チップ状油脂組成物の製造法及びチップ状油脂組成物並びに層状小麦粉膨化食品
【課題】 ノズルに設けた複数のノズル孔から可塑性油脂組成物を押し出し成形する押出成形機を用い、均一な大きさで、ブロッキングを起こしにくいチップ状油脂組成物の製造を可能とする。
【解決手段】 各ノズル孔2の開口形状が、その中心に関して回転対称であり、縦横両方向の平行な直線上のぞれぞれに一定の間隔で、かつ格子状に配置されたノズル1を用い、ノズル孔2から押し出した可塑性油脂組成物の成形体を金属線21で切断してチップ状に成形する。
【解決手段】 各ノズル孔2の開口形状が、その中心に関して回転対称であり、縦横両方向の平行な直線上のぞれぞれに一定の間隔で、かつ格子状に配置されたノズル1を用い、ノズル孔2から押し出した可塑性油脂組成物の成形体を金属線21で切断してチップ状に成形する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製菓・製パンに用いられるチップ状油脂組成物に関するものであり、更に詳しくは、可塑性油脂を押出成形機のノズルに設けられたノズル孔から押出成形することにより成形するチップ状油脂組成物を製造する方法及びこの方法により製造してなるチップ状油脂組成物並びにこのチップ状油脂組成物を用いて製造してなる層状小麦粉膨化食品に関する。
【背景技術】
【0002】
クロワッサン、デニッシュ、パイ等の層状小麦粉膨化食品は、その独特な食感により、非常に人気の高い食品の一つである。これらの食品は、ロールインマーガリンとよばれるシート状の油脂組成物を用いて、生地にロールインマーガリンを重ね、これを伸ばしては折り畳む工程(ロールイン)を繰り返し、層状になった生地を焼成することで作製される。このような、生地とロールインマーガリンとを伸ばしては折り畳む工程を繰り返して製造されるものは折パイと呼ばれている。前記ロールイン工程は、シーターと呼ばれる機械を用い、多くは手作業により行われていた。しかし、生産効率向上を目的として、ロールイン工程をより簡略化する工夫が従来から多数なされてきた。例えば、レオン自動機(株)のHMラインと呼ばれる装置を用いれば、生地にロールインマーガリンを包むだけで、生地作製の最終工程まで自動的に行うことが可能となった。更にそれらに加えて、生地にバターポンプから自動的にロールインマーガリンを供給し、包む作業も機械化された一連の製造機械も開発されている。しかしながら、このような機械化を行うには、相当の設備投資が必要であり、一日当たりの生産量が相当に多い、いわゆる大手の企業のみが実施できるものである。
【0003】
一方、菓子メーカー等では、上記のようなロールイン工程を経て製造される折パイに対して、練りパイという方法で製造する場合が一般的となっている。この練りパイと呼ばれるものは、押出成形機から押し出したバターやマーガリン等の可塑性油脂をチップ状に切断し、このチップ状油脂を生地中に分散させ、折り込んで焼成することにより、パイの食感を有する製品を製造する方法である。また、パイ饅頭のように包餡機を使用して製造される場合も、チップ状に切断された可塑性油脂が使用される。このようなチップ状油脂は、シート状油脂(ロールインマーガリン)と同様に、伸展性及びコシのあることが必要で、これらが満足できない場合は、製造されるパイに層が出ず、食感も重くなる。
【0004】
従来、前記チップ状油脂を多量製造する場合には、円柱状チップの場合、例えば図11に示すように、円形のノズル孔102を千鳥状に並べて配置したノズル101を用い、ブロック状の可塑性油脂を、例えば図12に示すような押出成形機110の前記ノズル101から押出成形し、その後、包丁、回転刃、カッター等の刃物120で所定の長さに切断していた。前記ノズル101にノズル孔102を千鳥状に配置しているのは、各ノズル孔102同士の間隔をできるだけ詰めてノズル1になるべく多くのノズル孔102を設けることで、一度に押出成形される可塑性油脂の数を増大させ、生産効率を向上させんとしたものである。しかし、前記のようにノズル孔102を千鳥状に並べたノズル101から可塑性油脂を押出成形した場合、ノズル101の周辺部においてはノズル孔102の数が少ないため、該周辺部からはみ出しているノズル孔102Aから押し出される可塑性油脂100の流速が、ノズル101の内側に位置する他のノズル孔102Bから押し出される可塑性油脂100の流速に較べて速くなり、図13(a)、(b)に示すように、ノズル101の内側に位置するノズル孔102Bから押し出される可塑性油脂の押出量(長さLB)に較べて周辺部にはみ出しているノズル孔102Aから押し出される可塑性油脂の押出量(長さLA)が長くなり、従って、これを切断して製造されるチップ状油脂組成物の長さにバラツキが生ずるという問題があった。製造されるチップ状油脂組成物の長さにこのようなバラツキが生ずると、パイ製造時に生地への油脂組成物の分散が不均一となり、その結果、得られるパイの層が不均一になり、浮きも不足して食感が悪くなる。また、押出成形した可塑性油脂を前記の回転刃等の刃物で切断した場合、刃物表面との摩擦により可塑性油脂が軟化し、刃物に油脂が付着したり、切断したチップ状油脂同士が付着しあって塊となるブロッキングが起こる。このように刃物への付着やブロッキングが起こると、チップ状油脂製造の作業性が落ちるだけでなく、ブロッキングを起こした油脂は、生地に均一に分散しないため、やはり前記と同様に得られるパイの層が不均一になり、浮きも不足して食感が悪くなる。
【0005】
上記のようなチップ状油脂製造における課題を解決するために、従来から種々の検討がなされてきている。例えば、品温を−40〜0℃に調整した可塑性油脂を押出口に内接する回転刃を備えた押出機に供給してチップ状に成形することを特徴とする成形可塑性油脂の製造方法(特許文献1)、加圧晶析して得られた油脂組成物を捏和しチップ状に成型したチップ状油脂加工食品(特許文献2)、可塑性油脂組成物をノズルを介して様々な形状に成形しながらエタノール又はエタノール水溶液の冷却した液中に押し出すか、または押し出した後、同液中で切断する加工方法(特許文献3)等の試みがなされている。しかし、いずれの場合も、ブロッキング、不均一な物性の問題は十分改善されていない。
【特許文献1】特開平8−70769号公報
【特許文献2】特開2001−252014号公報
【特許文献3】特開平5−199859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来のチップ状油脂組成物の製造における問題に鑑み、可塑性油脂を押出成形機のノズルに設けた複数のノズル孔から押し出し成形してチップ状油脂組成物を製造するに際し、均一な大きさの、しかもブロッキングを起こしにくいチップ状油脂組成物の製造を可能とし、これにより良好な食感を有する、パイ等の小麦膨化食品を提供可能とすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、チップ状油脂組成物を押出成形する際に使用する押出成形機のノズルとして、従来のようにノズル孔を間隔を詰めて千鳥状に配置するのではなく、所定の間隔で格子状に整列配置し、ノズルの周辺部と内側とにおける可塑性油脂の流速を均一化することで、大きさが揃った均質のチップ状組成物を製造することができること、また、ノズルから押出成形された可塑性油脂を、従来のように刃物ではなく、細径の金属線により切断することにより、チップ状油脂組成物のブロッキングを防止することができること、そして、このチップ状油脂組成物を用いることで、浮きがよく層も出て、食感が良好な層状小麦粉膨化食品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の第一は、ノズルに設けた複数のノズル孔から可塑性油脂組成物を押し出し成形する押出成形機を用いたチップ状油脂組成物の製造方法であって、前記ノズルとして、該ノズルに設けた各ノズル孔の開口形状が、その中心に関して回転対称であり、該ノズル孔が前記ノズルの縦横両方向の平行な直線上のぞれぞれに一定の間隔で、かつ格子状に配置されたものを用い、前記ノズル孔から押し出した可塑性油脂組成物の成形体を切断することでチップ状に成形することを特徴とするチップ状油脂組成物の製造方法である。
【0009】
前記ノズル孔の開口形状としては、その中心に関して90°及び180°の回転対称であることが好ましく、更には前記ノズル孔の開口形状が正方形又は円形であることが好ましい。また、前記ノズル孔の間隔が、ノズルの縦横方向で同一であることが好ましい。
【0010】
また、本発明の第二は、上記のようなチップ状油脂組成物の製造方法において、押出成形機のノズル孔から押し出した可塑性油脂組成物の成形体を、前記ノズルの外面に近接して前記可塑性油脂組成物の押し出し方向に対して垂直方向に移動する、直径0.05〜2mmの金属線により切断することを特徴とするものである。
【0011】
更に、本発明の第三は、上記のようなチップ状油脂組成物の製造方法において、可塑性油脂組成物の成形体を押出成形機のノズル孔から押し出し、アルコール液を噴霧した後、切断することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の第四は、上記のようなチップ状油脂組成物の製造方法において、ブロック状の可塑性油脂組成物を前記押出成形機から押し出すというものである。押出成形機から押し出す可塑性油脂組成物としては、加圧時の加圧力が10〜150MPaの範囲で加圧晶析して製造された油脂組成物であることが好ましい。
【0013】
本発明の第五は、上記のような製造方法により製造してなるチップ状油脂組成物である。
【0014】
また、本発明の第六は、上記のような本発明に係るチップ状油脂組成物を生地に分散させて折り込み、これを焼成してなる、層状小麦粉膨化食品である。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るチップ状油脂組成物の製造方法によれば、押出成形機のノズルに設けた各ノズル孔の開口形状が、その中心に関して回転対称であり、該ノズル孔が前記ノズルの縦横両方向の平行な直線上のぞれぞれに一定の間隔で、かつ格子状に配置されたものを用いてなるので、ノズルの周辺部においてもノズル孔が均等に整列した状態で開口している。これにより、ノズルの周辺部に位置するノズル孔とノズルの内側に位置するノズル孔とから押し出される可塑性油脂組成物の流速が略均一となり、各ノズル孔から押し出される可塑性油脂組成物の長さがノズル全体にわたって略均一となることから、各ノズル孔から押出成形された可塑性油脂組成物を切断することで、均一な大きさのチップ状油脂組成物を製造することができる。
