。TALH水溶液0.72mlを攪拌しながら添加し、次いで濃度5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液6ml、tert−ブチルアミン1.28ml、及びオレイン酸3.8mlを添加して反応溶液を調製した。得られた反応溶液における水酸化ナトリウムの濃度は1mol/Lであり、バリウムとtert−ブチルアミンとオレイン酸のモル比(バリウム:tert−ブチルアミン:オレイン酸)が1:8:8であった。このように調製された溶液をオートクレーブに入れて密閉し、220℃の温度で72時間加熱した後、室温まで冷却した。その後反応生成物を含む溶液を遠心分離(5300rpm、3分間)して沈殿物を回収した。
【0039】
さらに、バリウムとtert−ブチルアミンとオレイン酸のモル比、反応溶液中の水酸化ナトリウムの濃度、合成の際の加熱温度、及び加熱時間などの条件を変え、それ以外は実施例1と同様の方法で、チタン酸バリウムの合成を行った(実施例2〜15)。
【0040】
実施例1〜15の合成条件を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
(2)チタン酸バリウムナノ結晶の同定
チタン酸バリウムナノ結晶は、透過型電子顕微鏡(日本電子製JEOL−2100(300kV))を用いて解析した。
チタン酸バリウムナノ結晶のTEM像観察用のサンプルは、オートクレーブ内の上澄み液を濾紙上に配置したTEMグリッド(基板)上に滴下し、滴下した上澄み液中の溶媒を濾紙に吸収させて除去して作製した。TEMグリッドはカーボンで被覆した銅(メッシュをコロジオン膜で支持した構造)からなる。
【0043】
電子回折スポット像の各点のスポットの位置からそのナノ結晶の格子面間隔を決定し、チタン酸バリウム単結晶の(100)面、(001)面に対応する4.04Å、2.85Å、のスポットが得られた。
TEM像及びその電子回折スポット像から、上述の合成方法により、チタン酸バリウムのナノ結晶が合成されていることが確認された。
また、X線粉末回折法により、(100)回折線が22°付近に、また、(200)回折線が44°付近に現れることによってもチタン酸バリウムであることを同定した。
【0044】
なお、動的光散乱測定装置(粒度分布計(大塚電子製、ELS−Z))により測定されたチタン酸バリウムナノ結晶の個数平均粒径は概ね15nm〜40nmの範囲であった。
【0045】
〔チタン酸バリウムナノ結晶の形成〕
本発明の製造方法により、六面体状の結晶であるいわゆるナノキューブを含むナノ結晶が得られた。実施例1で合成されたナノ結晶のTEM像の拡大図を図1に示す。六面体の角部が90度に近い角度で形成されていることがわかる。
【0046】
〔水酸化ナトリウム濃度の影響〕
実施例2〜4で得られたチタン酸バリウムナノ結晶のTEM像を参照して、上記反応溶液中の水酸化ナトリウムの濃度がナノ結晶の合成に与える影響について述べる。実施例2〜4の合成条件は、反応溶液中の水酸化ナトリウムの濃度のみが異なり、各々1.2mol/L、1.5mol/L、及び2mol/Lであった。また、他の合成条件は同一であった。尚、バリウムとtert−ブチルアミンとオレイン酸のモル比は、どの実施例においても1:8:8であった。
実施例2〜4で合成されたナノ結晶のTEM像は、各々図2a〜2cに示される。図から明らかなように、これら全ての実施例において、ナノキューブを含むナノ結晶が得られた。
なお、反応溶液に含まれるtert−ブチルアミン及びオレイン酸のモル数が少ない場合、例えばバリウムとtert−ブチルアミンとオレイン酸のモル比が1:4:4又は1:2:2である場合にも同様にナノ結晶が得られた。ただし、これらの場合、反応溶液の水酸化ナトリウム濃度が2mol/Lのときには、生成したナノ結晶の一部が凝集した。
【0047】
〔溶液組成の影響(1)〕
反応溶液中のバリウムとtert−ブチルアミンとオレイン酸のモル比の値が合成に与える影響について、実施例1及び5〜9で得られたナノ結晶を比較することによって述べる。
まず、実施例1、5、及び6の結果を示す。これらの実施例では反応溶液におけるtert−ブチルアミンのモル数とオレイン酸のモル数とが同じであった。具体的にはバリウムとtert−ブチルアミンとオレイン酸のモル比が、各々1:8:8(実施例1)、1:4:4(実施例5)、及び1:2:2(実施例6)であった。
実施例1、5、及び6で合成されたナノ結晶のTEM像は、各々図1、3a、及び3bに示される。既に述べたように、実施例1では良好な形態のナノ結晶が得られている。また、図3a及び3bを参照すると、実施例5及び6では不完全な六面体状の結晶も見受けられるものの、概して六面体状のナノ結晶が生成していることがわかる。
【0048】
次に実施例7〜9の結果を示す。これらの実施例では反応溶液中のtert−ブチルアミンのモル数とオレイン酸のモル数とが相違する。具体的には、バリウムとtert−ブチルアミンとオレイン酸のモル比が各々、1:16:8(実施例7)、1:8:4(実施例8)、及び1:4:8(実施例9)である。
