説明

チタン酸ランタンの製造方法

【課題】環境負荷を低減しつつ、純度の高いLaTiナノ粒子を生成できるようにしたチタン酸ランタンの製造方法を提供する。
【解決手段】チタン化合物、ランタン化合物及びアルカリ金属水酸化物を純水に混合した原料ゾルを超臨界水で処理する工程、を含む。例えば、前記チタン化合物としては非晶質酸化チタンを用いることができ、前記ランタン化合物としては水酸化ランタンを用いることができ、前記アルカリ金属水酸化物としては水酸化リチウムを用いることができる。なお、前記超臨界水で処理される前の前記原料ゾルのpHは、10以上、12以下であることが好ましい。また、前記水酸化ランタンの平均粒度分布は500nm以下であることが好ましい。さらに、前記超臨界水で処理される前の前記原料ゾル中において、前記チタンに対する前記ランタンのモル比率は1以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン酸ランタンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
組成式LaTiで表される層状ペロブスカイト型の結晶構造を有するチタン酸ランタン、及びその元素の一部を置換した酸化物結晶群は、セラミックコンデンサや各種半導体デバイスの原料として用いられる産業上有用な化合物である。また、セラミック材料はナノサイズ化による特異的な性質の発現が期待されており、LaTiのナノ粒子化は有望な技術として嘱望されている。
【0003】
LaTiは従来、1,000℃以上の高温における固相反応を用いた合成法で製造されている。例えば特許文献1の手法によれば、酸化ランタン及び酸化チタンの粉末の混合物を1500〜1600℃の温度で5〜6.5時間焼結することでLaTi粉末を得ている。しかしながら、この手法では長時間の高温での保持が必要とされ、環境負荷の大きな手法となっている。また得られる粒子のサイズは数μmと大きく、ナノ粒子化には適さない手法である。
一方、LaTiのナノ粒子を得る手法としては、例えば非特許文献1に示される手法がある。この手法では100nm程度の粒子が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−226967号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】journal of the ceramic society of Japan, 113 (1), 67−70,2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1に開示される手法によれば、LaTiのナノ粒子化は可能であるが、単一の結晶相を得るためには900℃以上で数時間の高温焼成を必要とし、900℃以下の温度で焼成を行うと他の結晶相が副生してしまう。また、エチレングリコールなどの有機溶媒を使用するため環境負荷が大きい。
そこで、この発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、環境負荷を低減しつつ、純度の高いLaTiナノ粒子を生成できるようにしたチタン酸ランタンの製造方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[態様1]
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るチタン酸ランタンの製造方法は、チタン化合物、ランタン化合物及びアルカリ金属水酸化物を純水に混合した原料ゾルを超臨界水で処理する工程、を含むことを特徴とする。ここで、「超臨界水」とは、臨界点(気相−液相間の相転移が起こりうる温度及び圧力の範囲の限界点)以上の水のことを意味する。超臨界水の温度は、水の臨界温度である374℃以上である。また、超臨界水の圧力は、水の臨界圧力である22.1MPa(218気圧)以上である。また、「原料ゾルを超臨界水で処理する」とは、原料ゾル中の水分を超臨界状態(温度が374℃以上であり、且つ、圧力が22.1MPa以上である状態)に到達させることを意味する。
【0008】
このような製造方法によれば、原料ゾルにおいて超臨界水熱反応を生じ、純度の高いチタン酸ランタン(LaTi)微粒子を得ることができる。超臨界水熱反応では反応が急激に進行するため、超臨界水中に形成されたLaTiは結晶成長の進行が抑制され、ナノ粒子として得ることができる。つまり、LaTiナノ粒子を生成することができる。