【0016】
前記ノズル孔の開口形状を、その中心に関して90°及び180°の回転対称とすることで、押出成型時における隣接するノズル孔間の間隔を均等にすることができ、各ノズル孔から押し出される可塑性油脂組成物の流速をより均等なものとすることができる。前記回転対称の形状のなかでも、特に正方形又は円形が、隣接するノズル孔間の間隔をより均等なものとして、各ノズル孔から均等量の可塑性油脂組成物を押出成形することができる。更に、この場合に、前記ノズル孔の間隔を、ノズルの縦横方向で同一とすることにより、隣接するノズル孔間の間隔を更に均等なものとして、各ノズル孔からの可塑性油脂組成物の押出量をより均等にすることができる。
【0017】
また、ノズル孔から押し出した可塑性油脂組成物の成形体を、前記ノズルの外面に近接して前記可塑性油脂組成物の押し出し方向に対して垂直方向に移動する、直径0.05〜2mmの金属線を用いて切断することにより、従来のように刃物表面との摩擦により可塑性油脂が軟化して刃物に油脂が付着したり、切断したチップ状油脂組成物同士が付着しあって塊となるブロッキングを防止することができる。更に、前記可塑性油脂組成物の成形体をノズル孔から押し出した後、アルコール液を噴霧し、その後、切断することで、油脂組成物同士の付着、ブロッキングをより確実に防止することができる。また、押出成形機から押出成形する可塑性油脂組成物として予めブロック状に形成された可塑性油脂組成物を用いることで、ノズルの各ノズル孔から均等に押出成形することができると同時に、原料油脂組成物の取り扱いが容易であり、押出成形機によるチップ状油脂組成物の生産性を向上させることができる。
【0018】
前記押出成形機から押し出す可塑性油脂組成物として、加圧時の加圧力が10〜150MPaの範囲で加圧晶析して製造された油脂組成物を用いることで、押出成形機からの押し出し時のノズルとの摩擦等による可塑性油脂組成物の軟化を防止することができ、均質なチップ状油脂組成物を製造することができる。
【0019】
上記のような本発明に係る方法により製造してなるチップ状油脂組成物は、大きさが均一で、かつブロッキング、軟化といった問題のない、均質かつ良質なチップ状油脂組成物であることから、生地中に均等に練りこむことができる。
【0020】
本発明に係る層状小麦粉膨化食品は、上記のような大きさ及び品質が揃ったチップ状油脂組成物を生地に分散させて折り込み、これを焼成してなることから、生地全体に油脂組成物を均等に練り込むことができると同時に、押出成形時の油脂組成物の軟化が防止されることで、コシが強く、かつ浮きのよい、食感の良好な層状小麦粉膨化食品となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明につき更に詳細に説明する。
【0022】
本発明に係るチップ状油脂組成物に使用される油脂は、特に限定されず、従来からマーガリンやショートニング等に用いられている油脂であれば、いかなる油脂でも使用することができる。使用できる油脂としては、例えば、亜麻仁油、桐油、サフラワー油、かや油、胡桃油、芥子油、向日葵湯、綿実油、菜種油、大豆油、辛子油、カポック油、米糠油、胡麻油、落花生油、オリーブ油、椿油、茶油、ひまし油、椰子油、パーム油、パーム核油、葡萄油、カカオ油、シア油、コクム油、バルネオ脂等の植物油や、魚油、鯨油、牛脂、豚油、鶏油、卵黄油、羊油等の動物性油脂が挙げられる、また、これらの油脂をエステル交換したものや、硬化、分別したもの等、通常、食用に供される全ての油脂類を用いることが可能である。本発明では、これらの油脂類のなかから1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
本発明のチップ状油脂組成物は、基本的には油脂と水分とを含んでなるが、水分を含まなくても問題はない。その他にも、通常、油中水型乳化油脂組成物を製造するために添加される乳化剤を使用しても何ら問題はない。使用する乳化剤については、食用であれば特に限定されず、例えば、通常使用されるグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。また、本発明のチップ状油脂組成物は、その他、必要に応じて、乳製品、食塩、香料、着色料、酸化防止剤等を含有してもよい。
【0024】
本発明においては、押出成形機から押出成形する可塑性油脂組成物として予めブロック状に形成された可塑性油脂組成物を用いることで、ノズルのノズル孔から均等に押出成形することができると同時に、原料油脂組成物の取り扱いが容易であり、押出成形機によるチップ状油脂組成物の生産性を向上させることができる。このブロック状可塑性油脂組成物は、保型性があれば、どのような製造法で製造してもよいが、ブロッキングがない、均一な品質を有するチップ状油脂組成物を工業的に効率よく生産するには、晶析の工程において、溶融したエマルションを加圧晶析することが望ましい。本発明における加圧晶析とは、融解した油脂を冷却晶析するときに、強制的に加圧することをいう。前記晶析工程における加圧は、冷却と同時に開始してもよいが、結晶が析出しない程度に予め油脂を冷却した後に加圧して晶析を行ってもよく、後者の方が得られる結晶が微細となり、より好ましい物性となるだけではなく、加圧時間の短縮や晶析時間の短縮等の利点がある。
【0025】
前記の加圧晶析の方法は特に限定されないが、例えば、特開2000−160187号公報、特開2001−238598号公報及び特開2001−252014号公報等に開示された公知の方法を用いることができる。具体的には、上記のような油脂を加熱融解し、例えば、静水圧容器に注入して加圧と冷却を行う。この静水圧容器は、加圧と冷却とを同時に行うことが出来るようになっているもので、静水圧容器内の内容物を加圧しながら、静水圧容器壁面部から内容物の冷却を行うことができる。加圧方式は、ピストン式、液圧式、空気圧式のいずれの方法でもよい。冷却方式は、冷媒式、空冷式いずれでもよい。加圧圧力、加圧時間、冷却媒体温度は、用いる食用油脂の原料組成や量等により最適値が異なるので一概に規定できないが、加圧圧力は10〜150MPaが好ましく、20〜70MPaがより好ましい。加圧時間は1〜60分が好ましく、2〜10分がより好ましい。冷却媒体の温度は−30〜15℃の範囲で処理を行うのが好ましく、−20〜−5℃がより好ましい。上記加圧圧力が10MPa未満であると、加圧による晶析の促進や結晶の微細化が不十分であり、効果が少ない場合がある。また、圧力が150MPaを越える高圧で処理をしても差し支えないが、晶析促進効果や結晶の微細化効果が次第に少なくなってゆくことから、必要以上の高圧での加圧は、経済的にも、安全性の面からも好ましくない。また、加圧時間は加圧圧力、温度、油脂組成等との兼ね合いで決まるが、1分未満であると晶析が不十分な場合がある。一方、晶析が終了した後に更に加圧を続けても油脂物性等の品質の劣化はないが、更なる効果は少ない場合がある。更に、冷却媒体の温度が15℃より高いと冷却速度が遅く、加圧の効果があっても晶析時間は長く大きな効果は得られない場合がある。一方、冷却媒体の温度が−30℃より低い場合は冷却速度は速まるが、加圧による晶析促進効果や結晶の安定化、微細化効果の向上は少なくなり、経済面からも好ましくない場合がある。前記加圧処理は、一度のみでも十分な効果が見られるが、晶析が不十分である場合等、必要によっては同様の処理を繰り返し行うことで更に効果が得られる。また工業的に本発明の加圧晶析を行う場合は、静水圧容器の代わりに、耐圧構造を有するエクストルーダーや耐圧冷却ユニット等を利用して、加圧と冷却を同時に行うように工夫することも出来る。
【0026】
上記のように晶析した油脂組成物は更に捏和を行う。捏和とは油脂組成物を機械的に練ることを意味する。また、晶析と捏和を同時に行ってもよい。晶析が終了した油脂組成物は、更に必要に応じてレスティングチューブ等の熟成ユニットで、更に結晶の安定化を図ることが望ましい。
【0027】
本発明で用いるブロック状可塑性油脂組成物は、上記のようにして晶析および捏和を行った可塑性油脂組成物をブロック状に成型することにより得ることが出来る。ブロック状に成型する方法に特に限定はなく、一般的に使用される方法を用いることが出来る。例えば、厚さが5〜15mm程度の場合であれば、晶析、捏和を行った油脂組成物を麺棒等を用いて成型する。また、工業的な連続生産においては、晶析、捏和を行った可塑性油脂組成物を、通常、所望のサイズに合わせた任意の成型ノズルを用いて連続的に押し出し、押し出された帯状の油脂組成物を、一定時間または一定長さごとにカッター等により切断することで、ブロック状の可塑性油脂組成物が得られる。
【0028】
本発明に係るチップ状油脂組成物の製造に用いられるノズルは、押出成形機の押出し口側の先端部に装着され、可塑性油脂組成物、好ましくはブロック状の可塑性油脂組成物を押出成形する際に、押し出される可塑性油脂組成物を所望の断面形状に成形するためのものである。従来の一般的なチップ状油脂組成物の断面形状は円形であり、使用されるノズル101には図11に示したような円形のノズル孔102が多数設けられており、該ノズル孔102から断面円形の可塑性油脂組成物が押し出される。しかしながら、従来から用いられていたノズルは、図11に示すように、ノズル101になるべく多くのノズル孔102を設けて一度に押し出し成形される可塑性油脂組成物の数を少しでも多くして生産性を上げるべく、千鳥状にノズル孔が設けられていた。このため、ノズル101の周辺部には、他のノズル孔102Bの列から、はみ出した状態で設けられたノズル孔102Aが存在し、この周辺部にはみ出したノズル孔102Aは、その周囲に拡がるノズル内壁面積が他のノズル孔に較べて広いことから、該内壁によって行き場を失った可塑性油脂組成物が、前記はみ出したノズル孔102Aに殺到することで、他のノズル孔に較べて、押し出される可塑性油脂組成物の流速が速くなり、その結果、図13に示したように、押し出される可塑性油脂の量が他に較べて多くなり、これを可塑性油脂を切断して製造されるチップ状油脂組成物の大きさに明らかなバラツキが生ずる。また、このようにノズル101の周辺部のノズル孔102Aから大きな流速で押し出し成形されたチップ状油脂組成物は、ノズル101の内側に位置するノズル孔102Bから押し出し成形された油脂組成物に較べて押出成形時の摩擦熱が高く、軟化しやすい。このように、チップの大きさが不揃いで、しかも軟化したチップが混入したチップ状油脂組成物をパイ等の生地を製造する際の生地に練り込むと、生地中に均一で均質な油脂組成物を練りこむことができす、浮きの悪い、食感の悪い製品になりやすい。