実施例7〜9で合成されたナノ結晶のTEM像は、各々図3c〜3eに示される。実施例7〜9で得られたナノ結晶は粒径分布に優れ、ナノ結晶の形状も揃っている。ただし、実施例9で得られたナノ結晶には角が丸いものがある程度存在しているように見える。この実施例では、反応溶液中において、tert−ブチルアミンのモル数と比較してオレイン酸のモル数が多い。前述のようにオレイン酸は結晶の表面に配位するが、実施例9ではその量が多いことに起因して(100)面のみではなく(111)面の結晶成長も抑制され、頂点が明確に形成されず、不完全な六面体を有するナノ結晶が形成されたのだと考えられる。言い換えれば、オレイン酸のモル数と比較してtert−ブチルアミンのモル数を多くしたほうが、生成されるナノ結晶の形状が完全な六面体に近くなるといえる。
【0049】
〔溶液組成比の影響(2)〕
同様に、反応溶液中のバリウムとtert−ブチルアミンとオレイン酸のモル比が合成に与える影響について、実施例7、10、及び11で得られたナノ結晶を参照して述べる。
実施例7及び11では反応溶液中のtert−ブチルアミンのモル数とオレイン酸のモル数とが相違する。具体的には、バリウムとtert−ブチルアミンとオレイン酸のモル比が、各々1:16:8(実施例7)、1:8:8(実施例10)、及び1:12:8(実施例11)である。ただし、実施例7の合成条件は、水酸化ナトリウム濃度が1mol/L、合成温度が200℃である点でも、実施例10及び11の合成条件と相違する。
実施例7、10、及び11で合成されたナノ結晶のTEM像は、各々図3c、4a、及び4bに示される。実施例7、10、及び11で得られたナノ結晶は粒径分布に優れ、ナノ結晶の形状も揃っている。上述したように、オレイン酸のモル数と比較してtert−ブチルアミンのモル数を等しいか又は多くすることによって、より形状が制御されたナノ結晶が生成していると考えられる。
【0050】
〔合成時間の影響〕
合成時間の選択が合成に与える影響について、実施例12〜14で得られたナノ結晶を参照して検討する。実施例12〜14は各々合成時間が2時間、4時間、及び48時間という条件で合成を行ったものである。
実施例12〜14で合成されたナノ結晶のTEM像は、各々図5a〜5cに示される。特に、実施例12及び13では、合成時間が比較的短いのにもかかわらず、六面体状のナノ結晶が生成していることが確認できた。
【0051】
〔自己配列性〕
ナノ結晶が集合したときに、結晶固有の結晶面を表面に露出していると、結晶面同志を併せて基板の表面に二次元的に並ぶと最も安定になる。すなわち、本発明の製造方法で製造されたナノ結晶は自己配列性に優れているという特徴を有する。例えば得られたナノ結晶をトルエンに分散させ、次いでその溶液をシリコン基板上に滴下した後溶媒を乾燥除去しただけで、緻密な配列が生じ得る。例えば実施例11及び実施例15で得られたナノ結晶のTEM像(図4b及び図6)には、そのようなナノ結晶の緻密な配列が示されている。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、チタン酸バリウムナノ結晶の製造に利用することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明はチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法に関し、特に、単分散性を有し、微細であり、かつ六面体状の構造を有するチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン酸バリウム(BaTiO3)は強誘電体材料として知られており、高い比誘電率を有することから積層コンデンサなどに使用されている。また、最近では、高い圧電特性も報告されている。近年の電子デバイスの微細化に伴い、積層コンデンサの小型大容量化が進んでおり、そのような状況の下では使用されるチタン酸バリウム粒子の形態及び粒径に対しても様々な要求がある。チタン酸バリウムナノ結晶は、単分散性を有し、微細であり、かつ制御された六面体状の構造を有する非常に興味深い材料である
【0003】
チタン酸バリウムに関しては、焼結法、水熱法、又はゾル−ゲル法などの方法を用いた合成例が報告されている。例えば、非特許文献1には、温度135℃の水熱条件下において脂肪酸金属塩の熱分解によりチタン酸バリウムナノ結晶を合成する方法が報告されている。また、非特許文献2には、チタン酸ストロンチウムナノ結晶を合成する方法が報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】S. Adireddy, C. Lin, B. Cao, W. Zhou, and G. Caruntu, Chem. Mater., 22, 1946-1948 (2010)
【非特許文献2】K. Fujinami, K. Katagiri, J. Kamiya, T. Hamanaka, and K. Koumoto, Nanoscale, 2, 2080-2083 (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
チタン酸バリウム粒子の形態及び粒径を制御することは、例えば電子デバイスなどの用途において重要であるが、上述のように、その合成に関してはこれまで数件の報告がされているにすぎない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、チタン酸バリウムナノ結晶の新規の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するべく鋭意検討を行なった結果、水酸化バリウム水溶液と、水溶性チタン錯体の水溶液と、水酸化ナトリウム水溶液と、アミン化合物と、有機カルボン酸とを混合して溶液を得て、前記溶液を加熱して合成することによって、単分散性を有し、微細であり、かつ六面体状の構造を有するチタン酸バリウムナノ結晶が得られることを見出し、本発明に想到した。