【0009】
また、上記の製造方法によれば、超臨界水熱反応を利用することで処理温度を400℃程度とすることができ、従来の固相法で必要とされていた1000℃前後の温度よりも、温度を60%程度低減することができる。このため、処理温度を低温化し、投入エネルギーを減じて低環境負荷とすることができる。さらに、有機溶媒などを使用しないことで有害な廃液の排出量を削減し、これらの処理に関わる環境負荷を低減することが可能となる。
なお、上記の製造方法において、超臨界水熱反応を実施する形態はバッチ式のオートクレーブ、又は流通式の反応炉など、超臨界水を保持できる構成であればどのような方法を用いても構わない。
【0010】
また、上記の製造方法で用いられる化合物は、非晶質或いは結晶質の、酸素又は水素を含む化合物が好ましい。ハロゲン化物、有機酸塩、アルコキシド、硝酸塩なども利用できるが、酸化性或いは還元性が高い化合物を用いると夾雑物の副生が進行する可能性がある。また該化合物は常温の水に溶解性を有するものが好ましいが、240℃、3.3MPa程度の亜臨界水に溶解性を有するものであれば、これを適用することができる。
【0011】
上記の製造方法において好適に用いることのできる化合物の例としては、チタン化合物の例としてはTiO、Ti(OH)又はTi(OH)などが挙げられ、ランタン化合物としてはLa又はLa(OH)などが挙げられ、アルカリ金属水酸化物としてはLiOH、NaOH又はKOHなど1属元素の水酸化物が挙げられる。ただし、ここで例示した原料化合物群はあくまで一例であり、本発明に適用可能な化合物がこれらに限定されることはない。
【0012】
[態様2]
また、上記のチタン酸ランタンの製造方法において、前記アルカリ金属水酸化物は水酸化リチウムであり、前記超臨界水で処理される前の前記原料ゾルのpHは、10以上、12以下であることを特徴としてもよい。このような製造方法によれば、夾雑成分の副生を抑制し、LaTiナノ粒子の収率を向上させることができる。なお、アルカリ金属水酸化物としてリチウム以外の水酸化物を用いると、酸化ランタン(La)などの夾雑成分の副生が進行しやすくなる。また、超臨界水で処理される前の原料ゾルのpHが上記の範囲よりも小さい(即ち、pH<10)と、LaTiOなどの副生が発生する。また、超臨界水で処理される前の原料ゾルのpHが上記の範囲よりも大きい(即ち、pH>12)と、チタンとランタンの化合反応が抑制され、LiTi12などチタン酸リチウム系の化合物が副生してしまう。
【0013】
[態様3]
また、上記のチタン酸ランタンの製造方法において、前記ランタン化合物は水酸化ランタンであり、前記水酸化ランタンの平均粒度分布が0nmより大きく、500nm以下であることを特徴としてもよい。このような製造方法によれば、水酸化ランタンをナノ粒子化することで酸化チタンとの反応性を向上させることができ、LaTiナノ粒子の収率を向上させることができる。なお、平均粒径が上記範囲よりも大きいと、水酸化ランタンの反応性が低下してLaTiの収率が低下するばかりか、最終産物に水酸化ランタンが残留し分離精製の工程が必要となる。
[態様4]
また、上記のチタン酸ランタンの製造方法において、前記水酸化ランタンの平均粒度分布が100nm以下であることを特徴としてもよい。このような製造方法によれば、LaTiナノ粒子の収率をさらに向上させることができる。
【0014】
[態様5]
また、上記のチタン酸ランタンの製造方法において、前記チタン化合物は非晶質酸化チタンであり、前記ランタン化合物は水酸化ランタンであり、前記アルカリ金属水酸化物は水酸化リチウムであり、前記超臨界水で処理される前の前記原料ゾル中において、チタンに対するランタンのモル比率は0より大きく、1以下であることを特徴としてもよい。このような製造方法によれば、LaTiナノ粒子の収率を向上させることができる。なお、ランタンのモル比率がチタンに対して1以上であると、LaTiOの副生が顕著となり収率が低下する。。
[態様6] また、上記のチタン酸ランタンの製造方法において、前記超臨界水で処理される前の前記原料ゾル中において、前記チタンに対する前記ランタンのモル比率は0.5以上、0.55以下であることを特徴としてもよい。このような製造方法によれば、LaTiナノ粒子の収率をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施例で得られた結晶種のX線回折による解析結果を示す図。