【0029】
これに対し、本発明に係るチップ状油脂組成物の製造方法においては、例えば図1に示す正方形成形ノズル1(A)や図2に示す円形成形ノズル1(B)のように、ノズル孔2・・・の開口形状を、その中心に関して回転対称としていることで、隣接するノズル孔間の間隔が、各ノズル孔において均等になると同時に、各ノズル孔2がノズル1の縦横両方向の平行な直線上のぞれぞれに一定間隔、かつ格子状に配置され、ノズル1の周辺部においても他のノズル孔の列からはみ出すノズル孔2がなく、直線状に、かつ均等間隔で整列した状態で開口している。従って、ノズル1の周辺部に位置するノズル孔2(A)においても、隣接するノズル孔2との間の間隙、及びその周囲に拡がるノズル内壁面積が、ノズルの内側に位置するノズル孔2(B)同士の間の間隙と等しくなり、ノズル1の全面に形成された全てのノズル孔2から押し出される可塑性油脂組成物の流速が略一定となり、図9、図10に示すように、各ノズル孔2から押し出される可塑性油脂組成物100の長さLがノズル1の全体にわたって略均一となる。従って、各ノズル孔2から押出成形された可塑性油脂組成物を切断して、均一な大きさのチップを製造することができる。
【0030】
更に、前記ノズル孔2の開口形状を、その中心に関して90°及び180°の回転対称とすることで、ノズルにおける縦方向と横方向とに配置されたノズル孔同士の間の間隙がより均一となり、押出成型時におけるノズル周辺部における隣接するノズル孔間の間隔を均等にすることができ、各ノズル孔2から押し出される可塑性油脂組成物の流速をより均等なものとすることがでる。前記回転対称の形状のなかでも、特に、例えば図1に示す正方形、又は図2に示す円形の場合には、隣接するノズル孔2,2間の間隔がより均等なものとなり、各ノズル孔2から均等量の可塑性油脂組成物を押出成形することができる。その他、例えば、図3に示す長方形状ノズル1(C)、図4に示す正方形を90°回転させた形状(菱形)ノズル1(D)、図5に示す正六角形状ノズル1(E)、図6に示す正八角形状ノズル1(F)等を採用することもできる。また、ノズル孔は楕円形であってもよい。更に、正多角形(正n角形)のノズル孔にあっては、nの値が大きくなるに従って次第に円形に近づくことから、このような正多角形ノズル孔も、円形ノズル孔の場合と同様に、隣接するノズル孔間の間隙を均一なものとすることができる。
【0031】
更に、各ノズル孔の間隔を、ノズルの縦横方向で同一とすることにより、隣接するノズル孔間の間隔及びそれらの周囲のノズル内壁面積をより均等なものとして、各ノズル孔からの可塑性油脂組成物の流速、即ち押出量をより均等化することができる。なお、ノズルに形成される各ノズル孔の間隔が広すぎる場合には、該間隙に位置するノズル内壁部分との摩擦により、押出成形される可塑性油脂組成物が軟化しやすくなる。このため、各ノズル孔同士の間隔(例えば図1〜図3に示す、X、Yの幅)は、2.0mm以下の範囲で、できるだけ狭くすることが好ましい。ただし、通常、ノズルはステンレス等の金属製板材にて作製されており、ノズル孔同士の間隔(X,Y)があまりに狭いとノズルの強度が確保できない場合があるので、間隔(X,Y)の下限としては0.5mm程度であるが、ノズルの素材によっては、それ以下の間隔でも強度が確保できればよい。また、図1、図3に示すようなノズル孔2の形状が正方形や長方形のノズルの場合には、縦横の枠材に多数の金属線を平行に張設することで格子状にノズル孔を形成したノズルとすることもできる。
【0032】
また、押出成形機におけるノズルが装着される押出口の大きさとしては、ノズルにおけるノズル孔を設けた範囲(図2に示す点線の範囲)よりもやや大きい程度、好ましくは、ノズルの外周部に位置するノズル孔2(A)の開口縁から押出口内縁まで程の距離を、前記各ノズル孔間の間隙(X,Y)とほぼ等しい程度とすることで、周辺部に位置するノズル孔2(A)とその他のノズル孔2(B)とから押出成形される可塑性油脂組成物の流速がより均一となり、大きさが揃った均質なチップ状油脂組成物を製造することができる。
【0033】
本発明に係るチップ状油脂組成物の製造方法においては、上記のようなノズル孔2を形成したノズル1を、図7、図8に示すような押出成形機10の押出口側端部10Aに装着し、ノズル孔2から間欠的に押し出した可塑性油脂組成物の成形体を、例えばノズル1の両側に配置された一対のガイド部材22、22間に張設、かつ支持された状態で、ノズル1の外面に近接して前記可塑性油脂組成物の押し出し方向(図中、白抜き矢印で示すZ方向)に対して垂直方向に移動する、直径0.05〜2mmの金属線21により切断する。これにより、従来のように刃物表面との摩擦により可塑性油脂が軟化して刃物に油脂が付着したり、切断したチップ状油脂組成物同士が付着しあって塊となるブロッキングを防止することができる。前記金属線21の直径が0.05mm未満では、金属線の強度が確保できない場合がある。また、金属線21の直径が2mmを超えると、ノズル孔2から押し出された可塑性油脂組成物の成形体を切断する際に可塑性油脂組成物が金属線21に当たる圧力で軟化を起こすおそれがあるとともに、可塑性油脂組成物との接触面が大きくなり、抵抗が大きくなって切断が出来にくく、また金属線21が切断時の抵抗で切れやすくなる場合がある。ノズル1の外面と金属線21との間の距離としては、出来るだけ短い方が押出成形された可塑性油脂組成物の切断が容易で切断面もシャープで綺麗なチップが得られる。従って、金属線は、ノズルに接触しない範囲で出来るだけノズルに近接して設けることが好ましい。金属線の材質は特に限定されないが、例えば、ステンレス線、銅線、ニッケル線、モリブデン線、クロム線、真鍮線等を使用することができる。金属線の断面形状は必ずしも円形である必要はないが、切断時の摩擦熱の発生等を極力抑えるためには、切断方向、即ち、金属線の進行方向の長さはできるだけ短いほうがよい。言い換えれば、金属線の切断方向の長さは、切断時の熱の発生等に起因して、チップ状油脂組成物の断面が軟化を起こさない範囲で長くしてもよい。従来のように、ノズル孔から押出成形された可塑性油脂組成物を回転刃等で切断する場合には、押し出された可塑性油脂組成物が、回転刃による摩擦熱、また回転刃の壁に当たることで切断面がブロッキングを起こす等の問題があった。これに対し、本発明における金属線による切断では、このような問題は発生せず、ブロッキングの起こらない切断が可能となる。
【0034】
更に、前記可塑性油脂組成物をノズル孔から押し出し、押し出された成形体にアルコール液を噴霧した後、金属線で切断することで、油脂組成物同士の付着、ブロッキングをより確実に防止することができる。この場合に使用されるアルコール液としては食品用途に一般的に使用されている69%エタノール水溶液を使用することができるが、特に限定されるものではない。また、吹付量についても特に限定されるものではないが、可塑性油脂組成物重量に対して5kg/t程度でよい。ただし、使用するアルコール濃度が高すぎたり、吹付量が多すぎる場合に、製造されるチップ状油脂組成物にアルコール臭や水分が残留することがあるので注意が必要である。
【0035】
上記のような本発明に係る方法により製造してなるチップ状油脂組成物は、大きさが均一で、かつブロッキング、軟化といった問題のない、均質なチップ状組成物である。
【0036】
本発明に係る層状小麦粉膨化食品は、上記のような大きさ及び品質が揃ったチップ状油脂組成物を生地に分散させて折り込み、これを焼成してなることから、生地全体に油脂組成物を均等に練り込むことができると同時に、押出成形時の軟化が防止され、コシが強く、浮きのよい、食感の良好な、層状小麦粉膨化食品を提供することができる。本発明のチップ状油脂組成物を用いて製造される層状小麦粉膨化食品には特に限定はないが、例えば、アップルパイ、パイ饅頭、リーフパイ等のパイ類が挙げられる。
【0037】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定を受けるものではない。尚、以下の記載において、特にことわらない限り、「部」、「%」は、それぞれ「重量部」、「重量%」を表す。
【実施例1】
【0038】
常法に従って製造したマーガリンを、高さ50mm、幅が50mm、長さが200mmの型に入れて成形し、ブロック状可塑性油脂を得た。得られたブロック状可塑性油脂を、図1に示す、一辺が7mmの正方形のノズル孔2・・・を、ノズル孔間隙X=1.5mm、Y=1.5mmで格子状に配置して形成したノズル1(A)及び図7に示した、ノズル1に近接して設けた、直径が1.0mmのステンレス線(金属線21)切断機20を備えた押出成形機10に供給してチップ状に成形した。得られたチップ状マーガリンは、一辺が7mmの正方形の断面で、長さが20〜30mmの四角柱状のほぼ均一な大きさのチップ状マーガリンであった。
【実施例2】
【0039】
硬化コーン油(mp40℃)50%、精製ラード(mp31℃)20%、ナタネ白絞油30%からなる調合油83.4部に、グリセリン脂肪酸エステル0.3部、大豆レシチン0.3部を添加した油相を作製した。この油相に対し、水16部を添加し、約60℃に温度を調節し、プロペラミキサーにて攪拌混合し、エマルジョンを作製した。その後、静水圧容器内(約450ml)に注入し、50MPaに加圧すると共に、静水圧容器を外壁部から5℃の冷媒(エチレングリコール)で60分間冷却して、加圧晶析を行った。これら加圧晶析処理の終了した試料を取り出し、三連ロールミル(井上製作所製)を用いローラー温度5℃で、三回冷却捏和を行った。得られた可塑性油脂を高さ50mm、幅が50mm、長さが200mmの型に入れて成形し、ブロック状可塑性油脂を得た。得られたブロック状可塑性油脂を、図1に示す、一辺が7mmの正方形のノズル孔2を、ノズル孔間隙X=1.5mm、Y=1.5mmとして格子状に配置して形成したノズル1(A)、及び図7に示した、ノズルに近接して設けた、直径が1.0mmの金属線(ステンレス線)切断機20を備えた押出成形機10に供給し、ノズル孔2から押し出された可塑性油脂組成物に69%アルコール液を吹きかけた後、金属線(ステンレス線)21で切断してチップ状に成形した。得られたチップ状油脂組成物は、一辺が7mmの正方形の断面で、長さが20〜30mmのほぼ均一な大きさの四角柱状のチップ状油脂組成物であった。
【実施例3】
【0040】