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
(1)水酸化バリウム水溶液と、水溶性チタン錯体の水溶液と、水酸化ナトリウム水溶液と、アミン化合物と、有機カルボン酸とを混合して溶液を得て、前記溶液を加熱して合成することを特徴とするチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法。
(2)前記水溶性チタン錯体が、チタニウムビス(アンモニウムラクテート)ジヒドロキシドであることを特徴とする(1)に記載のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法。
(3)前記アミン化合物がtert−ブチルアミンであり、前記有機カルボン酸がオレイン酸であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法。
(4)前記溶液において、前記水酸化ナトリウムの濃度が1mol/L以上2mol/L以下であることを特徴とする(1)から(3)の何れか一つに記載のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法。
(5)前記溶液において、バリウム1モルに対するアミン化合物のモル数が2以上16以下であり、バリウム1モルに対する有機カルボン酸のモル数が2以上8以下であることを特徴とする(1)から(4)の何れか一つに記載のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法。
(6)前記溶液において、アミン化合物のモル数と有機カルボン酸のモル数とが等しいか、又はアミン化合物のモル数が有機カルボン酸のモル数よりも大きいことを特徴とする(5)に記載のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法。
(7)前記溶液において、バリウムと有機カルボン酸とのモル比(バリウム:有機カルボン酸)が1:8であり、バリウム1モルに対するアミン化合物のモル数が8以上16以下であることを特徴とする(6)に記載のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法。
(8)前記加熱を、150℃以上240℃以下の温度で、かつ1時間以上80時間以下の間実施することを特徴とする(1)から(7)の何れか一つに記載のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法。
(9)前記合成の後、前記溶液を遠心分離して沈殿物を回収することを特徴とする(1)から(8)の何れか一つに記載のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法によれば、水酸化バリウム水溶液と、水溶性チタン錯体の水溶液と、水酸化ナトリウム水溶液と、アミン化合物と、有機カルボン酸とを混合して溶液を得て、前記溶液を加熱して合成することにより、単分散性を有し、微細であり、かつ制御された六面体状の構造を有するチタン酸バリウムナノ結晶を合成することができる。また、このように製造されたチタン酸バリウムナノ結晶は、サイズ及び形状が揃っているため、例えば基板上に2次元又は3次元の配列を有するように集積させて構造体を形成することが可能となる。したがって、新たな性能や機能を有するデバイスへの応用が期待される。また、微細であるため、電子デバイスの微細化にも対応し得る。さらに、本願の製造方法により製造されたナノキューブは、自己配列しやすいという特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1のチタン酸バリウムナノ結晶のTEM像を拡大して示す図である。
【図2a】実施例2のチタン酸バリウムナノ結晶を示すTEM像である。
【図2b】実施例3のチタン酸バリウムナノ結晶を示すTEM像である。
【図2c】実施例4のチタン酸バリウムナノ結晶を示すTEM像である。
【図3a】実施例5のチタン酸バリウムナノ結晶を示すTEM像である。
【図3b】実施例6のチタン酸バリウムナノ結晶を示すTEM像である。
【図3c】実施例7のチタン酸バリウムナノ結晶を示すTEM像である。
【図3d】実施例8のチタン酸バリウムナノ結晶を示すTEM像である。
【図3e】実施例9のチタン酸バリウムナノ結晶を示すTEM像である。
【図4a】実施例10のチタン酸バリウムナノ結晶を示すTEM像である。
【図4b】実施例11のチタン酸バリウムナノ結晶を示すTEM像である。
【図5a】実施例12のチタン酸バリウムナノ結晶を示すTEM像である。
【図5b】実施例13のチタン酸バリウムナノ結晶を示すTEM像である。
【図5c】実施例14のチタン酸バリウムナノ結晶を示すTEM像である。