【図2】第1実施例で得られた結晶種の電子顕微鏡による観察結果を示す図。
【図3】第2実施例で得られた結晶種のX線回折による解析結果を示す図。
【図4】第3実施例で得られた結晶種のX線回折による解析結果を示す図。
【図5】第4実施例で得られた結晶種のX線回折による解析結果を示す図。
【図6】第5実施例で得られた結晶種のX線回折による解析結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
(1)第1実施例
(1−1)原料ゾルの調製
非晶質TiO((株)高純度化学)を0.1mol/Lとなるよう純水に懸濁した。この懸濁液にpH調整剤としてLiOH・1.5HO(関東化学(株))を0.1mol/L程度溶解させ、pHを11に調製した。また、このような懸濁液にLa(OH)ナノ粒子を0.55mol/Lとなるよう懸濁した。この懸濁液をサンプル瓶に注液し、出力120Wの超音波洗浄器槽内で15分間の超音波照射を行って原料ゾルを得た。
【0017】
なお、La(OH)ナノ粒子は、以下の方法により精製した。即ち、0.1mol/LのLa(CHCOO)(関東化学(株))を超純水に溶解した水溶液と、0.3mol/L LiOH・1.5HO(関東化学(株))を超純水に溶解した水溶液とを、1:3のモル比率で混合し、生成した沈殿物を遠心分離する。そして、遠心分離により形成されたペレットを超純水に再懸濁した。この操作を6回繰り返し、pH7の分散液を得た。この分散液を乾燥させ、得られた粉末をXRDで解析すると、La(OH)の単一相が得られていることが確認できた。また同分散液をレーザー光回折式粒度分布測定装置マイクロトラック9320HRA(日機装(株))を使用して平均粒度分布を求めた。このときの平均粒径は100nmであった。
【0018】
(1−2)超臨界水熱反応
超音波照射後の原料ゾルをハステロイ(登録商標)c−206製バッチ式リアクタに注液し、密封してからリアクタを400℃に保持した電気炉に設置した。リアクタ内の温度は8分間で400℃に上昇した。また、リアクタ内の圧力は45MPaに上昇し、リアクタ内の水は超臨界状態に達した。原料ゾルを水の超臨界域に2分間保持した。電気炉にリアクタを設置してから10分後、リアクタを常温の水槽に投入して反応液を急冷した。その後、室温になった反応液をリアクタ内から回収した。
【0019】
(1−3)粒子の分析
リアクタから粒子の懸濁液を回収し、これを15000rpmで遠心分離することによりペレット化した。このペレットの上澄液を取り除いてから超純水に懸濁し、再び遠心分離する操作を3回繰り返して溶存成分を除去した。懸濁液のpHが7.5程度になったところで、懸濁液を乾燥させ、析出した粒子をSi[111]基板上に塗布し、X線回折装置X’Pert Pro MPD (PANalytical)を用いて結晶種の解析を行った。
【0020】
解析結果の回折図形を図1に示す。図1において、横軸は回析角度2θ[°]を示し、縦軸は回析線強度[arb.unit]を示す。図1の回折ピークを解析データベース(ICDDデータベース)を参照して同定を行ったところ、層状ペロブスカイト型のLaTiのピークプロファイルに一致し、副生物が極めて少ない単一の結晶相であることが確認された。また、このLaTi粒子を走査型電子顕微鏡で観察すると、図2のように、短径50nm、長径200〜300nm、厚み10nm程度の板状のナノ粒子であることが確認された。
【0021】
(2)第2実施例
原料ゾルのpH調整剤としてKOH(関東化学(株))を使用してpHを11に調整した。この原料ゾルにLa(OH)ナノ粒子を添加し、上記実施例1と同様にして超臨界水熱反応を実施した。反応後の生成物を回収し生成の上、X線回折(XRD)による結晶相の同定を行った。このときのXRDによる回折図形を図3に示す。図3において、横軸は回析角度2θ[°]を示し、縦軸は回析線強度[arb.unit]を示す。
図3に示すように、pH調整剤としてKOHを用いると、目的物であるLaTiのほかに、多量のLa及びLaTiOが副生することが確認された。このほかpH調整剤として他のアルカリ金属水酸化物を用いた場合も同様の結果が得られた。
【0022】
(3)第3実施例