実施例1と同様にしてマーガリンからブロック状可塑性油脂を得た。得られたブロック状可塑性油脂を、図2に示す、直径7mmの円形のノズル孔2を、ノズル孔間隙X=1.0mm、Y=1.0mmで格子状に配置したノズル1(B)、及び図7と同様の、ノズル1に近接して設けた、直径が1.0mmのステンレス線切断機20を備えた押出成形機10に供給してチップ状に成形して、直径が7mmの断面で、長さ20〜30mmの円柱状のほぼ均一な大きさのチップ状マーガリンを得た。
【実施例4】
【0041】
実施例2と同様の配合のエマルジョンから実施例2と同様の方法で加圧晶析ブロック状可塑性油脂を得た。得られたブロック状可塑性油脂を、図2に示す、直径7mmの円形状のノズル孔2を、ノズル孔間隙X1.0mm、Y=1.0mmで格子状に配置したノズル1(B)、及び図7と同様の、ノズル1に近接して設けた、直径が1.0mmのステンレス線切断機を備えた押出成形機10に供給して実施例2と同様にしてチップ状に成形して、直径が7mmの断面で、長さ20〜30mmの円柱状のほぼ均一な大きさのチップ状油脂組成物を得た。
【実施例5】
【0042】
実施例2と同様の配合のエマルジョンから実施例2と同様の方法で加圧晶析ブロック状可塑性油脂を得た。得られたブロック状可塑性油脂を、図3に示した、縦5mm、横10mmの長方形状のノズル孔2を、ノズル孔間隙X=1.5mm、Y=1.0mmで格子状に配置して形成したノズル1(C)、及び図7と同様に、ノズル1に近接して設けた、直径が1.0mmのステンレス線切断機20を備えた押出成形機10に供給して実施例2と同様にしてチップ状に成形して、5mm×10mmの長方形断面で、長さ20〜30mmの四角柱状のほぼ均一な大きさのチップ状油脂組成物を得た。
【実施例6】
【0043】
実施例2と同様の配合のエマルジョンから実施例2と同様の方法で加圧晶析ブロック状可塑性油脂を得た。得られたブロック状可塑性油脂を、図5に示した、一辺が7mmの正六角形状のノズル孔2を、ノズル孔間隙X=1.0mm、Y=1.0mmで格子状に配置して形成したノズル1(E)、及び図7と同様に、ノズル1に近接して設けた、直径が1.0mmのステンレス線切断機20を備えた押出成形機21に供給して実施例2と同様にしてチップ状に成形して、一辺が7mmの正六角形の断面で、長さ20〜30mmのほぼ均一な大きさのチップ状油脂組成物を得た。
【実施例7】
【0044】
実施例2と同様の配合のエマルジョンから実施例2と同様の方法で加圧晶析ブロック状可塑性油脂を得た。得られたブロック状可塑性油脂を、図6に示した、一辺が6mmの正八角形のノズル孔2を、ノズル孔間隙X=1.0mm、Y=1.0mmで格子状に配置したノズル1(F)、及び図7と同様に、ノズル1に近接して設けた、直径が1.0mmのステンレス線切断機20を備えた押出成形機10に供給して実施例2と同様にしてチップ状に成形して、一辺が6mmの正八角形の断面で、長さ20〜30mmのほぼ均一な大きさのチップ状油脂組成物を得た。
【0045】
(比較例1)
実施例1と同様のマーガリンから得られたブロック状可塑性油脂を、図11に示した、直径7mmの円形のノズル孔102を、ノズル孔間隙x=1.0mm、中心間距離y=10.0mmの千鳥状に配置したノズル101、及び図7と同様の金属線(ステンレス線)切断機20を備えた押出成形機10に供給してチップ状に成形して、直径が7mmのチップ状油脂組成物を得た。得られたチップ状マーガリンは、ノズル内側のノズル孔102(B)から押出成形されたものは長さが20〜30mmであるのに対し、周辺部のノズル孔102(A)から押出成形されたものでは30〜50mmであり、大きさが不揃いであった。
【実施例8】
【0046】
実施例2と同様の配合のエマルジョンから実施例2と同様の方法で加圧晶析ブロック状油脂を得た。得られたブロック状可塑性油脂を実施例2と同様の図1に示す正方形状ノズル1(A)を使用し、図12に示すような、押出し口に内接する回転刃(ナイフ)120を備えた押出成形機110に供給してチップ状に成形して、実施例1と同様のチップ状油脂組成物を得た。
【実施例9】
【0047】
実施例1と同様の配合のエマルジョンから、加圧しない以外は実施例2と同様の方法で非加圧晶析ブロック状油脂を得た。得られたブロック状可塑性油脂を図2に示すノズル1(B)、及び図7と同様の、ノズル1に近接するステンレス線切断機20を備えた押出成形機10に供給してチップ状に成形して、直径が7mmの円形の断面で、長さ20〜30mmのチップ状油脂組成物を得た。
【実施例10】
【0048】
実施例2と同様の配合のエマルジョンから、加圧しないこと以外は実施例2と同様の方法で非加圧晶析ブロック状油脂を得た。得られたブロック状可塑性油脂を実施例6と同様の図5に示すノズル1(E)、及び図7と同様の、ノズル1に近接するステンレス線切断機20を備えた押出成形機10に供給してチップ状に成形して、一辺が7mmの正六角形の断面で、長さ20〜30mmのチップ状油脂組成物を得た。
【実施例11】
【0049】
実施例2と同様の配合のエマルジョンを、加圧しないこと以外は実施例2と同様の方法で非加圧晶析ブロック状油脂を得た。得られたブロック状可塑性油脂を、実施例7と同様の図6に示すノズル1(F)、及び図7と同様に、ノズル1に近接するステンレス線切断機20を備えた押出成形機10に供給してチップ状に成形して、一辺が6mmの正八角形の断面で、長さ20〜30mmのチップ状油脂組成物を得た。
【実施例12】
【0050】
実施例2、4〜5、8〜11で得られたチップ状油脂組成物を使用し、表1に示した配合で、以下の製法でパイを作製した。
【0051】
【表1】
【0052】
上記配合で、カントーミキサーにて低速2分、高速5分でパイ生地を作成し(捏ね上げ温度;20℃)、その後、チップ状油脂組成物を生地に練り込まれず、つぶれない程度に混合する。シーターにて延ばした後、四つ折、三つ折を行った。−3℃にて1時間温調した後、同様に四つ折り、三つ折りを繰り返す。更に−3℃で2時間温調した後、生地をシーターで延ばし、直径9センチと5センチの円形抜き型を用いてドーナッツ型に成型した。250℃のオーブンにて15分焼成を行い、パイを得た。
【0053】
前記チップ状油脂組成物の状態、生地作成時の作業性及びパイの製品評価は、表2に示す項目で行った。評価は、5人の訓練されたパネラーにより、5段階評価(5;非常に良好、4;良好、3;普通、2;やや劣る、1;非常に劣る)で行い、その平均点を各々の点数とした。
【0054】
【表2】
【0055】
表2から明らかなように、実施例2、4〜5で得られた、加圧晶析した可塑性油脂組成物から、金属線切断機を有する押出成形機により製造されたチップ状油脂組成物は、実施例8の回転刃を備えた押出成形機を用いた実施例8のチップ状油脂組成物、加圧晶析しない可塑性油脂組成物から製造されたチップ状油脂組成物と比べて、状態、作業性に優れ、またそれを用いて得られるパイの食感、浮きも良好である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】正方形成形ノズルの説明図である。
【図2】円形成形ノズルの説明図である。
【図3】長方形成形ノズルの説明図である。
【図4】菱形成形ノズルの説明図である。
【図5】正六角形成形ノズルの説明図である。
【図6】正八角形成形ノズルの説明図である。
【図7】押出成形機の例を示す説明図である。
【図8】押出成形機の他例を示す説明図である。
【図9】図1に示す成形ノズルによる成形時のA−A断面図である。
【図10】図2に示す成形ノズルによる成形時のB−B断面図である。
【図11】従来の成形ノズルの説明図である。
【図12】回転刃を備えた従来の押出成形機の説明図である。
【図13】(a)は図11に示す成形ノズルによる成形時のC−C断面図、(b)は図11に示す成形ノズルによる成形時のD−D断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 ノズル
2 ノズル孔
10 押出成形機
10A 押出口側端部
20 金属線切断機
21 金属線
22 ガイド部材
100 可塑性油脂
101 ノズル
102 ノズル孔
110 押出成形機
120 回転刃
L 可塑性油脂成形体の長さ
X ノズル孔間隔
Y ノズル孔間隔
y ノズル孔中心間距離
【技術分野】
【0001】
本発明は、製菓・製パンに用いられるチップ状油脂組成物に関するものであり、更に詳しくは、可塑性油脂を押出成形機のノズルに設けられたノズル孔から押出成形することにより成形するチップ状油脂組成物を製造する方法及びこの方法により製造してなるチップ状油脂組成物並びにこのチップ状油脂組成物を用いて製造してなる層状小麦粉膨化食品に関する。
【背景技術】
【0002】
クロワッサン、デニッシュ、パイ等の層状小麦粉膨化食品は、その独特な食感により、非常に人気の高い食品の一つである。これらの食品は、ロールインマーガリンとよばれるシート状の油脂組成物を用いて、生地にロールインマーガリンを重ね、これを伸ばしては折り畳む工程(ロールイン)を繰り返し、層状になった生地を焼成することで作製される。このような、生地とロールインマーガリンとを伸ばしては折り畳む工程を繰り返して製造されるものは折パイと呼ばれている。前記ロールイン工程は、シーターと呼ばれる機械を用い、多くは手作業により行われていた。しかし、生産効率向上を目的として、ロールイン工程をより簡略化する工夫が従来から多数なされてきた。例えば、レオン自動機(株)のHMラインと呼ばれる装置を用いれば、生地にロールインマーガリンを包むだけで、生地作製の最終工程まで自動的に行うことが可能となった。更にそれらに加えて、生地にバターポンプから自動的にロールインマーガリンを供給し、包む作業も機械化された一連の製造機械も開発されている。しかしながら、このような機械化を行うには、相当の設備投資が必要であり、一日当たりの生産量が相当に多い、いわゆる大手の企業のみが実施できるものである。
【0003】
一方、菓子メーカー等では、上記のようなロールイン工程を経て製造される折パイに対して、練りパイという方法で製造する場合が一般的となっている。この練りパイと呼ばれるものは、押出成形機から押し出したバターやマーガリン等の可塑性油脂をチップ状に切断し、このチップ状油脂を生地中に分散させ、折り込んで焼成することにより、パイの食感を有する製品を製造する方法である。また、パイ饅頭のように包餡機を使用して製造される場合も、チップ状に切断された可塑性油脂が使用される。このようなチップ状油脂は、シート状油脂(ロールインマーガリン)と同様に、伸展性及びコシのあることが必要で、これらが満足できない場合は、製造されるパイに層が出ず、食感も重くなる。
【0004】