【図6】実施例15のチタン酸バリウムナノ結晶を示すTEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を適用した一実施形態であるチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法について詳細に説明する。
【0012】
本発明のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法は、水酸化バリウム水溶液と、水溶性チタン錯体の水溶液と、水酸化ナトリウム水溶液と、アミン化合物と、有機カルボン酸とを混合して溶液を得て、前記溶液を加熱して合成する。
【0013】
本発明において「ナノ結晶」とは、六面体状の結晶である、いわゆるナノキューブの他、ナノキューブの合成若しくは作製工程において同時に生成される、六面体の頂点が面取りされた不完全な六面体状の結晶をも含む。なお、この六面体の頂点が面取りされた不完全な六面体状の結晶は六面体状の結晶になる途上のものである。また、そのサイズとしてはチタン酸バリウム及び/又はチタン酸ストロンチウムが六面体状になりえるナノメートルサイズであれば、サイズは限定しないが、例えば1〜20nm程度である。
【0014】
本発明の水酸化バリウム水溶液に含まれるバリウムと、水溶性チタン錯体の水溶液に含まれるチタンとのモル比(バリウム:チタン)は1:2〜2:1の範囲であることが好ましい。
【0015】
本発明の水溶性チタン錯体としては、水に溶解された後チタン原子から配位子がはずれてチタン原子と酸素原子との結合が形成されるような化合物を用いることができる。そのような化合物としては、例えばチタニウムビス(アンモニウムラクテート)ジヒドロキシド(Titanium bis(ammonium lactate) dihydroxide、以下「TALH」)、配位子がグリコール酸(HOCH2COOH)である(NH4)6[Ti4(C2H2O3)4(C2H3O3)2(O2)4O2]・6H2O、配位子がクエン酸((CH2COOH)2C(OH)COOH)である(NH4)8[Ti4(C6H4O7)4(O2)4]・8H2O、又は配位子がリンゴ酸(CH2CHOH(COOH)2)若しくは酒石酸((CHOH)2(COOH)2)であるチタン錯体などが挙げられるが、特にTALHを用いることが好ましい。
【0016】
本発明のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法によれば、水溶性チタン錯体をチタニウムビス(アンモニウムラクテート)ジヒドロキシドとすることにより、制御された六面体状の構造を有するチタン酸バリウムナノ結晶を合成することができる。
【0017】
本発明のアミン化合物としては、窒素原子の非共有電子対が反応に寄与し得る化合物を用いることができる。そのような化合物としては、例えばtert−ブチルアミン又はn−ブチルアミンが挙げられるが、特にtert−ブチルアミンを用いることが好ましい。
【0018】
本発明の有機カルボン酸としては、ナノ結晶合成の間ナノ結晶の(100)面に配位して、ナノ結晶の(100)面の結晶成長を抑制することができる化合物を用いることができる。そのような化合物としてオレイン酸が挙げられるが、デカン酸(カプリン酸)CH3(CH2)8COOHなど炭素鎖が長いカルボン酸であれば、二重結合を含まないものであっても使用することができる。
【0019】
本発明のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法によれば、アミン化合物をtert−ブチルアミンとし、有機カルボン酸をオレイン酸とするとすることにより、制御された六面体状の構造を有するチタン酸バリウムナノ結晶を合成することができる。
【0020】
本発明の反応溶液のpHは水酸化ナトリウム水溶液を添加することによって調節される。添加される水酸化ナトリウム水溶液の量は、得られる反応溶液における水酸化ナトリウムの濃度が1mol/L以上2mol/L以下となるように決定されるが、前記濃度が1.5mol/Lであることが最も好ましい。
【0021】
上記濃度が1mol/L未満の場合には、合成反応が十分に進行しないという問題点がある。また、上記濃度が2mol/Lを超える場合には、ナノ結晶の凝集が起こり易くなるという問題点がある。
【0022】
ここで、水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液はpH調整剤として添加している。水熱合成においてpH調整剤としてよく用いられるアンモニアでは合成が進みやすい十分な強塩基条件になりにくいが(pH14の条件にさらにアンモニアを加えてもより強塩基にはならないが)、水酸化ナトリウム(NaOH)を用いれば十分な強塩基条件になり、チタン酸バリウムナノ結晶の合成が進みやすい。
【0023】
本発明のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法によれば、水酸化バリウム水溶液と、水溶性チタン錯体の水溶液と、水酸化ナトリウム水溶液と、アミン化合物と、有機カルボン酸とを混合した溶液において、水酸化ナトリウムの濃度が1mol/L以上2mol/L以下であることにより、合成反応を十分に進行させることができ、かつナノ結晶の凝集を抑制することができる。
【0024】