原料ゾルのpH調製剤としてLiOH・1.5HOを使用し、pHを7〜13の複数に調製した7水準の試料を調整した。これらの試料(即ち、原料ゾル)を用いて第1実施例と同様の工程に従って超臨界水熱反応やXRDによる解析を行った。このときのXRDによる回折図形を図4に示す。図4において、横軸は回析角度2θ[°]を示し、左側の縦軸は回析線強度[arb.unit]を示す。また、右側の縦軸は試料のpHを示す。
図4に示すように、pHが10以下の試料では、LaTiの形成が見られない、又は形成が見られたとしてもその量はごく少量であることが分かった。さらに合成相中にTiOや帰属不明相が認められた。また、pHが12以上の試料では、合成相中にLiTi12が出現し、LaTiの収率が低下することが分かった。
【0023】
(4)第4実施例
La(OH)3の購入試薬((株)高純度化学)を超純水に懸濁し、第1実施例に記載の手法に従って粒度分布を求めると、平均粒径は2μmであった(つまり、ナノ粒子ではない。)。このようなLa(OH)の懸濁液を用いて、第1実施例に準じた方法で原料ゾルを調製し、超臨界水熱反応及び結晶相の同定を行った。
【0024】
また、比較として、平均粒径100nmのLa(OH)を超純水に懸濁し、この懸濁液を用いて第1実施例に準じた方法で原料ゾルを調製し、超臨界水熱反応及び結晶相の同定を行った。このときのXRDによる回折図形を図5に示す。図5において、横軸は回析角度2θ[°]を示し、左側の縦軸は回析線強度[arb.unit]を示す。また、図5中の(a)は平均粒径2μmのLa(OH)を用いた試料の回折図形であり、同(b)は平均粒径100nmのLa(OH)を用いた試料の回折図形である。
【0025】
図5に示すように、La(OH)の平均粒径が2μmである(a)では、合成相に多量のLa(OH)及び少量のTiOの回折ピークが認められ、LaTiの収率が低下することが確認された。一方、La(OH)の平均粒径が100nmである(b)ではLaTiが単一相化することが示された。このような結果から、La(OH)の平均粒径は、0nm以上、500nm以下であることが好ましく、その範囲内でも100nm以下であることがより好ましい、ということが分かった。
【0026】
(5)第5実施例
超臨界水熱処理前の原料ゾル中において、チタンに対するランタンのモル比率を0.3〜2.0まで複数水準とした試料を調製し、これらの試料(即ち、原料ゾル)について、第1実施例に準じた方法で超臨界水熱反応とXRD解析とを実施した。このときのXRDによる回折図形を図6に示す。図6において、横軸は回析角度2θ[°]を示し、左側の縦軸は回析線強度[arb.unit]を示す。また、La/Tiは、チタンに対するランタンのモル比率を示す。
【0027】
図6の回折図形によると、原料ゾル中のチタンに対するランタンのモル比率が0.5を下回ると合成相にTiOやLiTi12などが混入し、また0.55を上回るとLaTiOの形成が優先することが示され、何れの場合もLaTiの収率が低下することが確認された。このような結果から、原料ゾル中のチタンに対するランタンのモル比率は、0より大きく、1以下であることが好ましく、その範囲内でも0.5以上、0.55以下であることがより好ましい、ということが分かった。
【0028】
(6)まとめ
本発明によれば、チタン、ランタンの化合物を含むpH11程度の原料ゾルを超臨界水で処理することにより、超臨界水のもつ急激な酸化析出反応を利用してLaTiナノ粒子を合成することができる。
このときの反応温度は、従来の固相法や有機金属錯体熱分解法などに比べて、40%以上低下しており、また処理時間も亜臨界域以下の昇温過程を含めても10分間程度であることから、処理温度を低温化し、積算の投入エネルギーを大幅に削減することができる。さらに原料には酸化チタン、水酸化ランタン及び水酸化リチウムを水に懸濁したゾルを原料とすることで、製造工程における有機溶媒や有害成分の使用を削減することができる。また、廃液中に有害な有機化合物を生じないことから、環境負荷を低減することできる。
【0029】
さらに、本発明によれば、LiOHを原料ゾルのpH調整剤としてpH11程度に調製することで、合成相へのTiOやLiTi12などの混入を抑制することができ、LaTiナノ粒子の収率を向上させることができる。ここで、原料ゾルのpHは、亜臨界域までの原料化合物の溶解性に寄与することが知られている。しかしながら、本発明者らは、今回pHや原料濃度などを検討した結果、pH調整剤として添加する塩の種類やその濃度によって合成相が変化する結果を得た。この詳細な原理は定かでないが、超臨界水中での解離定数が塩の種類によって異なることから、これが合成反応の平衡に影響すると推測される。LiOHを用いてpHを11程度に調製することにより、副生物の生成を抑制することができる、ということが分かった。
