説明

チップ状食品の製造方法

【課題】こんにゃくを原料として油で揚げたスナックの製造方法において、油の含有率を少なくして低カロリーのコンニャクを用いた意義を有するような健康食品とすると共に、今までにない独特の食感を有するようなチップ状食品を得る製造方法を提供すること。
【解決手段】60〜90℃の熱水中に、こんにゃく粉、澱粉、調味料を加えて攪拌しつつ石灰水を注入した後、10分以上放置することで熟成させ、型枠に流し込んだ状態で蒸し器に入れ、温度90〜100℃で40〜60分蒸し、その後、チップ状に切断し、熱風乾燥させて水分含有量を7重量%未満とし、油で揚げた後、遠心分離器で油を飛ばし、酸価0.6以下、過酸化物価1.6以下とするチップ状食品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、おやつ等の嗜好品として知られる、従来のおかき、せんべい等と同様にチップ状にして食する食品であって、こんにゃくを原料とすることで従来のチップ状食品とは異なりダイエット効果等の健康増進に役立つと共に、独特な食感と風味を有するチップ状食品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、おかきやせんべいは餅米を原料として先ず餅を作り、これを適当な大きさに切断した後、スライスして乾燥し、これを加熱して醤油などを塗布して製品としていた。また、従来のせんべいは小麦粉などに水、ミルク、砂糖などを加えて練り、これを適当な大きさにして加熱乾燥させることにより製品としていた。
【0003】
このうち、餅米を原料とするおかきは最初に餅つき機械で餅を作りこれをスライスしたのち乾燥するという行程が必要なため、製造に手数がかかるという欠点があり、また、小麦粉を原料とするせんべいやビスケットなどはミルクや砂糖で味付けするので味が単純であり、食べ過ぎると肥満の原因となる等の問題があった。
【0004】
また、近年、食品材料として加工性が良いコンニャクを原料とし、コンニャクの持つ弾力性のある食感や低カロリーによる肥満防止による美容や健康を目的とした健康食品が増えつつある。
【0005】
そこで、近年、従来のおかきやせんべい、ビスケット等の食品に替わり、コンニャクを原料に含ませて用い、これを油揚げしたコンニャク原料のスナック製品が出現し、コンニャクの持つ低カロリーによる肥満防止のイメージから多数の類似食品が出現している。
【0006】
例えば、生コンニャク芋をスライスしてアルカリ液浸漬処理した後油揚げしたコンニャク芋フライ食品の製造方法(特許文献1参照)、コンニャク糊および澱粉糊を含む原料を、アルカリ処理してシート状にゲル化させてから油揚げしたシート状食品の製造方法(特許文献2参照)、調味したコンニャクゲルをスライスして油揚げしてマンナンチップスを得る製造法(特許文献3参照)、及び、こんにゃく粉を含む材料をチップ状に切断して油で揚げるチップ状食品の製造方法(特許文献4参照)等がある。
【特許文献1】特開平10−4914号公報(第2頁段落0010〜第3頁段落0014)
【特許文献2】特開平2−186952号公報(第1頁)
【特許文献3】特開昭60−24161号公報(第1頁、第2頁左下欄、右下欄)
【特許文献4】特開2004−305109号公報(第2頁特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1乃至4の油揚げ製品の場合、コンニャクの風味が残り、またコンニャクの有する低カロリーによる肥満防止の健康食品のイメージはあるが、油揚げを行って製造されるために油分が残り、このままでは残存油のカロリーのために、有効な健康食品とは言えないという問題や、通常の油揚げスナックと同様の油臭さが残るという問題があった。
【0008】
特許文献3のマンナンチップスの場合、チップスのノンカロリー性を活かすため、減圧中に油より引き上げたり、熱風を吹き付けながら遠心分離したり、有機溶剤を用いたりして脱油を行っているが(第2頁左下欄、右下欄)、それでも油臭さを完全に除去するには十分とは言えなかった。
【0009】
そこでこの発明は、こんにゃくを原料として油で揚げたスナックの製造方法において、油の含有率を少なくすることで低カロリー化し、原料に低カロリーのコンニャクを用いた意義を有するような健康食品となり、また、今までにない独特の食感を有するようなチップ状食品を得る製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような課題を解決するため、この発明は、60〜90℃の熱水中に、こんにゃく粉と澱粉を主原料に、砂糖、だしの素、塩、を調味料として加えて攪拌しつつ石灰水を注入した後、10分以上放置することで熟成させ、型枠に流し込んだ状態で蒸し器に入れ、温度90〜100℃で40〜60分蒸し、その後、チップ状に切断し、熱風乾燥させて水分含有量を7重量%未満とし、油で揚げた後、遠心分離器で油を飛ばし、酸価0.6以下、過酸化物価1.6以下とすることを特徴とするチップ状食品の製造方法である。
【0011】
まず、60〜90℃の熱水中に、こんにゃく粉、澱粉、砂糖、だしの素、塩、を調味料として加えて攪拌しつつ石灰水を注入する。