本発明の溶液において、バリウム1モルに対するアミン化合物のモル数が2以上16以下であり、バリウム1モルに対する有機カルボン酸のモル数が2以上8以下であることが好ましい。その溶液において、アミン化合物のモル数と有機カルボン酸のモル数とが等しいか、又はアミン化合物のモル数が有機カルボン酸のモル数よりも大きいことがより好ましい。その溶液において、バリウムと有機カルボン酸とのモル比(バリウム:有機カルボン酸)が1:8であり、バリウム1モルに対するアミン化合物のモル数が8以上16以下であることがさらに好ましい。
【0025】
言い換えれば、本発明の溶液に含まれるバリウム、アミン化合物、及び有機カルボン酸のモル比は、1:2:2〜1:16:8の範囲であることが好ましく、その範囲の中でもアミン化合物のモル数と有機カルボン酸のモル数とが等しいか、又はアミン化合物のモル数が有機カルボン酸のモル数よりも大きいことがより好ましく、1:8:8〜1:16:8の範囲であることがさらに好ましい。
【0026】
本発明の溶液に含まれるバリウム、アミン化合物、及び有機カルボン酸のモル比は、例えばアミン化合物と有機カルボン酸とが等しいモル数で含まれるとき、1:2:2〜1:8:8の範囲であることが好ましく、中でも1:8:8であることが最も好ましい。
【0027】
バリウム1モルに対するアミン化合物のモル数が2未満の場合には、合成反応が十分に進行しないという問題点がある。また、バリウム1モルに対する有機カルボン酸のモル数が2未満の場合には、ナノ結晶の形状が十分に制御されず、きれいな六面体にならないという問題点がある。さらに、バリウム1モルに対するアミン化合物のモル数が16を超える場合、及び/又は有機カルボン酸のモル数が8を超える場合には、合成反応終了後にこれらの物質を完全に取り除くのが困難になるという問題点がある。
【0028】
本発明のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法によれば、水酸化バリウム水溶液と、水溶性チタン錯体の水溶液と、水酸化ナトリウム水溶液と、アミン化合物と、有機カルボン酸とを混合した溶液において、バリウム1モルに対するアミン化合物のモル数が2以上16以下であり、バリウム1モルに対する有機カルボン酸のモル数が2以上8以下であることにより、合成反応が十分に進行し、ナノ結晶の形状が適切に制御され、かつ合成反応終了後には取り除くことになる物質の量を無駄に増やすことがない。
【0029】
本発明のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法によれば、水酸化バリウム水溶液と、水溶性チタン錯体の水溶液と、水酸化ナトリウム水溶液と、アミン化合物と、有機カルボン酸とを混合した溶液において、アミン化合物のモル数と有機カルボン酸のモル数とが等しいか、又はアミン化合物のモル数が有機カルボン酸のモル数よりも大きくなるように調製することにより、ナノ結晶の形状がさらに適切に制御される。
【0030】
本発明のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法によれば、水酸化バリウム水溶液と、水溶性チタン錯体の水溶液と、水酸化ナトリウム水溶液と、アミン化合物と、有機カルボン酸とを混合した溶液において、バリウムと有機カルボン酸とのモル比(バリウム:有機カルボン酸)が1:8であり、バリウム1モルに対するアミン化合物のモル数が8以上16以下であることにより、ナノ結晶の形状がさらに適切に制御される。
【0031】
チタン酸バリウムナノ結晶は成長初期において、表面エネルギーの一番小さな(111)面で囲まれた正八面体になるが、その八面体状のナノ結晶になる途中段階では(111)面のほかに、八面体状の頂点が面取りされた(100)面を最大6個有する形状の状態がある。この際、(111)面よりも(100)面の方が表面エネルギーが大きいために、オレイン酸等の有機カルボン酸の分子は(111)面よりも(100)面に吸着し易い。そのため、チタン酸バリウムナノ結晶の合成において、オレイン酸等の有機カルボン酸が(100)面に付着した状態で結晶成長が進むことになる。この結果、(100)面は結晶成長が進みにくくなるのに対して、(111)面の結晶成長は有機カルボン酸分子に邪魔されずに進み、8個全ての(111)面の成長が進んで頂点を形成し、全体として立方形状になって完全な六面体状のナノ結晶となりやすい。
有機カルボン酸の量が多いと(111)面の結晶成長も抑制される。有機カルボン酸のモル数と比較してアミン化合物のモル数を等しいか又は多くしたほうが、生成されるナノ結晶の形状が完全な六面体に近くなる。
【0032】
本発明の反応溶液の加熱は、150℃以上240℃以下の温度で実施されることが好ましく、200℃以上220℃以下の温度で実施されることがより好ましい。加熱温度が150℃未満の場合には、合成反応が十分に進行しないという問題点がある。また、加熱温度が240℃を超える場合には、反応中にナノ結晶表面に配位した有機カルボン酸が脱離したり、反応溶液内で有機カルボン酸が分離してしまうなどして、制御された六面体状の構造が最終的に得られないという問題点がある。
【0033】
本発明の反応溶液の加熱は、1時間以上80時間以下の間実施されることが好ましく、48時間以上72時間以下の間実施されることがより好ましい。加熱時間が1時間未満の場合には、合成反応が十分に進行しないという問題点がある。また、加熱時間が80時間を超えてもナノ結晶の形状はさほど変化しないため、これ以上の加熱は必要ではないと考えられる。