従来、前記チップ状油脂を多量製造する場合には、円柱状チップの場合、例えば図11に示すように、円形のノズル孔102を千鳥状に並べて配置したノズル101を用い、ブロック状の可塑性油脂を、例えば図12に示すような押出成形機110の前記ノズル101から押出成形し、その後、包丁、回転刃、カッター等の刃物120で所定の長さに切断していた。前記ノズル101にノズル孔102を千鳥状に配置しているのは、各ノズル孔102同士の間隔をできるだけ詰めてノズル1になるべく多くのノズル孔102を設けることで、一度に押出成形される可塑性油脂の数を増大させ、生産効率を向上させんとしたものである。しかし、前記のようにノズル孔102を千鳥状に並べたノズル101から可塑性油脂を押出成形した場合、ノズル101の周辺部においてはノズル孔102の数が少ないため、該周辺部からはみ出しているノズル孔102Aから押し出される可塑性油脂100の流速が、ノズル101の内側に位置する他のノズル孔102Bから押し出される可塑性油脂100の流速に較べて速くなり、図13(a)、(b)に示すように、ノズル101の内側に位置するノズル孔102Bから押し出される可塑性油脂の押出量(長さLB)に較べて周辺部にはみ出しているノズル孔102Aから押し出される可塑性油脂の押出量(長さLA)が長くなり、従って、これを切断して製造されるチップ状油脂組成物の長さにバラツキが生ずるという問題があった。製造されるチップ状油脂組成物の長さにこのようなバラツキが生ずると、パイ製造時に生地への油脂組成物の分散が不均一となり、その結果、得られるパイの層が不均一になり、浮きも不足して食感が悪くなる。また、押出成形した可塑性油脂を前記の回転刃等の刃物で切断した場合、刃物表面との摩擦により可塑性油脂が軟化し、刃物に油脂が付着したり、切断したチップ状油脂同士が付着しあって塊となるブロッキングが起こる。このように刃物への付着やブロッキングが起こると、チップ状油脂製造の作業性が落ちるだけでなく、ブロッキングを起こした油脂は、生地に均一に分散しないため、やはり前記と同様に得られるパイの層が不均一になり、浮きも不足して食感が悪くなる。
【0005】
上記のようなチップ状油脂製造における課題を解決するために、従来から種々の検討がなされてきている。例えば、品温を−40〜0℃に調整した可塑性油脂を押出口に内接する回転刃を備えた押出機に供給してチップ状に成形することを特徴とする成形可塑性油脂の製造方法(特許文献1)、加圧晶析して得られた油脂組成物を捏和しチップ状に成型したチップ状油脂加工食品(特許文献2)、可塑性油脂組成物をノズルを介して様々な形状に成形しながらエタノール又はエタノール水溶液の冷却した液中に押し出すか、または押し出した後、同液中で切断する加工方法(特許文献3)等の試みがなされている。しかし、いずれの場合も、ブロッキング、不均一な物性の問題は十分改善されていない。
【特許文献1】特開平8−70769号公報
【特許文献2】特開2001−252014号公報
【特許文献3】特開平5−199859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来のチップ状油脂組成物の製造における問題に鑑み、可塑性油脂を押出成形機のノズルに設けた複数のノズル孔から押し出し成形してチップ状油脂組成物を製造するに際し、均一な大きさの、しかもブロッキングを起こしにくいチップ状油脂組成物の製造を可能とし、これにより良好な食感を有する、パイ等の小麦膨化食品を提供可能とすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、チップ状油脂組成物を押出成形する際に使用する押出成形機のノズルとして、従来のようにノズル孔を間隔を詰めて千鳥状に配置するのではなく、所定の間隔で格子状に整列配置し、ノズルの周辺部と内側とにおける可塑性油脂の流速を均一化することで、大きさが揃った均質のチップ状組成物を製造することができること、また、ノズルから押出成形された可塑性油脂を、従来のように刃物ではなく、細径の金属線により切断することにより、チップ状油脂組成物のブロッキングを防止することができること、そして、このチップ状油脂組成物を用いることで、浮きがよく層も出て、食感が良好な層状小麦粉膨化食品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の第一は、ノズルに設けた複数のノズル孔から可塑性油脂組成物を押し出し成形する押出成形機を用いたチップ状油脂組成物の製造方法であって、前記ノズルとして、該ノズルに設けた各ノズル孔の開口形状が、その中心に関して回転対称であり、該ノズル孔が前記ノズルの縦横両方向の平行な直線上のぞれぞれに一定の間隔で、かつ格子状に配置されたものを用い、前記ノズル孔から押し出した可塑性油脂組成物の成形体を切断することでチップ状に成形することを特徴とするチップ状油脂組成物の製造方法である。
【0009】
前記ノズル孔の開口形状としては、その中心に関して90°及び180°の回転対称であることが好ましく、更には前記ノズル孔の開口形状が正方形又は円形であることが好ましい。また、前記ノズル孔の間隔が、ノズルの縦横方向で同一であることが好ましい。
【0010】
また、本発明の第二は、上記のようなチップ状油脂組成物の製造方法において、押出成形機のノズル孔から押し出した可塑性油脂組成物の成形体を、前記ノズルの外面に近接して前記可塑性油脂組成物の押し出し方向に対して垂直方向に移動する、直径0.05〜2mmの金属線により切断することを特徴とするものである。
【0011】
更に、本発明の第三は、上記のようなチップ状油脂組成物の製造方法において、可塑性油脂組成物の成形体を押出成形機のノズル孔から押し出し、アルコール液を噴霧した後、切断することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の第四は、上記のようなチップ状油脂組成物の製造方法において、ブロック状の可塑性油脂組成物を前記押出成形機から押し出すというものである。押出成形機から押し出す可塑性油脂組成物としては、加圧時の加圧力が10〜150MPaの範囲で加圧晶析して製造された油脂組成物であることが好ましい。
【0013】
本発明の第五は、上記のような製造方法により製造してなるチップ状油脂組成物である。
【0014】
また、本発明の第六は、上記のような本発明に係るチップ状油脂組成物を生地に分散させて折り込み、これを焼成してなる、層状小麦粉膨化食品である。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るチップ状油脂組成物の製造方法によれば、押出成形機のノズルに設けた各ノズル孔の開口形状が、その中心に関して回転対称であり、該ノズル孔が前記ノズルの縦横両方向の平行な直線上のぞれぞれに一定の間隔で、かつ格子状に配置されたものを用いてなるので、ノズルの周辺部においてもノズル孔が均等に整列した状態で開口している。これにより、ノズルの周辺部に位置するノズル孔とノズルの内側に位置するノズル孔とから押し出される可塑性油脂組成物の流速が略均一となり、各ノズル孔から押し出される可塑性油脂組成物の長さがノズル全体にわたって略均一となることから、各ノズル孔から押出成形された可塑性油脂組成物を切断することで、均一な大きさのチップ状油脂組成物を製造することができる。
【0016】
前記ノズル孔の開口形状を、その中心に関して90°及び180°の回転対称とすることで、押出成型時における隣接するノズル孔間の間隔を均等にすることができ、各ノズル孔から押し出される可塑性油脂組成物の流速をより均等なものとすることができる。前記回転対称の形状のなかでも、特に正方形又は円形が、隣接するノズル孔間の間隔をより均等なものとして、各ノズル孔から均等量の可塑性油脂組成物を押出成形することができる。更に、この場合に、前記ノズル孔の間隔を、ノズルの縦横方向で同一とすることにより、隣接するノズル孔間の間隔を更に均等なものとして、各ノズル孔からの可塑性油脂組成物の押出量をより均等にすることができる。
【0017】
また、ノズル孔から押し出した可塑性油脂組成物の成形体を、前記ノズルの外面に近接して前記可塑性油脂組成物の押し出し方向に対して垂直方向に移動する、直径0.05〜2mmの金属線を用いて切断することにより、従来のように刃物表面との摩擦により可塑性油脂が軟化して刃物に油脂が付着したり、切断したチップ状油脂組成物同士が付着しあって塊となるブロッキングを防止することができる。更に、前記可塑性油脂組成物の成形体をノズル孔から押し出した後、アルコール液を噴霧し、その後、切断することで、油脂組成物同士の付着、ブロッキングをより確実に防止することができる。また、押出成形機から押出成形する可塑性油脂組成物として予めブロック状に形成された可塑性油脂組成物を用いることで、ノズルの各ノズル孔から均等に押出成形することができると同時に、原料油脂組成物の取り扱いが容易であり、押出成形機によるチップ状油脂組成物の生産性を向上させることができる。
【0018】
前記押出成形機から押し出す可塑性油脂組成物として、加圧時の加圧力が10〜150MPaの範囲で加圧晶析して製造された油脂組成物を用いることで、押出成形機からの押し出し時のノズルとの摩擦等による可塑性油脂組成物の軟化を防止することができ、均質なチップ状油脂組成物を製造することができる。
【0019】
上記のような本発明に係る方法により製造してなるチップ状油脂組成物は、大きさが均一で、かつブロッキング、軟化といった問題のない、均質かつ良質なチップ状油脂組成物であることから、生地中に均等に練りこむことができる。
【0020】
本発明に係る層状小麦粉膨化食品は、上記のような大きさ及び品質が揃ったチップ状油脂組成物を生地に分散させて折り込み、これを焼成してなることから、生地全体に油脂組成物を均等に練り込むことができると同時に、押出成形時の油脂組成物の軟化が防止されることで、コシが強く、かつ浮きのよい、食感の良好な層状小麦粉膨化食品となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明につき更に詳細に説明する。
【0022】
本発明に係るチップ状油脂組成物に使用される油脂は、特に限定されず、従来からマーガリンやショートニング等に用いられている油脂であれば、いかなる油脂でも使用することができる。使用できる油脂としては、例えば、亜麻仁油、桐油、サフラワー油、かや油、胡桃油、芥子油、向日葵湯、綿実油、菜種油、大豆油、辛子油、カポック油、米糠油、胡麻油、落花生油、オリーブ油、椿油、茶油、ひまし油、椰子油、パーム油、パーム核油、葡萄油、カカオ油、シア油、コクム油、バルネオ脂等の植物油や、魚油、鯨油、牛脂、豚油、鶏油、卵黄油、羊油等の動物性油脂が挙げられる、また、これらの油脂をエステル交換したものや、硬化、分別したもの等、通常、食用に供される全ての油脂類を用いることが可能である。本発明では、これらの油脂類のなかから1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