【0012】
この際、熱水の温度は60未満だと原材料が十分とけ込まず、また、90℃を超えると沸騰点に近くなり材料の変質のおそれがあるので、60〜90℃の範囲とする。
【0013】
また、原材料は主原料のこんにゃく粉と澱粉、調味料としての砂糖、だしの素、塩を加えて攪拌し、更に石灰水を注入するのであるが、これら原材料や石灰の配合割合は任意で良く、また、その他の調味料を適宜添加しても良い。
【0014】
次に、10分以上放置することで熟成させるのであるが、放置時間をあまり取らずに次の蒸し工程を行うと、こんにゃく粉と澱粉の密着が不十分となるので、放置時間は10分以上行うこととする。但し30分以上放置しても効果はあまり変わらないので、作業効率を考慮して、放置時間は10〜30分の間で適宜決定すれば良い。
【0015】
熟成後の原材料を型枠に流し込んだ状態で蒸し器に入れ、温度90〜100℃で40〜60分蒸すこととする。
【0016】
この蒸し工程により原材料のこんにゃく粉と澱粉が完全に密着するのであるが、温度90〜100℃で40〜60分蒸すという条件が最適である。
【0017】
なお、型枠は、蒸し工程の蒸し器に入る大きさで、作業性に支障のない適当な大きさのものあれば、その形状や大きさは特に限定されない。
【0018】
蒸し工程で固まった原材料をチップ状に切断するが、このチップ状体の大きさは、食べやすい大きさであれば菓子として常識的な大きさであれば特に限定されない。
【0019】
次に、このチップ状体を熱風乾燥させて水分含有量を7重量%未満とするのであるが、その条件としては、例えば60℃の熱風で6時間乾燥させることにより、水分含有率を7重量%未満とさせることができる。
【0020】
但し、熱風温度や乾燥時間を上げすぎても、製造コストがかかるので、60〜75℃の範囲の熱風にて6〜9時間の範囲で乾燥させるのが好ましい。
【0021】
このように水分含有率を7重量%未満としてから、次工程の油揚げ工程、及び遠心分離工程を行うことで、出来上がったスナック菓子の油の含有率が低下し健康食品にふさわしいものとなると共に、今までに何処にも無かった独特の食感を得られるのである。
【0022】
更に、このチップ状体を油で揚げるのであるが、油揚げ工程としては、一般に行われる条件で行えば良く、例えば、160〜200℃の油で30秒〜2分間の範囲で、チップ状体の大きさ等により適宜決定して行えば良い。
【0023】
油揚げ工程後、遠心分離器に入れて遠心力でスナック菓子に含まれる油を飛ばし、酸価0.6以下、過酸化物価1.6以下とすることで、油の臭いが無く、サクサクッとしたこんにゃくとは思えないような食感と風味が生じるのである。
【0024】
ここで、酸価(Acid Value 「AV」)とは、脂質1g中に含まれる遊離脂肪酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数であり、過酸化物価(Peroxide Value 「POV」)とは、規定の方法により試料にヨウ化カリウムを加えた場合に遊離されるヨウ素を試料1kgに対するミリ当量(meq)数で表したものである。
【0025】
食品衛生法では、含有油脂成分の酸化による食中毒の防止のため、これら酸価や過酸化物価を一定以下に抑えることを要求しており、即席めん類(油揚げ麺)で酸価が3.0以下、過酸化物価が30meq/kg以下が必要とされ、油揚げ菓子の場合は、酸価が5以下で、過酸化物価が30meq/kg以下か、または、酸価が3以下で、過酸化物価が50meq/kg以下であることが必要とされていた。
【0026】
この発明では、前述の熱風乾燥工程を経てから油で揚げた後、遠心分離器で油を飛ばすことにより、酸価0.6以下、過酸化物価1.6以下と非常に低く、その為、油の臭いも無い、サクサクッとした、こんにゃくとは思えないような食感と風味が生じるのである。
【0027】
なお、この独特の食感と風味は、酸価が約0.4、過酸化物価が約1.4付近でより効果が得られた。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、この発明の製造方法によるチップ状食品によれば、従来のおかきやせんべいに変るおやつとして食するものであるが、原料がこんにゃくと澱粉を主としているので、餅米を用いるおかきや小麦粉を主とする従来のおやつに比較して一味異なる美味なおやつとなると共に、こんにゃくは繊維に富み、胃腸によい影響を与えて便秘の解消に役立つ健康増進や、ダイエット効果もある有益な食品である。
【0029】
また、この発明の製造方法によるチップ状食品によれば、油揚げ前の水分含有率を7%未満とし、かつ油揚げ後に遠心分離器で油を飛ばすことで、酸価0.6以下、過酸化物価1.6以下とすることで、油で揚げたスナックとしては油臭さもなく、また、原料に低カロリーで健康的なこんにゃくを用いて製造したスナック菓子として、油の含有率の低下による低カロリー化によりイメージ通りの低カロリーな健康食品となる。
【0030】