【0034】
本発明の反応溶液を加熱して反応を進行させるには既に知られている様々な方法を適宜使用することができるが、水熱合成を用いることが好ましい。
【0035】
本発明のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法によれば、加熱を、150℃以上240℃以下の温度で、かつ1時間以上80時間以下の間実施することにより、合成反応を十分に進行させかつ無駄な加熱を実施することなく、制御された六面体状の構造を得ることができる。
【0036】
本発明では、合成の後、前記溶液を遠心分離して沈殿物を回収することが好ましい。
【0037】
本発明のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法によれば、合成の後溶液を遠心分離して沈殿物を回収することにより、不要な小さな結晶などを取り除き、制御された六面体状の構造を持つナノ結晶を得ることができる。
【実施例】
【0038】
〔チタン酸バリウムナノ結晶の合成及び同定〕
(1)チタン酸バリウムナノ結晶の合成
以下の手順に従ってチタン酸バリウムナノ結晶を合成した(実施例1)。
濃度0.05mol/Lの水酸化バリウム水溶液24mlを準備した。TALH水溶液0.72mlを攪拌しながら添加し、次いで濃度5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液6ml、tert−ブチルアミン1.28ml、及びオレイン酸3.8mlを添加して反応溶液を調製した。得られた反応溶液における水酸化ナトリウムの濃度は1mol/Lであり、バリウムとtert−ブチルアミンとオレイン酸のモル比(バリウム:tert−ブチルアミン:オレイン酸)が1:8:8であった。このように調製された溶液をオートクレーブに入れて密閉し、220℃の温度で72時間加熱した後、室温まで冷却した。その後反応生成物を含む溶液を遠心分離(5300rpm、3分間)して沈殿物を回収した。
【0039】
さらに、バリウムとtert−ブチルアミンとオレイン酸のモル比、反応溶液中の水酸化ナトリウムの濃度、合成の際の加熱温度、及び加熱時間などの条件を変え、それ以外は実施例1と同様の方法で、チタン酸バリウムの合成を行った(実施例2〜15)。
【0040】
実施例1〜15の合成条件を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
(2)チタン酸バリウムナノ結晶の同定
チタン酸バリウムナノ結晶は、透過型電子顕微鏡(日本電子製JEOL−2100(300kV))を用いて解析した。
チタン酸バリウムナノ結晶のTEM像観察用のサンプルは、オートクレーブ内の上澄み液を濾紙上に配置したTEMグリッド(基板)上に滴下し、滴下した上澄み液中の溶媒を濾紙に吸収させて除去して作製した。TEMグリッドはカーボンで被覆した銅(メッシュをコロジオン膜で支持した構造)からなる。
【0043】
電子回折スポット像の各点のスポットの位置からそのナノ結晶の格子面間隔を決定し、チタン酸バリウム単結晶の(100)面、(001)面に対応する4.04Å、2.85Å、のスポットが得られた。
TEM像及びその電子回折スポット像から、上述の合成方法により、チタン酸バリウムのナノ結晶が合成されていることが確認された。
また、X線粉末回折法により、(100)回折線が22°付近に、また、(200)回折線が44°付近に現れることによってもチタン酸バリウムであることを同定した。
【0044】
なお、動的光散乱測定装置(粒度分布計(大塚電子製、ELS−Z))により測定されたチタン酸バリウムナノ結晶の個数平均粒径は概ね15nm〜40nmの範囲であった。
【0045】
〔チタン酸バリウムナノ結晶の形成〕
本発明の製造方法により、六面体状の結晶であるいわゆるナノキューブを含むナノ結晶が得られた。実施例1で合成されたナノ結晶のTEM像の拡大図を図1に示す。六面体の角部が90度に近い角度で形成されていることがわかる。
【0046】
〔水酸化ナトリウム濃度の影響〕
実施例2〜4で得られたチタン酸バリウムナノ結晶のTEM像を参照して、上記反応溶液中の水酸化ナトリウムの濃度がナノ結晶の合成に与える影響について述べる。実施例2〜4の合成条件は、反応溶液中の水酸化ナトリウムの濃度のみが異なり、各々1.2mol/L、1.5mol/L、及び2mol/Lであった。また、他の合成条件は同一であった。尚、バリウムとtert−ブチルアミンとオレイン酸のモル比は、どの実施例においても1:8:8であった。
実施例2〜4で合成されたナノ結晶のTEM像は、各々図2a〜2cに示される。図から明らかなように、これら全ての実施例において、ナノキューブを含むナノ結晶が得られた。
なお、反応溶液に含まれるtert−ブチルアミン及びオレイン酸のモル数が少ない場合、例えばバリウムとtert−ブチルアミンとオレイン酸のモル比が1:4:4又は1:2:2である場合にも同様にナノ結晶が得られた。ただし、これらの場合、反応溶液の水酸化ナトリウム濃度が2mol/Lのときには、生成したナノ結晶の一部が凝集した。
【0047】
〔溶液組成の影響(1)〕
反応溶液中のバリウムとtert−ブチルアミンとオレイン酸のモル比の値が合成に与える影響について、実施例1及び5〜9で得られたナノ結晶を比較することによって述べる。