本発明のチップ状油脂組成物は、基本的には油脂と水分とを含んでなるが、水分を含まなくても問題はない。その他にも、通常、油中水型乳化油脂組成物を製造するために添加される乳化剤を使用しても何ら問題はない。使用する乳化剤については、食用であれば特に限定されず、例えば、通常使用されるグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。また、本発明のチップ状油脂組成物は、その他、必要に応じて、乳製品、食塩、香料、着色料、酸化防止剤等を含有してもよい。
【0024】
本発明においては、押出成形機から押出成形する可塑性油脂組成物として予めブロック状に形成された可塑性油脂組成物を用いることで、ノズルのノズル孔から均等に押出成形することができると同時に、原料油脂組成物の取り扱いが容易であり、押出成形機によるチップ状油脂組成物の生産性を向上させることができる。このブロック状可塑性油脂組成物は、保型性があれば、どのような製造法で製造してもよいが、ブロッキングがない、均一な品質を有するチップ状油脂組成物を工業的に効率よく生産するには、晶析の工程において、溶融したエマルションを加圧晶析することが望ましい。本発明における加圧晶析とは、融解した油脂を冷却晶析するときに、強制的に加圧することをいう。前記晶析工程における加圧は、冷却と同時に開始してもよいが、結晶が析出しない程度に予め油脂を冷却した後に加圧して晶析を行ってもよく、後者の方が得られる結晶が微細となり、より好ましい物性となるだけではなく、加圧時間の短縮や晶析時間の短縮等の利点がある。
【0025】
前記の加圧晶析の方法は特に限定されないが、例えば、特開2000−160187号公報、特開2001−238598号公報及び特開2001−252014号公報等に開示された公知の方法を用いることができる。具体的には、上記のような油脂を加熱融解し、例えば、静水圧容器に注入して加圧と冷却を行う。この静水圧容器は、加圧と冷却とを同時に行うことが出来るようになっているもので、静水圧容器内の内容物を加圧しながら、静水圧容器壁面部から内容物の冷却を行うことができる。加圧方式は、ピストン式、液圧式、空気圧式のいずれの方法でもよい。冷却方式は、冷媒式、空冷式いずれでもよい。加圧圧力、加圧時間、冷却媒体温度は、用いる食用油脂の原料組成や量等により最適値が異なるので一概に規定できないが、加圧圧力は10〜150MPaが好ましく、20〜70MPaがより好ましい。加圧時間は1〜60分が好ましく、2〜10分がより好ましい。冷却媒体の温度は−30〜15℃の範囲で処理を行うのが好ましく、−20〜−5℃がより好ましい。上記加圧圧力が10MPa未満であると、加圧による晶析の促進や結晶の微細化が不十分であり、効果が少ない場合がある。また、圧力が150MPaを越える高圧で処理をしても差し支えないが、晶析促進効果や結晶の微細化効果が次第に少なくなってゆくことから、必要以上の高圧での加圧は、経済的にも、安全性の面からも好ましくない。また、加圧時間は加圧圧力、温度、油脂組成等との兼ね合いで決まるが、1分未満であると晶析が不十分な場合がある。一方、晶析が終了した後に更に加圧を続けても油脂物性等の品質の劣化はないが、更なる効果は少ない場合がある。更に、冷却媒体の温度が15℃より高いと冷却速度が遅く、加圧の効果があっても晶析時間は長く大きな効果は得られない場合がある。一方、冷却媒体の温度が−30℃より低い場合は冷却速度は速まるが、加圧による晶析促進効果や結晶の安定化、微細化効果の向上は少なくなり、経済面からも好ましくない場合がある。前記加圧処理は、一度のみでも十分な効果が見られるが、晶析が不十分である場合等、必要によっては同様の処理を繰り返し行うことで更に効果が得られる。また工業的に本発明の加圧晶析を行う場合は、静水圧容器の代わりに、耐圧構造を有するエクストルーダーや耐圧冷却ユニット等を利用して、加圧と冷却を同時に行うように工夫することも出来る。
【0026】
上記のように晶析した油脂組成物は更に捏和を行う。捏和とは油脂組成物を機械的に練ることを意味する。また、晶析と捏和を同時に行ってもよい。晶析が終了した油脂組成物は、更に必要に応じてレスティングチューブ等の熟成ユニットで、更に結晶の安定化を図ることが望ましい。
【0027】
本発明で用いるブロック状可塑性油脂組成物は、上記のようにして晶析および捏和を行った可塑性油脂組成物をブロック状に成型することにより得ることが出来る。ブロック状に成型する方法に特に限定はなく、一般的に使用される方法を用いることが出来る。例えば、厚さが5〜15mm程度の場合であれば、晶析、捏和を行った油脂組成物を麺棒等を用いて成型する。また、工業的な連続生産においては、晶析、捏和を行った可塑性油脂組成物を、通常、所望のサイズに合わせた任意の成型ノズルを用いて連続的に押し出し、押し出された帯状の油脂組成物を、一定時間または一定長さごとにカッター等により切断することで、ブロック状の可塑性油脂組成物が得られる。
【0028】
本発明に係るチップ状油脂組成物の製造に用いられるノズルは、押出成形機の押出し口側の先端部に装着され、可塑性油脂組成物、好ましくはブロック状の可塑性油脂組成物を押出成形する際に、押し出される可塑性油脂組成物を所望の断面形状に成形するためのものである。従来の一般的なチップ状油脂組成物の断面形状は円形であり、使用されるノズル101には図11に示したような円形のノズル孔102が多数設けられており、該ノズル孔102から断面円形の可塑性油脂組成物が押し出される。しかしながら、従来から用いられていたノズルは、図11に示すように、ノズル101になるべく多くのノズル孔102を設けて一度に押し出し成形される可塑性油脂組成物の数を少しでも多くして生産性を上げるべく、千鳥状にノズル孔が設けられていた。このため、ノズル101の周辺部には、他のノズル孔102Bの列から、はみ出した状態で設けられたノズル孔102Aが存在し、この周辺部にはみ出したノズル孔102Aは、その周囲に拡がるノズル内壁面積が他のノズル孔に較べて広いことから、該内壁によって行き場を失った可塑性油脂組成物が、前記はみ出したノズル孔102Aに殺到することで、他のノズル孔に較べて、押し出される可塑性油脂組成物の流速が速くなり、その結果、図13に示したように、押し出される可塑性油脂の量が他に較べて多くなり、これを可塑性油脂を切断して製造されるチップ状油脂組成物の大きさに明らかなバラツキが生ずる。また、このようにノズル101の周辺部のノズル孔102Aから大きな流速で押し出し成形されたチップ状油脂組成物は、ノズル101の内側に位置するノズル孔102Bから押し出し成形された油脂組成物に較べて押出成形時の摩擦熱が高く、軟化しやすい。このように、チップの大きさが不揃いで、しかも軟化したチップが混入したチップ状油脂組成物をパイ等の生地を製造する際の生地に練り込むと、生地中に均一で均質な油脂組成物を練りこむことができす、浮きの悪い、食感の悪い製品になりやすい。
【0029】
これに対し、本発明に係るチップ状油脂組成物の製造方法においては、例えば図1に示す正方形成形ノズル1(A)や図2に示す円形成形ノズル1(B)のように、ノズル孔2・・・の開口形状を、その中心に関して回転対称としていることで、隣接するノズル孔間の間隔が、各ノズル孔において均等になると同時に、各ノズル孔2がノズル1の縦横両方向の平行な直線上のぞれぞれに一定間隔、かつ格子状に配置され、ノズル1の周辺部においても他のノズル孔の列からはみ出すノズル孔2がなく、直線状に、かつ均等間隔で整列した状態で開口している。従って、ノズル1の周辺部に位置するノズル孔2(A)においても、隣接するノズル孔2との間の間隙、及びその周囲に拡がるノズル内壁面積が、ノズルの内側に位置するノズル孔2(B)同士の間の間隙と等しくなり、ノズル1の全面に形成された全てのノズル孔2から押し出される可塑性油脂組成物の流速が略一定となり、図9、図10に示すように、各ノズル孔2から押し出される可塑性油脂組成物100の長さLがノズル1の全体にわたって略均一となる。従って、各ノズル孔2から押出成形された可塑性油脂組成物を切断して、均一な大きさのチップを製造することができる。
【0030】
更に、前記ノズル孔2の開口形状を、その中心に関して90°及び180°の回転対称とすることで、ノズルにおける縦方向と横方向とに配置されたノズル孔同士の間の間隙がより均一となり、押出成型時におけるノズル周辺部における隣接するノズル孔間の間隔を均等にすることができ、各ノズル孔2から押し出される可塑性油脂組成物の流速をより均等なものとすることがでる。前記回転対称の形状のなかでも、特に、例えば図1に示す正方形、又は図2に示す円形の場合には、隣接するノズル孔2,2間の間隔がより均等なものとなり、各ノズル孔2から均等量の可塑性油脂組成物を押出成形することができる。その他、例えば、図3に示す長方形状ノズル1(C)、図4に示す正方形を90°回転させた形状(菱形)ノズル1(D)、図5に示す正六角形状ノズル1(E)、図6に示す正八角形状ノズル1(F)等を採用することもできる。また、ノズル孔は楕円形であってもよい。更に、正多角形(正n角形)のノズル孔にあっては、nの値が大きくなるに従って次第に円形に近づくことから、このような正多角形ノズル孔も、円形ノズル孔の場合と同様に、隣接するノズル孔間の間隙を均一なものとすることができる。
【0031】
更に、各ノズル孔の間隔を、ノズルの縦横方向で同一とすることにより、隣接するノズル孔間の間隔及びそれらの周囲のノズル内壁面積をより均等なものとして、各ノズル孔からの可塑性油脂組成物の流速、即ち押出量をより均等化することができる。なお、ノズルに形成される各ノズル孔の間隔が広すぎる場合には、該間隙に位置するノズル内壁部分との摩擦により、押出成形される可塑性油脂組成物が軟化しやすくなる。このため、各ノズル孔同士の間隔(例えば図1〜図3に示す、X、Yの幅)は、2.0mm以下の範囲で、できるだけ狭くすることが好ましい。ただし、通常、ノズルはステンレス等の金属製板材にて作製されており、ノズル孔同士の間隔(X,Y)があまりに狭いとノズルの強度が確保できない場合があるので、間隔(X,Y)の下限としては0.5mm程度であるが、ノズルの素材によっては、それ以下の間隔でも強度が確保できればよい。また、図1、図3に示すようなノズル孔2の形状が正方形や長方形のノズルの場合には、縦横の枠材に多数の金属線を平行に張設することで格子状にノズル孔を形成したノズルとすることもできる。