更に、この独特の油の含有率の低下により、サクサクッとした、こんにゃくを原料としたものとは思えないような、今まで何処にもなかった独創的な驚きの食感と、風味が生じる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に、この発明の実施形態を、一例をあげて説明する。
【0032】
(イ)攪拌工程
図1に示すフローチャートの(イ)のように、水温80℃の熱水中に、こんにゃく粉、澱粉、砂糖、だしの素、塩、及び石灰を、重量%で、こんにゃく粉25%、澱粉20%、砂糖30%、だしの素2%、塩2%、石灰1.8%、水分19.2%の割合となるように加えたものを攪拌機に入れ攪拌混合する。
【0033】
ここで、だしの素は市販のものを用いる。ただし、かつを節、こぶなどを用いて任意のだしを作り利用する場合もある。また、熱水の水温も60〜90℃の範囲で行えば良い。
【0034】
なお、これら原材料の配合割合は特に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができるが、例えば重量%で、こんにゃく粉15〜35%、澱粉10〜30%、石灰1〜2.5%、水分15〜30%の範囲内となるように適宜決定すれば良い。
【0035】
(ロ)熟成工程
攪拌混合後、図1(ロ)のように、上記の混合物を約15分間放置して熟成するが、10〜30分の範囲内で行えば良い。
【0036】
(ハ)型枠への流し込み
更に、図1(ハ)のように、熟成した混合物の流体を、75mm×170mm×25mmの大きさの型枠に流し込むが、これも蒸し器の大きさや作業性を考慮した適宜な大きさや形状の型枠で行えば良い。
【0037】
(ニ)蒸し工程
型枠に入れた後、すぐに図1(ハ)のように、蒸し器に入れて温度90〜100℃で約40〜60分間蒸す。この蒸し工程により、こんにゃく粉と澱粉が完全に密着した状態で固まる。
【0038】
(ホ)切断工程
上記蒸し工程で固まった固まりを図1(ホ)のように、スライス機に掛けて、食べやすい大きさの厚さ約6mm、幅約30mm、長さ約40mmのチップ状とする。この大きさも油揚げ後の製品の大きさを考慮して適宜決定すれば良い。
【0039】
(ヘ)熱風乾燥工程
このチップ状にしたものを、図1(へ)のように、熱風乾燥機にて60℃の熱風で6時間の条件で乾燥する。
【0040】
この熱風乾燥機の熱風の温度は60〜75℃の範囲であれば良く時間も6〜9時間の間で適宜決定し、要するに乾燥後のチップ状体の水分含有率を7%未満とするようにすれば良い。
【0041】
(ト)油揚げ工程
次に、図1(ト)のように、乾燥したチップ状体を160℃の油で約1分間揚げ、更に180℃に油温を上げて約5秒間揚げるが、この油揚げ工程についても、油温、揚げ時間等は通常行われている範囲内で行えば良い。
【0042】
(チ)遠心分離工程
その後、図1(チ)のように、チップ状体を遠心分離器に入れて、遠心分離器で発生する遠心力によってチップ状体から油を飛ばして図2のチップ状食品1として完成する。
【0043】
得られたチップ状食品1の、酸価及び過酸化物価を測定した所、酸価が0.4、過酸化物価が1.4meq/kgとなった。
【0044】
このチップ状食品1は、水分含有率を7重量%未満とした状態で油揚げし、更に、遠心分離器で油を飛ばして酸価が0.6以下、過酸化物価が1.6meq/kg以下としたので、油で揚げたスナック菓子としては残存油脂が少ないため油臭さが無く、また、こんにゃくとは思えない今までに何処にも無かった独特の食感と風味が生じる。
【0045】
この発明の製造方法で得られたチップ状食品は従来のおかきやせんべいと同様にビニール袋に20gなどの一定量を袋詰めにして販売されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明の製造行程を示すフローチャート図である。
【図2】この発明の製品の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
1 チップ状食品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
60〜90℃の熱水中に、こんにゃく粉と澱粉を主原料に、砂糖、だしの素、塩を調味料として加えて攪拌しつつ石灰水を注入した後、10分以上放置することで熟成させ、型枠に流し込んだ状態で蒸し器に入れ、温度90〜100℃で40〜60分蒸し、その後、チップ状に切断し、熱風乾燥させて水分含有量を7重量%未満とし、油で揚げた後、遠心分離器で油を飛ばし、酸価0.6以下、過酸化物価1.6以下とすることを特徴とするチップ状食品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−55818(P2009−55818A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224882(P2007−224882)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(507251549)ダイシンフーズ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】