【0030】
さらに、本発明によれば、原料ゾル中のランタン化合物をLa(OH)ナノ粒子とすることで、副生物の生成を抑制することができる。ランタン化合物のアニオンがハロゲンや硝酸イオンを含むと、リアクタ由来の成分が溶出して原料ゾルと化合することや、或いは、原料ゾルを着色することの原因になる。しかしながら、ランタン化合物のアニオンが酸素又は水素の何れかのみ含む場合には、超臨界水中でアニオンが水に転化される。このため、リアクタ由来の成分が溶出したり、原料ゾルが着色されたりすることを抑制することができる。
【0031】
さらに、原料ゾルに添加するLa(OH)を、粒径100nm程度のナノ粒子とすることで、良好な溶解性・反応性を示し、合成相における原料の残留を防ぐことができる。このように、La(OH)ナノ粒子を原料とすることで副生物の生成や原料の残留を抑制することができ、LaTiナノ粒子の純度を高めるための分離・精製工程を省くことが可能となる。
【0032】
また同様に、原料ゾル中のチタンに対するランタンのモル比率を0.5〜0.55とすることで、副生物の生成を抑制することができる。この機構は明らかになっていないが、反応場中で遊離状態のチタンとランタンが層状ペロブスカイト結晶を形成しやすい平衡状態となるのが上記のモル比率であると予想される。この比率の原料ゾルを用いることにより、副生物の生成を抑制することができ、LaTiナノ粒子の純度を高めるための分離・精製の工程を省くことが可能となる。これにより、省エネルギーに寄与することが可能となる。
【0033】
(7)応用例
本発明における原料ゾルに対し、LaTiのAサイトであるランタン原子を他の原子で置換することができる。具体的にはベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びアルミニウムなどの水酸化物又は酸化物を水酸化ランタンの添加量に対して一定量をこれらで置換し、同様の合成反応に用いることができる。これらAサイトランタン置換体は、高誘電体としてセラミックキャパシタに用いるほか、光学レンズの高屈折率添加剤、リチウム二次電池や燃料電池の固体電解質、超電導体の原料などとして用いることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン化合物、ランタン化合物及びアルカリ金属水酸化物を純水に混合した原料ゾルを超臨界水で処理する工程、を含むことを特徴とするチタン酸ランタンの製造方法。
【請求項2】
前記アルカリ金属水酸化物は水酸化リチウムであり、前記超臨界水で処理される前の前記原料ゾルのpHは、10以上、12以下であることを特徴とする請求項1に記載のチタン酸ランタンの製造方法。
【請求項3】
前記ランタン化合物は水酸化ランタンであり、前記水酸化ランタンの平均粒度分布が0nmより大きく、500nm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のチタン酸ランタンの製造方法。
【請求項4】
前記水酸化ランタンの平均粒度分布が100nm以下であることを特徴とする請求項3に記載のチタン酸ランタンの製造方法。
【請求項5】
前記チタン化合物は非晶質酸化チタンであり、
前記ランタン化合物は水酸化ランタンであり、
前記アルカリ金属水酸化物は水酸化リチウムであり、
前記超臨界水で処理される前の前記原料ゾル中において、チタンに対するランタンのモル比率は0より大きく、1以下であることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載のチタン酸ランタンの製造方法。
【請求項6】
前記超臨界水で処理される前の前記原料ゾル中において、前記チタンに対する前記ランタンのモル比率は0.5以上、0.55以下であることを特徴とする請求項5に記載のチタン酸ランタンの製造方法。


【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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