まず、実施例1、5、及び6の結果を示す。これらの実施例では反応溶液におけるtert−ブチルアミンのモル数とオレイン酸のモル数とが同じであった。具体的にはバリウムとtert−ブチルアミンとオレイン酸のモル比が、各々1:8:8(実施例1)、1:4:4(実施例5)、及び1:2:2(実施例6)であった。
実施例1、5、及び6で合成されたナノ結晶のTEM像は、各々図1、3a、及び3bに示される。既に述べたように、実施例1では良好な形態のナノ結晶が得られている。また、図3a及び3bを参照すると、実施例5及び6では不完全な六面体状の結晶も見受けられるものの、概して六面体状のナノ結晶が生成していることがわかる。
【0048】
次に実施例7〜9の結果を示す。これらの実施例では反応溶液中のtert−ブチルアミンのモル数とオレイン酸のモル数とが相違する。具体的には、バリウムとtert−ブチルアミンとオレイン酸のモル比が各々、1:16:8(実施例7)、1:8:4(実施例8)、及び1:4:8(実施例9)である。
実施例7〜9で合成されたナノ結晶のTEM像は、各々図3c〜3eに示される。実施例7〜9で得られたナノ結晶は粒径分布に優れ、ナノ結晶の形状も揃っている。ただし、実施例9で得られたナノ結晶には角が丸いものがある程度存在しているように見える。この実施例では、反応溶液中において、tert−ブチルアミンのモル数と比較してオレイン酸のモル数が多い。前述のようにオレイン酸は結晶の表面に配位するが、実施例9ではその量が多いことに起因して(100)面のみではなく(111)面の結晶成長も抑制され、頂点が明確に形成されず、不完全な六面体を有するナノ結晶が形成されたのだと考えられる。言い換えれば、オレイン酸のモル数と比較してtert−ブチルアミンのモル数を多くしたほうが、生成されるナノ結晶の形状が完全な六面体に近くなるといえる。
【0049】
〔溶液組成比の影響(2)〕
同様に、反応溶液中のバリウムとtert−ブチルアミンとオレイン酸のモル比が合成に与える影響について、実施例7、10、及び11で得られたナノ結晶を参照して述べる。
実施例7及び11では反応溶液中のtert−ブチルアミンのモル数とオレイン酸のモル数とが相違する。具体的には、バリウムとtert−ブチルアミンとオレイン酸のモル比が、各々1:16:8(実施例7)、1:8:8(実施例10)、及び1:12:8(実施例11)である。ただし、実施例7の合成条件は、水酸化ナトリウム濃度が1mol/L、合成温度が200℃である点でも、実施例10及び11の合成条件と相違する。
実施例7、10、及び11で合成されたナノ結晶のTEM像は、各々図3c、4a、及び4bに示される。実施例7、10、及び11で得られたナノ結晶は粒径分布に優れ、ナノ結晶の形状も揃っている。上述したように、オレイン酸のモル数と比較してtert−ブチルアミンのモル数を等しいか又は多くすることによって、より形状が制御されたナノ結晶が生成していると考えられる。
【0050】
〔合成時間の影響〕
合成時間の選択が合成に与える影響について、実施例12〜14で得られたナノ結晶を参照して検討する。実施例12〜14は各々合成時間が2時間、4時間、及び48時間という条件で合成を行ったものである。
実施例12〜14で合成されたナノ結晶のTEM像は、各々図5a〜5cに示される。特に、実施例12及び13では、合成時間が比較的短いのにもかかわらず、六面体状のナノ結晶が生成していることが確認できた。
【0051】
〔自己配列性〕
ナノ結晶が集合したときに、結晶固有の結晶面を表面に露出していると、結晶面同志を併せて基板の表面に二次元的に並ぶと最も安定になる。すなわち、本発明の製造方法で製造されたナノ結晶は自己配列性に優れているという特徴を有する。例えば得られたナノ結晶をトルエンに分散させ、次いでその溶液をシリコン基板上に滴下した後溶媒を乾燥除去しただけで、緻密な配列が生じ得る。例えば実施例11及び実施例15で得られたナノ結晶のTEM像(図4b及び図6)には、そのようなナノ結晶の緻密な配列が示されている。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、チタン酸バリウムナノ結晶の製造に利用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化バリウム水溶液と、水溶性チタン錯体の水溶液と、水酸化ナトリウム水溶液と、アミン化合物と、有機カルボン酸とを混合して溶液を得て、前記溶液を加熱して合成することを特徴とするチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法。
【請求項2】
前記水溶性チタン錯体が、チタニウムビス(アンモニウムラクテート)ジヒドロキシドであることを特徴とする請求項1に記載のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法。
【請求項3】
前記アミン化合物がtert−ブチルアミンであり、前記有機カルボン酸がオレイン酸であることを特徴とする請求項1又は2に記載のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法。
【請求項4】