【0032】
また、押出成形機におけるノズルが装着される押出口の大きさとしては、ノズルにおけるノズル孔を設けた範囲(図2に示す点線の範囲)よりもやや大きい程度、好ましくは、ノズルの外周部に位置するノズル孔2(A)の開口縁から押出口内縁まで程の距離を、前記各ノズル孔間の間隙(X,Y)とほぼ等しい程度とすることで、周辺部に位置するノズル孔2(A)とその他のノズル孔2(B)とから押出成形される可塑性油脂組成物の流速がより均一となり、大きさが揃った均質なチップ状油脂組成物を製造することができる。
【0033】
本発明に係るチップ状油脂組成物の製造方法においては、上記のようなノズル孔2を形成したノズル1を、図7、図8に示すような押出成形機10の押出口側端部10Aに装着し、ノズル孔2から間欠的に押し出した可塑性油脂組成物の成形体を、例えばノズル1の両側に配置された一対のガイド部材22、22間に張設、かつ支持された状態で、ノズル1の外面に近接して前記可塑性油脂組成物の押し出し方向(図中、白抜き矢印で示すZ方向)に対して垂直方向に移動する、直径0.05〜2mmの金属線21により切断する。これにより、従来のように刃物表面との摩擦により可塑性油脂が軟化して刃物に油脂が付着したり、切断したチップ状油脂組成物同士が付着しあって塊となるブロッキングを防止することができる。前記金属線21の直径が0.05mm未満では、金属線の強度が確保できない場合がある。また、金属線21の直径が2mmを超えると、ノズル孔2から押し出された可塑性油脂組成物の成形体を切断する際に可塑性油脂組成物が金属線21に当たる圧力で軟化を起こすおそれがあるとともに、可塑性油脂組成物との接触面が大きくなり、抵抗が大きくなって切断が出来にくく、また金属線21が切断時の抵抗で切れやすくなる場合がある。ノズル1の外面と金属線21との間の距離としては、出来るだけ短い方が押出成形された可塑性油脂組成物の切断が容易で切断面もシャープで綺麗なチップが得られる。従って、金属線は、ノズルに接触しない範囲で出来るだけノズルに近接して設けることが好ましい。金属線の材質は特に限定されないが、例えば、ステンレス線、銅線、ニッケル線、モリブデン線、クロム線、真鍮線等を使用することができる。金属線の断面形状は必ずしも円形である必要はないが、切断時の摩擦熱の発生等を極力抑えるためには、切断方向、即ち、金属線の進行方向の長さはできるだけ短いほうがよい。言い換えれば、金属線の切断方向の長さは、切断時の熱の発生等に起因して、チップ状油脂組成物の断面が軟化を起こさない範囲で長くしてもよい。従来のように、ノズル孔から押出成形された可塑性油脂組成物を回転刃等で切断する場合には、押し出された可塑性油脂組成物が、回転刃による摩擦熱、また回転刃の壁に当たることで切断面がブロッキングを起こす等の問題があった。これに対し、本発明における金属線による切断では、このような問題は発生せず、ブロッキングの起こらない切断が可能となる。
【0034】
更に、前記可塑性油脂組成物をノズル孔から押し出し、押し出された成形体にアルコール液を噴霧した後、金属線で切断することで、油脂組成物同士の付着、ブロッキングをより確実に防止することができる。この場合に使用されるアルコール液としては食品用途に一般的に使用されている69%エタノール水溶液を使用することができるが、特に限定されるものではない。また、吹付量についても特に限定されるものではないが、可塑性油脂組成物重量に対して5kg/t程度でよい。ただし、使用するアルコール濃度が高すぎたり、吹付量が多すぎる場合に、製造されるチップ状油脂組成物にアルコール臭や水分が残留することがあるので注意が必要である。
【0035】
上記のような本発明に係る方法により製造してなるチップ状油脂組成物は、大きさが均一で、かつブロッキング、軟化といった問題のない、均質なチップ状組成物である。
【0036】
本発明に係る層状小麦粉膨化食品は、上記のような大きさ及び品質が揃ったチップ状油脂組成物を生地に分散させて折り込み、これを焼成してなることから、生地全体に油脂組成物を均等に練り込むことができると同時に、押出成形時の軟化が防止され、コシが強く、浮きのよい、食感の良好な、層状小麦粉膨化食品を提供することができる。本発明のチップ状油脂組成物を用いて製造される層状小麦粉膨化食品には特に限定はないが、例えば、アップルパイ、パイ饅頭、リーフパイ等のパイ類が挙げられる。
【0037】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定を受けるものではない。尚、以下の記載において、特にことわらない限り、「部」、「%」は、それぞれ「重量部」、「重量%」を表す。
【実施例1】
【0038】
常法に従って製造したマーガリンを、高さ50mm、幅が50mm、長さが200mmの型に入れて成形し、ブロック状可塑性油脂を得た。得られたブロック状可塑性油脂を、図1に示す、一辺が7mmの正方形のノズル孔2・・・を、ノズル孔間隙X=1.5mm、Y=1.5mmで格子状に配置して形成したノズル1(A)及び図7に示した、ノズル1に近接して設けた、直径が1.0mmのステンレス線(金属線21)切断機20を備えた押出成形機10に供給してチップ状に成形した。得られたチップ状マーガリンは、一辺が7mmの正方形の断面で、長さが20〜30mmの四角柱状のほぼ均一な大きさのチップ状マーガリンであった。
【実施例2】
【0039】
硬化コーン油(mp40℃)50%、精製ラード(mp31℃)20%、ナタネ白絞油30%からなる調合油83.4部に、グリセリン脂肪酸エステル0.3部、大豆レシチン0.3部を添加した油相を作製した。この油相に対し、水16部を添加し、約60℃に温度を調節し、プロペラミキサーにて攪拌混合し、エマルジョンを作製した。その後、静水圧容器内(約450ml)に注入し、50MPaに加圧すると共に、静水圧容器を外壁部から5℃の冷媒(エチレングリコール)で60分間冷却して、加圧晶析を行った。これら加圧晶析処理の終了した試料を取り出し、三連ロールミル(井上製作所製)を用いローラー温度5℃で、三回冷却捏和を行った。得られた可塑性油脂を高さ50mm、幅が50mm、長さが200mmの型に入れて成形し、ブロック状可塑性油脂を得た。得られたブロック状可塑性油脂を、図1に示す、一辺が7mmの正方形のノズル孔2を、ノズル孔間隙X=1.5mm、Y=1.5mmとして格子状に配置して形成したノズル1(A)、及び図7に示した、ノズルに近接して設けた、直径が1.0mmの金属線(ステンレス線)切断機20を備えた押出成形機10に供給し、ノズル孔2から押し出された可塑性油脂組成物に69%アルコール液を吹きかけた後、金属線(ステンレス線)21で切断してチップ状に成形した。得られたチップ状油脂組成物は、一辺が7mmの正方形の断面で、長さが20〜30mmのほぼ均一な大きさの四角柱状のチップ状油脂組成物であった。
【実施例3】
【0040】
実施例1と同様にしてマーガリンからブロック状可塑性油脂を得た。得られたブロック状可塑性油脂を、図2に示す、直径7mmの円形のノズル孔2を、ノズル孔間隙X=1.0mm、Y=1.0mmで格子状に配置したノズル1(B)、及び図7と同様の、ノズル1に近接して設けた、直径が1.0mmのステンレス線切断機20を備えた押出成形機10に供給してチップ状に成形して、直径が7mmの断面で、長さ20〜30mmの円柱状のほぼ均一な大きさのチップ状マーガリンを得た。
【実施例4】
【0041】
実施例2と同様の配合のエマルジョンから実施例2と同様の方法で加圧晶析ブロック状可塑性油脂を得た。得られたブロック状可塑性油脂を、図2に示す、直径7mmの円形状のノズル孔2を、ノズル孔間隙X1.0mm、Y=1.0mmで格子状に配置したノズル1(B)、及び図7と同様の、ノズル1に近接して設けた、直径が1.0mmのステンレス線切断機を備えた押出成形機10に供給して実施例2と同様にしてチップ状に成形して、直径が7mmの断面で、長さ20〜30mmの円柱状のほぼ均一な大きさのチップ状油脂組成物を得た。
【実施例5】
【0042】
実施例2と同様の配合のエマルジョンから実施例2と同様の方法で加圧晶析ブロック状可塑性油脂を得た。得られたブロック状可塑性油脂を、図3に示した、縦5mm、横10mmの長方形状のノズル孔2を、ノズル孔間隙X=1.5mm、Y=1.0mmで格子状に配置して形成したノズル1(C)、及び図7と同様に、ノズル1に近接して設けた、直径が1.0mmのステンレス線切断機20を備えた押出成形機10に供給して実施例2と同様にしてチップ状に成形して、5mm×10mmの長方形断面で、長さ20〜30mmの四角柱状のほぼ均一な大きさのチップ状油脂組成物を得た。
【実施例6】
【0043】
実施例2と同様の配合のエマルジョンから実施例2と同様の方法で加圧晶析ブロック状可塑性油脂を得た。得られたブロック状可塑性油脂を、図5に示した、一辺が7mmの正六角形状のノズル孔2を、ノズル孔間隙X=1.0mm、Y=1.0mmで格子状に配置して形成したノズル1(E)、及び図7と同様に、ノズル1に近接して設けた、直径が1.0mmのステンレス線切断機20を備えた押出成形機21に供給して実施例2と同様にしてチップ状に成形して、一辺が7mmの正六角形の断面で、長さ20〜30mmのほぼ均一な大きさのチップ状油脂組成物を得た。
【実施例7】
【0044】
実施例2と同様の配合のエマルジョンから実施例2と同様の方法で加圧晶析ブロック状可塑性油脂を得た。得られたブロック状可塑性油脂を、図6に示した、一辺が6mmの正八角形のノズル孔2を、ノズル孔間隙X=1.0mm、Y=1.0mmで格子状に配置したノズル1(F)、及び図7と同様に、ノズル1に近接して設けた、直径が1.0mmのステンレス線切断機20を備えた押出成形機10に供給して実施例2と同様にしてチップ状に成形して、一辺が6mmの正八角形の断面で、長さ20〜30mmのほぼ均一な大きさのチップ状油脂組成物を得た。
【0045】
(比較例1)
実施例1と同様のマーガリンから得られたブロック状可塑性油脂を、図11に示した、直径7mmの円形のノズル孔102を、ノズル孔間隙x=1.0mm、中心間距離y=10.0mmの千鳥状に配置したノズル101、及び図7と同様の金属線(ステンレス線)切断機20を備えた押出成形機10に供給してチップ状に成形して、直径が7mmのチップ状油脂組成物を得た。得られたチップ状マーガリンは、ノズル内側のノズル孔102(B)から押出成形されたものは長さが20〜30mmであるのに対し、周辺部のノズル孔102(A)から押出成形されたものでは30〜50mmであり、大きさが不揃いであった。
【実施例8】
【0046】
実施例2と同様の配合のエマルジョンから実施例2と同様の方法で加圧晶析ブロック状油脂を得た。得られたブロック状可塑性油脂を実施例2と同様の図1に示す正方形状ノズル1(A)を使用し、図12に示すような、押出し口に内接する回転刃(ナイフ)120を備えた押出成形機110に供給してチップ状に成形して、実施例1と同様のチップ状油脂組成物を得た。
【実施例9】
【0047】
実施例1と同様の配合のエマルジョンから、加圧しない以外は実施例2と同様の方法で非加圧晶析ブロック状油脂を得た。得られたブロック状可塑性油脂を図2に示すノズル1(B)、及び図7と同様の、ノズル1に近接するステンレス線切断機20を備えた押出成形機10に供給してチップ状に成形して、直径が7mmの円形の断面で、長さ20〜30mmのチップ状油脂組成物を得た。
【実施例10】
【0048】
実施例2と同様の配合のエマルジョンから、加圧しないこと以外は実施例2と同様の方法で非加圧晶析ブロック状油脂を得た。得られたブロック状可塑性油脂を実施例6と同様の図5に示すノズル1(E)、及び図7と同様の、ノズル1に近接するステンレス線切断機20を備えた押出成形機10に供給してチップ状に成形して、一辺が7mmの正六角形の断面で、長さ20〜30mmのチップ状油脂組成物を得た。
【実施例11】
【0049】
実施例2と同様の配合のエマルジョンを、加圧しないこと以外は実施例2と同様の方法で非加圧晶析ブロック状油脂を得た。得られたブロック状可塑性油脂を、実施例7と同様の図6に示すノズル1(F)、及び図7と同様に、ノズル1に近接するステンレス線切断機20を備えた押出成形機10に供給してチップ状に成形して、一辺が6mmの正八角形の断面で、長さ20〜30mmのチップ状油脂組成物を得た。
【実施例12】
【0050】
実施例2、4〜5、8〜11で得られたチップ状油脂組成物を使用し、表1に示した配合で、以下の製法でパイを作製した。
【0051】
【表1】
【0052】
上記配合で、カントーミキサーにて低速2分、高速5分でパイ生地を作成し(捏ね上げ温度;20℃)、その後、チップ状油脂組成物を生地に練り込まれず、つぶれない程度に混合する。シーターにて延ばした後、四つ折、三つ折を行った。−3℃にて1時間温調した後、同様に四つ折り、三つ折りを繰り返す。更に−3℃で2時間温調した後、生地をシーターで延ばし、直径9センチと5センチの円形抜き型を用いてドーナッツ型に成型した。250℃のオーブンにて15分焼成を行い、パイを得た。
【0053】
前記チップ状油脂組成物の状態、生地作成時の作業性及びパイの製品評価は、表2に示す項目で行った。評価は、5人の訓練されたパネラーにより、5段階評価(5;非常に良好、4;良好、3;普通、2;やや劣る、1;非常に劣る)で行い、その平均点を各々の点数とした。
【0054】
【表2】
【0055】
表2から明らかなように、実施例2、4〜5で得られた、加圧晶析した可塑性油脂組成物から、金属線切断機を有する押出成形機により製造されたチップ状油脂組成物は、実施例8の回転刃を備えた押出成形機を用いた実施例8のチップ状油脂組成物、加圧晶析しない可塑性油脂組成物から製造されたチップ状油脂組成物と比べて、状態、作業性に優れ、またそれを用いて得られるパイの食感、浮きも良好である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】正方形成形ノズルの説明図である。
【図2】円形成形ノズルの説明図である。
【図3】長方形成形ノズルの説明図である。
【図4】菱形成形ノズルの説明図である。
【図5】正六角形成形ノズルの説明図である。
【図6】正八角形成形ノズルの説明図である。
【図7】押出成形機の例を示す説明図である。
【図8】押出成形機の他例を示す説明図である。
【図9】図1に示す成形ノズルによる成形時のA−A断面図である。
【図10】図2に示す成形ノズルによる成形時のB−B断面図である。
【図11】従来の成形ノズルの説明図である。
【図12】回転刃を備えた従来の押出成形機の説明図である。
【図13】(a)は図11に示す成形ノズルによる成形時のC−C断面図、(b)は図11に示す成形ノズルによる成形時のD−D断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 ノズル
2 ノズル孔
10 押出成形機
10A 押出口側端部
20 金属線切断機
21 金属線
22 ガイド部材
100 可塑性油脂
101 ノズル
102 ノズル孔
110 押出成形機
120 回転刃
L 可塑性油脂成形体の長さ
X ノズル孔間隔
Y ノズル孔間隔
y ノズル孔中心間距離
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルに設けた複数のノズル孔から可塑性油脂組成物を押し出し成形する押出成形機を用いたチップ状油脂組成物の製造方法であって、前記ノズルとして、該ノズルに設けた各ノズル孔の開口形状が、その中心に関して回転対称であり、該ノズル孔が前記ノズルの縦横両方向の平行な直線上のぞれぞれに一定の間隔で、かつ格子状に配置されたものを用い、前記ノズル孔から押し出した可塑性油脂組成物の成形体を所定の長さに切断することでチップ状に形成することを特徴とするチップ状油脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記ノズル孔の開口形状が、その中心に関して90°及び180°の回転対称である請求項1記載のチップ状油脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記ノズル孔の開口形状が正方形又は円形である請求項1又は2に記載のチップ状油脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記ノズル孔の間隔が、ノズルの縦横方向で同一である請求項1〜3のいずれかに記載のチップ状油脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記ノズル孔から押し出した可塑性油脂組成物の成形体を、前記ノズルの外面に近接して前記可塑性油脂組成物の押し出し方向に対して垂直方向に移動する、直径0.05〜2mmの金属線により切断することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のチップ状油脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記可塑性油脂組成物の成形体を押出成形機のノズル孔から押し出し、アルコール液を噴霧した後、切断することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のチップ状油脂組成物の製造方法。
【請求項7】
ブロック状の可塑性油脂組成物を前記押出成形機から押し出す請求項1〜6のいずれかに記載のチップ状油脂組成物の製造方法。
【請求項8】
前記押出成形機から押し出す可塑性油脂組成物が、加圧時の加圧力が10〜150MPaの範囲で加圧晶析して製造された油脂組成物である請求項1〜7のいずれかに記載のチップ状油脂組成物の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の方法により製造してなるチップ状油脂組成物。
【請求項10】
請求項9に記載のチップ状油脂組成物を生地に分散させて折り込み、これを焼成してなる、層状小麦粉膨化食品。
【請求項1】
ノズルに設けた複数のノズル孔から可塑性油脂組成物を押し出し成形する押出成形機を用いたチップ状油脂組成物の製造方法であって、前記ノズルとして、該ノズルに設けた各ノズル孔の開口形状が、その中心に関して回転対称であり、該ノズル孔が前記ノズルの縦横両方向の平行な直線上のぞれぞれに一定の間隔で、かつ格子状に配置されたものを用い、前記ノズル孔から押し出した可塑性油脂組成物の成形体を所定の長さに切断することでチップ状に形成することを特徴とするチップ状油脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記ノズル孔の開口形状が、その中心に関して90°及び180°の回転対称である請求項1記載のチップ状油脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記ノズル孔の開口形状が正方形又は円形である請求項1又は2に記載のチップ状油脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記ノズル孔の間隔が、ノズルの縦横方向で同一である請求項1〜3のいずれかに記載のチップ状油脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記ノズル孔から押し出した可塑性油脂組成物の成形体を、前記ノズルの外面に近接して前記可塑性油脂組成物の押し出し方向に対して垂直方向に移動する、直径0.05〜2mmの金属線により切断することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のチップ状油脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記可塑性油脂組成物の成形体を押出成形機のノズル孔から押し出し、アルコール液を噴霧した後、切断することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のチップ状油脂組成物の製造方法。
【請求項7】
ブロック状の可塑性油脂組成物を前記押出成形機から押し出す請求項1〜6のいずれかに記載のチップ状油脂組成物の製造方法。
【請求項8】
前記押出成形機から押し出す可塑性油脂組成物が、加圧時の加圧力が10〜150MPaの範囲で加圧晶析して製造された油脂組成物である請求項1〜7のいずれかに記載のチップ状油脂組成物の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の方法により製造してなるチップ状油脂組成物。
【請求項10】
請求項9に記載のチップ状油脂組成物を生地に分散させて折り込み、これを焼成してなる、層状小麦粉膨化食品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−204124(P2006−204124A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−17629(P2005−17629)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]