前記溶液において、前記水酸化ナトリウムの濃度が1mol/L以上2mol/L以下であることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法。
【請求項5】
前記溶液において、バリウム1モルに対するアミン化合物のモル数が2以上16以下であり、バリウム1モルに対する有機カルボン酸のモル数が2以上8以下であることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法。
【請求項6】
前記溶液において、アミン化合物のモル数と有機カルボン酸のモル数とが等しいか、又はアミン化合物のモル数が有機カルボン酸のモル数よりも大きいことを特徴とする請求項5に記載のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法。
【請求項7】
前記溶液において、バリウムと有機カルボン酸とのモル比(バリウム:有機カルボン酸)が1:8であり、バリウム1モルに対するアミン化合物のモル数が8以上16以下であることを特徴とする請求項6に記載のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法。
【請求項8】
前記加熱を、150℃以上240℃以下の温度で、かつ1時間以上80時間以下の間実施することを特徴とする請求項1から7の何れか一項に記載のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法。
【請求項9】
前記合成の後、前記溶液を遠心分離して沈殿物を回収することを特徴とする請求項1から8の何れか一項に記載のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法。
【請求項1】
水酸化バリウム水溶液と、水溶性チタン錯体の水溶液と、水酸化ナトリウム水溶液と、アミン化合物と、有機カルボン酸とを混合して溶液を得て、前記溶液を加熱して合成することを特徴とするチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法。
【請求項2】
前記水溶性チタン錯体が、チタニウムビス(アンモニウムラクテート)ジヒドロキシドであることを特徴とする請求項1に記載のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法。
【請求項3】
前記アミン化合物がtert−ブチルアミンであり、前記有機カルボン酸がオレイン酸であることを特徴とする請求項1又は2に記載のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法。
【請求項4】
前記溶液において、前記水酸化ナトリウムの濃度が1mol/L以上2mol/L以下であることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法。
【請求項5】
前記溶液において、バリウム1モルに対するアミン化合物のモル数が2以上16以下であり、バリウム1モルに対する有機カルボン酸のモル数が2以上8以下であることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法。
【請求項6】
前記溶液において、アミン化合物のモル数と有機カルボン酸のモル数とが等しいか、又はアミン化合物のモル数が有機カルボン酸のモル数よりも大きいことを特徴とする請求項5に記載のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法。
【請求項7】
前記溶液において、バリウムと有機カルボン酸とのモル比(バリウム:有機カルボン酸)が1:8であり、バリウム1モルに対するアミン化合物のモル数が8以上16以下であることを特徴とする請求項6に記載のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法。
【請求項8】
前記加熱を、150℃以上240℃以下の温度で、かつ1時間以上80時間以下の間実施することを特徴とする請求項1から7の何れか一項に記載のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法。
【請求項9】
前記合成の後、前記溶液を遠心分離して沈殿物を回収することを特徴とする請求項1から8の何れか一項に記載のチタン酸バリウムナノ結晶の製造方法。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図3e】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図6】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図3e】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図6】
【公開番号】特開2012−188334(P2012−188334A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55500(P2011−55500)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
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